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No.41025の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯Ⅱ(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)[ベリーイージー](2017/07/15 20:30)
[1] 第一話 学園都市悲喜こもごも・一[ベリーイージー](2015/04/29 22:53)
[2] 第一話 学園都市悲喜こもごも・二及び二の裏[ベリーイージー](2015/04/29 22:55)
[3] 第一話 学園都市悲喜こもごも・三[ベリーイージー](2015/03/28 14:27)
[4] 第一話 学園都市悲喜こもごも・四[ベリーイージー](2015/03/28 14:28)
[5] 第一話 学園都市悲喜こもごも・五[ベリーイージー](2015/03/30 16:03)
[6] 第一話 学園都市悲喜こもごも・六(終)&六の裏[ベリーイージー](2015/04/11 20:13)
[7] 第二話 幻想の命・一[ベリーイージー](2015/04/17 22:21)
[8] 第二話 幻想の命・二[ベリーイージー](2015/04/17 22:22)
[9] 第二話 幻想の命・三[ベリーイージー](2015/05/09 19:47)
[10] 第二話 幻想の命・四[ベリーイージー](2015/05/11 20:10)
[11] 第二話 幻想の命・五[ベリーイージー](2015/05/11 20:11)
[12] 第二話 幻想の命・六[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[13] 第二話 幻想の命・七[ベリーイージー](2015/05/30 20:33)
[14] 第二話 幻想の命・八[ベリーイージー](2015/05/30 20:34)
[15] 第二話 幻想の命・九[ベリーイージー](2015/06/01 00:59)
[16] 第二話 幻想の命・十[ベリーイージー](2015/07/11 19:32)
[17] 第二話 幻想の命・十一[ベリーイージー](2015/06/06 19:52)
[18] 第二話 幻想の命・十二[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[19] 第二話 幻想の命・十三[ベリーイージー](2015/06/20 16:56)
[20] 幻想の命・エピローグ&第三話序章[ベリーイージー](2015/07/11 19:33)
[21] 第三話 無自覚な迷子達・一[ベリーイージー](2015/07/16 00:54)
[22] 第三話 無自覚な迷子達・二[ベリーイージー](2015/07/27 19:51)
[23] 第三話 無自覚な迷子達・三[ベリーイージー](2015/09/05 14:25)
[24] 第三話 無自覚な迷子達・四[ベリーイージー](2015/09/05 14:26)
[25] 第三話 無自覚な迷子達・五[ベリーイージー](2015/08/10 21:11)
[26] 第三話 無自覚な迷子達・六[ベリーイージー](2015/09/05 20:51)
[27] 第三話 無自覚な迷子達・七[ベリーイージー](2015/09/05 20:50)
[28] 第三話 無自覚な迷子達・八[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[29] 無自覚な迷子達・九(終)[ベリーイージー](2015/10/02 20:55)
[30] 3話エピローグ&3.5話『再会』[ベリーイージー](2015/10/02 20:56)
[31] 第四話 希望を求めて・一[ベリーイージー](2015/10/16 00:09)
[32] 第四話 希望を求めて・二[ベリーイージー](2015/10/22 00:04)
[33] 希望を求めて・三[ベリーイージー](2015/11/08 18:43)
[34] 希望を求めて・四[ベリーイージー](2015/11/08 18:48)
[35] 第四話 希望を求めて・五[ベリーイージー](2016/12/23 19:09)
[36] 第四話 希望を求めて・六[ベリーイージー](2015/11/19 00:15)
[37] 第四話 希望を求めて・七[ベリーイージー](2015/11/28 20:29)
[38] 第四話 希望を求めて・八[ベリーイージー](2015/11/29 01:29)
[39] 幕間&希望を求めて・九[ベリーイージー](2015/12/05 13:59)
[40] 希望を求めて・十(終)[ベリーイージー](2015/12/05 14:00)
[41] 第五話 狂信と敬心・零 [ベリーイージー](2016/11/06 23:47)
[42] 第五話 狂信と敬心・一[ベリーイージー](2016/10/29 16:04)
[43] 第五話 狂信と敬心・二[ベリーイージー](2016/02/05 20:59)
[44] 第五話 狂信と敬心・三[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[45] 狂信と敬心・四[ベリーイージー](2016/02/25 21:37)
[46] 狂信と敬心・五[ベリーイージー](2016/02/25 21:57)
[47] 第五話 狂信と敬心・六[ベリーイージー](2016/03/11 18:54)
[48] 第五話 狂信と敬心・七[ベリーイージー](2016/03/11 18:55)
[49] 第五話 狂信と敬心・八[ベリーイージー](2016/03/14 21:08)
[50] 第五話 狂信と敬心・九[ベリーイージー](2016/03/26 18:52)
[51] 第五話 狂信と敬心・十[ベリーイージー](2016/04/04 20:43)
[52] 第五話 狂信と敬心・十一[ベリーイージー](2016/04/24 16:45)
[53] 狂信と敬心・十二(完結編・上)[ベリーイージー](2016/04/24 16:46)
[54] 狂信と敬心・十三(完結編・下)[ベリーイージー](2016/10/29 16:07)
[55] 閑話 不和と不安と一[ベリーイージー](2016/06/04 18:20)
[56] 不和と不安と・二[ベリーイージー](2016/06/10 17:24)
[57] 不和と不安と・三[ベリーイージー](2016/06/19 19:08)
[58] 不和と不安と・四[ベリーイージー](2016/07/17 15:54)
[59] 不和と不安と・五[ベリーイージー](2016/07/17 15:55)
[60] 不和と不安と・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:10)
[61] 不和と不安と・六の下[ベリーイージー](2016/10/29 16:06)
[62] 閑話乃二・ご無体な無頼たち[ベリーイージー](2016/08/31 17:04)
[63] ご無体な無頼たち・二[ベリーイージー](2016/09/10 17:41)
[64] ご無体な無頼たち・三[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[65] ご無体な無頼たち・四[ベリーイージー](2016/11/17 17:06)
[66] ご無体な無頼たち・五[ベリーイージー](2016/11/17 17:07)
[67] ご無体な無頼たち・六[ベリーイージー](2016/12/23 19:07)
[68] ご無体な無頼たち・七(完)[ベリーイージー](2016/12/30 00:01)
[69] 第六話 祭りの夜に星は散る・一[ベリーイージー](2017/09/10 11:30)
[70] 第六話 祭りの夜に星は散る・二[ベリーイージー](2017/01/22 16:02)
[71] 祭りの夜に星は散る・三[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[72] 祭りの夜に星は散る・四[ベリーイージー](2017/03/06 00:05)
[73] 祭りの夜に星は散る・五[ベリーイージー](2017/03/06 00:06)
[74] 祭りの夜に星は散る・六[ベリーイージー](2017/03/06 00:07)
[75] 祭りの夜に星は散る・七[ベリーイージー](2017/03/15 17:29)
[76] 祭りの夜に星が散る・八[ベリーイージー](2017/03/15 17:30)
[77] 祭りの夜の星が散る・九[ベリーイージー](2017/04/23 20:35)
[78] 祭りの夜に星が散る・十[ベリーイージー](2017/05/13 11:32)
[79] 祭りの夜の星が散る・十一[ベリーイージー](2017/05/31 18:35)
[80] 祭りの夜に星が散る・十二[ベリーイージー](2017/06/25 21:49)
[81] 祭りの夜に星が散る・十三[ベリーイージー](2017/08/24 23:54)
[82] 祭りの夜に星が散る・十四[ベリーイージー](2017/07/30 23:29)
[83] 祭りの夜に星が散る・十五[ベリーイージー](2017/07/30 23:30)
[84] 祭りの夜に星が散る・十六[ベリーイージー](2017/09/01 19:22)
[85] 祭りの夜に星が散る・十七[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[86] 祭りの夜に星が散る・十八[ベリーイージー](2017/09/28 21:49)
[87] 祭りの夜に星が散る・十九[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[88] 祭りの夜に星が散る・二十[ベリーイージー](2017/12/03 21:35)
[89] 祭りの夜に星が散る・二十一[ベリーイージー](2017/12/03 21:31)
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[41025] 幕間&希望を求めて・九
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:1f22dae1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/12/05 13:59
幕間&希望を求めて・九



ワアアアッ

「……そろそろ決まるわね」

祭りは最高潮で、それを『隙間』で覗き見て、紫の装束の女が微笑んだ。

「……ふふっ、あのタイミングで『雨』を降らせた甲斐が有ったわ」

式の猫に酌してもらって、妖怪の賢者『八雲紫』が優雅に杯を傾け悦に浸る。
すると、ふと気になった様子で同席者、式の狐のご馳走に舌鼓を打っていた『亡霊』と『鬼』が問いかける。

「あらあら、紫ってば……今回も悪巧み?」
「お前さん、まあた変なちょっかいやったのかい」

庭師が『紫のインタセプト』で報復失敗し、次こそと修行に出たからご飯を頂いてる白玉楼の幽々子、後何時もの如く飲み相手を探してた萃香が首を傾げた。

「ちょっかいって程じゃないわ、ただ単に……『霊夢と繋がり得る人物』が会うように仕向けただけ。
私の『気質』……何か知ってるでしょ、二人共?」
『……天気雨か』
「そっ、まあ……霊夢を知ってるなら誰でもといえばそうね、その時彼女が山に偶々居たから」
「くくっ、涙子も運が無いねえ……で、狙い通りに霊夢と異変の元凶が揃ったってことかい」

涙子とこころ達が出会う原因である『偶々降った天気雨』の元凶の女が笑って、鬼達も(こっちは呆れたように)笑った。

「まあ、彼女には何か補填するとして……これで保険は成ったわ」
『保険?』
「異変の終息と同時に『希望』を、その光景は……幻想郷の者にとって『芯』と成るわ。
……直に見た者は当然、あそこに居なくても噂や天狗の新聞で遠からず知るでしょう」

ちょっと邪悪な微笑みから真剣な顔になって、紫は異変の狙いを話し始めた。

「その『芯』は何時か確固たる物になる……それは『曖昧なものを曖昧のままにさせてくれない』、そんな無慈悲な力から守ってくれる」
「ああん、力だあ?」

萃香と幽々子が小首を傾げ、すると紫は困ったような顔になる。
微妙に他人事の顔で彼女はそれについて口にした。

「魔神と言われる者の天敵、強いだけでは……力が有っても『何も責を負わない』者では絶対勝てない存在がいる。
確か人界では……『希望送り』と言われていたかしら」

微妙に他人ごと、どちらかというと『魔神』への同情を口にしながら(自分が会う可能性は殆ど無いからだ)紫は懸念について説明する。

「今直ぐにではないけど……『一年以内』に学園都市に現れる条件が整いそうだから。
……だから今のうち念の為に、幻想郷の住人に芯になる何かを見せたかったのよ」
「……よくわからんがあの娘の舞いがそれだと」
「正確には既に下地が出来てて、あの娘が切欠で完成する……自分達は素敵な世界の住人ですって、まあ自慢というか誇りが生まれれば『隙』が幾らか消える」

芯とは共通認識、それで幻想郷の住人から天敵が突く『曖昧さ』が取り除かれるのだ。

「異変が起きて、その度に異変解決者……霊夢や魔理沙達が飛び回り暴れ回った。
結果幻想郷はある種混沌とし、だけど……人も妖怪も飽くことがない、そんな煩く賑やかな世界と成っている。
そう、そういう……『素敵な楽園』に成っていって……今回で更に『希望の有る、素敵な楽園』に変わるの」

紫はフッと笑って隙間を通して、自分達の『集大成』の完成を見守った。

「頑張りなさい、秦の娘……文字通り、希望が掛ってるのだから」
「まあ、あの娘もそれが目的だろうしね……じゃ、見守りましょうか」
「……だな、それに中々な舞いだし良い酒の肴だ」



「うおお……私は負けない、勝ってみせる!」

人里の空で、無表情な熱血娘が叫んだ。
彼女はビシと霊夢達を指さして、そうして然りげ無く『保険』を掛けた。

「……で、最終決戦ならば『正々堂々』戦うべきだと思うのだ」
「ほうほう、具体的には?」
「い、一対一を順番に……」
「……まあ良いわ、ならば先に行きなさい、信者一号!」
「イエス、マム……つう訳で行くよ、こころちゃん!?」

ちょっと引き気味の言葉に苦笑しながら頷いて、外向けの設定を言いつつ涙子が前に出た。

「よ、良し、そっちからだな」
「……まあ待って、一対一を順番でだっけ?」

が、そこで涙子は人悪い笑みで髪を触る。
ワラワラと毛玉が飛び出して、その後空中で一箇所に集まった。
すると、それ等は一体の特大毛玉に変化しギロと目を剥いた。

ズズズッ
ドン

「……え、え?」
「私と行き成りなんて甘いさ、修行の邪魔は高くつく……さあボスラッシュだ!」
「うわあ、予想以上に怒ってた!?」

思ったより相手は大人げなくて、こころは慌てて飛び退って構えた。
が、直ぐ様毛玉が彼女を追って、空中戦が始まった。

「くっ、追ってくるか……」

ドドドッ

特大毛玉が飛び退るこころを追いながら、小粒の弾幕を遮二無二撃ってくる。
こころは素早く薙刀で素早く切り払った。

ヒュババッ

「……撃ち合いにも慣れてきた、簡単には落ちないぞ」

彼女は一つ二つ三つと払い、最後の一発を落とすとすかさず体を捻る。
グッと体を弛めて、同時に薙刀と逆に手に持つ扇に霊力を注ぎ込む。
そして、勢い良く扇を投擲する。

「反撃だ、やあっ!」

可愛らしい掛け声とともに扇が放たれ、グルグルと回転しながら毛玉の顔面に飛ぶ。
ズドンと鳴って、彼の鼻先で霊力が炸裂した。

グラア

衝撃でその巨躯が揺れて、その瞬間こころが相手に向かって飛翔する。

「……とあーっ!」

彼女は気合を込めて得物、薙刀の石突きを突き出す。
ドゴスと痛々しい音がして、ぐらりと更に毛玉が揺れた。

ギイッ

彼は悲鳴上げて悶えて、それを見たこころは間合いを詰めて相手の下方へ、そこから見上げながら一つの面を引き寄せる。

「今だっ、大技行くぞ!」

手には派手な装飾の『獅子面』、それを被り頭を後ろにやや引く。
その後勢い良く霊力の火柱を吹き出した。

「歓喜の……獅子面、燃えろ!」

シュボ
ズドンッ

勢い良く天まで真紅の輝きが伸びる。
毛玉は炙りながら吹き飛され、そこに更に獅子面の少女が次へ。
今度は祭りに相応しい面、『ひょっとこの面』を彼女は被った。

「行くぞ、私の扇捌きを見るがいい……」

バチンバチン

こころは一旦薙刀を高く放って、扇を二つ引き抜くと左右に開いた。
そこからクルクル弧を描かせて、それに沿って無数の火を灯す。

「狂喜の……火男面、弾けろ!」

ズドドドッ

展開した火が弾けて飛んで、地上から走った幾つもの火線が空中の毛玉に襲いかかる。
それは表面を一層ずつ削っていく。
ガリガリ削って、ジュッと焼いて、それを繰り返し数秒で毛玉を消し飛ばした。
そして、投げた薙刀をキャッチしたこころがそれでビッと涙子を指した。

「……どうだっ!」
「ああ毛玉が……ええい、代わり用意するからそっちに移れ雑霊!」

態とらしい程顰め面になった涙子が同じく態とらしい程嘆いて(観客が聞ける大声で)その後ヒュウと口笛を吹く。
すると次の瞬間地上で、ピチャンと鳴った。
水が集まり、巨大な蛇を形作った。

「行け、水の蛇……いっちょ新入りを揉んであげな!」
「まだ有るの!?」
「ははは、ボスラッシュと言っただろう!」

驚くこころを笑ったように、水の蛇がその大顎を開かせる。
グワと開いたそこから真っ白な霧が吹き出した。

シュウウッ

周囲一体が白で埋め尽くされ、こころは薙刀を両手で構え警戒した。

「くっ、目眩ましか、どこから……」

集中しながら彼女は警戒し耳を済ます。
すると、背後から僅かな音、咄嗟に薙刀を背後に振るう。

「そっちか、やっ!」

予想通り薙刀に手応えが返り、『尾』が跳ね上がった。

「防いだ、いやこれは……尾、ならば逆か!?」

嫌な予感がし、こころは慌てて薙刀を引き戻す。
反射的に逆側、自分から見て真正面へと突いた。

キシャアアッ

「ぬおっ!?」

ガギィと何かがぶつかって、ギギと凶悪な牙と軋みながら押し合いになる。
数秒で諦めたか、それは霧の中に引いた。

「おおっと……ええい、小癪な真似を!?」

思わず何度か振るうも全て空振りし、こころは一瞬悔しげに成る。

「むうう、良いようにやられてるみたいだ……」

だが、直ぐに止めた、まだ先が長く、力の小出しは却って消耗すると考え直したのだ。
だから、こころは素早く泣き女の面を被った。

「ならば……連続で行くぞ、とうっ!」

バババッと被っているのと同じ面が周囲にいくつも浮かんだ。
弾幕による壁だ、キラと眩い輝きが周囲に張り巡らされる。

「憂嘆の……長壁面、打ち砕け!」

ズドドドッ

展開した弾幕をまず真正面へ、次に後方へ、その後左右へと順番に放つ。
それで僅かに霧が切れ目が出来て、一瞬その隙間に青い巨体が見えた。

「……見つけたぞ!」

すかさず『狐の面』に付け変えて、こころが僅かな助走の後飛び掛かった。

「吼怒の……妖狐面、切り裂け!」

ドスッ

蛇に対抗するように、獣の大顎状の霊力を纏ってこころが突進し『霊力の牙』を突き立てた。
最初は一点に力を集中、そこから牙で割り開くようにする。

ブツン
ギイイイッ

蛇が千切れて苦しそうに悶え、それを見たこころはその頭部部分へ視線を移した。

「まずは半分!……更に、残りもだ!」

彼女は空中で急停止、年経た妖かしを意味する『翁の面』を被る。
すると、面を中心に四方に霊力の糸が広がった。

「怒声の……土蜘面、締め上げろ!」

糸状の霊力がキツく絡みついて、頭と胴だけの蛇が抜けだそうと足掻く。
だが、それで却って絡まってしまう。

「……止めだ」

ザシュッ

こころは薙刀を上下に回し、勢い付けた一撃を身動きできない蛇に見舞う。

ギアアアッ

「……さあ、次だ!」

今度は頭まで割かれた蛇がの飛沫となって散る、こころは油断せず薙刀を構え直す。
そんな彼女をパチパチ拍手して、涙子が嘆くように言った。

「ああ流石だ、強いね、こころちゃん……出来るなら降参したい、でもそれは出来ないか。
……私と霊夢さんは異変の元凶たる貴女を倒さねばならないんだ」

涙子が嘆く、そしてこの辺りで勘のいい者は気づいた。
ぶっちゃけ『予防線』である。

「だが、貴女といた時間は悪くなかった、舞いへの熱意も本物だった……弾幕ごっこは心の表現だ、だからそれで語り合おう!」
「……語って、その後貴女達はどうするの?」
「……貴女が勝てば、そしてそれが純粋であるとわかれば貴女に道を譲ってもいい」

あくまで仕事であると、人里を考えての行動だと後に引かないように持っていく。
その上でこころを試し、その結果次第では折れると彼女は(外向けに)言う。
後ろで霊夢も『止むを得ず戦わねばならない、実は辛いです』という感じでウンウンと頷いていた。

「あー辛いわあ、こうしてるの嫌だわあ……」
「あー辛いわあ、正直戦いたくないわあ……」
「……大人ってズルい」
『黙らっしゃい、ガキ』

そんな小狡い二人にこころが呆れ、一通りそうした後涙子は演技を止める。
彼女は空を、急に渦巻いた暗雲を見上げる。
遂に来るかとこころは構えるも、だけど涙子がにっと笑った。

「じゃ行こうか……ああ加護の方は準備程度だよ、霊力……フルチャージ!」

ピシャンと一条の雷光が瞬いて、『涙子自身』に落ちた。
それにこころはギョッとし、が次の瞬間雷光の中から『白い人影』が現れる。
一瞬で制服から修験者の白装束へと涙子は変わって、更に借りっぱなしの天狗の羽扇を掲げた。

「……修行者同士ってことで、今回はこっちだ!」
「むう、戦い方がコロコロと……」
「面を付け替える君が言えることかい……更に、山の邪念をここに!」

が、まだ終わりではない、涙子はまず白梅を束ねてその手に持った。

「山の色ボケども、さぞや羨やましかろう……貴様等のアイドルとサシで相手する私がな!」

『とある妖怪達』の負の思念で、邪悪な『妖花』に変貌した。
ブワと瞬く間に禍々しい赤に染まり、それを花の王冠に変えて涙子は頭に被る。
赤い花は邪悪な気を放ち、だが人上がりの鬼である涙子はそれを力に変えていく。

「ふっ、先輩方の嫉妬でパワーアップした……天候操作特化ver佐天涙子が相手だ!」
「……山のオジさんたち、何してくれてんの」

こころが恨めしげに山の連中を見て、すると心当たりのある数人が目を逸らす。
それに涙子はケラケラと邪悪に笑う。

「ざまあ、嫌われたね……ま、それは兎も角やろうか」
「……おうっ、負けんぞ!」

涙子が話を戻し、こころも慌てて緊張した様子になる。
互いに薙刀と羽扇を突き出して、こころと涙子は己の敵へと構えた。

「……私が勝つ、勝って皆の前で踊ってみせる」
「それは……私を倒してからだよ、こころちゃん?」
「ならば……」
「……いざ尋常に」

二人は同時に前へ、弾幕を展開しながら駆ける。

『勝負!』

こころが突進から薙刀を払い、涙子が圧縮した風を叩き込む。

ブウンッ
ガギィン

「……ちい、手が痺れる!?」
「……それでも止めるか」

短い破砕音、こころも涙子も顔を顰める。
薙刀が弾かれ上へと跳ねて、だが風も割かれ四散する、初手は互角だった。
が、一撃で落とせないと予想してた涙子は既に二撃目の体勢に移っていた。

「だが、連続でならどう?……はあっ!」
「……くっ、また!?」

ビュオオオッ

風が吹いて、ドゴンと鈍い音を立てる。
クルクルと何かが跳ね上がる、薙刀『だけ』が高く跳ね跳んだ。

「何っ、武器だけ!?」
「……私はここだ!」

一瞬チラと涙子の視界の端に『桃色』が走った、薙刀を囮にこころが横へ回りこんでいた。
彼女は自分の周囲に、目まぐるしく幾つもの面を回転させる。

「……反撃だ、こころのルーレット!」

まず手に取るは泣き女の面、それを被った彼女は『全く同じ面』を周囲に浮かべた。

「まずは憂の面……憂嘆の長壁面!」

まずは広範囲攻撃、回避し難さをこころは重視し弾幕を放つ。
涙子は慌てて扇を翳し、薄く衣のようにして風を纏わせた。

「……ええい、吹き荒べ!」

ビュオオオッ

正面に受けるのではなく、風に曲面を描かせて涙子は受け流す。
だが、それを見たこころは素早く次へ、先程の涙子と同じようにこれだけでは無理だと予想していた。

「うん、そうだろうね、貴女はしつこそうだから……憂心の鬼婆面!」

今度は霊力を一点へ、被っていた仮面に集中させるとこころが勢い良くそれを前に放つ。
ゴウっと泣き女の面が霊力を纏い、弾丸のごとく空を駆ける。

「うおっと、強烈な光景だ……追加だっ!」

涙子は舌打ちし霊力を練る、先の弾幕で防御に回っていたから回避に移れず、止む無く防御の追加を行った。
ヒュンヒュンと何度も羽扇を振るい、何重もの風で自身を包む。
衣どころか甲冑といえる程で、その中で涙子は身構えた。

ギュオッ

そこへ泣き女の面、涙子は風越しにそれを睨み返す。

「……弾け、風よ!」

ガギィンッ

一瞬ギシリと防御が軋んで、だが風が飛んできた面を弾き飛ばす。
しかし、着弾時の衝撃でやや綻んだ風の中で、ある光景を見て涙子がギョッとする。
既に次へと、こころが弾幕を展開していたのだ。

「……戻れ、面よ、そして陣を為せ!」

こころは飛ばした面を即行で戻させ、そのついでに手放した薙刀を回収させる。
面を被り直すと薙刀をブンと振るって、それが合図に成ったか周囲の泣き女の面が一斉に集結する。

「同期し、即席の軍とする……憂き世は憂しの小車!」

ドガガガガガッ

カッと光って、雨霰れと霊気を纏った面が間断なく飛ぶ。
最初に使ったのと似た性質の弾幕、だが込められた霊力は遥かに多かった。

「うおっ、か、風よ!」

慌てて涙子が羽扇を振り回し、更に風を追加する。

「まだまだ、はああっ!」

ビュオオオッ
ガギィン

二重三重と一気に層を重ね、風の甲冑が膨れ上がり強度を上げていく。
ガンガンと面を蹴散らすように、風の壁が片っ端から攻撃を弾き飛ばす。
が、数発目を受けた瞬間『一部』に僅かな綻びが出来た。

ビキビキビキ

それは一つ前の時に、軋み綻んだ箇所で気づいた涙子が顔を引き攣らせる。

「うっ、不味っ!?」
「良し、貰ったぞ……行け、泣き女!」

最後は有りっ丈で、こころが被る面と周囲に浮かべていた僅かな残りを纏めて打ち出す。

「とりゃあ、吹っ飛べ!」
「うあああっ!?」

ズドンズドンズドンッ

連続攻撃を諸に受けて、風の守りも散り散りになって、涙子が赤梅の花弁を散らしながら吹き飛ばされる。
が、こころは油断せず薙刀を構える。
散り散りの風が直ぐに整い、涙子をふわと受け止めたからだ。

「痛たっ、容赦無いなあ……」
「……微妙に手応えがなかった、咄嗟に飛んだ?」
「そういうこと……ちょっと焦ったけど、まだまだあ!」

風で素早く立て直し、まだやれると涙子が羽扇を突きつける。
こころは弾幕の不発に悔しそうにし、だが直ぐに集中し直す、試練なら強敵望む所だと言い聞かせた。

「こころのルーレット、次は……」

再び彼女は面を周囲に展開、クルクル回る中から一つを手に取る。
今度はド派手な獅子面、カツカツその歯を打合せながら彼女は霊力を一箇所に集中する。

「喜の面……歓喜の獅子面!」

シュボッ

そして、一気に面から火柱のようにして吹き出す。
それは勢い良く空を横断し、涙子へと真っ直ぐに伸びていった。

「ならば、こちらはこう……えいっと」

が、彼女は避けも防ぎもせず、代わりに空中の赤梅の花びらを手に取った。
その後霊力を吹き込み、バッと自分の前にばら撒く。

ズドンッ

赤梅が火柱にぶつかって、その瞬間派手に焔が拭き上がった。

「火には火を、そして木生火……爆炎で吹き飛ばす!」
「うあっ!?」

一気に膨張した火が相手の弾幕を飲み込み、火柱の後続までも相殺する。
驚くこころに、ニッと涙子がは笑いかけながら更なる花を握った。

「……どうする、これはまだまだ有るよ?」
「むう、そんなもので私が……臆すると思ったか!」
「ふふっ、強い子だね……ならば、続けようか!」

が、驚きこそすれど退きはせず、こころが獅子面に再び霊力を集中する。
その強気な姿に感心しながらも、涙子も握る花々に霊力を吹き込んでいく。
どちらも前より多く込め、二人は同時に弾幕を完成させた。

「昂揚の……神楽獅子、とあーっ!」
「怪奇……今の世に蘇る鬼の影!」

ドガンッ

火柱と爆砕する花びら、今度は互いに互角で、二人の真ん中の位置で勢い良く弾けた。
が、次の瞬間こころが(無表情ではあるが)驚き仰天する。

「ふっ、行くよ……続け、ドッペル共!」

ボッと相殺時の煙を突き破って、三箇所から同時に涙子が飛び出したのだ。

「何とおっ!?」
「真、二の怪……夢か現か、不吉なるドッゲルゲンガー!」

羽扇を持った涙子が、一振りずつ雷光の太刀を持った涙子達がビッと同時にこころを指した。
そうしてから太刀持ちの二人が前に、本体である涙子が風を吹かせながらその後ろに陣取る。

「ま、客受けしないから騙しは無しだが……さあ、この連携を受けれるか!?」
「試練なのだろう、受けてみせるさ……こころのルーレット、怒の面!」

涙子自身は風の操作を維持し、分身達は刃を突き出し風を背に待つ。
風で加速し、分身による完全に同じタイミングでの突進だ。
一方で、こころは『鼻の高い天狗面』を被り、霊力で獣の牙を形作った。

「本来使うは獅子の面……だが今回だけは敢て天狗面で放とう!」

応援する『色ボケ妖怪達』に少しばかりの感謝を込めて、今回だけの特別版だ。
そしてググと体を一瞬弛めると、反動付けて空を駆ける。
それを見て、涙子も風を強めて分身を打ち出した。

「……ドッペルゲンガー、射出!」
「勝負だ、怒れる……忌狼の面!」

ドゴンッ

霊気の牙が牙を剥き、雷光の太刀が突き出され、人里の空で激突した。

『落ちろおっ!』

ギャリギャリギャリィ

牙と二振りの刃が押し合い、互いを削っていく。
が、その硬直状態が唐突に崩れる、こころが天狗面の上に『新たな面』を被ったからだ。
それは女の顔を模した面で涙子も見知った顔、『貴人』の似姿、つまり神子の顔だった。
天狗面から、神子の顔に変えた瞬間、霊力の牙が更に増幅される。

ザシュッ

巨大化した牙が分身を引き裂いた。

「何いっ!?」
「あの時代の太陽、そんな顔……これが希望の面だ!」

彼女は分身を引き裂き、次に涙子を睨む。
そして、こころはそのまま涙子に向かって勢い良く飛んだ。
まず牙を解除、その分の霊力を薙刀に纏わせて振り被った。

「来るか、こころちゃん!?」
「おうっ、仮面喪心……いや違う、既に喪心には非ず、だからここは……」

その技の名は本来なら仮面『喪心舞』暗黒能楽、だが彼女は人里の者達に希望であれと求められた。
対してこころもまたそれに応えたいと『心の底』から想い、それ故にそのままでは似つかわしいとは言えない。
だから途中まで言い、少しだけ変えて宣言した。

「……仮面『想』心舞・『真』暗黒能楽!」

音は変わらない、だが意味は大きく異る、こころは宣言とともに薙刀を振り上げた。
ブワッと膨大な霊力がそれを包み、光の柱を形作る。
呆然とそれを涙子は見上げ、その後慌てて羽扇を構える。

「さ、させるか、吹き荒べ嵐よ!」

大技には溜めがいる、その前に止めようと彼女は風を放つ。

ボンッ

が、こころの手前で風は散った、防いだ訳ではなく唯余波だけでそれを為したのだ。

「そんな!?」
「……行くぞ、はああっ!」

そして、刃が振り下ろされ、光の柱が叩きこまれる。
ドゴンという音がし、涙子が高々と舞った。

「ぐはああっ!?」
「……これで、この勝負は私の……」
「……まだだっ!」
「えっ!?」

しかし、涙子は吹き飛びながら水鏡を展開した。

「ちいっ、だが一人では……1300万画素の厄と呪い!」

キラと輝き、水鏡がこころの姿を写し取る。
それと傷ついた涙子が重なり、不気味に点滅する。

「何をっ!?」
「虚像を映し、それを傷つけ害を齎す……せめて刺し違える!」

ビキビキビキ

独りでに罅が入り、虚像による呪いが完成しようとする。

「……と思ったんだけど、駄目のようだ」
「え?」

完成直前カッと希望の面が輝き、水鏡を白一色で染め上げなければだったが。
そんな役立たずになった鏡を放って、涙子はよくわかってない様子のこころに言った。

「希望の光か、姿を奪い呪うことすら敵わないとは……お見事、貴女の勝ちだよ。
修行の果てに、それが見事結実する……良い物を見させてもらった、例え自分のことじゃなくてもね」
「……勝った、のか?」
「そっ、さあ……次へ行きな」

涙子はそっと横へズレ、こころに『道』を空ける。
その先には、待ってましたとばかりに構える霊夢の姿があった。

「霊夢さん、後は……」
「ええ、十分よ……後は私がやる、来なさい!」
「……最後か、行くぞ」

こころが真っ直ぐに飛んで、霊夢が迎え撃ち、そうして涙子が一人だけ残される。
彼女は悔しそうな顔で、段々離れてく二人を見送った。

(ううむ、遠いなあ、でも……修行に身が入りそうだ、尤も次の休みになるけどさ)

こうして彼女の役目は終わり、後は面霊気と巫女の戦いだけ、異変は最後の局面を迎えた。




・・・佐天さんから鬼巫女にバトンタッチ。
あっ、もう一話あります、そちらで一応決着。


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