無自覚な迷子達・エピローグ
ガヤガヤ
その日とあるファミレスは喧騒に包まれていた、超能力者やら人外やらが騒ぎまくっている。
「……殆ど貸し切りだし、店の奴らには後で礼を言っとくかねェ」
時期が時期なので何時もの向日葵畑は使えず(後アイテムは事後処理で忙しかった)この場での打ち上げとなったのだ。
とはいえ、金は多めに渡してあるし、また何故かとある少女が店にコネを持っていたので話はスムーズにすんだが。
『ここは本格アンティーク志向、だからこの私……アリス・マーガトロイドがデザイナーとして噛んでるので大丈夫よ!』
『あァそうですか、副業ってとこか……これ、文化侵略?』
娘とその友達への見栄か、某人形使いの親馬鹿がそんなことを言っていたが面倒なので誰も突っ込まなかった。
「……終わってみればだが、今回の事件は……まァ、そこまで派手でも無かったな」
「そうですねえ、一方通行さん……あ、ミサカちゃん、ケーキ来たみたい、一緒に食べよ!」
「……仕方ない、小悪魔は今回頑張りましたから」
「ごめんなさいね、ミサカ……今日は相手してあげて」
この会のスポンサーである一方通行が呑気に言って、それに小悪魔が相鎚しつつミサカとの食事を楽しんでいる。
仕方なさそうに付き合う彼女に小さくパチュリーが頭を下げたのだった。
「ま、今回は大目に見てやるか……あァ八雲さン、人斬りと烏はそのまま送還してくれ」
「仕方ないわねえ、まあせっかくのパーティーを滅茶苦茶にするのもあれだし……」
それに一方通行は苦笑した、尚彼を狙って妖夢と黒い方の垣根が襲いかかってきたが突如開いた『隙間』に飲まれ藻掻いていた。
『おのれえ、見捨てた借りも返してないのにい!?』
「……ふう、助かったぜ」
「ふふっ、これは貸しだからね、少年」
「むっ、早まったか……そのうち返すぜ」
復讐者二人を幻想郷に放り捨て、八雲紫は妖艶に笑って一方通行はやや顔を引き攣らせた。
「一方通行の方は何か大変みたいだな」
「そうだね、かみじょー」
「イマサラジャナイカナ、オニイチャン」
向うの様子に引き気味に笑い、その後上条にチルノ、その頭に乗っかってた人形は別の一角に視線を移した。
そこでは美琴と氷華、それに椛が仲良く食事を楽しんでいた。
「お疲れ様、二人共」
『そちらこそ、美琴さん』
「ええ……じゃ食べましょうか、二人は苦手なものある?」
「私は特に……」
「敢えて言えば葱類、それとチョコレートが……」
『……ああ、犬科だからね』
そんな風に和やかに三人は互いを労い、また楽しそうにしていた。
「ふふっ、今回は色々あったけど……ま、終わってみれば新しい友達二人、そう考えれば良かったのかしらね」
「そうですね、ルーミアちゃん達以外にもそういうのが出来て……私も嬉しいです」
「はい、こちらも……山の仕事、文様達への届け物が有ればまたここに来ることもあるでしょう。
……ええと、その時お会いしてもよろしいでしょうか」
『ええ、当然!』
オズオズと椛がまた会えるかと聞けば、美琴と氷華は頷き即答する。
一度友達になれば出会い方も時間も関係ない、三人は明るい笑顔で笑い合った。
「ありがとう、その時はお願いしますね」
「ええ……で、その時は人型と子犬型、どっちで?」
「あ、それは悩ましい……今は格好良くて、前は可愛い、これは難しいですねえ」
「……わふっ、忘れてくださいよう」
『あはは、ごめんね』
ヘニョンと耳を萎ませて椛は力無く鳴いて、ごめんとばかりに二人は頭を撫でたのだった。
「わふん……そういえば節姫は?」
「あン?……そういや姉貴も居ねェなァ」
「あ、魔理沙とかもいないよ!」
暫くそうしてから、顔を赤くした椛がふと面子に欠けがあることに気づいた。
他にも数名居らず、一方通行他何人かは首を傾げた。
「ああ、その方々なら何人か連れて出ていきましたよ」
『……何だ、急な用事でもあったか?』
3.5話 再会
それは巫女の言葉から始まった。
『生霊の娘、貴女にも帰る場所が有るんじゃないかしら?』
少年に憑いた魔性は消えた、騎士も沈黙した。
だが、一つだけ残っていた。
本当の意味で全てを終わらす為に、だから分たれた少女は一つとなった。
「エリスの夢、いやそれだけじゃないような……」
それは何の変哲もない一時の仮眠の筈だった、だけど褐色の肌の女性がベッドから起き上がって、突如起きた変化に首を傾げる。
複雑な感情、『憎悪』と言っていい程の学園都市へのそれが何故か薄れていた。
「……馬鹿な、私は戦争しに行くんだろうが」
自分の奇妙な感覚に訝しみ、首を傾げながら鞄を寄せる。
そこには彼女得意の操霊による傀儡、所謂ゴーレムを操り戦わせる為の触媒がある。
それを使い、彼女は学園都市に戦争を仕掛けるという使命があった。
「……なのに、何で今更迷ってるんだよ」
何故か使命感、その大元である憎悪が薄れていた。
そのことに女性、ゴーレム使いのシェリーは困惑する。
「エリス、私は……ちっ、後戻りなんて出来るか」
シェリーは迷う自分に言い聞かせて歩き出した、学園都市と戦争をする為に。
「来たわね……生霊との統合も無事完了、後は恨みに一区切り付けさせるだけ」
霊夢が見下ろして言った。
まだ事件終わっていないという勘は大当たりだった。
エリスに魔術を教えていた少女のことが気になって、インデックス及びその友人の赤い牧師に照会を頼んだことも。
「やれる?今回の事件、消化不良で力の余った……暇人二人?」
「はっ、当然だぜ!」
「ええ、任せて下さい……天神の加護ぞ在れ!」
霊夢が問いかけ、それに金髪と黒髪、魔理沙と涙子は力強く頷いた。
「よろしい、じゃ……段取りはこっちでやるから準備してて」
『おうともよっ!』
ザッ
「お前は……」
赤髪の男がシェリーの前に立ち塞がった。
「やあ、シェリー……止まれ、君の目的を遂げさせる訳にはいかない」
「……ネセサリウスのルーン使い、何故ここに」
二人は睨み合う、同じ教会に所属し、だが二人は仲間とは到底言えない関係だ。
シェリーは学園都市を危険視し、強引に先制してでも制圧したいと考えている勢力に居る。
一方で赤髪の男、ステイルは(現時点では)学園都市とは中立を保ちたい勢力の一員だ。
「あんた、上の命令で邪魔しに来たの」
「そのつもりだが……もしかしたら必要ないかもね」
「……何ですって?」
相手の言葉にシェリーが訝しんだ瞬間だった。
ポンとその肩を誰かが叩いた。
「……え?」
「こういうことよ、亜空穴!」
「え?……うおおっ!?
何時の間にか現れた紅白衣装の少女がドンッと突き飛ばし、シェリーを空間の裂け目へと落とした。
そして、少女はフウと一仕事終えた感じで一息吐いた。
「よし、今日のお仕事終了……後は暇人に任せればいいわ」
「……だと良いんだがね、巫女殿……ま、任せるしかない、結果待ちだな」
金と黒髪、二人の少女がじっと待つ。
そして、それは来た、空間が裂けて褐色の肌の女が現れた。
「……来た」
「ああ……先手は任せるぜ、佐天」
「ええ、では……行きます」
段取りは決まっている、だからまず黒髪、涙子が前に出た。
「東風吹かば……」
褐色の女性、シェリーは戸惑いながら鞄を開く。
彼女が触媒を使い、辺りの大地がせり上がり土塊が人型となった。
だが、涙子はそれに構わず詠唱を続ける。
「匂い起こせよ梅の花……」
これにシェリーは不吉さを感じ、巨人の肩に飛び乗って友と同じ名を持つそいつを突撃させる。
だが、その攻撃が当たる寸前涙子が軽く地を蹴る。
風に乗って頭上に飛び上がった彼女が詠唱を完了させた。
「主無しでも……春を忘れるな、『零の奇跡』天神の飛梅!」
唐突に彼女を中心に白梅の花吹雪、数秒後それが治まると大樹が出現する。
その頂点に降り立った涙子はニヤリと手を振り下ろした。
するとバアッと大樹の無数の枝が再び白梅の花吹雪を吹かせた。
それ等の半分はバチバチと紫電を瞬かせ、残りの半分はピシピシと冷気を発している。
「ちっ……防御だ、エリス!」
小回りの効かない巨人では躱せない、シェリーは巨人に防御態勢を取らせる。
が、その瞬間花吹雪を囮に使い、花弁の影から涙子が飛び出した。
「真の一の怪……怪奇、今の世に蘇る鬼の影!」
ズガンッ
巨人の胴を雷光を纏った蹴りが打ち、それで防御態勢が崩れ花吹雪が直撃した。
「ぐうっ!?」
「まだです!」
シェリー達が怯んだ瞬間涙子はすかさず追撃しようとした。
『天神の飛梅』による強化を更に重ねて次の弾幕を放とうとする。
「……エリス、近よらせるな!」
倒れかかった巨人を維持していたシェリーは咄嗟に拳を震わせる、倒れながらの打撃が涙子へ放たれた。
ズズンッと振り下ろし土煙が上がる。
だが、そこへ涙子の叫びが響いた。
「真の二の怪……夢か現か、不吉なるドッゲルゲンガー!」
次の瞬間人影が土煙を裂く、それも二箇所同時にだ。
左右から二人の涙子、全く同じ姿の少女が飛び出した。
『さあ、どっちが夢か現か……当てられるか!?』
「くっ、右か、いや……」
シェリーが目を見開き必死に生後を見極めようとした。
が、それは同時に『左右だけ』を見ているということだ。
一瞬遅れて、頭上に『影』が跳んだ。
「……残念、どっちも外れだ!」
ズドンッ
「何!?」
「……正解が左右といったか?後世間に似た人は三人と言うでしょ?」
雷光を纏わせた拳を打ち込んで『本物』の涙子がニヤリと笑い、その後左右の分身に合図を出す。
「やれ、ドッペル共!」
ズドンッ
ズドンッ
更に続いて分身による挟撃、雷光の拳が巨人の胴の三箇所に傷を穿った。
そして、一撃目に与えた傷と合わせて四つの傷が突然ボンと弾ける。
「雷光よ、縛れ!」
「くっ、待ってて、今直して……」
「……おおっと、それを待つ気はないぜ」
四つの傷から雷光が吹き出し、巨人の内部を焼いて更にはその動きを封じる。
慌ててシェリーが修復しようとしたが、それよりも早く次が来た。
それまで下がっていた魔理沙が前に出て、涙子と手を打ち合わせた。
「魔理沙さん、バトンタッチです!」
「おう、任せな……行くぜ!」
魔理沙が箒を振り被り、それに魔力を纏わせて叩きつける。
ドガアアッ
「ぐわあっ!?」
「……おいおいリアクションが少し早いぜ!」
巨人とその肩のシェリーが高々と舞う、だが魔理沙の攻撃は終わりではない。
彼女は箒に飛び乗り、ミニ八卦炉に力を込める。
そして、魔力を噴射力に変えて、突撃した。
その様を巨人より上に飛ばされたシェリーは唯見送るしかなかった。
「や、止め……」
「断るぜ、サアンッ……グレイザアアアァ!」
ギュオオ
バキンッ
一条の彗星が空へと駆け抜けていく。
幾ら巨人が頑丈だとしてもそれは十全での話、四つの傷を刻まれては強度は半分もないだろう。
ビキビキと瞬く間に亀裂が全身に入り、巨人を粉々に吹き飛ばされた。
「エリス!?」
「……おっとお前さんにはもうひとつ用事がある」
「ぐっ……」
「残念だが諦めな、だが多分……あんたの本業は芸術家だ、戦闘には向いてないってこと」
悲鳴を上げるシェリーだったが、魔理沙は箒を突き出し先端に彼女を引っ掛ける。
服に絡ませキャッチすると、涙子の前に落とした。
そこでシェリーは見た、いや見てしまった、触媒による巨人の復活を止めてしまう程の驚くべき光景を。
「ほい、バトンタッチだぜ」
「ありがとう、後は私が……『君』もいいよね?」
魔理沙の言葉に頷いて、涙子はヒラと手を掲げ開く。
彼女は『飛び梅』の強化で霊力を高め、それを『掌の中の物』に吹き込んだ。
そこには白い何かの破片が一つ、それは涙子の霊力を受けてボウっと輝いた。
「……霊夢さんに聞いて驚きました、まさか……貴方が『そう』で、彼女もそう……ならば、これを拾ったことは運命だったのかも」
「……そうかもしれない、後は自分が……」
そして、何時の間にかそこに一人の少年が立っていた。
体は透き通っていて、その雰囲気はそれ以上に儚くて、だけど強い意志がその顔に有る。
彼は涙子の持つ破片を受け取るとシェリーの前に立った。
「自分の体の一部、持てば幾らか力と成る、実体にも干渉できる……さあ目的を遂げなさい」
「うん……シェリー、久しぶりだね」
少年がシェリーを見つめる、その瞳を見てしまったシェリーは動けない。
まだ二人の敵が居るのに触媒を構える手から力が抜ける。
凍りついた彼女に少年が、エリスが手を伸ばす、そっと触媒を持つシェリーの手を押さえた。
「エリス、何で……」
「もう止めて、シェリー……復讐なんて君には似合わないよ、『優しいシェリー』、『器用なシェリー』、『芸術家の卵のシェリー』?」
その優しい言葉が止めだった、シェリーはガクリと膝をついて涙を流すしか無かった。
「私は、私は……」
「もう、もういいから」
泣きじゃくる彼女をそっとエリスが抱きしめる、力無く手から触媒がこぼれ落ちた。
「……これで戦争は起こらないわ、復讐の動機そのものに止められてはね」
「ご協力に感謝するよ、巫女殿」
亜空欠で到着しその光景を見た霊夢とステイルはフウと安堵の息を吐く。
特にステイルの表情は明るい、シェリーという強力な人材の敗北はタカ派を慎重にさせるには十分だ。
「……可哀想に、敗北した彼女が助かる筈もないわ」
「ああ、そうだね……死体が残るかすら怪しいなあ」
二人は態とらしい内容の言葉を言い合った。
「独り言だけど、どっかに芸術家の卵が急に現れても……まあ、大したことじゃないわよね」
「ああその通りだ、ところで僕も独り言を言うが……天草、ああ何だったか知り合いの知り合いが裏社会に通じてる、『戸籍』の捏造とか得意そうでね」
霊夢とステイルはニヤリと互いを見て笑った。
霊夢は抱き合うシェリーとエリスを指し示して言った。
「二人を任せるわ、適当に学園都市から遠ざけておいて……何時か憎悪も薄れるでしょ、何せ大事な友人が自分の元に返ったのだから」
「了解だ、巫女殿……こちらこそ感謝する、学園都市では沢山痛い目を見たのでね、戦争なんてゴメンだよ」
頷きヒラヒラ手を振ってステイルは二人に関する細工に向かって、それを霊夢は頑張ってと気楽に手を振って見送る。
その日戦争なんて起こらなかった、学園都市は今日も平和だった。
・・・ええと謝罪します、全五~七話程予定していたシェリー編を短縮し3.5話として投稿となりました。
何というか、前回投稿後に気づいたんです・・・あ、エリスはシェリーの元に帰ったけどシェリーも『あるべき所』にないと意味が無いと。
なので・・・ええはい、本来起きる襲撃事件を前倒し及び簡略化し、そのまま再会部分を重点的に書くことにしました。
・・・短すぎとか思った方ごめんなさい、でもこっちの方が展開的に綺麗なんですよ。
・・・次は多分第四話(やや短めかな?)、幻想郷での話になると思います。
もしくは日常的な番外編を挟んでからかも。
以下コメント返信
中落ち様
いやシェリー本人と生霊は別ですから起こします・・・と行きたかったが変更し一話で終わらせてしまいました、エリスの説得で未遂だから感想はドンピシャかな。
YAMAZAKI様
騎士が悪霊さながらなのは魔界のエリスが未練になってたから・・・消えれば大人しくしてるでしょう、あくまで魔物への執着で戦っていたということで。
あ、本人の方も再会シーンを書いてみました、そっちもどうぞ。
うっちー様
エリスは逆戻り、あ意識してないが確かにサリエルの前振りにしか・・・フルボッコに関しては味方側の見せ場を優先したから、まあこれもボスキャラの宿命でしょう。
・・・アルファと魔理沙の経験の対比は狙ってたので感想にニヤリ、そして佐天さんは手が早いのを除けば常識人で書いてるつもり(前回のは再会のお膳立てでした)