前回からの続きってことで
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「じゃあ何であんたは異界からこんなところまで来たんだ? あんな怪我まで負ってさ」
ため口をこの不死鳥相手に冷静に使える俺ほ自画自賛した。しかしやはり姿を見るとどことなく威厳を感じてしまう。
しかし
「あんたじゃなくて朱雀って名前で呼んで。ね、いいでしょ?」
姿とは裏腹に彼女(雌?)はとても親しみやすく話しかけてくれた。これが有るからため口で話せているのだが、やはり姿が…。これではどうしていいのかわからない。つまり声と姿が全く噛み合っていない。ミスマッチだ
普通に朱雀と呼べばいいのだが、やはり姿を見ると何だかそう呼んでは悪い気がする。なんとなくだが。
しかし呼称程度もうどうでも良いという気持ちが俺には少なからず有ったようで
「じゃあ朱雀はどうして異界まで来たんだ? あんな酷い大怪我まで負って」
もう俺は完全に『朱雀』と呼べていた。あぁ~俺ってこんなに肝っ玉強かったかな?
「う~ん。それは秘密ってことで……いい?」
何か事情があることを察した俺は気づいたら、うんいいよと答えていた
すると朱雀はすごく不思議そうな顔をしながら逆に俺に問いかけてくる
「気にならないの? 人間ってこういう事をしつこく聞いてくるって本に書いてあったけど」
「気になるかって言われれば気になる。それにこの状況だからな。だけど朱雀は何か事情があるんだろう? それが話したくないことならべつにいいよ」
う~ん。柄にも無いこと言っちゃったなぁ~。なんかすげぇ恥ずかしい。
そんな内心を気にかけずに、朱雀は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている(鳥だから表情はそこまで変わらないが)
そんなに驚くことか? と思ったが、特に気にしないように気を配った。
そこで朱雀が考え中なので無言。森なので誰かが喋らなければすぐに静寂に包まれる。なんかちょっと気まずかった。
しばらくすると俺はまた質問を再開する。なんかこれ以上このまま無言でいるとさっきの恥ずかしい台詞も加わってすごく恥ずかしいのだ。
「じゃあ今から異界とやらに戻れるのか? それともこっちに残るのか?」
うん。それが一番大切だ。ここで朱雀が向こうに帰れば縁は切れる。
だがこのままこっちにいれば、なぜかこのまま縁が深まっていくようなそんな気がしたのだ
さっきの逃げてきた理由がわからない俺はただただ朱雀の返事を待ちつづけた。
どうしようか朱雀が考えているのはわかるが、また無言だ。
しかも今度はこちらから話題を切り出すこともできないときた。これはやばい
なにがやばいかといわれると分からないが、とにかくやばい。こちらの行動次第で雰囲気ぶち壊れの可能性だってあるのだ。
だからといって無言は辛い。苦しい。神様が俺をいじめているようにも思えてきて肩を落とす。
と、救いの手が差し伸べられた。ようやく朱雀が口を開いたのだ。
「拓馬はどう思う? 私に帰って欲しい? それとも残ってほしい?」
どう思う? といわれて俺は少し戸惑った。まだ朱雀とは会ったばっかりなのだ。
だが、やはりなんとなくというか直感というか朱雀と関わりたいと思っていた。
日々の生活は幸せだったが平凡で刺激が欲しかったのだ。
朱雀と関わっていればなんかわくわくどきどきするようなことが起きるかもしれない。と朱雀を媒体みたいな風に一瞬でも思ってしまった俺は自分が恥ずかしくなった。
「もし俺がここにいて欲しいと言ったらここにいて、帰って欲しいといったら帰るのか?」
と俺が聞くと、朱雀は
「うん」
と短く一言だけ答えた。
「向こうに帰ってまた怪我をしないか? こっちにいて何か不都合なことは無いか?」
と俺が再度問いかけると
「どっちも頑張れば何とかなる……と思う」
今回は最後に言葉を濁した。ということはよっぽど切羽詰っていることが理解できる。
「じゃあ、朱雀はどうしたいんだ?」
これが最後の質問だった。
「私は……拓馬さえ迷惑じゃなければ拓馬がいるこの世界にいたい。まだこっちに来て短いけど、拓馬は私は救ってくれたし…だからこそ拓馬に判断を任せたい」
ってぇ!? 俺!? 俺なのか!? ちょっと今すでにどきどきわくわくの出来事起こってるぞ! マジかよ! あぁ~なんかやべ。恥ずい。ってあれ!? 顔が赤くなってる?
俺はとっさに朱雀から顔をそらす。朱雀は鳥だ。不死鳥だ。だけどそれでも、だ。しかしよくよく考えてみるとおかしい。俺鳥に…いや不死鳥なんだけど…まぁスルーしよう。
俺よ平常心だ。冷静になれ! 冷静になるんだ! 焦ったら負けだ!
「俺は全くといっていいほど迷惑じゃない。お前がここに残りたいと思っているなら俺はそれを応援するしたいと思ってる」
うう~。こんなことをいうのはやっぱり恥ずい。今日の俺はどうしてしまったのだろうか? どうかしてしまっている。だからこそぶっきらぼうに言い捨てることしかできなかったのだが……
「本当!? えっと…じゃあ早速頼みがあるんだけど…」
「何だ?」
「拓馬の家で泊まらせて…くれない?」
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
思わず絶叫してしまった。いやいやこれはまさに漫画の世界ではないか。こんなことがあったらいいなぁ~なんて思ってたけど、まさか本当に起こるとは…グッジョブ神様
そこまで考えると、冷静な部分が俺に語りかけてくる。朱雀は不死鳥だ、と
喋り方が活発な女性そのものだからドギマギしてしまったが不死鳥なのだ。要するに鳥だ。でかいけど…
それに朱雀がここにとどまるきっかけを作ったのは俺だ。行く当ても無い朱雀を置いていくことはできない
しかも野宿は駄目だ。不死鳥の姿を見られてもいけないし、人間の姿を見られてもいけない。
ん? 人間の姿? ってことはやっぱり俺の家に来るときも自然人間化するわけで…
俺は少女の姿の朱雀と、今の言動を組み合わせて想像してみた。
うおっ! これは…かなりすごい。これは注目の的になるだろう。やべぇ、似合いすぎだって。
というわけで
「わかった。親がどういうかはわからないけど一応頼んでみるよ」
「ありがと~拓馬♪」
いつの間にか人間化していた朱雀が俺の腕に抱きついてきた。
しかし俺は飛びのく。そしたら朱雀は少し寂しそうになったがこれは仕方ない。マジで嬉しかったのだが、ちょっとこれはキツイ。息ができないのだ。
さっきは焦っていたのでわからなかったのだが、
――――――――流れるような金髪――――――――
―――――出る所は出て締まるところは締まったライン―――――
―――――日に直接当たったことが無いような色白い肌―――――
――――――――パッチリと開いた紅い瞳―――――――
どっからどう見ても美少女だった。いやもう美じゃ足りないかもしれない。
そう思えるほど魅力的だった。そしてそれを追撃するような出来事が一つ。
そう。不死鳥の姿だったときは不必要で、人間化したら必要になるもの。それは‘服’だ
体でさえどういう原理で戻っているのかわからないのに、変化する服があるわけがない。要するに彼女は服を着ていなかったのだ。
そして背中には明らかに人間とは違うもの。背中の部分に紅の翼が見事なまでに生えていた。