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No.40808の一覧
[0] 実際にRPGの世界に行けば多分こうなる[セノ](2017/02/14 22:24)
[1] 初めての戦闘編[セノ](2014/12/17 04:46)
[2] 初めての訓練編[セノ](2014/12/17 04:01)
[3] 初めてのステ確認編[セノ](2015/01/09 11:52)
[4] 初めての装備選び編[セノ](2014/12/17 23:21)
[5] 初めての回復魔法編[セノ](2017/02/09 02:43)
[6] 初めての野宿編[セノ](2017/02/12 15:35)
[7] 初めてのアイテム編[セノ](2017/02/16 13:07)
[8] 初めての探索編[セノ](2014/12/20 19:34)
[9] 初めての労働(異世界)編[セノ](2015/01/14 13:32)
[10] 初めての見張り番編[セノ](2014/12/27 23:38)
[11] 初めての王国編[セノ](2014/12/31 08:50)
[12] 黄昏の処刑場編[セノ](2015/01/13 19:38)
[13] 夕闇の姫君編[セノ](2017/02/20 00:43)
[14] お姫様の憂鬱編[セノ](2015/01/16 23:32)
[15] 月夜の王国編[セノ](2017/02/16 11:02)
[16] 初めての謁見編[セノ](2015/01/22 20:32)
[17] 暗躍者の陰謀編(閑話休題有)[セノ](2015/01/24 03:44)
[18] 判断と決断編[セノ](2017/02/06 05:50)
[19] 残されたPT編[セノ](2015/04/02 00:07)
[20] 人生たまには調子に乗ってみよう編[セノ](2017/02/07 04:01)
[21] 初めての裏ギルド編[セノ](2017/02/11 07:41)
[22] 初めての中ボス戦[セノ](2015/06/10 19:42)
[23] 勇者の死闘編[セノ](2017/02/11 07:48)
[24] 初めてのホーム編[セノ](2017/02/11 07:59)
[25] 初めての商談編 その1[セノ](2017/02/07 19:47)
[26] 初めての商談編 その2[セノ](2017/02/10 03:29)
[27] 勇者の過去編[セノ](2017/02/12 11:17)
[28] 初めての回想編 その1[セノ](2017/03/07 12:41)
[29] 初めての回想編 その2[セノ](2017/02/16 20:29)
[30] 初めての回想編 その3[セノ](2017/03/17 10:07)
[31] 初めての回想編 その4[セノ](2017/02/21 19:22)
[32] 初めての語らい編[セノ](2021/12/29 00:28)
[34] 本音[セノ](2021/12/29 23:58)
[35] 重責[セノ](2022/01/30 15:11)
[36] 断章『疑念』[セノ](2022/02/23 19:49)
[37] 虚勢と本願[セノ](2022/03/08 15:32)
[38] 第一の分岐点[セノ](2023/08/23 21:10)
[39] 波乱の式場[セノ](2023/10/01 18:06)
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[40808] 初めての労働(異世界)編
Name: セノ◆b8ad171c ID:7a9d3c66 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/01/14 13:32
勇者達の探索という名の押し込み強盗を説得してから数時間後。
俺は町の酒場で目まぐるしく動き回っていた。
先の発言の責任を取るべく、臨時店員募集の張り紙を付けたこの店に申し出で、早くも有言実行という訳だ。
俺達が宿にチェックインする際、勇者はこの町には二、三日滞在する予定だと言っていたから、その間に働けば少しは借金もとい俺の復活代金の足しにはなるだろう。
今、店を切り盛りしているのは三人。
お髭がダンディーで筋骨隆々な店主であるマスターと、看板娘でありマスターの一人娘でもある中学生位の女の子。そして俺である。
規模こそ小さな酒場だが、行商が盛んな町にある為か客入りは多いようで、さっきからお客さんの注文を聞いては厨房の手伝い、配膳、僅かな時間の合間に皿洗いと息をつく暇もなかった。
大学時代に居酒屋のバイトを経験してなけりゃとっくに心が折れてたかもしれない。年末年始のシーズンといい勝負だ。
しかしなんというか、やはり働くってのはいいな。自分が人の役に立ててるっていう実感は、純粋に励みになる。最近ロクな目に遭ってなかったせいもあるが。
でもまあ、戦闘と違って怖い思いも痛い思いもしなくていいのが有難い。安全ってホント素晴らしい。
そんなギャップも相まってか、俺が久方ぶりに労働の素晴らしさを実感していると、客席から一際大きな怒号とテーブルをひっくり返すような音が聞こえた。

客A「なんだテメエ!? やんのか!? あぁ!?」

客B「上等だコラ! ここで白黒つけてやらあ!!」

恐る恐る様子を伺うと、どうやら冒険者らしき客が二人、喧嘩になっているようだ。
胸倉を掴み合う男達の足元には、賭け事にでも使っていたのだろうカードが散らばっていた。
あー、もう。ホッとした矢先にこれだよもう。勘弁してくれねえかなあ・・・。
周りのお客さん達は止めるどころか、どんどん囃し立てて煽ってるし。

マスター「やれやれ。仕方ない、ちょっと止めてくるか」

こういう事態には慣れているのか、マスターは料理をしていた手を休めて溜息を吐いた。

俺「あ、俺が行ってきますよ。注文も立て込んでるし、マスターは残りの料理お願いします」

料理はマスターか看板娘ちゃんしか作れないし、ここは俺が行くしかないだろう。

マスター「おや、そうかい? 大丈夫か?」

俺「ええ、まあ。とりあえずなだめてきます」

皿を洗っていた手を布巾で拭うと、俺は揉めている二人に近づいていった。
居酒屋なんかでバイトしてると、こういう客をあしらうこともたまにあった。
その時の要領でやれば問題ないだろ、多分。

俺「まあまあ、お客さん。とりあえず座って座って」

蹴倒されたイスを起こして促す。
こういう時、立ったまま話をしようとすると、いつまた掴み合いになるかわからない。
なるべく落ち着いた体勢に戻してからテーブルを挟んで一段落させて、水でも飲ませてお帰り頂くのが賢明だろう。

客A「うるせえ小僧! 口出しすんな!」

客B「こりゃ俺達の問題なんだ! 引っ込んでな!」


悪漢A、Bが現れた!


えっ、なにこれ戦闘開始なの?
マジでか。話しかけただけなのに? しかもまだ何も聞いてないよ?
ちょっと待ってよどうなってんのさ。イス起こしただけだぜ俺。
あと悪漢A、Bてなんだ。ただの酔っぱらった客じゃなかったのかよ。
しかも二人とも剣抜いてる剣。
居酒屋の時でも酔っぱらって別の剣抜いてブラブラさせてるヤツはいたけど、こっちのは比喩表現抜きでモノホンの剣だ。
いかん、突然の事態に混乱して下ネタのようなことを言ってしまった。
そんな場合じゃない、落ち着け。誰か男の人呼んでー。
助けを求めて視線を巡らせてみても、周りの男の人(客)は皆『盛り上がってまいりました』みたいに煽るだけで役に立ちそうもない。
ヤバい、このまま俺が二人にヤラれて教会で復活&借金プラスの運命しか見えない。
いや命の危機に瀕してるって時にお金の心配をするってのもアレだが、どうせ生き返るんだろうしさ・・・。
ハッ・・・! いかん、もう大分この世界に毒されてる感じがしたぞ今・・・!

???「困ってるみたいじゃないか。助太刀するぜ、<俺>!」

店の扉が勢いよく開くと同時に聞き覚えのある声がした。
ま、まさかこの声は・・・!

魔法使い「まったく、様子を見に来てあげたら何やってんのよアンタは」

シスター「<俺>さん、お怪我はありませんか?」

俺「み、みんな・・・!」

ヤバい、どうしよう。
今ちょっと本気でこいつ等に感動した。
あまりにタイミングが良すぎて「もしかして外で様子を伺ってたのかな」なんて感じたが、細かい疑問はこの際気にしないことにする。

悪漢A「なんだこいつ等は?」

悪漢B「めんどくせえ、コイツと一緒にやっちまえ!」

そして仲違いをしていたはずのこいつ等も、いつの間にか結託して襲い掛かってくるようだが、それも気にしないことにする。『客』が『悪漢』になってることも含めてな。

勇者「やれやれ、俺達のことを知らないとはな」

魔法使い「フン、酒場のゴロツキ風情が随分と勇敢なことね」

シスター「どうやら、この方達には少々お仕置きが必要なようですね・・・」

それぞれが何かカッコいいこと言ってるので俺も何かそれっぽいことを言おうとしたが、思い浮かばなかったので結局断念した。
今度予め考えておこう。

勇者「よし、みんないくぞ!」

勢いよく剣を抜き放った勇者が、戦闘開始の合図を告げる。


そして戦闘開始より2ターン後。
俺達全員のHPは一桁になり、PTは全滅の危機に晒されていた。

俺「なにこれ!? 登場まではカッコ良かったのになんでいきなり全滅寸前なの!?」

唯一無傷で元からHP一桁の俺は、頼もしさ一転の有様に思わずそう言わざるを得ない。

勇者「くっ・・・なんて強さなんだ・・・!」

魔法使い「まさか・・・この私の魔法が効かないなんて・・・」

シスター「ここで私達が倒れたら・・・この世界は・・・」

俺「そういう台詞はもっと終盤のそれっぽいトコで使えよ! ここまだ二つ目の町の酒場だよ!?」

膝をついて肩で息をしている三人に、思わず俺はそうツッコんでいた。

勇者「そうは言うがな・・・こいつ等多分、レベル10以上はあるぞ・・・」

俺「マジで!? でもこんなチンピラ風の相手に四人がかりでボロボロにされちゃ、勇・・・い、いやこのPTとしてどうかと思うぜ!? 何の役に立ててない分際で言うのも申し訳ないんだけどさ!!」

ここで勇者一行と口に出来なかったのは、世間に対する目を気にしてのことである。


悪漢A「へっ、口ほどにもねえ連中だな」

悪漢B「ん? よく見りゃ中々いい女連れてるじゃねえか。こりゃ儲けもんだぜ」

ああ、あかん。あかんあかんあかん。
このまま行きゃ全滅どころか俺と勇者以外『くっ!殺せ!』的な展開になること間違い無い。相手はオークでもないのに。

俺「くそっ! いくら冴えない人生っつってもこんなつまらん奴等に殺されてたまるか!あ、 つーか忘れかけてたけど俺のターンじゃん! そういえば薬草は!? こんな時に俺でも唯一役に立てそうな回復アイテムとかは!?」

勇者「宿に・・・置いてきたままだ・・・」

俺「持ち歩けよ!! 変なとこリアル仕様にすんのヤメロって言ってんだろ!?」

魔法使い「リ、リアル仕様って何よ・・・荷物だって重いんだから・・・仕方ないじゃない・・・」

俺「ああ、くそっ! なんか間違ってるのに間違ってないから何も言えない!!」

絶望して頭を抱える俺の肩に、逞しい手がポンと置かれた。
振り返ると、そこには相変わらずダンディーな髭に筋骨隆々なマスターの姿が。

俺「マ、マスター・・・」

マスター「彼等が時間を稼いでくれた間に、注文されていた料理も仕上がってね。さあ、ここからは従業員である我々が頑張ろうじゃないか」

俺「えっ」

まさか俺はこのまま連戦なのか。いやダメージも喰らってないし動けるっちゃ全然動けるんだけど、ある意味全く動けませんぜ?
それに仮にも勇者PTが手足も出なかった相手に、いくら見た目が逞しくて屈強そうなマスターが戦うって言っても・・・。

看板娘「わ、私も手伝います!」

さっきまでトレイを胸に抱いて震えていたマスターの一人娘である看板娘ちゃんも申し出てきた。
まずい。こうなったら俺とマスターだけで何とか時間を稼いで、勇者達や看板娘ちゃんを逃がすしかない。
そして誰か男の人を呼んできてもらう以外助かる道が・・・!

マスター「ふんっ!」

嘲笑を浮かべる悪漢達の元へ一歩進み出たマスターが、両腕を持ち上げてボディービルダーのようなポージングをした瞬間、ただでさえ窮屈そうだったマスターのシャツが盛大な音を立てて千切れ飛んだ。
こ、これ・・・ラピ〇タで見たアレだ・・・!
マスターのパフォーマンス(?)に圧巻される俺。
周囲の客席の野次馬達からは感嘆と称賛の雄叫びが上がっている。

悪漢A「へっ、何人来ようが同じことよ!」

悪漢B「相手になってやるぜ!」

今思ったんだけどこいつ等も結構ノリがいい性格してるかもしれない。


悪漢A、Bが現れた!

マスター「さあ、相手になろうか」

マスターの仁王立ち。マスターは立ちはだかった。

悪漢A「くらえっ!」

悪漢Aの攻撃。マスターに3のダメージ。

あ、これマスター強いわ。
さっきの戦闘で勇者に一撃で20近くのダメージ与えてた悪漢Aの剣戟を真面に受けたのに、たったの3しか喰らってない。
しかも俺と看板娘ちゃんに攻撃がいかないように庇ってくれてる。俺が女だったら惚れてるわこれ。

悪漢B「くたばっちまいな!」
悪漢Bのスラッシュ。マスターに5のダメージ。

悪漢Bの必殺技っぽい攻撃にも全く動じていない。
この人レベル幾つなんだ一体。

看板娘「おとうさん、<俺>さん、頑張って!」

看板娘のエール。
マスターの攻撃力が格段に上がった。防御力が格段に上がった。素早さが飛躍的に上がった。
マスターのHPが全快した。
俺の攻撃力がかなり上がった。防御力がかなり上がった。素早さがかなり上がった。
俺のHPが278回復した。

やだ、なにこの娘。なにこれ凄い。
俺とマスターの効き目で差があるのは、恐らく愛娘に応援されたという点の違いなんだろうが、それでもこの効果と効き方はあり得ないだろ。
嘘みたいに力が漲ってくるし、体が軽い。

マスター「ぬおりゃああああああッ!!」
マスターの鉄拳。悪漢Aに216のダメージ。悪漢Aは倒れた。

倒れたっていうより人形みたいに吹き飛びましたけど。
つーかなんだ今の攻撃は。今まで勇者達が出してたダメージが遊びみたいに思えてくる数値じゃないか。
これだけの光景を目の当たりにして、よく逃げ出さねえな悪漢Bも。ある意味すげえよ。

そしてどうやら看板娘ちゃんのエールによって素早さが上がった為、今度は俺のターンらしい。
さてどうしたものか。さっきの戦闘でも気付いてはいたんだが、今俺は武器を装備していない。
とりあえず攻撃力も上がっているようだが、ゼリーに武器有りで6しかダメージを与えられない俺が殴った所で、あの悪漢Bを倒せるんだろうか。
しかしこうなっては、もうやるしかない。

俺「くらえっ!」

俺の攻撃。悪漢Bに78のダメージ。悪漢Bを倒した。
PTにそれぞれ107の経験値が入った。

すげえよ何これ。
腰の引けた見よう見真似のパンチで、マスター程じゃないけど悪漢Bが吹っ飛んだ。
看板娘ちゃんのエールのお蔭だって分かっちゃいるが、まさか俺が敵を倒せる日がくるとは思わなんだ。ちょっと純粋に感動してしまっている。
というより何者なんだよこの二人は。もうこの二人で魔王倒して世界救えばいいじゃないのさ。
野次馬達の拍手喝采に包まれながらポーズを決めるマスター、そして恥ずかしそうにお辞儀をする看板娘ちゃんを見て、俺は心の底からそう思った。


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