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No.40724の一覧
[0] Fate stay night 〜Let's Rock~[カトラス](2015/07/10 23:37)
[1] 第一話[カトラス](2014/11/23 15:29)
[2] 第二話[カトラス](2014/12/01 00:06)
[3] 第三話[カトラス](2014/12/07 20:51)
[4] 第四話[カトラス](2014/12/14 01:15)
[5] 第五話[カトラス](2015/01/11 23:10)
[6] 第六話[カトラス](2015/02/01 22:07)
[7] 第七話[カトラス](2015/02/21 22:01)
[10] 第八話[カトラス](2015/03/26 02:58)
[11] 第九話[カトラス](2015/03/26 02:59)
[12] 第十話[カトラス](2015/06/01 09:21)
[13] 第十一話[カトラス](2015/06/29 22:45)
[14] 第十二話[カトラス](2015/07/10 23:30)
[15] 第十三話[カトラス](2015/07/23 22:39)
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[40724] 第二話
Name: カトラス◆cdce3c41 ID:300702e8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/12/01 00:06

 既に日は暮れていた。遠坂邸まで行き、さらにその帰り道。学校から帰るには遅すぎる時間となってしまった。「ただいま」誰にでもなくそう告げ、シロウが衛宮邸の門をくぐった時には、時計の短針はは8を示そうかとしていた。
 家に帰ると予想通り、セイバーからの呼び出しがあった。招かれたのは道場。その端にセイバーは目を閉じ、正坐していた。ただ座っているだけだというのに、その気品に押されそうになる。
「あの、ただいま、セイバー」
 気遅れ気味にそう声をかけた。
「シロウ、夕方までには帰るという約束だった筈ですが?」
 セイバーがゆっくりと瞼を開ける。正直に言って視線が痛い。自分の身を案じているのが半分、攻めているのが半分といったところか。それでもその前にするべきことがあった。
「セイバー、お叱りはあとでいくらでも受ける。だが、その前に今日の件について話をさせてくれないか?」
 そう切り出したシロウをそれでも頭ごなしに否定するセイバーではなかった。
「まず、ライダーのサーヴァントに出くわした」
「………ッ‼‼なんてこと!?」
 セイバーの反応は早かった。今にも掴みかかろうとする姿勢にさらに身が強張る。
「あとは、遠坂と共闘関係を結ぶことになった」
 だからそうなる前に一気に捲し立てた。その一言で、セイバーはシロウがどう生き残ったかを正確に理解した。
「今回ばかりは凛とアーチャーに感謝するしかなさそうですね」
 姿勢を正したセイバーはそう口にした。
「桜には明日から家に泊まってもらうことにした。町は今いろいろと物騒だし」
「ええ、賢明な判断だと思います。今後の展開次第では此処も安全の保障は怪しいですが、私の目の届く範囲にいるというのは守るうえで有り難い」
 セイバーの返答にシロウの方も頷き返す。
「それと……もう一つ。俺に剣を教えてほしい。闘う術が俺にも欲しい」
 その言葉に今度はセイバーが深く頷く。その顔には騎士としての誇りと、良き弟子を持つ師の笑みで満ちていた。

 衛宮邸と同じようなやり取りが遠坂邸でも行われていた。遠坂邸の一室。木製の椅子の背もたれを前にして座るのは凜。良く沈むソファに深々と腰かけたのはアーチャーだ。
「私に帰れと命じたのは君のはずだが?
 結論から言えば、また君は三画しかない令呪を無駄にしたということになるのだが」
 アーチャーの口から出る尤もな意見に凜は目を逸らすしかない。シロウにあれだけサーヴァントを連れ歩かないことの愚かしさを説いておきながら、自分が全く同じ、あるいはそれ以上の失点を犯したのだ。無理もない。これではどちらが半人前のマスターか分からない。そんな様子から反省と後悔を感じ取ったアーチャーがこの話題では先に折れた。
「まあ、起きてしまったことは仕方ない。今後の方針について考えていこう。
 あのマスターはともかく、セイバーと共闘関係を結べたのは大きい。対バーサーカーもそうだがこれからはライダーにも気を配る必要がありそうだ」
 アーチャーの方から話を逸らした効果は覿面だった。凜は一瞬、驚いた表情を浮かべた後、直ぐに神妙な顔つきになった。彼女の頭を回転させているときの顔だ。
「そうね。あのライダー。騎乗兵にしては芸が多すぎるのよ」
 それに関してはアーチャーも全く同意するところだ。銃の扱い、剣の扱い。そのどれもが一流レベル。そして_____
「なんと言ってもあの宝具は強力だ。だが、こうも容易く宝具を晒すとなると第二、第三の宝具の存在も疑わねばなるまい」
「そうね。此方の宝具は見せてしまったわけだし………て、あれ?」
 考える仕草をしていた凜が急に表情を変える。拙い。アーチャーは思わず唸っていた。先ほど責められていた時とも違う。これはいつもの不満をぶつけるときに見せる不機嫌な表情(かお)だ。
「アーチャー!あなた、自分の真名が思い出せなくて宝具が使えないって言ってなかったかしら?
今日のあれは何?宝具ではないの?
あなた、まだ私に隠し事してない?」
アーチャーは一気に捲し立て上げられ、辟易といった表情を浮かべた。それはこの一瞬で彼の中のこの件についての言い訳が完成した表れでもあった。
「記憶についてはまだ何も。あの宝具を防ぎたい。そう思った時、体が勝手に宝具を発動していたに過ぎない。
 大体、凜。君が不完全な召喚をしたからこうなっているんだ。疑いが残るなら令呪でも使って調べてみてはどうかな?」
 返す言葉は言葉通りのカウンター。残り一画しかない令呪を。そう言外に告げられたのを凜は正確に読み取っていた。これ以上、この流れで会話を続ければ藪蛇であることに違いはない。そう考えた凜は矛を収めた。

 そして、口論するサーヴァントとマスターは実はもう一組いた。また、時を同じくして間桐邸。苛立ちを隠せないのはマスターである慎二。素知らぬ顔でくつろいでいるのがサーヴァント・ライダーであるダンテだった。
「おい!! 僕は魔力の収集を命じた筈だぞ!!
 それをお前は……魔力を補充できなかったどころか、宝具を使ったあ?
 ふざけるのも大概にしろよ‼‼‼‼‼」
「だから、大丈夫だと言ってるだろ?
 現に、今俺もマスターもピンピンしてる。魔力を他から補うのは“失敗してしまった”が、俺にだって得手不得手があるんだ。そう怒らないでくれ」
 両手を芝居がかった様子で天井に向け、盛大に肩を竦めて見せたダンテに、慎二は苛立ちを募らせる。
「ああ、もう‼‼ あんな女が呼び出したサーヴァントがまともな筈は無かったか……ッ!!
いざとなれば僕には令呪があるんだ。それを忘れるな‼‼」
 半ば吐き捨てるようにそう残し、慎二は部屋を去って行った。その後姿を見送り、ダンテはもう一度肩を竦めた。部屋に備え付けられたソファに体重を預ける。天を仰ぐようにしてのけぞり、手元にあった雑誌を適当なページで開き顔に乗せた。
 魔力を他者から奪う結界。決してダンテは作れないわけではない。だが、それを使いたくたくはなかった。人間を守りたいなどという高尚な思念が自分にあるとは微塵も思っていない。だが、自分たちサーヴァントの戦いに一般人が巻き込まれるのはできるだけ避けたかった。もっと言えば、ダンテはマスターですら殺す気はない。マスターは魔術師とはいえ人間だ。人間の仲裁は仕事の内だが、生憎と人間の排除は専門外だった。
「あの………?」
 控えめな女性の声が入室の許可を求めるものだということはすぐに分かった。彼女がその場に立っていたのはざっと20秒ほどか。そのまま立ち去るつもりなのかとも考えたが、此方に声をかける決心はついたようだ。
「どうぞ開いてるよ、お嬢さん」
 応えるとドアが静かに開いた。その隙間から覗いたのは桜だった。制服に身を包んだまま。衛宮邸の家からの帰りだった。実は、二人の仲が特別悪いということはない。普段あまり関わり合いは無いが、同じ家で暮らすともあればどうしても顔を合わせる機会はできる。それがたった数日で、桜が家に帰るのは衛宮邸で食事を終えた後だったとしても、だ。もっともそこはダンテが霊体化すればよい話で、それを嫌がるダンテに原因があるとも言えなくはないが。そんな理由から、話をすることも今日が初めてではない。見知らぬ家で暮らすことになったダンテを気遣うのは桜にとっては、常識というか当たり前の内だった。そんな桜の人柄をダンテも気に入っている。だから桜の事もまた、マスターと呼んでいた。
「兄さんの怒鳴り声が聞こえて」
 一方の桜の方は、召喚の後に取ってしまった態度を少なからず悔いていた。祖父の前、しかも場所が場所だったとはいえ、初対面で半ば無視するような対応をとってしまったのは礼に欠けていた。そんな負い目からか桜の様子は、恐る恐るというよりも、此方の気怠そうな様子を気遣っての躊躇いがちだった。
「サーヴァントである俺を気遣ってくれるのかい?」
「………私にも原因の一端はあるので………………
 兄さんも悪い人ではないんです。ただ、少し苛立っているというか………」
 尻すぼみになる桜の声にダンテは確信していた。どこかの街で会った悪趣味な天使とは違う。人が天使と呼ぶのはきっと正にこういった人間だろう。なにしろダンテが共に過ごしてきた女性を思い浮かべれば、どうにも気が強い女ばかりだ。名前を思い出す範囲で、桜のような女性は………と考え、だが頭に浮かんだのは一人の男の顔。そう言えばフォルトゥナで出会ったあの青年の彼女がそんな女性だった気がする。
「おいおい、俺にも少しは女運が回ってきたか……?」
 小さくつぶやいたダンテに桜は首を傾げた。だがそれが独り言にすぎないことを悟ると、直ぐに元の要件を持ち出した。
「あの、明日から先輩の家に泊めて頂くことになりました。それで、兄さんの事、よろしくお願いします」
 この時ダンテは今日一番の残念な顔を見せた。やはり自分の女運は悪いらしい。これであのマスターを守ることになってしまった。まったく厄介なことばかり押し付けられるものだ。そんな様子のダンテに桜が表情を曇らせる。「お、その顔も美人だな」ダンテが抱いたのは、そんな感情だった。別に慎二を守ることに抵抗は無い。彼もダンテの巻き込みたくないと思っている人間の一人には違いない。
「まあ、そんな顔をするな。桜の兄貴は任せときな。お互い、やんちゃな兄を持つと苦労するな」
 慎二と自身の兄を比べたとあっては、あの兄は黙っていないだろうが今この場にバージルはいない。笑って見せたダンテに桜も少し困った笑みを返した。ダンテはそれに満足したように口元に笑みを残したまま視線を斜め下に逸らし鼻をならした。
「………?ライダー?
 どうかしましたか?」
「いや、やっぱりマスターは笑ってる顔が良いと思うぜ」
 驚いたような困ったような表情を見せた桜は、小さく「ありがとうございます」と言うと、顔を俯けたまま部屋を後にした。

◇◇◇

 日は傾き、校庭に生徒の姿は消えていた。低くなった陽射しは教室の中にも差し込み、薄い紅に染めている。次の日の放課後。シロウと凛は教室に残っていた。周りにも人影は無い。相次ぐ事件に生徒たちは下校済み。全校のいたるところに記された呪刻。それをシロウが見つけ、凛が無効化する。そんな作業を小一時間ほどした後だった。そろそろ桜が泊まりんお準備を終えて衛宮邸に来る時間だ。彼女が早く来て夕飯の準備をしようと考えていたのなら、すでに家にいてもおかしくない。つまり、込み入った話をするのに衛宮邸は都合が悪い。ならば下校前に話を終えてしまおうということになったのだ。主な議題は今後の方針だった。すなわち、どのマスターとサーヴァントが判明しているのか、また、どの組を狙うのか。
「さて、私の考えだとライダーはひとまず無視してもいいと思うの」
 そう切り出したのは凛の方だった。その理由は二つ。一つは昨日の戦闘でのライダーの様子。アーチャーが仕掛けなければライダーはその場を後にしていたようにも思われる。積極的に此方を狙っているという雰囲気はなかった。そして、もう一つが____
「やっぱり、そんなに不自然だったのか、あの呪刻は?」
 先ほどまで散々校内を歩き回って虱潰しにした呪刻、いや“呪刻もどき”のことだった。
「衛宮君に分からないのも無理はないわ。
 あんなものに魔力を奪い取る力はない。そう断言できるわ。衛宮君にも分かるように言うなら、そう、絵を描いただけという感じだわ」
 凛がそう断言できるほどにお粗末な呪刻だった。それどころか凛の知らない印ではなく、放って置いても平気だと断言できるように配慮したとでもいうべきモノだった。
「そういや昨日ライダー、マスターの機嫌取りみたいなこと言ってなかったか?」
 シロウの一言に凛はハッとしたように顔を上げた。もしもライダー自身に本当に闘う意思がなく、だが、マスターには学校中の生徒を巻き込んででも闘おうという意図があったとすれば。マスターは魔力を集めろと指示を出したとすれば。
「もしそうなら、マスターはあの呪刻を見て魔力を集められると勘違いしていた?なら、マスターは魔術の知識が無い」
 論理が組みあがる。そして辿り着く仮説。マスターであり、学校に自由に出入りでき、魔術の知識はほとんど無い。しかし、魔術の家計にあり、マスターとなりえる人間。この街の魔術師の家計を考えれば、それすなわち、間桐家の人間である可能性が高い。つまり、もっとも疑わしいのは二人の兄妹、いや、男女。
 此処に至り、凛には一つの迷いが生まれていた。シロウにこの仮説を知らせるべきか否か。もしかしたらただの思い過ごしかもしれない。その可能性も高い。なら、不要な心配を負わせるだけではないかと。
「…遠坂……?」
 シロウが小さく凛の名を呼ぶ。

だが、凛が返答を返す前にこの議題は終わりを迎えた。
「やあやあ、お二人さん。秘密の会議?僕も混ぜてよ。なあ、遠坂、衛宮ぁ?」
 凛とシロウ。二人の視線が教室の入り口にくぎ付けになった。そこには、口元に笑みを浮かべ扉にもたれ掛るように手をかけた慎二の姿があった。







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