アルカディアよ私は、帰ってきた!!
PXIVで連載を続けたものを再びここに掲載することにしました。
3月8日からダンボールなのはAAsの連載を始めました。
序章 始まりの鳴動
西暦2045年、第97管理外世界「地球」の極東に位置する日本、この世界は誰も知らない2つの危機に曝された。
1つは、願いを叶えると言われた古代の遺産、通称ロストギア「ジュエル・シード」を巡り、2人の少女が争った「PT事件」。
もう1つは、禁断の魔導書を巡って引き起こされた「闇の書事件」。
この2つの戦いで、高町なのは、フェイト・T・ハオラウン、そして八神はやてとその家族である守護騎士たちは、掛け替えのないものを失いながらも、友情を結び、強き絆を手に入れた。
その闇の書事件から数ヶ月が過ぎ、世界の物流を震撼させる発明が、産声を上げた!
西暦2046年、「強化段ボール」が発明され、世界中の物流は革新的な進歩を遂げた。
内外からのあらゆる衝撃を80%吸収し、無に等しくしてしまう、革命的な「未来の箱」は、それまでの輸送手段の常識を、大きく覆したのだった。
しかし、その箱はまったく違った目的で使われることになる。
ストリートで繰り広げられる子供たちの熱い戦い、ホビー用小型ロボット「LBX」を操る彼らの戦場は、段ボールの中へと移っていった。
その箱の中と言う四角い戦場で戦う小さな戦士たち、人は彼らを「ダンボール戦機」と呼んだ!!
西暦2049年、中国の街プカンにあるフェニックスドーム、そこではLBX世界一を決める大会・「アルテミス」、その決勝戦が行われていた。
「さぁーっ、LBX世界大会・アルテミス・ファイナルステージもいよいよ大詰め! 現在勝ち残っているのは、この2人だ!」
と、大会MCがオーロラビジョンを指さすと、現在戦っている2人が表示された。
1人は、伝説のプレイヤー「レックス」の通り名を持つ檜山蓮、もう1人は、なのはの兄にして、地上最強と呼ばれ優勝候補にその名を連ねた高町恭也、2人は互いに一歩も譲らない戦いを繰り広げていた。
レックスのLBXは恐竜をモチーフにしたサラマンダーのレックス専用機「Gレックス」だ。
サラマンダーはデザインに人気があるが、ブロウラーフレーム故に動きが遅く、武装もナックル系と言う扱いが難しい機体である。
Gレックスは、そんな扱いが難しい機体をさらにチューンナップしたレックス専用のじゃじゃ馬だ。
恭也は御神の剣士故か、女性忍者型LBX「クノイチ」を使用している。
このLBXはストライダーフレーム特有の高速戦闘を得意としているため、恭也との相性は合っている。
彼専用機は黒く塗装され、武器もミコトノコダチを装備している、これは恭也が短剣の二刀流故の選択と言えるだろう。
「いくぞ、レックス。」
恭也は、冷静だった。
「ああ、かかってこい!!」
蓮は自信ありげに彼の挑戦を受けた。
しばしの沈黙が流れ、そして!!
「参る!」
恭也がクノイチを発進させた。
戦場である火山遺跡の溶岩が流れているところを避けながら、クノイチが高速で右側からGレックスに迫る!
「甘い!」
連はGレックスにCCMに回避行動を入力する。
それに答えるかのごとく、Gレックスはクノイチの攻撃を左ステップで回避する。
そして、反撃とばかりにGレックスが、隙を見せたクノイチに右ストレートをお見舞いする。
Gレックスの攻撃がクリーンヒットし、クノイチのLPは、3分の2に減った。
(これが、伝説のプレイヤー・レックスの実力か・・・・・・・。)
現在の戦況 クノイチLP1500 Gレックス LP2000
明らかに蓮が有利かと誰もが思った。
しかし、1部の人間は恭也が勝つと信じている。
「これならどうだ!!」
恭也が叫ぶと、クノイチはショットガンSG3を両手に持ち、そのまま正面からGレックスに接近、至近距離で2丁同時に散弾を放った。
ショットガンは、至近距離で打ち込むと相手LBXを吹き飛ばす事が出来る。
これにより、クノイチLP1500 GレックスLP1903となった。
「おーっと! 恭也選手のクノイチが、土壇場でショットガンでGレックスを吹き飛ばしたぁーっ!!」
MCが実況する中、蓮は少し動揺した。
「まだまだ!」
恭也が叫ぶとおり、反撃はこれだけではなかった。
「必殺ファンクション!」
[アタック・ファンクション、ライズ・ショット!!]
すると、クノイチが空中にいるGレックスに接近、2丁のショットガンSG3で猛連射を撃ち込む、これが片手銃の近接攻撃!
「撃ち抜け、ライズ・ショット!」
この一撃でGレックスのLPは1657となり、そのままダウン状態になった。
レックスは、恭也の怒濤の反撃に少し驚きを隠せなかった。
「さすがだな、高町恭也。 最強の剣士は伊達ではないようだな。」
と、恭也の実力をレックスは賞賛した。
それだけに、レックスは彼の潜在能力は計り知れないと悟っているのだ。
「こちらも、必殺ファンクションで行かせてもらう!」
[アタック・ファンクション、ガトリング・バレット!!]
すると、起きあがったGレックスが突然、クノイチに接近し、拳の連打をたたき込む、これぞナックル系の醍醐味とも言える必殺ファンクション!
「砕け散れ! ガトリング・バレット!」
最後の一撃が決まるその時、恭也はとっさの操作で、クノイチは回避し、大ダメージを免れたが、LPは1090に減ってしまった。
「なんとぉーっ! クノイチ、Gレックスの必殺ファンクションのフルヒットは免れたが、思わぬ大ダメージを受けてしまった!! これは、ピンチだぁーっ!!!」
確かに、これは危機的な状況だ。
恭也のクノイチは先ほどのガトリング・バレットを受けた影響か、関節などの駆動系に深刻なダメージを負っている。
しかし、恭也は至って冷静だった。
その表情は、何か秘策を持っているかのようだ。
「これで、終わらせる!」
蓮は、Gレックスを動かし、クノイチに迫る、その時だった。
「かかったな。」
「何!?」
蓮は叫ぶも、すでに遅かった。
Gレックスが地面を踏んだ途端、途轍もない量の爆発が巻き起こった。
実は、この時のために恭也がクノイチにグレネード系や地雷系(アンリミテッド限定を除く)を大量に装備させ、遺跡の小屋中に仕掛けていたのだった。
一つでは心許なかったが、これだけの量を仕掛けていれば、かなりの大ダメージは期待できた。
この恭也の奇策によって、GレックスのLPは一気に909にまで減っていった。
「おーっとぉ! これはまさに大逆転! 恭也選手、爆発系のアイテムの大量使用で、レックスに一泡吹かせました!!」
突然の逆転劇に、観衆は一気に歓声の嵐を巻き起こした。
「まさか、ここまで策を練っていたのか・・・・・・・・・・。」
蓮は意外な策に計られて苦笑した。
「レックス、あなたに敬意を払い、この技で倒す。」
恭也は、クノイチの武器をミコトノコダチに持ち変え、その技を発動させる。
[アタック・ファンクション、蒼拳乱撃!]
すると、クノイチが天高く飛び上がり、ミコトノコダチを持っている両手にエネルギーを収束させる、これぞ拳でそれを打ち出すナックル系必殺ファンクションの最高峰!
「これで終わらせる、蒼拳乱撃!」
Gレックスは駆動系が先ほどの地雷源で受けたダメージのせいか、身動きがとれていなかった。
上空からエネルギーの塊がGレックスに命中し、そのまま倒れてブレイク・オーバーとなった。
「Gレックス、ブレイク・オーバー!! 第2回LBX世界大会アルテミス優勝は、地上最強の剣士、高町恭也! あの伝説のプレイヤー・レックスを、見事な逆転で下しましたぁーっ!!!!!!!!」
この瞬間、この場にいた観客たちは、大歓声と、拍手の嵐、そして恭也コールがフェニックスドーム全体に響きわたった。
「俺の負けだ。 そして、優勝おめでとう。」
蓮は、自分を下した恭也を称えた。
「あなたも、いいバトルをさせて貰いました。 本当に感謝しています。」
と、恭也は連に手をさしのべる。
「ああ。 来年は俺が勝つ!」
連は次回大会での再戦を希望した。
「もちろん、受けてたちます!!」
恭也もそれを望んでいた。
こうして、2人は固く握手した。
この光景に、会場にいた者たちは、熱い声援を送った。
「見事、優勝した高町選手には、賞金10万クレジットと、世界最大の電力容量を誇るクリスター・イングラム社製のバッテリー・ボルテックス909が、送られます!!」
表彰式が盛大に行われ、恭也は、LBXの世界チャンピオンの仲間入りを果たした。
その様子を、ウミナリシティ・フジミタウンの家でTV中継で見ていたなのはは、兄が優勝したことで、自分もLBXをやりたい気持ちを抑えきれなかった。
そして、父・士郎に、
「お父さん! 私、LBXが欲しい!!」
自らの思いを打ち明けた。
「なのは!?」
士郎は少し動揺した。
愛娘が突然LBXを欲しがっている、父親としては驚くのも、無理もないと言うことだ。
「私もアルテミスに出場して、お兄ちゃんに勝ちたい!!」
どうやら、アルテミスで恭也に勝つと言う目標が、なのはに出来ていたようだ。
「・・・・・・・・・。」
士郎はしばらく黙っていたが、
「わかった。 そこまで言うなら仕方ない。」
なのはの熱意に負けたのか、LBXの購入を了承した。
「ただし、条件がある。」
「・・・・・・?」
どうやら、士郎はなのはに条件を出すつもりのようだ。
「おまえは、時空管理局の局員だ。 欲しい物は自分のお金で買いなさい。」
と、士郎は以前なのはが次元世界管理機構「時空管理局」に入った事を思い出し、彼女に自分の月収の一部で購入するよう促した。
「はい・・・・・。」
「それと、もう一つ。 無事に2年生になるまでは、買わない方がいいぞ。」
公務員と言えども、なのはは現在中学生。
現在のうちに購入したら勉強が疎かになってしまうのは、免れないだろう。
「うう………。」
なのはは、渋々士郎の条件を承諾した。
それまで我慢することも大切だ。
しかし、それから数ヵ月後、彼女たちは世界を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれることを知る由もなかった。
LBX、それは、誰もが作れる最高のホビー、誰でも出来る最高の遊びだった。
魔法、それは、次元の理を守る者たちの剣となり、盾となる力。
相容れない2つが交わる時、世界の希望の為の戦いが始まる。
これは、LBXが紡ぐ愛と勇気の御伽噺………。
リリカル戦機ダンボールなのは
この戦いは遊びではない、それは世界の希望と真実の為の………。