歪む視界
日に日に減り続ける食糧が
磨り減る精神が
呻き声が
私の心を蝕み続けるのだ
それでも生きたい
生きていたい
生きて行かなくてはならない理由がある
震える唇を手で押さえると乾燥しているのか血が滲んでいた
夢なら覚めてくれ。
これが現で無いのならば、それは果たしてそれは何であるのか
そもそも私たちの見る夢とは本当に夢なのか?
我々が夢と思っているモノこそが、現実世界だとしたら?
現実世界は夢の中を反映していたとしたら…
あぁ、私は夢を見ているのか
幼い頃に見た暖かな記憶
その温もりが皮膚を通して伝わってくる。
感覚が鋭敏になっていく
あの時の綿菓子の香り
人混みの気怠い熱気
私の手を引く大きな手が
まるで、夢ではない?
夢なのに感覚がある?
───────いや違う
これこそが現実だ。
そう思った瞬間だった
夢が現実に。
現実が夢に。
全てが逆転してゆく。
強い眠気を覚えた私は不意に目を閉じた。
次に目を覚ました時、私は驚愕をするのであった。
何に対して驚いたのかと言われると言葉に困る。
何故ならば
全てが驚きの対象になりうるからだ。
そう、私は夢の世界に入り込んだのだ。
いや、正確には現世と異なった現実の世界だ。
分かり難いとは思うが当の私にさえ良く分かっていない。
ただ確実に分かることと言えば、私が生きてきた記憶は、どうやら保持しているようだ。
更に、いつの間にか実家の自分の部屋に居ること。
そして、この世界は過去の自分が体験した世界に酷似したそれである───完全に同じではないが故に度々私の記憶と齟齬を起こすのだ。
しかし、変わらないこともあるようだ。
代表例は勉学などである。
これは私が習っていたものと同じように思える。
しかし、数学であれば公式そのものはあるが、それを生み出した人間が変わっているのだ。
まぁ、別段作成者が変わろうとも何の支障も無いのだが。
逆に変化が激しいもの、それは。
────人であった。
私の知っている有名人などは、この世界においては名前が違う。
その人だと断定出来るほど似ている人がこの世界には居て、やはりどこか違う。
完璧な複製ではない。
私が生きた過去と同じ方向へ進んではいない。
それだからこそ良い。
私は生きていたいのだ。
この世界は私への贈り物であろう。
私は随分と小さくなった自らの手を硬く握り締め、決心を新たにした。
もう一度、やり直す。
そして─────────────
『学校に遅れるぞ!!早く起きろ!』
この声の主は誰なのか、聞く限りは父のように聞こえるが…
私は一抹の不安を拭いきれずにいたが、とりあえずドアを開けて声の主のする居間へ向かった。
そこには、あまりにも懐かしい日々の記憶が内包されていた。
料理を慌ただしく並べる母。
テレビに夢中になっている父。
相変わらず寝起きが悪く寝癖が酷い姉。
全てが、あのときのままで。
私は不意に視界が滲んだ。
同時に肩が震えた。
初めまして、親愛なる家族
今はまだ見えない未来は。
私が過ごした未来は。
同じものにはさせない。
小さな希望を胸に抱いて。
私は生きていたい。
ふと思いつきで20分ほどで書きました。
雑文失礼致しました!
批評を頂けると大変嬉しいので、よろしくお願いしますm(_ _)m