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No.40616の一覧
[0] 【ネタ】凄惨なる天命への反逆(恋姫無双・一刀逆行&女体化)[妖刀華恋](2014/11/27 18:45)
[1] 1話 対等になるための一歩[妖刀華恋](2014/10/26 20:15)
[2] 2話 集う諸将と運命の転機[妖刀華恋](2014/12/21 23:43)
[3] 3話 情と謀[妖刀華恋](2014/11/26 07:00)
[4] 4話 果報者[妖刀華恋](2014/12/29 19:50)
[5] 5話 さらなる歪み[妖刀華恋](2015/01/01 00:08)
[6] 6話 急転[妖刀華恋](2015/01/24 17:35)
[7] 7話 躍進と外れ始めた定め[妖刀華恋](2015/06/24 07:47)
[8] 8話 蠢く野心 結ばれし絆[妖刀華恋](2015/06/25 21:05)
[9] 9話 連合同士の激突[妖刀華恋](2015/09/13 11:58)
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[40616] 【ネタ】凄惨なる天命への反逆(恋姫無双・一刀逆行&女体化)
Name: 妖刀華恋◆5f28cc58 ID:0ca87bc1 次を表示する
Date: 2014/11/27 18:45
序盤シリアス気味な恋姫†無双:逆行&女体化物。

序盤だけとはいえ恋姫キャラ死亡要素があったり
キャラが安定してなかったりします。

苦手と思う方はここでバック推奨です。

このSSはハーメルンのチラ裏にもマルチ投稿しています。



【外史】というものがある、それは一人の異分子によって様々な三国志の英雄がその生き方を変えていく歴史。

その異分子の人間の名を『北郷 一刀』【天の御使い】と呼ばれその知識を持って英雄たちを導いた、
時には仁君の桃園の誓いを見届け、彼女の目指す優しい世を創り出す手助けをしたり、
時には覇王の覇道を支えながらも時に覇王を一人の女性として居ることのできる居場所となり、
時には絆を重んじる王のために様々な奔走をしながら、遺志を汲み取り、成長していく。

だが・・・そんな外史の中にも、悲しい結末を辿ったものも少なくはなかった。

仁君が羽ばたくための両翼をもがれ、悲しみに暮れながらも憎しみを押し殺し病に倒れた蜀漢の皇帝、
尊敬する親、憧れていた姉、付き従ってくれた重臣たち、親しい物を次々と失い立ち直れなかった孫呉の王、
そして、巨大な大国を築き、三国の中で一大勢力となった曹魏の覇王もまた例外のない末路をたどる。

最初に起きた悲劇は袁紹との戦いに勝利し、北の烏丸の討伐中に張遼と行軍していた郭嘉が急死、
親友でもあった程昱と一刀は病に倒れた親友の床で泣き、覇王も悲しみに暮れた。

次に起きたのは赤壁の戦い、一刀は天の知識によって呉蜀の火計を警戒したが
乾坤一擲、敵将黄蓋の燃える船による特攻で船が炎上、更に吹かないはずの東南の風が
曹操軍を襲い、命からがら逃亡する曹操を援護するために殿となった典韋が討死にする。
逃走中に一刀に肩を貸されながら曹操は「郭嘉が生きていれば」と嘆いたそうだ。

相次ぐ曹操軍の主力の死に嘆く暇はなく、西涼の馬家が魏に侵攻、曹操は主力と共に迎撃するも
馬超との一騎打ちにて許褚が重症を負い、その傷が悪化しての病死、曹操の親衛隊が相次ぐ死に、
曹操は怒り狂い侵攻するが攻め滅ぼした馬家の主力は討ち漏らし、劉備が手に入れた蜀の軍と合流した。

更に休む暇もなく合肥が孫呉の侵略を受ける、張遼、李典、楽進の奮闘により呉軍を退けるも、
甘寧との戦いで楽進が討たれ、蜀が漢中に向かう報を聞くと呉軍と和議を結び軍を返すが時既に遅かった。

漢中は曹操の信頼する名将夏侯淵によって護られていた、しかし蜀軍の法正の知略により漢中は危機に陥り、
逆落しを仕掛けてきた蜀の弓神、黄忠との一騎打ちにより夏侯淵、討死。

更に追い打ちを掛けるように、曹操軍で最も曹操に頼りにされ、その知で幾度となく曹操を助けた
曹操軍の知恵袋、荀彧、病によりこの世を去る。

しかし悲劇は終わらなかった、劉備の義姉妹にて、曹操が最も欲した将、関羽が荊州に攻め寄せる、
曹操は夏侯惇、李典、張遼らを守勢に置き、自らも樊城守備のために軍を向ける、足取りは重かった、
そして荊州を占領する蜀に不満を寄せた呉が同盟を破棄し荊州に背後から攻め寄せ挟撃。

窮地に陥った関羽が籠城していた麦城から特攻、夏侯惇に一騎打ちを申し入れ、
夏侯惇が承諾、百合以上もの打ち合いの末、夏侯惇、関羽、両者相討ちとなる。

曹操軍を支えてきた数多の将が次々とこの世を去り、曹操は膝から崩れ落ち、一刀は茫然自失となってしまう、
やがて、曹操も病に倒れ、涙を流す一刀と程昱に看取られながら、覇道道半ばに曹操、許昌にて没する。

後を追うように程昱もこの世を去り、曹操軍を盛り立てて来た将達が次々と散っていった。

許昌の屋根の上で、たった独りとなった北郷一刀は自らの存在が薄くなるのを感じていた、
ああ、これが終わりかと朧けになった手を見る。

天の知識を持って、幾度と無く曹操軍を助けて、幾度と無く感謝された、だがこの有り様は何なのだ?
決められた絶対的な天命には逆らえないというのか、大切な者は救えなかったのか?

・・・ふざけるな。

この手で一体何ができた・・・?

この手で一体何を守れた・・・?

この手で一体何を変えた・・・?

「なにも、変えられて、ねえじゃねえかああぁぁァァァァァ・・・!!!!」

断末魔とも言える叫び声を上げて、北郷一刀も三国志から幻が消えるように去った。

その後結局三国はどの国にも勝ち切れず、英雄たちが去った後に中国大陸として統一された。





目を開ける、白い天井、命を計る機械の音、そのどれもが、あの国にないものだった。

(また・・・あの夢か。)

生命維持装置に繋がれ、余命いくばくもない一人の老人、彼こそ三国志の天の御使い、北郷一刀。
今日も多くの者が彼を心配して見舞いに来た。

三国志から現代に戻った後、無気力で何もする気が起きなかったが、ある日思い直して剣道を再開、
歴戦の勇将達と比べれば全国大会の腕も霞んで見えた、それぐらいの差があったのだろう。

数年後、彼は平成に舞い戻った剣聖の再来と言われ、世界でも有数の腕を持つ武道家となる。
だが、彼はそんな名声すら虚しく感じた。

(俺は、届かないのか?あいつらに・・・。)

どれほど己を苛め抜き鍛錬に身を注いでも一向に遠く見える彼女達の強さ、
腕だけではないのだろう、何が足りなかったのかと自問自答する毎日、
後年、三国の英雄の生き様を書で読みながら何故あの時行く前に読まなかったのかと後悔もした。

幾年悩んでも答えは出ず、気まぐれで道場を築き弟子をとった。
鍛錬に勤しみ自らを慕う弟子たちをどこか懐かしい目で見ていたのを自覚する一刀。

(ああ、この目を覚えている、春蘭や秋蘭に追いつこうと必死になったあの時の俺の目だ。)

三国志での懐かしき日々、あの日を思い出さない日はなかった、あの時こうしていればよかったと
後悔したのは既に数え飽きるほどに思い、そして北郷一刀は、倒れた。

(あれから、もう数十年も経ったんだな・・・。)

すっかりしわくしゃになった自分の手を見て思う、あの時と変わりない無力な手だ。

(あの時、あの場所に、もう一度でいい、どうか神が居たのなら、この老いぼれの願いを聞いてくれ。)

生という気が自分から抜けていくのを感じる、もうすぐ、彼女達と同じ天に逝くのだろう。

(俺に・・・またもう一度・・・チャンスをくれ・・・華琳を、皆を守りたい・・・最後の・・・願、い・・・を。)

天井まで手を伸ばし・・・全ての気が霧散した時、北郷一刀は老衰により、現代から世を去った。





「・・・ぅん?」

目を開けてみれば、今度は真っ暗闇の空間だった。

「此処があの世か?随分と殺風景だな。」

「あらん?御主人様、此処はあの世じゃないわよん?」

「うお!?ちょ、貂、蝉・・・?」

見間違うはずはない、この筋肉盛々とした肉体美、何十年経とうが変わらないこのインパクト。

「覚えててくれたのね、やっぱりご主人様と私は結ばれていたのね♪」

鳥肌が立つようだがその言い方もはや懐かしいものだ。

「貂蝉、久しぶりだな、その物言いもすっかり懐かしいものになってしまった。」

「御主人様はおじいさんになってもかわらないのね。」

「ああ、変われなかったよ俺は。」

「・・・。」

「此処に戻ってどれだけ研鑽を積んでも俺は・・・。」

「ねえ御主人様、やり残したことがあるんでしょう?」

「ああ、でももう何もかもが遅いんだ。」

「遅くなんかないわん、この貂蝉がもう一度御主人様を連れて行ってあげる。」

「・・・え?」

「いわばもう一つの外史の過去、前回の三国志と全く同じだけどだからこそなのよ。」

「全く同じだと・・・!?いやまて、ならば俺がまた魏に介入すれば・・・!」

「そう、御主人様が魏に行けばまた同じことが起きるわ、どれだけ御主人様が魏で頑張ってもね。」

「そんな外史に連れて行って、貂蝉は俺に何をさせたいんだ・・・?」

一刀にとっては半ば絶望が決まったような外史である、しかし貂蝉は白い歯をキラリと輝かせる。

「言ったでしょ、魏に介入すればの話よ、それ以外に介入すれば全く違う外史になってしまうのよ。」

「それ以外に、介入。」

「なんだっていいのよ、蜀にも呉に入っても、御主人様が国を立ち上げて、彼女達を配下に加えてでもね。」

「最後だけ強調したなおい・・・。」

「それがある意味一番魏を救う手立てだもの蜀と呉じゃ遅すぎるわよん?」

「ぬぅ、確かに。」

前回を知っているからこそ知っている、呉蜀に介入しても魏に干渉できるのはあまりに遅い。
だが、最後のチャンスをこうして叶えに来てくれたのだ、ならば存分にあがいてみせようではないか。
もう、死ぬほど悩んだのである、ならばこの未知の領域で、彼女達に勝利し、救ってみせよう!

「解った、ならばその茨の道、突き進んで見せよう!」

「さすが御主人様、私ズキュンってきちゃったわ!」

「だが、どうしようか、俺は見ての通りジジイだし・・・。」

「心配いらないわよ、御主人様の身体も若返らせてあげるわ、ただし!」

「ただし?」

「あの外史に戻っても、御主人様は以前と同じようには過ごせないかもしれないわ。」

「それってどういう・・・わわ、身体が崩れて・・・!?」

「じゃあね御主人様、あの悪夢のような乱世、見事打ち砕いて見せて?
ちなみに時代は黄巾の乱が起こる前、たどり着いたら近くに町があると思うわん。」

本郷一刀が消えて、残ったのは貂蝉のみ。

「そうよ、御主人様にしかこの外史は変えられない。」

貂蝉は真剣な顔で一刀の消えた先を見据えていた。

「それに言ってなかったけど、御主人様は一人じゃないのよ?御主人様もモテモテねん♪」

意味深な言葉を残して・・・。





再び目が覚めれば見覚えのある荒野、現代的な建物などどこにもない雄大な大地。

「帰ってこれたんだ俺は、ここに・・・!」

何十年も経ったというのにまるで昨日のように思い出されるあの日々。

「おお、それに自分の体のなんと軽いことか。」

これが若さの特権なのだろう、身体の芯から湧き出るようなこの力。

「今なら、俺にもできることがあるんだ・・・。」

感慨極まり空を眺める、雲一つ無い晴天の青空、焼けつく太陽が今は心地よい。

「しかし俺は若いころこんなに声が高かったか・・・!?は、はは、なるほど、貂蝉が言っていたことはこういうことか。」

乾いた笑いが漏れる、姿はたしかに若く、餞別なのか、路銀と日本刀を携えているが、
一番変わっていたのはその姿、見た目変わったところはないが、たしかに変わっていた。

顔は見ていないがどこか中性的な体つきで、男にあったモノがなく、男にない小さな膨らみがそこにあった。

「まさか女になっていようとはな、まあ、これでもいいかもしれない、俺には男である必要なんて無いし。」

戻れた歓喜に身を震わせて存外自分に起きた異常を軽々と受け入れられた。

「とりあえず、街を探すか。」

消える間近、貂蝉が近くに街があるといった、ならばそう遠くないところにあるのだろう。
軽い足取りで足を進める一刀だった。

「しかし、これは季衣といい勝負かもしれないな、まああっても邪魔なだけだが。」

覇王と親衛隊の片割れの逆鱗に触れそうな余計な一言を漏らして。





歩いて数刻もせずに辿り着いた街を見る、門衛に聞いたところここは新野の街らしい、
見渡せば圧政というわけでもないが善政な雰囲気でもない。

「中途半端な太守なのかな、でも俺が治めたとして、これ以上の街にできるのか?」

文官の仕事や内政の仕事もやったことはあるが、太守という仕事はやったことがないのだ、
しかし勢力を立ち上げるなら速い方がいい、ひどい話だが黄巾の乱ならば名を挙げるのにうってつけだ。

「しかし宿はどこにあるのか・・・?」

まずは名を上げるために様々な行動をしなければならない、路銀は暫く余裕はある。

「さて、ならば街を探索するか。」





「へへへ、人にぶつかっといて謝りもなしかい嬢ちゃん?」

「もう謝ったではないですか、しつこい人は嫌われちゃいますよ?」

「生意気なこと言うじゃねえか、これはお仕置きが必要だよなぁ?」

(うーん、これは困ったことになりました、稟ちゃんの言うとおり一人で散歩するのは危険でしたね。)

逃げようと思えば逃げられるが、走るのがめんどくさい、しかしこのままだといけないことになるし・・・。

「・・・?」

そういえば、何時になっても何もされない、一体どうしたのかと顔を上げてみれば
眩くような一本の刃が男の首を捉えていた。

「ひ、ひぃ!?なな、なんだよお前!?」

「どう見ても合意のようではなかったようでな、勝手ながらちょっかいを出させてもらっただけだ。」

刃の元をたどってみれば一人の女性が鋭い視線で男を睨んでいた。

「ま、街の往来でそんなもの振り回してただで済むと思ってんのか!?」

「その言葉そっくり返そう、路地裏とはいえ女を襲った男がただで済むと思うのか?」

「ち、畜生!」

典型的な捨て台詞とも言える言葉を吐き捨てて男は逃げ出した。

「・・・大丈夫か?」

「あ、え、はい、ありがとうございます、お姉さん。」

「おねっ・・・!?いや、そうだった、済まない粗相をした。」

目を開いて首をふる少女を不思議に思うが悪い人ではなさそうだった。

そうだよ、俺は女だったんだよ・・・と奇妙な言葉をぶつぶつと言っていた。

「しかしこの街を一人で散歩か、不用心では済まんぞ?」

「すみません、太守が居ない町並みを見渡そうと思いまして、少し軽率でした。」

「宿をとっているのならば宿まで送りするが?」

「ふむ、ならお願いしましょうか、変わったお姉さん、私は程立と申します。」

「かわっ!?いや、自業自得か・・・俺は北郷一刀、旅のものだ。」

「ほんごうかずと・・・かわった名前ですねー。」

「ああ、よく言われたよ・・・。」

悶絶する少女を見て思わず面白い人だと思ったのは間違いではないだろう。





(やれやれ、まさか戻っていきなり風に逢うなんてな、そして風がまだ華琳に仕官してないなら当然・・・。)

程立を宿に連れて行くと彼女を探していたのだろう、一方的によく知る女性がカンカンに怒っていた。

「風!あなた私が一人では行っていけませんとあれほど言ったのに!」

「くぅ・・・。」

「寝た振りでごまかさないでください!」

(くく、ははは、なんていうか、懐かしい光景だな・・・。)

郭嘉、程昱の友人で曹操軍の中で、最初に没した仲間、病のことを知っていても、治す方法がわからなかった、
結局郭嘉は烏丸の討伐に行ってしまい、病の話を聞いて駆けつけた時には何もかもが遅かったのだ、
その後程昱は郭嘉の分まで働き、一刀にとってはすっかりと懐かしいやりとりとなってしまった。

「全く・・・どうやら貴殿には世話になったようだ、風を助けてくれて感謝します。」

「いや礼には及ばないよ、困ったときにはお互い様というやつさ。」

「そう言ってくれると此方も気が楽です、それにしても風変わりな武器ですね。」

「・・・俺の故郷の武器さ、珍しいとはよく言われるよ。」

わずかばかりに抜き、波打つような模様に輝くような刃、日本刀職人ならではの業前だ、
物珍しそうに郭嘉が日本刀を観察していると近くで可愛らしい腹の音がなった。

「・・・風、おなかがすいたのですか。」

「ふふふ、ばれてしまっては仕方がありませんねー。」

「何なんですかその言い回しは。」

「ふふ、気にしないほうがいいのだろう、食事で良ければ俺が持とう。」

「おおう、よろしいのですかお姉さん。」

「いえ、流石に其処までしていただかなくとも・・・。」

「気にしないでくれ、少しばかり手持ちに余裕が有るんだ、持て余していてもいいことはないからな。」





その後、宿の食堂に寄り、食事をしながら雑談に興じていた、気がつけばすっかり空も闇に染まっていた。

「なるほど、見識を広めるために二人共旅に出ているのか。」

「ええ、いつしか我が知を捧げるに値する方を見つけるまでは続けるつもりです。」

「そういうお姉さんは何故一人で旅をしてるんですか?」

「むぅ、俺が旅をする理由、か。」

風に問いかけられて天井を見る、言われるまでもないだろう、この身は既に覚悟を決めている。
顔を引き締めて、二人を見据えてはっきりと言った。

「俺には絶対に成し遂げたいことがある、そのために今は放浪の身かな。」

「ふむ、成し遂げたいことですか?」

「あいにく言えないけどね、口に出したら恥ずかしいし。」

「お姉さんはなにか目標があるんですね。」

「ああ、絶対に譲れない想いなんだ、たとえ何が前に立ち塞がっても俺は・・・。」

どこか遠いところを見る一刀の顔に、程立と郭嘉は何かが締め付けられるものを感じた。

(?今、風は何を感じて・・・。)

「さて、そろそろ寝たほうがいいな、郭嘉さんも程立さんも見識を広めるのなら頭も休めなくてはいけないぞ。」

にこりと笑って席を立つ一刀、二人は一刀の背中をずっと見ているだけだった。

「不思議な御仁ですね、どこか惹き込まれるものを感じました・・・風?」

「・・・くぅ。」

「風、寝た振りするほど眠いのなら早く部屋の床に行きますよ。」

郭嘉に引きずられながらも程立は考え事をしていた。

(お姉さんのあの目、何かを懐かしむようでした、でもあの時お姉さんは旅の途中で
此処に来たのも初めてと言っていた、ならばあのお姉さんの目は一体・・・。)

結局答えは出ずに郭嘉に床に放り投げられて風は眠りについた。





その夜、程立は不思議な夢を見た、泰山の上で自分が太陽を掲げていたのだ、なんとも不思議な夢である。

だが、夢はそれで終わらなかった、掲げた太陽が徐々に縮み始めて、やがて掌に収まるほどの小ささになった、
そして、小さくなった太陽は風の身体の中に入り込んで膨大な熱となって風を襲った。

夢の中に関わらず、まるで本当に全身が焼け焦げるような熱さに気を失いそうになると、
風の目にあるものが見えてきた、どこかの城だろうか、自分と友人である稟が臣下の礼をとって
金色の髪の女性に頭を垂れていた、驚くべきは彼女の後ろに今日会った女性とそっくりの少年が居た。

(これは、風の、未来?)

これは自分がたどる未来の姿なのだろうか、声が聞こえないので何を話しているかはわからない。
しかし映像は止まらない、誰かもわからない敵と戦うために連合を組み洛陽に侵攻、金髪の女性の軍との
将達と交流を深めながら日常を過ごし、件の少年とともに閏を共にしていた、正直、顔が熱くなった。

それが終わると今度は変な笑い声が特徴な女性との戦である。

辛くも勝利を治めたが其処で信じられないものを見る、何故か稟が病に倒れて亡くなっているではないか、
それも、自分と金髪の女性、少年とともに稟の最後を看取っていた。

(稟ちゃんが・・・死ぬ?)

余りに信じられなかった、それからも交友を深めていた人物たちが次々と戦で亡くなっていった。
そして、風が仕えた金髪の女性も後を追うように没する、傍らで自分と少年が涙を流していた。

(風が泣くほどに敬愛したのですね、あまり実感がわきませんが・・・。)

そして、とうとう自分も亡くなった、少年に手をしっかりと握られて謝るように自分は死んでいった。

だが、自分が死んでからも映像は止まらない、今度は少年が映る、どこか姿が朧気だ・・・。

「なにも、変えられて、ねえじゃねえかああぁぁァァァァァ・・・!!!!」

(・・・!!)

少年のその声だけははっきりと聞こえてきた。
なんという悲痛な声、なんという無念が篭った声、吐き出すように声を出した少年は姿を消した。

そして、映像に夢中になっていたせいだろう、身体を覆っていた熱さはすっかりと冷えて、
立っている場所は泰山でもなんでもない暗闇、否、目の前には自分が、『あの風』が居た。

『これが、風とお兄さんが辿った末路です。』

自分のこんな顔は見たことがなかった、後悔と苦痛、様々なものが混じった切ない顔。

『お願いです、あの『お兄さん』を助けてあげてください、お兄さんはたった一人で乱世に立ち向かおうとしてます、
風は直接は行けませんけど、風の全てを、あなたに、風に託します、どうか・・・あなたの『お姉さん』を・・・。』

泣きそうになった声を押し殺しながら霧散した風は青い光となり視界を埋め尽くした、
あまりの眩しさに目を閉じ、そっと開けると、風の目の前の景色は、まだ夜も深い深夜だった。

「・・・夢、だったのでしょうか?・・・!?」

つぶやいたのもつかの間、寝ぼけ眼の風の頭蓋が割れるほどの情報が頭に入り込んできた。
入り込んできたのは先程の夢の映像がそのままで、声がついて、彼女達の名前を知って、辿った未来を知った。

「ぐ、ぁ・・・!」

永遠にも感じられた情報の流入が終わった時には、自分が涙を流しているのに気がついた。
そして気が付いてしまった、自信のある自分の知が更に磨きをかけて推測できてしまった。
夢の中に出てきた少年の名前は、そう、北郷一刀・・・。

「あ、あぁ・・・!」

理解できてしまうともう止まれなかった、寝間着を着替えて部屋を飛び出して、
彼女の泊まっている部屋に走っていた、息が切れているがそんなことは知ったことか。
自分の目の前の扉の向こうで、あの人の泣く声が聞こえてしまったのだから。

「・・・お姉さん、少し、いいですか?」

扉の向こうに居るであろう、あの人は、とても狼狽えただろう。

「あ、ああ、大丈夫だよ、何か用かな、程立さん?」

胸が締め付けられる思いだった、これほどまでに追い詰められても、
風たちを優先するのかと嬉しい半面切なくなった。

「いえ、不思議な夢を見たものでして、興奮して寝られないんです。」

「そうか、俺で良かったら話し相手になるよ。」

「では失礼しますねー。」

扉を開き、一刀の部屋にはいると、床に腰掛けながら一刀は座っていた。
顔に泣き荒らした跡が、残っているのに気が付かないままで。

「夜分遅くにすみませんねーそれで変わった夢なんですが、なんとお日様を持ち上げていたのです。」

「お日様って、あの上で輝いてる熱い奴か。」

知ってるくせに、あえて知らないふりをするんだ、なら少し揺さぶりをかけてみよう、
『風』を置いて此処に来てしまった甲斐性なしに少しばかりのイタズラと朗報を送るために。

「稟ちゃん。」

「?それって・・。」

「・・・流琉ちゃん。」

「な!?」

一刀の顔が驚きで目が見開いた、でも止まってあげない、何よりも自分が泣きそうなんだから。

「季衣ちゃん、凪ちゃん、秋蘭ちゃん、桂花ちゃん、春蘭ちゃん・・・華琳さま・・・そして、『風』」

「うそ、だ、そんなはず・・・ない、だって、まだ会って・・・!?」

「そして、最後に消えてしまったお兄さん、おかえりなさいといえば、いいので、しょうか?」

よくわからない感情がごちゃごちゃになってくる、涙を流しながら、
既に一体化してしまったもうひとりの自分の記憶を辿るように、名前を上げていった。

「ふ、風・・・本当に、俺の知っている・・・風なのか・・・?」

「少し複雑なんです、夢から覚めたらいつの間にか風の中にもう一人の風が居たんです。
でもその風は、お兄さんと一緒に過ごして、稟ちゃんと華琳さまを看取った風なんです・・・。」

今の自分は間違いなく、目の前の女性と初対面の、今迄稟と旅をしてきた自分なのに、
こうして一刀にもう一度会えたことに、今この時に戻れたことに、感涙して震えが止まらない自分がいる。

ああそしてもうひとつあった。

「・・・風!」

目の前の彼女が風を抱きしめた、苦しくない力加減で、風に痛みを感じさせない程度に。

「ふふ、未来の風は随分愛されていたんですねー少し嫉妬しちゃいます。」

そう、彼女は風が痛くない力加減を知っているのだ。

「あ、あはは、なんなんだろう、別人だって覚悟は決めていたのにさ、まさか、俺の知ってる風に
もう一度会えるなんて思わなくてさ、俺、もうなんて言っていいのかわかんないや!」

涙でぐしゃぐしゃになった顔で精一杯笑った一刀、夢と全く変わっていないあの笑顔だった。

二人は暫く、泣くことをやめずに、抱き合いながら時を過ごした。





一瞬のようで長い時間の間、抱き合っていた二人は離れると風はいつもの顔で一刀に問いかける。

「それで、お兄さんはこれからどうするつもりなんです?」

「・・・お先真っ暗だけど、太守になろうと思うんだ、きっと、俺が魏に行っても何も変えられないから。」

「ほほう、ならばどうやって太守になるおつもりなんですか?」

「此処の街さ、広い割にあまり管理されてないじゃないか、きっと指導者みたいな人を求めてると思うんだ。」

「おおう、そういえばそうでした、なんと都合のいい話なんでしょうかね。」

「ご都合良くて嫌な予感しかしないけどさ、それでも、俺にできることがあるなら全部やろうと思うんだ。」

「ならば足りないところを補うのが風のお仕事ですね。」

「・・・辛い道のりだぞ、絶対に華琳達と、もしかしたら稟とも戦わなくちゃならない道だ。」

「あ、ご心配なく、稟ちゃんはこっちに引き込む予定なんで。」

「え、いや待て待て、そしたら魏の頭脳担当は桂花だけになってしまうだろうが。」

「大丈夫ですよ、桂花ちゃんのことですし、華琳さまには私だけで十分よ!
みたいなことを平然と言ってのけそうですからねー。」

「不覚にもあっさり脳内にその声が流れたぞおい・・・。」

「調教されてますねー。」

「罵声されるのが快感みたいな言い方するな!」

気がつけばいつものノリである、余りにもおかしくてふたりは笑い出してしまった。

「さてさて、そろそろ戻らないと稟ちゃんが起きてしまったら説明するのが面倒ですね、
お兄さん、詳しいことはまた明日互いに決めましょう。」

「ああ、おやすみ、風。」

「これから忙しくなりますね、華琳さまに狙われそうなお姉さん♪」

「うぐっ!?」

痛いところを突かれて引き攣る一刀を面白そうに見ながら風は部屋を後にした。

「全くあいつめ・・・。」

苦笑いだがその顔は心底安堵した顔だった、なにせ最も頼りになる文官が最初から味方にいるのである。

「だからこそ、俺は絶対にあんな未来をぶっ壊してやる・・・!」

二度とあんな結末は御免だ、決意を新たに一刀は布団にもぐる、今日は、久しぶりに心地よく寝れそうだ。


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