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No.40493の一覧
[0] 最もドス黒い悪の長門さん(艦隊これくしょん、SFコメディ)[灰鉄蝸](2014/09/21 18:53)
[1] 1話「幻覚からの妖精X」[灰鉄蝸](2015/03/04 22:50)
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[40493] 最もドス黒い悪の長門さん(艦隊これくしょん、SFコメディ)
Name: 灰鉄蝸◆e809600b ID:68eef9d1 次を表示する
Date: 2014/09/21 18:53
【説明】
・ディストピア風近未来を、ド外道がかき回してコメディ空間に。人は死ぬ。
・残酷な表現、公序良俗に反する言動が多用されます。
・全四話ぐらい。
・知人からプロットを投げられて書いた物。ギャグ:シリアス、4:6ぐらいでお送りします。










――もし、冷蔵庫の中身が艦娘になっていたらどうしますか?


長門は答えた。


――焼き肉だ。


つまり、そういう話である。






音が聞こえる。
肉が焼ける音。水しぶきが陸との境界で跳ね上がる音。
波の砕ける埠頭にて。ガスで熱せられた大きな鉄板を前にして、二人の女が椅子に腰掛けている。
女が、ゆっくりと口を開いた。


「――チンポに弱そうな顔をしている、と陸奥に言われたことがあった。昔のことだ」


何故か感慨深げな発言――遠い目をして暁の水平線を見やる女。
艦娘の中でも最大級の戦力、長門である。
ボディコンのお姉ちゃんが頭からアンテナを生やしたような、実に奥ゆかしい衣装に身を包む――変態だ。
特技は砲撃だが、つい野生の本能で敵の駆逐艦クラスを狙い撃つことに定評がある。
本人曰く「敵を殺すときは弱いもの虐めに限る」のだとか。人類史の闇を感じるコメントだった。
どうしようもない朝の発言に対し、もう一人の少女が心の底から嫌そうに口を開いた。

「おぬし、チンポの心配よりハイセンスなコスチュームの心配をすべきじゃろ。時間旅行者(タイムパトロール)に未来人と勘違いされそうじゃ」
「そうか。お前は、まともな下着を穿いたらどうだ?」

場の空気が凍った。
長門は相変わらず遠い目をしているが、少女――利根の口元は引きつっている。
とはいえ所詮、足の付け根まで露出したスリットのボトムスを穿いた痴女であった。
なんと悲しい舌禍であろうか。

「朝っぱらから同僚を殺したくなる事案が発生したんじゃが」
「カウンセラーのところにでも行け。ヤブじゃない奴だ、ますます病をこじらせた女と仕事はしたくないからな」
「おぬし、本物のビッチじゃな……」

そこに、駆け寄ってくる影。十代半ばほどの、灰色の髪をポニーテールで結んだ可愛らしい少女だ。
名を、夕張という。艦娘が所属する鎮守府では、秘書をしている娘だった。
彼女たちを特別な存在たらしめる武装、艤装と呼ばれる戦闘ユニットを装着していないためか、今はあどけない印象が強い。

「提督が、提督が昨日の夜から行方不明なんです! 二人とも、何かご存じないですか――」

一辺が二メートルほどの鉄板はガスで熱せられ、ジュウジュウと音を立てて肉を焼いていた。
実に食欲の昂ぶる音、そしてにおい。夕張はおへその下のあたりが、きゅうっと締まって空きっ腹になるのを感じた。
長門と利根の食欲に、軽く畏敬の念を覚える。朝っぱらから、大人一人分ほどもある肉の塊を焼いて食べるなんて非常識だ。
そのとき、夕張はいやな事実に気付いた。
成人男性ほどもある大きさの肉でバーベキュー。鉄板の上で焼かれている肉塊には、どうやら手足が四本付いていた。
夕張は見なかったことにもできず、脳裏でちょっとだけ提督にときめいていた乙女の時間が無限ループ。
それはそうと焼き肉食べたい、という正直な欲求に抗って問い詰めた。

「……何を焼いたんですか?」
「お前も喰うか、夕張。地味に滋味があるぞ」
「この状況で平然とオヤジギャグ飛ばさないでください!」
「美味いのう、肉は美味いのう」

我関せず、という顔で淡々と肉を食い続ける利根がいた。この女、可愛い顔をしているが基本的に中身は野蛮人だ。
昔はもっとナイーブな性格だった――本人曰く、少年兵のテロリストに銃口を向けられたりする壮絶な青春――らしいが、
ついに脳が限界を迎えたのか、今では蛮族並みの精神である。
夕張の愛好するアニメオタクカルチャーにだって登場しない類の狂人であり、もちろん無視の対象だ。

「ところで知っておるか。オヤジギャグを面白く感じるのは脳の老化の兆しなんじゃぞ」
「ババアみたいな喋りの女が自虐をかましている。哀れだな、老人ホームを探してやらねば」
「ははは、こやつめ」

ひゅんっ、と風切り音。利根によって振り抜かれた裏拳は、一撃で人体を破壊せしめる威力だ。艤装もない今、艦娘が喰らえば無事では済むまい。
しかしこの拳打は、長門に片手で受け止められた。ぱぁん、と肉が肉を打つ音が響く。
お互いに筋肉を盛り上がらせ、肉の焼き網の前でぶるぶると二の腕が震える。攻防はそれ以上発展しない。
何故なら、残った手で焼き肉を食うのに忙しいからだ。いつも通りのすまし顔で肉を食いながら、長門は種明かしをした。

「ちなみに提督は、夕張に対するフェイクとして、この人型整形肉を我々に渡して遊びに出かけたよ。職務怠慢だな、いずれ死ぬことになるだろう」
「貴重なお時間、ありがとうございましたァ!」

駆け去る夕張は、青筋を立てていた。お怒りのご様子。
なんだかんだで敵襲のときは必ず持ち場にいる、訳のわからない提督のことである。考えるだけ無駄だろう。
長門は達観した顔で肉へ箸を延ばした――横からかっさらわれる。利根とのリアルファイト再開までわずか〇・三秒。
今日も鎮守府は平和である。





提督の帰還は、それから四時間後のことだった。
出発時には新品同然だった電気自動車(妖精さん印。外見だけは一九三〇年代風)は穴だらけ、いずれも弾痕であった。
たったの半日でスクラップ同然である。
当然、自動車は妖精さん(狂った物理法則を引き連れ、二一世紀の工業技術を壊滅させた超自然的存在)によって資材置き場に消えた。
一体どんな休暇を過ごしたんだ、と戦慄する夕張を横目に、提督が運転席から降りてきた。


身長一八〇センチ、全身を珪素由来の組織で覆った人型。のっぺりとした仮面のような頭部に、目と口だけが付いている。
控えめに言って人間には見えないが、少なくとも海軍は彼を人間扱いしていた。
かつてその強大な海軍力を誇った軍も、今では艦娘以外にろくな兵力を持たない愚連隊である。
おそらくきっと、そのゴタゴタに紛れて色々やらかしたのだろう――艦娘の間でまことしやかに囁かれる噂――提督はゲイのサディストで軍幹部を調教した。

「やあ夕張。仕事をさぼるのは最高だな!」
「憲兵呼んできましょうか」
「頭の狂った軍人の妄想の話はよせ。俺はそんな生き物、見たことも聞いたこともない」
「やだ、規律が死んでる……何ですか、その荷物」

目ざとく、提督が小脇に抱えた箱に気付いた。
一見、桐を思わせる材質だが、夕張の見立てでは、温度調整機能が付いた機械装置のようだった。

「ああ、これか。今日の戦利品だ。死にかけの海軍っぽいのを助けたら、何故か外国のスパイに襲われていつの間にか銃撃戦だ」

提督の脳裏を駆け巡るのは、今日一日で出会った強敵たちの記憶だ。

――このYユニットによって大和計画は復活する。そのはずだった……
――その成果は我々に収穫されます。そして、この国は地図から消える!
――(モサド特有の銃声)
――(SAS特有の銃声)
――ハラショー!(艦娘は関係ない)
――(IRA特有の銃声)
――私の空手は亜光速だ。

まさか空手で暗殺を仕掛けてくるサイボーグ警察官がいるとは。
やはり日本の警察は腐敗してるな、と提督は思う。社会批判を忘れないリベラルな男だった。

「恐ろしい敵だった……推進派残党はおろか、CIAのパラミリ、モサドの女暗殺者、元SASの傭兵、ネオソ連、IRA過激派、そして公安警察の殺人空手マシーンが襲ってくるぐらいだ。このユニットは、なんやかんやあって俺に託された」
「すいません、無駄にうちの敵が増えてませんか? あと、なんやかんやって何ですか」
「なんやかんやは……いや、よそう。あまりにも悲しい事件だったからな」

肩をすくめる提督だったが、その衣服は弾痕だらけであった。
襲撃者すべてを返り討ちにする銃撃戦の連続、躍動する筋肉、謎のキスシーンから一五秒後の死別、怒りの脱出、そして爆発――B級アクション映画三本分の濃厚な一日だったのは、言うまでもない。
つまり横須賀ではよくあることだ。

「待ってください、どうするんですかこの箱」

そういって夕張は、自分だけに見えるように箱を開封。そっと中をのぞき込んだ――目と目が合う。
あれ、と声が出そうになる。中に入っていたのは、物品ではなく生き物だった。しかも服を着ている。
衣服越しにもわかる、むちむちした肉感のある乳房。人肌の温もり。さらさらと艶やかな長髪。
箱の中には、

――おつぱいの大きい美少女がみつしりと詰まつていた。

夕張はしばしの間、悩んだ。
とりあえず提督の悩みを増やすのはなしね、と思う。だがまだ食べられそうな有機物を捨てるのは論外である。
こう言うときは家庭的な発想に限る。

「とりあえず冷蔵庫入れちゃいましょう。この前、おっきくしたばっかりです」

冷蔵庫にしまっちゃうお姉さんこと、夕張である。その恐るべき習性ゆえに、彼女は巡洋艦でありながら秘書の座を掴み取った傑物であった。
本来、戦闘能力のヒエラルキーで上位にいるはずの艦娘たちは、冷蔵庫という無慈悲な神の実在を知った。
ここ横須賀鎮守府において、唯一無二の神は冷蔵庫なのである。

「ああ、でもスイカがありましたね」
「じゃあスイカ食おう、スイカ。それでスペース空くからしまっておけるだろ」

スイカという単語を聞きつけ、駆逐艦の少女達が駆け寄ってくる。
こうして冷蔵庫は綺麗に空になり、得体のしれない箱だけが野菜室に取り残された。






一週間後、悲劇の幕は上がってしまった。
誰もが冷蔵庫に放置した箱を忘れた挙げ句、白菜の下敷きにされたりしていたせいである。
そして箱の収まっているスペースは、普段、甘味を秘匿したりするのに使われていた。
その夜、最初の犠牲者は軽巡洋艦に属する艦娘であった。名を龍田という――サディストの微笑みが印象的なシスコンの変態である。
艦娘としての来歴などは、割愛させていただく。
何故なら、鎮守府においてこの個体が変態であるという事実は揺るがず、またどれほど言葉を重ねても意味がないからだ。
その変態が、冷蔵庫の前で倒れていたと思っていただきたい。
第一発見者は、妹を探しに来た天龍だった。

「どうした、龍田! 敵襲か、敵のスパイか!」

このとき天龍が、週一ぐらいのイベントを疑ったのも無理はない惨状である。
妹は開けっ放しの冷蔵庫にもたれかかり、ぴくりとも動かないのだ。
ようやく目を開けた彼女は、まるで眠るように微笑んだ。死を覚悟した微笑みだった。

「天龍ちゃんの子孫が世界中に飛び散って、新世界のイヴと呼ばれるまで生きていたかったわあ……」

気が長すぎる上に気持ち悪い発言だった。しかし天龍はこれを無視、意外と大人である。
瀕死の姉妹の躰を抱き上げる――すでに手遅れだった。脈がない。

「龍田ァ――! やべえ、心臓が止まってる」

足音。天龍が背後を振り返ると、そこにいたのは、夜食のプリンを食いに現れた提督だった。
ほぼ半裸な上、無機物の地肌が剥き出しになっているフルヌードだった。しかしこのとき少女に、恥じらいを覚える余裕はなかった。
思わず縋るような声を絞り出す天龍。

「やべえ、やべえよ提督! 龍田が……」
「バケツかければ生き返るだろ」
「それもそうだな」

天龍は情に厚い女なので、一瞬で妹の心配をやめる。一瞬で平静に戻るあたり、歴戦の勇士(深海棲艦と呼ばれるクリーチャーと戦っている)だけある。
このような出来事は、鎮守府ではよくあることである。翻って横須賀ではよくあることであり、日本全国の常識でもある。
人間が死ぬのは、深海棲艦に襲われたときぐらいのものだろう。

「ん、冷蔵庫の奥に何かあるな」

そういって提督が引っ張り出したのが、件の箱である。
何気なしに野菜室から引っ張り出された箱は、外見から用途が想像できない。
そういうわけで、開けてみようと言うことになった――するとそこには、


――おつぱいの大きい美少女がみつしりと詰まつていた。


無言で、部屋の隅に投げ捨てる。箱は床にぶつかって大きな音を立て、開口部から美少女の顔がはみ出した。
色んな意味で不気味すぎたため、錯乱した二人は暴言を吐いた。

「なんで上半身だけの美少女が箱詰めされてるんだ! 龍田の仕業か!」
「提督、猟奇殺人やったなら自首しろよ!」

真っ先に人を疑う、最低のシンクロがそこにあった。
ぎゃーぎゃーと互いを罵倒する醜悪な光景の中、龍田は心停止から五分放置され、箱の少女も忘れ去られつつあった。
いささか、うるさすぎたため様子を見に来る人物がいたのも致し方ないことだろう。


「ぐぇ」

突然、天龍が昏倒した。泡を吹いて倒れたのである。提督の背筋を駆け抜ける悪寒。不味い、と悟ったとき背後に気配が生まれた。
提督の後ろに、ぴったりと小柄な影があった。
金的、腹部への刺突、頸椎への打撃。いずれにせよ致命傷を負う部位を、じっと眺める視線の寒々しい感覚。
じっとりと重い眼差しを携えた、白い少女がそこにいた。

「司令官、どうしたんだい」

少女の名前はヴェールヌイ――銀髪碧眼、物静かな雰囲気を湛えた艦娘(かんむす)である。
この鎮守府においては、数少ない良識派として風紀の維持に努めている苦労人だ。
粛清のプロであり、その手口の容赦のなさから、艦娘ヒエラルキーの頂点たる戦艦たちからも一目置かれていた。
つまり日本のどこにでもいる、ちょっぴりソ連臭がするだけの可愛らしい女子である。
政治的にはそういう解釈が正しい。


「そこに箱が転がってるだろ? その中身を見たら、天龍と龍田が狂ったんだ。俺は悪くねえ、俺は悪くねえ……!」

提督は最低のクズなので、失神した部下に事態の原因をなすりつけた。
氷のような視線の圧力で余裕がなかったとはいえ、こうはなりたくない大人であった。

「そうか」

それを聞き、ヴェールヌイは箱に近寄り、身をかがめて中身をのぞき込んだ。
じっと箱の中身――上半身だけの美少女――を見つめた後、顔を上げる。
白い少女は、表情一つ変えずに口を開いた。

「これを、ボルシチにしよう。わたしのはうまい」

ヴェールヌイは涼しい顔で食材判定を下した。
問題発言を効かなかったことにする努力――提督の脳裏を駆け巡る思考は、走馬燈めいた実感を伴っていた。

「俺の記憶が正しければ、あれ大和だよな。大昔に行方不明になった大和だよな?」
「司令官、大事なのは未来を見ることだ。わたしたちは生きている、日々の糧に感謝をしよう」

キッチンの外には、夜闇が充溢した日本(極東の弧状列島とそこにある人間の居住領域を指す)の闇が広がっていた。
滅多に人が死なないから、暴力も軽快に飛び回る世界。その軽さは、当然、提督と艦娘にも適応される。
下手な受け答えをすれば、ヴェールヌイは迷いなく提督へ制裁を加えるだろう。
この世界を支配するのは妖精さんであり、そこに人間が介在する余地はない。提督が人間かどうかはさておき、そういうものである。

その沈黙を破ったのは、傲岸不遜な足音であった。

「誰だい?」
「私だ」

いつの間にか、キッチンの戸口に新たな人影。

「その女はかつて、大和と呼ばれていた。今こそ、私の秘められた過去を明かすときのようだな」

長門である。戦艦に分類される火力と装甲、そして豊満な胸部が印象に残る黒髪の美女だ。
ややきつめの目元も、その怜悧な雰囲気によく調和している。
これで腹筋を外気に晒していなければ、まともな人間に見えただろう。しかし長門は、こういう女である。
卑猥な格好をしながら駆逐艦を殺す系女子、鎮守府きってのモンスター。

「やめろ、聞きたくない」

提督の顔が引きつるのもお構いなしに、長門は笑う。

「いいから聞け――私がご覧の有様になり、そいつが冷蔵庫に入れられて一週間ぐらい放置されるまでを!」

長門の不敵な微笑みは、常識も良心も投げ捨てた類の開き直りだった。
断言しよう。
これは、その場のノリで世界を引っかき回した邪悪の物語である。


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