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No.40230の一覧
[0] 星の未来【世界崩壊近未来ファンタジー】[大航](2014/09/29 22:55)
[1] プロローグ[大航](2014/07/24 23:45)
[2] 一.逃走[大航](2014/07/24 23:50)
[3] 二.玖国[大航](2014/07/24 23:52)
[4] 三.遺産[大航](2014/07/29 00:36)
[5] 四.正義[大航](2014/08/23 06:05)
[6] 四.正義(大神視点)[大航](2014/08/24 11:27)
[7] 五.生と死の狭間で(追記)[大航](2014/09/08 01:28)
[8] 五.生と死の狭間で(兎谷)[大航](2014/09/08 01:24)
[9] 五.生と死の狭間で[大航](2014/09/22 01:37)
[10] 五.生と死の狭間で(兎谷戦闘前)[大航](2014/09/29 00:27)
[11] 五.生と死の狭間で(兎谷戦闘1)[大航](2014/09/29 00:27)
[12] 五.生と死の狭間で(兎谷戦闘2)[大航](2014/09/29 00:28)
[13] 五.生と死の狭間で(兎谷戦闘3)[大航](2014/09/29 00:29)
[14] 五.生と死の狭間で[大航](2014/09/30 20:54)
[15] 六.星の未来-大神-[大航](2014/10/19 12:07)
[16] 六.星の未来[大航](2014/11/04 02:14)
[17] 六.星の未来-ヘルマン-[大航](2014/11/04 02:15)
[18] 六.星の未来[大航](2014/11/04 02:15)
[19] 六.星の未来-鈴-[大航](2014/11/04 02:16)
[20] 六.星の未来[大航](2014/11/04 02:16)
[21] エピローグ[大航](2014/11/04 02:17)
[22] 星の未来【世界崩壊近未来ファンタジー】あとがき[大航](2014/11/04 02:18)
[23] 第二章 星の傷痕[大航](2014/11/23 09:18)
[24] 七.**[大航](2014/11/23 09:17)
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[40230] 六.星の未来
Name: 大航◆ae0ba03e ID:6ad2cbb2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/11/04 02:16
 私は大神さんが暮らしていた家に住むことにした。
鈴が帰ってくるまで、鈴のために家を残してあげたい。
私はそう思ってこの家から離れることが出来なかった。

 鈴ちゃんが怒るのも仕方が無い、大切な家族が私に殺されたようなものだもの――。

 それでも戻ってきてくれるかもしれない。
微かな願いを胸に、私は家の片付けに精を出した。

「ふう」

 この家は広い。鈴に、鉄に大神、そして兎谷の四人が暮らしていた家だ、狭いはずがない。
もう帰ってこれない三人の部屋も掃除をする。
もし鈴が帰ってきたとき、悲しむような気がするから……。

「馬鹿なのかな……私」

 三人の部屋を掃除して、最後に鈴の部屋にたどりついた。
私は小さくノックをしてみるが、勿論返事が返ってくることはない。

「お邪魔します」

 鈴の部屋はいつもどおりの生活観が残されていた。
散らかったままの机、ベッドにはパジャマが脱ぎ捨てられている。
今にも主が帰ってきて片付けを始めそうなこの部屋。
だけど、鈴が出て行ってもう丸二日が経っていた。

 私は勝手に入っては怒られてしまうと思って、部屋に入るのを遠慮していた。
でも、鈴が帰る場所を少しぐらい綺麗にしてあげたかった。
単なる私のエゴだ、怒られても仕方が無い。

 でも帰ってきてほしい――。

 いっぱい怒ってくれていい、軽蔑してくれてもいい。早く帰ってきてほしい、それだけだった。

 鈴が家を出てから数分後、大きな地震があった。いや、地震ではなく恐らく核なんだろう。
街の人たちも分かっているようで、所々で歓声が上がっていた。
少しの停電もあったが、今では元通り復旧している。

 戦争のおかげで水と食料の多くは地下に貯蔵されていた。
おかげ、というのも妙な話だ。こうなってしまったのも、戦争が原因なのに……。

 私は首を大きく横に振って掃除をはじめる。
嫌なことを頭の中から消し去って、ただただ掃除に没頭した。

「あ」

 カタンと何かが落ちた。
掃除機が机に当たってしまい、机の上に置いてあった何かを落としてしまった。

 壊れてないかな――。

 私は慌てて何かを拾った。

「わぁ、懐かしいな」

 私が手にしたものは、小さな木製の写真立て。
その中にはこの街を出る最後の日に、みんなで撮った写真が飾ってあった。
私たちが共に生きた、ただひとつの証だった。

「もう、一年ぐらい経っちゃったね。懐か……あ……なつ……」

 思い出されるのは、いつもどおりの穏やかな日々。
私が王になることを決めた、この家で過ごす最後の日。
兎谷が何処から持ってきたのか、玄関先にカメラと三脚を置いてみんなを集めていた。

「はーい、もっと寄って寄ってー」

兎谷の元気の良い声が木霊する。

「ほら先生、もっとこっちだって」
「いや……俺はいい」

大神さんは写真に映るのが嫌いなのか、嫌がるその手を鈴が無理やり引っ張っている。

「一ノ宮さんも、早く入ってー」
「わ、私はただ迎えに……わっ」
「いーじゃん、いーじゃん!」

私を迎えに来ただけの一ノ宮も、その輪に加わった。

「まだかのー」
「も、もうすぐですよ」

 一緒に地上に出る予定の泉さんが愚痴を漏らしている。

「……」
 いつもは無愛想な鉄さんも、この日は笑顔だった。
一番後ろで腕を組みながらみんなを待っている。準備が出来たのか、兎谷が声を掛けた。

「よーし、いくぞー」

 タイマー式のスイッチを押した兎谷が私たちの元へと駆け寄ってくる。

「お、俺の場所が無いじゃん!」
「あ」

パシャ、とカメラのシャッターを切る音が辺りに響いた。

「……」

「「「「あはははははははっ」」」」

皆が一斉に笑い始める。
甲高い声は鈴の声、小さな笑いは大神さん、鉄さんは微笑ながら肩を震わせ、
泉さんと一ノ宮もそれにつられて笑い始める。勿論、私も……。

「ちょ、ちょっと待って! もう一回な!」

兎谷が慌ててカメラに戻ろうとするが、一ノ宮が申し訳なさそうに頭を下げた。

「すいません、もう時間が……」
「えええええ!?」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと写ってるって!」
「後姿がな」
「あははっ」
「そりゃないぜ~」

またしても皆が一斉に笑った。それは紛れも無い、幸せな一ページ。

「ほんと……ほんとに……懐かしいね……みんな……」

私の目から一滴の涙が、頬を流れて写真へと落ちてしまった。

「ごめん……ごめっ……ごめんなさい……」

涙が止まらない、私は間違っていたのだろうか。

決めたんだ、こうするしかなかった――。

国を守るにはこれが最善手だと思っていた。
王になった瞬間、受け入れたつもりだった。でも、それは本当に、受け入れたつもりだった。

 止まらない、手で抑えても涙が止まらない。
ごめんなさいの一言が止まらない。私が自分で決めたはずなのに……後悔が止まらない。

「ああ……そうか。そうなんだ……」

 守りたかったのは国じゃない、私が本当に守りたかったものは……家族だったんだ――。

 私は涙を拭って、窓の外から混乱する街並みを見据えた。

「もう一度、もう一度やり直せるなら……」

 幸せだった記憶、守りたい家族の写真を胸に引き寄せて愛おしく握り締めた――。


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