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No.4010の一覧
[0] 中身がおっさんな武(R15)[つぇ](2008/09/16 21:28)
[1] 第1話 おっさんの価値[つぇ](2008/12/15 02:42)
[2] 第2話 おっさんの想い[つぇ](2008/10/01 01:04)
[3] 第3話 鉄壁のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:04)
[4] 第4話 多忙なるおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[5] 第5話 無敵のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[6] 第6話 おっさんと教官と恋愛原子核[つぇ](2008/12/10 01:17)
[7] 第7話 おっさんは閻魔大王[つぇ](2008/10/01 01:05)
[8] 第8話 おっさんの卒業式と入学式[つぇ](2008/10/01 01:05)
[9] 第9話 おっさん中毒[つぇ](2008/10/01 01:05)
[10] 第10話 おっさんの苦悩[つぇ](2008/10/01 01:05)
[11] 第11話 はじめてのおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[12] 第12話 おっさんは嫌われもの[つぇ](2008/09/25 03:18)
[13] 第13話 暴露のおっさん[つぇ](2008/09/19 02:02)
[14] 第14話 地獄のおっさん[つぇ](2008/12/05 22:21)
[15] 第15話 おっさんの空しさ[つぇ](2008/10/27 01:51)
[16] 第16話 スパルタン・おっさん[つぇ](2008/12/27 01:44)
[17] 第17話 おっさんとおっさん[つぇ](2008/09/29 01:06)
[18] 第18話 おっさんの真意[つぇ](2008/09/29 01:06)
[19] 第19話 苦肉のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[20] 第20話 おっさんへの反乱[つぇ](2008/10/03 02:35)
[21] 第21話 おっさんの覚悟[つぇ](2008/12/27 01:44)
[22] 第22話 おっさんと将軍[つぇ](2008/10/24 02:06)
[23] 第23話 おっさん、逃げる[つぇ](2008/12/27 01:44)
[24] 第24話 おっさんの戦い[つぇ](2008/10/13 01:49)
[25] 第25話 夜明けのおっさん[つぇ](2008/10/13 01:49)
[26] 第26話 おっさんのカウンセリング[つぇ](2008/12/27 01:44)
[27] 第27話 おっさん、解禁[つぇ](2008/12/27 01:45)
[28] 第28話 おっさんの原点[つぇ](2008/11/15 03:09)
[29] 第29話 おっさんVersion2.0[つぇ](2008/10/27 01:52)
[30] 第30話 おっさんの謁見[つぇ](2008/10/27 01:52)
[31] 第31話 空のおっさん[つぇ](2008/10/30 01:31)
[32] 第32話 おっさんの悲願[つぇ](2008/12/05 22:21)
[33] 第33話 おっさんのイメージ[つぇ](2008/12/05 22:21)
[34] 第34話 おっさんの誤解[つぇ](2008/11/08 02:03)
[35] 第35話 おっさんの別れ[つぇ](2008/11/11 01:00)
[36] 第36話 おっさんとアラスカ[つぇ](2008/11/11 01:01)
[37] 第37話 おっさんの帰姦[つぇ](2008/11/19 00:38)
[38] 第38話 おっさんの誕生日プレゼント[つぇ](2008/12/10 01:18)
[39] 第39話 おっさんの再会[つぇ](2008/12/27 01:46)
[40] 第40話 おっさんの誤解~日本編~[つぇ](2008/12/10 01:18)
[41] 第41話 噂のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:43)
[42] 第42話 おっさんへの届け物[つぇ](2008/12/15 02:43)
[43] 第43話 おっさんの恋愛[つぇ](2008/12/27 01:45)
[44] 第44話 おっさんのシナリオ[つぇ](2008/12/27 01:47)
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[4010] 第27話 おっさん、解禁
Name: つぇ◆8db1726c ID:a1045c0b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/27 01:45
【第27話 おっさん、解禁】

<< 風間祷子 >>

12月8日 朝 国連軍横浜基地 PX

「おはよう、祷子」
「おはようございます、美冴さん」

いつもの席で朝食を採ろうとした所で、美冴さんがトレイを持ってやってきた。
今日は、時間が丁度合ったようだ。

「昨日、祷子の部屋に寄ったんだが……白銀少佐か?」
「ああ、いらしてたんですか」

どうやら、私たちが“集団カウンセリング”をしている時に、部屋を訪ねて来たようだ。
隠す事ではないので(というか、すぐバレる事なので)昨日あった事を、詳細は伏せて話した。

「そ、そうか……2回目で複数……しかも8人でとは……祷子も結構大胆だな」

さすがの美冴さんも、少し引いている。
私も、初めての翌日にあれはどうかと思ったのだけれど、他の皆に誘われてしまい、断る事ができなかった。
もちろん、興味があったのもあるけど……それはもう少し先の事だと思っていた。

昨日の事を思い出すと、今でも顔が火照る。

まさか、いきなり私ひとりが裸になって、布で目隠しと轡をされて、大股開きの状態で縛られて、大事な所を評価されてしまうとは……あんな事、想像できるわけがない。
白銀少佐が、縛る事に相当手馴れているのが呆れたけど、他の皆も面白そうに手伝うものだから、抵抗する暇もなく、あっというまにあんな状態にされていた。

確かに、最初に服を脱いだのは、自分でやった事だから、私に責任がないわけではない。

でも……突撃前衛長らしく、速瀬中尉が「と・う・こ!と・う・こ!」と音頭を取り出して、他の皆がすぐに合いの手を入れて、場は大盛り上がり。
そんな雰囲気に逆らうことなど、とても出来ず……つい、脱いでしまったのだ。

──ああ、空気を読んでしまう自分が憎い。

縛られた後は、少佐が、形、匂い、味の評価などを、いやらしさの欠片も無い、研究者のような口調で評価するものだから、皆も「ふんふん、なるほど」と相槌を打ち……私は消えてしまいたかった。

轡はともかく、目隠しは優しさなのかもしれない。
あんな事されている時に、誰かと目が合ったら、羞恥で死んでしまいそうだ。

評価がひとしきり終わると「では、耐えた被験者にご褒美だ」という少佐の声が聞こえ、その直後私を襲ったのは……凄まじいほどの快楽。
初めての時より、圧倒的なその感覚に、私は数分で失神してしまった。

次に目を開いたとき、白銀少佐の姿はなく、全員、満足げに眠っていて、私は拘束を解かれていた。

案の定、私の髪の毛は少佐のアレで重くなっていた。

──髪を気に入ってくれたのは嬉しいんだけど……

洗うのが大変なので、少し控えてほしいのだけど、少佐に、あの子供のような喜々とした表情をされると、……きっと、次も断れないだろう。

どうも私は、ああいう事については、押しに弱いようだ。
昨日の事もそうだし、初めての夜も、気持ちが有耶無耶なうちに抱かれてしまった。

「いいよな?な?」という少佐の言葉には逆らえず、いつのまにか脱がされていて、色んな事をされてしまった。
もちろん、最初は優しかったのだけど、「次、これいいよな?」と言われると、断れず……これまで皆から聞いた、上級者向けと思われる事まで及んだ。



元々、白銀少佐は尊敬できる方だと思っていたし、男性としても魅力的に感じていた事は確か。
でも、『メンバー』の一員になりたい、とまでは思わなかったのだけれど……。

以前、ピアティフ中尉と少佐のやりとりを見たときは、こんな事になるとは露ほども思っていなかった。
昨日、恋する乙女の顔をしている、と美冴さんに指摘されたから、私もあの時のピアティフ中尉と同じ顔をしていたのだろう。

最初に口説かれた時の事を思うと、今でも首をかしげてしまうけど、少佐と別れるつもりはないのだから、現状、私があの人を好きな事は間違いない。
それに、麻倉少尉と高原少尉の事で、沈んでいた心が軽くなったというのも、また間違いない事なのだから。

一応、自分の気持ちに結論を出したところで、美冴さんに言おうと思っていた事を思い出した。
ただでさえ肩身が狭かったのに、ある意味、裏切った形になってしまったのだ。

「美冴さん、ごめんなさい。伊隅大尉とふたりだけにしてしまいました」
「……いや、祷子が幸せなら言うことはないさ」

と、苦笑された。美冴さんならこう答えるとは思っていた。
幸せ……たしかに、幸せといえば幸せな気分だけれど、この、少し感じる寂しさは……。

──そうか、美冴さんと一緒じゃないのが、寂しいんだ。

プライベートな時間は、大抵ふたりで行動していた私と美冴さん。

今後は、私は白銀少佐と一緒に過ごす時間が増えるだろう。
美冴さんも、そちらを優先しろ、と言ってくれている。
それは私にとって嬉しい事だけど、やはり、美冴さんをひとりにしてしまう事は、少し後ろめたい。

──あ、そうだ。美冴さんも、仲間になってくれれば……。

ふと思いついた事だけれど、意外と良い考えかもしれない。
一度経験してしまえば、根は純情な美冴さんが、皆との話に無理をする必要もなく、自然にふるまえるだろう。

問題は……故郷に残した美冴さんの想い人。
あの男性への純な想いを邪魔するのは忍びないけど……『遠くの親類より近くの他人』ということわざもあるし……。

……私は、もしかしたら、道連れが欲しかったのかもしれない。
もしくは、年下の子たちに一番新参扱いされるのが、嫌だったのかもしれない。
最初は冗談のような考えだったはずなのに、いつしか私は、美冴さんを仲間に引きずり込む方法を、真剣に考えていた。

「どうした、祷子?」
「いえ、なんでもありませんわ」

いつのまにか顔を凝視していた私に、美冴さんがこちらを窺ったけど、にっこり笑って誤魔化した。

──今度、白銀少佐に相談してみましょうか。良い案が浮かぶかもしれません。



…………………………



<< 御剣冥夜 >>

12月9日 午前 国連軍横浜基地 講堂

本日の午前9時丁度に、講堂集合の指令を受けたのは、昨日の事。
今までになかったその呼び出しに、妙に気持ちが落ち着かなかったが……時間になって始まったのは、思いもかけぬ、第207衛士訓練小隊解隊式と、衛士徽章授与。
今朝からの落ち着かぬ心は、無意識にこの事を予想していたからやもしれぬ。

ラダビノッド司令が、訓示の中で、殿下より賜った御祝辞を述べられた時は、まぶたが熱くなる思いだった。

御祝辞の最後のお言葉──『わが心は、いかなる時もそなた達とともに有ります』──は、おそらく私に向けられたもの。
そう思うのは、傲慢であろうか……。

そして、神宮司教官の解散の号令で、──我等は訓練兵ではなくなった。

本当は、この晴れの日に、白銀少佐にいらしていただきたかったが……。
あの方の姿が最後まで見えなかった事が残念だった。

「……私たち……私たち……とうとう……」
「そうよ……国連軍の衛士に……なったのよ……」

珠瀬と榊は、感に堪えぬといった声だった。
涼宮ら、207A分隊が先に任官した事で、この半年、焦りがなかったとはいえぬ。
喜びもひとしおであろう。

「……皆……良く耐えたな……」

私の声も……榊らと同様だった。
耐えたと言ったのは、訓練だけではなく、先日の決起軍との戦いについても、意を含めた。
全員、心に思うところはあれど、それを押して、戦い抜いたのだ。

「冥夜さんだって……みんながんばったよ!ねえ?」
「……鎧衣……」

鎧衣の言葉が、素直にありがたかった。

「そうですよ……みんなで……みんなで力を合わせたから……」
「……そうだね」

続けられた珠瀬と彩峰の言葉で、また心が震えた。
あの激戦も……この者達と共にあったからこそ、最後までやり通せたのだ。

「……みんな……ありがとう……」

榊を口火に、皆で、心からの礼を言い合う。

彩峰と榊……犬猿の仲だったふたりも、良い戦友となった。
普段は憎まれ口を叩くふたりも、今ばかりは素直になっている。
私も、素直に今の心境を口にしよう。

「私からも言わせて欲しい……そなた達に心よりの感謝を……」



…………………………



講堂の外には、神宮司教官……いや、神宮司“軍曹”が待っていた。

この方にも、色々お世話になった。
戦術機の訓練課程からは、白銀少佐からの教導が多くを占めたが、それでもこの方には、言葉で言い表せぬほど、軍人として大事な事を教わったのだ。

榊が、今までのように丁寧な言葉で語りかけてしまい、やんわりと注意された。
その口調からも、我等と軍曹の立場の違い……軍というものを意識させられる。

だが、白銀少佐はあの若さで堂々と、年上の米軍少佐や、沙霧大尉とやり合っていたのだ。
あの姿を範とせねばなるまい。

──榊の次は、私の番だ。

「貴官の練成に心より感謝する……」
「ご昇進おめでとうございます少尉殿!」

「貴官の教えと、栄えある207衛士訓練小隊の名を汚さぬよう、戦場においても精進し、人類の楯となる所存だ」
「はッ。身に余る光栄です。武運長久をお祈りしております」

「どうか……どうか、ご壮健であれ」
「は……ありがとうございます」

“上官”として態度を取れたと思うが……私は、涙を堪えるのに精一杯だった。

その後の面々も、榊と似たようなものであった。

鎧衣が“教官”と言ってしまい、訂正された。

彩峰は言葉を失い、ひとすじの涙を流し、軍曹は、ありがとうございます、と答えた。

珠瀬は泣き出してしまい、軍曹に、お気持ちは十分戴きました、と言われてしまった。



何度も思うが……ここに、白銀少佐がいらっしゃったら……様々な事に対する礼を言えたのだが。

……いや、あの方の事だ。きっと、自分がしゃしゃり出て、我等の気分を台無しにはしたくない、と思っての事であろう。

あの方ならば、きっと、影で我等の任官を喜んでくれているはずだ……。



…………………………



12月9日 夕方 国連軍横浜基地 PX

夕食は一緒にしよう、という珠瀬の提案には、無論、同意した。
明日からは、我等“だけ”で食事を採るのも最後なのだ。

そう……解散式直後は、明日から皆、別々の部隊だと覚悟をしていたのだが、全員揃って、明日の12月10日午前0時をもって、横浜基地司令部直轄の特殊任務部隊、A-01部隊に配属、と、神宮司軍曹より伝達された。
ただし、明日は装備性能評価演習に参加することとなっているので、その終了を待って、正式配属ということになる。
それまでは仮配属ということだ。

装備性能評価演習というものが気になったが、榊が質問した所、詳しくは明日のブリーフィングで行なうので、概要のみ説明されたが……要は、XM3のお披露目だった。

我々は、この演習に参加するために、A207小隊として臨時編成される事になり、榊が臨時指揮官として任じられた。
……つまり、今まで通りだ。

肩透かしの気分であったが、もうしばらくこの面々と肩を並べられる事は、素直に嬉しい。

テーブルに並ぶのは、京塚臨時曹長のご好意で、通常より豪華な夕食であり、飲み物もつけてくださった。
私たちの晴れの門出だ。ささやかではあるが、このくらいは良かろう。

そして、雑談から誰が音頭を取るかの話になったが、彩峰と鎧衣がふざけあって話が進まなかったので、私が買って出ることにした。

「埒が明かんな。僭越ながらこの私が音頭を取ろう」
「そうね。御剣、お願い」

「では、我等の門出を祝して……乾杯!」
「乾杯!」×4

めいめいに、訓練の思い出を話し出した。
彩峰と榊のいがみ合いも、今では懐かしい。

クーデターの事も、口に出してみたが、皆、自らの戦いを誇らしく思っているようで、気に病む様子はなかった。
落ち込みのひどかった珠瀬も、すっかり調子を取り戻している。
きっと、神宮司軍曹あたりが世話をしてくださったのだろう。

話題は、総戦技演習前の話もあったが、やはり印象に強いのは、念願の戦術機に乗れるようになってからのことだ。
約一月ほどになる、白銀少佐からの教練は、心に強烈に残っている。
おそらく、今後もそれが消えることはあるまい。
この思い出話で、白銀少佐の事が語られるのは当然であろう。

だが、……その内容には、やはり眉をひそめてしまう。
せいせいするだの、あの顔は二度と見たくないなど……。
珠瀬は珍しく黙っている。最後くらいは、という心境であろうか。

よって、悪口は榊と鎧衣が中心になっているが、彩峰も話に乗っている。
あの者も、少佐への敬意は持っているはずだが……よく平然と芝居ができるものだ。

私は……もう限界だ。
少佐の本意を語るのは、直接お礼を申し上げてからにしようと思っておったのだが……。

──そろそろ、打ち明けても良かろう。

「すまぬが、皆「御剣、ちょっと来て……」」

姿勢を正して話しかけたとき、彩峰に遮られ、腕を取られて物陰に連れ込まれた。
皆に聞かれたくない様子だったので、小声で話す。

「なんだというのだ、彩峰?」
「白銀少佐のこと……話すつもり?」

「そうだが……」
「黙ってて」

──どういうことだ?時が来れば、少佐の本意を話すということは、以前伝えたはずだが……。

不審な顔をした私に、彩峰は続けた。

「ライバルは、少ない方がいい」

──ライバル?何の…………はッ!

「そなた……まさか、少佐の事を……」
「……ぽ」
「……擬音を口にするでない」

道化じみた彩峰だったが、頬が赤いところから見て、本音であろう。
確かに、今思うと、ふたりで少佐の事を語るときは、彩峰からはどことなく熱い物を感じた気がする。

「御剣も、同じはず」
「うっ……」

意外……ではないか。
私がうすうす彩峰の気持ちを感じていたように、彩峰が私の気持ちを悟っていてもおかしくはない。

「だが、このまま少佐を誤解させておいては……」
「ヒントはたくさんあった。気付かない方が悪い。そもそも、少佐はそんなこと望んでない」

──む。それはたしかに、一理あるのだが……。



結局、彩峰の言葉に確たる反論もできず、皆には、彩峰がもっともらしく誤魔化して、納めてしまった。

──だが、彩峰よ……白銀少佐は、複数の方と、関係を……。

白銀少佐の裏の顔を、彩峰に教えるべきかどうか、私は悩むことになった。



…………………………



<< おっさん >>

12月9日 夜 国連軍横浜基地 香月夕呼執務室

珍しく、まりもとふたりで夕呼の部屋に呼ばれたと思ったら、

「これ、昨日渡すつもりだったけど、忘れていたわ」

と、それぞれ辞令書を手渡された。

内容は……12月9日午前0時をもって、俺が中佐への昇進。12月10日午前0時をもって、まりもが大尉への昇進。

──って、俺のはもう過ぎてるじゃねーか!

内容の割に適当な渡し方だったが、まりもはともかく、俺の昇進は当分無いと思っていただけに、内心の突っ込みとは別に、意外な気持ちだった。

「気前の良いことですねぇ」
「いきなり大尉ですか……」

まりもは戸惑っているが、教官になる前は中尉だったのだから、それほど大きな昇進とは思わない。

「訓練兵が、先日の貢献を買われて昇進したからね。白銀はその隊長だったし、殿下直々のお礼の御言葉もあったから、ラダビノッド司令も認めたわ。まりもは……ついでかしらね」
「ついでって……ふぅ」

まりもは、呆れたように──諦めたように、溜息をついた。……気持ちはわかる。

「それに、将軍殿下の所に行ったり、アラスカに行くにしても、箔があったほうがいいでしょ」

俺としては、どうでもよかったが……まあ、くれるというものを断るほど無欲でもない。
俺の階級など、しょせん夕呼の庇護あってのものだし、夕呼の言った通り、階級はあるに越したことはないのだ。

「では、謹んで拝命します。……一個中隊に中佐ってのは、階級が勝ちすぎてる気もしますがね」
「一言多い」
「これは失礼」

昇進についての話は終わり、夕呼は、日程が迫ってきたアラスカ出張に言及した。

「アラスカ行きの前に、帝国軍の巌谷中佐と会っておきなさい。アポイントは取ってるから」
「了解」

──もしかしたら、向こうの階級に合わせてくれたのかな?

「なんか、渋い声していたそうだから、ご機嫌とっておきなさいねー」

夕呼の事だから、本当に「弐型よこせ」としか言ってないのかもしれない。
これは、大変そうだ……。

そして、一通り事務的な会話が終わった後、夕呼はニヤニヤしてまりもを向き、爆弾を投下した。



「まりもも大変よねぇ……“発作”のせいで、白銀について行かなきゃならないんだから」



──なっ!……そのカードをここで切るのか……!

夕呼自身、笑いの発作のせいで、口に出せなかったはずだが……ようやく克服したか。
……いや、これを言うために、ふたり揃って呼んだに違いない。

「ちゅうさぁ~……よりによって~……夕呼に言うなんてぇ~……」
「すまん……」

アラスカ出張の理由を、言わないわけにもいかなかったんだ……という台詞は、口に出せなかった。
泣きべそをかきながら、俺を恨みがましく見るまりもには、何を言っても無駄だと思ったから、俺は、珍しく本心から謝った。

そして夕呼は相変わらず容赦がなく、以前、俺が夕呼をチアノーゼに追い込んだ言葉の数々……「あたし、精液がないと発作が出ちゃうの」「疲れた時でも、精液があれば、元気ハツラツ!」などの台詞を一言一句間違わずに、再現した。

──なんという、無駄な記憶力だ……!

夕呼のからかいと笑い声が響く度に、まりもの目が潤み、その表情は悲壮になっていく。

もちろん、その目はこちらを恨めしげに見ているが……俺は目を合わすことができず、ケタケタと笑い転げる夕呼を見るしかなかった。

──仕方がない。顔をぶってやることで、ご機嫌を取るしかない……。

俺は、この一月の間、まりもから地道にお願いされていた“あの”禁断の行為を、ついに解禁せざるを得ないと、覚悟を決めた……。



…………………………



<< 榊千鶴 >>

12月10日 午前 国連軍横浜基地 ブリーフィングルーム

ブリーフィングルームで待つ私たちの前に現れたのは、予想通り、神宮司……大尉!?

階級章を見て唖然としたが、とにかく号令を出した。

「け、敬礼!」

神宮司──大尉も、昨日の今日で、さすがにばつが悪そうだ。

「驚いているだろうが……本日付けで大尉に任命された。お前たちには、上下を混乱させてすまないが、これも軍の一面だ。納得しろ」
「は、はい」×5

大尉ということは、もう教官はしないということだろう。
まあ、私たちも、神宮司大尉に偉そうな口調など難しかったから、ありがたいといえばありがたい。

──あれ?でも、大尉の頬……ちょっと腫れているような……。

以前、白銀少佐から平手打ちされていた時のようだ。

──誰かとケンカ……?白銀少佐かしら。

でも、機嫌はかなり良さそうだし。
入室する前、確かに鼻歌を歌っていたのが聞こえた。
どういう事だろうか……。

戸惑う私たちにかまわず、大尉は、微笑みを浮かべたまま、昨日、概要だけ伝えられた評価演習の詳細を説明した。

「次世代OSのトライアル……ですか」

評価方法は、すべてXM3を搭載した機体で行なう。
旧OS搭載機との単純比較でない事は、私たちに緊張感をもたらした。

しかし、XM3搭載機同士の戦いを経験しているのは、私たちだけ。
実戦経験があるのも、そうだ。
……負けること自体、あってはならない。

連携実測については、旧OSを搭載した撃震で編成された仮想敵部隊を相手取る。
いずれも出撃20回以上の熟練衛士。……緊張感が高まる。

さらに、XM3搭載機は機数制限がある。
通常、1小隊は4機編成だけど、XM3搭載機の部隊は3機編成。

「A207小隊は2分されるが、貴様等は5名。よって、3名と2名に分割する。内訳は、貴様等に一任する」

3名でもハンディがあるというのに、2名……!
しかも、私たちと戦う時には、仮想敵部隊は、他のXM3搭載機と戦った後だ。
つまり、XM3搭載機と戦い慣れたエース達を相手に、半数の機体で挑むということになる。

戦力バランスから行くと、片方に珠瀬が入ることは間違いない。
高機動中の射撃を習得してからの珠瀬は、1対1じゃ、誰も手に負えないほどなのだから。
あとは、前衛を一人……御剣か、彩峰。
甲乙つけがたいけど、機体制御なら、彩峰に若干、分がある。

「本日の演習を持って、白銀“中佐”主導のプロジェクトは完了となる。最後の仕上げだ、気を抜くなよ」
「はい」×5

返事をした直後、大尉の発言内容が引っかかった。

──白銀………“中佐”?……あの人も、昇進したということか……。

「以前説明した通り、貴様等は、既存OSを知らない衛士のサンプルだ。任官したての新人が、このXM3でどれだけ戦えるかという事を、証明しろ。そして、XM3の熟練者がどれほど戦えるかは……白銀中佐と私が証明する」

──神宮司大尉も出られるのか。

白銀──中佐との連携の凄さは、体に染み込んでいる。主役はあちらということだろう。

そして、戦う順番は、私たちの分割小隊がそれぞれ2度戦った後、中佐のエレメントが仮想敵部隊“2個”小隊を相手取る。
その後、A207小隊5機と、仮想敵部隊2個小隊とが戦う、というものだった。

「中佐の腕前は貴様等も知っての通りだ。言ってみれば、貴様等は引き立て役に近いものがあるが……それに甘んじるなよ。貴様等の役割も、このトライアルでは重要な位置をしめているのだからな!」
「はい!」×5

「大トリは貴様等だ。XM3の“群体”が、どれほどの効果を発揮するか、ノロマな機体に乗ったエースどもに見せつけてやれ!」
「はい!」×5



…………………………



神宮司大尉が去った後、打ち合わせを行なったが、私の考えた部隊の分け方は、すんなり合意された。
全員、似たような構成はすでに頭にあったらしい。

「でも、白銀しょ──中佐も、昇進していたとはねー」
「我等も、先の任務の貢献で昇進したのだ。指揮官たる白銀中佐が昇進してもおかしくはなかろう」

鎧衣の感想に、御剣が答えた。

確かに、あの時の指揮ぶりは、凄かった。
包囲直後の指示の早さと的確さは、震えが走ったほどだ。
あの能力だけは、素直に敬服する。

──それに、殿下にも、覚えがよくなったようだし……。

あの“日米友好の証”の事を考えると、何か、幻想が壊れそうになる。

──あれは、演技よ。演技。そうにきまっているわ!

そう。あの時、帰還までに口利きをお願いして、昇進にこぎつけた可能性もあるのだ。

……いや、その為に、世間知らずの殿下に馴れ馴れしく近付いたに違いない。
そうすれば、あのひょうきんな振る舞いも、納得できる。

まったく、あの性根が腐った男の考えそうなことだ……。



…………………………



<< 神宮司まりも >>

12月10日 午前 国連軍横浜基地 14番整備格納庫

「神宮司大尉、おつかれさん」
「中佐……」

格納庫に着くと、中佐から声をかけられた。
あたりにはふたりしかいないが、もちろん、型通り敬礼をする。

「連中、どうだった?」
「さすがに昨日の今日で上官に戻ってしまいましたから、戸惑っていました」
「だろうな」

予想通りで納得した中佐に、気になっていた事を訊ねる。

「あの子たちに、声をかけなくていいんですか?」

手塩にかけて育てた教え子が任官したというのに、この人は珠瀬をケアした後、誰とも顔を合わせていないのだ。

「任官仕立ての良い気分の所を、俺の顔を見せて、損なわせなくてもいいだろう。どうせ、そのうち嫌でも顔を合わせるんだしな」

聞けば、このトライアルの間も、顔を見せるつもりはないらしく、次に会うのは、アラスカから帰って来た時だそうだ。
後の事は、伊隅大尉にまかせてあり、部隊の空気に慣れさせておく期間としては丁度いいだろう、とのことだ。

──でも、配属後の自分の上司が白銀中佐と知ったら、随分驚くでしょうね……。

確かに、冷却期間としては良いかもしれない。
あの子たちも、実戦部隊の空気に触れて冷静になれば、この人から貰った色々な事に気付くかもしれない。

「それじゃ、まずはみなさんの奮闘を拝見しますか」
「はい」

私たちの出番は、午後の実戦の一度だけだ。その時までは、あの子達の活躍ぶりを見せてもらおう。


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