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No.4010の一覧
[0] 中身がおっさんな武(R15)[つぇ](2008/09/16 21:28)
[1] 第1話 おっさんの価値[つぇ](2008/12/15 02:42)
[2] 第2話 おっさんの想い[つぇ](2008/10/01 01:04)
[3] 第3話 鉄壁のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:04)
[4] 第4話 多忙なるおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[5] 第5話 無敵のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:42)
[6] 第6話 おっさんと教官と恋愛原子核[つぇ](2008/12/10 01:17)
[7] 第7話 おっさんは閻魔大王[つぇ](2008/10/01 01:05)
[8] 第8話 おっさんの卒業式と入学式[つぇ](2008/10/01 01:05)
[9] 第9話 おっさん中毒[つぇ](2008/10/01 01:05)
[10] 第10話 おっさんの苦悩[つぇ](2008/10/01 01:05)
[11] 第11話 はじめてのおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[12] 第12話 おっさんは嫌われもの[つぇ](2008/09/25 03:18)
[13] 第13話 暴露のおっさん[つぇ](2008/09/19 02:02)
[14] 第14話 地獄のおっさん[つぇ](2008/12/05 22:21)
[15] 第15話 おっさんの空しさ[つぇ](2008/10/27 01:51)
[16] 第16話 スパルタン・おっさん[つぇ](2008/12/27 01:44)
[17] 第17話 おっさんとおっさん[つぇ](2008/09/29 01:06)
[18] 第18話 おっさんの真意[つぇ](2008/09/29 01:06)
[19] 第19話 苦肉のおっさん[つぇ](2008/10/01 01:06)
[20] 第20話 おっさんへの反乱[つぇ](2008/10/03 02:35)
[21] 第21話 おっさんの覚悟[つぇ](2008/12/27 01:44)
[22] 第22話 おっさんと将軍[つぇ](2008/10/24 02:06)
[23] 第23話 おっさん、逃げる[つぇ](2008/12/27 01:44)
[24] 第24話 おっさんの戦い[つぇ](2008/10/13 01:49)
[25] 第25話 夜明けのおっさん[つぇ](2008/10/13 01:49)
[26] 第26話 おっさんのカウンセリング[つぇ](2008/12/27 01:44)
[27] 第27話 おっさん、解禁[つぇ](2008/12/27 01:45)
[28] 第28話 おっさんの原点[つぇ](2008/11/15 03:09)
[29] 第29話 おっさんVersion2.0[つぇ](2008/10/27 01:52)
[30] 第30話 おっさんの謁見[つぇ](2008/10/27 01:52)
[31] 第31話 空のおっさん[つぇ](2008/10/30 01:31)
[32] 第32話 おっさんの悲願[つぇ](2008/12/05 22:21)
[33] 第33話 おっさんのイメージ[つぇ](2008/12/05 22:21)
[34] 第34話 おっさんの誤解[つぇ](2008/11/08 02:03)
[35] 第35話 おっさんの別れ[つぇ](2008/11/11 01:00)
[36] 第36話 おっさんとアラスカ[つぇ](2008/11/11 01:01)
[37] 第37話 おっさんの帰姦[つぇ](2008/11/19 00:38)
[38] 第38話 おっさんの誕生日プレゼント[つぇ](2008/12/10 01:18)
[39] 第39話 おっさんの再会[つぇ](2008/12/27 01:46)
[40] 第40話 おっさんの誤解~日本編~[つぇ](2008/12/10 01:18)
[41] 第41話 噂のおっさん[つぇ](2008/12/15 02:43)
[42] 第42話 おっさんへの届け物[つぇ](2008/12/15 02:43)
[43] 第43話 おっさんの恋愛[つぇ](2008/12/27 01:45)
[44] 第44話 おっさんのシナリオ[つぇ](2008/12/27 01:47)
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[4010] 第10話 おっさんの苦悩
Name: つぇ◆8db1726c ID:a1045c0b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/01 01:05
【第10話 おっさんの苦悩】

<< 速瀬水月 >>

11月10日 早朝 国連軍横浜基地 白銀武自室

早朝、股間にいくばくかの痛みを感じながら、私は今、白銀少佐の腕を枕にし、鍛えられた体に寄り添うように寝ていた。お互い、服は着ていない。
少佐はまだ眠っている。

私の大事な所からは、少佐が出した大量のモノがあふれている。それは、私の初めての証も混じっていて、薄いピンク色になっていた。
肌にも髪にも、ところどころ付着してしまっているけど、不思議と嫌な気持ちはなく、むしろ暖かい気持ちになった。

思い出すのは昨日の夜の出来事。私は色々な“初めて”を少佐に奪われた。いや、これは私からお願いしたことだ。“捧げた”という言い方が正しいだろう。
感じるのは、充実感と、何か悪いものが体から抜けたような爽快感。『スッキリさせてやる』というのは嘘じゃなかった。

──遙の言ったことは間違いじゃないわね……。

さすがに遙の言うとおり、かなり上手で、痛みも想像したほどじゃなかった。

けど、遙から聞いた内容とはだいぶ違った。
初めてにもかかわらず、何度も何度も何度も何度も何度も何度もしたのは普通じゃないだろうけど、少佐は少佐なりに手加減してくれたと思う。
正直、遙のようにアレを飲まされたり、ブタの真似をさせられるのも覚悟していたのだけど……。
少し抵抗はあったが、美味しくないのに美味しく感じたり、いじめられてるのにうれしい、という、遙の説明による、わけのわからない感覚に、興味があったのは確かだ。

──そういうのは、次の機会ってことかしらね。

やや不安なものの、“次”を楽しみに思う気持ちと同時に、孝之の事が思い起される。
将来の約束も、告白もできなかったけど、彼を裏切ってしまったという気持ちはある。
本当は、この色々な“初めて”を孝之に捧げたかったという想いもある。

──私と遙の下着をオカズにしてたということは、彼も、私達2人のことを、憎からず思っていたのは確かだろう。
けど、どんなに想っても孝之は生き返らない。
心に区切りをつけて、新しい恋でも探すのが建設的なのはわかってるけど、私も遙も、その気にはなれなかった。

そして、遙が変わった。それも、とても良いほうに。
やわらかい笑顔が特徴の遙だけど、孝之が死んでから、陰りがあった。──それは、私もそうなのだろうけど──それが、少佐と付き合いだしてから、本当に綺麗に笑うようになった。

今回の事は、遙の勧めでもあった。
私も遙と同じようになりたいと、どこか願うようになっていたけど、遙も私に、同じ位置にいて欲しいという気持ちがあったようだ。

──孝之が好きなのは変わらない。けど、白銀少佐……武さんが好きなのも確か。

初めての対面、セクハラ発言、XM3の発案、卓越した操縦技術、教官としての顔、訓練修了時の包み込むような笑顔、その直後のからかい、遙との情事、暴言を吐いた私への攻撃……。
どれをとっても驚かされる。さまざまな顔を見せる少佐に、私はいつしか惹かれていたのは確かだろう。

A-01の他の隊員も、少なからずそう思っているはずだ。
女所帯で、存在すら秘匿される我が部隊においては、男と恋愛するなんて困難極まりない。
そんな所に、こんな強烈な男が現れたのだ。

──遙に、私。次は誰?あと何人“こう”なるのかな……。

それは予想ではなく、確信だった。
伊隅大尉は、幼馴染の男の人がいるし、宗像も故郷に男を残しているから、可能性は低いとして、残りは誰が“こう”なってもおかしくない。

特に、柏木と築地は、だいぶ好意を持っている様子だったから、時間の問題の気がする。──ただ、私のように自分から“お願い”するかといえば疑問だけど。
遙のように少佐から口説かれるという場合もあるので、伊隅大尉と宗像を除いて、次の女には誰がなってもおかしくない。

いや、あの二人だって、この人に本気で口説かれたら怪しいものだ。

いつの間にかしようもないこと考えていた事に気付き、A-01の事を考えるのをやめる。
今は、この何かと凄い男を独占しているのだ。余計なことを考えていてはもったいない。

そういって、体を寄せて胸板に顔をうずめると、頭をなでられた。
思わず顔を向けると、少佐が起きて微笑んでいた。これまでにない、優しい笑顔だった。訓練修了の時の微笑みとも違う。──私のうぬぼれではなく、愛情が込められているのがわかった。

──やば……たまんないわね、これ……。

深みにはまっていくのを心地よく思い、頬が赤くなるのを感じたが、お互い何も言わず、起床時間まで、かたく抱擁を続けた。



…………………………



<< 香月夕呼 >>

11月10日 午前 国連軍横浜基地 香月夕呼執務室

「帝国軍に、なんとか最優先命令を出せたわ」
「それは良かった。欲を言えば帝国軍にも準備期間を与えられると良かったのですが」

「しようがないわ。余裕を持たせたら、正規のルートからの命令じゃない事がバレるもの」
「ですね。まあ、その分、A-01は準備万全です。今回は問題ないでしょう」

今回、新潟に上陸するBETAを帝国軍が迎撃するのに紛れて、A-01にはBETAを捕獲させる予定だ。
困難な作戦だけど、この短期間で、A-01はかなり部隊としての戦力が上がったという。
白銀も成功率は高いと見ている。

「で、結局アンタはA-01に随伴しないのね?」
「ええ。伊隅主体の作戦で問題ないでしょうし、そのために俺との連携訓練を延期していましたからね」

「わかったわ。じゃあ、今回アンタはどうするの?」
「留守番も何ですので、影からこっそり付いて行きます」

その答えが若干腑に落ちなかったので、理由を問いただす。

「随分面倒な真似するのね?一緒に行けばいいじゃない」
「ただでさえBETAのプレッシャーがあるのに、“鬼教官”の俺がウロチョロしてたら気が散りますよ。俺なしでヴァルキリーズがどれくらい戦えるのかを見たいというのもありますし。まあ、危なくなったら助けに入りますよ」
「そう。よくわかんないけど、作戦行動の詳細は任せるわ。好きにしなさい」

白銀の能力を認識した私は、軍事面に関して、頻繁に助言を求めるようになっていた。何しろ、外見からは想像もつかないが、歴戦の大佐級の男なのだ。

腹心の伊隅にもその能力はあるだろうが、彼女に与えられる情報は限られている。
私は、部下の中では伊隅を最も信頼しているけど、それでもオルタネイティヴの根幹となる情報を、全て与えていいものではない。

そこへ、この白銀だ。
コイツは最初からほとんどの事情を知っている。最初はその事に、憤りや鬱陶しさを感じたものだが、今ではそれがうまい具合に働いている。
事情通の人間が腹心に居ると居ないのとでは、だいぶ違う。
この私といえど、無謬ではない。自分の判断だけでは、どうしても隙が出る。白銀の反応を見て修正することもあれば、白銀の助言で気付くこともある。

衛士として、白銀は、最強の駒だ。
将棋で例えれば、歩と王将だけで戦っている所に、飛車が手に入ったようなものだ。
けど、飛車は使い勝手は良くても、それだけだ。一局の戦いは変えられても、大局を変えうるものではない。

ところが、この飛車は軍事面に関して一言を持っている。他の歩を、金銀に変える力もある。
そのことで王将たる私は、他に神経や頭脳を回せる。これは、思いのほか大きかった。

伊隅達にとっては、駒としての白銀が眩しく見えるだろうが、私にとっては副次的なものにすぎない。
大局を見た助言は、一介の駒にはできないのだ。

結局、突然現れたこの奇妙な男は、一ヶ月も経たないうちに、かなり貴重なブレーンとして、私の傍らに収まってしまったことになる。──白銀の思い通りにされているようで、若干の忌々しさは残るが。

「──で、昨晩は誰?そろそろ新顔を落とす頃かしら」

方針が一通り決まったことで、戯れに聞いてみた。
白銀が入室した際、石鹸の匂いがした。つまり、体を洗う必要があったということだ。
コイツがここにくるたび、匂いで詮索しているようで、尋ねることに少々抵抗感もあったが、この鬼畜が他の女をどう落としてるのかという興味がまさった。
白銀も“私”と長い付き合いのせいか、私が嫉妬や下世話な話題をしたくて聞いてるのではないと分かっているので、素直に答えてくれる。こういう、余計な説明が不要なのは、やりやすい。

「速瀬ですよ」
「それはまた、意外──いえ、涼宮姉が落ちたんだものね。不思議ではないか」

同じような想いを抱いていた涼宮姉が落ちたから、速瀬も──というほど単純ではないのだろうけど、私は速瀬が落ちたことが、自然なように感じた。

「で、次はA-01の誰か狙ってるの?それとも207?」
「今のところ、特に狙ってるとかはありませんね」

その場の流れにまかせる、という事だろうか。

「207の連中は、任官後だっけね」
「それですが……アイツ等は、“この”世界では諦める事も考慮しています」
「あら、いいの?アンタ、随分あの子達にこだわってたじゃない」

“前の”世界での初めての相手と、訓練兵の頃から苦楽をともにした同期の戦友。白銀がかなり執着を持っているのは、これまでに交わした会話から明らかだ。

「そりゃ、ありますよ。アイツ等は俺にとって特別ですから──でも、だからといってアイツ等への態度を変えるわけにはいきません」
「そう」

特別な事情なだけに、今までが、幾分甘めの指導になっていた207訓練小隊に、白銀が厳しく指導をするつもりなのは、以前、私が許可を与えたので知っている。

情が深く、情を大切にする男だけど、情に左右されて大局を見誤る男ではない、と思ったのはそれを聞いてからだ。
コイツは、私と同類──目的のためなら、最悪、親友のまりもですら切り捨てるつもりの私と、同じ感覚を持っている。
無論、泣きも悲しみもするだろうが、最悪の場合は御剣や鑑、自分自身ですら、切り捨てる覚悟はあるだろう。

──人類にとって、より良い未来を得る為に。

その事を理解して、私は高い性交力や、優れた戦略・戦術眼をもつからではなく、感覚として同類のものを感じたからこそ、“前の”私は白銀を恋人としたのだ、とようやく気付いた。

「じゃ、伊隅への作戦伝達、よろしくね」
「了解──ところで、作戦内容以外、伊隅にはどこまで開示していいんですか?」

「うまいこと、ぼかしなさい」
「了解」

白銀は、私の適当な命令にも、戸惑いもせず受け入れる。

──このあたりの余裕さは伊隅にない所ね。

日を追うごとに白銀への執着心が高まっているのを感じながら、面会を切り上げた。



…………………………



<< 伊隅みちる >>

11月10日 午前 国連軍横浜基地 ブリーフィングルーム

明日の作戦を今日説明されるというのは、唐突ではあるが、今までの経験上、珍しくはないので、驚きはしない。

それよりも私は、白銀少佐から作戦説明を受けているという事自体に、思いを馳せていた。
白銀少佐が我々の前に現れるまでは、副司令から直接説明があった。今日の説明を見るに、今後、軍事行動に関しては少佐に任せたという意志表示だろう。

副司令直属の中で、軍事面に関しては私がトップだと思っていた。事実はどうあれ、私にとってはぽっと出の上官が沸いて出たようなものだ。少しは嫉妬や、忸怩たる思いがあるのが普通だが……そんな感情は私の中になかった。

初対面以来、この人の凄さを見せ付けられすぎたのだ。上に立って当然、という風格と能力が、白銀少佐にはある。だから、この説明を受ける時も、むしろこの人が上司となることに安心感さえ感じたものだが──その内容には驚かされた。

「それは、BETAの行動を予測したということですか!?」
「ああ。どうやったかは俺も知らん。ただ、副司令の新理論による測定らしい。確率はそう高くない。当たればもうけもの、という感じだな。予測可能なのも今回一度きりらしい」

結局よくわからないことがわかったが、うまくぼかされた気もする。
だとしても、それは副司令がそのように判断したのだ。聞き返すような馬鹿な真似はしない。

「BETAが来なければそのまま帰還すればいい。無駄金を使ったことで、各方面に釈明するのは副司令だ。実戦部隊としては可能性は低かろうが“必ず来る”ということを想定して作戦を立てる。いいな?」
「了解」
「で、今回の作戦の目的だが──」

そして、白銀少佐から作戦の目的を聞き、どのようにそれを遂行するか、すり合わせを行った。
──というよりも、少佐の話す内容に隙は無く、私はほとんど相槌を打つだけだったのだが。

「以上でいいな。では、隊員への伝達後、出撃準備に取り掛かれ。補給物資とBETA捕獲用の装備、BETA輸送トラックの手配は俺からピアティフ中尉に伝えておく」
「了解」



…………………………



「──以上が今回の作戦だ。何か質問はあるか?」

少佐と別れた私は、集合させたA-01の面々に、先ほど少佐と詰めた作戦内容を説明した。
皆、驚きの顔は隠せない。また、新任連中は初陣となるため、顔が緊張で強張っている。

「大尉」
「なんだ、速瀬?」

さっそく速瀬が口火を切った。おそらく速瀬は、私も驚いた“あの事”を聞いてくるだろう。

「今回、白銀少佐は出撃なさらないのですか?」

おい、最初の質問がそれか?
普通そこは、BETAの行動予測の事を驚くのがスジだろう。BETAの行動を予測したんだぞ?
……まあ、とりあえず、返答はしてやる。

「ああ、少佐は『連携訓練してないやつがウロウロしてても邪魔なだけだろう』とおっしゃっていた。今回は見送りとのことだ。──他に質問は?」

──さあ、次はBETAの行動予測の事を聞くんだろう?

私のその予測に反して、速瀬がなぜか落ち込むような表情をした。

「はあ、そうですか……」
「おや、速瀬中尉、白銀少佐がいなくて寂しいのですか?」
「ば!んな……」

宗像のからかいに「んなわきゃないでしょーが!」という台詞を予想したが……そこには顔を真っ赤にするだけの速瀬がいた。

全員、驚愕。

きっかけを作った宗像でさえ、二の句が継げない。

──あれ?なんで涼宮だけ「やれやれ」って顔してるの?

「ん、んー、んなわけないでしょ?(ニッコリ)」

速瀬はわざとらしく返したが、これはどうみても……明星作戦で戦死した鳴海少尉の事を想っていたはずだが、吹っ切れたということか?
しかし、“あの”白銀少佐だぞ?──いや、まあ、悪くはない──のか?

他のみんなも同じような心境だったのだろう。その後、誰も速瀬と白銀少佐の事には触れなかった。
ただ一人、訳知り顔の涼宮が気になったが、何も言えず、全員、出撃準備にとりかかった。

──結局、誰もBETAの行動予測の事を質問してこなかった。

もし聞いてきたら“Need To Know”の事を話してやろうと思っていた私は、肩透かしされた気分になり、少し寂しさを感じた。



…………………………



<< 御剣冥夜 >>

11月10日 夜 国連軍横浜基地 御剣冥夜自室

私は寝台に身を伏せて、今日の戦術機動作演習の事を思い起こす。

──白銀少佐は、今日も来られなかった。

一昨日、強烈な言葉と共に、我等の前に再び姿を現した、同い年の上官。
他の者たちは、昨日、今日と、その姿が見えないことに安堵していた。
それに気付いた神宮司教官は、何もおっしゃらなかったが、その目は厳しかった。

あの者たちはまだ、沈んでいる。やはり上官からの“嫌い”宣言は相当、心に堪えたようだ。
それだけではなく、我等が不干渉としていた事を、ああもあからさまに指摘した。あの者たちは、あまりの予想外の少佐の態度に、反感すら起こらないようだ。
これからの訓練の過酷さを想像し、滅入ってしまっている。

だが、あの者たちには言っていないが、私には、白銀少佐がただ嫌味を言う為に、あのような事を言ったとは思えなかった。
確かに私にとってもあの言葉は堪えたのだが──すべてもっともな事であった。
我等が優遇されているのは確か。あの言葉は、普通に考えれば、これまでにあってしかるべき言葉だ。
反論した私を殴ったのも、むしろ、あのような対応を今までされなかったのが不思議なくらいだ。──その理由は明白なのだが。

無論、私の考えすぎかもしれぬ。だが、あの眼。
迫力はあったが、最初に感じたときと同様、悪意は見えなかった。

また、私の疑念を最も強くしたのは、昨日の武御雷の件。どう考えても、私に火の粉がかからないようにしてくれたとしか思えぬ。……考えれば考えるほど、白銀少佐の言動は腑に落ちぬのだ。

──あの方の本心が知りたい。

あの方は、いずれ我等の訓練指導に当たられるはず。
そうすれば、あの方の本心が、わかる時が来るのであろうか。

──少佐は今、何を考え、何をしていらっしゃるのか。

誰も答えようの無い問いは、私の中でむなしく消えていった。



…………………………



<< おっさん >>

11月10日 夜 国連軍横浜基地 おっさんの巣

俺の隣では、裸の霞が、穏やかな顔で眠っている。

昨日、俺が霞の元に行く意思があったのをリーディングで読み取り、今か今かと待っている時に、速瀬が横からかっさらってしまった。そのため、昨晩の霞は悶々とした状態だったらしい。

そういう訳で、霞は、今日いち早く俺のもとに来たというわけだ。

霞は徐々に慣らした甲斐あって、だいぶこなれてきた。これなら実用に耐えうるだろう。
毎日のお口の特訓も効いている。こっちに関しては現『メンバー』の中ではピカイチだ。
まだ当分、教えないでおこうと思っていた、俺の後ろの穴へも、率先して奉仕してきた。
若いので少し心配だったが、さすがは天才少女。そつなくこなす。

『メンバー』も増えて来たので、そろそろスケジュール管理をする女が必要になってきた。俺の精力は無限だが、時間は有限なのだ。
“前の”世界でのスケジュール担当は初代は委員長、2代目はみちる。──委員長が戦死したとき、その重要性がいやというほど実感したものだ。
『メンバー』の中で最も公正だった2人でさえ、やや自分の割合を増やす傾向があった。彩峰などに任せてしまえば、自分一色のスケジュールを組むに違いない。今のメンバーでは、誰にまかせるべきか……。
霞、イリーナ、まりも、遙、水月。──だめだ、どいつもアッチに関しては自分本位なやつらばかりだ。兵はいても将がいない。
夕呼がやってくれるわけもない。お願いしたら、きっと解剖される。

──仕方ない、当面のスケジュールは自分で決めるしかないようだ。

俺は舌打ちとともに、今の状況を呪った。
そして、もう一つの懸念事項を思い浮かべる。

昨晩は予定より早く水月を入手した。それ自体は問題ない。
遙と水月、これでブタごっこをする駒は揃ったのだから。









だが──肝心の鼻フックがないのだ。

夕食後、PXの職員に訊ねたら、「はあ……おいてませんが」と、怪訝な顔をされただけだった。
聞けば、取り寄せも出来ないらしい。全く、融通の利かないことだ。
しかも、ボールギャグ、ローター、バイブ、他に色々使いたかった道具も、ほとんどが駄目だった。
目隠しや拘束用の縄は、他のもので代用できるし、クスコは医療器具だから置いてあったのだが。

あと一歩というときに、俺の前に立ちはだかった大きな壁。

──ああ、そうか、夕呼はこのような気持ちだったのか。

夕呼も、手のひらサイズの並列回路が完成しないばかりに、00ユニットの目処が立たないという状況で苦悩していた。俺は、今やっと、あの時の夕呼の心境を、真の意味で理解したのだ。
長い間、こんな苦悩を抱えて研究を続ける夕呼のプレッシャーは相当なものだったろう。
俺は、今は恋人未満である彼女の凄さを、改めて再確認させられた気分になった。

だが、“前の”夕呼は最後まで諦めなかった。俺も諦めるのはまだ早い。何か手はあるはずだ。



…………………………



思いつかない、だめだ。──クソ!アラスカのPXには売ってあったというのに──……あれ?

「そうか、アラスカに行けばいいんだ」

ここに売ってないなら、売っている所に行けばいい。
こんな簡単なことに気付かないなんて、俺も焦りで血の巡りが悪くなっていたらしい。

アラスカのユーコン基地のPXには、鼻フックはもちろん、鞭や木馬、さまざまな道具があったので、アダルト・ハードSMコーナーは、委員長御用達だった。──今回はハードSMは避けるつもりだから、鞭と木馬は不要だが。
横浜基地に無いのは、同じ国連基地とはいえ、お国柄というやつだろうか。

となると、残る問題は出張の口実。
アラスカといえば、篁唯依──不知火弐型。

そう、不知火弐型。アレは丁度良い出張理由になる。
アレの機動力は、俺の操作感と抜群に相性が良い。俺としても、使える戦術機を入手できるというのはありがたい。この理由であれば、夕呼も疑わないだろう。
そして、あの篁唯依──もしかしたら、あの女もこの時期に手に入れることができるかもしれない。

「まさに、一石三鳥の作戦……ククク」

俺は、高揚する気持ちを抑えつつ、アラスカ出張を今後の予定に組み込むことを決めた。


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