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No.40071の一覧
[0] ブリュンヒルデへの道<IS インフィニット・ストラトス>[proteios](2014/06/18 23:25)
[1] [proteios](2014/06/18 23:26)
[2] 2[proteios](2014/09/24 21:47)
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[40071] ブリュンヒルデへの道<IS インフィニット・ストラトス>
Name: proteios◆7529948c ID:1e05fb1a 次を表示する
Date: 2014/06/18 23:25
はじめまして、proteiosと申します。

ISで初めてSSを書きました。至らないこともあるかと思いますが、宜しくお願いします。

本作品には以下の注意点が存在します。

・オリジナル主人公、オリジナルIS
・オリジナル設定、独自解釈
・原作改変
・他作品(漫画、ゲームetc...)からの技の登場(パクリ)

以上の点を確認して本文にお進み下さい。






―――初撃こそ最も肝要である。
古来から現在に至るまで、古今東西に数多存在する武術、格闘技に共通するある種の常識である。
戦闘には潮流がある。それを把握し、自らが流れを組み立てていくことで、より確実に、より効率的に勝利を己が手中に強奪することが叶う。
為にこその初撃。
初手で対敵の威勢を挫き、意図を潰す。そして、此方の意図を押し付け、威勢に乗る。
戦闘とは彼我の行動が一手ずつ数珠繋ぎに連なることで形成されていく。
である以上、ある点の一手の良し悪しは、その直前の一手の影響に多分に左右される。一度崩れると容易には持ち直せない。彼我の戦術的優劣は加速度的に、その隔絶を拡げていく。
故に、初撃こそが最も肝要なのだ。
彼我の戦術的優劣の差が未だ無い、零地点からの一手こそが、その戦闘の行く末に大きく影響を及ぼす。
―――と、俺は師から学んだ。
そして、これはなにも武術や格闘技だけに当て嵌まる事項ではない。
寧ろ、人の世のあらゆる現象に言えることだろう。
特にその結果が如実に表れるのが―――
―――『人物評価における初遭遇時の言動が占める比重』
つまりは、第一印象である。


「初めまして、湯ノ塚修学です。日本国政府が指導するIS関連プロジェクトの一員としてこの学園に編入することになりました。未だISの操縦経験や知識は乏しいので、皆さんに色々とお聞きすることもあると思います。ですが、1組の一員として恥じることの無いように精進していきますので、これから1年宜しくお願いします」
言い終わり、頭を下げ一礼。姿勢を戻し、眼前に居並ぶ級友の様子を窺う。
『………………』
5秒。
10秒。
「…………」
反応が、全く無い。
誰も一言も発さず、何かしら行動を起こすことも無い。
……おかしい、何故だ。
恐らく、通常の学校で転校生の自己紹介が行われれば、担任教師が軽く拍手をし、それにつられて組の生徒から疎らながら拍手が起こり、担任教師が一言二言感想なりを述べて終りとなるはずだ。
俺自身は転校経験も無く、転校生が来たこともないが、周囲の話や創作物などから得た知識ではそのような展開だったはず。
……もしや。
俺の自己紹介の文言に、なにかしらの多大な問題が存在したのだろうか?
担任教師をも含めた、この場の人間全員が著しく気分を害するような言葉が。
いや、まさか、そんなことは。
昨日一晩を通して考え文章に起こし、何度も見直しを行った。
結果、俺の言語能力から判断して、これが導き出され得る最善の内容であると決断した。
では、何故?
自己に問題点が確認されないにも関わらず、反応が芳しくないのは―――外的要因によるものか。
やはり、この学園は俺が今まで培ってきた常識では測れない、特殊な環境なのか。
高等学校でありながら、男子生徒は1組、どころか学園全体を見回しても俺を含め2人。
明らかに俺は異質な存在だ。
それが理由で級友に受け入れられないのか。
……駄目か。
第一印象がこれでは、最早どれだけ足掻こうと、この組の生徒達とは友好的な関係を築けそうにない。
いや、最悪他の組や他学年の上級生、果ては教員までを含めた、文字通り学園全体の人間から排他的な扱いを受ける可能性も充分に考えられる。
それ位の苦難で俺の目的を諦める心算は、勿論無い。
だが。
特殊な環境と知りつつも、新たな学び舎での生活に僅かでも心を躍らせていた俺は、やはり甘かったということか―――
『……きゃ…』
「……?」
暗澹とした気分の中で、己が愚昧さを猛省していると、数人の級友が息を吸い込むかのような声を発していた。
何だ?ここから更に、俺に対してどんな追い撃ちを―――
『きゃああああああぁぁぁっ!!!』
「~~~~っ、ぐぁ……」
女性特有の甲高い、所謂黄色い声の、絶叫が上がった。
全員の正面に位置していた俺は、その声量全てをモロに鼓膜に打ちつけられ、一瞬耳が遠くなった。
「男子!2人目の男子!」
「しかもまたウチのクラスに!」
「織斑君とはまた違うワイルドな感じの!」
「それなのに礼儀正しいギャップがイイ!」
「織斑君とは違う礼儀正しい感じの!」
「おい!?俺と違って礼儀正しいってどういうことだよ!?」
そこから次々と級友から声があがる。
「……」
辛うじて聞き取れる言葉から判断すると―――
―――好意的に迎えられている、のか?
いや、それでは先程までの間は、何だ?
もしや、単に余りにも異例な事態に対して、思考が追いついていなかっただけか?
だとすれば、この良好な反応は嬉しい限りだが、同時に数秒前までの自分の被害妄想じみた想像を思い返すと、顔から火が出そうなほど恥じ入ってしまう。
「あ~、静かにしろ馬鹿共。聞いての通り湯ノ塚はお前達受験組とは違い、少々特殊な事情により本学園に編入となった。後で本人に質問すれば分かるだろうが、湯ノ塚が参加している計画からお前達が学びとるべきこともあるはずだ。またその関係上、ISの操縦時間の累計もお前達を上回っている。互いに学び合い、競い合うことで日々の勉学に励むように」
織斑先生は、さり気無く直前の俺の自己紹介の内容を部分否定し、俺に対する周囲評価(ハードル)を上げていった。
確かに、俺のIS操縦時間は大体の一年生よりも長いだろう。だが、まだISに触れ始めて数カ月やそこらの段階では、ドングリの背比べもいいところだ。
それにこの組には代表候補生も居ると聞く。俺などに聞くよりもその生徒に聞いたほうが、遥かに効率良く学べると思うのだが。
何よりも、俺の機体は他のISとは大きく異なる。その意味でもIS操縦で俺が有用な指導が出来るとは思えない。
とは言え、先程精進すると言った舌の根も乾いていない。
先ずは自分に出来る範囲で、必要に応じて周囲の質問に対応していくとしよう。


「湯ノ塚君の趣味って何?」
「身体つきガッシリしてるよね~、何かスポーツやってるの?」
「もしかして、湯ノ塚君も専用機持ちだったりする?」
「いや、あの……」
言った。
確かに可能な限り質問に答えるとは言った。
だが、俺はIS関連の質問を予想していたのだ。主に俺が参加している計画に関する受け答えを。
ところが、授業が終わり級友が周囲を取り囲んでからというもの、聞かれることの殆どは一般の高校で転校生に対するそれと大差ない。
しかも、数人が一度に聞いて来るので、まともに答えることが出来ない。
この状況にも困惑している。今までの人生の中で、これ程大勢の女子に囲まれ話をすることなど無かった。情けないことに、俺の人生経験では適切な対処方法が割り出せない。
取り敢えずは一つずつ質問に答えていくべきか?それとも――
「おーい、あんまりガッツクなよ。困ってるだろ」
そう言って、女子達を掻き分けるようにして頭一つ上背がある人物が目の前に歩み寄る。
――織斑一夏、ここIS学園における俺を除いた唯一の男子生徒。
世界初の男性IS操縦者。
あの織斑千冬――織斑先生の弟。
「俺は織斑一夏、宜しくな」
そう言って右手を差し出してきた。
「――ああ、君があの織斑君ですか。湯ノ塚です、宜しくお願いします。良かったです、唯一の男子生徒が同じクラスで」
応えて、俺も右手を差し出し、握手を交わす。
「本当にな。大変だったよ、今までは。男は俺だけで、最初の方は珍獣扱いだったし……」
「はあ、そ、そうなんですか……」
俺の手を強く握り、吐露する織斑君の姿には、入学してから今までの苦労が滲み出ているようだった。
「それよりも、なんか言葉遣いが堅いなー。俺のことは一夏でいいよ。俺も修学ってよんでいいか?」
なんとも自然に心身の距離を詰めてくる人だ。だが、それでいて押しつけがましいような不快感を覚えることは無い。不思議なものだが、彼――一夏の纏っている気さくな雰囲気が為せる業なのだろうか。
社交性の低い俺にとって大いに見習うべき人格だ。
「ああ、勿論だ。一夏」
「むー、おりむーだって湯ノ塚君のこと一人占めしてるじゃん。ずるーい」
『そうだ、そうだー』
「なあっ!?」
俺の一夏のやり取りを見ていた女子の一人、布仏さん(質問攻めになる前に自己紹介をしていた内の一人)の指摘とそれに追随した女子達の声を受けて、一夏は素っ頓狂な悲鳴をあげた。
「いでっ!?」
さらに、斜め後方に立っているポニーテールの女子に、耳を掴まれて引っ張られた。
「そうだな……。それに、今の台詞からするとお前は今までの生活に不満があったように聞こえるが?」
「そうですわね。この私と同じクラスで過ごしたことを不満と言うのは、聞き過ごせませんわ」
ポニーテールの女子の言葉に、その隣立つ金髪碧眼の少女が追従した。
何やら、二人とも周りが見えていない程に、機嫌が悪いように見える。確かに、一夏の言葉は少々級友達に対して失礼だったかも知れないが、ここまで機嫌を損ねるだろうか。しかも、この2人だけが。
どうやら、3人の間には込み入った事情があるらしい。
「いててっ、いやそんな意味で言ったんじゃ……」
「一夏、其方の2人は?」
俺が水を向けると、2人は自分の世界が戻ったようで、咳払いをしてから自己紹介を始めた。
「篠ノ野箒だ、宜しく頼む」
「イギリスの代表候補生をつとめております、セシリア・オルコットと申します。宜しくお願いいたします」
彼女達が――
あのIS開発者の篠ノ野束博士の妹に、イギリスの代表候補生。一夏と言い、この組には話題性の高い人物が揃っているな。
俺を含め、要監視対象の生徒は1ヶ所に纏めた方が、学園としても不足の事態に対応し易いということか。
「ねー、湯ノ塚く~ん。私達の話もきいてよー」
3人に気を取られていると、布仏さんが拗ねたような声をあげた。
「ああ、すまない。それでは……」
「改めて1つずつ質問に答えていけばいいんじゃないか?それじゃあ、修学に質問がある人は挙手するように」
「おお、おりむーが珍しくグラス代表っぽく取り仕切ってる」
皆からの質問にどう対処すればいいか悩んでいると、一夏が助舟を出してくれた。良く気の周る人だ、というかクラス代表だったのか。てっきりオルコットさんかと思ったが。
「はいはーい、じゃあ私からー。湯ノ塚君の趣味って何―?」
布仏さんが先陣を切って来た。
「趣味は読書だ。主に娯楽小説を読むが、それ以外も少々」
「へー、意外だね―。体格がいいからてっきり身体を動かすのが趣味かと思っちゃった」
「はい!次あたしー。じゃあ何か部活やってた?良かったらハンドボール部に入ってみない?その身体だったら活躍できるよー」
二番手は、確か……相川さんだな。先程の連続自己紹介に際にも、ハンドボール部所属だと言っていた。
「いや、部活には所属していなかった。学校外の活動、というか実家が道場を経営していたから、そこへ通っていた。それと、申し訳ないけど部活動に所属する心算は無い。すまない」
「そっかー、残念だけど無理強いはよくないか」
「道場……、何の武術を学んでいたのだ?」
道場という単語に反応した篠ノ野さんが挙手した。もしかすると、彼女も何か武術経験があるのだろうか。
「皆には馴染が無いものだろうが、古武術を学んでいた。実家が代々継承してきたもので、俺も7代目として家族から教えを受けていた」
「ほう、古武術を……。剣術の心得もあるのか?」
「勿論だ。剣術の他にも、体術や薙刀術等も組み込まれた総合武術の流派だからな」
「へー、なんかカッコいいね。そう言われると、湯ノ塚君てサムライっぽいよね。物腰とか、その髪型とかも」
「うんうん。武士道とか似合いそうな感じ」
「…………」
正直なところ、古武術を学んでいると打ち明けるのには、多少の覚悟を必要とした。
隠すようなことでも、無論恥じるようなことでもないと俺は思っているが、過去の経験から言って自分から周囲に話して回ろうとは思っていなかった。
この髪も、男にしては珍しく長髪を後ろで結っている形だ。自分で選んだ髪形だが、その所為でからかわれたりもした。
どうやら、少なくともこの組の方々はあまり偏見意識を持たない、協調的な人物らしい。
「ふむ、ならば一度手合わせをお願いしたいな。私も剣については少々心得がある」
微笑みの中に鋭い目付きを織り交ぜた表情で、篠ノ之さんが言った。
「ああ、機会があれば受けさせて頂くよ。俺としても多流派の人との試合は多く経験しておきたいものだから」
「じゃあ、次は私。世界で2人目のIS操縦者ってことは、やっぱり湯ノ塚君も専用機持ちなの?」
この人は、鷹月さんだな。賑やかな人が多い中で、落ち着いていたかのが印象的だったので、比較的名前を覚えやすかった。
「ああ、俺の参加している計画が所有している機体を支給して頂いている。それに関係したことなんだが、俺の専用機は計画の研究指針からかなり特殊な仕様になっているんだ。織斑先生はああ仰っていたけれど、俺から皆にIS操縦で皆に有用な助言はあまり送れないかも知れない」
「特殊な仕様、ですか?具体的にはどのような――」
――――――――――ッ
「授業が始まるぞ、席に着け小娘共」
オルコットさんが俺の専用機についてさらに質問を重ねようとしたところで予鈴が鳴り、織斑先生が入室して来て、俺への質問は打ち切りとなった。
「さて、突然で悪いがこの時限の内容を変更して、IS操縦の実習を行う。ISスーツに着替える必要は無い、全員そのまま演習場に集合するように」
織斑先生のいきなりの授業内容変更の発言に、教室内がざわつきだす。
IS学園ではIS関連の授業に加えて、一般的な高校で教えられる、必須教科の授業も当然行われる。その為、一般校と比較し授業スケジュールは極めて過密で、授業内容の変更などはまず起こらない筈だった。
「先生、何故授業内容が変更になったのでしょうか?それと、実習を行うのにISスーツに着替える必要がないとは……」
全員の疑問を、オルコットさんが代表して質問した。当然の疑問と言える
「それらの理由を纏めて、今説明する。先ずは、入って来い」
織斑先生がそれを受けて、何故か教室内に人を招いた。扉の傍に待機していたらしい人物が入室して来た。
髪をツインテールに結った、比較的小柄な女子生徒が教壇の傍に立った。
「鈴?なんで」
一夏がその人物に反応した。知り合いか。
「今から2組と合同でISの模擬戦闘訓練を行う。貴様等にはそれを観戦し、戦闘の経過と結果についてレポートを提出してもらう。2組からは鳳が選出された、この組から選出されたのは……」
織斑先生の視線が、俺のそれとぶつかる。
「湯ノ塚、お前だ」
教室中で、驚きの声が上げられた。
何故、俺だ?
いや、このタイミングでこんな話が出た時点で薄く予感はしていた。だが実際にその現実と直面すると、俺自身も驚愕せざるを得ない。
俺に対する事前連絡は一切無い。つまり、本当につい先程、直前の休憩時間中に決定された事案ということになる。実際はもう少し前から協議されていたのかも知れないが、決定が下されたのはそういうことだろう。
「静かにせんか、理由を説明する。主な理由は二つある。一つは、既に本人から聞いたかも知れないが、湯ノ塚の所有する専用機の特性に依るものだ」
やはり、というべきなのか俺に思い当たる原因としては、それ以外無い。
「今朝説明したように、湯ノ塚の専用機はその所属している計画の性質上、非常に特殊な機体仕様となっている。そのため、事前の説明なしに今後に予定されているIS操縦の実習を行う場合、他の専用機持ちの生徒と同じように湯ノ塚に指導役を任せると、使用される練習機との差異により様々な不都合が起こると予測される。それを未然に防ぐために模擬戦闘を行い、貴様等に解り易く湯ノ塚の専用機の機体特性を理解させようと、決定された次第だ」
織斑先生が説明した理由は、俺の予想と概ね一致していた。
しかし、それだけで過密な授業スケジュールの調整を行ってまで、このようなことをするだろうか?
しかも、2組をも巻き込んで。
今説明された理由からすれば、2組との合同授業にする必要が無い。俺の相手は1組から選出すれば事足りるからだ。
その不可解な点を解消するのが、もう一つの理由ということか?
「そして、もう一つの理由だが……。口で説明するよりも実際に見た方が早い。時間にあまり余裕が無い、急いで演習場に集合しろ」
何故か、織斑先生の言葉は歯切れが悪く、同時に含みを持たせていた。
それでも、織斑先生の号令を受けて全員が席を立ち移動を開始した。
「湯ノ塚」
俺も移動しようと立ち上がると、織斑先生に呼び止められ、模擬選の形式は通常のISバトルの規定にそうこと、使用武装は自由であることが告げられた。
「修学、大変なことになったな」
「確かにな。だが、学園側で決定されたことである以上、最善の結果を得られるようやるだけだ」
ISスーツに着替えるために更衣室に移動している途中で、一夏が話しかけてきた。俺の緊張を解そうとしているらしい。
「鈴はああ見えても中国の代表候補生だからな、気を付けた方がいいぞ」
「ほう、彼女も代表候補生なのか」
IS学園に来て最初の相手が、代表候補生。
一般校からの転入生徒と代表候補生。傍から見れば勝敗では無く、試合時間がどれ位になるかを予想すべき組み合わせだろう。
充分だ。
勝敗予想の賭け率が賭け不成立の段階だろうと、注目される試合であることに変わりはない。
大穴を出して俺の力を周囲に知らしめるには、充分過ぎる程に整えられた舞台だ。
「聞こえたわよ、一夏。ああ見えてもってどういう意味よ?」
「うおっ、鈴!?」
廊下を曲がり、更衣室の前まで来ると鳳さんが待ち構えていた。
「ふーん、あんたが噂の転入性か。アタシは鳳鈴音、中国の代表候補生よ。宜しく」
「湯ノ塚修学です、宜しくお願いします」
当然だろうが、オルコットさんと同じく鳳さんも、代表候補生であることに誇りをもっていることが窺えた。
「それにしても突然よね、今回の模擬戦。アタシもさっき聞かされたし。それだけあんたが注目されてるってことかしら?」
探るような笑みで此方に問いかけてくる。事前連絡も無しに突然転入性の模擬戦の相手に指名された身としては、他の生徒よりも俺に対しての興味もわき易いのだろう。
或いは、若干の挑発も含まれているのかも知れない。
代表候補生を指名させる程の腕がお前にあるのか、と。
――ある。
確かに、ISの操縦技術では向こうに一日の長がある。
しかし、それだけではない。ISの操縦技術だけが、勝敗を分かつ要素ではない。
俺には他のどんな生徒よりも、秀でた戦闘術がある。
それを証明してやる。
その為の第一歩だ。
「注目されているかどうかは解らないが、少なくとも退屈させない模擬戦にする心算だ。観戦している方々にとっても、貴方にとっても」
「ふーん、言うじゃない。それじゃあ、楽しませて貰おうかしら」
一瞬、鳳さんは驚いた様に目を見開いたが、すぐに不敵な笑みに戻り言った。
「それじゃ、俺も観客席に行くよ。頑張れよ、修学」
「ちょっと、一夏!アタシには何か一言ないわけ!?」
俺に励ましの言葉をかけ、観客席に向かおうとした一夏を、鳳さんが呼びとめた。一夏が自分に一言かけずに立ち去ろうとしたのが、気に障ったらしい。
今更だが、この2人はどういう関係なのだろう。かなり親しい関係だとは推察できるが、もしや恋人同士なのだろうか?
だとすれば、一夏が俺にだけ励ましの言葉をかけたことで、不機嫌になったとしても頷ける。
「ああ、鈴も頑張れよ」
「も!?も、ってどういうことよ一夏、一夏―!!」
さらに不機嫌になった鳳さんを慣れた様子であしらい、観客席へと続く通路へと一夏は去って行った。
「くっ、あのトウヘンボクめ~っ……!」
俺のついでのような言い方をされれば、当然だろう。
鳳さんはやり場の無い怒りを抑えようと握った拳を震わせている。
「こうなったら……」
と思っていたら、俯けていた顔を上げ俺に向き直った。
「思いっきり派手に戦ってアイツにアタシの凄さを見せつけてやるわ!恨むならあの馬鹿を恨みなさい!」
そう宣言して、自身に用意されたピットへと、鳳さんも去って行った。
――何故だろう。教室での篠ノ之さんとオルコットさんや今の鳳さんといい、一夏の周囲には複雑な人間関係が構築されている気がしてきた。
一夏に友人として接するなら俺もその中に組み込まれることになるのだろうかと考えると、何やら遣る瀬無い気分になったが、今からの模擬戦に向けてどうにか気分を持ち直し、更衣室のドアを開けた。




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