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No.40030の一覧
[0] 仮面番長 第1話「仮面番長、誕生」 (変身ヒーロー風学園物)[ギラファノコギリクワガタ](2014/06/06 05:55)
[1] 仮面番長 第1話「仮面番長、誕生」後編[ギラファノコギリクワガタ](2014/06/07 20:31)
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[40030] 仮面番長 第1話「仮面番長、誕生」 (変身ヒーロー風学園物)
Name: ギラファノコギリクワガタ◆f0249cc7 ID:241285cb 次を表示する
Date: 2014/06/06 05:55
※小説家になろう様との同時投稿です


「人が欲望、そして怒りを持っていなければ人の進化は石器時代で終わっていただろう」
---心理学者 赤崎宗一の論文より抜粋


その世界には太陽と月が同時に出ていた。

大きな屋敷の縁側に二人、並んで座っている。
「いいか良く聞けよ。もう一回言うぞ。私は、お前の、母親じゃ、無いッ!」
片方がもう片方の肩を掴み、捲し立てる。
「??? おかーさんは、おかーさんでしょ?」
少女は首を傾げた。物心付いてから、少女の母親は目の前の女性だった。
女性は少女を育て、様々なことを教えた。

「あ~、だからだな、お前の産みの親は私じゃなくて、」
「でも法的にはおかーさんなんでしょ?」
女性は一瞬詰まり、苦笑する。
「私、そういうの教えてないんだけどな・・・」
少女は得意げに胸を張る。
「おかーさんのシャテイさんから聞いたの!」
「ん?誰の事・・・」
女性はすぐに思い至る。彼女の「シャテイ」でこういう事に詳しいのは多くない。
「あぁ・・・あのモヤシ、次会ったらケツバットだな。」
「???」
少女は首を傾げた。

「私が言いたいのはだ。お前には私じゃない、本物の両親がいたんだ。」
女性は微笑む。
「いい奴等だったよ。付き合いは大して長くなかったけど、うん。いい奴等だった。」
少女は、その「両親」がもういない事を悟った。彼女は聡明だった。
「その人たちも、おかーさんのシャテイさんだったの?」
少女は、女性が自分に「両親」のことを知ってほしいのだと思った。
「そうだよ。母親のほうはバカだったけど明るくてね。逆に男は頭はいいが暗かった。
 ちょうどバランス取れてたんだよなぁ~。」
少女は想像しようとした。女性の「シャテイ」の中から「明るい馬鹿」と「頭のいい根暗」を選んで
母親と父親にしてみた。
「・・・うぇえ~・・・」
少女は苦虫を噛んだ顔をして、即座に打ち消した。
その事を女性に言ったら、女性は笑い転げた。
「ハッハハハハハッ!や、やめろ馬鹿、想像しちゃっただろ、ハッハハハハッ!!」
女性は1分ほど笑っていた。

「あ~、なんの話だっけ?」
「おかーさんの他に本物のおかーさんとおとーさんがいる話。」
「ああ、そうだ。・・・まぁ、なんだ。そろそろ言っといたほうがいいと思ってな。」
女性は少女の頭を撫でながら言った。

「・・・おかーさんは、私のおかーさんをするのが嫌になったの?」
「ばッ、違う違う!やめろよそういう事言うなよッ!」
撫でる速度が3倍増しになった。
「あー!もー!こういうの、センチメンタル?苦手なんだよ!あれだ、フィーリングだ!察しろ!」
「わわわわわかかかかったたたたたたたたたっ」

しばらくそのまま少女はシェイクされていたが、その後に少し考え込み。
「・・・じゃあ、おかーさんのことはなんて呼べばいいの?おかーさん2号?」
そう聞いた。
拳骨が降って来た。
「・・・痛いぃ~・・・」
「なんかそれだと私が不倫したみたいになるだろ!却下!」
女性は怒鳴った後に、

「っていうかだ。そもそも呼び方なんてもう決まってんだろ。」
ニヤリと笑った。

喜べ龍美。これからお前は私の舎弟だ。

そして私のことは、他の舎弟共と同じように、

ーーー番長と呼べ!!



女性の声が反響し、世界が廻る。

太陽と月が衝突し、混ざって溶け合う。

そして龍美は、覚醒した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


五十嵐龍美が夢から覚めて最初に見た物は、綺麗に手入れされた2本の爪だった。

「それ目覚まし。」
「うぉおおおおいッ!?」

間一髪、起き明けのサミングアンブッシュを回避した龍美。
一瞬でも遅れていれば爪が網膜に突き刺さり、最悪失明していたであろう。

「・・・いくらなんでも今の悲鳴は無いのではなくて?一応世間一般的には私達、いわゆる『お嬢様』なのだし。」
龍美の眼球を抉りかけた少女はため息と共に一切悪びれもせずそう言った。

「桃華、そもそも『お嬢様』は目潰ししないし、どんなお淑やかなご令嬢でも目潰しされたらあんな声出すよ・・・」
龍美は回避によってズレた机を元に戻す。
「それに・・・」
教室中から集まっていた視線がようやく戻った。休み時間終了間近のためか空席は無く、全員着席している。
ーーただ、視線は外れても意識は外れなかった。

「不意を付かれた表情も素敵・・・」「いつものクール感とはまたギャップが出て・・・いいね!」「だ、だれか今の瞬間の写真撮ってないの!?」「2千円」「買ったァ!!」「低い声も出るんだ・・・」「あの声で『脱げよ』とか言われたい」「『跪け豚が』とか言われたい」「ていうか踏まれたい」「でもその後に優しく『ごめんね、言いすぎた。許して・・・』とか言われたい」「眼は若干潤んでるんですね分かります」「ッシャア次の原稿はコレで決まりだァ!!」「でも私は龍美様の寝顔に萌えつつもやっぱり話が出来ないのが嫌でつい起こしちゃって理由も言えないからついツンデレる桃華様こそ今のイベントの最萌えポイントであると声高に主張する」「右に同じ」「激しく同意」「くっ・・・龍美様派の私も頷かざるを得ない・・・ッ!」

私立葛ノ葉女学院、高等科3年A組の教室の空気は瞬間的に暖まった。
当然のごとく全員女生徒、ほぼ全員がやんごとなき生まれの『お嬢様』である。

龍美は特に気にせず、いつもどおりに姿勢を正し、前席のロールした金髪と碧眼を見ながら、言った。
「・・・世間一般的には、何だっけ?」

ーー葛ノ葉女学院生徒会長、学年主席の才女である榊桃華はさっと目を逸らした。

「ああ、我が学院の品位が・・・どうしてこんな、場末のスナックのようなクラスに・・・」
「その例えもお嬢様からは絶対出ないと思う。」

ーー葛ノ葉女学院生徒会副会長、学年次席の才女である五十嵐龍美は、セミロングの黒髪に付いた寝癖を取りながら桃華を指して言った。

「言いにくいけど、桃華。結構染まってるよ、色々。」
「んなッ、なんですって・・・!違います、訂正しなさ」

休み時間終了のチャイムが鳴った。
その瞬間それまでの空気が幻のように消え失せる。
そこには知的で繊細、花も恥らう淑女達が静かに授業の開始を待っていた。

チャイムが鳴り終わった瞬間に教室の扉が開き、現国の教師が入室する。

「「「「先生、ご指導よろしくお願いいたします。」」」」

一糸乱れぬ起立、そして礼。彼女達の作法は完璧でありーーー

「はい、よろしくお願いします。やはりこのクラスは素晴らしいですね。休み時間明けですが頑張りましょう。」

ーーー教室の防音設備もまた、完璧だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


葛ノ葉女学院、生徒会室。
「そういえば、母さんから手紙来てた。昨日。」
龍美が生徒会事務用品の目録を更新しながら、思い出したように言う。
「あら、虎徹さんから?久しぶりね。」
桃華がオカルト研究会の部昇格を要求する嘆願書に3回目の「不許可」の印を押しながら言った。

「ほらコレ。写真も付いてる。」
龍美が取り出したのはエアメール。オーストラリアから投函された物だ。
中には便箋が1枚と、ヒクイドリの首を締め上げながら満面の笑顔でピースサインを取る女性の写真。

「うわぉ・・・何時ぞやのワニよりも凄いわね・・・」

現在、生徒会室には龍美と桃華の二人のみが事務仕事を進めていた。
他のメンバーは全員所用でいない。
書記は「バイトっす!」と開口一番に言って走り去り、
会計は「すみません、外せない食事会が・・・」と平謝りしながら帰宅し、
もう一人の会計は「弟の剣道の大会があるんです!」と「必勝」の書かれた鉢巻を巻いてカメラをもって目を輝かせて帰っていった。
当然のことながら、緊急を要する仕事は全員片付いている。そうでなければ勤まらない。

「・・・そういえばヒクイドリって絶滅危惧種だったような・・・」

ヒクイドリはオーストラリア等に生息する、全長平均170cm、体重は80kgほどの大きさであり、
鋭い嘴、そして爪による人の腹が裂けるほどの蹴りを放つ「世界一危険な鳥」である。
その鳥が、この写真では白目をむいて涎を垂らしていた。

「ああ、なるほど。なんか現地の警察みたいなのに追われたって書いてある。」

『おっす龍美!元気か?私は写真の通り超元気だ!なんかこの鳥に子供が襲われてたから助けたんだけど、その写真取った後に警察っぽい連中に囲まれてさ~。感謝状でもくれるのかと思ったら「ホールドアップ!」だよ!意味分からんよな?そんでとりあえず逃げてるところ。進行形ね。まぁもう十分南半球は堪能したからそろそろ北に行こうと思ってる。ちょっとだけ日本にも寄るかもね、気分次第だけど。でも今すぐ会いたいって言うならすぐ飛んでくから!あ、そろそろドアが蹴破られそうなんでこのへんで終わります。 虎徹   追伸、コアラとかカンガルーとかと撮った写真もあったけど弾が当たって穴開いちゃいました。てへぺろ』

桃華は手紙に目を通し、最後まで読み終わると頭を抱えた。
「あの人は相変わらず突っ込み所が多すぎる・・・ッ!」

龍美の母、五十嵐虎徹は現在日本を離れて世界を巡っている。これは今に始まったことではなく、虎徹は成人してからほとんど間をおかずに日本を発ち、以来現在のような旅を続けている。一時期龍美の為に帰国したが、それも1年程度でまた日本を発ってしまった。それからも大体2年おき程度には顔を見せるが、3日ほどでまたすぐ出てしまう。その繰り返しだった。

「まぁ母さんは番長だから。」
龍美は困り顔ながらも、微笑みながら呟く。
それを聞いた桃華の目は、夫からのDVを受け続けても『でも愛があるから』と言って別れない妻を見るようであった。

「桃華、何その目。凄く馬鹿にされてるような気がする。」
「違うわよ心配してるのよ。」
桃華は一拍置いて、続けた。

「貴女、もしかしてまだ『番長』になりたいとでも思ってるの?」
「・・・・・・・・・」

ーー間。

「まさか、そんな子供みたいなこと。無い無い。」
ーー口調はいたって冷静だったが、そう言う龍美の目は全力で泳いでいた。

桃華は、今日一番のため息をついた。この娘のこれからの人生は自分に懸かっていると、結構本気で思った。
「あのね龍美。わかっているとは思うけど、番長って職業じゃないのよ。」
「当然だよ。そういう俗物的な区分ができるようなものじゃあないん」
「そういうことじゃないっつーの!」

思わず淑女らしからぬ言葉が出てしまった。咳払いをして、続ける。

「いい?貴女は子供が「スーパーマンになりたい」って言うのと全く同じ事を言ってるのよ?」
「うぐぅ・・・」
「うぐぅじゃない。確かに母親に憧れるのはわかるけど、あの人は人間のカテゴリから外したほうがいいわ。」

ーー金属バット1本で重火器装備のマフィアを壊滅させたのが人間であってたまるか。
桃華はバット片手に暴れまわる鬼神を思い出しながら言った。

「そういう人が名乗って初めて許されるのよ、番長もスーパーマンも。」
「むむむ・・・」
「なにがむむむよ。」

龍美は唸りながら、口を尖らせた。
「桃華だって、子供のころは「正義の味方になりたい」って言ってたくせに・・・」
「子供のころの話でしょう。今は違うわ。」

桃華は胸を張る。ただでさえ豊かな双丘が更に強調された。

「私は学院卒業後に家を継ぐ。そして財力、権力、人脈、地盤を磐石に整えて悪党共の頭のみを裏表両側から潰すッ!それが今の私の確固たる目標よ。」
桃華の生家、榊家はかつてこの杉崎市及びその周辺を治めていた豪族の家系であり、その権威は現代に至っても健在であった。

「・・・初めて聞いた。大体予想してたけど。」
「言ってなかったかしら、まぁいいわ。ともかく!この歳になっての目標がそんな抽象的なものじゃ駄目よ。スーパーマンになりたいなら薬品研究の道に進んで超人になれる薬を発明する、くらいの事を言ってみせなさい。」

桃華の言い分はもっともだ。口調は少々きついが龍美を案じてくれていることは何よりもわかっている。
だが・・・龍美にとっての『番長』は、そういうものじゃない。
ーー確かに戦車相手に全く怯まずに突き進む姿には憧れたし。
ーー3つの部族の争いに割って入る豪胆さも凄いと思ったけど。
そういう「力」が欲しいのではないという事ははっきりしていた。

「別に今すぐ答えろとは言わないけど。来月までには聞きたいわね。」

今は4月の半ば程。5月には進路希望調査がある。
それまでに具体案を提示せよ、ということだ。

「・・・了解。」
「楽しみにしてるわよ?」

そして二人同時にペンを置く。事務作業が終了した。

「よし、完了。お疲れ様でした。」
「ええ、お疲れ様でした。今日は静かに仕事が出来たわ。」

『それってどういう意味っすか!』と書記の叫びが聞こえた気がした。

現在時刻は5時30分。窓を見れば、夕焼けが舞い散る桜を照らしている。

「さて、どこか寄り道でもしようか?」
「そうね、行きたいところがあるの。付き合ってもらえる?」

龍美は嫌な予感がした。
桃華は笑って言った。その笑顔は、相手に有無を言わせない類の物だった。

「い、一体どこに・・・?ヤクザの事務所とか?」
「当たらずとも遠からずね。」
「冗談で言ったのに!」

桃華は荷物を持って生徒会室のドアに手をかけ、振り返る。

「今から南地区に行くわ。もちろん来てくれるでしょう?」

龍美は「うげッ」と言いそうになるのを必死で我慢した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『よーし龍美。番長の鉄則を教えてやろう。』
『番長はな、怒っちゃ駄目なんだ。何でかわかるか?』
『そもそも番長は殺し合いはしない。するのは喧嘩だけだ。』
『殺し合いってのはつまり、お互いがお互いに殺意を抱いていることで成り立つ。』
『そんでもって、殺意は怒りから生まれる。どの程度の怒りで殺意に変わるかはそいつ次第だ。』
『ん?ああ、アレは例外だ。アレはそういうプロセスすっ飛ばしていきなり殺意だから。喜殺哀楽だから。』
『つまりつまり、怒りが無ければ殺意も無い。相手がどんなに殺意バリバリでも、こっちが笑ってればそれは喧嘩だ。』
『よって、番長は怒らない。QED、ってわけだ!』
『そういうこと。お前にはまだ早かったかな~。』
『ま。万が一、お前がトチ狂って番長を目指すようになったら。』
『覚えとけ。「番長、怒るべからず。」だ!』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


杉崎市は人口50万人程の都市であり、古くは平安より豪族が統治してきた歴史ある街である。
街の北部には有力貴族が軒を連ね、彼らの惜しげない投資により発展し続けた。
南部にはかつて豊かな田園風景が広がっていたという。

それでも時代によって変化は避けられない。
高度経済成長期。人口増加による建設ラッシュ。田園もほぼ全てが住宅、マンションへと変貌した。
それにより、かつての貴族街に大量の『下民』が流入した。
当初はこれも時代の流れかと貴族達も黙認してきたが、その後杉崎市の治安は急速に悪化した。
流入してきた者の中に紛れ込んでいたのだ。
貴族の財に目が眩んだゴロツキ、それを指揮するヤクザ。
「極道」などとのたまい自らの非道を正当化する、他人の生き血を啜る害虫達が。
彼らは初め何食わぬ顔で、善良なる下級市民として定住。自らの『商品』を提供した。
誘拐、人身売買、違法風俗、麻薬。
元いた住人はこういった闇の品に免疫が無く、そして資産は潤沢だ。極上の鴨である。
その後貴族が気が付くまで、彼らは密かに搾取を続けたのだ。

これに貴族達は激怒し、大規模な浄化作戦を決行。
北部に移住したヤクザ達はその全てが一掃された。
多くは捕まったが、貴族の意向を察した鼻の利く連中は素早く手を引き、南部に逃れた。
貴族達は新たな下民の流入を防ぐため、北部の土地の値段を大幅に吊り上げ、経済的バリケードを張った。
南部に逃れたヤクザ達は吸った蜜を使い、北部とは違うベクトルで街を発展させた。
そして貴族とヤクザの間で不干渉の密約が結ばれる。
貴族達はいわずもがな、ヤクザ達も今更老いさらばえた老体の生き血など不要だった。

現在。
北部には歴史ある古都と現代の高度な建築技術が調和した高級住宅街。
南部には一見、庶民達が慎ましやかに暮らす街。
しかし一歩路地に入ると賭博、ドラッグ、性風俗がヤクザ達の庇護により成り立つ眠らない繁華街。
中央部の杉崎駅と、街を分断するように建設された線路が境界となって。
北部と南部は同じ市内にありながら別国のような隔たりを見せている。
北部は「南の蛮人」、南は「北の老害」とそれぞれお互いを貶し合う。
これが杉崎市の現状であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「最近、保護者様方からいくつか苦情が来てるらしいのよ。生徒の帰宅が遅れてるってね。」

桃華が杉崎駅の階段を降りながら説明する。

「それが北の中での寄り道なら問題ないわ。昔はもっと厳しかったらしいけどね。」

「これが南地区になると大問題、っていうこと?」

龍美がその後ろから問う。

「そういうこと。」

「でも、生徒がこっち側に来てるっていう根拠はあるの?もしかしたら北の公園とかで遊んでたりとか・・・」

「あのね・・・高校生にもなってブランコや滑り台で喜ぶ女子がいると本気で思ってるのかしら?」

「思わない。」

確かに、北は豊かではあるのだが。
刺激に飢える乙女達にとっては退屈に過ぎるのだ。
ましてや、彼女達は徹底的に管理された温室で純粋培養される淑女達。
「外」に憧れるのも止む無しだろう。
問題は、その「外」がとんでもない魔境だということ。

「まぁ、それは分かったけど。私達がここにいることも大問題なんじゃないの?」

龍美は正直、すごく帰りたかった。
駅ひとつ挟んだ向こう側はまさしく別世界だった。
一応、駅付近は整備が行き届いてはいる。
だがそこかしこにいる住民の胡乱げな目線であったり、
「30分10000円ポッキリ!」「業界内では超低金利!」「いつも神は見ています」といったネオン看板だったり、
いたる所から漂うアルコール、煙草、そして僅かな鉄の香りであったり。
全感覚で「居場所が違う」事を叩きつけられるような。
こんな所に葛ノ葉の生徒が来たら全力で逃げるか、さもなくば周囲の空気に囚われてしまうだろう。

ここに来るのは初めてではないが、いつ来ても慣れない。そして慣れたくないとも思った。

「安心しなさい、許可は取ってるから。それに何も南地区のパトロールをしようって事じゃないわ。」

「えっ、違うの?」

龍美としてはこれから一晩掛けて繁華街を歩き回ることも覚悟していた。
桃華はそれぐらいのことは平気でする。

「何よその目は。いくらなんでもそこまで非常識じゃないわよ。私達はここで待つ、それだけよ。」

「???」

「つまり、ここを通る葛ノ葉の生徒を見つけて注意するのよ。出入りはここからしか出来ないんだから。」

杉崎市において北地区と南地区は中央を走る線路により分断されている。
以前はいくつか踏切もあったが、貴族達の浄化作戦に伴い全て除去された。
よって、北と南を行き来するためには杉崎駅を渡るか、街の外から大回りするしかないのである。

「これは非公式の調査よ。学園側でも事を荒立てたくは無いでしょうからね。教師が動くと記録に残るのよ。」

「だからって生徒に調査を頼むなんておかしいんじゃ・・・」

「ああ、申し出たのよ私が。」

やっぱりか。龍美は脳内で盛大にため息をついた。
桃華は昔から正義感が強かった。
正論のみ綺麗事のみで何もしない偽善者ではなく。
冷徹に善悪を判断して悪を切り捨てる裁定者でもなかった。
たとえば、いじめがあった時。
桃華は表立って加害者達を糾弾することも、権力を用いて密かに「対処」することもしなかった。
ただ被害者の生徒と仲良くなった、それだけである。
桃華は自分の、榊家の持つ力を理解していた。
権力は、自ら動かなくてもただ在るだけで良いと識っていた。
そして、権力とは自らのために振るう物ではないと言った。
『貴女だけでも、彼女達だけでもない。両方守るのが権力。ノブレス・オブリージュよ。』
彼女はそう言って、微笑みながら裂かれた教科書の修復を手伝ってくれた。

「まぁ、そういうことなら仕方ないね。いつまでやるの?」

「そうね、今日はとりあえず7時までにしましょう。」

「今『今日は』って言った!?」

「ええ。1日程度じゃ実態が分かるはずもないでしょ。1週間は覚悟しなさい。」

桃華はそう言ってから、神妙な顔を作った。

「誰がどの程度の浸かり具合なのか判らないと、フォローのしようが無いのよ・・・」

損な性格だと、龍美は思った。
でも、そういう彼女が、龍美は好きだった。当然友人としてだ。

「了解。それじゃあパンとジュースでも買ってくるよ。」

「え?いいわよ別に。特にお腹空いてるわけでもないし。」

「こういうときには茂みに隠れてパンを食べつつ張り込むっていうのが基本だよ!」

「貴女、割とノリノリね・・・それじゃあ頼むわ、あんぱんと牛乳で。」

「桃華も人のこと言えないよね。」

そういって、二人は笑って分かれた。

油断していた。いや、知らなかったのだ。
この街の南側に巣くう悪意を正しく理解するには、彼女達はまだ少し幼かった。
3分程後、駅の売店で買物を済ませて帰ってきた龍美は、
誰も知る人のいない駅前で立ち尽くしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「っあァッ!?」

裏路地に放り出された。袋小路になっている。かろうじて桃華が認識できたのはそこまでだった。
完全に油断していた。、あんな公衆の面前で誘拐などとは。
まさか、あの場にいた全員が共犯なのでは・・・?

「あ~、なんで皆知らん振りしてたのって思ってる?簡単だ、興味ねえのさ!」
そういって桃華の思考を否定するスキンヘッド男。そしてその左右で嗤う二人。
龍美と分かれた直後、この3人が突然桃華を襲撃。反応する間も無く連れ去られたのだ。
まだその際に蹴られた腹部が痛みを主張する。

「そうそう、あんたら北の連中がどうなろうと俺達にはカンケー無い。み~んなそう思ってんのよ。まぁ?ぶっちゃけ南の奴でも気にしないけどな、巻き込まれたくないし。」
右のサングラス男が続ける。
「でも、そんなことは君達も一緒だろ?俺達下々の人間の事なんてのは一切興味なし!そうだろ!」

「ハァハァ・・・ま、まだかよ・・・もう辛抱堪らんよ俺ッチは・・・」
左の太った男が涎をたらす。その目は雄特有の目。

「このっ・・・こんなことをしてどうなるか、わかってるの!?」
桃華が声を荒げるが、誰も来る様子は無い。
「ハッ!どうなるってんだ?ここに君達オジョウサマの助けを聞く様な白馬の王子がいるとでも?」
スキンヘッドが鼻で笑う。
「もしかして、さっきのお友達を期待してる?じゃあちょっと無理だな。」
サングラスが言った。
「この路地はまぁ、いわゆる穴場って奴でね。上手い具合に外から見にくくなってんのさ。」
「少々アレな事をするのにうってつけって訳。ああ大丈夫、俺達は紳士だからな、そんな真似はしない。」
スキンヘッドが芝居がかった口調で、ニヤリと哂う。

「すぐに迎えの馬車が来る。素敵な『パーティー』に御招待、だ!」
「馬車の中でいろんな『魔法』をかけてやんなきゃな、ハッハハハハハ!!」
「ヒッヒヒヒヒ!」

3人が哄笑する。桃華は背筋に氷塊が落ちた。
立場上、それなりに敵意や殺意には慣れたつもりだった。
だが、これほどにダイレクトで下衆な感情を受けたのは初めてだ。
今までの悪意は、大抵金や権力を求めるものだった。だからある程度交渉の余地があった。
だが彼らにそんなものはない。ただひたすらに欲望、欲望、欲望!最低限の体裁だけ取り繕った、獣だった。
獣相手に交渉など徒労だ。
彼らの『パーティー』がどんなモノなのか想像すること事体を桃華は拒否した。

「・・・っ、やだっ!助けて・・・何でもするから!」
桃華は一転して懇願した。どうにかして隙を作るために。
精一杯の「しな」を出して自分が極上の餌に見えるように。
自分でもあざといと思うほどに「か弱いお嬢様」を演出した。

「アァアア!おい、もう我慢出来ない!ここでヤる!」
太った男が欲望に負けて今にも飛び掛りそうになる。
それをスキンヘッドとサングラスが抑える。
「おいおい待てって、お前長いんだから!一度はじめたら一晩かかるだろ!」
「もう迎えが来るから、ヤるんなら車でしろ!」

これ以上ない好機だった。
彼女は護身術を習っていた。今この瞬間ならば。目線が外れている今ならば。
左右のスキンヘッドとサングラスのどちらかを倒せば、表に抜けられる!
「迎え」が来る前に、早く、

「・・・あっ・・・」
「おお、来た来た。待たせるなよな~」
路地をふさぐように停車する黒塗りの車。桃華は目の前が真っ暗になった。
無理だ。完全に詰んでいる。軽率だった。龍美は無事だろうか。なんとか無事でいて欲しい。こんなところで終わるのか。まだ自分は何一つ成し遂げていないと言うのに。まだ死ぬと決まったわけじゃない。死ぬよりも酷い目にあうかも。嫌だ。嫌だ、嫌だ・・・

ピシュッ。
桃華の思考は、その小さな音によって停止した。

「・・・あ、アァアアァアアア!?いってぇえええええェエェ!!!」
サングラスが太ももを押さえ、転倒する。そこから噴き出すのは・・・血!
「な、なんだあんた達、おい、やめ、ガッ!?」
ピシュピシュッ。
連続で音が鳴り、スキンヘッドがすっ転んだ。その肩と腹部から噴き出すのは・・・血!
「ヒッ、ヒィイイィイイ!」
太った男はすばやく隅に伏せる。

その後ろ、黒塗りの車から降り歩いてくる白スーツの若い男、そしてその手の小さな筒。
消音機、つまりサイレンサーのついた拳銃だった。

「大丈夫ですか?榊のお嬢様。」

桃華は一瞬安堵した。
だがその男の胸に光る、鹿の意匠が凝らされたバッヂを見て凍りついた。
状況は何一つ改善して無い。

「鹿角組・・・ッ!」
「ほう、ご存知で。いかにも、鹿角組の蟻島源治です。どうぞよろしく。」

そういって白スーツの男、蟻島源治は軽く礼をした。その後ろから車を降りてくるのは同じく白スーツの男二人。
双方、手には蟻島と同じサイレンサー銃。

「いやぁ、聞いたときには驚きました。榊家のご令嬢が誘拐されかかってるのを、偶々ウチの者が目撃しましてね?」
そう言って蟻島は肩を竦める。笑顔だが目は全くの無表情だ。
「それを聞いて、そりゃあもう全速力で駆けつけたんですわ。貴女のような可憐な方が、このような」
一旦切り、蟻島は隅で伏せている太った男に銃を向けた。
ピシュピシュピシュッ。
「ヒッ、アッ、あっ、ガッ・・・」
そういって太った男は動かなくなる。その頭と背中と臀部から噴き出すのは・・・血!

「・・・このような、血と糞袋に好き勝手されるのは我慢ならなくてですね。」
その後ろで、更に音。男二人がサングラスとスキンヘッドに止めを刺していた。
そしてその体を車のトランクに詰め始めた。

「・・・ッ」
桃華は蟻島のみを凝視した。この惨状を正面から直視するのは危険だと判断した。
「・・・助けていただき、感謝しますわ。ぜひともお礼をさせて頂きたいのですが。」
声の震えを隠すので精一杯だった。

鹿角組。北の貴族による浄化作戦を真っ先に察知し、最小の被害で南に逃れたヤクザの一派。
現在、実質南地区を仕切るヤクザ達の筆頭である。
他にも多くのヤクザの組が南地区にはひしめいているが、鹿角組に表立って反抗する組織はまず無い。
彼らの狡猾さ、容赦の無さは広く知れ渡っているからだ。

「いえいえ、それには及びません。100%善意からの行動です。見返りなど求めてはいませんよ。」
口調とは裏腹に、蟻島の目はひたすら空虚。桃華に焦点を合わせていないように見えた。
いや、実際そうなのだ。蟻島が見ているのは桃華では無い。榊家だ。
「ああ、それでも何かいただけるんでしたら食べ物だけは勘弁していただきたい。高級品は口に合わないのでね。」
言いながら。桃華の身柄と引き換えに榊家から何を、どれだけ搾り取れるか。ひたすら脳内で計算している。
さっきまでの彼らとは違うベクトル。理性ある獣。これまで何度も桃華が浴びてきた悪意!
桃華に沸々と怒りが湧き上がる。鹿角組こそ、彼女が打倒を目指す「悪党の頭」だからだ。

(落ち着きなさい、冷静に・・・まだ交渉の余地があるだけマシ、そう考えろ。)
桃華はで必死に平常心を保つ。
それを見て、一瞬蟻島は憐れむような目をした。無駄な足掻きをしようとしているな。
彼は当然、プロフェッショナルである。桃華の思考は筒抜けだった。

「蟻島さん、このデブがどうしても入りません。バラしても?」
「おう、頼む。胴体は切るなよ、中身は売れるからな。」
肉を切る音が響く。桃華は思考にひたすら没頭した。そうしないと何かが壊れそうになる。

「さて、こんな所にいつまでも居てはいけない。お送りしましょう。」
蟻島は車のドアを開けて桃華を招く。
「いいえ、それには及びませんわ。家のものに迎えを頼みますから、」
そう言いつつポケットに手を伸ばそうとした瞬間。
ピシュピシュッ。
「・・・ッ!?・・・ァ、アアァッ!!」
桃華は崩れ落ちる。その両足、ふくらはぎから噴き出すのは・・・血!

「フー。これでやっと話しやすくなる。一応、建前がいるからな。「連絡取られそうだったんで止めました」、と。」
蟻島が銃を下ろして歩み寄る。わざとらしい笑顔は消え、浮かぶのは目と同じ無表情。
「・・・ハァッ・・・!こ、この・・・ッ!」
「フム。やはり飾らぬ表情は良い。こうでもしないと人というのは素顔が見れないからな。」
蟻島は無表情のまま頷く。
「勘違いしないで欲しい。私はあくまで仕事をしてるのであって、自分の嗜好を満たすためにやってるのではないよ。ここをよく勘違いされるんだ私は。」
「・・・ッ!」
歯を食いしばる。そうしないと今にも泣き叫びそうだった。心が砕けそうだった。
それを見てまたしても蟻島は憐れむ目をした。
「別に堪える必要は無い。痛みで叫ぶのは正常だ。人のプライドというのは実に厄介だな。素を出すことが非常に難しくなる。人間、自然体が一番だというのに。」
桃華は言葉を聴いて、意味を理解する余裕は無かった。
足がひたすら熱い。汗が噴き出す。言葉が耳からすり抜ける。
「さて、そっちは片付いたな?運べ。丁重にな。」
「ヘイ。でも、あんまり暴れるようなら・・・」
「ああ、好きにしろ。でも顔は傷つけるなよ。」
「了解ッス!」
男二人が近づく。絶体絶命。
だが、さっきとは。あの3人に追い詰められて諦めたときとは違った。

(嫌だ、嫌だ!こんなクズ共に誰がッ、断じて御免だッ!止めろ触るな近寄るな悪党共ッ!私はお前達を駆除するんだ、何も生まずに他者から掠め取る寄生虫の分際でッ!)
怒り、怒り、ひたすらに怒り!桃華の思考が渦を巻き、染まっていく。
(私には義務があるッ!こんなところで躓くことは許されないッ、断じて!)
アドレナリンが過剰すぎるほど分泌され、痛みが引いていく。
今や視界は真っ赤に染まっていた。
(力が欲しいッ!神でも悪魔でも、何でも良い。私の義務を成す力がッ!!)

二人の男が桃華を担ぎ上げようと近づく、その時だった。
桃華の目の前に、何かが落ちた。

カァーン。

「ん?なんだ・・・」
「どうした?」
「いえ、これは・・・お面?」

それは黒色の、鬼を象ったお面、鬼面だった。
目と口をカッと見開き、今にも叫びだしそうな、まさしく鬼の形相だった。
桃華はその鬼面の目に吸い寄せられた。

「おい、下手な動きするんじゃねぇ!」
「仕方ねえ、次は肩を撃つぞ。」

男達の声は遠くに。

桃華は、その鬼面に、触れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どこだ・・・ッ!桃華・・・ッ!」

全力で走る龍美。既に日は落ちた。ネオン看板が輝き、住民が蠢きだす。南地区が目を覚ます時間。
駅周辺はくまなく探した。誘拐にしても強姦にしても、2分ほどでいける距離なんてのは限られてる。
どこかに隠れた路地でもあるのか?それとも既に車で遠くに・・・

(焦るな、落ち着け。)

龍美は思考を打ち切り、再考する。
桃華は攫われた。これはもう疑いようも無い。なら、自分だけで解決できる問題ではない。
助けを呼ぶべきだ。下手をすると自分まで巻き込まれない。

「よし、まず桃華の家に・・・」
龍美が携帯を取り出す、その時!

KRAAAAAAAASH!!

コンクリートが砕けるような破砕音!
「なッ、なん・・・!?」
その音は龍美の死角となっていた路地から響いた。
だが通行人の誰も気にしない。無言で足早にそこから離れる。
下手に興味を持つと巻き込まれる、それを彼らは良く知っている。
流れに逆らい、向かう龍美。嫌な予感がした。

路地の前には黒塗りの車が止まっている。
その車が、おお、もはや車の形を留めていない!
潰れ、ひしゃげ、砕けている。重機で粉砕したように!
その車に叩きつけられているのは、二人の男。
白のスーツはもはやボロ布と化し浮浪者同然、そして全身の骨があらぬ方向に捻じ曲がっている!
「なんだ・・・これ・・・」
二人はその状態でも生きていた。声を出す気力も無く、呻き声をあげるのみだ。

そして路地の中。もう一人、白スーツが居た。
「ハァッ・・・ハァッ・・・こいつは、何の冗談だ・・・ッ!」
白スーツの男、蟻島はかろうじて立っていた。肋骨が3本ほど砕け、鎖骨にも罅が行っているだろう。
銃は使い物にならない。相手は、銃を、撃ってから避けたのだ。
弾道を予測して回避したのではない、弾を見てから回避したのだ!
構えるのは小さなドス一本。相手は素手。だというのに微塵も有利な気がしない。
「なんだ、お前は・・・ッ、その面は、なんだッ!?」

蟻島と対峙するのは、女だった。
髪は金髪でロールしている。胸は大きく、スタイルも良い。
全身を包む黄色いチャイナドレス。スリットから見える足は傷ひとつ無い白い足。
そして、その顔には、恐ろしい形相の、黒鬼の面。
「・・・・・・・・・」
放つのは、尋常ならざる怒気。殺気ではない。ただひたすらに怒っている。
鬼面は黙して語らず。腰を僅かに沈める。

ーー轟ッ!!

「ッ!!」
蟻島は直感で頭を下げる。その2ミリ上を鬼面の足が、薙ぐッ!
目視は出来なかった。完全に勘のみの回避。
そもそも、鬼面との距離は4メートルは開いていたのに、いつ寄られたのか。
だが、考える時間は無い。
(好機!これを逃したら次は無いッ!)
攻撃直後の鬼面の足は上がり、体は横を向いている。そして彼我との距離は、ほぼ零距離!
(獲ったッ!)
蟻島がドスで背中を刺しに行く!回避は不可能ーーー

ーー轟ッ!!

「ガァッ!?」
KRAAAAAAAASH!!
吹き飛ばされたのは、蟻島!さっきまで車だった鉄塊に叩きつけられる!
鬼面は初撃の蹴りを回避された後、即座に高速で回転し、逆の足を下から振り上げ二撃目を繰り出したのだ!
初撃を囮にして、蟻島の攻撃を誘ったのである!
(こいつは・・・まずいか・・・?)
叩きつけられた蟻島は白目を剥き、気絶!
鬼面は姿勢を正し、構えを維持した。残心である。

「な、んだよ・・・それ・・・」
龍美は瞬きできなかった。
動きは、かろうじて見えた。母の動きよりは遅い。
だが、そんなことよりも。龍美の目を奪うものは。
その姿は、髪は、そして鬼面から覗く碧い目は。

「どうしたんだよッ、桃華ッ!!」

「・・・・・・・・・」

鬼面は黙して語らず。龍美に一瞥すらくれず、膝を曲げて、跳躍!
路地の壁を三角跳びで登り、闇に消えた。


【次回予告】
怪しげな仮面を手にして豹変した榊桃華!
彼女が怒りを暴走させて、向かうは鹿角組本拠地!
友を止めるため走る龍美!間に合うのか!?
そして彼女の目の前に現れる白い仮面。
その仮面を手にした時、全ては動き出す!
次回、第1話「仮面番長、誕生」後編。
次回も喧嘩両成敗!


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