<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.39618の一覧
[0] 【ゴッドイーター2】試される大地よりも北の大地【オリジナルキャラクター】[ですも](2014/10/03 21:44)
[1] ≫story01 編成[ですも](2014/10/10 12:59)
[2] ≫story02 猿神[ですも](2017/12/27 20:27)
[3] ≫story03 焦燥[ですも](2014/10/05 23:12)
[4] ≫story04 連戦[ですも](2014/04/01 23:40)
[5] ≫story05 襲撃[ですも](2014/04/15 12:49)
[6] ≫story06 手帳[ですも](2014/04/20 21:25)
[7] ≫story07 邂逅[ですも](2014/05/18 22:21)
[8] ≫story08 天敵[ですも](2014/06/21 12:06)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[39618] 【ゴッドイーター2】試される大地よりも北の大地【オリジナルキャラクター】
Name: ですも◆cdad5612 ID:2ec33257 次を表示する
Date: 2014/10/03 21:44
 高槻ヤヒコは窓から地上を見下ろした。ヤヒコの搭乗している輸送機は地上から遥か遠くの空を進んでいて、彼の目には白く染まった雪の大地が映っていた。自分の足の遥か下にあるロシアの地は、まるで羊毛の絨毯を敷き詰めたようだ。

「……」

 ヤヒコはそれからしばらくその景色を眺めていたが、風景が変わる気配は一向にないので、すぐに飽きがきてやめてしまった。
 景色を見る代わりにクリアファイルから書類を取り出した。「異動命令」と赤文字で書かれた書類だ。しかし、一度目を通した書類を見直す事もどうにも気が進まず、やはりヤヒコはその書類からも早々に目を離した。
 この輸送機に乗り込んでから3時間は経っている。彼はどうにも退屈であった。

「ねぇ、お兄さんは何しにモスクワまで行くの?」
「ん?」

 そんなヤヒコに、横の席に座っていた少年が話しかけてきたのは絶妙のタイミングだった。
 裕福そうな少年だ。仕立ての良さそうな紺色のジャケットを着ていて、その物腰からは育ちの良さが窺えた。少年の向こう側の席には柔和な面立ちの婦人が座っていて、おそらく少年の母親なのだろうと予想できた。

「ああ、お兄さんは仕事でモスクワに行くんだよ」
「お仕事? あ、もしかしてフェンリル!?」

 少年が喜色を孕んだ声をあげた。フェンリル。地球に突如発生した謎の生物<アラガミ>に唯一対抗できる存在、ゴッドイーターを統率する組織の名称だ。フィンランドに本部を置き、世界各地に支部を持つ。主にアラガミに対する諸活動をしており、各地にアラガミ防壁に囲まれた都市「ハイヴ」の建造や、それの統治機構として働いている。
 このフェンリルの活動が無ければ今頃人類は<アラガミ>によって絶滅させられていてもおかしくないとまで言われており、事実上今の世界の盟主である組織だった。
 しかしながらこの組織、功労に反して誰からも好意的に思われているとは言い難い。フェンリルは世界を掌握している大組織とはいえ、その元は生化学企業だ。民主主義制度に則って選ばれた代表ではないため、利己主義的な考えが押し通される傾向にある。
 そんな組織が完全に潔癖な活動をするのは難しいもので、事実、フェンリルの裏には黒い噂が絶えないし、組織内外での貧富、待遇の差からくる不満も決して小さくなかった。
 少年の反応を見る限り、このフェンリルに対して少年はまだ良い印象を抱いているようだ。ヤヒコはそれに少なからずホッとした。

(フェンリル関連でギスッたことなんて何度もあったからな……)

 実際、ヤヒコはフェンリルに所属していると言うだけで出会いがしらに殴りつけられたこともあった。一方で恩恵も大きいのだから文句の言える立場にいないのは理解していたが、それでも納得できない事があるのも事実だ。

「僕のお父さんもフェンリルで働いてるんだよ」
「へぇ。何をしてる人なのかな?」
「アラガミをやっつける会議をしてるんだって!」
「ふぅん、すごい仕事をしてるお父さんだね」
「ゴッドイーターといっぱい会うって言ってた。お兄さんもフェンリルで働く事になるんだったら、ゴッドイータ―と会えるかもしれないね!」
「うん、まぁ、よく会うことになるの……かな?」
「いいなぁ! かっこいいもんなぁ! ゴッドイーター!!」

 少年は握り拳をつくって、キラキラした目をヤヒコに向けた。どうやら少年のフェンリルに対する好印象の源はゴッドイーターにむける憧れだったようだ。
 ゴッドイーター。通称<神を喰らう者>。
 彼等は神機という武器を使って<アラガミ>を打ち倒す狩人だ。<アラガミ>は、神機でしか倒せない。そしてその神機は、ゴッドイーターにしか扱えない。つまりゴッドイーターとは<アラガミ>に唯一対抗できる存在というわけだ。
 ゴッドイーターは、この神機を使うために<アラガミ>を構成する細胞である「オラクル細胞」を移植した人間の事を言う。これは、毒を以て毒を制す、ということ。
 <アラガミ>の細胞である「オラクル細胞」の移植は、当然ハイリスクだ。「オラクル細胞」は神機を扱うために必須のものだが、対象者の遺伝的体質が該当神機に対して「適合」していなければ、その人間は「オラクル細胞」に捕喰されてしまう。これに加え、ゴッドイーターは<アラガミ>との戦いで常に命の危険にさらされることから、非常に死に近いところで綱渡りをすることが強いられる。
 生来的な要因と生き残るための戦闘能力。ゴッドイーターはこの二つを兼ね揃えなければならないのだ。

(う~ん。輸送機の中で暇っそーにしてるこの俺もゴッドイーターの一人だって言ったら、この子はショックを受けるんだろか?)

 ヤヒコは少年の純朴な目になんだか気まずくなって、赤のくせ毛を人差し指に絡ませた。
 高槻 ヤヒコ、ゴッドイーター歴7年。人が良さそうなタレ目の中堅ゴッドイーターは、この度転勤する。
 フェンリルロシア支部、モスクワはもう近い。







 ヤヒコはロシア支部について早々にラウンジに通された。そこまでの案内を務めた職員の男は友好的で、ヤヒコは彼と談笑をしながらラウンジに現れることになった。
 円状に広がるラウンジにはソファやテレビが随所に配置されていて、中央には飲食ブースが設けられている。
 依然に、ここと同じような施設を目にした記憶がヤヒコにはあった。過去に何度か足を運んだ極東支部のラウンジに酷似していたのだ。なんとなしに職員に聞いてみると、ロシア支部と極東支部は繋がりがあるらしく、このラウンジは極東支部の影響を受けて設けられた場所との事だった。

 ラウンジには多くのゴッドイーターが集まっていて、ヤヒコが到着するのを待っていた。彼等の顔をさっと見渡すとその中に見目美しい女性ゴッドイーターを何人も見つけることが出来て、単純とは思いながら浮ついた気持になる。
 案内役の職員が「わかりますよ」と小声で言って鼻の下を指さすものだから、ヤヒコは苦笑いをした。

「今回我らがロシア支部に新たな仲間が加わることになったよ! なんと欧州本部で7年も勤めていたベテランさ! 彼さえいればこのロシアはもう安泰というわけだね!」

 壇上には司会進行を務める男がマイクを使ってやけに高揚していた。語り口調こそ落ち着きが無いが、それ以上にこのような場に慣れているように見えた。
 長い金髪をしたその男は長い睫、高い鼻という典型的なハンサム顔で、おまけに身長も高く、赤いパンツとフリルのついたシャツがやけに似合っている。
 ただ、彼のマイクパフォーマンスはいささか持ち上げすぎだ。ヤヒコは一抹の不安を抱きながら、司会の男からマイクを受け取った。
 その際にウィンクをされたのだが、しかしこれがまた愛想がよく見えて、どうも嫌いになれそうにない男である。

「え~、どうも。ご紹介に預かりました高槻 ヤヒコです。ゴッドイーター歴は7年だけど、ロシア支部所属としては今年度からの新人だから気兼ねなく接してくれると助かるかな」
「おお、フランクな人だね! みんな仲良くさせてもらおう! ところで、どうしてヤヒコはロシア支部に来ることになったんだい?」
「ああ、欧州で活動していたんだが、実は適合するかもしれない新型神機が見つかったらしくてな。それを確認しにロシア支部にやってきた。んなもん送ってくれればいいのに、何故か俺がこっちに異動することになった。よろしくっ」

 ヤヒコは二指の敬礼でおどけた態度をとってみせた。その反応と言葉の内容に、若いゴッドイーターの一人が小首をかしげる。

「あの……それって左遷ってことじゃないんですか?」
「まぁぶっちゃけるとそうだ! よろしく!」
「…………」
「ヨロシク!」
「「う、う~す」」

 渋い表情のロシア支部ゴッドイーターに対し、ヤヒコは強引にサムズアップで押し通した。ヤヒコのヘラヘラとした態度に対し、ロシア支部の人間の返事はぎこちない。
 笑顔で固まったヤヒコの横を抜け、二人の若い少年が司会の男に向かって小走りで駆け寄る。

「おいおい、なんだい? みんな覇気がないぞ! 今日は歓迎会なんだから盛り上げないと!」
「いや、だってレオさんがやたら持ち上げるから……」
「そうっすよ。俺等てっきり新型がくるのかと」
「こら、ヤヒコに失礼じゃないか! 旧型がどうしたっていうんだ! 旧型だってまだまだ現役だ!」
「おい、ねぇ、君らまる聴こえだよ? 筒抜けなんだけど。せめてヒソヒソしてね?」

 ゴッドイーターの使う神機は現在二つに区分されている。「新型」と「旧型」だ。
 数年前まで、神機とは「近距離型」と「遠距離型」の二種のタイプが主であった。
 それぞれオラクル細胞の「獲得」と「放出」の役割を分担しており、「獲得」をする「近距離型神機」は「放出」ができず、「放出」を担う「遠距離型神機」は「獲得」によって自身でオラクル細胞の補充が出来ない事から、両者は一組で任務に挑むのが基本とされていた。
 これが所謂「旧型神機」だ。
 ここに、近年主力戦力として組み込まれ始めたのが「遠・近」両方の攻撃手段を切り替えることが可能となった「新型神機」になる。
 「新型神機」は今まで役割分担を行っていた「獲得」「放出」を武器の切り替えによって実現し、様々な局面で臨機応変に活動できるようになった神機だった。
 この「新型神機」の出現によって、従来の「近距離型」と「遠距離型」の神機を纏めて「旧型神機」と呼称されるようになったのは、久しい事だ。
 ゴッドイーターはこの「新・旧」神機のどちらかを使うことによって「第一世代」「第二世代」と呼ばれている。そして近年、第二世代の戦闘力の高さが注目され、高い評価を受けていた。実際に、現在の適合試験は第二世代が主流だ。
 このことから、昨今では旧型の神機使いは新型の神機使いに比べ軽んじられる傾向が強くなっている。
 ヤヒコに対する期待外れの目は、つまりこういった旧型神機蔑視が理由となっているというわけだ。
 とはいえ、ヤヒコはそんな事でわざわざ一喜一憂するような繊細さを持ち合わせていないし、そんな要素を自分が持っているとも思っていない。

「あのなぁ、俺を旧型新型なんかの二つ括りに纏めるなって」
「と、言われましても。ほら、やっぱり本部のほうでも第二世代の方が優秀って風潮あったんじゃないですか?」
「まぁ……なかったとは言えんが」
「でしょ?」

 口をモゴモゴさせてしだいに声を小さくするヤヒコに、二人の少年は言わんことじゃないと肩をすくめた。彼等はどこか勝ち誇った顔で、その反応から二人の少年が新型神機使いなのだろうと安易に予想ができた。
 とはいえ、ヤヒコは内心「小生意気な奴らめ」と思いながらも、二人の少年に対する印象は決して悪くない。
 このぐらいストレートな接し方をされた方がやりやすい事もある。ヤヒコが鼻を鳴らして苦笑すると、二人の少年は何事かと揃って眉を顰めた。

「お前等まだまだわかってねぇなぁ」
「……何がです?」
「旧型やってる奴はさぁ、フェンリル勤めが長い奴が多いんだよ」
「そりゃそうでしょう。新型が出る前からゴッドイーターやってた人が多いんですから」
「その分俺達は色々と経験が豊富なんだ」
「はぁ……」

 不意に、ヤヒコは二人の少年の肩に腕をまわし、ぐいと自分の口元に彼等の耳を近づけさせた。

「フェンリルで女子の服の布面積が一番少ない支部を、俺は知っている」
「「!!」」

 ヤヒコが掴んでいた二つの肩が同時に跳ね上がった。あまりにもわかりやすい反応に、ヤヒコは見えないところでニヤリとほくそ笑む。

「いいか? 女性ゴッドイーターの布面積が少ないのは極東支部だ」
「……マジっすか?」
「ああ。あそこの奴等は胸の谷間とか余裕でオープンだ。中には谷間すらないのもいたが、そいつも胸元はぶかぶかだった」
「す、すげぇ」
「極東支部の女性ゴッドイーター。あいつらはもう痴女だぜ。雪が積もって水が凍った場所でも平気で薄着でいるしな」
「正気じゃねェ……」
「お前等も極東支部に行けばそれを拝む日が来るだろう。ただ、その為には生き残らないといけない。だから、俺がお前等を守ってやる。そのかわりお前等も生意気な口は二度とするなよ? わかったな?」
「わかりました!」
「俺達、ヤヒコさんについていきます!」

(ちょろいな……)

「ヤヒコ、すごく悪い顔をしているけど、もしかしてそれが君の素かい?」

 司会の男が、自分の後輩が手玉に取られる光景を前に口元を引き攣らせていた。
 ヤヒコは「まさか」と言って苦笑し、男の前まで近寄った。

「ええと、レオ……さん?」
「ああ、レオパーニ・イワンノフという。よくレオと呼ばれているから、ヤヒコもそう呼んでおくれ」
「オッケーだレオ。いろいろと至らない事があるだろうけど、これからよろしく頼むよ」
「何を言うんだい! こっちこそ色々と不備があるかもしれないけれどよろしく」

 レオパーニは大仰に腕を広げて言うと、続いて右手を差し出した。ヤヒコは笑顔でそれを力強く掴む。レオパーニは一挙一動が大げさであるものの、それが不思議と絵になっていて見る者を飽きさせなかった。
 とはいえ、ずっとレオパー二や二人の少年達と喋っているわけにもいかない。せっかくの歓迎会だ。これを機にロシア支部に打ち解けておくべきだろう。
 こういった場面でヤヒコの行動は早かった。彼は壇上からぴょんと飛び降りると、そのまま水が上から下へ流れるように他のゴッドイーター達の集まりに近寄った。

「どもっす」
「え? あ、どうも」

 4人が集まったグループのメンバーたちは、突然自分達の輪に入ってきたヤヒコに対して目を丸くした。
 ぎこちない挨拶から始まったが、しかし彼等はすぐに社交的な物腰に切り替わる。どうやら人の良い連中が固まっていたらしい。

「どうもどうも。いやぁ、やっぱりロシアの人たちは暖かそうな格好をしてるなぁ」
「そういうヤヒコさんだっていい服着てるじゃないですか。それってパピッシュスナッズのトップスとベアパンクのボトムスですよね?」
「そうそう」
「その頬についてるテープは、怪我ですか?」
「これはオシャレ」
「へぇ。……オシャレ?」

 ヤヒコは近くにあったソファにどっかりと腰を降ろし、指で隣に座る様にジェスチャーした。余所から来たヤヒコがそんな事をするのはなんだかあべこべである。ただ、その態度が自然なものだから、ロシア支部の人間達は促されるようにソファに座ることになった。

「はい、これ飴。お近づきのしるしに」
「わっ、イチゴ味。ありがとうございますぅ!」
「つーか、ヤヒコさんよくさっきの怒りませんでしたね」
「さっきのって?」

 骨格のしっかりした細目の男が、親指で後ろにある壇上を指した。そこには「極東行きてぇ」と頬を赤くしている二人の少年がはしゃいでいる。
 さっきのとは、つまり新型・旧型のくだりの事らしい。

「アイツら、悪い奴等じゃないんですけど……」
「アホなんですぅ! しかもいつも生意気に色目つかってきてぇ」
「ハハハ。まぁ、ああいう話は慣れてるしなぁ。俺が前にいた本部のほうだって旧型蔑視の人間はいたし」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。しかもこれが口じゃ聞こえの良いように言ってるくせに態度でバレバレなんだな」
「本当、嫌な感じですよねぇ」

 ボブカットの女性ゴッドイーターが舌をべーっと出して言った。ヤヒコや他のゴッドイーター達はその反応に苦笑いを返す。
 第一世代と第二世代の神機使いの間ではこうした苦手意識が生まれがちだ。第二世代は第一世代に対し、優越感を持っていることが多く、一方、第一世代は第二世代をお高く留まっているようで鼻に障ると感じることが多いのだという。

「でも、第二世代全体を嫌うってのは違うと思うがね」
「え~? ヤヒコさんあいつ等の肩を持つんですかぁ?」
「肩を持つとかどうじゃなくってだな。例えば、レオパー二に対して苦手意識持ってるやつってどのくらいいる? 見た感じあいつも第二世代なんだろ?」

 問いかけられた4人のゴッドイーター達は互いに顔を見合した。彼等は互いに様子を覗っている様だったが、結局誰一人手を上げるものはいなかった。
 ヤヒコも、あの愉快なハンサム男が人に嫌われるような男ではないと確信していたからこそ彼の名を出したのだが。

「ほら、な?」
「だって、レオさんはいつも気を遣ってくれますし」
「だから所詮はそんなもんだよ。人の好き嫌いの問題だろ。第二世代だなんだは関係なくってさ」

 ヤヒコはそう言って、ボブカットの少女の頭をポンポンと叩く。少女は子ども扱いされたことが不満なようで、ヤヒコの手を払って頬を膨らませた。
 ヤヒコは依然としてヘラヘラトと呑気した笑みを向けている。

「ま、同じ支部の人間同士仲良くしていこうか」
「――軽薄そうな人……」
「……え?」

 突如背中に浴びせられたのは氷のように冷たい声だった。
 暖かくなってきたムードをただの一吹きで壊してしまうような言葉だ。共にソファに座っている4人のゴッドイーター達の誰かが発したものではない。彼等はぎょっとした顔で固まってしまっている。

「失礼しました。いい加減そうな人がやって来たな、と思いまして」
「お、おい、ニーナ!」

 声の主はヤヒコ達のいるところから少し離れた場所で冷ややかな目を向けていた。
 バレッタで留められた長い銀の髪にスカイブルーの瞳、離れた場所からでもわかるモデルのようなプロポーション。そして何より、精巧な人形のように整った美貌が目を引く少女だった。絵に描いたような美少女だ。
 しかしその目は冷たく、人を寄せ付けない超然とした佇まいをしている。

「お前、その挨拶はないだろ」
「すみません。けれど、本当にそう思ったので」
「だからっ、その態度が問題だって言ってるんだ」
「気を悪くしたのならすみません……私、そろそろ任務があるので失礼します」

 ニーナというらしい少女はぴしゃん、と言い放って、ラウンジから姿を消した。ヤヒコ達の間に、何とも言えない気まずい沈黙が流れる。

「あの、ヤヒコさん。気にしないでくださいね? アイツ、いつもはあそこまでツンケンしてるわけじゃないんですけど」
「いや、まぁよくヘラヘラしてていい加減そうって言われるから、慣れてはいる」

 ヤヒコが安心させようとしてつくった笑みは、どこかぎこちなかった。初対面の少女から突っぱねるような物言いをされれば、さすがに吃驚するし気も落ちる。
 つい先程まで和やかだった集いは、今や葬式のようなムードである。
 それからしばらく居心地の悪い時間が経ち、ヤヒコが所在無く視線を彷徨わせているとフェンリルの職員がラウンジに入ってくるのが見えた。
 職員の男はラウンジに入ってすぐ辺りを見渡し始める。

「高槻 ヤヒコさんはいらっしゃいますか? アドリアーナ博士がお呼びです!」

 視線が一斉に自分に集まるのを見て、ヤヒコは目をパチクリさせた。ともかく、もう歓迎会はお開きになってしまうらしい。








≫アトガキ
ゴッドイーターのSSが少ないようでしたので書いてみました。
ストーリーとしては、ロシア支部で中堅ゴッドイーターが奮闘するようなお話で、ゲーム本編との絡みは薄いです。
近日第二話を上げます。


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.036693096160889