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No.39600の一覧
[0] 「光の射す場所へ」  テイルズオブファンタジア[流星](2014/03/08 22:51)
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[39600] 「光の射す場所へ」  テイルズオブファンタジア
Name: 流星◆433b4f36 ID:b241ec64
Date: 2014/03/08 22:51
初めまして。とあるテイルズオブシリーズ小説投稿サイトで執筆しておりました。流星(りゅうせい)と申します。どうぞよろしくお願い致します。基本的にテイルズオブシリーズ、ドラクエシリーズ等の日常のホームドラマ風に書いていければいいなと思っています。

 初めての投稿はテイルズオブファンタジアです。テイルズ投稿サイトでも投稿したものです。




「光の射す場所へ」

「はぁ・・・」
 ユーグリッドの村のとあるの家。今日もいつもと変らず、クラース・F・レスターは、分厚い本と睨めっこしながら、大きなため息を吐いていた。
「クラース、少し休憩にしたら。最近ずっと根詰めっぱなしじゃない。身体に悪いわよ」
 お茶を持ってきたミラルド・ルーンは言う。本当は彼の身体が心配だが、それを表情に出さないのも慣れていた。
「あ、ああ。そうだな」
 クラースは本にしおりを挟み、音を立てて閉じる。そのまま背中を椅子になんかからせて、お茶をグイッと飲む。口と喉が焼けるほど熱いお茶が、意識を活性化させてくれた。
「ねえ、クラース」「ん?」
「最近ずっと悩んでるけど、研究に問題があったの?」
 クラースはミラルドの顔を見たあとに、もう一度お茶を飲んだ。
「いや、バジルに頼んで、精霊シルフと契約できる指輪ももらった。あとはローンヴァレイに住むシルフと契約をするだけなのだが・・・」
「それじゃ、あなたの研究が正しいってことじゃない。何をそんなに悩んでるの?」
「・・・召還術は、魔術じゃないんだ。私の研究のテーマは、普通の人間でも魔術を扱えるようにすることだ。精霊との契約、そのための試練。普通の人間にこれらのことをこなせと言っても無理だろう」
「それは・・・」
 何かを言おうとしたミラルドだが、クラースの暗い表情を見て言葉を飲んだ。彼とは幼馴染だ。性格はよくわかっている。研究完成間際で、思いも寄らなかった問題につまづいた。それも長年の研究をすべてひっくり返してしまうものだ。今のクラースは、光の射さない深い森へ自ら足を踏み入れたようなものだ。
(・・・私は、ずっと長く一緒にいるのに、彼を照らす光になってあげられない・・・)
 歯がゆさで思わず唇を噛んだ。
「・・・・・」
 ミラルドから何か感じたのか、クラースは一気にお茶を飲み干した。熱さが口いっぱいに広がったと思えば、それは喉を燃やし、胃を打ち付ける。思わず咳き込みそうになるが、必死でそれをこらえる。が、しばらく声は出せそうになかった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 互いに重い空気から逃げるように眼を背けた。

「ミラルド、お茶、美味しかったよ。少し風に当たってくる」
「ええ、いってらっしゃい。あ、それと夕食の買出しをお願い。ここに書いてあるから」
「ああ、わかった。お、こりゃ今夜はカレーか。楽しみだな」
「ええ、美味しいのを作るね」
 クラースはメモとガルドを受け取って笑顔で家を出た。

「バカ。空元気が見え見えよ・・・」
 クラースが出て行ったあとで、ミラルドはつぶやいた。その後、熱い紅茶を一気に飲み干した。


(そもそも、私はどうして、人間が魔術を扱えるようにしたかったのだろうな・・・)
 単に学会を見返してやりたい。というだけではなかった。クラースの父親は研究ばかりで家族をないがしろにする男だった。幼い日のクラースの楽しみはそんな父親が時々買ってくれる絵本だった。その中でも大好きだったのは魔法使いが悪い魔王をやっつけるという内容の本だった。素直な優しさを見せてくれる父親ではなかった。それでも幼いクラースにとって、父のくれた絵本は彼と自分をつないでくれる魔法の絵本のようだった。だが月日の流れは残酷で、クラースの心は、父親への憎しみで溜まっていった。自らの研究のため自分の妻、つまりクラースの母に対して暴君で家族をないがしろにする父。父が死んだ今でも、彼を許すことができない。父の墓を参ったこともないほどだ。

「そして今の私は自らの研究に没頭し、ミラルドに苦労をかけてる。父さん、結局、俺もあなたは同じ過ちを歩もうとしているのかもな・・・」
 日光の眩しさから眼を守るために帽子を顔にかぶせる。そうすれば心地よい温かさが身体を包み、柔らかい風の感触が肌を撫でる。次第に睡魔の中へと身を委ねていく。


「ん・・・?寝てしまったのか」
 日が落ちたことによる肌寒さが意識を覚醒させた。周りの赤く染まった景色が時間の流れを伝えた。
「いかん。ミラルドの買い物があったのだった・・・」
 クラースは慌てて食材屋に向かった。

 時間が時間なため、食材屋は多くの主婦で賑わっていた。クラースがあまり好きではない賑わいだ。
「あら、あれクラースさんよ?」
「29歳、だったかしらねあの人?良い年して仕事もしてない・・・」
「学会からも追い出されて、ミラルドさんにおんぶ抱っこされているんでしょ?」
「未だに夢妄想の研究ばかりしてるんでしょ。見てあの格好、本当に変わり者よ・・・」
「それでお酒も大好きってんだからタチが悪いよ。ミラルドさんもよくもまあ、ずっと一緒にいられるねェ」
 村の主婦たちがクラースへ向ける視線は、冷たさと軽蔑を併せ持っていた。
(こそこそ話なら、もっと小さな声でやってくれよ・・・)
 つい口に出そうになるが、言葉をぐっと飲み込んだ。さっさと買い物を済ませて、家へと急いだ。


「ただいま」
「おかえりなさい。遅かったわね」
「すまない。木陰で眠ってしまってな」
「そう。最近眠れてなかったみたいだから、良い休憩になったでしょ?」
「ああ、まあな」
「ちょっと待っててね。ご飯すぐに作っちゃうから」
 クラースが買ってきたものを受け取り、ミラルドは台所へ立った。しばらくすると、食欲をそそる香りが部屋いっぱいに広がった。
「もうすぐできるから。テーブル吹いて、食器を並べて」
「ああ、わかった」
 いつもどおりの会話が飛び交い、いつも通りに食事を取った。だが2人の間にはいつもよりも重たい空気が流れていた。
(召還術は魔術ではない。このまま研究を続けていても、俺はダメになる。俺だけではなく、ミラルドも・・・。どうすれば・・・)
 クラースの複雑な心境のまま、ミラルドもそれを感じたまま、しばらくを過ごした。互いに表面上はいつもと変わらないまま・・・。


 だがある日、そんな2人の日常を変えてしまう客人が訪れた。

 トントン。
「ミラルドか?茶ならそこに置いといてくれ」
「あの・・・」
「ん?」
 ミラルドの声ではないので、玄関へ出てみた。若い男女の2人組みがそこには立っていた。あどけなさを残した剣士らしい少年と、おしとやかな雰囲気をまとった少女とも女性とも取れる少女。
「クラース・F・レスターさんでしょうか?」少女が声を出した。
「そうだが、君たちは?」

 この2人組み。クレス・アルベインとミント・アドネードは、ダオスと倒すために『魔術』の研究をしている自分に力を貸してほしいと言ってきた。
(・・・あまりにバカげている。一国を相手にたった一人で戦争を挑もうとする相手だぞ。そんなヤツを倒そうなどと、現実離れにほどがある・・・)
 これがクラースの正直な気持ちだった。だから2人をないがしろにした。
「・・・魔術の知識を得たいにしても、もう少しマシな嘘を付いたらどうなんだ?」
「「そ、そんな・・・」」
「ちょっとクラース!そんな言い方ないでしょ!」
 そこにドシドシと足音を立ててやってきたのがミラルド。
「どうしてあなたはそういう言い方しかできないの!この人たちは、あなたを頼ってきてくれたのよ!」
「いや、しかしだな・・・」
 ミラルドはおろおろするクラースを尻目に、客人2人に笑顔を向けた。
「あなたたち、ごめんなさいね。この人見た目はこうでも、まだまだ精神的にこ・ど・もなの」
「って、おい!!」
「よかったら私が、こんな人より頼りになる人を紹介しましょうか?こ・ん・ん・な・ひ・とよりもね」
「おい!こんな人とはなんだ、こんな人とは!だいたいここらへんで頼れるのは俺くらいだぞ!」
「あら、わかってるじゃない」
 クラースの言葉にミラルドは満足そうだった。とりあえず2人から更に詳しい話を聞くことにした。

「君たちが未来から?」
 クレスとミントの話は「友人を助けるために、未来からダオスを倒すための手段を探しにやってきた」というものだ。信じてほしいと言うほうが難しいが、2人が嘘を言っているようにも見えない。
「残念だが、私は人間だ。魔術は扱えない」
「・・・そんな・・・」
 はっきりと言葉を放った。クレスとミントの打ちひしがれた表情は見ていても心が痛むものだった。
「だが、私には召還術がある。精霊と契約を結ぶことで、人間でも魔術と同等の力を扱うことができるはずだ。既に契約の指輪もある」
 その一言はクレス、ミントの顔を明るく染めただけではななかった。何よりもミラルドと、クラース本人の心の中に一筋の光が射し込んで来たかのような感覚だった。
「この村の北にある『ローンヴァレイ』に一緒に来てくれ。そこに精霊シルフがいる。契約を手伝ってくれ」
「はい!」「もちろんです!」
 

話が着いたことで、クラースは旅に出る仕度をしていた。
「やれやれ。面倒なことを引き受けてしまったな」
 文句を言うクラースだったが、表情はどこかイキイキとしているように見えた。そんな彼にミラルドは微笑んでみせた。
「あら、精霊と契約する自信がないの?」
「何を言ってるんだ。これでも若い頃はバンドで鍛えてたんだ。まだまだ若い者には負けんよ」
「それって、すごいおじさんの言葉よ」
「おじさんとはなんだおじさんとは!私はまだ20代後半だ!」
「あえて20代を強調して30代前って言わない辺りおじさんよ」
「~~~~~・・・・」
「だけどそれを聞いて安心した」
 ミラルドはそれだけ言ったあとに、クラースの手を握りしめた。
「お、おい、どうしたんだ・・、急に・・・」
「気をつけてね。決して無理はしないで。あなたの帰ってくる場所はこの家なんだから」
「・・・・・。ああ、わかっている。いつも迷惑ばかりかけてすまないな」
「あなたが誤るなんて珍しいわね。ひょっとして旅に出るのがいやになったの?」
「そうじゃない。ただ・・・」
「私のことは気にしないで。あなたはあなたが正しいと思うことを、一生懸命にやっていればいいの。私は好きで、それを手伝ってるんだから」
「ああ。ありがとう・・・」
 クラースとミラルド。2人は互いに見つめあい、優しい表情になる。


「じゃあ行って来る。留守は頼んだぞ」
「ええ、いってらしゃい」
 クレス、ミントと共に、クラースは旅に出た。ミラルドはその背中が見えなくなるまで見送っていた。

「・・・本当に気をつけてね、クラース・・・」
 3つの背中が見えなくなったあと、ミラルドはぽつりとつぶやいた。本当はクラースに行ってほしくはなかった。ダオスが今、世界にとってどれほどの脅威か、知らない者はいない。ましてや戦士でもない学者の男を、そんな魔王を倒す旅に同行させるなんて・・・。
「でもあの2人は、クレスさん、ミントさんは、クラースの力を必要としてくれた・・・」
 自分に言い聞かせるように言う。クラースにとって決定的に足りないのは『自信』だった。自信を補うために、研究に没頭し、いつも殻に閉じこもっていた。「いつかは俺の研究が正しいことを、世の中の連中に思い知らせてやる」っと口を開きながら。でも自分のためにしか努力できない人間を、誰も応援したりしない。ましてや認めるなどもってのほかだ。他人のために自分の精一杯を尽くせる人間の周りにこそ人は集まり、そこから築き上げた信頼こそ、人間の自信へつながるのだ。
(あの子たちは、クラースを必要としてくれた。そしてクラースも、あの子たちに応えるために研究の成果を出そうとしてる。次にあなたがここに帰ってくるときは、きっと自信に満ちた顔になってることを、私は信じてる・・・)
 眼に涙を浮かべながら祈る。それはクラースの前では、絶対に見せない彼女の顔だった。


 数日後
「やったぞ、ミラルド!私はついにこれまでの研究が正しかったと証明することができたんだ!」
 扉が開くと同時に、クラースはミラルドの手を取って踊るように部屋中を駆け回った。
「ちょ、ちょっとどうしたのクラース?」
 こうは言ってみたが本当はわかっていた。契約が成功したのだ。だがミラルドは冷静に言ってみせた。
「あなたは自分の研究に自信がなかったの?違うでしょ?私は信じてたわ。きっと上手くいくって。だから驚かないわよ」
「そ、そうか・・・」
 ミラルドも一緒になって喜んでくれると思っていたのに。少し残念そうな表情を浮かべるクラース。
「でも、本当におめでとう。そしてこれからでしょ」
「ああ、もちろんだ。研究を成功させるのは、ここからだからな。それに・・・」
 クラースはクレスとミントを見た。
「ガラではないが、彼らに協力したい。足手まといにはならないから、私も連れて行ってくれ。もちろん、召還術の知識は惜しまない」
「ありがとうございます。クラースさん!」
「心強い仲間ができて、私たちも嬉しいです」
 クレスとミントも笑顔でクラースを見た。
「っと、言うことだ。その、ミラルド・・・」
「安心して。あなたがいない間、この家はちゃんと私が守るから。・・・いってらっしゃいクラース」
「ありがとう。行って来るよミラルド」
 クラースとミラルドは互いに短い言葉を交わした。次にミラルドは、クレスとミントを見た。
「あなたたちも、クラースに協力してくれて本当にありがとう。そしてこれからも、この人をよろしくね。何かと迷惑をかけるかもしれないけど、見捨てないであげてね」
「っておいおい。仮にも私は年長者だぞ。それに、それが20代後半の男に向かって言うセリフか?」
「アハハハ、クラースさんって、ミラルドさんの尻にしかれてるんですね」
「クレスさん、それはちょっと・・・」
 クレスとミントも笑いながら2人のやりとりを見る。
「違う!そんなんじゃない!」っと必死にクラースも言い返す。
(よかったねクラース。こんなやりとりをできる友達ができて・・・。本当によかった)
 ミラルドは心の底から喜び、クレスとミントへ感謝した。
(きっとあなた達は、クラースにとって朝日のようなものだったのね・・・)
 自信で胸を張ったクラースの表情は、りりしいものへとなっていた。それは10年以上も前、バンドでギターを弾いて歌っていたあの頃の表情そのものだった。


 それからしばらくして・・・。
 とある場所で、クレス一行は、魔物の群れに囲まれていた。
「どうしますか?クラースさん」
「ふむ。これだけの数だ。まずは敵の陣形を崩すのが先決だ。その後はすみやかに退散しよう」
「逃げんのかよ。情けないな・・・」
「最終決戦が近いことを忘れるな。とはいえ、あれほどの大群が町へ入るのは防ぐべきだからな。半数ほどまで数を減らしておくべきだろう」
 チェスターの言葉にクラースは冷静に返す。
「では、作戦はどうしますか?」っとすず。
「まずはクレス、すずは真正面から突っ込み、敵を蹴散らかしてくれ」
「はい!」「了解です」
「次にチェスターは前衛2人の援護をしながら、私、アーチェ、ミントを、敵の視界から外させるように攻撃してくれ」
「任せてくれ」
「ミントはクレスとすずをサポート。そのままディープミストやアシッドレインで敵の能力を下げてくれ」
「わかりました」
「私とアーチェは後方から敵を蹴散らかす。アーチェは東側、私は西側を狙う」
「りょーかい♪」
「よし、ではいくぞ」

 今やクラースは、パーティにとってなくてはならない1人になっていた。高い分析力と指揮能力。それに料理上手。パーティのために自身の全力を尽くしている男は、以前の彼からは想像もできないほど、たくましくなっていた。


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