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No.3960の一覧
[0] これはひどいオルタネイティヴ(ぶち壊し注意)[Shinji](2008/08/24 12:52)
[1] これはひどいオルタネイティヴ2[Shinji](2008/08/25 11:13)
[2] これはひどいオルタネイティヴ3[Shinji](2008/08/25 11:11)
[3] これはひどいオルタネイティヴ4[Shinji](2008/08/26 04:35)
[4] これはひどいオルタネイティヴ5[Shinji](2008/08/26 23:24)
[5] これはひどいオルタネイティヴ6[Shinji](2008/08/27 20:54)
[6] これはひどいオルタネイティヴ7[Shinji](2008/08/28 16:19)
[7] これはひどいオルタネイティヴ8[Shinji](2008/08/29 20:22)
[8] これはひどいオルタネイティヴ9[Shinji](2008/08/30 23:24)
[9] これはひどいオルタネイティヴ10[Shinji](2008/08/31 22:48)
[10] これはひどいオルタネイティヴ11[Shinji](2008/09/01 21:59)
[11] これはひどいオルタネイティヴ12[Shinji](2008/09/03 08:21)
[12] これはひどいオルタネイティヴ13[Shinji](2008/09/05 10:13)
[13] これはひどいオルタネイティヴ14(+用語ver1)[Shinji](2008/09/07 08:57)
[14] これはひどいオルタネイティヴ15(+伊隅戦乙女隊ver1)[Shinji](2022/04/20 02:22)
[15] これはひどいオルタネイティヴ16[Shinji](2008/09/11 14:52)
[16] これはひどいオルタネイティヴ17[Shinji](2008/09/13 17:38)
[17] これはひどいオルタネイティヴ18(+伊隅戦乙女隊ver2)[Shinji](2008/09/16 23:33)
[18] これはひどいオルタネイティヴ19[Shinji](2008/09/19 22:36)
[19] これはひどいオルタネイティヴ20[Shinji](2008/09/23 02:45)
[20] これはひどいオルタネイティヴ21(+用語ver2)[Shinji](2008/09/26 21:20)
[21] これはひどいオルタネイティヴ22(+第207衛士訓練部隊)[Shinji](2008/10/02 22:28)
[22] これはひどいオルタネイティヴ23[Shinji](2008/10/09 19:42)
[23] これはひどいオルタネイティヴ24[Shinji](2008/10/23 01:55)
[24] これはひどいオルタネイティヴ25[Shinji](2008/10/31 02:49)
[25] これはひどいオルタネイティヴ26[Shinji](2008/11/22 04:34)
[26] これはひどいオルタネイティヴ27[Shinji](2008/11/25 18:05)
[27] これはひどいオルタネイティヴ28[Shinji](2008/12/14 03:54)
[28] これはひどいオルタネイティヴ29[Shinji](2009/01/11 03:35)
[29] これはひどいオルタネイティヴ30(前編)[Shinji](2009/01/17 04:11)
[30] これはひどいオルタネイティヴ30(中編)[Shinji](2009/01/21 01:11)
[31] これはひどいオルタネイティヴ30(後編)[Shinji](2009/01/28 12:16)
[32] これはひどいオルタネイティヴ31 2009/02/08 00:31[Shinji](2009/05/17 17:57)
[33] これはひどいオルタネイティヴ32[Shinji](2009/02/19 03:33)
[34] これはひどいオルタネイティヴ33[Shinji](2009/04/10 04:03)
[35] これはひどいオルタネイティヴ34[Shinji](2009/03/26 08:07)
[36] これはひどいオルタネイティヴ35[Shinji](2009/03/30 03:38)
[37] これはひどいオルタネイティヴ36(前編)[Shinji](2009/04/08 22:44)
[38] これはひどいオルタネイティヴ36(後編) 2009/04/14 04:28[Shinji](2009/05/17 17:53)
[39] これはひどいオルタネイティヴ37 2009/04/24 06:26[Shinji](2009/05/25 00:10)
[40] これはひどいオルタネイティヴ38[Shinji](2009/05/10 00:10)
[41] これはひどいオルタネイティヴ39(前編)[Shinji](2009/05/12 20:01)
[42] これはひどいオルタネイティヴ39(中編)[Shinji](2009/05/14 23:55)
[43] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)①[Shinji](2009/05/17 05:05)
[44] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)②[Shinji](2009/05/25 02:35)
[45] これはひどいオルタネイティヴ40①[Shinji](2009/06/01 01:54)
[46] これはひどいオルタネイティヴ40②[Shinji](2009/06/05 02:47)
[47] これはひどいオルタネイティヴ40③[Shinji](2009/06/11 02:49)
[48] これはひどいオルタネイティヴ40④[Shinji](2009/06/14 06:03)
[49] これはひどいオルタネイティヴ40⑤[Shinji](2009/07/02 03:10)
[50] これはひどいオルタネイティヴ41(前編)[Shinji](2009/07/13 01:30)
[51] これはひどいオルタネイティヴ41(中編)[Shinji](2009/07/28 19:03)
[52] これはひどいオルタネイティヴ41(後編)[Shinji](2009/08/16 04:00)
[53] これはひどいオルタネイティヴ42[Shinji](2009/08/27 00:58)
[54] これはひどいオルタネイティヴ43(前編)[Shinji](2009/09/10 23:51)
[55] これはひどいオルタネイティヴ43(中編)[Shinji](2009/09/20 09:43)
[56] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)①[Shinji](2009/10/07 07:49)
[57] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)②[Shinji](2009/10/10 22:26)
[58] これはひどいオルタネイティヴ44(前編)[Shinji](2009/11/11 20:38)
[59] これはひどいオルタネイティヴ44(後編)[Shinji](2009/11/17 03:24)
[60] これはひどいオルタネイティヴ45[Shinji](2009/12/04 11:35)
[61] これはひどいオルタネイティヴ46(前編)[Shinji](2009/12/07 06:52)
[62] これはひどいオルタネイティヴ46(後編)[Shinji](2009/12/20 00:54)
[63] これはひどいオルタネイティヴ47(前編)[Shinji](2010/01/26 07:13)
[64] これはひどいオルタネイティヴ47(後編)[Shinji](2010/01/29 14:19)
[65] これはひどいオルタネイティヴ48(前編) 2010/02/20 03:44[Shinji](2010/02/23 04:16)
[66] これはひどいオルタネイティヴ48(後編)[Shinji](2010/03/04 12:24)
[67] これはひどいオルタネイティヴ48.5[Shinji](2010/03/06 20:21)
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[69] これはひどいオルタネイティヴ49 2010/03/14 07:03[Shinji](2010/03/15 12:47)
[70] これはひどいオルタネイティヴ50 2010/04/08 07:58[Shinji](2010/04/10 03:15)
[71] これはひどいオルタネイティヴ51(前編)[Shinji](2010/04/18 14:51)
[72] これはひどいオルタネイティヴ51(中編)[Shinji](2010/05/25 05:31)
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[74] これはひどいオルタネイティヴ52[Shinji](2010/07/27 04:27)
[75] これはひどいオルタネイティヴ53[Shinji](2010/10/06 05:34)
[76] これはひどいオルタネイティヴ54[Shinji](2011/03/29 08:19)
[77] これはひどいオルタネイティヴ55[Shinji](2011/04/02 07:48)
[78] これはひどいオルタネイティヴ56[Shinji](2011/05/16 11:26)
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[81] これはひどいオルタネイティヴ59 2012/10/29 15:03[Shinji](2012/11/03 14:33)
[82] これはひどいオルタネイティヴ60 2012/11/02 17:30[Shinji](2012/11/03 14:34)
[83] これはひどいオルタネイティヴ61[Shinji](2012/11/07 21:35)
[84] これはひどいオルタネイティヴ62[Shinji](2013/02/17 10:44)
[85] これはひどいオルタネイティヴ番外編[Shinji](2009/04/14 02:45)
[86] これはひどいオルタネイティヴ番外編②[Shinji](2009/10/15 18:11)
[87] これはひどいオルタネイティヴ番外編③[Shinji](2010/11/04 17:45)
[88] これはひどいオルタネイティヴ(登場人物+用語)[Shinji](2010/10/10 03:07)
[89] これはひどいオルタネイティヴⅡ(原案)[Shinji](2022/03/24 21:32)
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[3960] これはひどいオルタネイティヴ51(後編)
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/26 00:51
これはひどいオルタネイティヴ51(後編)




2001年12月14日 正午


「会食の場は此方で御座います、白銀少佐」

「どれどれ……」


……待合室に やって来た真耶さんに案内され、俺達3人は歩く事 数分。

やがて殿下城の中層 辺りに位置する、とある部屋の入り口に辿り着いた。

恐らく此処で悠陽達と飯を食うのだろう。礼儀作法には自信が無いけど、ボロを出さない様にしないとな。

そう考えながら真耶さんが襖を開けるのを待っていると……大体 予想通りの光景が飛び込んで来た。

現代世界でも見た事が無かった立派な懐石料理が並んでおり、キラキラと新鮮な輝きを放っていたのだ。

ちなみに料理を挟んで向こう側の席には、悠陽と紅蓮中将が座布団の上に座っており……

何時もの侍女の人と、何時の間にか回りこんでいた真耶さんが悠陽の傍に控えている。


「来た様ですね。待っていましたよ? 白銀」

「うへ~ッ……」

「どうかしましたか?」

「えっ? い、いや……何でも無いです」

「ともかく座るが良い。見ての通り昼食の準備は終わっておるのでな」

「そうですか。ならば御言葉に甘えまして」

「し……失礼 致しますッ」

「あ、あの……殿下。私も頂いても宜しいのでしょうか?」

「そなたも客人なので遠慮は要りませんよ? 神代」

「……ッ……恐縮です」

「よい。では月詠?」

「はッ。不躾では御座いますが、会食の前に先ず私から今回の料理について説明させて頂きます」


紅蓮中将に促され座布団の上に座ると、真耶さんが静かに咳払いをして料理の解説に移る。

成る程……姿こそ赤の斯衛服だけど"こう言う機会"での役目はAFの彼女と同じだな。

食事のセットの数も5つしか無いので、真耶さんと侍女の人は食わないのだろう。

流石に紅蓮中将の分は有るみたいだけどね~。それに神代のも用意してくれてたみたいで安心した。


「……そして次に、この魚がオーストラリアより新鮮さを一切 損なわせず取り寄せた一品で御座いまして……」


さて置き。真耶さんのスーパー・解説タイムは続いてゆき、次第に料理に手を付けたくて堪らなくなってくる。

う~む……オルタの世界じゃ絶対に御目に掛かれないと思ってたLvの料理だった為なんだけど、そうだよな~。

BETAの手が掛かっていない海外から素材を取り寄せれば、腕次第で一流の日本料理にも化けるってか……

とにかく感心が止まないんだZE? ……だとすれば、七瀬と神代も感動しているだろうね。


「…………」

「…………」

「!? おいおい七瀬・神代……涎を拭け、だらしないぞ?」

「――――ハッ!?(わ、わわわ私は何と言う事を!?)」

「すッ、すみません!! 殿下の前で とんでもない粗相をッ!」

「ふふふっ、見なかった事にして置きましょう」

「なになに。儂も先程から我慢しておったのでな、仕方あるまいて」

「全く……貴方がソレで どうするのです? 紅蓮中将。ともかく2人とも"その者"の事を見習いなさい」

「あぅうッ」

「も、猛省致します……御容赦ください」


前述の理由で左右の2人が気になり視線を移してみると、何と互いに(少しダケだが)涎を垂らしていたッ!

よって無視できるハズもなく真面目を装い指摘すると、真っ赤になって口元を拭う七瀬と神代。

ソレを見て悠陽と紅蓮中将は気にしない素振りを見せ……真耶さんは瞳を閉じ蚊帳の外に居たんだけど。

侍女の人に追撃のグランドヴァイパー(小言)を食らい、左右の2人は若干ヘコんでしまった様だ。

されど何気に、やはりオバハンは俺の事を評価してくれてるんだと改めて実感したのも さて置き。


「……(悠陽ッ)」

「……(武様?)」


実は……俺だって普通に危なかったんだZE……俺も少し遅かったら涎がダラリと出ていたに違いない。

何せ"死ぬ前に一度は食べてみたい"レベルの料理が目の前に有るんだからな……それに俺 刺身って好物だし。

んでもって現代日本で生きてた時でさえ、少なくとも定年を迎えるまで食う予定は無かったモノとなれば尚更だ。

その為 この場を拵えてくれた悠陽に非常に感謝する事に結び付き、俺は彼女に熱い視線を送った。

まさかオルタ世界で此処までの料理を御馳走してくれるなんて……悠陽ーッ! 俺だー、結婚してくれー!!

そんな俺のアイ・コンタクトは説明を再開した真耶さんの台詞が終わるまで続いたのでした。


「以上で紹介の方を終了させて頂きます」

「(悠陽っ! 早く食って良いって合図 頂戴、合図!!)」

「……ッ……」

「殿下?(ハリー、ハリー、ハリーッ!)」

「白銀」

「はい?」

「先程から そなたの言いたかった事は分かっています」

「へぇあ」

「未だ難民として飢えに苦しんでいる者達が居る中で、この様な料理を摂るのは不服だと申したいのですね?」

「ゑっ?」←あまり聞いてなかった

「!?(そ、そんなッ!)」

「……(ソレに引き換え私は……すみません冥夜様・真那様)」


――――視線は悠陽に向いているが、話 自体は良く聞いてない俺。イキナリ何 意味不明な事 言ってんの?


「その気持ちは十二分に理解しております。ですが……白銀には気を休める時も必要かと思うのです」

「……(何でも良いから早く食わせて欲しいんですけど?)」

「白銀 武よ」

「はッ。何でしょうか? 中将殿」

「言って置くがな……殿下は何時も この様な料理を摂られている訳では無いぞ?」

「へっ?」

「早い話 お前達と左程 変わらぬモノを食していると言って良い。無論 我々も普段は合成食だ」

「では、そうなると……」

「うむ。貴官は余程 殿下に気に入られた様だな……それ故に今回の謁見を設けるに当たっては、
 会食に出す料理に置いても、直ちに"一級品"を用意する様にと張り切られ今に至ると言う訳よ」

「ふむ」

「ぐ、紅蓮ッ! 話が違いますよ?」

「!?(この殿下の表情……)」

「……(まさか白銀少佐をッ)」

「わっはっはっは。いかんいかん、コレは内密でしたな」

「全く。ともかく遠慮は要りませんよ? 食しなさい白銀」

「では」


――――何だか分からんがGOサインが出た様だ。ヒャア!! もう我慢できねェ、食うぜ!!(刺身を)


≪パクッ≫


「!?!?」×6

「……クッ……凄く……美味しいです……」


やっと許しが出たかっ! 来たッ、メイン料理来た!! ……これで勝つる!!!!

その通りのテンションで醤油を付けて一切れの刺身を食うと、自然に例の台詞が出てしまった。

この歯応え……そして味。どう考えても大好物の刺身です、本当に有難う御座いました。

一方 悠陽の方を見てみると、何故だかパアァーッと表情を晴らしてたりして驚いちまったZE。


「!? そ、そうですか……そうでしたか! ならば わたくし達も頂きましょう」

「そうですな」

「い、頂きますッ」

「モグモグモグ。うわぁ……ホント美味しいよ」

「2人とも。ゆっくり味わって食うんだぞ?(特に俺がだけど)」

「はいっ!」×2

「(思えば此処まで笑われた殿下は始めて見たかもしれんな……白銀少佐には恐れ入る)」

「月詠。遠慮は要りません、そなたも食しなさい」

「まさか断る などとは言わんな?」

「いえ。お気遣い有難う御座います」

「(嗚呼 武様……わたくしへの"友"としての心遣い感謝いたします)」


ともかく俺が刺身を食った事で会食が ようやくスタートされ、幸せな一時が続いたのでした。

それにしても始まってから間も無く、横の襖が開いて琴や舞が披露されるとは思わなかったな……

しかも演奏したり踊ったりしてる女の人の中で、良く見たら何名か途中で擦れ違った方達と顔が一致しましたよ?

あ、あれェ? オカしいな~、思い出して見ると青い斯衛服 着てた人も居る気が……でも流石に気の所為だよね?

また反対の襖からは斯衛軍・給仕 仕様とも言えそうな姿をした人達が追加の料理を運んで来てくれるし……

後から聞いた話によると、最初 目の前に広がっていた料理はアレでもコースの一部だったらしい。信じられんッ。

だかトンでも無く有意義な時間だったワケで……唯依も給仕 仕様だったら あんな姿をするのだろうか?

だったら是非……と、そんなバカな事を考えつつ。気付いた時には全ての料理を食い尽し会食は終了となった。




……




…………




……食事を終え悠陽と別れてから10分後。

再び真耶さんに案内され、今度は悠陽城(改名)の下層辺りの部屋に案内された。

今度は どちらかと言うと西洋チックな造りとなっており、今回のメイン・イベントの始まりだ。

されど今回は悠陽と"友達"になった事が最も重要なんじゃないかな~、と思うのは さて置き。

次は主に戦術機 全般に置ける交渉を行う事に成っているので、案内された部屋で準備に掛かる。

その"作業"とは主に俺が説明する事から、質問されても直ぐ答えられる様に机に資料を並べているのだ。

でも逆にイリーナちゃんとかウォーケン姉妹とかは記憶力が凄いから……信じられるかッ?

今や何も見ずに、俺が介入する事によって生まれた兵器やシステムの殆どを説明 出来るんだぜ?

だから見栄なんか張らないで、素直に ゆーこさんに泣きついてイリーナちゃんを借りとくべきだったかな~?

そう思いながら前に広がる十数冊の資料を七瀬と神代を左右に眺めて居ると、更に10分後 待ち人が入室する。


≪ガチャッ≫


「失礼致します」

「待たせた様だな?」


―――― 一旦 部屋を出て行った真耶さんが、紅蓮中将を連れて来たのであります。悠陽は流石に居ないんだな。


「いえ(そもそも、全然 暗記 出来てないし)」

「ふむ(この資料の数……此方に提供 出来る情報は数多く有ると言う事の見せしめか。やりおるな)」

「……(だから もっと待たせて良かったのにッ!)」

「……(そうなれば狐の騙し合いでは不利かも知れんな……殿下は慎重にと申されたが……)」

「それでは紅蓮中将」

「うむ。儂が斯衛を代表して貴官と交渉させて貰う故、宜しく頼む」

「此方こそ宜しく御願いします」

「では白銀少佐も御掛け下さい」

「有難う御座います、月詠中尉」


真耶さんの声掛けで先ず紅蓮中将が若干 地面を揺らしつつ椅子に腰を降ろす。

そして俺も彼女に促されたので椅子に座り、七瀬・神代・真耶さんは互いの背後に立っている。

よってテーブルを挟んで紅蓮中将と向かい合う形で大事な交渉がスタートされた。


「では白銀少佐。単刀直入に申そう」

「はッ」

「今 国連軍が斯衛軍に提供できる情報を可能な限り頂きたい」

「!?」

「無論 此方から出来る限りの見返りも提供する手筈は出来ておる」

「\(^o^)/」


うん、それ無理♪ この時 俺は既に交渉を行う対象にしては、相手が悪過ぎると判断しちゃったんだ☆

そんな怖い……いや真剣な顔で迫られたら頭が働きませんってッ! 巌谷さんの時でさえギリギリだったのに。

でも"あの時"は最初から大体の事は ゆーこさんに指示されてたから旨くイッたに過ぎないんだよね。

ソレに思い出してみれば、俺は真耶さんが面会に来てくれた時 致命的な事を言ってしまってたんだよな。


≪あァ~、それなら暇な時とか有ったら横浜基地まで来て下さい≫

≪は?≫

≪事前に知らせてくれたら、幾らでも教えさせて貰いますから≫

≪――――ッ!?≫


……つまり、此処で俺が情報の提供を躊躇ったら嘘付きだって事になるんだよね!!

あの時の真耶さんは妙に食い付きが良かったし、今更ながら迂闊な事を言ってしまったモンだ。

紅蓮中将が何を考えてるかは分からないけど……"あの台詞"を彼女から既に聞いている可能性が高い。

そうなると彼の要望に応えないとイケないワケで、諦めムードに入った俺に対し紅蓮中将がダメ押しする。


「どうされた? 白銀少佐」

「……フッ」

「し、白銀少佐?」

「やっぱり……(実際に披露を?)」


――――そうです失敗だよ神代。俺は今から考えていた交渉 内容の全てを投げ出して、緊急 手段に入るのだッ!


「貴方の考えは分かりましたよ中将」

「ふむ……と言う事は?」

「今から斯衛の人達に2機連携でヴォールク・データを攻略する様を御覧に入れます」

「!?!?」×2


そう。交渉が旨く ゆかないと思った時は、考えを放棄し言葉より行動で示して相手の判断に任せるのさ。

例え斯衛軍にとっては革命的 戦果であるシミュレーターの内容を魅せても、大した見返りを貰えずともね。

だから紅蓮中将と真耶さんにはシテヤッタリって所なんだろうけど、大袈裟に驚いた素振りを見せちゃって!

多少はフレンドリーに成ってくれたんだから手加減して下さいよ……そんなに甘くないってのは分かるけど。

よって横浜基地に戻ったら ゆーこさんに怒られるがの確定と言う事でテンパってしまったのだろうか?

シミュレーター開始前だと言うのに、無意識のウチに俺は"自重"と言うリミッターを解除してしまっていた。


「おぃ"七瀬"ェ」

「は、はい?」

「俺と神代の"強化装備(特攻服)"は有るんだろうなァ?」

「えっと……指示された通り車のトランクの中に……」

「上等ォ~。なら直ぐ取りに"逝って"来いッ」

「わ、分かりました」

「……と言う事は……良いのだな? 白銀少佐」

「勿論。最高の"ショー"を御見せしますよォ?」≪ビキビキ≫

「そッ、そうか」


――――席を立ち背を向けていた俺に声掛けて来る紅蓮中将に顔ダケを向けて応えると、案の定 引かれました。


「おィ"神代"ォ!! シミュレータールームに"案内"しなァッ!」

「り、了解しました!」


≪ガチャ……バタンッ≫


「ふ~む、成る程な」

「紅蓮中将。い……今の白銀少佐の意図は?」

「恐らく儂の"気"を察したのだろう。此方は真髄に彼の見出した情報を求めて居ると」

「では中将の最初の一言で、彼はヴォールク・データの攻略を魅せる迄の価値が有ると瞬時に判断した?」

「うむ。間違い有るまい」

「それにしても……立ち去る前の気迫……」

「まさか儂とした事が寒気を感じるとはな。流石は多くの戦場を生き抜いた猛者よ」

「はい。普段の温厚さからは考えられないモノでした」

「ともかく此方側も万全な状態でシミュレーターに臨んで貰わねば成るまい。最終チェックを怠るなよ?」

「心得ております」

「ところでだが」

「何か?」

「残された資料の様な書物は どうする?」

「……後に お届けして置きましょうか?」

「好きに扱っても良いと言う事かもしれんが……いや、偽りを記す等 試されている可能性も考えられるな」

「では直ちに詰めてしまいましょう」

「うむ。それにしても面白い男が現れたモノよ、殿下が魅かれるのも頷ける」

「はい(……既に気付かれていたか)」




……




…………




……30分後。


「お待たせしました、白銀少佐!」

「オウヨ」


シミュレータールームの入り口にて道を聞きながら現れた七瀬(思えば迂闊だった)から強化装備を受け取ると、
神代と共に着替えに行き(勿論 別の場所で)、七瀬と待つ俺に2~3分遅れて彼女が駆けて来た。

相変わらず将来性を感じさせる健康的なオッパイだと感心してしまうのはマジで ど~でも良いとして。

生憎 XM3とS型に触れて間もない七瀬は着替えておらず、今回は戦域管制を行って貰う。

普通 任官したばかりで管制なんぞ出来ない筈なんだけど、七瀬も常識外のスペックらしく形位は出来るとの事。

そんな色々な意味で成長が楽しみな七瀬なんだけど……彼女は何故か俺の事を先程から無言で見上げていた。


「間も無くですね、白銀少佐」

「ま~、リラックスして遣ろうぜ? 神代」

「はい!」

「……ッ……」

「ところで。さっきから どうしたんだ? 七瀬」

「!? え、えっと……その……白銀少佐ッ」

「何さ?」


≪勿論 武さんの"決意"には……私達の言葉など意味を成さないのは分かってる……≫

≪……ッ……≫

≪だけど、このまま見てるダケなんて……うぅっ……私には耐えられないッ!≫

≪篁中尉……≫


「先程から大した事が出来ず……本当に面目ありません」

「おいおい何 言ってんだよ? 謝罪なんて要らないって」

「ですが――――(私は篁中尉の言われた事を全くッ)」

「それは大丈夫です、七瀬少尉」

「か、神代少尉ッ?」

「白銀少佐の負担に成るような動きは絶対に しません。だから安心して見ていて下さい」

「お~っ? 随分と言う様に なったじゃないか」

「す、すみません」

「其処で謝るなって。だったら先行は任せるから、頑張ってくれよな?」

「分かりましたッ」

「……(私を安心させる為に? 有難う。神代少尉)」

「……(白銀少佐が無理をしている事は知っている。それを止める事は出来ないけど、少しでも私達が……)」


何故か謝られてしまったが、謝罪するのは俺の方なんですけど? ヴォールク・データの披露に巻き込んでるし。

されど2人の謎の気遣いに少しダケ テンションが上がった俺は、シミュレータールームに足を踏み入れた。

すると俺と神代が入る筐体の周囲や晒しモニターには多くの斯衛の皆様が待っており、内心驚いてしまった。

相変わらず顔には出てないけど、食事の時と同じ様に神代と七瀬の方を見てみると……やはり案の定。

実際に操縦しない七瀬はまだマシだけど、神代は青までも混じっている事から少し顔が同じ色になっている。

ついさっき迄 自信 有り気な表情だったのに……俺は普通に我慢できる程度だけど、流石に緊張するのか?


『――――ザワッ』

「来た様だな? 白銀少佐」

「えっ? あッ、はい。それにしても凄い数ですねェ? 中将」

「うむ。殿下の お墨付きも有る貴官の腕を一目 見ようと多くの者が集まってくれた様だ」

「……(う、嘘だろ……崇司家に九條家、それに斑鳩……此処まで白銀少佐に影響力が有ったなんてッ)」

「あれっ? ちょいと失礼。お~い神代ッ」

「……(だとしたら、私のミス一つで突撃機動部隊は勿論、白銀少佐の評価がガタ落ちになるんじゃ……)」

「イキナリど~した? 大丈夫なのか?」←五摂家の事が良く分かってない

「!? え、えっと……その~、改めて考えると余り無い機会なので……」

「やっぱ緊張するのか?」

「……ッ……」≪コクリ≫


俺の言葉に頷いたまま俯く神代。良く見ると小刻みに震えており、実戦よりも今の状況がキツいってか~?

何か間違ってる気がするけど、上下関係が厳しいオルタ世界じゃヘタなBETAより斯衛の方が怖いのかもね。

でも俺は何とも思わないのは さて置き。交渉ダケでなく"この件"でも失敗したら死ねるので何とか励まさないと!

……とは言え。既に失敗街道を進んでいる事から、この人数を見ても今更 感が有り動じてないとも言える。

しかし無意識のウチに神代がピンチな事にハプニングを感じていた様で、抑えていた自重が解かれていた。


≪――――ビキッ≫


「だが神代ォ。安心しな……"攻略(クリア)"出来んのは確実だからヨォ?」(#^ω^)ピキピキ

「で、でも実際には何が起こるか……」

「それにな?」←明後日の方向を見ながら

「えッ?」








「"事故"るのは……"不運(ハードラック)"と"踊(ダンス)"っちまった時だけだからよ……」








        !        ?        !        ?








『――――ザワッ!!』

「ハードラックとダンス? ……えッ?」

「つ、つまり俺は悪運が強いって事だよ。こうして生き抜いて少佐になってんだから、この程度じゃ躓かないさ」

「……白銀少佐……」

「だから今回も絶対に巧くいくッ! だから安心して突っ込んで行け!!」

「!? わ……分かりました!!(そうだッ、今回は白銀少佐が後ろに居るんだしな!)」

「じゃあ、先に筐体に入って"待機し(スタンバッ)"てろよ!?」

「了解!」

「オゥ、七瀬ッ! "バール"……じゃなかった、データ入れて来い!!」

「は、はい! 直ちに実装させますッ」

「では中将。そろそろ始め様と思いますんで、宜しく御願いしますね?」

「うむ……期待させて貰うぞ?(運も実力のウチか……やはり只者では無い様だな)」


――――こうしてヴォールク・データに挑む事になったけど、意外な見返りを持ち帰る事が出来ました。








●戯言●
まさかの武×神代。次回"特攻の武"が始まりますが、所詮シミュレーターなのでサックリ終わると思います。
でも最近 間が空いてしまう事が多いので、次は早めに更新する事を意識しなければッ。あと風邪 長引き過ぎ!

  ∧_∧ パーン
 ( ・∀・)
   ⊂彡☆))Д´)

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=11439119
此方タニシ氏による23話の挿し絵です。大感謝!! 武×唯依なので是非 御覧下さい。何か違うかもだけど。


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