これはひどいオルタネイティヴ43(前編)2001年12月07日 午後"このまま安静にして置いて下さい"と言う医師のコトバの通り、俺は長い時間 眠らせて貰った。途中2度ほど目が覚めたけど、贅沢にも再び寝直す事で気付いた時には正午を回っていたりする。時刻は13時過ぎか……流石に覚醒してしまった俺は、シャワーを浴びると軍服に着替える事にした。別にもっと休んでも良いんだと思うけど、再び休むのは今後の予定を聞いてからでも遅くは無い。勿論 ゆーこさんにね? 昨日の"あの時"は俺がボッキしてた事も有ってジックリ聞けなかったしな~。「――――良し」そんなワケで左手に極力負担を掛けない様 気をつけつつ、着替え終えると鏡と睨めっこする。何処も変なトコロは無いよな? 反面 昨日はロクに手入れもせずにPXに行ったのが悔やまれるZE。迂闊にも寝癖が有ったらしく、指摘してきた京塚のオバハンに背中を叩かれつつも直されたしな~。しかも目立ってしまったので"参ったな~"って笑って誤魔化したら周囲の軍人の皆さんに笑われた。うぅ……俺って一応 少佐なのに普通に笑われる辺り馬鹿にされてる? クーデターでも"やからした"し。まぁ、今まで散々 視姦やらセクハラ紛いな事やってたし自業自得か~。前科を思い出せばキリが無い。!? いかんいかん、密室で一人っきりだったのが長かった所為かネガティブになってしまっていた。昨日の事を考えてみるんだ白銀ッ! 篁達が心配してくれたダケでも十分ではないかっ……って言えば。「!?」≪――――ぴたっ≫チェックが終わり部屋を出ようとして、ドアのノブに手を掛けようとする寸前に動きを止めた俺。も、もしも外が"昨日のまま"だったらどうしよう? 流石にソレは無いと思うけど……忘れてたZE。でも取り合えず念の為……ゆっくりと扉を開いて顔ダケを出して外の様子を伺ってみると……「(篁!?)」「…………」≪――――ぱらっ≫幾つも有った長椅子が1つに減っており、そんな最後の長椅子(inドアの真横)に腰掛けている女性の姿。俺が脳内で叫んだ様に"篁 唯依"であり……彼女は俺に気付かず戦術機 関連を思わせる本を読んでいる。ま、まさか前回 以上に"何時出てくるか分からない"俺を待ち続けているとは……感心を通り越して驚きだ!そして感動と同時に申し訳ない気持ちにもなってくる。俺が寝ていなければ待ち続ける事も無かったのに。全く唯依タン真面目 杉……そんな事を篁を見下ろしつつ考えていると、静かにドアが閉まった音が響いた。≪バタンッ≫「「あっ」」――――その直後ドアの音に視線を仰いだ篁と目が合い、俺と彼女の声がハモってしまった。「お、お早う御座います白銀少佐!」「お早う篁……って今は もう昼だけどね」――――苦笑いしていた俺に慌てた様子で直立し、敬礼して下さる篁。言葉を選んでくれた様で有り難い。「どうですか? 御体の調子は……」「御陰様で大した事は無いよ」「は、はあ」「俺の怪我の具合ついては聞いてる?」「えっと……安静にしていれば、数日で完治すると言う程度には……」「そう言う事。心配かけて悪かったね」――――聞いた話によると、篁は俺が気絶した直後は錯乱してたって話だったしね。「と、とんでも有りません。少佐は気付いていながら、私は"あの時"何も出来ず……」「あれは仕方ないって。作戦中 伊豆スカイラインCCでテスレフ少尉と鉢合わせなかったら、 俺も全然 察せて無かったと思うし……篁は何も悪くは無いさ、むしろ良く遣ってくれたよ」「しかし御怪我を……」「120ミリを受けたのもワザとだったから、被害は片腕ダケで済んで怪我も軽傷。 何も問題無いだろ~? むしろ巌谷中佐にはSⅡ型 壊してゴメンナサイって心境だし」「そ、そうですか……」――――何だか納得してくれて無い様子。此処は話題を変える方が正解かもだが、直ぐには思いつかない。「(う~ん)」「"この件"に関しても、何とお詫びして良いか」「……この件って?」「白銀少佐が病室で休まれていなかったのは、理由があるんです」「理由?」「それは……」よって何と言おうかと迷っていると……ネガティブな表情のまま篁は予想外の事実を告げて来た。……どうやら俺が入院(?)にならなかったのは、冥夜を始めとする面会希望者が多すぎた為らしい。成る程。作戦を共にした面子に加えA-01+イリーナちゃんらオペ娘ズにもなれば30人近いよな~。それに ゆーこさん+霞を始めとする名無しの非戦闘員の人も来たらしく、少佐の軽傷に大袈裟ですよね。だけど面会希望者を追い出しても、皆が俺の病室の近くで待つ始末なので患者に迷惑が及んでしまう結果。ゆーこさんは"白銀が目を覚ましたら自室に行かせる"と無理矢理 面会希望者を俺の部屋の前で待たせた。当然 反対意見が出たらしいけど"アンタ達が喧しい所為だ"と一蹴されてしまい、前日の夜に至った。流石に月詠さんら斯衛ズとかは残っていなかったみたいだけど、改めて皆の気遣いに目頭が熱くなる。別に馬鹿にされる少佐だって構わないぜッ! 部下達に こうして気遣われてる時点で勝ち組だもんね!!「……ッ……成る程、良く分かったよ」「(やはり呆れられている)」「どうやら随分と大事に成っちゃってたみたいだね」「面目ないです……本来であれば私が少佐に安静に休んで頂ける様、努めるべきだったのですが」「聞いたよ。結構 焦ってくれたみたいだね」「うぅッ」「めい……御剣も随分だったって」「は、はい。ですが米軍少尉を捕らえた速瀬中尉に直ぐ通信を頂きまして」「速瀬に?」「先程の被弾は意図的なモノらしいので、心配は要らない筈……と」「へぇ」「米軍少尉を捕らえた作戦も咄嗟のモノだったと聞きましたが」「うん」「それダケ彼女は……白銀少佐を信頼されていたのですね」「あははは、まぁ上官命令だしね」「ですが――――(できれば私に命令を……)」「ですが?」「!? な、何でも有りませんッ」「まぁ、カラダの方はホント何とも無いからさ。これ以上 気にしないでよ」「……少佐が そう仰られるのなら」「そんな事よりも」「はい?」元より俺の怪我は軽傷……それも無茶を遣ったからの自業自得だし、マジで全然 問題無いのだ。しかし問題は篁だ。彼女は何時から"此処"で俺を待っていたんだろう? そっちの方が気になって仕方無い。恐らくトイレ以外は殆ど此処に居たんだろう。俺の直属の部下とは言え巌谷さん関連の仕事は良いのか?「篁は ずっと此処に居たのかい?」「……ッ……は、はい」「ホントかよ!? だったら直ぐ寝た方が良いだろ、俺は この通り大丈夫だから」「私も御心配 要りません。睡眠も此方で取れておりますから」「へぇあ」「本来であれば、意識を保って置くべきだったのですけど……情けない限りです」「(そう言う問題じゃ無いんだが……)SⅡ型 関連の事は良かったのかい?」「そ、それは巌谷中佐に気遣って頂きました」「気遣うって?」「白銀少佐の……お、御傍に居るようにと」「ありゃりゃ」「(す、ストレート過ぎたかしら?)」「巌谷中佐に……か~」マジかよ、巌谷さんって結構 厳しいんだな~。篁も そんな事でも"命令"されちゃ逆らえないしね。だとすれば篁が此処に居たのも納得だ。本来であれば直ぐにでも自室で休んで欲しいトコだけど……中佐である巌谷さんの指示となれば篁を帰すワケにはいかない。もう少し頑張って貰うとするか。今は午後に入ってるし、即効で ゆーこさんと会話と言う名の"仕事"を終わらせて休んで貰うとしよう。しっかし、篁は何故"もぢもぢ"としているんだろう? 普通に可愛いが涼宮(姉)みたくエロスも感じる。やっぱ溜まってるのかな~? だったら俺 自身の為にも今日の"イベント"は早く終わらせないとならん。そんな事を考えながら篁を見下ろしていると、何故か彼女は言葉に詰まっている。何この可愛い生き物。「あっ……うぅっ……」「篁」「えっ?」「顔が紅いぞ」「そ、そうですか?(もしかして……酷い顔をしているの?)」「だったら"仕事"の前にシャワーでも浴びてきたらどうなんだい?」――――これは帰れない篁に対する俺の上官としての気遣いだ。この配慮が人気の秘訣。(嘘)「よ……宜しいのですか?」「俺は寝起きだし、落ち着いてから行っても構わないしね」「……ッ……」「でも待ってる間に医者に"処置"して貰ってるのも良いかな? 包帯とかの」「!? それでしたら其方を優先して頂いた方が……」「いやいや、待ってるから浴びて来なよ。女性としてソレは不味いだろ~?」「あぅうッ」「それじゃ~行って来てよ」「わ、分かりました」――――此処で締めれば部下ダケでなく女性への普通の配慮だったろうが、俺は少しダケ自重を怠った。「俺の部屋のシャワーに」「!?!?」「(言っちゃったよ、てへっ☆)」「えっ? あ、あぁああのっ……」「何だい?」←開き直り「――――ハッ!?」≪食べさせてくれないか?≫(30話 後編 参照)「(もしかすると、今 白銀少佐は私に心を開いてくれている……!?)」「た、篁さん?」←ちょっぴり後悔「(それなら今のチャンスを逃すワケには……でも心の準備がッ……)」「嫌なら別に構わないんだけど」「えっ!? い、いえ……有り難く使わせて頂きますッ!」「さ、さいですか」「それでは白銀少佐、お邪魔させて頂きますね!?」「うん。バスタオルとかは好きに使って良いからね~?」「あ、有難う御座いますッ!!」「…………」≪ガチャッ――――――――バタンッ!!!!≫「(ま、まさか こんな形で……でも白銀少佐になら……!!)」「オワタ」俺の自重しない言葉に対し、オーバ・アクションを執った篁は高いテンションで自室へと消える。嗚呼 何故よりによって俺の部屋で浴びろと言ってしまったんだ……主に洗面用具が無いじゃないか。それ以前に完全に職権乱用。されど従ってくれた篁に申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。本当は嫌だったんだろうけど上官命令と言う事で逆らえず、脳内で格闘しながらも従ってくれたんだろう。巌谷さんに知れたらブッ飛ばされそうだな~。着替えの現場とか覗いてみたいけど死にたくないし我慢だ。よって自重しなかった自分を呪いながら、篁が座っていた長椅子に腰掛つつ戦術機の本を読む事にした。「(これが白銀少佐の使っていた石鹸・シャンプー……)」≪ゴクリ≫「(いやいや違うわよッ! 私はこれから……だから清めて置くダケなんだから!!)」――――対して白銀に抱かれると思い込んでた唯依タンは、テンパりつつも濡れちゃってたんだ☆「(ハァ~……覗きてェ。でも駄目なんだよなァ)」「(……白銀少佐が入って来てない? ……と、と言う事は……)」………………≪篁~。背中を流してやるよ≫≪し、白銀少佐……何をなさるんですか!?≫≪お前は何を言っているんだ≫≪!?≫≪最初から"こうなる事"を承知で入って行ったんだろう?≫≪ち、違います……ふあぁああぁあ……っ!!!!≫「良し……今夜のオカズはコレで逝こう」≪――――ガチャッ≫「白銀少佐」「うわっ、びっくりした」「た、只今 終わりました」「意外と時間が掛かったね」「そ、そそそそれはッ」←何分か白銀を中で待ってた「いや冗談だよ」「!?!?(……さ、察せられたの!?)」「それよりスッキリしたかい?」「お……御陰様で」「確かに断然 綺麗になってるね~」「……ッ……」≪――――ぐらっ≫「ちょっ!?」「えっ? あッ……す、すみません白銀少佐!!」篁を待つ事 約20分……"待ち人"が静かにドアを開いて登場し、俺は彼女の方へと視線を向けた。其処で軽く冗談を言ってしまうが、女性なので髪の手入れ等に時間が掛かるのは当たり前の話だ。されど男物の洗面用具しか使って居ないと言うのに風呂上りの篁はマジで美人としか言えないんですけど?よって当たり前の事を言った直後、篁が唐突に倒れそうになり咄嗟にカラダを支えた。当然 右腕のみで。はて……変な事は告げて無いからノボせてたのかな? きっと用具の所為で手間が掛かっていたのかも。だったら篁にはホント面倒を掛けてばかりだな~、其の為 俺は自然と彼女を抱き締めてしまっていた!!「篁」「あっ……」≪――――ぎゅっ≫「悪かったね。君の気持ちに答えて あげれなくって」(嫌だったのに的な意味で)「!?」「きっと……さっきの俺は どうかしてたんだよ」(自室でシャワーを浴びさせた的な意味で)「(と、と言う事は……彼は私の気持ちを知りつつも、あえて入って来なかったと言うの?)」「……本当に すまなかった」「し、白銀少佐……謝らないで下さい」「だけど」「もう良いんです、私は何とも思っていませんから」「……有難う」≪それじゃ~行って来てよ≫「(始めは私に心を委ねようと誘ってくれたんだろうけど、途中で思い留まったのね……)」≪俺の部屋のシャワーに≫「(だけど、その促した"事実"が有ったと言うダケで私は嬉しかったのかもしれない)……でも」「篁?」「わ、私が"必要"な時は遠慮なく仰って下さい!!」「…………」抱き締めた直後は下心などは一切 持たず、篁に対して真剣に謝罪していた。たまにはシリアスも良いよね?そんな彼女も軽く俺を抱き締め返して下さると"何とも思っていない"と仰ってくれ、互いの体が離れた。この後 篁から出た言葉が"必要"な時は遠慮なく命令しろって事? マジ俺の為に命掛けてくれるんですね。「何時でも……覚悟は出来ていますからッ」「そうなのかい? だったら その時は……」≪――――ぐいっ≫だけど無茶な命令をして彼女を死なせる気はサラサラ無いし、むしろ無茶 自体させたくないな~。……とは言え指示を彼女は望んでいるので、上官として遣り応えの有る仕事を回してやるべきですね。そんな事を思いながら俺は新たな決意を胸に、篁の顎に右手を添えると真剣な表情で彼女に言う。「……ぁ……」「9回で良い」(謙虚)「!?!?」「(コレで信頼を取り戻せたのは確定的に明らか)」≪――――ばたんっ≫「ちょっ!? ど、どうしたんだ篁~っ!!」しかしながらキメ台詞の後にブッ倒れてしまう篁。コレばかりは不意 過ぎて防ぐ事が出来なかった。やっぱブロントるのは"この世界"じゃキマらないっぽいな……彼女が倒れた理由は良く分からないけどね。それよりも"信頼関係"は結局どうなったんだろうか? ともかく篁が目を覚ますのを待つしかないな~。よって倒れた篁を自室のベッドで休ませる事 更に20分。ようやく"白銀"の一日が始まろうとしていた。「(……お、叔父様……やはり白銀少佐は計り知れない方です……)」「(面白そうだし唯依ちゃんに適当な事を吹き込んじまったが、白銀少佐なら手堅く揉んでくれるだろう)」――――この数日後 横浜基地・某所で、娘に鳩尾を強打され地面に伏す巌谷中佐の姿が有ったそうな。……………………30分後。≪コッコッコッコッ……≫あの後 篁から"目を覚まして私用が済んだら顔を出せ"と言う ゆーこさんからの伝言を受けた俺は、先ずは医者に処置を して貰うべく昨日の病錬を目指しており、その真横を篁が歩いている。包帯の"処置"が終わればPXで飯を食い、執務室を訪れるのは"その後"と言う事になるね~。そんで ゆーこさん(+霞)と会ったら未だに心配してそうな冥夜達の所にでも顔を出すとしようかな?さて置き。傍を歩く篁に対し、前から御願いしてみたかった事を切り出すべく歩きながら声を掛ける。「ところで篁」「は、はい?」「これからタカムラじゃなくて"唯依"って呼んで良い?」「えぇっ!?」「時と場合は選ぶからさ」「……ッ……」――――理由を強いて言うならば、只単に名前で呼び合う方が"良い関係"が築けると思ったからだ。「嫌だったら無理にとは言わないんだけど」「い、いぃえッ! むしろ嬉し……では無く、少佐がそう望まれるのならッ」「なら俺の事も"武"って呼んでよ。んで謙虚だから呼ぶときは"さん付け"で良い」「わ……分かりました」ふっ……いくら生真面目な篁と言えど、始めは受けた"命令"として俺を名前で呼んでくれるとは言え……いずれ その良さに気付いてくれる筈。同じくらい真面目な千鶴も名前で呼んで欲しいって言ってたし。でも篁にとっちゃ些細な信頼関係の構築にしか過ぎないかもしれんから、俺自身が頑張るべきなんだけど。「じゃあ、これからも宜しく頼むよ~? 唯依」「こ、此方こそ御願いします。……た……武さん♪」←遠慮がちな笑みで――――巌谷さんに"唯依ちゃん"って言われてるダケに、妙に嬉しそうにしてるのは気の所為かな~?「全く白銀と篁のヤツ、何時になったら来るのかしら?」「でも……何だか2人から優しい感情が伝わって来ます」「妬ましいわね」「香月博士?」「えっと、何となく。彩峰がボヤいてたから」「……良く分かりません」●戯言●篁中尉のターン。最近 武×唯依の線が強くなって来てるかな?。今回短いですが次回は何時もより早めに更新できると思います。