これはひどいオルタネイティヴ41(後編)――――突撃機動部隊の戦闘開始直前、米軍2番艦内のブリーフィング・ルームにて。≪ガチャッ≫「ふむ……」「どうでした? 少佐」『…………』←名無しの米軍 女性衛士3名「司令部より正式に許可が下りた」「ホントですか!?」「うむ。案の定 私は出撃できんが、お前達の4機であれば構わんらしい」「やったねッ、イルマ!」「これで少しは帝国軍の、私達に対する印象が良くなるかもね」「でも良く司令部が許可してくれましたよね~?」「…………」←イルマ「それは私も同意だ。十中八九・却下されると思ったからな」………………――――数分前。≪あの~、ウォーケン少佐……一つ提案が有るのですが≫≪なんだ? テスレフ≫≪"このまま"では後味が悪過ぎます。どうか再出撃の許可を下さい≫≪!? 貴様 何を言っている? 命令を無視する気かッ?≫≪そのつもりは有りませんが、このまま事は済んでも米軍の為には成らない気がするんです≫≪お前の言いたい事は分かる……しかし私の独断では到底――――≫≪う、ウォーケン少佐ッ!≫≪本当に"このまま"で良いのですか!?≫≪あの国連軍の者達は再出撃したと言うのに!≫≪貴女達……(アメリカ人ではない事からの正義感? それとも……)≫≪……むぅ……≫≪ウォーケン少佐ッ!≫×3≪分かった。取り合えず司令部に提案はしてみるが……許可が下りなければ諦めるんだぞ?≫………………「しかし僅か4機の出撃とは言え司令部にも話が分かる者も居た様だ。直ちに帝国軍の支援に向かえ!」『了解!』×4「小隊長はテスレフ少尉が勤めろ。では諸君らの武運を祈るッ」『はっ!』×4「(まさか許可が下りるとは……私の代わりに彼女達が白銀少佐の力になれれば良いのだがな)」≪――――バタンッ≫「……(決起軍の首謀者を"説得"するって言う白銀少佐の作戦……)」「よぉ~し、気合が入ってきたわ~ッ!」「護衛ダケで御終いじゃ~ストレス溜まったからねェ」「シロガネって少佐の本当の腕前も見てみたいし、頑張らないと!!」「……(それが成功すれば"自滅"は狙えない……だから私が奴等に命令を受けた……)」「ちょっとイルマ、何ボーッとしてんの!?」「ホラぁ!! 急ぐ急ぐッ!」「!? あはははッ、ごめんごめん。いきなり小隊長を任されたから緊張しちゃってね」「その言いだしっぺはアンタなんだから我慢しなさい! でも……ありがと」「……(覚悟はしてたけど、やっぱりもう1度……皆に会いたかったな……)」………………『はあああぁぁぁっ!!!!』(唯依)『ふんッ、そんなモノか!?』(真那)俺の黄門様を肖った台詞を叫んだ直後、篁と月詠さんが決起軍に突っ込む事で戦闘が開始された。……そして2~3分の間。その場での狙撃で彼女達を慎重に援護しつつ、戦っていたは勿論の事。もし命の危険性が有れば、冥夜には悪いけど無理な機動をして助けに入る事を念頭に入れてたんだが……『な、何なんだッ! コイツ等は!?』『うわああああぁぁぁぁっ!!!!』≪ズウウウウゥゥゥゥンッ!!!!≫「……やだ……何これ……」「!? 今はどの様な状況なのです? 白銀少佐っ」「問題無いね。篁達が決起軍を圧倒してるよ」「あ、圧倒している?」そう。単語の通り戦況は俺達が圧倒的に優勢となっており、今現在は斯衛トリオが制空権を独占。彼女達3機が素早い機動で宙を舞いながら射撃し、確実に敵機を無力させ注意を引き付ける一方、地上では篁と月詠さんが前者は射撃・後者は斬撃 主体で暴れまわる事で、マーカーが消えるわ消えるわ。何と言うか……まさに"水戸●門"や"暴れん●将軍"のチャンバラシーンの様な"圧倒的さ"が有る。つまり俺は黄門様のように"その場"から殆ど動かず、適度に狙撃するダケでマジで問題無さそうなのだ。ちなみに此方に流れて来た敵機もB分隊にアッサリと沈黙させられている。(殆どがまりもちゃん機にね)「やっぱ戦術機の性能の違いが戦力の決定的差では無い……ってワケでも無かったみたいだな~」「????」「いや……性能ダケじゃなく腕もこっちの方が上だし、其の台詞の使い方は間違ってるか?」「ど、どういう意味なのです?」「いや、こっちの話……ともかく、この状況を切り抜けたら沙霧大尉を探さないとな」「はい(……相変わらず難しい事を仰る。私は まだまだ知識不足の様だ……精進せねばッ)」――――この一方、伊隅・ヴァルキリーズも4機のS型が反撃にへと移っていた。速瀬は確実だろうね。『よくも好き勝手やってくれてたわね!? 倍返しよッ!』『こらヴァルキリー02! 此処は白銀少佐達に御任せして――――』『ふっ、ダメですよ大尉。こうなった速瀬中尉は誰にも止められません』『あったり前よッ! 仲間を殺されかけて大人しく引き下がれるモンですか!!』『やれやれ。ならば各機 残弾数をリンク……良し、ヴァルキリー2・3・4・8以外は後退しろッ』『了解!!』×7『速瀬・宗像・風間・涼宮は若干 踏み止まって白銀少佐達を支援するんだ!』『りょうかァ~い♪』『おや……私もですか? しかし好都合と言うモノです』『はい。あの方達には、もう少し痛い目を見て頂かなくては』『よくも……よくも お姉ちゃんに銃口を……!!』『(あ、茜ちゃん怖い……でも、カッコイイ~ッ)』『お前達、手荒な真似はするなよ? 白銀少佐達の戦いを見習っておけ』『そんなの分かってますって! 行くわよォ茜~ッ!』『はいっ!』『(愚問だったか?)……では我々はCPを護衛しつつ後退するぞ!?』『了解!!』×7この場に残ったヴァルキリーズは、速瀬&涼宮(妹)・宗像&風間の2機連携が2組っぽいな~。しっかし、何だか俺が支援狙撃をしていたエリアの辺りで戦い始めてるし仕事がまた減ってしまった。普通に有り難いっちゃ有り難いんだけど、これでは黄門様では無くハチベエになってしまいそうだ。そんな無意味な事を考えながら適当にスコープの視界に入った敵機の腕や頭をブッ飛ばしていると……『!? 白銀少佐ッ』「なんだい? テレサ中尉」『沙霧大尉の"位置"が特定できました!!』「ホントか!? でかしたッ!」『では位置情報を転送します(……出来れば"遅いぞバカヤロー!"とか言って欲しかったな~)』「……んッ……案外 近いんだな」『その様ですね。しかし交戦中では無い様です』「良しッ、それなら好都合だ。アルカディア01より各機へ!」『!?』×10「沙霧大尉が近辺に居るらしい!! 作戦の第2段階……御剣による"説得"に移るぞッ!」『そうだった、説得を……ですが白銀少佐っ』「うん?」――――未だに戦闘を続けている中、若干手を緩めた篁の言葉に月詠さんが続く。『"この状況"は どう抑えるべきなのです?』「ソレは手短に教えるから必ず言った通りにしてくれッ! 良いか篁!?」『り、了解しました』『……(ふむ、一体どの様な……)』「冥夜も ちゃんと聞いといてくれよ? 一度しか言わない……っていうか"言えない"からさ時間的に」「は、はい」……………………1分後。「テレサ中尉、オープン・チャンネルの域を可能な限り広くしてくれ!!」『分かりました!!』「じゃあ作戦開始だッ! 5秒後にオープンに切り替えるぞ!?」『了解ッ!』×10≪ドパアアァァンッ!!!!≫『お前達……静まれェ!!』――――この瞬間で"演技"と言う名の作戦開始。先ずは俺が狙撃を命中させた直後 唐突に叫び。≪ドオオオオォォォォンッ!!!!≫『静まりなさいッ!』――――マルチ・ランチャーで決起軍の小隊長機の不知火をブッ倒した篁も勇ましく決起軍に吠え。≪ガシュウウゥゥ……ッ!!!!≫『静まれ静まれ、静まれェ!!』――――今回最も激しく敵戦術機に吶喊し、腕を斬り飛ばした月詠さんも威圧する様な言葉を叩き付けた。『くそッ、強過ぎる……』『何なんだよアイツ等~』『こ、このままじゃ……』『だからって、もう……』それにより決起軍の衛士達は、士気が著しく低下してしまい俺達から距離を取って此方を見上げる。ついさっき迄は俺ら側が一方的に攻勢に出てたダケだから、普通に手を休めても似た展開にはなった筈。しかし"説得"に繋げる為には前述の"静まれ"と言う台詞が不可欠で有り、理由は説明する迄も無いよね?ちなみに前述で"見上げる"って表現が有ったのは、この俺のSⅡ型が丘の上に聳え立って居るからなのだ。そんな俺の機体の左右には、何時の間にか篁の不知火S型と月詠さんの武御雷(赤)が控えており、前方には斯衛トリオが更に壁を作っていて、少し距離を置いて まりもちゃん達5機が敵を警戒している。こうなるとスケ・カクは言わずともながら、風呂の人・風車の人・怪力の人は斯衛トリオになるのか?だったら"うっかりな人"は……まりもちゃん。助けられた村人達のポジションはB分隊になるね~。そんでもって黄門様が冥夜で俺は監督みたいな感じだと思う……って、今はソレどころじゃなかった!!ともかく舞台は創られたんだ。決起軍は戦意を喪失してるし、予定通り"演技"を進めてゆくべきだね。「此方におわす方を、どなたと心得る!?」ポジションは違うけど俺は今の台詞の直後、唐突に戦術機のコックピットを開いて冥夜の姿を曝け出す。そんな彼女は手短ながら俺の指示の甲斐が有り、しっかりと決起軍を見据えて勇ましく直立していた。もう何処をどうみても殿下です、本当に有難う御座いました。見事な切り替えの早さに俺の感心が鬼になる。『!? う、嘘だろ……』『"あの方"って……ッ!』「恐れ多くも征夷大将軍・煌武院 悠陽 殿下に在らせられるぞ!?」≪バアアアアァァァァーーーーンッ!!!!≫(+あのメロディ)『!?!?』×∞「者ども殿下の御前で有るッ、頭が高い控えおろう!!」『……ッ……』×∞『(ハァハァ、勇ましい少佐……素敵……)』←勿論テレサ述べた通り冥夜は立ってるけど、俺は彼女の後方で膝を折りながら決起軍に吠えて居るのはさておき。今迄 自分達が牙を向けていた部隊のうちの1機に、煌武院 悠陽 殿下が同乗していたと言う事実……ソレは余りにも驚愕だった様で決起軍の衛士達は唖然としている様子。まぁ、無理もないかもしれない。圧倒的に不利だったと言えど下手すりゃ殺してたかもしれないし、コレで怒りも治まれば良いんだけどね。だけど反応が無いと困るとは言え、今の台詞は"例の人物"にも当然 聞こえてるワケで有って勿論……『何をしている、お前達!!』『さ、沙霧大尉……』『えっと、その~ッ』≪――――ズシンッ!!!!≫『戦闘停止の命令も聞かずに貴様等は誰と戦っていたのだ!? 殿下が居られるのだぞッ!』目標人物である沙霧大尉が1体の随伴機と共に登場。原作で言うチクりを受けて現れた大名みたいだ。そんな彼が此方に跪いた事により、他の衛士達も慌てて戦術機の膝を付かせた。抜群に酷似してるZE。さて置き……彼は怒らずに戦闘の停止を呼び掛けていたのか……コレは評価できると言っても良いな。クーデターを起こした時点でマイナス数億点だけど、米軍の勝手ぶりも酷かったし一概には妬めない。『へぇ~、良く治めたモンね~』『ふむ……流石な采配でしたね』『これで私達の役目は終わった様です』『そうね』『なら帰還しましょう、速瀬中尉ッ』『オッケー。それにしても茜ぇ? 中々悪く無かったわよ~?』『!? あ、有難う御座います!』―――― 一方、速瀬ら4機のヴァルキリーズは何時の間にか空気を読んで後退して行っていた。「帝国本土防衛軍・帝都守備連隊所属 大尉……沙霧 尚哉」『ははっ!』「そなたは役職の名の通りBETAより国民を守る立場に有りながら、共に戦うべき仲間に刃を向け、 国に・国民に・財産に大きな負担を掛けた。そなたの所業この煌武院 悠陽……しかと見届けました」『……ッ……それに関しては もはや返す言葉、御座いませぬ。我々は理想の為に決起した筈でした。 しかし過ぎて見れば この様な有様ッ。我を忘れ一部の帝国軍衛士を殺戮したダケでなく、ましてや…… ましてや殿下に矛先を向ける事になろうとは……コレでは示しがつかぬ以前の問題に存じます』「つまり、そなたは自分達の"敗北"を認めると言う事なのですね?」『はい……これ以上、無駄な血を流す必要は有りませぬ』「それでは、この無益な"争い"は終了としましょう。宜しいですね?」『はっ。しかし殿下……私は構いませぬ故、部下達の命だけは何卒……』冥夜の言葉に痛々しい表情で早くも切腹の姿勢を取る、コックピットを開き姿を現していた沙霧大尉。色々な意味で凄ェ奴だ……公の場で躊躇い無く自殺するつもりか? それじゃ~何の解決にもならないぞ。せめてBETA諸共 自爆する方がマシなのは勿論、そんな事をさせる為に"説得"をしに来たんじゃ無い。「お待ちなさい」『!?』「既に"争い"は そなたの宣言で終了しましたが、そなた達"そのもの"の話は聞いておりません」『お、恐れ入りますが殿下……どの様な意味で?』「今からでも、そなたの"国"に対する真意を聞き……わたくしが応える機会を設けましょう」『誠……なのですかッ?』「この"煌武院 悠陽"の名に置いて誓います」『……ッ……殿下、この様な謁見の機会を授けて頂いた事……至極光栄に存じます』「よい。では先ず……そなたが事を起こした理由を聞きましょう」『畏まりました。それは――――』何故 既に戦いを治めてから沙霧大尉に対する"殿下"の説得を始めるのか? それには当然 理由が有る。本来であれば決起軍が諦めた時点で終了なんだけど、なるべく"綺麗な決起軍"な状態で〆て欲しいから。つまり只単に降伏させるダケでなく、沙霧大尉らが冥夜に"完・全・論・破"され退場するのであれば、再び戦地に赴き決起軍を宥めた"殿下"の株が上がるダケでなく、彼らも僅かにながら救われるのだ。決起軍と帝国軍が"自滅"すると言う米軍の思惑通りにならないのもデカいし、メリットばかりが目立つ。殿下が再出撃機に同乗するダケで十分 冒険だから、説得したところで危険度に大きな差は無いしね。いや、そもそも"殿下"じゃなくて冥夜だからソレ以前の問題だけど……傍から見たらのオハナシですよ?「……くっ……其処まで、其処まで国や民の事を考えながら、何故……そなたはッ」そんなウチに着々と沙霧と冥夜の会話は続いており、彼の言葉にやがて冥夜は涙を浮かべ始める。当然今は後姿オンリーしか見えないけど、原作をプレイしている俺は何となく分かってしまっていた。沙霧大尉の言葉の内容は以前の冥夜の理想論を更に酷くしたモノなので、悲しくなって来たんだろう。自分以上の信念を持っていながら完全に彼の取った行動が矛盾している。だからこそ涙が止まらない。俺は時代劇の肖りの所為で今でも緊張感が欠けてるんだけど、冥夜は真剣に彼の話を聞いているのだから。「――――何故そなたは"仲間"に刃を向けたのですか!?」『!!!!』「いかなる強い信念が有り……先程の"暴走"は第3者(米軍)の所為で致し方ない事で有ろうと…… そなたが"事を起こした"時点で、わたくしや民の事を思った結果だと本当に言えるのでしょうかッ? BETAと言う脅威が有りながら、味方同士で殺し合う必要が何処に有ると申すのですか!?」『……ッ……』 「それが"正義"として許されるので有れば、天元山に置ける政府の対応を批判する権利が、 そなた達に有るとでも言うですかッ? いえ、有ろう筈が無い……許される筈が有りません…… ソレを一番 分かっていながら、そなたは道を誤った。……自分の大切なモノが無関係に奪われる。 それは確かに許されませんが……本来の目的を失った人類に、決して栄光は無いのです!!」「……(今のは篁の受け売りも混ざってたみたいだな~)」やはり雰囲気は似ても流石に原作と同じ会話にはならないけど、冥夜の真心の説得は一味違うぜ。沙霧大尉も"殿下"の涙の訴えには相当 応えた様で、今更ながら己の過ちに気付いたと言った感じだ。こりゃ~"完・全・論・破"も時間の問題かな? そう思いながら冥夜のケツあたりを眺めて居ると……「(あれっ……テレサ中尉、こっちに近付いて来てる機体ってもしかして……)」←超小声『!? 米軍の小隊……機体はラプターの様ですね。良く再出撃が許可されたモノです』「(直ぐに解析してくれません?)」『はい、えっと……ハンター02以下4機。ログを見るに先程 白銀少佐達に随伴していた者達でしたり?』「(正解です。こりゃ不味い事になったな~)」『ど、どういう意味なんですかッ?』このタイミングでイルマ少尉 登場かよ~!? 空気を読まないにも程が有るだろマジな話ッ!大方 俺らの"作戦"を何処からか知ったイルマ少尉が"上"にチクった結果、再出撃して来たってか~?それにしてもテレサ中尉が居て良かったなマジで……ラプターのステルス性能の所為で、もしレーダーを広げてくれて無かったら、友軍とは言え気付くのが大幅に遅れるトコだったZE。されど気付けた御陰で"対策"が出来る……ちょっと危険だけど、丸く治めるのは"あの方法"しかない。「(時間が無いんで手短にします。ヴァルキリー02に秘匿回線 繋げて貰えます?)」『えぇっ? それは何故.』「(良いから早くしてくれッ、機体のリンクじゃどうにもならないんですよ!!)』『り、了解(……ハァハァ)』←少し濡れちゃった☆≪――――ヴンッ≫「(速瀬中尉)」『きゃっ!? な、何よ……イキナリッ?』「(すまないけど上官命令だ、直ぐ涼宮機と2人で引き返して来てくれ)」『は、はあァ~?』『私と速瀬中尉で……ですか?』……………………30秒後。『あ、あれぇ~?』『どう言う事なの?』『戦闘……終わっちゃってる?』「残念だけど、そうみたいね」『嘘ォ~ッ』『わ、私達 何の為に此処まで……』『どうすんのよ? イルマ』「終わったモノは仕方無いわね。少し近付いて様子を見るわよ?」『えっ……良いの?』『まぁ、有る程度なら大丈夫なんじゃない?』『米軍は帝国軍を見捨てたワケじゃないって事も伝わるだろうしね』「そう言う事~(……旨く抑えたモノね……だけど、それじゃ駄目)」速瀬に素早く"頼み事"と言う対策を済ませると、俺は何事も無かった様に冥夜の随伴を継続していた。そんな彼女は沙霧大尉をほぼ論破した様で、再び彼は切腹の姿勢……この点に関しては学習してね~な。だけどコレは冥夜が止めるだろうから構わないんだが、今後の"全て"は1機のラプターの行動に有る。突然 米軍がステルスに紛れて やって来たのに気付いたっぽい人間は敵味方 共に居たみたいだけど、今は"殿下"の説得の真っ最中なので誰もが空気を読んでおり、動こうとした戦術機は無かった。しかしイルマ少尉にとってはソレが好都合……争いが治まった雰囲気をブチ壊すには持って来いの状況だ。≪――――チャッ≫『(……決起軍は壊滅し……日本の内争は、混乱のうち終結する……)』『え? ちょッ』『イルマ?』『貴女 何を……』『(この……一撃でッ!!)』≪ドパアアアアァァァァンッ!!!!≫――――静寂を突き破る120ミリの咆哮。咄嗟に反応したのは、やはり篁と月詠さんだった。『ハッ!?』『なに!?』――――しかし戦術機を動かす事 迄は流石に出来ず、考えられない射撃を防ぐ術は全く無い。「申し訳有りません、殿下!!」「えっ!?」――――つまり沙霧大尉に放たれた120ミリを防げるのは俺しか居らず。だから射線に割り込む!!「掴まれ冥夜!!」「う、うわああぁぁっ!?」≪ドゴオオオオォォォォンッ!!!!≫イルマ少尉の射撃直前。俺はコッソリとシートに戻って座っており、既に操縦桿を握っていた。よってSⅡ型の左腕の掌で120ミリを受け止める様に操作した直後 地を蹴って冥夜に飛び掛かり、瞬間的に"御姫様抱っこ"をすると、そのまま彼女を庇う様にして宙に脱出し落下して行った。生身だったら重傷だろうけど、強化装備を着てるし大丈夫な筈。とにかく冥夜は無傷で守らねばッ。しっかし……冥夜も気が動転しているのか、俺の事を強く抱き締め返してくれてるし、"こんな状況"じゃなきゃマジで最高なのにな~。落ちたら結構 痛そうだしテンションを上げて置こう。もっと抱いて抱いて、強く抱いて!! 君と飲みたいロイヤル・ミルクティイイィィーーっ!!!!≪――――ボキッ!!!!≫「アールグレイッ!」「ぐぅっ!?」そして左肩から着地した俺。この音は折れたか……かなり痛いけど、冥夜は何とか守ったぞ……倒れたSⅡ型も左腕が弾け飛んだダケでライフル等は無事だ。我ながら上手に動かせたモンだぜ。だけど意識が妙にヤバいな……頑張れ俺。さっきの"対策"が成されるのを確認する迄は耐え抜くんだ。くっそ~……もし俺が"RIKISHI"なら此処で怪我どころか生身で世界も救えるんだけどな~。(*HARITE等 最強の技を多く持つRIKISHIにとってはBETAとの戦いなど遊戯に等しい)さて置き反動で転がる様に俺の腕から離れた冥夜は状況が掴めていない。だけど今は構ってやれないZE。俺は"うつ伏せ"になった状態からゾンビの様に上半身を起こすと、イルマ機の方向を霞んだ視線で見る。『うッ……あ……(し、失敗……したの?)』『ば、ばばばば馬ッ鹿じゃないの!? アンタ!!』『何て事しデかして くれてんのよッ!』『しかも殿下の居た機体に当たっちゃってんじゃない!!』≪はははっ、生憎コレは性分なんですよイルマ少尉――――ッ≫『……(まさか、白銀少佐は始めから"分かって"いたって言うの?)』≪じゃなかった、ハンター2でしたっけ?≫『……(だから体を張ってサギリとミツルギを守った……どうして、其処までして……!!)』≪じゃあ今回の任務、必ず成功させましょう≫『……(それなのに、ワタシ……わたし……はッ……)』『こんのおおぉぉーーーーっ!!』≪ゴオオオオォォォォッ!!!!≫『えっ!?』『まさか本当に……フザけんじゃ無いわよォ!!』≪――――ガシュゥッ!!!!≫俺に射撃を"止められた"のは予想外だったのか、棒立ちしているイルマ少尉のラプターに対して。背後から素早いスピードで強襲して来た速瀬の不知火S型が、突撃砲を持っていた右腕を斬り飛ばす。そう……俺が速瀬にした"上官命令"は、イルマ少尉が事を起こしたら素早く無力化させる事だったのだ。『い、イルマ!?』『茜ェ!!』『了解!!』『う、後ろからロック・オン……何時の間に……?』『既に捉えています、動かないで下さいッ! それとも貴女達も共犯なのですか!?』『ちちちち違う違うッ……か、勘弁してよ』『何で"こんな事"になっちゃうの~ッ?』随伴していた3機のラプターは、同じく素早く後ろを取った涼宮(妹)機が左右の突撃砲……そして胸のマルチ・ランチャーで全て捉えており、(しないと思うけど)反撃する余裕を与えない。そんなウチにイルマ機にタックルをカマした速瀬は、彼女をコックピットから引き摺り出し身柄を拘束。んでもって自分のコックピットに引き摺り込むと、涼宮(妹)機と共に素早く離脱して行ってしまった。うむうむ……大成功だZE。イルマ少尉は戦意を喪失していた為か全く抵抗する様子が無かった上、篁・月詠さん・沙霧大尉を含む周囲の者達も未だに唖然としていた為とは言え、流石は一流コンビだね~。ちなみにイルマ少尉を拘束させたのは、今回の件で彼女は消されてしまう可能性が非常に高いからだ。よって身柄を奪ってしまえば米軍も"返せ"と言い難いだろうし、唯一 彼女を救う方法だと思ったのです。とにかく落着なのかな? 出来れば本物の殿下を見送るまで意識を保ちたかったけど……マジで限界な予感。何時間か"寝た"とは言え今まで結構 神経を使ってたし、もう少し休んだ方が良いのかもしれない。まぁ……一応は許容範囲までは見届けたし、気絶させて貰おう……って、冥夜が何か言って来ている。「し、白銀少佐……白銀少佐!! しっかり なさって下さいッ!」「う……うぅッ……」「何故あの様な無茶を!? わ、私などの為に……!!」「……め、冥夜……」――――うわあ。意識が朦朧としているので何を言ってるか分からないけど、凄い泣いちゃってる。そんなに沙霧が哀れだったのかな? 少しは拭った方が良いと思うんですが、溢れてます溢れてます。こりゃ~何か言ったほうが良いな……えっと、なんて言おう……宥める言葉が妥当なんだろうが……「は、はい?」「ふッ……パイロットと言うのは……因果な人種だな……」「!?!?」「……ッ……」←気絶――――だけど宥める様な言葉など掛けずに、つい久しぶりに片腕のパイロットを肖っちゃたんだ☆「し、白銀少佐ああああぁぁぁぁーーーーっ!!!!」『御剣……御剣ッ! 白銀少佐は……白銀少佐は大丈夫なのか!? 応答しろ御剣ィィ!!』『……(強化装備を纏っていない冥夜様に篁中尉の言葉は……それ程まで彼女は白銀少佐の事を……)』『……(し、白銀少佐と御剣が……だけど頭が真っ白になって何も対応が浮かばない……何故なのッ?)』『……っ……アイツと訓練兵の娘、大丈夫なのかな?』『白銀少佐の事だから無事だとは思いますけど……(今は任務を全うしないと……)』クーデター終結後にテレサ中尉から聞いた話によると、皆 俺の気絶直後は顔面蒼白だったらしい。ひょっとして……俺の行動も空気読めて無かった!? ニセモノとは言え殿下を抱えて飛び降りたし。考えてみれば沙霧より殿下の命を優先させるべきだから無茶過ぎたね……反省する事にしよう。(リアル話)●戯言●クーデター偏ほぼ終結。イルマ少尉の引き入れの方法に関して最も難儀し、非常に時間がががが。んで結局 思いついたのが今回の様な内容です。ヴァルキリーズが居てくれて本当に助かりました……ちなみに白銀28が初の負傷となりましたが、全てはラストの台詞を言わせたかったダケです。謝罪。