これはひどいオルタネイティヴ39(後編)②2001年12月05日 午前彩峰&榊と別れた俺は、駆け足で強化装備に着替えるとシミュレーター訓練を開始する。凄く眠いので非常に しんどいが、コレばかりは命に直結する事なので疎かにできないのだ。しかも、やる事はふたつ有り、先ずは俺の新機体として搬入されて来た不知火SⅡ型に慣れる事。そんでもって、新兵器のライフル……支援狙撃砲を使いこなせるようにならなくてはならない。「戦闘レベル・ターゲット確認。……排除開始」≪――――ドパアアァァンッ!!!!≫其処で真っ先に行ったのは、ライフルでの射撃だ。主に光線級を配置し、直立で構え中心を狙う。コレに関しては……弾丸が小さかった支援突撃砲と比べると大分 仕留め易くなっているな~。カス当たりでも威力の御陰で致命傷を与えられるので、無理に集中して中心を当てる必要が無いのだ。恐らく要撃級が相手でも、顔面ではなく付け根の辺りを狙った方が効果的にトドメを刺せそうだ。「霞。次は戦術機を相手にするから設定を宜しくな?」『……はい』30分後……"狙撃そのもの"のコツは掴んだので、次は動きながらの戦いを学ばなくてはならない。よって今回は人間が相手だし、高AIの戦術機を複数配置してライフル仕様のSⅡ型で戦う事にする。ちなみにクーデター戦の武装は"支援狙撃砲"と背中の長刀1本のみ。弾幕はサブ射撃頼みになるね。さて置き。新型の不知火SⅡ型だが……腰の細さは相変わらずだけど、全体的にゴツくなっていた。だけど機動性は下がるドコロか武御雷に迫る性能で、燃費も非常に良く長期戦にも耐えれそうだ。流石に装甲に置いては武御雷に遠く及ばないみたいだけど、当たらなければ どうと言う事は無いしな。「ちなみにだけど」『えっ?』「たまに変な事を言ってる時が有ると思うけど、俺の癖みたいなモンだから気にしなくて良いからね?」『わ、分かりました』んで……そんな俺の訓練を、何故か霞が手伝ってくれていた。手間が省けて非常に助かるZE。誰に聞いたかは知らないがシミュレータールームにやってくると、彼女が待っていてくれたのだ。正史では今の訓練自体がイレギュラーなので登場に驚いたが、どうやら俺の役に立ちたかったとの事。まぁ、原作でも待っているダケなのが悔しかったとか言ってたし……必然的なモノだったのかもね。実際には謎だけど、何であれ有り難かったので、つい霞の頭を撫でちゃった☆のは言うまでも無い。いや、ホント助かってるんですよ? MA☆JIで睡眠不足な俺には筐体と端末の往復すら骨なのだから。「ふん。そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」『敵5番機・頭部大破……戦闘継続 不可能』……よって管制をしてくれる霞の手を借りてシミュレーターを進める事で、効果的に新型に慣れてゆく俺。戦術機のAIを相手にするに当たっては、極力コックピットを狙わない様にするのを第一に考える。甘い話だけど戦術機が戦術機を破壊するダケでもアホらしいのに、命も奪うのはちょっとなあ……状況によっては 止むを得ない場面も有りそうだけど、やっぱ頭・腕・脚を狙っての無力化が一番だよね?「敵1番機 撃破ッ! よし、これで全部……」『!? 白銀さん』「んっ? どうしたんだ? 霞」『何やら外が騒がしい様です』「何が有ったんだ?」『……分かりません』そんなコンナで訓練を続ける事、約2時間。時刻としては……朝8時はとっくに回っている位かな?丁度 訓練の区切りが付いたあたりでタイミング良く、霞が外の異常を察して俺に教えてくれた。大方"あのイベント"だろう。 面倒臭いけど、行くしかないっぽいな……SⅡ型には大体慣れたし……「とにかく、見に行ってみるよ」『そうですか……』「霞~。アリガトな? 凄く助かったよ」『い、いえ』「良ければ一緒に来るか?」『すみません。残念ですけど……香月博士には無理を言って出て来たので……』「そっか」『白銀さん』「うん?」『今回の事件が落ち着いたら……また、遊んでください』「もちろんさあ☆」『あ、有難う御座いますッ』――――俺このクーデターが終わったら、霞とトランプするんだ。「それ死亡フラグだから!!」『えっ?』「い、いや……何でも無い。んじゃ~霞、お疲れッ!」『……またね』……………………俺は佐官と言う面倒な階級なので、仕方なく軍服に着替えると横浜基地の外を目指した。そして到着してから周囲を見渡すと、横浜基地を囲んでいる帝国軍の戦術機甲部隊(笑)の皆様。もはや解説する必要は有るまい。BETAをそっちのけて米軍の行動を監視するってワケか……いや、良いんだよ? 俺はBETAが攻めて来ないは知ってるからさ。勝手にすると良いよ、マジで。それにしても……はて? コレを確認してから何が有ったんだっけ? イマイチ思い出せないZE。「……白銀少佐」「んっ? 冥夜か」「!?」「どうした?」「い、いえ……ななな何でも有りませぬッ」「なんだイキナリ可笑しなヤツだな~」「も……申し訳ありません」「いやいや、気にしなくて良いよ。それにしても、何やってんだかコイツら」「…………」「優先するのはBETAじゃなく、ましてやクーデターでも無い。まさか米軍に御熱心とはね」「…………」「冥夜」「は、はい?」「今回は何も言わないんだな」「……ッ……確かに……以前の私であれば申したでしょう」「以前の自分なら?」「はっ。BETAが人類の共通の敵であれど、考えが違えば道も違えると……しかし」「しかし?」「ソレでは決してBETAに勝つ事は出来ぬでしょう。確かに……自らの志を曲げずに果てる事は、 その者にとっては悔いが無かったのかもしれませぬ。ですがッ! そんな衛士達の思考の末に負け…… やがては抗えず死んでゆく国民達は余りにも不憫でありましょう? 余りにも……理不尽です」「成る程……冥夜もようやく分かってきたみたいだな、後でジュースを奢ってやろう」「か、感謝を」「……(素で受け止められた!?)」「しかし冥夜様。見ての通り、それダケでは無いのも事実です」「月詠中尉?」「確かに仰られていた事は最もですが、人間とは簡単に纏まれるモノでは有りません。 故に国家主権を始め各々の志を尊重しつつ尚、我々はBETAに抗わなくてはならないのです」「こりゃまた無茶な事を……」「ハッ!? 月詠、神代・巴・戎……そなた達、この様な所で何をしているッ!?」しかしエンカウント率に定評のある白銀。適当に歩いたのに、到着した場所は正解だったらしい。故に冥夜が登場したと思うと、月詠さんと斯衛トリオまで正史通りに現れてくれたのでした。直後 冥夜は殿下を警護しない彼女達に食って掛かり、俺が止めに入ると正気に戻って謝罪する。そんで この後は今回の帝国軍の包囲についての討論でも始まったんだっけ? だとしたら面倒だ。……いや、面倒と言う以前にマジで限界になって来ちゃいました。主に睡眠不足 的な意味で。よって原作とは違って冥夜と月詠さんとの討論が始まろうとしていた時、俺は踵を返してしまう。「あ……」←神代「……ッ」←月詠「むっ?(後ろ?) ……え!? し、白銀少佐……どちらに?」ソレによって声を漏らしたと思われる神代と、月詠さんの僅かな反応によって、冥夜が背後で立ち去ろうとしている俺に気付いた様で、振り返ると声を掛けて来たので足を止めた。正直なところキツいので無視したかったんだけど、それじゃ~フラグに影響を及ぼすかもしれない。其処で今となって思い起こせば適当 過ぎる一言を告げるべく……俺は振り返らずに口を開いた。「寝る」「!?」×5「それじゃ"御剣"……調整しっかりやれよ?」「は、はい」「…………」≪――――ザッ≫ ←立ち去る武「……くッ」「め、冥夜様……」×3「彼は一体何を?」「恐らく……今回の帝国軍の対応に、余程 呆れられたのだろう」「!?」「しかし妥協はされていた様子。よって過ぎし事を とやかく考えるよりは休んだ方がマシなのだろう」「…………」×4「月詠」「はッ」「私の言っていた事に思う所が有った様だが、ソレは そなたの立場や先程の言葉を考えれば理解できる。 人類が団結してBETAに抗うのが いかに難しい事かも、この包囲を見れば分かっているつもりだ」「…………」「故に今更 志そのものを曲げろとは言わぬ。されど彼の様な者の気持ちを少しでも理解してくれ」「!? 冥夜様……(やはり、あの男を……)」「ふっ……可笑しいものだな。何故 涙が出るのだろう?」………………「ふ~っ」……冥夜達から無事に逃げ出した俺は、睡眠を取るべく給水装置の近くの長椅子に腰掛けた。この時の気分はロ●サガ2の皇帝。きっと王座に腰掛けた彼らも、こんな心境だったんだろう。さて置き。流石に部屋に戻って寝るのはアレだし……座ったまま寝る事にしたのであります。ホントなら長椅子に横になって寝たいんだけど、立場的に恥ずかしいので自重する事にする。まぁ、コレなら緊急時にも対応できるし良いよね? そもそも夜まで出撃しないんだし無問題だ。「ぐ~……」≪どさっ≫――――だけど限界だった白銀は即効で爆睡し横に倒れ、寝顔を晒しちゃったんだ☆……………………1時間後。「あ~っ!?」「どうしたのォ? 亜衣」「ホラ綾乃、アソコアソコ」「!? あ、あれは……」←優理子「白銀少佐~ッ?」「ぐ~っ……」「寝てるよ?」「寝てるねェ」「寝てるわね」「ショッカァ……ブッ飛ばすぞ……」「……ッ……」×3≪――――ゴクリ≫「!? ちょっと綾乃、なんか目が怖くなってたよ?」「そ、そう言うアンタだって! ……って優理子、何スケッチしてんの!?」「な……何となく、貴重な絵だと思って……」「そう言えば優理子って絵が得意だったんだよね~」「……って言うか、何処から出したのよ? スケッチブック」「黙ってて、集中できないわ」「……ッ……」×2≪じ~っ……≫「な、何なのよ? 気が散るんだけど」「私にも……1枚 描いてくれない?」「アタシにも~ッ!」「仕方ないわね……まぁ良いわ」……………………また1時間後。「!? お、おい……アレ」「どうしたの? 巽」「あら、白銀少佐ですわね~」「もしかして……寝てるのかな?」「ホントに寝てたみたいね」「冥夜……犯らせろ~……」「!?」×3「……ぐぅぐぅ……」「や、殺らせろって……」「もしかして……夢の中でも戦っているのかしら?」「そ……そうみたいですわね」←揃って疎い斯衛トリオ「……もう一回~っ……」「……ッ……」×3≪――――ゴクリ≫「そ、それにしても……」「見る限りは暢気な寝顔ね」≪――――パシャッ≫「えっ!? み、美凪……お前 何してるんだよッ!?」「写真撮影ですの」「あ、貴女……いくら写真が趣味だからって……」「何を仰いますの? 趣味だからこそ、今を逃す手など有りませんわ」「……ッ……」×2「もう一枚~っ」≪――――カシャッ≫「その……み、美凪……」「今回は1枚コレで宜しいですわよ? 巽」←5本の指を突き出しながら「分かったよ……だから頼む」「わ、私も良い?」「あら? 雪乃も欲しいとは意外ですわね」「べ……別に良いでしょう!?」「まぁ、少し待っている事ですわ」……………………更に1時間後。「……ぐが~っ……」「…………」←水月「…………」←遙≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫「……寝てるわ」「……寝てるね」≪――――ゴクリ≫「おやおや御二人とも、肉食獣の様な目付きをされて何を見ているのです?」「げェっ! む……宗像!?」「あわッ! あわわわわわっ」「あらっ? 白銀少佐が何故こんな所で御休みに……」「速瀬中尉、涼宮中尉。まさか無防備な白銀少佐に手を出そうとしたワケでは無いですよね?」「ななな何言ってんのよ……当たり前でしょ~ッ?」「そ、そそそそうだよ~」「フッ……ならば宜しいのですが、果てさて どの様な寝顔を……」「美冴さんったら、あんまり人の寝顔は見るモノ……じゃ……?」「……むにゃ……」「……ッ……」×2≪――――ゴクリ≫「宗像、風間……まさかアンタ達も……」「む~っ……」←ジト目の遙「!? そ、そうでは無いですが……いささか私には刺激が強かった様で」「あどけない寝顔ですね、つい見惚れてしまいました」「なッ……あ、案外はっきりモノを言うわね風間……」「有難う御座います」「それ褒めて無いと思うよ~?」「其処が祷子の良い所なのです」「あぁもうッ! もう少佐の事は良いから、さっさと行くわよ~!?」「はぁ~い」………………2001年12月05日 午後「考えてみれば寝過ぎた」昼寝の御陰で十分な睡眠を取れた俺は、再びブリーフィングを終えた後 通路を歩いている。目指すはハンガー。約2時間後……19時40分の出撃に備えてSⅡ型の最終調整をする為だ。任務の詳細は相変わらず ゆーこさんが早口に言う為 搭ヶ島離城の警備をする事 位しか理解してない。けど それで十分だ。後は其処に殿下が登場するので、彼女をSⅡ型に乗せて逃げれば良いダケだしね。んで月詠さん達、斯衛軍・第19警備小隊が同行し、篁は不知火S型に乗って俺のサポートに当たる。まりもちゃんも正史と違って撃震ではなくS型に搭乗しつつ……B分隊の指揮を直接 執ってくれる様だ。彼女の指示を受けるB分隊も吹雪F型に乗ってる上に技量も付いてるしで、安心して任務に当たれる筈。「……それにしても、副司令」「何なの? ピアティフ」「"例の件"は白銀少佐に伝えなくて宜しかったのでしょうか?」「それに関しては仕方ないわ。例え白銀ダケに話しても何処で情報が漏れるか分からないし、 リークされた様に画策するのもタイミングが重要なのよ。そのくらい……分かってるでしょ?」「は、はい」「だからコレばかりは――――」「ゆーこさんッ!」「!? 何よアンタ、ハンガーに行ったんじゃなかったの?」「そうだったんですけど……実は大事なコトを忘れてまして」「何を忘れてたの?」「えっと……何も言わずに女性用の強化装備を貸して欲しいんですよ」「!?」×2「う~ん、御剣あたりのサイズが妥当かな~?」「……(こ、コイツ……やっぱり……)」「……(既に勘付かれているなんて……)」そして勿論ッ! 正直……半分忘れてたけど、殿下用の強化装備も用意して貰えるし準備は万端だ。よって後は前述の通りSⅡ型の調整を済ませるダケ。先に行った篁も俺を待っている事だろう。だけど、実際には出番が無い事を期待せざるを得ない。戦わない事に越した事は無いのだから。「……おっ?」「白銀少佐」「あわわっ」……そんな事を考えながら早足で歩いていると、前方に速瀬&涼宮(姉)の凶悪コンビが出現するッ!う~む、この2人が一緒に居る時は嫌な予感しかしないんだけど……流石に今回は思い過ごしみたいだ。近付いてくる俺に対して直立して敬礼してくださったので、俺も手前で立ち止まって敬礼で応えた。「2人とも……これから出撃かい?」「うん。あと30分もしないウチにね」「今回は相手が相手なので複雑ですけど……」「仕方ないね」(アニキ調)「そう言う事~」「じゃあ……速瀬中尉」←真面目な表情「な、何よっ?」「……死ぬなよ?」「!? アンタもね」≪――――ピシガシ、グッグッ≫「へへッ」「あはっ」そして会話を進める中、何故か速瀬とポル●レフと花●院がやってたアレの再現をする事が出来た。元ネタを知っている俺はともかく、どうして速瀬が知ってるのかってツッコミは無しなんだぜ?さて置き。一連の動作を終えた俺がニヤりと口を歪ませると、速瀬も満更じゃ無さそうだったが……「……う~っ」「うぉっ!?」「は、遙ッ?」――――れみ・りあ・うー☆ 指を銜えて此方を見ている涼宮(姉)の視線が、鋭く突き刺さった。「そ……それじゃあ、俺はコレで失礼するよ」「へっ? あっ……うん」「……~~ッ……」ひょっとして羨ましかったのかな? でも結構チカラを入れてするモンだから涼宮(姉)じゃ難しそうだ。よって今の一連を誤魔化す様に此処を離れようとする俺だったが……彼女は未だに不服そうだった。マズいZE。速瀬の俺に対する評価は多少 上がった様だが、涼宮(姉)のフォローを何かしなければ!!≪くるっ≫「そうだ、涼宮中尉ッ!」「えっ?」「勝利の栄光を……君に!!」(敬礼しながら)「!?」×2――――そんなワケで涼宮(姉)を元気付けるつもりで、つい赤い人を肖っちゃったんだ☆「それじゃあ、俺は急ぐからッ!」≪だだだだだだ……っ!!≫「……はふぅ」(ふらり)「ちょっ……は、遙!? こんな時に倒れるなんて反則よっ!?」「だ、大丈夫だよ……ちょっと目眩がしたダケだから……」「ソレが危ないと思うんだけどッ?」「そんな事 無いってば~。私……頑張るよ~っ?」【ヘブン状態!!】「なら良いけど……早くその緩んだ顔 直しなさいって!」しかし……咄嗟だったとは言え恥ずかしい台詞を言ってしまった事には変わり無いZE。正直 名指をして迄 告げた意味など有ったんだろうか? 2人とも見るからにポカーンってしてたし。嗚呼、きっと"シ●アのモノマネが許されるのは小学生 迄だよねー!?"とか思われちまったんだろう。そう思うと居ても立ってもおられず……俺は全速力で走り出すと、2人の視界から消えるのでした。……………………同時刻・ハンガー。「白銀少佐、遅いな」「そ……そうですね」「……んっ?」「……ッ……」「ふ~む」「な、何ですか? 叔父様」「もしかして……まだ悔しがってるのか? 彼のS型を引き継げなかった事で」(33話参照)「!? ち、ちちち違いますっ!」「それなら俺の腹は未だに痛くは無い筈なんだが……」「うぐっ……そ、それに関しては何度も謝ってるじゃないですかッ!」「おっと、そんな事より来た様だぞ?」「!?!?」――――そして合流した(挙動不審な)篁&巌谷さんの直ぐ傍には、不知火SⅡ型が逞しく佇んでいた。●戯言●駄目だ、この横浜基地……早く何とかしないと……