これはひどいオルタネイティヴ36(後編)2001年12月02日 午前「う~ん……」……意識が覚醒し瞳を開けると、何故か"真っ暗"だった。だけど、ソレは机に突っ伏して寝ていたからだと瞬時に理解し上半身を起こす。そして時計に目を移してみると午前10時。結構 眠っちまったっぽいな~こりゃ。なのに変な姿勢で寝てたから少しカラダが痛い……そう思って後ろを見てみると。「…………」「あわわわわ、あわわわわ」「……ッ?」「どうしよう~、どうしよう~」ベッドで寝させていた涼宮(姉)が、ひたすらオロオロと室内を往復していた。どうやら俺よりも早く目を覚ました様だが、一体 何をしてるんだ~? 彼女は。見るからに慌てている様子は非常に可愛いけど、これは声を掛けざるを得ない。「涼宮」「!?」≪――――びくうっ≫「何してんの?」「あっ、あぁ……白銀……少佐~ッ……」「What?」「ご……ごご、ごっ……」――――挙動不審の涼宮(姉)は、青い顔だが頬辺りを染めると言う器用な表情で俺を見つめると。「ごごごご?」「ごめんなさいッ、ごめんなさいっ、ごめんなさい!!」――――唐突に物凄い勢いで頭を下げると、ひたすら謝り続けて来たのでした。………………「ほ、本当に申し訳有りませんでしたッ」「いや だから」「気絶したダケじゃなく、介抱して頂くどころか少佐のベッドまで使ってしまうなんて……」「そんなの全然 気にしなで良いってば」……5分後。デスクの前の椅子に座り、右足を左膝に乗せてリラックスする俺の正面で。ようやく落ち着いた涼宮(姉)が、見るからに申し分けなさそ~な顔をしながら立っている。どうやら室内を往復していたのは……俺より先に目を覚ましたモノの謝罪をせずに立ち去れない。だけど俺が目を覚ましていない事から謝れず、相手は上官なので無理には起こせない。しかも覚醒した俺にどう"対応"しようか言葉が纏まらない……だから ひたすら焦っていたそうな。う~ん……CP将校では有るまじき行動なので、昨日の凛々しい彼女とのギャップが凄すぎるぜ。それにしても、今朝は誰も俺を起こしに来なかったのが不幸中の幸いと言えるだろう。霞は言われた通りに休んでくれて、篁とイリーナちゃんは昨夜の疲れで来なかったってトコかな?「で、ですけど御迷惑を掛けてしまって……」「迷惑でも何でもないって。だから もう、忘れてくれ」「よ……宜しいのですか?」「勿論さあ☆」きっと今の彼女は、勝手に倒れた上に少佐 自ら彼の部屋まで送って貰い……ベッドを御借りして朝まで暢気に寝ていた事が、申し訳なくってたまらないんだろう。しかし殆どは俺の所為だ。調子に乗ってキス☆なんてしなきゃ涼宮(姉)は気絶しなかった。だからベッドで寝て貰った事を気にする必要もないし、勝手に部屋に連れ込んだのも俺だ。つまり全面的に俺が悪いんだけど、彼女は自分が悪いと思っているので俺の罪悪感が募る。そうとなったら、今回の事は速瀬の件と同様……全て忘れて頂くに限る。都合の言い話だけどね。よって首を傾げる涼宮(姉)に対し自重せず"勿論"と促して、顎でドアの方を軽く仰いでみる。"宜しいのですか?"と言うのは忘れて良いのか? ……と言う意味だろう、当然オッケーなんだぜ?「(そう言えば……)」「…………」「(今は少佐と私だけ……こ、これってチャンスなのかも……)」「…………」「(私の彼への"気持ち"は気付かれちゃってる筈だし、聞いてみようかな~?)」「涼宮?」――――だから涼宮(姉)が退室するまで待ってたんだけど、彼女は なかなか動かなかった。「あ、あのっ」「何だね?」「……~~っ……」「????」「私の事は……だ、抱いて……頂けなかったんですね……」「ゑっ?」――――もぢもぢと告げる涼宮(姉)の表情に、ほぼイキかけました。「……(い、言っちゃったよ~っ!)」「ちょっ……抱かなかったって、どう言う事?」「水月……いえ、速瀬中尉の様に……」「あの速瀬を、抱いたって?」「は……はい」「この俺が?」「そ、そうです」「…………」「…………」……10秒経過。「整理しよう。君の認識だと、速瀬は俺とセックスした事になっていると?」「……ッ……」←無言で頷く――――いつの間にか立ち上がっている俺に、上目遣いで頷く涼宮(姉)。それが死ぬほど可愛過ぎたので、ほぼイキました。……勿論、脳内での話だけどね?それはそうと、一体 何で速瀬との関係が そうなってるんだ!? 有り得ないだろマジで!!「いやいやいやいや!! 何言ってんだよ、そんな事 してないってッ!」「えっ? で、でも水月はそう言ってましたけど……」「誤解も良いトコだよ!! "あの時"は只 速瀬と抱き合って寝たダケで――――」「!? それなら やっぱり~」「違う違う!! 誤解しないでくれッ、それ迄には経緯が有るんだよっ!」「あの……く、詳しく聞かせて頂けませんか?」「そ、そのつもりだよ」「……(ど、どう言う事なの~? もしかして、私は信じられない勘違いをしちゃってたんじゃ……)」……………………15分後。俺は ひたすら誤解を解く為に、必死で涼宮(姉)への説明を行っていた。流石に"もんじゃ焼き"を吐かれた事は言わなかったけど、酒を無理矢理 飲まされた末、ドアの角に顔面をブツけられて気絶&ホールドを食らい朝まで逃げれなかった事は言った。対して涼宮(姉)は複雑な表情ながらも把握してくれ、コレで彼女への誤解は解けたってワケだ。「大体は理解してくれたかい?」「は、はい」「良かった。……って事で、俺と速瀬は何も無かったんだよ」「…………」「そうは言っても、抱き合って寝てた時点で"何も無い"ってのとは違うかもしれないけどねェ」「……ッ……最もですね」←想像したらしい「うぐッ」「あっ!? す、すみませんッ」「いや……間違いないし、そう思うのも仕方ないさ」「そ、それにしても水月ったら……自室まで送って頂いた少佐に何て失礼な事を……」「はははっ、酔っ払いに罪は無いってね」「そう言って頂けると、水月安心できると思います……でも、本当に御免なさい」「涼宮中尉が謝る事じゃないさ」「あ、有難う御座います(……でも、水月を止めなかったのは私だったんだよ~っ)」会話を続ける中、思った以上に速瀬の行動に責任を感じてくれている涼宮(姉)。……それに速瀬に"夜の件"の記憶が全く無かった時点で非常に助かっている。酒の影響で"とんでもない台詞"をホザいちまった事で、速瀬が脱ぎ出したのも俺の所為だし。「しっかし、もう"こんな時間"か~」「!? い、いけないッ」「どうしたね?」「作戦を終えてから、未だに伊隅大尉達に顔を出していませんでした」「まぁ、俺を直ぐに追いかけて今に至るワケだしね」「それと……今日の正午に再び"祝勝会"が有るんです」「祝勝会?」「はい、今回は茜。涼宮少尉達が無事 生還できましたから……」「成る程」「定かどうかは知りませんが、バズーカの実戦テストも行った事から、 その関係者の方達も見えるかもしれない……と言う話です」「まだ時間は……余裕が有るね。それなら行くしかないかな?」「少なくとも、私は少佐が見えるのを歓迎します」「有難う。だったら顔を出してみるよ」「私も行かなきゃ……でも、その前に大尉達に……」「だったら早く行った方が良い、皆 心配してるんじゃないかい?」「うぅッ」「じゃあ、急いだほうが良いよ」「そ、そう……ですね。それでは、私は これで失礼しま……」「ちょっと待った!!」「えっ!?」(どきんっ)――――別れる直前、俺は涼宮(姉)に大事な"任務"を授ける事を忘れていた!!「一つ、君に頼みたい事が有るんだ」「な……何でしょうか?」「えっと、その~ッ」「……ッ……」(どきどき)「……速瀬中尉の誤解を解いて置いて欲しいんだけど」「!?」――――その"任務"に対して彼女は、なんだかガッカリした様子で承諾してくれた。何故に!?………………2001年12月02日 正午「白銀少佐ッ」「篁」「昨日は御疲れ様でした!」←敬礼しながら「君もね」「昨夜は……良く御休みになられましたか?」「お、御陰様でね」祝勝会の準備が出来ていると言う以前と同じ部屋を目指し、通路を歩いていると篁と遭遇した。どうやら俺を迎えに来る途中だった様で、相変わらず上官の事を気遣ってくれる良い部下ですな。そんな篁の言葉に後ろめたさを感じる俺だったけど、気を取り直して祝勝会の部屋に入ると……「見事な活躍だったそうだな、白銀少佐」「い、巌谷中佐ッ?」「叔父様」「――――ッ」←咄嗟に敬礼する白銀&唯依「はははっ、約10日ぶりと言ったところかな?」「何故 中佐が此方に?」「我が娘の久しい出撃での生還を祝ってね。それと君との関係も確認して置こうかと」「はぁ」「!?」「この娘は生真面目だから少し不安だったが……いやはや心配は無い様だ。 上手い具合で躾けてくれているみたいだし、いっその事 このまま結納……」「お、おおお叔父様ッ! 違うでしょう!? 御聞きした話では――――ッ」「そうだった、そうだった。実は新OSやバズーカの実戦データを見に来たのさ。 それに香月副司令と唯依ちゃん交えて、弐型や新兵器についての打ち合わせもする予定だ」「そうだったんスか~」……何故か巌谷さんが登場。相変わらずカオは怖いのに笑顔が妙に似合う人だ。しかし生真面目な篁を相手に こんな冗談を言うとは……流石は義理とは言え父と言う事か。俺だったら嫌われるのが怖くて絶対に言えないよ。それはそうと、巌谷さんに続いて……「私がど~かしたのかしら?」「!? ……ゆーこさん」「昨日は御疲れ様でした、白銀少佐・篁中尉」「イリーナ中尉までッ」「香月副司令。貴女が開発したバズーカは素晴らしい戦果だった様ですな」「ありがと」「ゆーこさんも祝勝会に参加ですか?」「私は そんなに暇じゃ無いわよ。用が有るのは巌谷中佐の方」「な、成る程」「だから借りるわよ? 篁、貴女も来なさい」「……了解しました」ゆーこさん&イリーナちゃんも登場。だけど祝勝会をするのでは無く、仕事をしに来た様だ。よって巌谷さんと篁は連れて行かれる様で、2人は ゆーこさんの後を追い部屋を出て行こうとする。だけど俺は咄嗟に浮かび上がった"案"を言う為に……4人のうち1人を呼び止めるべく口を開く。「巌谷中佐ッ!」「何だね?」「呼び止めて申し訳ない。ひとつ、頼みたい事が有るんですよ」「頼みたい事? 良いだろう。君の望む事で有れば、なるべく聞く様にするが?」「えっと……榊 内閣総理大臣の事なんスけど」「なっ!?」以前から何とかしたかったけど、ぶっちゃけ巌谷さんくらいしか頼める人が居なかったんだよな。左近さんは左近さんで殿下の事で忙しそうだし頼めそうも無い上、俺が動いても無駄っぽいし……巌谷さんも忙しいと思うけど、可能性が有るダケでもマシだ。榊には中途半端で申し訳ないけどね。んで巌谷さんは俺の頼みを聞き終えると、難しい顔をしながら3人と合流するべく立ち去って行った。「(白銀少佐……其処まで読んでいるとは……だが、可能性は十分に考えられるな)」………………「あっ! 少佐が来てる」(水月)「そうだね」(遙)「……ッ……」「(水月ったら、やっぱり……)」「……~~っ……」←ウズウズしている「ねぇ水月、今 白銀少佐に食って掛かろうとか思ったでしょ?」「ギクッ」「ダメだよ? 絶対に」「わ、分かってるわよ。でも……遙だって私と"同じ事"したこと有るクセにッ」「あうっ」「でも、アイツはアイツで怒ったりも罰したりもしない。"最初"以上の事も未だに……」「!?」「ハァ……」「あ、あのね? その事について なんだけど……」「えっ?」「――――水月は白銀少佐に抱かれてなんか無いよ?」「!!!?」≪いやいやいやいや!! 何言ってんだよ、そんな事 してないってッ!≫「(水月には悪いけど、私は"あの時"安心しちゃってたと思う……でも)」≪私の事は……だ、抱いて……頂けなかったんですね……≫「(ソレを知らずに、私ったら何て事を……気付かれてるのは知ってるけど、恥ずかしいよ~っ!)」………………「……と言う訳で、水月は彼と何も無かったの」「そ、そんなあ~っ。でも、ちゃんと血の跡が残ってたし……」「ソレは水月が白銀少佐に鼻血を出させたから付いたダケだよ」「……~~ッ……」「だから、水月は"勘違い"してたって事」「!?」「これで"平等"になったね~?」「うっ、うぐぐぐ……」「(でも、それなら白銀少佐の"噂"って間違いだったのかなぁ?)」←登場人物 参照「――――あ"っ!?」「ど、どうかしたの?」「……私がアイツに抱かれて無いって言うのは分かったけど、遙は一つだけ見落としてるわよ?」「見落としてるっ?」≪……安心してくれ≫(以下17話 参照)≪え?≫≪一度で満足して無かったのなら、何度でも闘(や)ってやるさ≫≪んなッ!?≫≪どうしてもって言うんなら、今からでも良いんだぞ?≫≪なッ、ななな、ななななな……っ!!≫≪……悪かったよ≫(以下22話 参照)≪へっ?≫≪以前は闘(や)ってやると言いながら、なかなか相手ができなくってね≫≪!?!?≫≪でも……生憎 今日も無理なんだ。 ……許して欲しい≫≪んなっ、ななななな……≫「アイツは最初から私が"抱かれてた"って思い込んでたのを知ってたんだからッ!」「え、えぇ~っ!?」「……悔しいけど、私は……アイツの掌で踊ってたんだわ……」「だったら何で私の時には慌ててたんだろ……?」「遙が私の事でトンでもない勘違いしてたモンだから、合わせてくれたんじゃないの~?」「――――はうっ」(ふらり)「ちょっ!? 気持ちは判るけど、倒れないでよ遙ッ!」「ご、ごめんね」「じゃあ……妙なのは、何で私の"思い込み"を"そのまま"にしてたかって事ね」「う~ん。そう思わせてた方が水月が大人しくしてるからじゃないかな?」「どう言う事よッ?」「最初の水月……白銀少佐に凄い反抗的だったじゃない。彼は気にしてないみたいだったけど、 他の人から見たら絶対に許されない。しかも、水月は"その所為"で死に掛けたんだよッ?」「うっ……」「だから、それを心配に思って少佐は……水月の誤解を解かずに、あえて自分に"夢中"にさせた」「!?」「そうすれば水月は大人しくなって、後は真面目に訓練に打ち込むダケになる」「……クッ……」「2人で襲い掛かっちゃった時も有ったけど、それも想定の範囲内だったんだよ。 私達は一応 場所を選んでたから少佐は抵抗しなかったし、篁中尉が気にしない様にも……」「…………」「だから騙されてたのは癪だと思うけど、少佐の事を怒らない方が……」「……そっかあ」「水月?」「あはははっ。何時の間にか私って……アイツの事を"好き"になちゃってたのねェ」「!!!?」「な、ななななに驚いてんのよッ? 遙だって とっくにそうだったんでしょ~が?」「あぅう~っ」「だから……コレで遙の言う通り、本当の意味で"平等"になったって事ねっ?」「!? そ、そうだね」「だからッ」×2「負けないわよ!?」「負けないよぉ~?」………………≪――――ぞくっ≫「何だ このプレッシャーはッ?」祝勝会が開始され、それなりにレベルの高い料理を食ったり飲んだりしながら、適当に やってくる"お偉いさん"達を遣り過ごす中……俺は涼宮(妹)の姿を発見する。同時に何か"寒気"を感じたのでニュータイプを肖って独り言をホザいたのはさて置き、今回の主役である彼女は ようやく仲間やインタビュー等に解放された様子だ。見るからに疲れた様子なので心苦しい気もするが、その瞬間を見逃すワケにはいかないな。≪涼宮、やったな。帰ったらビールを奢ってやる≫上官として嘘はつけないしね~。いくら肖りで出た、労いの言葉だったとしてもだ。全く期待されてなかろうと、こう言う気遣いが出来ずして"あっち"じゃ先輩を語れないしねェ。よって俺は予めキープしていた年代物のワインを片手に、背後から近付いて声を掛けるんだが。予め"この後"の会話では、特に涼宮(妹)とのフラグは立たなかった……と言って置くとしよう。「ふぅ……」「涼宮」「し、白銀少佐!?」「やらないか? 一杯」――――そんでアホ毛を直立にしながら振り返る彼女に対し、つい阿部さん調で言っちゃったんだ☆………………2001年12月02日 午後……一方、ゆーこさんが留守にしている執務室のデスクトップ・パソコンに置いて。≪カタカタカタカタ……カタンッ≫「……できました」――――"社 霞"の設計した最新型の格闘機……不知火・カスタムのデータが誕生していた。「これを見て白銀 お兄さんは……」≪!? それなら元気……出ましたか?≫≪あぁ、凄ぇ出たよ。良いモン見せてくれてアリガトな?≫「また……褒めてくれるでしょうか?」●戯言●朝から修羅場にはなりませんでしたが、また勘違いを重ねてしまう2人の中尉の図。不知火・カスタムの元ネタはグフ・カスタムそんまんまです。武器の構造は違いますけどね。そのテストに置いて、彩峰・水月・神村・神代と候補が多いです。(根っからの長刀使いは除外)あと、あまりにも誤字が多いので番外編を若干修正しました。音楽を流して読んでいってね!?