これはひどいオルタネイティヴ30(後編)2001年11月26日 午前「…………」「…………」俺の後をつけて来た篁に"見られてしまった"のは、この際 仕方なかったと割り切るしかない。……では"何処まで"見られてしまったのかを手っ取り早く聞き出す必要が有るってワケだ。血を吐き捨てたトコまでならセーフ、鼻をホジってたトコだと結構 痛いとは言え巻き返せる。だけど和式トイレのドアに背を預けて一人呻き声を上げてたのを聞かれてたら間違いなくアウト。最初はナニをやってるか判らなくっても、少し考えれば真面目な篁であろうと直ぐ勘付くだろう。よって俺はドキドキとしながらも、例の如く真面目な表情(ポーカーフェイス)で口を開く。「篁」「は、はい」「何処まで見てたんだ?」「そッ……それは――――」「正直に答えてくれ、命令だ」「!?」もしかすると何時も俺を気遣ってくれる篁は、"勘付いた"としても誤魔化すかもしれない。でも……その優しさは流石に痛い以前に、彼女の胸に留めたままでは金輪際 距離は縮まらないだろう。だから篁が忠実なる軍人である事を利用して、"命令"する事により真実を問う事にした。「頼む」「(私は見てしまった……白銀少佐の"見てはいけないモノ"を……)」「……ッ……」「(声を出してしまったし、彼は気付いていながらも私に聞いている)」「…………」←心臓バクバク「(もし此処で嘘を言ってしまえ、信頼を失う……それだけは避けないとッ)」「篁?」「あっ……す、すみません。 私が見たのは、少佐が血を吐き出したところ……からです」「!? 間違いないんだな」「はい」予想外の許容範囲に、間違いないか問い質すと、真剣な表情で頷く篁。この様子……嘘をついてるワケじゃ無いみたいだな~。 やったぜ、これで一安心だッ。血を吐いた場面は見られちまった様だけど、これは何とでも言い訳できるだろう。人間鼻血は勿論、強く歯を磨き過ぎたり、舌や口腔内を噛んだりすれば血くらい出ますから!でも篁の上官としては格好悪いので、鼻血とは言わない事にし、俺は苦笑いをしながら言う。「は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね」「!? そ、そんな……"みっともない"だなんてッ」「ともかく、今見た事は忘れてくれ。 何とも無いからさ」「……ッ……了解、しました」「そんじゃ~行くか、御剣たちが待ってるしね」「は、はい」――――この時の俺は篁にヤバい場面を見られていなかった事から、調子に乗り直ぐ歩き出してしまう。「(忘れてくれ? 今の事を忘れなくてはいけないんですかッ? 白銀少佐っ……)」≪は……はははっ、それじゃ~みっともないところを見られちゃったね≫「(それに、どうして貴方はそんなに"笑って"いられるんですか? ……どうしてッ!?)」……そんな俺の後を追う篁の気持ちを、"この時"の自分は ちっとも考えちゃいなかった。もし、俺が居た世界であれば"さっきの事"を家族に見られていても正直に"鼻血出ちゃった"と告げる。例え適当に誤魔化したとしても、気にも留めてくれないだろう。 本当にヤバかったら自分から言うしね。けど……"こっち"だと驚愕しても仕方なくって、篁は"誤魔化し"を重く受け止めてしまっていたみたいだ。「さっさと着替えてくるよ、篁は先に行って待っていてくれ」「……わかりました」「今度は覗かないでくれよ?」「!? の、覗きませんッ」――――んで彼女の心理を微塵にも読めてなかった俺は、つい言っちゃったんだ☆………………2001年11月26日 正午「お待たせ御剣。 んじゃ~始めるか」「はっ!」……篁と別れてから10分後。再び強化装備に着替えた俺は、まりもちゃん達6名を他所に御剣と向かい合っていた。時間的には昼を回ってしまったので、御剣 以外は休憩に行って良いって言ったんだけど、篁は勿論 全員が最後まで見学する事を望み、こうして今に至っている。それにしても先程まで御剣はキョドっていた筈なのに、今は真剣な表情で俺を真っ直ぐにみつめている。う~む、凛々しい……でも案の定スケスケ・エロスーツ姿、実にシュール。 開発者、出て来いマジで。「付いてきてくれ」「はっ!」←実はヤケクソ≪――――ガチャッ≫「それじゃ~俺の膝に座ってくれ」「……ッ……」「嫌なら良いよ? いやホントに」「い、嫌などとは思っておりませぬッ」「なら来い、ド~ンと」「……ッ!(いざっ)」≪――――どんっ≫「ぐぉっ!?」「!? い、如何なされましたッ?」「いや、ど~もしないけど……そんなに力強く座らなくっても良いだろ?」「……ッ……し、失礼致しました」流石に一番 気合入ってるな~御剣は。 今の力強い着席も、ヤる気の表れなんだろう。でも、それだと俺の精神力が持たない……今の尻の弾んだ感触ダケでなく、彩峰よりも背が高い事から操作性は更に悪くなってる上、揺れるポニーテールが俺の鼻を弾く。つまり御剣 自重しろってワケで、情けないながらも目の前の彼女に向かって苦笑しながら言う。「……御剣」「な、何でしょうか?」「少しリキみ過ぎだ、肩の力を抜いてくれ」「!?」――――勿論、ヤる気 出し過ぎって意味ね? 熱くなるのは問題無いが、主に俺が辛くなるのさ。「そんなんじゃ、訓練に成らないぞ?」「し、承知致しました」「深呼吸」「すぅ……はぁ……すぅ……はぁっ」「そうそう、ソレで良いぞ~」「はっ、有難う御座います(……やはり珠瀬の言う通りだ。"緊張"などしている場合ではない)」「んじゃ~改めて。 軍曹、また設定の方を御願いします」『了解』「えっと……まずは――――」≪少しリキみ過ぎだ、肩の力を抜いてくれ≫「……(白銀少佐は我々の事を真剣に考えておられるのだ。邪な気持ちなど持っては失礼に値しようッ)」――――この後 御剣は本当に冷静に取り組むようになってくれた。 言ってみるモンだな~。………………『目標 全ての撃破を確認』「はぁ、はぁ……」「ふ~む」「い……如何でしたでしょうか?」御剣の指導を行うに当たって、俺が最初に見たかったのが吹雪F型における彼女の"戦い方"だった。よって まりもちゃんに数十の動かない標的(戦術機)を配置して貰うと、自由な方法で御剣に"全て"を撃破して貰い、それが完了した直後が今現在なのです。ちなみに撃破には数分を要し、御剣は若干 疲れた様子で頭越しで俺に感想を聞いてくる。もし、こっちを振り向かれていたらキスしちまいそうで怖い……それだけ息遣いが色っぽく感じた。「素晴らしい……の一言に尽きるかな?」「ま、誠ですかッ?」「うん。 "長刀の扱い"に関してはね」「……そうですか」御剣が色っぽいのはさて置き、彼女の長刀 捌きはもはや"芸術"の域に達していた。細かい動きが必要とされる格闘に置いては、ゲームのように攻撃のモーションが皆 同じってワケじゃない。操縦桿を操る事によって格闘のモーションも様々で、複数の"テンプレ"の動作のうち、状況に応じて最適な動作を戦術機に取らせて、はじめて長刀による攻撃が実現するのだ。当然 無理に突こうとしたり、斬ろうとしたり、払おうとしても"的確"な状況でなくては大きな隙を晒す。だけど御剣は状況に応じて最良の攻撃を続け、流れるような連続斬撃で全ての標的を破壊したのだ。しかも、彼女が戦術機に取らせた動作は"テンプレ"による攻撃パターンだけでは無かった。各衛士は自分の"コックピット・システム"に攻撃・回避等の動作を新しく組む事により、搭乗する戦術機に自分だけの"オリジナル動作"を取らせる事が出来るらしい。主に前衛を担う斯衛軍の熟練衛士などは"生身"で体得した剣術を戦術機にも活かそうと、大きな手間を掛けて"オリジナル動作"を組む事が多いらしく、それを御剣も行っていたのだ!!それはなんと5パターン以上にも及び、大方EXでいう無現鬼道流剣術か何かの動作なのだろう。コレに関してはプログラミング等に疎い俺には全く理解できない領域であり、テンプレによる長刀の攻撃パターンしか使っていなかった俺には、御剣の進歩には唖然とするしかなかった。――――まさに"天性"だな……その単語が何の蟠りも無く頭の中を過(よ)ぎってしまった。思ってみりゃ最期の戦いで御剣が"あ号標的"に武御雷(紫)で挑んでた時、テンプレ攻撃動作じゃ有り得ない動きで触手を捌いてたし、アレも"オリジナル動作"だったんだろう。こりゃ~佐渡島ハイヴ突入ぐらいの時期になったら、俺も長刀での戦いだと御剣に負けちまうかもな。そんなワケで素直に御剣を褒めると安堵した様な雰囲気がしたけど……彼女は理解しているハズだ。あくまで素晴らしいのは"長刀の扱い"のみであり、御剣が学ぶべき点は今回 他にあるのさ。「でもチェーンガンによる攻撃は一切してなかったよな?」「はっ」「勿論120ミリでの射撃もナシだった」「……ッ……」「唯一 使ったのが"頭部バルカン砲"の牽制か~」「も、申し訳ありませぬ……"自分の最も得意とするべき手段で撃破せよ"と仰いましたので」「うん、確かに そう言ったし問題無いよ。しっかりとサブ射撃は活用してたみたいだしね」「はっ。 以前 ご指摘 頂きましたので、積極的に使用する事にした次第です」(18話参照)「便利なモンだろ?」「はい、突撃砲を持たずとも射撃を行えるのですから」「だけどな~御剣」「はい?」「突撃前衛と言えど、射撃は欠かせない手段だ。 頭部バルカン砲が幾ら便利でも、 弾数は少ないしBETAの物量相手で多用すると、直ぐ使い切っちまう」「……ッ……」「だから今回は徹底的に近距離射撃についてを学んで貰うぞ?」「り、了解ッ」う~む、なんだか俺もマジで頑張らないとな~。 207B分隊、マジで恐るべし。特に御剣の進歩は驚異的だ。 11月10日に初めてシミュレーター訓練を始めたのに、2週間ちょいで白銀大佐ですら重点的に活用しなかった"オリジナル動作"を組んでるんだぜ?考えてみれば、御剣の剣術もワザワザ確認する必要無かったんだよな……何の為に珠瀬の射撃・鎧衣の判断力を確認した結果、榊の指揮能力の確認をスルーしたんだろう。さておき。 こりゃ長刀の扱いについては教える事は何も無い……むしろ、俺が教えて欲しいぐらいだ。けどソレでオシマイとなると空しいので、多少は御剣が苦手にしていると思われる射撃。……そして、他の娘と同様・俺の最も得意とする"機動"における指導を行ってゆく事にしたのでした。!? べ、別に悔しくなんてないんだからねッ! 俺は十八番の機動だけで十分 戦えるんだからっ!「(流石は白銀少佐……私の不得意とする技術を見抜かれておられる)」「(御剣……白銀さんにアソコまで言わせるなんてッ……流石は……)」「(珠瀬・鎧衣・榊に彩峰……そして、御剣……この娘達は一体ッ?)」………………「しっかりとロックして撃てッ、長刀とは違うんだ!!」「くっ!」「!? 御剣、早まるなっ!」「し、しま……っ!?」≪――――ドオオォォンッ!!!!≫『吹雪F型、滑空砲 直撃。大破』「……ッ……」「御剣」「は、はい」「長刀に持ち替えて斬り掛かるタイミングは良かったけど、敵が怯んでなかったぞ?」「な、何故なのです?」「弾がバラけ過ぎてたんだよ、クイック・ストライクをするにしても、 事前の射撃がちゃんとした"牽制"にならないと、まるで意味が無いんだ」「頭部バルカン砲では旨くいっていたのですが……」「そりゃ~命中精度も良いし、敵のAIがサブ射撃の概念を認識して無いからね」「うッ」「だから高AIが相手になると、チェーンガンによる牽制はより精密に撃ってから、 接近戦に繋げる必要が有る。そうじゃないと今みたいにカウンターの射撃を食らって御陀仏だ」「……未熟でした」「ま~、長刀ばっか振り回してたみたいだし仕方ないって。 とにかく練習だな」「承知」御剣の射撃の腕は決して悪くは無い。 まりもちゃん いわく、並の衛士の腕 以上は有るらしい。つまりBETA相手であれば、問題なく銃撃戦をこなす事は可能なんだが……彩峰などと比べてしまうと大きく劣り、クイック・ストライク(QS)を仕掛けても返り討ちにされるだろう。……QSとは旨く射撃を当てて相手を怯ませれば、格闘で一気に畳み掛ける事が出来る常勝手段だ。速瀬みたいなトンでもなく勘が良い衛士が相手なら、返されたりもしてしまうのはさておき。反面、射撃をミスれば無防備に長刀で突撃しているトコロで反撃を受けてしまう諸刃の剣となる。つまり反撃を食らう恐れがあれば封印するしかなく、射撃と格闘は別々の攻撃手段と割り切るしかなくなる。それはそれで新OSの機動を活かせれば十分 強い事には変わりないんだけど、沙霧大尉みたいな衛士が敵で出てくる事を考えると、学んでおいて損は無い……と思う。胸部マルチ・ランチャーが有れば、ベテランのまりもちゃんを30秒で撃破したみたいに、大分 QSの難易度は下がるんだけど、正史を考えると榊達がクーデターで乗るのは吹雪F型だろうしね。そもそも正史通りにゆけば榊達は死なないんだけど、つい いらぬ保険を掛けてしまう俺なのでした。「おっ? 今のは良い感じだったな」「感謝を。 ……ですが、難しいものです」「そうかい?」「いささか……剣を振り戦うのが性分故」「せめて"当て易い武器"が有れば良いんだけどな……威力が微妙でも怯ませれる……」「ですが、そんな武器が……」「――――有るかも」「えっ?」「いや……考え付いたダケなんだけどね」「さ、左様ですか」「ま~、ゆ~こさ……副司令に提案してみるよ」「ふむ……」「御剣の御陰で閃いたよ、アリガトな~?」≪――――さわっ≫(頭を撫でた)「ぅあっ」「一応、楽しみにして置いてくれよ?」「か、畏まりました」『……少佐』←低い声で「はい?」「う、うわっ!?」≪ズガアアアアァァァァンッ!!!!≫『吹雪F型、大破。 白銀少佐、真面目にやってくださいッ』「すんませ~ん」「あうっ」彩峰に続いて御剣の時でも、またまた"新しい案"を浮かんでしまった俺。あまり彼女の戦闘スタイルとは関係無いけど、考え付いたのは御剣の御陰で間違いない。だから嬉しくなって、つい頭を後ろから撫でちゃったんだ☆ しかも戦闘中に行うという暴挙。でも御剣の動きが止まってしまったのは予想外で、距離を詰めて来た不知火(高AI)にアッサリ撃破された。その際の まりもちゃん……何故か 顔を膨らませていた表情に不覚にも萌えてしまったではないか。「……(こ、この手の感触……忘れませぬッ。 いずれは、もう一度……)」――――それにしても、今回は良く耐えたな俺。まぁ、御剣のヤる気を考えると妥当な結果かな~?………………2001年11月26日 午後「それじゃ~俺は そろそろ失礼するよ」「御指導して下さった白銀少佐、及び篁中尉に対し敬礼ッ!」「――――っ」×5「行こうか、篁」「は、はい」「……ッ……」×6(羨ましそうな視線)長い戦いの末、ようやく榊達の指導を終えると、PXで俺達8人は遅れた昼食を摂った。話の内容は主に今回の指導の質問であり……篁とまりもちゃんも気になった点を聞いて来る。そして一時間ほどが経過すると"お開き"となり、俺と篁は敬礼を受けつつPXを去って行った。んで今はスタスタと通路を歩いており、相変わらず篁が俺の後を付いてくるんだけども。「篁、今回のを見て どう思った?」「……ッ……正直なところ、全員が訓練兵とは思えないレベルで有ったと思います」「そうだろうね」「特に珠瀬の狙撃と御剣……の剣術。 一流の衛士ですら あの様な真似はできないかと」「うんうん」「しかし、何故 あの様な訓練兵が存在するのです?」「B分隊の娘達の"腕そのもの"は偶然の産物だよ」「…………」「今の質問を"別の意味"で捕らえると、榊達は"ワケ有りな部隊"って事になるけどね」「!? で、では やはり"あの方"は――――」「篁。それ以上は いけない」「……ッ……」「…………」←互いに歩行継続中「は、話は変わりますが白銀少佐ッ」「なんだい?」「これからの予定は……有るのでしょうか?」「う~ん、そうだなァ」「…………」歩きながらの会話の中、唐突に篁が別の話を切り出す。 ……どうやら、午後の予定が気になるらしい。よって俺は足を止めて考える素振りを見せるんだが……正直、部屋に戻って寝たいんですけど。御剣の指導に関しては予想より楽に乗り切ったけど、それでも常に"半立ち"だったし股間が痛かった。つまりヘロヘロなんスけど、真面目な篁の手前 サボるワケにもいかないし、何か考えるしかないな。そう明日が不安ながらも覚悟を決めながら、篁の方を振り返りつつ口を開こうとすると……「やっぱり手堅くシミュレーターでも――――」「いけませんッ!」「うわっ、びっくりした」「し、白銀少佐は……御疲れなのでしょう?」「んっ? まぁね」「では……これ以上 無理をせずに、今日は御休みになってくださいッ」「えぇっ? でも、俺は……」「御休みになってください!!」「はい」予想外にも、篁は俺に休む様に言って下さった。 何故か凄い勢いで。そう言えばさっきから体調を気遣ってくれてたし、無理に頑張る必要は無かったのね。でも……何で篁の瞳が若干、潤んでるんだろう。 ひょっとして彼女自身が休みたがってたのか?まぁ、どっちでも良いや。 さっさと寝たかった俺は、篁の勢いにアッサリと首を縦に振った。ともかくコレで気持ち良く休めるぞ~っ! そう思って彼女と暫しの別れを切り出そうとしたんだけど。「では、参りましょう」「!? お、おい篁……何で腕を掴むんだ?」「休むと決められたからには、一刻も早く御部屋に戻って欲しいからです!」「えぇ~っ?」「さあッ(ちゃんと戻られるのを確認しないと、何処で無茶をされるか分からない)」――――何故か俺は篁に右腕を引っ張られるようにして自室に戻る羽目になった。「(うおッ……思ったよりも力 有るんだな~)」「("あの件"は他言しても迷惑になるだけ。 だから、せめて私が……)」………………――――数時間後。『それでは18時に夕飯をお持ちしますので、そのまま御休みになっていて下さい』『あ、あのな~篁。 其処までして貰わなくっても……』『御休みになっていて下さい!!』『はい』そんな篁との遣り取りを最後に、俺は電気を点けたまま寝巻き(青い制服)姿でベッドに横になっていた。今現在は目が覚めてしまい18時も近いので、両腕を枕にして見慣れた天井と睨めっこをしている。それにしても、篁も疲れた上官の為とは言えアソコまで世話を焼いてくれるとは思わなかったZE。俺を自室に引っ張り込むと、シャワーを浴びて着替えるまで部屋の外で待ち、しっかりと俺がベッドに横になるのを確認してから部屋を離れるとか、何処の介護職員だよ。≪――――コンコンッ≫「白銀少佐、起きておられますか?」「あぁ。 ついさっき、目が覚めたとこ」「では、失礼して宜しいでしょうか?」「いいよ~」しかも食事を持ってきてくれるようで、噂をすればなんとやら。篁がノックの後、鯖味噌定食を片手に持って器用にドアを開くと入室して来た。そして消灯台にソレを置くと、俺の反応を伺うのか一歩下がって こちらを見ている。「有難う」「……いえ」「(う~ん)」「……ッ……」そんな篁に対し俺は上半身を起こすと、とりあえず礼を言うんだけれども。まさか全部 食い終わるまで居るって~のか? 何処まで世話好きなんだ篁は。やっぱりホームヘルパーみたいな……だとすれば、なんだかソレに甘えたくなっちゃったんだ☆「篁」「は、はい?」「食べさせてくれないか?」「……ッ!?」介護と言えば、食事介助。 俺は心身 共に健康だけど、自重せずに言ってしまった。でも……驚愕する篁の顔を見て、直ぐに自分がアホな事を言っているのに気付いた。そうだよそうだよ、食わせてとか無いってマジで。 最後の最後で墓穴を掘ってどうするんだ全くッ!10秒ほどの思考時間で そう思い直した俺は、一旦 篁から離した視線を再び向けると……「!!」「……ッ……」なんとッ、何時の間にか篁が鯖を乗っけたスプーンを突き出して来ていた!!だけど中腰の彼女は、顔が赤い上にスプーンを持つ右手がプルプルと震えている。んもうっ! 恥ずかしいけど俺に指示されたから実行するなんて、唯依タンったら真面目杉。こりゃ冗談が過ぎたな……でも、此処は食わないと篁は ずっと"このまま"の体勢かもしれないので。「ぱくっ」「!?」白銀は嬉しくなって、つい食い付いちゃったんだ☆ 腹も減ってたし、もはや不可抗力だ。モグモグモグ、ごっくん。 ……うむ、美人に食べさせて貰う料理って こんなに美味いのね。対して篁は俺の行動に目を見開いて硬直しており、スプーンがポロりと地面に落ちそうになるけど。「おっと」「あ……」――――難無く落下 途中のスプーンを掴むと、俺は篁に苦笑しつつ口を開く。「はははっ、やっぱり止めとこうか」「そ、そそそそうですねッ」「ごめんな? 無茶な事 言っちゃって」「いえ、そんな……」「んじゃ~頂かせて貰うよ、マジで有難う」「では、御体の方は――――」「安心してくれ、今日はもう一歩も部屋を出ないよ」「そう……ですか。では、私はこれで失礼致します」「ほいほい」「――――ッ」≪バタンッ≫端座位になって鯖味噌定食を食いながら、ヒラヒラと手を振る俺に対し、敬礼して退室する篁。う~む……少し勿体無い事したかな~? あのまま篁のキョドりっぷりを見るのも一興だったかも。でも、さっきはテコでも動かない様子で俺をベッドに横にさせたのに、さっさと出て行っちまったって事は、やはり相当 食わすのは恥ずかしかったんだろう。だとしたら当たり前な結果だし、俺は口の中身が無くなると無意味に一言 嘆くのだった。「スイーツ(笑)」――――この後 微妙に悩んだけど、結局 御剣の尻の感触も思い出して抜いちゃったんだ☆………………≪ガチャ――――バタンッ≫「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」≪どくん、どくん、どくん、どくん……≫「白銀少佐の……あの時の言葉……」≪食べさせてくれないか?≫「(最初は驚いたけど……あの人も"人間"であり、17歳の少年なのよ? 誰かに縋ったり頼りたいと思うのは当たり前。ほんの僅かであれ、そんな様子が見えたのにッ)」≪はははっ、やっぱり止めとこうか≫「(……何も出来なかった。それに緊張を察され、また"悲しい笑顔"をさせてしまった……)」≪――――ボフッ≫ ←ベッドに身を投げた音「(私は……臆病だ)」●戯言●短くして感想数が減っても、創作(妄想)活動できるじゃない!そんな事を思ってた気もしたんですけど、も~う……ほんっと~にびっくりした~、感想が逆に増えた時は頭がパァーンとなって、何が何だか分からなくなっちゃって……今後もこんな感じで走らせて、頂きまイ"エエ"ェェ!!!!冥夜の訓練ではケンプファーのアレを発案する事になりそうです。次回27日にて。んでナックルは背に収められそうに無いので使い難い反面アレックスのアレと相性良さそうです。でもパイルバンカーって突撃砲とも長刀とも相性が悪そうですね、色々と考えている最中です。