これはひどいオルタネイティヴ192001年11月15日 早朝何時もの様に霞に起こされた俺は、彼女と一緒に通路を歩いていた。どうやら ゆーこさんが俺を呼んでいるらしく、執務室を目指しているのである。考えてれば、彼女から呼び出されるのは2週間ぶりぐらいな気がするんですけど。用が有る時は俺から訪ねる事が多くて、その際 ゆーこさんの用も聞く事が多かったしなぁ~。「おはよーございます」「今回は早かったわね」「そりゃ~そうしますって、徹夜なんですよね?」「そう言う事」「――――ッ」「あっ、霞?」ゆーこさんと朝の挨拶を交わしていると、唐突に霞が執務室を走って出てゆく。今日は何時もと変わらない様子だったから あえて気にし無い事にしていたんだが……更に好感度が下がったのかと不安になってしまう俺……霞が走る事って結構 珍しいんだよね。よって話を中断して霞を目で追ってしまうと、自動ドアが閉まるのと同時に背後から ゆーこさんの声がする。「ふ~ん、随分と気に入られたモンね~」「!? それって……俺が霞にですか?」「そうよ」「マジっすか、そうは見えなかったんですけどね」「……白銀。 アンタ思ったより鈍感なのね、何回もループしてるんだから、 あたしよりも付き合いは長いんでしょ? それなのに社の"好意"に気付かないなんて」「は、ははは……生憎この時期は色時どころじゃ無いッスから」そりゃ~"俺"にとっては初めてなんだから、ちっとも分からないってばよッ!けど ゆーこさん限定とは言え、ループについての配慮を忘れてたのは迂闊だったな~。ここは知ったか振りでもして置く事にしよう。 ……どうかボロが出ませんように。そう考えながら心の中で霞に謝りつつ適当に誤魔化してみると、ゆーこさんの表情が、少しだけ真面目になった様な気がしないでもなかった。「――――でしょうね」(小声)「え?」「……何でも無いわ。それより本題よ」「なんスか?」「フォールディング・バズーカの設計が終わったわ」「え、えぇ~!? 俺が言い出してから、まだ5日じゃ無いッスか!」「思ったよりも捗(はかど)って、直ぐに済んだのよ」――――おいおいっ、凄くねェか!?ゲームじゃバズーカの"バの字"も出てなかったのに、もう終わったのかよ!!「また霞に手伝って貰ったんですか?」「今回は あたし一人で余裕だったわよ。 ……とにかく説明するわ。 使う前は名前の通りに"折り畳んで背負っている状態"だけど、 持ち替える直前に瞬時に背中で組み立てられて両手に収まるようになっているの」「ふむふむ」「まぁ……色々と考えて設計したけど、当然 使い勝手は使ってみないと分からない。 だからアンタには暫く、このフォールディング・バズーカのシミュレーター・テストを任せるわ」「御安い御用ですよ。 じゃ~……どれどれ、ちょっと見せてください」流石は天才だ……兵器の開発用にもう一人 ゆーこさんが居たのなら、日本の戦術機は間違いなく、ぶっちぎりで世界一位の性能を誇っていただろうに。そう考えながら俺は、興奮気味にディスプレイを見せて貰おうとデスクに近付いたのだが、何故か突然ゆーこさんはガタりと立ち上がって、俺の通行を妨害して来た。……しかも顔が少し赤く、彼女にしては珍しく慌てているような気がし無いでもない。「――――ダメ」「何でッスか?」「生憎 見せられないデータが有るのよ」「え~……」そんな事を言われると余計 気になってしまうのが"人間のサガ"と言うモノだ。まぁ……見せられないと言っても、機密レベルでは無いんだろう。 それは間違いないZE。絶対に見られたく無ければパスワードでも付ければ良いんだし、その時点で技術面の問題で、営業部門の俺にはど~する事も出来無いのだから。「とにかく用は済んだわ、出て行きなさいッ」「そんな~、見せて貰う位 良いじゃないですか~」「ダメ!」「其処を何とか」俺は穏便に通ろうとするのだが、ゆーこさんは身を挺(てい)して行く手を阻んでくる。今現在は相撲の様に正面から俺に抱き付いており、その御陰でおっぱいが当たってます。流石のボリュームだぜ……ギュウギュウと意識せずに押し付けて来る辺り、余程 見られたく無くって必死になっているのだろうね。……だが逆に俺の好奇心はドンドン上昇してゆき、こうなったら最後の手段を使うべきか?「ダメったらダメ!」「あっ、量子電導脳」「えっ!?」「今だッ、マウスげっとオオォォ!!」「あ、あぁーーっ!?」「!? こ、これは……!!」徹夜明けなのか、簡単に注意を逸らしてしまった ゆーこさんをスルーして椅子に座るとマウスを弄る。対して彼女は諦めたか妨害して来ず、俺は簡単にフォールディング・バズーカのファイルを開けれた。すると飛び込んで来たのはバズーカの設計図(完成版)……なのだが、至る所で"顔文字"が多用されている。主に"しぃ"……(* ゚ー゚)系が圧倒的に多く、次点が(´・ω・`)ショボーンと言ったトコロだ。他にも"モナー"やら"ギコ"やらetc……ま、まさかコレが見られたくなかったのかッ!?そう思って ゆーこさんに視線を移すと、腕を組み顔を真っ赤にしてソッポを向いている。「~~ッ……」「ゆーこさん」「なによ?」「こんな事で恥ずかしがる必要なんて無いですって。 "あっちの世界"だと、このくらいの顔文字を使うのなんて普通ッスから」「ほ……ほんとっ?」流石に設計で使ったりはしないだろうけど、ゆーこさんみたいな人が使う時なんて限られてるしな。けど随分と安心した表情しちゃってまぁ……初めて彼女が"可愛い"と思ってしまったではないか。「HAHAHA、そうじゃ無かったら顔文字なんて概念は俺の世界に生まれてませんから」「……っ……」「まぁ、此処までウケてくれたのは予想外でしたけどね」「ふんだ……笑いたきゃ笑いなさいよ」「いえいえ、むしろ懐かしい記憶が蘇ってきましたよ。 有難う御座います」――――これは結構本気だ、ゆーこさんの意外な一面が見れて凄ぇ癒されたし。「!? そ、そうそう……伊隅達の不知火S型だけど、明日の昼頃には搬入されるわ」「えっ? 相変わらず早いッスね、それも言い出してから たった5日じゃないですか」「思った以上にウケが良かったみたいで、他の発注をそっちのけて最優先で組んでくれたの。 流石にA分隊のS型5機の搬入は、もう少し先みたいだけどね」「へぇ~」「それと……ついでに"もう一機"別の機体が搬入されて来るわ」「別の機体?」「ヒントは御剣よ」「あ~……あぁッ! もしかして、紫の武御雷ッスか!?」≪――――ガタッ≫「良く解ったわね」「そりゃ~ループしてますから。 少し時期が早いみたいですケドね」「そうなの?」「えぇ。 多分B分隊が"総戦技評価演習"を早めに通過できたからじゃ無いですか?」「なるほどね」ゆーこさんは空気を変えたかったのか、話題転換による追加情報を下さった。ふ~ん……伊隅達の不知火S型(7機)ダケじゃなく、御剣の武御雷(紫)もねぇ~。思わぬプラスの情報に俺は何時の間にか立ち上がっていたが、ゆーこさんはテンションが低い。空気は変わったけど、まだ引き摺っているんだろう。 しかも徹夜明けらしいし、俺も何か情報を……「ところで、其処で思い出したんですけど」「何を?」「俺 明日、斯衛に絡まれると思います」「……どう言う事?」「早い話……国連軍のデータベースを改竄(かいざん)した事、バレてるんですよ」「!?」「相手は以前から此処 横浜基地に出入りしている月詠中尉+少尉3名。 死んだハズの"白銀 武"が御剣に近付いて来た事を警戒しており、遂に接触して来る感じです」「ふ~ん。 政府の管理情報も改竄しとくべきだったのかしら」「まぁ……面倒事にはならないんで気にし無いで良いッスけど、これも予知の一つって事で」「そう」「でも以前と違って余り御剣とは関わってないんで、あんまりアテにはなりませんけどね」「……ん~……」「ゆーこさん?」「……何でもないわ、話はそれだけ?」「そんダケっす。 んじゃ~ちゃんと寝て下さいね? 俺はこれで失礼しま~す」「――――白銀」「なんスか?」「アンタは最初から死んでない。 ……良いわね?」「ぇあ?」「もう休むわ、出て行って」「は、はあ」≪ガシュウゥーーーーッ≫……情報交換後、俺は ゆーこさんの言葉に押される様にして執務室を出た。ラストの言葉が若干 気になったけど、死んでよ~が生きてよ~が白銀の肉体が此処に有る事は変わらない。だから深く考えない事にし、霞と鑑の居る部屋を目指して、俺はスタスタとその場を歩き去った。「不知火S型と新OSが完成したのは良いけど、実戦データだけじゃパンチが足りなくって、 物足りなかったのよねぇ~。 ……だから、今回はアンタの情報を利用させて貰おうじゃない」そして数時間……俺は朝食を抜き、霞とトランプで遊んだ。好きではないドコロか全くのド素人だが原作の事も考えて、"あやとり"も少しだけやったけどね。トランプに置いては主に神経衰弱と七並べ……ポーカーとかも行うんだけど、何故か全く勝てない。だから悔しくて懐かしの"スピード"を教えて遊んでみたら、大差で勝ってしまい、霞がヘコんだ(様に見えた)ので、結局 負けてばかりのゲームで遊ぶ事となってしまう。……とは言え霞は楽しめた様で、頭のアレをピコピコと揺らしながら俺を見送ってくれた。「――――君ッ」「し、白銀少佐!?」そして昼食後の午後。 B分隊は今日から実機訓練、A分隊とA-01は共同シミュレーター訓練。よって一人で訓練する事にし、シミュレータールームを目指す中、イリーナちゃんの友人である娘の片方(金髪ロン毛)が、一人で歩いているのをチャンスと声を掛けた。端末と筐体を往復すると伊隅達に見つかる可能性が上がる事から、それを避けたかったのが大きかったダケなんだけど、簡単にOKしてくれて良かったZE。ついでに管制(しかも美女)も付いたので良い訓練が出来たし言う事無しだったんだけど、ラストの1本辺りで妙に友達の娘の瞳に熱が篭ってたような気がしないでも無かった。ちなみに単機のヴォールク・データにおけるS型バズーカ仕様のテストのみを行っており、今回は反応炉までは到達できなかったけど、様々の局面での使い分けを考えながら臨んでみた。「ふァあん……白銀少佐ぁ~っ……」≪……くちゅ、くちゅくちゅ≫――――イリーナちゃんの御友達(その1)は今夜、つい白銀で犯っちゃったんだ☆………………2001年11月16日 午前……本日の俺は、B分隊の実機訓練の見学&指導をしていた。主に まりもちゃんが不知火S型 単機でB分隊の吹雪F型5機を相手にする様子を、俺も不知火S型に乗って様々な角度から眺め、適当に浮かんだ内容をアドバイスとして教えていた。この訓練でも何百万単位で金が掛かってんのかな~と、くだらない事を考えながら。その際 御剣と彩峰 辺りが俺と勝負したい様な事を遠まわしに口にしていたが、流石にソレは まりもちゃんに厳しく制され、俺も元から戦ってやる気は無かった。べっ……別に負けるのが怖かったワケじゃ無いんだからね!?俺の愛機のS型がペイント弾で汚れちゃうのがイヤなダケなんだからっ!!『午前における実機訓練はこれで終了とする!』『――――有難う御座いました!』×5『御指導下さった白銀少佐に敬礼ッ』『――――っ』「お、お疲れさ~ん」彼女達の訓練が終わる頃、まりもちゃんの不知火S型は多少ペイント弾で汚れてしまっていた。一度だけ御剣の捨て身 紛いの攻撃を受け、珠瀬に隙を突かれて支援突撃砲の直撃を食らったのだ。けど"捨て身"の評価はしかねるので以後 許可はしない事にしたが、まりもちゃんを落とした事 自体は流石だ、いずれは2vs1で勝てる様にも成って欲しいケドね。だが……それよりも榊達の青いハズの吹雪F型は、ペイント弾の所為で真ッ黄色に染まっていた。後衛の珠瀬機も同様。 戦う度に まりもちゃんに全滅させられているんだから当然と言えば当然か。されど直撃を食らい易い御剣と彩峰の機体は特に酷い。 これで良く今迄 戦えたモンだ。恐らくメインカメラに一度もペイント弾を当てずに済ませた、まりもちゃんの腕によるものだろう。………………「お~っ……」俺の機体をハンガーに戻し着替えて戻って来ると、丁度 新たな不知火S型が搬入されているトコロだった。今迄 伊隅達が乗っていたノーマルの不知火と入れ替えているダケとは言え、7機と多く しかも新品で新型な為か大規模なモノであり、多くの整備班が出向いている様子。また衛士の見学者もチラホラとおり、彼らと同様にボンヤリと搬入の様子を眺めていると――――「白銀少佐!」「少佐も此方でしたか」「榊、御剣。 ……みんなも一緒か」「うん」「なんか戦術機が沢山 搬入されてるって聞いて来ました~」「凄いなぁ~、アレ全部が新型なんですよねッ?」――――B分隊登場。 噂を聞いて搬入の様子を見に来たのだろう。「まぁ……元々 不知火S型は俺と軍曹のが搬入されてたし、有る意味 吹雪F型も新型だろ?」「そうですけど、一度にあんな数の新品の機体が配備されるなんて、凄く珍しいと思います」「この御時世……新たな戦術機を作る余裕など、そうそう有るモノでは御座いませぬ故」「そだね」「不知火S型が、それだけ期待されてるって事なんですねー」「あれ~? 一番 奥のハンガーが空いてるけど、何でかなぁ?」――――鎧衣は相変わらず勘が良いな~。 空気を読めて無いのも同じだけど。「それに、もう少しでA分隊の不知火S型5機も配備されるハズだ」『……ッ!?』「意外か? けど涼宮達は既にソレだけの技量を身に付けてるって事だ、君達も頑張ってくれ給え」「も、勿論ですッ!」「では我々は一刻も早く吹雪F型に慣れる事を考えなければ……」試しに涼宮(妹)の名を出してみると、予想通りの反応をするB分隊。頑張るに当たってライバルの存在も必要だし、榊は特にやる気になった様だな。……そんな会話をしながら、搬入の様子を眺めている中、暫く経ったので榊・彩峰・鎧衣が先にハンガーを去り、次第に見学者も減って来た時。遅れて搬入されて来た機体を確認した瞬間、珠瀬の表情が驚愕へと変わった。「わぁっ! あ、あれって……!」「――――ッ」「武御雷(紫)だな」「……(私には、あの様な物は必要ないと言ったのというのに……)」「しかも御剣 専用の」「!? ご……御存知なのですか、少佐ッ?」「まぁね。 色々と事情が有るんだろ?」「……うッ……」「しかし興味深い。 ちょっくら近くで拝んで見るとするかな~」「あっ……少佐~?」「お、お待ちくださいッ」御剣は俺が武御雷(紫)を彼女の専用機と知っていた事に驚いている様子だ。だが多くは告げずに歩き出すとタラップを降りてゆき、俺の後を珠瀬→御剣と続いて来る。すると珠瀬は余程 興味を引かれていたのか何時の間にか走り出しており、俺を追い抜いて装甲に触れようと、武御雷(紫)との距離を詰めて行った。そうなれば彼女は月詠さんに殴られてしまうが、涙目の珠瀬も萌え……じゃなかった。正史を考えれば必ず阻止しなくてはならならず……俺は大きく息を吸い込むと叫んだ!「珠瀬ッ!!」「は、はぃいっ?」「……少佐?」う~む……だけど、此処で止めたら月詠さんに無駄に怪しまれるんじゃね?その為 俺は珠瀬を呼び止めるダケでなく、追加の行動に移る事にした。思ってみれば自重するべきだったかもしれないが、珠瀬と御剣の視線に応えたかったのだ。別に応えなくて良かったのかも知れないケド、"俺自身"が武御雷(紫)に興味が有ったのさッ。「先に武御雷に触るのは俺様だ!! 上官を差し置いてズルいぞ珠瀬ッ!」≪ビシィッ!!≫――――俺は左手を腰に右手の親指を立て、それを自分に向けて言った。「!? は、はぅはぅわっ……ゴメンなさい~っ!」「御剣~、別に俺が触っても構わないよなァ?」「は、はぁ……どうぞ」「"御剣の許可"が出たなら問題無いよな? では早速――――」≪ぺたっ、ぺたぺた≫"御剣の許可"と言う台詞を強調し、俺は手形を付ける気持ちで躊躇無く武御雷(紫)に触れた。なんかスベスベして冷たい……少なくとも不知火S型よりは手触りが良いなあ。でも触ったからって、やっぱり感動するワケじゃないね……何だか空しいモノが有る。だから更なる行動の為に俺は"自重"と言うリミッターを解除し、表情を改めた。「……ッ」――――劇画(JO●O)調に。「フム、これが"武御雷"の手触りか……!」≪┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……≫「……だがッ、触るダケでは生憎"リアリティ"欠けるな……」「し、白銀少佐ぁ~?」「何を言われているのですッ?」≪ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……≫「――――味も見ておこう」≪ぺろっ≫『……ッ!?』「き、貴様ァーー!!」「おっと」背後の二人から訝しげな視線……そして物陰から複数の殺気を感じるモノの、国連軍衛士はうろたえないッ! 俺は躊躇無く武御雷(紫)に顔を近づけ、優しく舌を這わせた。ぶっちゃけ冷たいと言う感想以外 浮かばず、やっている事は只の変態行為だ。だが"釣り餌"としては完璧だった様で、物陰から赤い軍服の月詠さんが飛び出し、奇特な色と形の髪をしている、白い軍服の斯衛トリオも彼女に続いて出て来るッ!当然 警戒していた事から、既に俺は武御雷(紫)から距離を取っている。むぅ、国連軍はともかく斯衛軍じゃなくて良かったかも……ちょっと衣装が有り得ないデザインだぞ。「この武御雷は、冥夜様の御為のみ存在するもの!! 貴様のような下賎の者が触れて良い物では無いのだぞッ!?」「て、帝国斯衛軍……!」「フッ……そう言う事だ、危なかったな珠瀬」「にゃっ!?」「(あの月詠の気配を読んでおられたのか? 流石は白銀少佐……しかし……)」「しかも触れるだけで無く……し、舌を……這わせるなど…… 貴様は宮内省斯衛部隊を愚弄……ひいてはミカドを冒涜する行為を犯したのだ!!」「いや~、そんなつもりは――――」「……月詠中尉! これは どう言う事なのですッ?」「!? め、冥夜様……お止め下さいッ。 我々にその様な言葉遣いなど――――」「武御雷など訓練兵の私には過ぎた代物ッ! 恐れ入りますが乗る気など御座いませぬ。 私め等にでは無く、白銀少佐の様な より優れた衛士に御与え下さい!!」「――――!?」×4いや御剣……例えに俺の名前を出してくれるのは嬉しいんだけど、無理が有るだろ~?そもそも俺は斯衛じゃ無いんだから例え月詠さんが持ち帰ったとしても乗れないってば……でも乗らないんなら御剣が乗るまで斯衛で預かって貰う方が良い気がする。これ一機で一週間どれだけの維持費が掛かるんだろう? そんな庶民的な考えをする俺。対して月詠さんは今の御剣の言葉に眉を落とすが、直ぐ様 矛先を俺に向けて来た。……か、顔が怖ぇ……凄い殺気だ。 何だか穏便で済まなそうな気がするんだが……「白銀 武!」「はい?」「どうやら……間違いでは無さそうですね」月詠さんが俺の名を呼び応えると、金髪ロールの少女・戎(えびす)だっけ…………の言葉に月詠さんは続ける。 あれッ? 何だか嫌な予感がするんですけど。「白銀 武、貴様は何者だッ!」「何者って なんの事っスか?」「トボける気ですか!?」「戎」「――――っ」「……死人が……何故此処に居る?」「え?」「国連軍のデータベースを改竄して、此処に潜り込んだ目的は何だ!?」『――――!?』戎の言葉を制止し発言した月詠さんの"死人"と言う単語と……データ改竄 云々を叫ぶ神代?……の言葉に、背後の御剣と珠瀬が驚愕する。 勿論、俺も寒気を感じてしまった。「政府の管理情報までは手が回らなかったのかッ? それともまさか……追及されないとでも思ったか!?」「……ッ……」俺を指差し凛々しく叫ぶ巴? ……なのだが、俺は何も応えられない。「もう一度だけ問う……死人が何故 此処に居る? ――――白銀武ッ。 冥夜様に近付いた目的は何だ!?」「ち、ちょっと待ってください。 俺はそんなつもりは……」「白銀少佐・月詠中尉! こ、これはどう言う事なのですッ?」「今の話、ほ……本当なんですか~?」「……ッ……」おいおいおいっ、これってヤバくないか? 明らかに原作と違う流れだぞこれはッ!何で"今のタイミング"で月詠さんが"死人"について追及して来るんだよ~っ!?御剣と珠瀬が聞いているって言うのに、さっきの露●先生ネタが そんなにヤバかったのか?謝れッ、JO●Oファンに謝れ! ――――いや、謝るのは俺の方ですよね。しかし不味いな……どう誤魔化せば良いんだッ? 最悪 此処で消されちまうんじゃ無いんだろうか?助けて~、おかーちゃーんっ! ……と思って悲愴な表情で黙っていると、天の助けが現れる!「あ~ら、目的なんて有る筈 無いでしょ~?」「誰だッ?」「ゆ、ゆーこさん」「始めから白銀は死んで無いのよ。BETAに殺されそうになったけど奇跡的に逃げ延びた。 そもそも誰も白銀が死んだ場面なんか見て無いんだし、御剣意識過剰なんじゃ無いのぉ?」「――――!?」×4「そうよねぇ~、白銀?」「んあ……はい。 死んで無きゃ今 此処でピンピンしてる筈無いですし」「むぅ、そう言われてみれば。 ……月詠中尉、先程の話は言い掛かりにも程が有り過ぎませぬかッ?」「!? で、では……何故 今頃になって国連軍のデータベースを……」「簡単な事よ~。城内省のデータで"死んだ事になっていたまま"の方が、 今迄 影で白銀を動かし易かったからに決まってんじゃな~い。 むしろ、わざわざ抜けてた穴を埋めてアゲたのよ? 逆に感謝して欲しいわ」「そ……そう言う事だったんですか~」「珠瀬、誤解は解けたわね? だったらアンタは行きなさい」「は、はい~っ!」ゆ~こさんキタコレ!! 確かに開き直ってりゃ良かったんだよね、チキン過ぎでした俺。しかし開き直るにしても ゆーこさんが言うと説得力が有るなァ……あの月詠さんが負けてるよ。確かに ゆーこさんなら本当に水面下で全くバレずに人を動かせそうだし、強ち間違いじゃ無いかもね。ついでに誤解を解いた珠瀬に退く様に促してくれ、彼女は敬礼すると慌てて走り去った。「でも、貴女達は納得してなさそうね」「……ッ……」「ま、真那様……」×3「ふふん、だったら体で分かって貰おうかしら。 ねぇ、白銀~?」「へぇあ?」「……香月副司令、我々には理解 致しかねますが?」「解らない? "白銀 武"と言う存在を、今迄 公に一切 晒さずに温めて続けて置いた理由。 つまり、どれだけ価値の有る衛士かって言うのを教えてあげるって事よ。 そ~ねぇ……戦うのは白銀一人に対して後ろの白服の娘達3人。 それでど~かしら?」「!? ふ、副司令ッ! それは幾らなんでも白銀少佐とは言え――――」「五月蝿いわね、元はと言えばアンタの連れが勝手に着せた濡れ衣でしょ~? 武御雷を黙って搬入させてあげたダケでも多めに見てんだし、これ以上 口挟まないでよ」「も、申し訳ありません」「――――香月副司令ッ」「何よ中尉、御剣はウチにとっちゃ只の訓練兵よ? あたし何かマズい事でも言った~?」「……くッ……」流石は ゆーこさんだなぁ、相変わらずの挑発的な笑みで月詠さんを手玉に……って、オイッ!?なして何時の間にか俺が斯衛トリオと戦う事を促しちゃってるんですかぁーー!?"3バカ"は幾らなんでも可愛そうだから そう呼ばないのはさておき、正史と全然 違うじゃん!!ゆーこさんが介入して来た時点で違和感を感じてたけど、そうですか……こう言う流れですか……「それで、どうすんの? 戦わずして信じちゃっても構わないのよ~?」「神代・巴・戎」『――――はっ』「……良いでしょう。 白銀少佐の腕、我々で見極めさせて頂きます」「つ、月詠中尉!?」「……(申し訳ありません……冥夜様)」「なら模擬戦は実機で場所は横浜基地周辺での市街戦。 日時は明日の午前中、準備完了次第 開始。 白銀は新型の不知火、その娘達は3機の武御雷(白)、実弾は無しって感じで良いかしら~?」「……承知」「なら決まりね、楽しみにしてるわよ~?」「マジで~」(小声)「はい。 それでは……我々は これにて失礼 致します」「…………」(唖然)「白銀少佐、先程の非礼は謝罪しよう」「はぁ……」「さ~て、面白くなって来たわね~♪」結果 月詠さん達は模擬戦の条件を飲むと、ゆーこさんに軽く頭を下げ御剣にも浅く礼をすると、最後に俺と視線を合わせず通りすがりに安直な謝罪をし、その場を立ち去って行った。対して放心状態の俺……何せ唐突に斯衛トリオとの対戦カードを勝手に組まれ、しかも"絶対に負けられない戦い"をする羽目になってしまったのだから。んで厄介事を引き起こした ゆーこさんも、満足そうに口元を歪ませると歩き去ろうとする。それに気付いた俺は慌てて彼女の後を追い、歩きながらも先程の件について問う。「ちょっ……ゆーこさんってばッ!」「何よ~? あたしはこれからビニールを破きに行くんだから、邪魔しないでくれる?」「勝手に模擬戦 組んどいて何 言ってんですかッ」「別に良いじゃない、データを考えればアンタが負ける様な相手じゃないわ」「そう評価してくれるのは嬉しいんスけど、今迄無かったイベントなもんで……」「男が細かい事 気にすんじゃ無いわよ。 それにしても、大きな獲物が釣れたモンね~っ」「エモノ?」「アンタを仕官させる際、あえてデータの改竄に穴を作って置いたのよ」「えぇッ!?」「当然バレて誰かが言い寄って来ると思ってたんだけど、御剣の斯衛が連れて良かったわ。 言い訳なんてアンタが今こうして生きているダケで何とでもなるし、 流石に"因果律量子論"を持ち出して来れる程、頭の冴えるヤツなんて居ないんだろうしね」「うへぇ……」「だから、折角の獲物は利用させて貰う事にするわ。 不知火S型と新OSにおける"実戦以外"の貴重なデータとしてね」「実戦以外のって?」「いくらBETA相手に有効でも、プライドの高い有る意味"幸せなレベル"の連中は、 ソレだけじゃ納得しないっぽいのよ。 だから不知火S型で斯衛の武御雷をも叩き潰す事で、 より確実に交渉を"こっち"の有利に展開させる事が出来るってワケ」「成る程」「とにかく11日以来の仕事よ? 命令するわ、勝ちなさい」「り、了解~」……ま、まさか原作にそんな ゆーこさんの配慮が有ったとはねぇ……いや、数多くのオルタの世界で俺が経験するオリジナルな設定と考えた方が良いか。だが……何か忘れている気がする……そう思っていると、ゆーこさんが先に気付いたようだ。「あぁ……そう言えば、御剣を放って置いたままだったわね」「うわっ、そうだった。 どうしましょう?」「今頃 武御雷でも見上げてるんじゃない? あの娘にも思うトコがあるだろうし」「それじゃあ、そっとして置く方が良いかな~」――――そう。 自分の不幸に抗うのに夢中で、御剣の事をすっかり忘れていた。あの娘も武御雷(紫)を突然プレゼントされたり、連れがイキナリ上官と戦う事になったりで大変だな~。だけど俺も俺で斯衛トリオには負けられないから、しっかりと訓練して明日に備えないとね。≪御剣も、いずれ解る。 誰にでも……失いたくない"モノ"があるのさ≫「くっ……貴方はやはり、衛士にもならぬ頃……家族や友を全て失いッ、 生還した過去が有りながら……更に戦いでも、多く仲間を失ったのですね……」≪……お前の守りたいモノが、守れるのを祈っているよ≫「白銀少佐ッ……必ず私は この武御雷を乗りこなせる衛士となり、 貴方をBETAから守り抜いて見せましょうッ!!」(涙目)………………2001年11月16日 午後午後のB分隊は室内で、映像による午前の訓練の復習をするらしい。A分隊とA-01の午前は昨日と同様、共同シミュレーター訓練だった様で、午後も昨日のシミュレーター訓練の結果をも踏まえながら、更なる技術の向上を目指すらしい。そして技術が身に付いて来れば、12機の中隊による連携を組んでゆく予定との事。ンなワケで今日の午後も俺は一人で訓練する事にし、今回も偶然一人で通路を歩いていた、もう片方のイリーナちゃんの友達(金髪セミロング)に声を掛けてみた。「――――キミッ」「し……白銀少佐」……結果 彼女もオペレーターを引き受けてくれ、今日も有意義な訓練が出来た。内容としては……遂にバズーカを背負いながらも単機で反応炉に到達できた~って感じだね。だけど、彼女もラスト辺りで瞳に熱が篭り始めていた様な気がしたんですケド……よって何だか怖いから礼を言って直ぐに走り去ってしまったが、明日はきっとバッチリだぜ!!「ひゥうん……イリーナが羨ましいよぉ~」≪……くちゃ、くちゃくちゃ≫――――イリーナちゃんの御友達(その2)も今夜、つい白銀で犯っちゃったんだ☆………………2001年11月17日 午前「今回も宜しく御願いします、イリーナ中尉」『は、はい』「えっと……先ずは何処に行けば良いんですかね?」『少々 お待ちください、只今よりマップとポイントを転送します』ゆーこさんの謀略により、オルガ・クロト・シャニ……じゃなかった、斯衛トリオと戦う事となってしまった俺は、不知火S型に乗り込むと戦地にへと赴いていた。そんな今回の戦いは貴重な交渉手段の一つとなる、不知火S型と新OS(β版)の模擬戦データの収集……つまり機密に入るので公には隠されて行われるらしく、見学できる者は限られている。「こ、斯衛の武御雷3機と白銀少佐が単機で戦うんですかッ?」「流石に分が悪いと思われるのですが……」「では何か、貴様らは白銀少佐が負けるとでも思っているのか?」「……ありえないね」「そうですよ~、白銀少佐は勝ちます~っ」「白い武御雷かぁ~。 どんな色でも新しく頭部バルカン砲を付けるダケで、大分違いそうですよね~?」「よ、鎧衣……貴様は また関係ない事を……とにかく、少佐の勝利を疑うな!」『――――はっ!』……まずはB分隊と、まりもちゃん。「た、武御雷が3機も相手なのね……」「平気だよ茜、私達5機でも勝負にならなかったんだからさ」「白銀少佐の腕と不知火S型のサブ射撃を考えると、絶対大丈夫だよぉ~」「……どう思う? 水鳥」「あはははっ、聞くまでも無いね~」……次にA分隊5名。「これは見物だな……どうなるか……」「ふんっ、あんなヤツ負けちゃえば良いのよ!」「でも水月……勝てたらホントに凄い事だよ? ねぇ、宗像中尉?」「そうですね。 新型とは言え不知火が3機の武御雷に勝ると言う、信じられない事が現実となります」「私達は その"信じられない戦術機"と全く同じにモノに乗り、今後も訓練を行う事が出来るのですね……」「し、しかもそれが……いずれ12機の中隊規模に……?」「あわわわっ、それって凄くない? 綾乃ォ~!」「それでヴァルキリーズの本領発揮ってトコになるのかなァー?」……そしてA-01の8名が、全員 大型車両内のモニターの前で試合開始を待ち望んでいた。う~む……人数こそ少ないけど、マブラヴのメインキャラ達が見学してるってのは緊張するぜ。負けるつもりは最初から無いとは言え、相変わらずプレッシャーに弱いな~俺は。流石に実戦の時よりはマシだけど……此処は やはり有名なパイロットを肖るとするかッ!俺は そう決めると、イリーナちゃんの送ってくれた情報を元に、与えられた地点へとそれなりの高度を維持して向かうと、噴射を切って無造作に降下する。そして地面が近付くと同時に軽い噴射行動で反動を殺し、地面を必要以上に揺るがした。≪ズシイイィィィィン……ッ!!!!≫この着地の時点で既に俺は、とあるパイロットに成り切っていた。白銀の実年齢を考えても少女と言える相手である、斯衛トリオを考えてでのチョイスだ。機体に負担を掛けない程度とは言え、無駄に振動を感じる様に着地したのも"彼"の所為かもしれない。俺は既に配置に着いている3機の武御雷(白)を遠方に、着地後一歩だけ右足を力強く踏み込ませ、不知火S型を直立させるように操作すると、やや強く吹いている風で靡かれながら機体を佇ませ嘆いた。≪――――ズシンッ!!≫「この風……この肌触りこそ戦争よ」『……ッ!?』イリーナちゃんが案の定 驚いているけど引かんといて~ッ、こればっかりは自重できないんだYO!しかも、緊張していた俺は再び墓穴を掘っていたらしく……気付く事は無かったのでした。これからガン●ムごっこをする際での台詞は全て、斯衛の4名含め全員に筒抜けだったと言う事に……「神代・巴・戎……やはり奴は潜り抜けた修羅場の数が違う様だ、心して掛かれ」『――――は、はいっ!!』≪始めから白銀は死んで無いのよ。 BETAに殺されそうになったけど奇跡的に逃げ延びた≫「(まさかアレが本当であれば我々は何と言う勘違いを……それに、冥夜様は心から彼を……)」≪私め等にでは無く、白銀少佐の様な より優れた衛士に御与え下さい!!≫「(……らしくなかった。 冥夜様の想いに嫉妬し、私は我を失っていたのだ)」――――斯衛トリオちゃん達……手加減してね? 俺は逃げ出したいと思いながらも、気張る事にした。●戯言●今回初めて白銀の心理描写以外での描写が2箇所入りました。勿論お解かりですよね?このタイミングから、白銀ダケでなく一日の〆は女性キャラのスーパー賢者タイム直前も使おうと思います。でもスーパー賢者タイムって男性専用だったかな?スーパー聖女タイムってヤツは無い様ですし。次回はタケル・ラル少佐のはっちゃけにご期待ください。デデン、デデデデンッ(S型のアイキャッチ)●追記●同日22時頃誤字修正等を行いました