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No.3960の一覧
[0] これはひどいオルタネイティヴ(ぶち壊し注意)[Shinji](2008/08/24 12:52)
[1] これはひどいオルタネイティヴ2[Shinji](2008/08/25 11:13)
[2] これはひどいオルタネイティヴ3[Shinji](2008/08/25 11:11)
[3] これはひどいオルタネイティヴ4[Shinji](2008/08/26 04:35)
[4] これはひどいオルタネイティヴ5[Shinji](2008/08/26 23:24)
[5] これはひどいオルタネイティヴ6[Shinji](2008/08/27 20:54)
[6] これはひどいオルタネイティヴ7[Shinji](2008/08/28 16:19)
[7] これはひどいオルタネイティヴ8[Shinji](2008/08/29 20:22)
[8] これはひどいオルタネイティヴ9[Shinji](2008/08/30 23:24)
[9] これはひどいオルタネイティヴ10[Shinji](2008/08/31 22:48)
[10] これはひどいオルタネイティヴ11[Shinji](2008/09/01 21:59)
[11] これはひどいオルタネイティヴ12[Shinji](2008/09/03 08:21)
[12] これはひどいオルタネイティヴ13[Shinji](2008/09/05 10:13)
[13] これはひどいオルタネイティヴ14(+用語ver1)[Shinji](2008/09/07 08:57)
[14] これはひどいオルタネイティヴ15(+伊隅戦乙女隊ver1)[Shinji](2022/04/20 02:22)
[15] これはひどいオルタネイティヴ16[Shinji](2008/09/11 14:52)
[16] これはひどいオルタネイティヴ17[Shinji](2008/09/13 17:38)
[17] これはひどいオルタネイティヴ18(+伊隅戦乙女隊ver2)[Shinji](2008/09/16 23:33)
[18] これはひどいオルタネイティヴ19[Shinji](2008/09/19 22:36)
[19] これはひどいオルタネイティヴ20[Shinji](2008/09/23 02:45)
[20] これはひどいオルタネイティヴ21(+用語ver2)[Shinji](2008/09/26 21:20)
[21] これはひどいオルタネイティヴ22(+第207衛士訓練部隊)[Shinji](2008/10/02 22:28)
[22] これはひどいオルタネイティヴ23[Shinji](2008/10/09 19:42)
[23] これはひどいオルタネイティヴ24[Shinji](2008/10/23 01:55)
[24] これはひどいオルタネイティヴ25[Shinji](2008/10/31 02:49)
[25] これはひどいオルタネイティヴ26[Shinji](2008/11/22 04:34)
[26] これはひどいオルタネイティヴ27[Shinji](2008/11/25 18:05)
[27] これはひどいオルタネイティヴ28[Shinji](2008/12/14 03:54)
[28] これはひどいオルタネイティヴ29[Shinji](2009/01/11 03:35)
[29] これはひどいオルタネイティヴ30(前編)[Shinji](2009/01/17 04:11)
[30] これはひどいオルタネイティヴ30(中編)[Shinji](2009/01/21 01:11)
[31] これはひどいオルタネイティヴ30(後編)[Shinji](2009/01/28 12:16)
[32] これはひどいオルタネイティヴ31 2009/02/08 00:31[Shinji](2009/05/17 17:57)
[33] これはひどいオルタネイティヴ32[Shinji](2009/02/19 03:33)
[34] これはひどいオルタネイティヴ33[Shinji](2009/04/10 04:03)
[35] これはひどいオルタネイティヴ34[Shinji](2009/03/26 08:07)
[36] これはひどいオルタネイティヴ35[Shinji](2009/03/30 03:38)
[37] これはひどいオルタネイティヴ36(前編)[Shinji](2009/04/08 22:44)
[38] これはひどいオルタネイティヴ36(後編) 2009/04/14 04:28[Shinji](2009/05/17 17:53)
[39] これはひどいオルタネイティヴ37 2009/04/24 06:26[Shinji](2009/05/25 00:10)
[40] これはひどいオルタネイティヴ38[Shinji](2009/05/10 00:10)
[41] これはひどいオルタネイティヴ39(前編)[Shinji](2009/05/12 20:01)
[42] これはひどいオルタネイティヴ39(中編)[Shinji](2009/05/14 23:55)
[43] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)①[Shinji](2009/05/17 05:05)
[44] これはひどいオルタネイティヴ39(後編)②[Shinji](2009/05/25 02:35)
[45] これはひどいオルタネイティヴ40①[Shinji](2009/06/01 01:54)
[46] これはひどいオルタネイティヴ40②[Shinji](2009/06/05 02:47)
[47] これはひどいオルタネイティヴ40③[Shinji](2009/06/11 02:49)
[48] これはひどいオルタネイティヴ40④[Shinji](2009/06/14 06:03)
[49] これはひどいオルタネイティヴ40⑤[Shinji](2009/07/02 03:10)
[50] これはひどいオルタネイティヴ41(前編)[Shinji](2009/07/13 01:30)
[51] これはひどいオルタネイティヴ41(中編)[Shinji](2009/07/28 19:03)
[52] これはひどいオルタネイティヴ41(後編)[Shinji](2009/08/16 04:00)
[53] これはひどいオルタネイティヴ42[Shinji](2009/08/27 00:58)
[54] これはひどいオルタネイティヴ43(前編)[Shinji](2009/09/10 23:51)
[55] これはひどいオルタネイティヴ43(中編)[Shinji](2009/09/20 09:43)
[56] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)①[Shinji](2009/10/07 07:49)
[57] これはひどいオルタネイティヴ43(後編)②[Shinji](2009/10/10 22:26)
[58] これはひどいオルタネイティヴ44(前編)[Shinji](2009/11/11 20:38)
[59] これはひどいオルタネイティヴ44(後編)[Shinji](2009/11/17 03:24)
[60] これはひどいオルタネイティヴ45[Shinji](2009/12/04 11:35)
[61] これはひどいオルタネイティヴ46(前編)[Shinji](2009/12/07 06:52)
[62] これはひどいオルタネイティヴ46(後編)[Shinji](2009/12/20 00:54)
[63] これはひどいオルタネイティヴ47(前編)[Shinji](2010/01/26 07:13)
[64] これはひどいオルタネイティヴ47(後編)[Shinji](2010/01/29 14:19)
[65] これはひどいオルタネイティヴ48(前編) 2010/02/20 03:44[Shinji](2010/02/23 04:16)
[66] これはひどいオルタネイティヴ48(後編)[Shinji](2010/03/04 12:24)
[67] これはひどいオルタネイティヴ48.5[Shinji](2010/03/06 20:21)
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[69] これはひどいオルタネイティヴ49 2010/03/14 07:03[Shinji](2010/03/15 12:47)
[70] これはひどいオルタネイティヴ50 2010/04/08 07:58[Shinji](2010/04/10 03:15)
[71] これはひどいオルタネイティヴ51(前編)[Shinji](2010/04/18 14:51)
[72] これはひどいオルタネイティヴ51(中編)[Shinji](2010/05/25 05:31)
[73] これはひどいオルタネイティヴ51(後編)[Shinji](2010/06/26 00:51)
[74] これはひどいオルタネイティヴ52[Shinji](2010/07/27 04:27)
[75] これはひどいオルタネイティヴ53[Shinji](2010/10/06 05:34)
[76] これはひどいオルタネイティヴ54[Shinji](2011/03/29 08:19)
[77] これはひどいオルタネイティヴ55[Shinji](2011/04/02 07:48)
[78] これはひどいオルタネイティヴ56[Shinji](2011/05/16 11:26)
[79] これはひどいオルタネイティヴ57[Shinji](2012/08/02 01:56)
[80] これはひどいオルタネイティヴ58[Shinji](2012/09/01 14:35)
[81] これはひどいオルタネイティヴ59 2012/10/29 15:03[Shinji](2012/11/03 14:33)
[82] これはひどいオルタネイティヴ60 2012/11/02 17:30[Shinji](2012/11/03 14:34)
[83] これはひどいオルタネイティヴ61[Shinji](2012/11/07 21:35)
[84] これはひどいオルタネイティヴ62[Shinji](2013/02/17 10:44)
[85] これはひどいオルタネイティヴ番外編[Shinji](2009/04/14 02:45)
[86] これはひどいオルタネイティヴ番外編②[Shinji](2009/10/15 18:11)
[87] これはひどいオルタネイティヴ番外編③[Shinji](2010/11/04 17:45)
[88] これはひどいオルタネイティヴ(登場人物+用語)[Shinji](2010/10/10 03:07)
[89] これはひどいオルタネイティヴⅡ(原案)[Shinji](2022/03/24 21:32)
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[3960] これはひどいオルタネイティヴ16
Name: Shinji◆9fccc648 ID:37b9b89a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/09/11 14:52
これはひどいオルタネイティヴ16




2001年11月12日 午前


う~む……昨日は早めに寝てしまった。 疲れが溜まっていたんだろう。

戦った時間は10分以下なんだけど流石は実戦、俺の精神力を根こそぎ持って行ったようだ。

でも、それダケで済んだとも言える。 未だに覚悟が無い俺が戦えたのも白銀大佐のお陰。

10月22日の時点でビビら無ぇってのは把握してたけど、もしもの事が無くてホント助かった。


「お早う御座います、少佐」

「どもッス、軍曹」

「御食事ですか?」

「正解。 行きましょ~か?」

「は、はい」


……何とか、少佐様を装うのも慣れて来た。 ギスギスした空気は相変わらず好きになれないけどね。

今はギクシャクと背筋を伸ばしながら歩いて、擦れ違う人間達と形だけの敬礼をする中、
まりもちゃんと通路で出会い、自然な流れで並んでPXへと向かった。

そして ラーメンを注文すると、まりもちゃんは蕎麦を注文し、適当な席へと歩いてゆく。

途中で周囲を見渡してみると……207A分隊とB分隊が別の場所で朝食を摂っている。

更に観察すればヴァルキリーズ8名の姿も見える。 全員生還だな……聞いた通りで良かった。

しかし唯一 目が合ったのが速瀬ダケってのは、運が良いのか悪いのか……恐らく後者だろうね。


「あの……御一緒して宜しいですか?」

「どうぞどうぞ~、イリーナ中尉」

「……(白銀さん、何時の間に……)」


二人で並んで席に座ると、時間差でやって来たイリーナちゃん。 注文していたのは うどん。

彼女の希望に対し断る理由は無いので、俺の正面に座って貰い3人での朝食が始まった。

……良いねェ~、友人同士で飯を食うってのは! 全員 麺類なのが地味にシュールな気もするが。


「あぁ~軍曹……大きな声では言えませんケドね。 実は俺 昨日、出撃したんですよ」

「あっ……そうなんですか?」

「あれェ? 思ったより驚いて無いッスね」

「!? そ、それは――――」

「中尉、何か言ってましたっけ?」

「いえ……私は何も……(3日前の事、見られてたのかしら……?)」

「まぁ 良いか。 ……んで、その際の任務は"不知火S型"のテストと、
 "ヴァルキリーズ"のフォローだったんですけど――――」

「白銀少佐ッ!!」

「うわっ、びっくりした」

「う、ヴァルキリーズの娘達は無事だったんですかッ!?」

「神宮司軍曹、落ち着いてください」

「!? す、すいません……少佐・中尉」


どっちかと言うと機密っぽいんだけど、まりもちゃんには不知火S型の実機が配備されている。

だから言っても構わないだろうし、何となく話題を振るつもりだったんだが……

唐突にヴァルキリーズの安否を気にし出した まりもちゃん。 立ち上がった勢いで乳が揺れた。

それはそうと、何故……そうかッ! A-01の娘達は皆 彼女の教え子なんだったね。

さっきの観察でヴァルキリーズの姿は確認できてたけど、まりもちゃんは気付いて無かったのか。


「……で、話を戻しますけど。 ヴァルキリーズは全員無事でしたよ」

「そうですか……良かった」

「速瀬がポジション的にも有ってちょっとヤバかったですけど……良い感じでした。 ねぇ中尉?」

「はい。 小型種を含む500体のBETAを相手に速瀬機が小破。
 強襲前衛の2機が僅かに戦車級に齧られた程度で済んでいましたから」

「し、少佐は大丈夫だったんですかッ?」

「俺は地上でBETAを相手にするのが怖くて常に宙に浮いてましたからね、無傷でしたよ」

「レーザーを避けるリスクの方が高い気がしたのですけど……」

「何はともあれ良かったです。 あの娘達が無事だったのは、きっと少佐の御陰なのでしょう」

「はははっ、買い被り過ぎですって」


……俺のお陰……か。 自惚れる気は無いけど、強ち間違っちゃいないのかもね。

もし関わらなければ、強襲前衛の一条と神村が戦車級に食われちまって、
打撃支援の葛城は、要撃級あたりに病院送りにされてたりして……

速瀬がピンチだったのは妙だったけど、アイツの実力なら気合で生還したのかもしれないな。


「……では少佐・中尉。 私はこれで失礼します」

「今日もB分隊を頼みますね、軍曹」

「はい、お任せ下さい」

「それじゃ~俺も行く事にします、ピアティ――――」

「……ッ……」

「――――じゃなかった、イリーナ中尉」

「はいっ」


こんな感じで、朝食を終えた俺達は各々の職務に移るべく散る。

しっかし……イカンイカン。 少しでも気を抜くとイリーナちゃんを苗字で呼んでしまう。

今 凄い悲しい顔をされた様な気がしたから、マジで注意しておかないとね。

俺は何故か頭を下げてくださるイリーナちゃんに手を振りながら、PXを後にした。




……




…………




これから まりもちゃんに対してダケでなく、色々な人間に教えてゆく立場になるハズ。

正史だと白銀は中盤以降になってから伊隅にBETAの基礎を叩き込まれていたけど、
俺が教える側の方が断然、部隊の総合力の底上げに繋がる……のかな?

例えば……俺が後衛に"光線級が居ない時ぐらいは跳躍して狙撃しろ"って教えるだけでも、
前衛に掛かる負担が、かなり減るような気がするんだよね……

何にせよ教える側となるなら、第一に出来る限りの知識が必要なんだろうなぁ。

そう思って自室に戻ると、俺は適当に借りた何冊かの教本や資料を読んでいたんだけど……


「日本語でおk」


結局2時間で挫折……簡単そうな本ですら、専門用語ばかりで辞書が必要じゃないか……

大まかに書いて有る事は分かるんだけど、理解しながら読んでゆくとペースが激減する。

こりゃダメだな、イチから把握してゆくには一年や二年も掛かってしまいそうだ。

そう考えてベットの上に体を投げて背伸びをすると、俺は瞬時に起き上がって部屋を出て行った。




……




…………




「あっ、白銀少佐」

「お邪魔しに来ました、軍曹」


……人に教える事を考えるよりも、やっぱり衛士として強くなって戦死を極力避けよう。

俺はそう開き直ってシミュレータールームへとやってくると、ついでにB分隊の様子を見る事にした。

すると予想通り まりもちゃんが厳しく指導しており、彼女は俺に気付くと近寄ってくる。

その際 俺はB分隊の訓練の内容が気になり、既にモニターを眺めていたので、
まりもちゃんは空気を読んで下さり、一分ほど間を開けてから俺に問う。


「……どうですか? 皆の様子は」

「う~ん……」

「少佐?」

「まだ2日ですし、何とも言えませんね……今のところは、軍曹に任せます」

「そうですか」

「あえて言うなら、光線級が存在しない場面での跳ぶ事の重要性を珠瀬と鎧衣 辺りには特に。
 それとテスト中のサブ射撃のオートシステムを、成るべく多用させるようにしてください」

「わかりました」

「じゃあ、俺もこれから……」

「――――小隊集合ッ!!」

「ぅえっ!?」


B分隊は今日でまだシミュレーター訓練の3日目。

まだ戦術機と言う名の"ゆりかご"に慣れる段階だろうし、今でも走ったり跳ねたりしている。

だから俺がアドバイスするのは先の話か……そう思って立ち去ろうとすると、何故でしょう。

唐突に まりもちゃんが叫ぶと、何時の間に出て来たのか、B分隊が俺の前に集まる。


「特殊任務より生還された、白銀少佐に敬礼!!」

『――――っ』

「や、やぁ……頑張ってるようだね?」

『――――はっ!』


そして大声で敬礼! な、なんですか? この空気。 立ち去り辛いんですけど。

マジで畏まらなくて良いのに……でも、それだと他の連中が やっかむのが目に見えるしなぁ~。

即ち慣れるしかないってか。 俺は頭痛を感じながらも、表情を緩めて言う。


「大丈夫だ、皆 楽にしてくれ」

『――――っ』

「あァ~……今日で3日目になるんだろうが、悪く無い機動だ。 その調子で頑張ってくれ」

『…………』

「白銀少佐。 何か気になる事が有れば何でも言ってやって下さい」

「え~……」

『…………』

「(すみません白銀さん……何せこの娘達は貴方の言葉を最も必要としているのですから……)」


うぅ……"今のところは軍曹に任せる"って言ったのに! まりもちゃんのオッパイ星人ッ!

榊達は何かこっちをずっと見てるし……エロスーツを直視するのがキツ過ぎるぜ。

だが、少佐として何か言うべきなのだろう。 俺は直ぐ様 考えてしまった事を言う。


「わ、悪いが今はアドバイスできない……昨日の今日だろうしな」

『――――っ』


見るからに残念そうな5人。 勘弁してくれ……本当の事なんだYO。

だからフォローを入れる事にしていた。 前途の様に咄嗟に考えた事だが――――


「だけど……少し経ったら ちゃんとした指導するつもりだ。
 いずれ一人一人、俺と一緒に"個別指導"とか良いかもしれないな」

『――――ッ!?』


オーマイゴッド!! つい言っちゃった☆ 今の言葉で榊達の体が強張ってしまったッ!

くっ……咄嗟に考えた事とは言え、流石に個別指導は不味かったか……

解ってるよ、嫌なんだよね? でも、そんな在り来たりなリアクションをされると悲しいぜ。

!? まりもちゃんも俺を見て驚いた顔をしている……ひ、引かないでくれ~っ!


「いや……今のは冗談だ。 気にしないで流し――――」

「是非御願いします!! 白銀少佐ッ!」

「わ……私からも御願い致しますッ、少佐!」

「うわっ、びっくりした」

「教えて……私にも」

「わ、私も色々と教えて欲しいです~!」

「あぁ~ッ、ボクもボクも!」

「こッ、こら貴様等ァ!! 相手を弁えんかッ!」

『――――っ!?』


……何でか知らんが、イキナリ榊と御剣に凄い剣幕で迫られた。

それに彩峰と珠瀬も続き、鎧衣までもが空気を読んで俺に近寄ってくる。

や、止めて下さいッ! 特にエロスーツ仕様の御剣と彩峰は半径2メートル以内に近寄らないで!!

それはそうと、さっきは滅茶苦茶 嫌そうだったのに何故……そうかッ!

恐らく"嫌"と言う気持ちよりも、衛士として精進したい気持ちが勝ったんだろう、素晴らしい志だ。

流石は白銀大佐だね。 俺が命を助けられてるんだし、頼りたくなるのも当然か。

ふはははっ、しかし良い機会を作れそうだな……あくまで個別指導だ、他意は無いんだぜ?

そんな事を一瞬のウチに考えていると、まりもちゃんの檄で再び整列するB分隊。

毎度毎度まりもちゃんも大変だね~。 でも、仕事みたいだから頑張って下さい。


「まぁ……俺が教えれる様になるのは皆が"それなり"に成ってからだけど、
 まだまだ始まったばかりだろうし、焦らずに頑張ってくれ」

『――――はっ!』

「でも"個別指導"ってゆ~のは言い過ぎたかもしれないね。
 強制はしないけど俺で良かったら喜んで教えるから、その時は宜しく頼むよ」

『――――はっ!』

「俺からは以上です、軍曹」

「有難う御座います。 では……これを」

「んっ……何ですか、それ?」

「副司令から預かった、昨日の新潟での少佐の戦闘記録です。
 丁度少佐も居られますし、訓練兵達に実戦での動きを見て貰おうと思いまして――――」

「え"ぇあっ!?」

「い、良いのですか!? 軍曹ッ」

「有り難き幸せに御座います」

「見たい」

「し、少佐の実戦? わくわくします~」

「そう言えば何で国連軍の少佐が、帝国軍に紛れて戦ってたんでしょうね~?」


まずは鎧衣、空気読め。 さて置いて、俺は様子を見に来た事を更に後悔してしまった。

個別指導が出来る~と内心喜んでいた矢先、昨日の戦いをB分隊に晒すのかよ!?

A-01の皆の前で言った時は、互いにテンパってたって事で自己解決してたのに!!

俺の背中に嫌な汗が流れる。 そんなうちに、まりもちゃんは端末を操作し始めていた。

するとモニターに映し出されてしまう、俺のガン●ムのエースに肖った"初"の実戦。

ちょっ……何で何時の間にか207A分隊の5人まで見に来てるんですか!? 勘弁してくれよっ!


――――S型……不知火は、白銀 武で行きます!!


――――何でこんな所に来るんだよッ!!


――――お前を死なせたくないんだ、頼むから下がってくださいッ!


――――逃げ回りゃ……死にはしない。


――――なんとおぉーーーーっ!!!!


ヤベェ……滅茶苦茶 恥ずかしい。 出撃時の時の台詞は新米 丸出しではないかッ。

速瀬に指示してた時は涙目だったし、"逃げ回りゃ"については教える側としての台詞じゃない。

ラストの回避については恥ずかし過ぎて顔から火が出そうだった。 ……死にたい。

その際 皆の様子を見てみると、痛い人を見るような視線で御剣とまりもちゃんが俺を見ていた。

けど直ぐ視線を外される。 ……と思った時、彩峰までもが眉を落として俺を見ているではないかッ。


「……っ!!」


≪――――ダッ!!≫


「あっ、白銀少佐?」


穴があったら、むしろ埋まりたい。 とうとう俺は居た溜まれず、その場を早足に歩き去ろうとした。

榊が咄嗟に声を上げてくれたが、走らないダケでも自重していたんだよね。

とりあえず着替えて、1時間ぐらいしたら戻って来よう……ゆーこさんのアホォ~ッ!!

俺は唇を噛み締めながら、モニターを眺めるエロスーツ姿のA分隊達の横を素通りした。


「(白銀さん……あの娘達を救ってくれて、本当にありがとう……)」

「(白銀少佐、貴方の言葉……決して恥じるような事では御座いませぬ。
 自分をあえて虐げながらも、立派に役目を果たされたではないですかッ)」

「(少佐は……多くの仲間を犠牲に……だから、私に仲間の大切さを……?)」


――――結局、戻ったのは2時間後。 俺はロッカーで不貞寝してました。


「なんだか、私……解っちゃった気がするなぁ~」

「あ、茜ちゃん……少佐ってきっと……」

「そうね……少佐は此処に来るまで多くの仲間を失って来たんだと思う。
 だから私達が同じ思いをしない為に、頑張るよう促していたのかもしれない」

「なんだか、目から鱗だよね~?」

「そうだね。 それに、ちょっとだけ……ちょっとダケだけど、戦ってる少佐。 格好良かったよね?」

「うん……確かに、指導を受けれてる千鶴達が羨ましいかも。」

「新型の不知火S型かぁ~、私も乗りたいな~」

「そう言えば、B分隊の吹雪も何か違ったような気がしたよぉ?」

「そうね(……私達も今度、少佐に何か指導して貰えるよう、聞いてみようかな?)」




……




…………




2001年11月12日 午後


……2時間後、俺はシミュレータールームに戻ると、何食わぬ顔で訓練を開始した。

主に単機でヴォールク・データ攻略と、地上戦の鍵であるレーザーの回避を繰り返す。

シミュレーターの設定は指導のついでに まりもちゃんに任せていたので、手間が省けていた。

そして昼飯を挟んで更に4時間が経過し、訓練兵達も去った今現在……

そろそろ俺も訓練を切り上げる前に、一つの的に対して"有る事"をしていた。

何も無いマップで不知火S型に乗り、長刀と突撃砲ダケを装備し、斬りかかると――――


≪――――ザシュッ!!≫


……右から左に薙ぎ払い。


≪――――ザシュッ!!≫


……左上から右下に振り下ろし。


≪――――ザシュッ!!≫


……左下から右上に振り上げる。


そしてエンドレス。 他に色々とパターンは組めるけど、新OSの誕生により、
この様な"コンボ"と言うモノがトリガーの連打で安易に永久的に続かせれる様になった。

ゲームでは次の格闘に繋げる為には、命中 直前に決められたフレーム内でしか、
次の格闘の入力は受け付けてくれなかったが、それはゲームのバランスを考えた為でしか無い。

つまり戦術機の運用に置いては、ポテンシャルを極限まで上げる必要が有る事から、
規制や制限など存在するワケもなく、適当に連打するダケでコンボは繋がってしまうのだ。

……かと言ってもBETAは物量。 ほぼ全てのBETAは3回も斬れば沈黙する。

だからコンボを続ける位なら、より多くのBETAを相手にする訓練をするべきなんだが……


≪ドパパパパパパッ!!≫


コンボによる3発目の振り上げが命中する直前、俺はロックオンを解き、
フットペダルを踏み込むと、同時に射撃に移行する様に先行入力をする。

直後 3発目の長刀は命中するが、ロックオンを強制的に外したので、
持ち替えた突撃砲による36ミリは明後日のほうに飛んでゆく。

しかし それを気にせず、俺は操縦桿を操作しながらフットペダルを更に踏み込み、
的の背後に回りこむと、再び宙で長刀に持ち替えて斬り掛かり3発のコンボを入力する。

そして、再び3発目が決まる前に突撃砲で射撃するように入力し、
ロックオンを外して武器を持ち替えると弾丸を外し、再び的の正面に回り込み長刀のコンボを繰り返す。

時には一回目や二回目の格闘でロックオンを外して突撃砲に持ち替え、
反対側に回り込んでコンボを続ける。 何度も何度も……何かにと取り憑かれた様に。

……ちなみに、格闘の後にロックオンを強制的に外して射撃するのは"外す"。

外した後に回り込んで3発のコンボを永久的に続けるのは"回す"と理解して貰えれば良いと思う。


「ふぅ……軍曹、終わりましたんで これで切り上げます。」

「は、はぁ……」


――――まりもちゃんが、さっきから俺の謎の練習を見て目を丸くしていた。


「ふ~っ、疲れた~」

「あの……少佐」

「何ですか?」

「先程の訓練は、一体何を考えてのモノだったのでしょうか?」

「えっ? あぁ……我流の訓練方法ですよ、余り気にしなくても良いです」

「…………」


納得いかないと言った表情をする まりもちゃん。 ですよねー☆

気持ちは判るけど、これは"俺の世界"のゲームを思い出した機動に過ぎないんだよね。

それに"こっち"で実戦を経験して判ったけど、やっぱり格闘は怖いんだぜ!!

白銀が突撃前衛だから同じ事をしようと思ってたけど……訓練ダケで十分です、マジで。

だから実戦では格闘は余りしないって事で、シミュレーターでコンボを楽しむ事にしたダケなのだ。

……でも、まりもちゃんは前途の通り納得してそうじゃ無いので、適当に誤魔化さなくては。


「しいて言えば……"乱戦"での訓練ですかね?」

「乱戦?」

「はい。 前衛は戦闘中、BETAの攻撃を食らう危険性が最も高い。
 だから、どんな状況でも咄嗟の判断で素早く格闘を中断してロックオンを別のBETAに送り、
 突撃砲に持ち替え、奇襲して来たBETAを迎撃する必要が有るんです」

「それをさせない為のニ機連携では?」

「その通りですけど、多くの衛士が"それ"が出来ずに2機諸共 戦車級の餌になっていますが?」

「うっ……」

「さっきの機動は先行入力が必須で今迄の概念では到底入力 出来なかったモノですから、
 そう考えるのは無理も無いでしょうね。 ……でも、新OSだと見た通り可能なんです。
 例えば俺が一匹のBETAを斬った直後に突撃砲に持ち替えロックを送り、
 軽い後方跳躍噴射をしながら迫って来たBETAを射殺。
 そして新たなBETAに直ぐ様 長刀にスイッチして斬りかかるのを繰り返す。
 ソレが完璧に出来ればフォローするべき者が軍曹だとしたら、どう思います?」

「よ……より多くのBETAを相手に出来ると思います」

「判ってくれましたか?」

「では……的の背後に回り込んでいたのは……」

「それは……え~っと……"外す"一連の行為で最も難しい入力だからです。
 だからアレを……"回す"のを完璧にこなせれば、色々な状況に対応出来るハズですからね」

「成る程……」

「納得しました?」

「はいッ。 やはり少佐の機動概念は素晴らしいです!」

「そ、そりゃどうも……」

「有難う御座いますッ、早速 私も試してみますねっ!?」


≪たたたたたたっ……≫


"回す"って言うのは単体の背後を取り続けて格闘で一方的に攻撃する手段だ。

けど長刀の一撃を食らえば戦術機は当然ながら、BETAだって沈黙する。

だから正直 無意味なんだけど、"外す"のは今考えればかなり有効かもしれないね。

そう考えて適当に例を出して言ってみると、まりもちゃんが興奮してしまった。

……なんか凄く理解してくれたみたいで、ロッカールームの方へ走って行ってしまった。

夕食でも誘おうと思ったのに、これから訓練ですか? 頑張りますなぁ~……


「(白銀さんの技術は全部習得して、あの娘達に教えれるようにならないと!)」


――――この時の俺は、知る由も無かった。

俺が気付かないトコロで まりもちゃんは"外す"のと"回す"のを努力の末マスターしてしまい、
それを御剣や彩峰にも教え込み、速瀬ら迄もが気合で学習してしまう事を。

ちなみに幾分か先の日程のシミュレーターで御剣と彩峰に披露され、俺は驚愕する事になるのでした。




……




…………




2001年11月12日 夕方


着替えを終えた俺は、まりもちゃんが今になってシミュレーターを始めた事を確認した。

出来れば付き合っても良かったけど、結構 疲れたので俺はPXを目指している。

そんな時、通路の脇から何処かで見たような顔が2つ現れ、近寄って来ると――――


「白銀少佐!」

「こちらでしたか」

「んっ? 君達は――――」

「宗像 美冴少尉であります」

「風間 祷子少尉です」

「あぁ、そうだった。 昨日は世話になったね」

「いえ……それは こちらの台詞ですよ」

「特殊任務で戦死者が出なかったのは……実は初めてだったんです」

「なんとぉーっ」(小声)


ユリーズが出現! 対して立ち止まる俺に2人は敬礼してくれた。 宗像は今 少尉なんですね。

しっかし"あの3人が"戦死してたら、残るのはこの2人と伊隅・速瀬・涼宮(姉)だけか……

きっと伊隅の同期・速瀬と涼宮(姉)の同期・宗像と風間の同期・一条と神村と葛城の同期は、
皆 キツい任務で戦死してるんだろうなぁ~……くわばら、くわばら。


「ですから、この場で御礼を言わせてください。 有難う御座いました」

「有難う御座いました、白銀少佐」

「はははっ、よしてくれよ」

「そうはいきません、何せ祷子は朝から礼を言おうとばかり口にしていまして……」

「……!!」

「ほほ~」

「今夜辺り妾に如何ですか? されど私も混ぜて頂けると有り難いんですが」

「み、美冴さんっ!」

「ん~」


――――宗像のトークが斬新で、つい唸っちゃったんだ☆


「……ダメだそうだ、残念だったな祷子」

「もう、私達の用件はそんな事じゃ無いんですからね?」

「礼だけじゃ無いのかい?」

「――――はっ。 これから祝勝会が有りまして」

「はい、お誘いに伺うところだったのです」

「祝勝会って……何で?」

「先程 申しました通り、戦死者が出ませんでしたので」

「何時もなら、仲間達の好物を皆で食べていましたから……」

「あぁーー……」

「気が御乗りでは無ければ無理にとは言いませんが……」

「えぇ、訓練をなされていたと聞きましたし」

「……いや、断る理由は無いよ。 参加させてくれないか?」

「そうこなくては」

「では、ご案内致します」


……確かに原作では勝利の後も葬式みたいな感じだった気がする。 柏木の好物食ったり。

多少 明るいような気もしたけど、それは全部 無理矢理 雰囲気を作っていたダケに過ぎないんだ。

そう考えると誰も死なずに任務を終えた祝勝会なんて、物凄く珍しいんじゃ無いのだろうか?

だったら便乗も悪く無いか。 俺は原作通りの性格の二人の背中を追って行った。




……




…………




……祝勝会は簡単に言うと、非常に楽しいモノだった。 腹ん中がパンパンだぜ?

宗像と風間に連れられて急に拵えられた部屋に入った直後、皆が俺を称えてくれたのだ。

A-01の8名は勿論……見た事も無い、影で俺達をを支えてくれていた人達。

主にA-01の機体の整備班長や、俺の不知火S型の整備班長は勿論、
不知火S型を完璧に組んでくれた企業のお偉いさんや、PXの京塚のオバハンetc...

それだけ500体のBETAを8機で……しかも被害無しで凌ぎ切った事は凄かったんだろう。


「はじめまして、白銀少佐」

「昨日は有難うございました~っ!」

「えぇと、私は葛城 綾乃って言って――――」


生憎 A-01と京塚のオバハン以外で知ってる人は居なかったけど、色々と話し込んだ。

そのうちの一条 優理子、突撃前衛。 長髪で眼つきは鋭いけど、優しい物腰で冷静な御嬢様タイプ。

二人目の神村 亜衣、同じく突撃前衛。 ボーイッシュとは違うけど、短髪で活発なムードメイカー。

そして葛城 綾乃、打撃支援。 勝気でトゲが有る性格をしているが、おっぱいがデカくてポニテ。


「白銀少佐……申し訳ありません」

「伊隅大尉、どうかしましたか?」

「実は あの時、速瀬を嗾けたのは私なのです」

「!?」

「恐らく速瀬が孤立する状況になったのは、アレが影響していたのだと思います。
 それなのに少佐が来てくれなければ、速瀬を救う事は出来ませんでした。
 本当に……有難う御座います。 戦死者を出さずに任務を遂行出来たのは、少佐の御陰です」

「大尉、頭を上げてくださいよ」

「――――はっ」

「速瀬がヤバく無くても、どの道キツかったのは一緒でしたよね?
 それに、俺一人でも500体のBETAは倒し切れなかったと思いますし、お互い様ですよ」

「ですが――――」

「えっと……"あの言葉"は聞いてましたよね? 実は俺って臆病なヤツなんです。
 だから精鋭であるA-01と一緒に戦ってテスト出来るってダケで心強かった。
 即ちギブ・アンド・テイクです。 以後も作戦を共にする機会もあるでしょうし、宜しく頼みます」

「と、とんでもありませんッ。 此方こそ宜しくお願いします!」

「了解~」


伊隅に対しても、こんな感じでガン●ムごっこの事を誤魔化せた。 臆病なら仕方無いよね?

速瀬を嗾けた事に関しては今更って感じだし、ちっともカチンとは来なかったさ。

んでもって何故か飯も美味くて最高だった……ンだが、今の俺のテンションは妙に低い。

本来ならスキップしながら歩いても良いハズなのに……何故なんでしょうね?

……正解は、ヴァルキリーズに厄介な"お荷物"を背負わされてしまったからなのです。


「う"ぅ~っ……気持ちワルぃ~……」

「…………」


俺は祝勝会の終盤。 酔っ払った速瀬に肩を貸しながら、長い通路を歩いていた。

白銀は未成年なので俺は酒を飲まなかったが、速瀬は涼宮(姉)の制止を無視して飲むわ飲むわ。

流石に俺と他の人間との会話に割り込むのは涼宮(姉)が止めてくれたが、何ですか この状況?

今は落ち着いているけど、さっき迄は暴れていたので、俺が運ぶしか無いっちゃ無いが……


≪――――ガチャッ≫


「あ"っるぇ~……何処よ此処ォ~?」

「速瀬の部屋だろうが……さっさと入れよ」

「あはっ、あはははははっ! わたしの部屋だァ~っ」

「そんじゃ~、俺はこれで――――」


酒に弱い事で定評の有る速瀬の部屋にようやく辿り着くと、ドアを開けて中に入る。

すると速瀬は俺の手から逃れ、お花畑を駆ける様に手を広げて何やら騒いでいる。

付き合ってられんぜ……俺は涼宮(姉)あたりと話に戻ろうかとドアのノブに手を掛けるが……


「まァちなさぁ~いっ!!」

「――――ぐぇっ!?」

「まだまだ飲むのよォーッ? 付き合いなさいよぉ~」

「こっ、こらッ……放せってッ!」


唐突に首の後ろの軍服を掴まれ、呼吸困難に陥る! ……死んだらど~すんだよ!?

だが呼吸を整える暇も無く、俺はアーム・ロックを掛けられてしまう。

痛てっ、痛ててててて!! 何だこの馬鹿力は……白銀の肉体でも解けないだとォ!?

そんなうちに速瀬は何処からかワインボトルを取り出し、歯でコルクを抜くとラッパ飲みし始める。

ゴクゴクと何口も……当然アーム・ロックを外す隙は無く、やがて口からワインボトルが離れた。


「プッはぁ~っ! ほらほら、少佐様も飲みなさ~い?」

「ふ、ふざけんなッ! 俺は未成ね――――んグッ!?」

「今夜は無礼講なんだから、遠慮すんじゃ無いわよォ~ーッ!!」

「んぐッ……ゴクッ、ごくっ……ぐっ……ゴクンッ」


ワインは好きでも嫌いでも無いが、こんな飲み方を好きなワケが無い。

……けど、無理に抵抗しても軍服が汚れるダケだ。 俺は仕方なくワインを飲み捲る。

流石に辛口の赤をこのペースで飲むのはキツいぜ……だが、今は飲むしかないよな……

もはや間接キッスなんだ~……とか言う事を考える余裕すら無く、頑張って飲む俺。


「へェ~、なかなか良い飲みっぷりじゃな~い♪」

「――――ぷはっ!? ゲホッ……けほっ」


そのまま数十秒……速瀬は満足したのか、俺の口からワインボトルを放す。

同時にアーム・ロックも外れるが、痛さと苦しさで その場で俺は息を漏らしていた。

後に思えば……この瞬間に逃げ出せていれば、どれだけ救われていたか……

一方 速瀬は満足気にワインボトルをドンッとテーブルに置くと、ベッドに勢い良く腰掛けた。

……そして、未だに咽(むせ)るのが続いている俺を、熱の篭った瞳で眺めだした。


「じ~っ……」

「く、口に出して……言うなっ……」

「…………」

「そんな目で、ゲホッ……見る、な……?」

「…………」

「は……速瀬……?」

「…………」


次第に瞳を潤ませる速瀬。 なんだよ、めっちゃ可愛いじゃないか……酔っ払いの分際で。

俺は速瀬の瞳に心を奪われていたのかもしれない。 いや、これは赤ワイン(辛口)の所為だろう……

合成だから美味くも無いし……でも何だ、この雰囲気……明らかに誘っているような……速瀬の瞳……

……ってか、白銀って酒に弱ッ……頭がクラクラしやがる……ヤベっ、何か言わないと……

そう意味も無く……考えて、俺は"適当に頭に浮かんだ単語"を……口に出して、しまった。




「やらないか?」


「――――っ!?」




……あれっ? 俺 今なんか凄いヤバい事を、言った様な気がするんですけど……

だって速瀬が目を丸くしてるし……マジで何て言ったんだろ……ちょっ!?

急に速瀬は、表情を改めて立ち上がると……両膝を着いている俺を見下ろして……


「な……何だよ?」

「上等よ~ッ、やったろうじゃない」

「は?」

「馬鹿にしないでよねェ? わたしだって男の一人や二人……」

「!? おまっ、おまおまおま……な、何して……」

「なによ~、アンタが言い出したんでしょぉ~っ?」


何と俺の目の前で、速瀬は服を脱ぎ始めた……何やってんですか? この人。

俺が何を言ったのかは知らないけど、段々と酔いが醒めていくのを感じていた。

でも体の自由はまだ効かない……いや、あえて動かそうとしていないのかもしれない。

速瀬は既に下着姿。 風呂にでも入るような勢いで、彼女は衣服を脱ぎ去ってゆく。


≪――――ぽよっ≫


「んォお……ッ!?」

「んふふふふふ~っ……」


やがてブラジャーまで外してしまい、挑発的な笑みを浮かべながら俺を見る速瀬。

今は腕を組んでいるので突起が見えないのが残念……いや、そうじゃなくてだなっ!?

どうなってんだよ、この状況ッ! 何でショーツ一丁で速瀬が近付いて来るんだよッ!?

俺は逃げ出そうと試みるが、足がフラついて立ち上がるのが精一杯だった。

そんなウチに速瀬との距離があっと言う間に無くなり……ヤツは俺に抱き付いて来た。


≪――――ふにゅっ≫


「うぉあっ!?」

「少佐ぁ~ん♪」

「ぐぉっ!?」


そして肩に両手を回してくる速瀬。 当然 ナマ乳が当たっており、俺の下半身が脈打つ。

しかもホッペをスリスリしてくるし……ヤベェ、マジで洒落にならなくなってきた。

これ現代の俺だったら絶対に襲ってるよ!? だけど、俺は白銀……流石にヤバい気がする……

それなのに、早くも俺の息子は反応しそうだ……そう絶望し、覚悟を決めた矢先――――


「!? う、う"ぇ……っ!」

「ちょっ、おま」


――――酔っ払いの速瀬は、ほぼ全裸で吐いた。 しかも、俺の軍服にダイレクトに。


「Nice Boat」


――――しばらく お待ち下さい。




……




…………




……30分後。


「はぁ……ったく」


速瀬の"もんじゃ焼き"で一気に酔いが醒めた俺は、その"後始末"をしてやっていた。

今現在はベットで寝息を立てている速瀬の口元を拭ってやると、そのまま放置し、
上着をTシャツ以外脱いだ俺は、PXから雑巾を持って来て床の掃除をする。

そして雑巾や"もんじゃ焼き"の付いたティッシュ等を廃棄し、再び速瀬の部屋に戻った。

んでもって軍服を水道水で洗い終えると……強引に絞って水気を落とし、室内を見渡す。

まぁ……片付いたな。 匂いは流石に残ってるけど、換気扇が何とかしてくれるだろう。

軍服はクリーニングしても元に戻るのかな……されど持ち帰れば現代のファンに売れるんだろうか?

さておき最後に速瀬に視線を移すと、布団を羽織って暢気にスヤスヤと寝ているではないかッ。

叩き起こして文句の一つでも言ってやりたい気分だが、酒の所為でもあるし良しとするか……

そう考えて数度目の溜息を漏らすと、俺は部屋を出て行こうとしたが――――


≪――――カチャッ≫


「待てェいっ!!」

「んな……っ!?」


≪――――ゴンッ!!!!≫


「こんな良い女を差し置いて、出て行こうとしてんじゃ無いわよォっ!!」

「痛ってぇッ……おま、何で起きて……」

「今 目が覚めたのよ~ッ、そしたらアンタが行こうとしてたのッ」

「だからって、いきなり何……しやがるッ……」


唐突に頭を鷲掴みにされると、ドアの角に顔面を叩きつけられた!!

め、滅茶苦茶 痛ぇ……これって霞ダケの災難じゃ無かったのかよ……ってか鼻血が……

対して速瀬は未だに酔っ払ってるんだろう、おっぱいが丸見えなのに胸を張っている。

だけど今の速瀬には魅力が感じられ無い……って言うか、今の一撃で頭がクラクラしてきたぞ……


「五月蝿い! つべこべ言わずに、こっちに来なさ~いっ!」


≪――――ボフッ!!≫


「がっ……!?」


速瀬は痛みで前屈みになっていた俺に抱き付き、ベットの上へと引っ張り込んだ。

ちなみに俺の顔は速瀬の おっぱいに挟まれており、柔らかい感触が心地良かった。

しかし、同時に怪力によって呼吸困難に陥り始め、俺の意識は朦朧となってくる。


「ふふ~んだ、今夜は放さないわよォ~?」

「い、嫌だ……放してくれ……頼む……から」

「ダメぇ~♪」

「マジ……かよッ……」

「ふぁあ……眠ぅ~……」

「……っ……」


ほぼ全裸の速瀬と、上半身Tシャツ姿の俺……角への一撃で、俺の血が僅かに飛んだベッド。

……ヤバい……ヤバ過ぎる。 このまま意識を失えば、大変な事になる気がする……

しかし弱っている俺と、速瀬の怪力。 そうなると、導き出される結末は一つしか無い。

俺は幸せな感触を味わいながらも……速瀬の寝息が聞こえて来ると同時に意識を失った。


「良かったのか? 涼宮。 速瀬を少佐に任せて」

「はい……大尉。 水月には今、寄り掛かる人が必要だと思いますから」

「少佐は女に"情"を移す様な方には見えんが?」

「それでも……良いんです。 水月が人の温もりを感じられれば」

「それ以前の問題で有ればどうする?」

「命の重みを誰よりも理解している少佐なら、解ってくれると思います」

「ふむ……」

「もう水月には、あんな戦い方をして貰いたくありませんから……」


――――案の定 翌日、俺は速瀬の悲鳴で目を覚ます事となる。 神様のバカ~ッ!!




●戯言●
絆ネタ炸裂。佐渡島で冥夜・彩峰・水月が外し捲りながら暴れる姿が書きたくなったのでつい。
水月のイベントに関しては、全裸ではヤバそうなのでショーツだけ残す事にしちゃったんだ☆
唯依さんに関しては、TEの時間軸を無視すれば強引な手で登場させる事は可能ですがどうしよう。


●皆が白銀をどう思っているのか●
副司令:????
ウサギ:懐いている様子
軍 曹:尊敬できる上官
オペ娘:好きなのかも
御 剣:尊敬できる上官
 榊 :信頼できる上官
彩 峰:理想の上官
珠 瀬:格好良い上官
鎧 衣:優しい上官
涼宮妹:興味ある上官
柏 木:興味ある上官
築 地:興味ある上官
伊 隅:一目置ける上官
速 瀬:ギャフンと言わす
涼宮姉:頼りになる上官
宗 像:一目置ける上官
風 間:一目置ける上官


●白銀が皆をどう思っているのか●
副司令:頼りになる天才
ウサギ:抱きしめてキスしたい
軍 曹:良いお友達
オペ娘:良いお友達
御 剣:おっぱい
 榊 :ふとまゆ
彩 峰:おっぱい
珠 瀬:お持ち帰りしたい
鎧 衣:空気読め
涼宮妹:おっぱい
柏 木:おっぱい
築 地:いっぱい
伊 隅:頼りになる同僚
速 瀬:こっちくんな
涼宮姉:結婚したい
宗 像:ユリーズ1
風 間:ユリーズ2


●追記●
同日15時頃誤字修正を行いました。


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