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No.3946の一覧
[0] 魔法保母さんシャマル(シャア丸さんの冒険)[田中白](2009/01/31 18:18)
[1] シャア丸さんの冒険 プロローグ[田中白](2008/11/30 20:41)
[2] シャア丸さんの冒険 一話[田中白](2008/11/30 20:42)
[3] シャア丸さんの冒険 二話[田中白](2008/11/30 20:43)
[4] シャア丸さんの冒険 三話[田中白](2008/11/30 20:45)
[5] シャア丸さんの冒険 四話[田中白](2008/11/30 20:47)
[6] シャア丸さんの冒険 五話[田中白](2008/09/08 11:20)
[7] シャア丸さんの冒険 短編一話[田中白](2008/11/30 20:49)
[8] シャア丸さんの冒険 短編二話[田中白](2008/11/30 20:51)
[9] シャア丸さんの冒険 短編三話[田中白](2008/09/08 11:35)
[10] シャア丸さんの冒険 短編四話[田中白](2008/10/26 11:20)
[11] シャア丸さんの冒険 短編五話[田中白](2008/10/26 11:30)
[12] シャア丸さんの冒険 外伝一話[田中白](2008/11/30 20:52)
[13] シャア丸さんの冒険 六話[田中白](2008/10/26 11:37)
[14] シャア丸さんの冒険 七話[田中白](2008/11/30 20:58)
[15] シャア丸さんの冒険 八話[田中白](2008/11/30 20:58)
[16] シャア丸さんの冒険 九話[田中白](2008/11/30 20:59)
[17] シャア丸さんの冒険 短編六話[田中白](2008/11/30 21:00)
[18] シャア丸さんの冒険 短編七話[田中白](2008/12/31 23:18)
[19] シャア丸さんの冒険 十話[田中白](2008/12/31 23:19)
[20] シャア丸さんの冒険 十一話[田中白](2008/12/31 23:20)
[21] 十二話 交差する少女たち[田中白](2009/01/31 18:16)
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[3946] シャア丸さんの冒険 短編二話
Name: 田中白◆d6b13d0c ID:d0504f35 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/11/30 20:51
――主人公、男……うん?







 あやふやな時間の感覚。ボンヤリと浮かぶ不思議な世界。

 色のない、不思議な風景が網膜に映し出されている。

 そんな何もない世界から、大きな声が聞こえた。


「どうしてこんなことをするんですか!」


 それは私の声で、私の記憶だった。

 私がまだ小学生だった頃の話。

 その頃の記憶。ついで、それが夢なんだとわかった。ゆらゆらと揺れる現実感のない世界が視界の中に広がっていく。

 そこは学校だった。灰色の校庭と校舎がある、私の通っていた小学校。


「いっつも笑顔でさぁ。んで、敬語。ナニがカッコいいと思ってやってんのさ?」
「イイコちゃんなんだよな、天金。体デカいクセにケンカしないし」


 突然、幼い少年たちの声が意識を通り過ぎる。子供の時、幾度となく繰り返された苛めの光景。暴力を良しとせず、ただただ幸せに微笑み続けていた少年の普段の一日。

 それが好きな子や気になる子の気を引きたくてやっているのだったら、見ていて微笑ましい光景だっただろう。

 けれど少年たちがやっているのは、自分たちと同じような存在として信じがたいクラスメイトの放逐だった。

 自分たちと異なった者への攻撃。幼いが故の残酷さがそこにあった。


「返して! 私の人形返してください!」
「女々しいんだよっ。喋り方気持ち悪いし」


 人形を眺めている少年の一人が、私から奪った青い色のネコ人形を弄っているうちに、何かに気付いたようで声を出した。

 所々にある仮縫いの跡。中から小さくはみ出る綿。無骨な造型。そこから見て取れることがある。


「……ん? これ、手縫いじゃん。キメェなぁ」
「料理とかもできるみたいだぜ、アイツ。この前言った冗談本気に取ったみたいだし」
「ああ。あの学校中掃除しろってヤツ? ホントにやったの!? うっわコイツ、マゾってヤツじゃないの?」
「マゾって何だ? おいしいの?」
「兄ちゃんが言ってた。苛められるのが好きな人」
「あ、それコイツじゃん。じゃあ、今日からこいつはマゾ丸だ」


 あの時の私は、悲しくて、悔しくて。私は泣きたかった。

 その人形は、私の妹へ誕生日のプレゼントとするために作った物だった。

 同部屋の私の妹に気付かれないように、夜な夜な徹夜して作ったプレゼント。それが、ちょっとした悪戯程度の理由で取られてしまった。

 全員に囃し立てられて私はただ立ちすくんでいた。反響する少年たちの囃し声。

 半透明に見える校舎。輪郭だけの少年たち。空は灰色で、その時の私の心を映し出していたに違いない。

 その中でハッキリとした色を持っているのは人形だけ。私の妹の好きな動物であるネコをイメージした人形だった。青は私の妹の名前の一文字。彼女の好きな色。

 私は走り出すと、人形を取った男の子の一人に飛び掛っていった。

 男の子が取られる前に、別に仲間に人形を投げる。宙を舞う人形。別の子供がキャッチする。

 人形を受け取った男の子を睨み付けると、私は人形の下へ走り出す。

 決して子供は狙わない。私は生き物を傷つけるのが嫌いだったから。


「返して、妹の誕生日プレゼント!」
「妹だってよ!」
「やーい、やーい」


また投げ出され、空を駆ける人形。放物線を描いて、どこまでもどこまでも伸びていく。

 私の目はその人形の軌跡をじっと見つめていた。


「あ」


あることに気付いて立ち止まった一人の子供が、落下してくる人形を受け取るのを失敗した。

 軽い小さな音をたてて落ちる人形。その先には、校長が趣味で作っていた溜池があった。これを避けるために子供は止まったのだ。

 ――ポチャン。

 当然、人形は校庭の池の中に落ちた。落下点を中心にして、水の上を波紋が広がっていく。

 静寂がその場に満ちた。

 受け取り損ねた少年は辺りをキョロキョロ見渡すと、周囲の沈黙に耐えかねてそのまま走って逃げ去っていった。

 全員が顔を見合わせる。彼らは、ただ〝遊んで〟いるだけだった。

 目の前の少年にとって大切な物が、水に落ちてしまうなんて誰も考えていなかった。

 沈んでいく人形を見て、崩れ落ちた私。その口から嗚咽が漏れた。

 少年達の一人が、ポツリと呟いた。顔は青かったが、目は真剣だった。


「お、おれは関係ないからな」


 自己保身。子供にとって当然の行動。その一言がきっかけだった。一人、また一人。その場から走って逃げていく。

 少年たちの口から漏れる自己弁護。あいつが悪い。お前のせいだ。口々に言いあって、自分が悪くないと言い訳してから逃げさる少年たち。

 最後まで残っていた一人が逃げ去った仲間たちを見送り、私を済まなさそうな顔で見るとやはり逃げ去っていった。

 その子供の背中を、私は彼が校門から走り去るまで見続けていた。

 溜息をついて、水の中に沈んだ人形を眺める。別に、乾かしてしまえばそれでいい。誕生日まではまだ時間がある。ただ、それよりも気がかりなことが私にはあった。

 ……それは、最後に逃げ去った彼のこと。彼はきっと優しい人。優しいけど、とても弱い人。

だから苛めを行っている少年たちに何も言えなかった。

 けれど、それは悪いこと。

自分だけは良い人であるというアピールをしたって、誰も貴方を良い人だとは言ってくれない。

 結局最後に逃げ出してしまった時点で、貴方は彼らと同じ穴の狢。

 むしろ自分がいい人だとアピールした分、貴方は良い人ぶってしまったという自責の念に苛まれる。

 苛められた人は、憐れまれたという悲しさに包まれてしまう。

 中途半端な優しさは、苛められた他人と苛めをした自分を苦しめる。

 だからもう、そんな優しさは捨てなさい。

 弱いままでい続けるのを良しとするのなら、優しさを捨てなさい。それはあっても苦しいだけ。

 強くなりたいのなら、人を止める勇気を持ちなさい。きっとその方が貴方の心にずっといい。

 この平和な日本で強い勇気を持つ最初の手段は、きっと他人の苛めを止めること。

 まずは、いじめを見過ごさないことから始めてください。

 人を、止められる勇気を持ってください。

 私は悲しかった。私の弱さと、いじめっ子たちの強さが。

 誰かを助けてあげよう。

誰かを苛めないでも、排斥しないでも自分の我を通せるようになろう?

 ずっと苛められているうち、私はそんな思いを抱くようになっていた。

 それは弱者の遠吠えでしかなかったのかもしれない。

 けれど、その時の私が抱いた、変えるべき何かだった。

 多分、これが始まり。

私が子供たちに幸せをあげたいと考えるようになった、原初の記憶。

他人を貶さなくても、自分の力で強く幸せになれる子供になって欲しいと願った。

 私は涙を拭うと、躊躇いなく溜池の中に入った。あの時の季節が何だったかは覚えていないが、夕闇に照らされた水の中はとても冷たかったのは知っている。

 ジャブジャブ。水を掻き分けながら進む。溜池のちょうど真ん中に立つと、水の中に沈んだ人形を掴んで持ち上げた。

 水を吸って重くなった人形。ポタポタと、滴が垂れた。人形と、目から。

 理性で納得しても、感情が納得しない時があると、私はその時知ったのかもしれない。

思い出とか楽しみとか。そんな人形を作るのにかけた時間を返して。私の思いを返して、返してよ……。

 私は水に濡れながら、小さな学校の小さな校庭の小さな溜池の中で、自らのちっぽけさを身につまされながらただ泣き続けていた。




シャア丸さんの冒険
短編2話「かえしてと叫ぶ人」




「――えして。――してくれ!」


 何時からか耳に入っていた大きな声。ハッとして私は起き上がりました。ガサリと近くにあった葉っぱが音をたててしまい、少しだけビクリとします。近くでフクロウのような鳥の鳴き声が聞こえました。

 気付くと、シャンの村から出てから幾月もの時間が経っていました。

 私が指名手配されていると知っている人や組織から身を隠す為の旅路。

 薄暗い森の中。昨日、人の少なさそうな森を選んで私は野宿していたのでした。冷たい石畳に比べれば、こんなモノどうということはありません。

 そこで聞こえた人の話し声。どうやら、離れた所にある、少し開けた場所に人がいるみたいです。

 ……それにしても、私の夢を見るのは久しぶりです。

 どうして保父になろうとしたのか。

確かにそんな日々を経て、私は誰かを育てる職業に就きたいと考えたんでした。

 争いは、嫌いです。長い年月の中で嫌いになりました。

 ……今は、近くの争いの様子を見に行きましょうか。

 森の影に身を隠しながら、そっと声の聞こえる場所に近づきます。

 そこにいたのは、三人の男。何かを叫び続ける一人の男と迷惑そうな顔でいる二人の男。

 二人組みの方は、なんだか個性の無い白装束……ローブですかね? まるで何処かの組織の下っ端みたいです。

 一人の方は、サングラスをかけて青い帽子を被っています。他に、あまり記憶に残りそうにない真っ黒なシャツと白いズボンを着込んでいます。

どちらの組にしろ、怪しさは抜群です。特に一人の方は、目立たない格好すぎです。


「返してくれ! 娘を返してくれ!!」
「何度も言っているだろ。娘は人質だ。大人しく言う事を聞け」
「返してくれ! 返してくれ!!」


 返してくれと叫び続ける男の人。……夢を見た理由はそれですか。

この人たちが何時から話しているかは知りませんが、あの人の叫び声で夢を見たようですね。

 なんだか嫌な光景です。さっきの夢の中でもあんなことありましたから。

 返してくれ、人質、言うことを聞け。この単語を聞く限り、悪いのは二人組みの方ですね。


「まぁいい。どうせ、お前は言うことを聞くしかない。子供を返すのはやることをやった後だ」
「伝えた『情報』を早く調べておけよ」
「ま、待て!」


 去っていく二人組み。うな垂れる男の人。寸劇のように綺麗な会話を、見届けて、私は決心しました。

 ……娘を人質とか、見逃せる話ではないです。

 指名手配されている私が動くのは危険ですが、子供を助ける為なら一肌脱ぎましょう。

 私は出来るだけ音をたてるようにしながら、うな垂れる男の人の前に出て行きました。防音を解いた赤鎧は、森の中でも甲高い金属音を出します。


「……!」


 大きめにたてた音に気が付いたらしく、ハッとして私のいる方向を見る男の人。サングラスをかけているので、彼の瞳は見えません。

 私の姿を確認すると、バツが悪そうにしきりに頭をかいています。

 サングラスを透かして見える目は、弱者の目でした。

 ますます苛められていた私を思い出します。


「誘拐、ですか?」
「……聞いていたのか?」


 驚いた顔の男の人。

話が終わってすぐに出てきたのだから、聞いていたに決まっています。

 それとも、最初から聞いていたら出るに出れないような話をしていたのでしょうか?


「警察機関とか、管理局には訴えないのでしょうか?」
「……どうやら、最初から聞いていたようじゃあなさそうだな」
「……?」
「公立機関を利用できるような立場の人間じゃなくてね。……自分のことは自分でやる。何処から聞いていたのかは知らんが、お節介焼きのお嬢さんには関係のない話だ」


 冷たく言い放たれて、さすがにムッとします。人の力を借りるのは、別に恥ずかしいことじゃないというのに。

 でも、まぁ、お嬢さんって言葉はちょっとだけ嬉しかったりしますが……。

 やっぱり、男の記憶があると色々大変なんですよ。色々と勝手が違くなりますから。


「……ただのお節介焼きではないですよ、私」
「……嬢ちゃん。なにやら腕に憶えがあるようだが、争いごとにことあるごとに関わってたら、命が幾つあっても足りねえぜ。俺のことは放っておいて行っちまいな」


 迷惑そうにしっしと手を振る男。さらにムッときました。

 何がなんでも話を聞こうと思って手を上げます。指の先で煌く二つの指輪。翠の宝石と蒼の宝石。

 一瞬の発光。指輪から分離した鋭利な宝石が宙に浮かび上がりました。


「……変な格好してると思ったら、魔導師さんかい」
「普通、見れば分かると思います。こんな赤鎧を着ている女はみんな魔導師です」
「……普通、女魔導師のバリアジャケットって言やぁ、色っぽい薄着じゃね?」
「魔導師に夢を見すぎです。みんな暖かい厚手の服を着ますよ」
「そうか。……男って、悲しいよな」
「……そうですね」


 しみじみと同意した私に疑惑の目を向けながら、男はクラールヴィントを見詰めています。

 浮かんでいる宝石が何なのか分かっていないようです。特に警戒する様子もなし。魔導師を前にその隙は致命的です。

 何を話していたのかを教えてくれないなら、力付くでも聞き出します。

 ……でわ、必殺。

 プカプカと宙に浮かんでいた宝石が、神速で動きだしました。


「……それがなんだ……って痛っ!?」


 嘲りに近い顔で浮かんでいるクラールヴィントを見ている男の人に、少しばかり痛い目を見てもらいます。

 サクッと音をたてて男の人の腕に突き刺さりました。……あ、ちょっと強すぎましたかね。

 今度は威力を弱めて……。

 両手に顕現させたクラールヴィントの宝石四つで交互に男の人の肌を刺します。

 ちくちくちくちくちくちくちくちくちくちく。

 先の尖った鋭利な宝石は、そのまま刺すだけでも結構痛い。

 これに魔力でも通して使えば、人の腕くらいなら楽に貫通できそうです。

 魔力を通していないので、微妙な威力ですが、まあビックリはしているみたいです。


「痛い、痛いから! 止めい! あ、ごめ、止めてください。このちくちくデバイスを止めてください」
「止めて欲しかったら、いったい何があったのか教えてくださいね~」
「OK。分かった譲歩しよう。さあ、だから止めるんだフロイライン。痛っ」


 最後の一刺しをして、攻撃を止めてあげます。

 これで素直に答えてくれたらいいんですが。でないと止めた意味がないです。

 決してフロイラインって言われたのが嬉しいから止めたのではないので、そこらへんヨロシクお願いします。


「普通はデバイスって直接攻撃に使うもんじゃないよな……。俺、おかしくないよな?」
「えいっ」
「では、何があったかお教えします」


 愚痴る男、振り上げられるクラールヴィント、速攻で謝る男。

 素直な人はいい人です。たとえ、それが身を守るための行動であったとしても。

 私を胡乱気な目で見て後、観念したように何があったのかをポツポツと語り始めます。


「……俺の名はノザーノ。偽名だ。それと、内容を聞いても引くなよ」
「……はぁ」


 いきなり名乗りは偽名ですか。私も同じく偽名を名乗るつもりなので構いませんけど。

サングラスの奥で細められた目。その目は品定めでもするように、私に食いついています。

私が本当に信用置ける人物なのか見定めているようです。

とうとう、口が開かれました。私は信じられたのか、信じられていないのか。


「実は闇ブローカーなんだ、俺」


 どうやら信じられたみたいですけど……。

彼の名乗ったあんまりな職業に、私の時間が停止しました。

 思考が停止している私を見て、あっちゃぁと首を掻くノザーノさん。

 そうは見えないですけど、この人は闇のブローカー。つまり、違法商品の取り扱い人ですか。


「俺が扱う商品は、『情報』。奴らは俺にヤバい情報を仕入れる事を求めているんだ」
「……どこかの組織との取引なんて、闇ブローカーにとっては基本的なことでは?」
「いや、強要されているんだ。もしもあの情報を得たら、俺は消されるだろう……」
「じゃあ断ればいいじゃないですか?」
「それも駄目だ! 俺の命が亡くなってしまう」
「……どっちにしろ死ぬんですか?」


 情報を扱っているブローカーなのに、どうやら私の顔は知らないようです。……裏にいる人っぽい人がご存じないとは。……湖の騎士も地に落ちたものです。

もしかすると、望遠映像の解析はまだ誰にも出来ていないのかもしれませんね。だとしたら、運が良いと喜ぶべきか。知名度が低すぎると嘆くべきか。

 現在聞いた話を纏めますと、この人は情報を扱う闇ブローカー『ノザーノ』。

 とある組織に強要されて無茶な情報を集めさせられている。

 今回取ってくるように頼まれた情報は、仕入れれば死んでしまうほどヤバいヤマ。

 けれど仕入れなくても死んでしまう、と。


「……ああ、死ぬんだ。人質が」


 情けなく呟くノザーノさん。どうしてそんな最大の弱点を闇ブローカーが持っているのでしょうか。

 後腐れなく、大切な物もない。それが闇に生きる物の定めでは?

 弱点を抱え込むような人が、何故闇に生きているのです。


「こんな仕事はな、どこかに救いがなきゃやってられねぇんだよ。娘は……俺の命なんだ」
「しかも娘なんですか」


 なんともまぁ……。だから娘とか言っていたんですか。話が繋がりました。

顔に傷とかがあるようなコワモテではないですが。普通にサラリーマンやってそうな顔で、どうして闇ブローカーなんて始めたんでしょう。

 さらに娘持ち。子供のことを考えて足を洗おうとか考えなかったんでしょうか?


「闇にはな、一度浸かってしまうとそう容易にゃ抜け出せねぇんだ。生きる為には金がいる。だから、俺は情報屋を続けているんだ」


 ……なんだか喋り方まで変わってきているような。

仕事について話す時はべらんめぇ。娘と話す時は優しいお父さん。

そうやって自分を別けているのかな。

 人を売って日々の糧を得る情報屋なんて、自分を別けなくてはやっていけないのかもしれません。


「娘が人質に取られた俺は、何度も何度も危ない橋を渡らされた。だが、娘が奴らの手にある以上逃げる訳にはいかん。利用されるだけの俺は、かれこれ四ヶ月近くタダ働きなんだ」


 苦々しい口調の中に微妙に生活的な物が混じっていましたが、これは見逃せる話ではありません。

 子供を助けて、ついでにこの人も助けてあげましょう。

 AAランクの魔導師の力を見せてあげます。……さらに指名手配が強くなりそうですが、人助けの方が重要です。


「組織の名前は、いったい?」
「何を考えているのかは想像つくが、止めておけ。死んじまうぞ」
「子供を助けたいんです」
「子供を、か。……ふむ。嬢ちゃんなら、もしかすると……。おし、ついて来な! 会わせてぇ連中がいる!」


 子供の一言に何か感じ入る物があったのか、全面的に信頼した目で私を手招きしてきます。……それにしても、喋り方がもはや別人です。

 顔に傷すらない、どちらかと言えば優しげな顔をしている人があんな喋り方をするのは不思議な気分ですが、何故だか似合っています。

 この人もまた、数々の修羅場を駆け抜けた一人の戦士だということでしょう。

 気合を入れながら歩いていくノザーノさんの後を、私は必死に追いかけました。

 やっぱり、走るのは苦手です。ヴォルケンリッターの一員として恥ずかしいですが、運動は前衛三人に任せます。




 森から抜けて、闇夜の平原を歩き続けます。所々にある、伸びきった草に足をとられたりしましたが、何とか後に続きます。

 途中で、謎の組織に仕入れろと言われた情報が、管理局の弱みであることを聞きました。なるほど、それは確かに危険です。調べたら消されそうです。

 道なき道から街道やら森やらを歩くこと約一時間。

 月に照らされる平原の中に、ポツンと小さな一軒のログハウスがありました。

 あまりの場違いさにまたしても思考が停止しましたが、ノザーノさんは真っ直ぐ家の中に入っていきました。

 慌てて私も後を追います。表札には『急転直下ログハウス』と書いてあります。訳が分かりません。

 ログハウスの中は活気に溢れていました。たくさんの人が、中でジュースとかを飲んでいます。酒場とかに行くとこんな光景が広がっていたりするのかもしれません。

 ……もしかして、何かの罠だったのでしょうか?

 いえいえ。そんな様子はありませんでしたし、子供を助けたいという彼の目は真剣でした。嘘つきにあんな目はできません。

 私が困惑する中、ノザーノさんが手をあげました。

 部屋が一斉に静かになりました。

 エヘンと咳をすると、ノザーノさんが叫びました。


「よく集まってくれた! ブローカー諸君!!」


 ……ここにいる人たち、全員ブローカーなんですか。

 この人たちはどうしてこんな集まりを?

何となく見回したログハウスの中にポツンと置いてある看板には、『ようこそ闇ブローカーの溜まり場〝急転直下〟へ!』と書いてあります。……闇ブローカーに溜まり場があってどうするんです。だから狙われるんですよ。


「人質を取られ、度々の無茶な命令に脅える諸君! とうとう我々は、あの『黒い爆弾』へ反抗作戦を決起する事を決めた!!」


 その演説は何が起こっているのかを知らない人にはよく分かりません。

なんですか、黒い爆弾って。爆弾は黒いに決まってます。ボンバーマンの受け入りですが。

 それに人質を取られたブローカーたちって。みんな弱み持ちなんですか。

 反抗作戦っていうのもちょっと分かりかねます……。

 私はただただ混乱することしかできないです。

 それにしても、ノザーノさんは一体幾つ喋り方を持っているのでしょうか


「今日はその話し合いの為、皆に集まってもらった。我々の情報網を駆使し、かの『黒い爆弾』のアジトを突き止め、人質を解放しよう!!」


 皆が何故か一斉にブーイングを始めました。

 ようするに、労働基準法に違反している組織へのストライキみたいなモノですよね?

 どうしてブーイングするんでしょうか。


「『ブラックボンバー』に逆らうだと!? そんなことをしてたまるか! それで私の大事なペギーが傷ついたらどうする!!」
「正式名を言うな! だが、こいつの言う事には賛成だ。おれの大事なムッチが壊れたりしたら目も当たられない。今は、奴らの言う事を聞こう」


 ぞろぞろと出て行く人が数人。

 それにしても『ブラックボンバー』ですか。嫌な名前です。

 ブラックボンバー。私が指名手配される切欠となったテロ組織です。なぜか私がその組織に関係していると勘違いされてしまっているのです。

 時空管理局へ日々致命的なダメージを与えている非公式組織だと聞いています。

 あまり管理局への心象が良くない私は、どちらかといえばテロリスト寄りです。

 ですが、普通に生きているブローカーさん達を食い物にするような組織だったとは知りませんでした。

 闇ブローカーは確かに違法ですが、必要な悪でもあるんです。

 ……でも、どうしてこの人たちは黒い爆弾と呼んでいるのでしょう。

噂だと、ブラックボンバーは……。


「畜生!!」


 ノザーノさんが机を叩く音を聞いてハッとしました。

 ……ちょっとだけ驚きました。警戒が薄かったら、尻餅をついていたかもしれません。


「どうしてみんな分かってくれない! もしかすると、愛しのマイドーター(今年で六歳)がイヤンな目にあっているかも知れないのに!!」


 いや、そんなことをする人いませんよ、普通。

 六歳でイヤンな目にあうのってかなりヤバくないですか。

 それからわざわざかっこで括らないでください。


「こうなったら、俺一人だけでも……!」


 そこで、何故かチラリと私を見るノザーノさん。

 周囲の人々は、ノザーノさんを無視しています。


「こうなったら、俺一人だけでも行ってやる!」


 また、チラリと私を見ます。

 周囲の人々が、呆れ顔で帰り仕度をしています。


「止めるな、みんな! 俺は愛しのドーター(今月で六歳七ヶ月)を助けたいんだ!!」


 別に誰も止めていません。三度私の顔をチラリと見ました。

 ……ノザーノさんが何を言いたいのかが分かってきました。他の人が呆れている訳も。

 寸劇にノるのはちょっと嫌ですが、どの道助けにいくつもりでしたし丁度良いです。


「待ってくださいノザーノさん! 貴方が言っては危険です。私が行きます!」


 瞳を潤ませ、頬を上気させながら言ってみました。

 私の言葉に、身を仰け反らせるノザーノさん。

 ……続けるんですか、寸劇。

うわぁ、嫌だぁ。そんな気配を出すと、ノザーノさんは咳払い。


「だが、本当に危険だぞ。それに、アジトの場所は分かっていない」
「急に真面目になられても困るんですが……。大丈夫です。それに、場所ならすぐに分かります。クラールヴィント!」
『Ein Suchanfang』(探索を開始します)


 待つことほんの数分。クラールヴィントがアジトの場所を発見しました。

 ……指名手配の恨みとかのおかげかな?

 その旨を報告します。


「見つかりました」
「速っ!!」


 ノザーノさんの驚愕の声。

 クラールヴィントは、補助特化のアームドデバイスですからこれくらいの探索ならお手の物なんですけど……。

 準備の前に、カチャカチャと手甲を弄ります。

 爪の様子は大体OK。爪の先に嵌ったクラールヴィントをチェック。

 いい感じに固定されています。爪が割れたりすると、手甲の下に避難する構造になっています。

 こういうチェック、忘れるとマズいんですよね。何時の日かポカして凄い失敗をしてしまうような気がして恐いです。


「場所が分かったからって……。危険だぞ!!」
「……俺の代わりに行って欲しいと、さっきまで言っていたじゃないですか」
「口には出してない!!」
「顔に出していました」


 何故だかにらみ合う私とノザーノさん。

 別に恩を売るつもりとかはないです。きっと、指名手配の原因を作ったブラックボンバーを私が潰したいだけなんだと思います。

 こういうところはキッチリ復讐する必要があるんです。

 ……実は建前ですけど。子供を助けるのは、私の義務です。

 保母たるもの、子供の為には一肌脱ぐのが普通です。

 自分が出来る範囲までなら子供の為に闘う。それが保母の心得です。

 でもAAランクとはいえ、補助要員の魔導師が一つの組織を潰すのって自分が出来る範囲なのかしら?

 ちょっと気になりましたが、ここはノリでカバーです。

 人質は、助けます。人質を傷つける結果に終わってしまったら悲しいですけど、何もしないで人質が傷ついたらもっと悲しいです。


「……行ってきます。私が帰ってこなかったら、貴方たちが頑張ってください」


 平原のど真ん中の家の中にいる人たちに目を向けます。

 皆、一癖二癖ありそうな人々ばかり。

 ここに残っている人たちは、みな戦う意思を持っている人。

 私はこの人たちの手伝いをするだけです。

 不肖ですが、湖の騎士シャマル、先陣を切らせていただきます。

 決意を決めた私に、色眼鏡の筋肉さんが近づいてきました。

 全身から、只者ではないオーラが満ち溢れています。


「頑張ってくれよ。そして、俺様の可愛い子猫ちゃん(生後三ヶ月の雑種)を助けてくれよ」


 この人の人質はネコですか。既に人じゃありません。

 キャラに似合わなさすぎて、逆にマッチしてしまっているのはある意味凄いです。


「おれのムッチを頼む。大事な大事な豚さん蚊取り線香なんだ」


 ……何故に蚊取り線香。渋いとかそんな問題じゃありません。

 わざわざ別世界の焼き物に名前つけて何やってるんですか。


「私の豚さん貯金箱……」


 とっくに割られてます。何故にまた豚さん。


「金色の超レア品なんです」


 聞いてません。


「わたしの馬刺しも……」


 とっくに腐ってます。


「じゃあ、朕のヘルメット代わりのカツラ……」


何で変なモノばかり人質に取られているんですか……。

 色々言いたげな人々を置いて、私はクラールヴィントの指し示すポイントに向かいました。




 途中で疲れてしまったので、歩くのは止めて飛んで進みます。辿り着いた場所。そこは渓谷でした。幾つものクレパスの開いた岩場。

 なにか用がない限り絶対に人は来そうにない死の大地。

 ここら辺は度重なる開発の結果、自然が壊れて砂漠化してしまった場所だそうです。

 クレパスの下を覗いてみると、なにやら入り口があります。

 飛び降りて様子を窺います。目に見えるのは、結構広めの入り口。中から光が漏れているのを確認しました。

 ……ビンゴって奴でしょうか。

 ちょっと危険そうですが、そっと中を見てみました。

 そこには、ピカピカと輝く一つの看板。


『テロ組織LOVE☆BOMBER』


 無駄に豪奢に装飾された電灯の数々。

 ……ここはブラックボンバーじゃないです。

 『ラブボンバー』です。

 ふと気がつくと、看板の下に立て札があるのを見つけました。


『13時~14時まで、ラブボンバー』


 ……時間を確認。13時55分。

 ……ちょっと離れて様子を見ます。

 14時丁度。人が現れて、看板の前で何かをしています。

 ふぅと汗を拭ったその人は、すぐに奥に引っ込みました。

 入り口にまた近づきます。


『テロ組織BLACK BOMBER』


 意味不明です。

 ネオンとかが取り外されて、普通の看板になっています。

 どうして秘密組織の前に看板を置くんですか。

 そしてブラックとラブに何の差があるんですか。それで何を表現しているんです。

 愛と黒ってなんですか。黒愛。黒人を愛せよ。

 さらに意味不明です。自分の思考ながら辟易します。

 ボンバーに何か意味が……?

 なんだか訳が分からなくなったので、突入する事にします。

 とりあえず、制圧ならば補助キャラの本領発揮です(多分)。ふふふ。片っ端から眠らせてあげます。

 そっと看板の横を通り過ぎました。抜き足差し足忍び足。こそこそと足を進め……。

 同時に鳴り響くブザー。とてもうるさい。

 ……トラップです。ああ、そういえば私って、潜入任務なんてやったことないんでしたっけ。

 変装なんてサングラスをかけてコートを着ればそれで良いと思っているくらいですよ?

 えーと、えーと。


「賊だ! 出会え出会え!」


 奥から人の声が聞こえます。……貴方たちが国賊です。つまり貴方が賊です。

 とちらかといえば、私は正義の味方です。この場合の正義は人質の解放ですのであしからず。


『los Schlief』(強制催眠)


 飛び出してきた真っ白ローブに、強制催眠魔法を纏わせた左手でチョップします。

 ふらりと揺れた後、しばし粘ってから白ローブは倒れこみました。

 強制睡眠の効き目は十時間くらい。しかし、高ランクの魔導師には通用しない。

 ……なんだかカートリッジが欲しくなってきました。

 それがないなら、せめて武器が欲しいです。できれば鈍器。どこかで調達できるといいんですが……。

 さっきのブザーで私の侵入はバレてしまいました。速攻で駆け抜けて人質を連れて逃げ出しましょう。

 管理局を貶めてくれるこのテロ組織自体は別に嫌いじゃないんです。むしろ好きなほうです。

 さて、と。目の前に倒れている白ローブを目に入れます。

 先に進む前にちょっとだけ、気になる事があるんです。それを確かめてからでも遅くありません。むしろ、それが気になって潜入に失敗してしまうかもしれません。

 ――ローブだから、裾がスカートみたいになっているんですよね。

 …………チラ。


「―――――っ!」


 そ、それでは先を急ぎましょう。

 私は何も見ませんでした。

 私は何も見ませんでした。

 うふふふふ。

 ――ドゴ。

 ぐはっ。

 何かを踏んだような気がしましたが気のせいでしょう。

 ま、全くぅ。私もお茶目さんです。このおっちょこちょい!?

 私はわき目も振らずにアジトの中に駆け込みました。




「……魔導師が一人だけで侵入?」
「はい、バク様。結構な高ランク魔導師が、ここに」

 漆黒のローブを纏った男の前に、一人のリバディが現れた。リバディが本名だが、別に今は関係ない。

 リバディが手を振り、空中に映像を作り出す。遠距離投影の魔法だ。

 基地の所々に設置された魔力カメラの映像が映し出される。

 そこには、倒れ伏す組織の戦闘員たちが映っていた。


「な、バカなっ!? 侵入から今までたいして経っていないというのに、すでに皆殺しだとぉ!?」
「落ち着け。映像を良く見ろ」


 バクの言葉に落ち着くと、息を吸って吐いて、リバディはそれに気がついた。

 皆、胸が上下に揺れている。眠っているのだ。

 一瞬、睡眠魔法なんぞにかかりおって、たるんどる。別に老人ではないのだが、そんな言葉を口から出そうとした。

 そう思ったリバディだったが、それを口に出す前にあることに気付いて戦慄した。

 あれだけ大量の人数を同時に眠らせるほどの実力者。なのに、何故拘束魔法ではなく睡眠魔法を選んだのかが気になった。だが、すぐに考えるのを止めた。

 眠らされているのだから、眠らされているのだ。相手の性格を考えるのは後でいい。今は少しでも情報を得るのが先決だった。

 数秒後、設置された魔力カメラに一人の女性が映った。

 趣味の悪い紅い鎧を着込んだ女だった。腰についた短いスカートをはためかせながら先を急いでいる。中々の飛行速度だった。

 残念な事にズボンも穿いているため中身は見えない。


「……魔法使いが鎧とは珍しい」
「馬鹿者」


 リバディの言葉はまたしても打ち落とされた。


「あれは、ミッド式の魔法ではない」
「……? では、何があると……?」


 しっ。バクが口に人差し指を当てた。

 その動作にハッとして、リバディは映像を見た。

 そこには、組織の構成員たちに囲まれている女性の姿が映っていた。


『えーい。面倒くさいです! 特に活動していない時間帯なのに、どれだけいるんですか!? 暇人は眠りなさい!』
『Nebel schlafen』(大量睡眠魔法)


 みんなもう寝なさーい。デバイスの放った魔法。それは、ミッドチルダの呪文ではなかった。

 ネーベルシェラーフェン。デバイスの発言とともに魔法が発動した。

 女性の周囲に浮かび上がった緑色の魔法陣。そこから大量の煙が噴き出した。

 一瞬で部屋を覆った煙は、また一瞬で消えた。

 煙が晴れた部屋の中には、眠りこけた構成員の姿があった。


「……三角形の魔法陣!? そんな物、聞いたことが……」
「三角形の魔法陣、特異な騎士甲冑。そして指に嵌ったアームドデバイス。……奴は、ベルカ式の術者だろうな」


 本来ミッドチルダの魔法陣は、四角形二つを組みあわせた八角形を丸い魔法陣が覆った形をしている。

 ところが、あの女の周囲にあらわれたのは三角形の魔法陣。その頂点に丸い魔法陣が浮かび上がるという、リバディの見たことない形だった。

 それを、バクはベルカ式だと断言した。

 ――やはり、ボスは凄い。

 リバディは眠らされている仲間たちの映像を見ながら、自らのボスの凄さに感激していた。

 しかし、彼女はどこに向かっているのだろうか。その女はあっちにフラフラ、こっちにフラフラ。目的意識を見出せない。

 急に立ち止まり、辺りを見回す。急に手に持ったデバイスを振り上げた後、目的意識を持ったように何処かに向かい始めた。

 それから数分もしないうち……。


「たぁー!」


 ドゴン。大きな音をたてて部屋の扉が蹴破られた。

 扉のその先、侵入者である女性が悠然とそこに立っていた。

 肩で息をしている女性を見て、バクは面白そうに顔をゆがめた。


「ようこそ、お嬢さん。よくぞここがボスの部屋だと見抜いた」


 リバディは女性を見た。かなりの上玉だった。しかし、趣味の悪い赤鎧が全てを台なしにしている。

 いや、結構格好いいかもしれない。

 格好よさを感じてしまうという未知の感覚に、リバディは戸惑った。


「……ボス部屋なんですか、ここ? 重要な部屋を探していたんですけど……。」
「おうともさ」
「さようなら」
「待てぃ!?」


 普通テロ組織に入り込んだのならば、ボスとの一騎打ちだろ!?

 常識の通用しない女性に、リバディは理不尽を感じるしかなかった。

 けれどテロ組織に入り込むだけで、どうしてボスなんかと戦わなくてはいけないのか?というのが女性の言い分だった。理不尽なのではないか、と。

 確かに理不尽ではあるかもしれない。だが、ボス部屋に入ったら逃げずに戦闘これ基本。

 二人の魔導師の会話は平行線だった。


「漫才してるんじゃない」


 そこに、バクが割り込んだ。その姿を見て、女性は息を呑んだ。

 彼の頭はボンバーだったのだ。つまり、アフロだった。さらに黒人。アフロ黒人。

 やはり。女性の口が動いた。やはり、アフロだからボンバーなんですね。

 爆発とは、アフロのことを指していたんだよ!

 ブローカーの皆さんはブラック・ボンバーの組織名を爆弾だと勘違いしていたようだが、実際はここのリーダーであるところのバク・ボニォがアフロだからボンバーなのだとこの女性――いい加減名前出したい――は確信していたのだ。

 そして、それが正しかった。正面に飾ってあった『ラブ・ボンバー』だって、ボンバーをアフロに変えれば納得がいく。

 つまり、みんなでリーダーのアフロを信奉していたのだ。

 どうして13時~14時なのかは不明だが。アフロタイム?


「――その時間は大事なアフロタイムなのさ」
「当たってしまいました!?」


 女性が絶叫した。まるで当たって欲しくなかったみたいだった。

 きっと当たって欲しくなかったのだろう。自分の想像の範疇にあって欲しくない。それは切実な願いだった。


「冗談さ」
「ほっ」
「冗談さ」
「えぇ!?」
「今度こそ冗談さ」
「ふぅ」
「それもじょうだ……」
「いい加減にして下さい! このままだと帰りますよ、私」
「いいぜ」
「わーい」
「待てぃっ!!」


 白熱した上司と侵入者のボケあいに、とうとうリバディは突っこんだ。

 突っこまずにはいられなかった。


「ツッコミの幅が狭いぞ、馬鹿野郎。それにこういうのはな、本当に出入り口から出られるまでが勝負なんだよ」
「それじゃ逃げられるだけですよ!?」


 なんとも緊迫感のない会話だった。

 ケンカしている今のうちとばかりに、こそこそと女性は扉から出ようとしている。

 バタン。女性の前の扉が閉まった。

 目の前にあるのは鋼鉄製の扉だった。ドンドン。扉を叩く女性。


「あ~け~て~」
「ダ~メ~よ~」


 女性の声に律儀に返すバク・ボニォ。

 野太い声の色黒アフロが言っても気味が悪いだけだったが。

 女性は必死な形相でバクを睨む。


「逃がしてくれるって言ってませんでしたっけ!?」
「逃がすわけないだろ」


 さっきまでボケあっていたとは思えない変わり身の早さだった。

 羽織っていたローブを脱いで投げ捨てるバク。鍛え抜かれた黒い肉体。腰には手袋のような道具が提げられている。

 バク・ボニォは、左手にその手袋を嵌め始めた。堅そうな材質で出来た不思議な手袋だった。

 まさか、ポポロくん専用の爪ではあるまい。


「こいつが俺のデバイスだ。ブーストデバイスと言ってな。まだまだ開拓されていない珍しい道具なんだ。俺が陸戦AAランクの魔導師なのも、こいつのおかげさ」


 AAランクと聞いて女性の顔色が変わった。

 リバディは自重するように薄く笑った。まさか、たかがテロ組織のリーダーがAAランク保持者だとは思っていなかったに違いない。

 女性も、実際そう思っていた。冗談だと言って欲しかった。


「冗談、ですよね?」
「本当だ」


 バクが身をかがめた。口から朗々とした詠唱が響き渡る。

 彼の使っているブーストデバイスというアイテムは、誰かに効果をかけることに特化している。

 ブーストデバイス最大の特徴はエンチャント。つまるところ能力付与である。

 時に対象の攻撃力や防御力や素早さのパラメータを上昇させ、時に結界貫通の能力を持たせたりする。

 本来は援護役である後衛。つまりフルバック向きの能力なのだが、バクは自らの身体能力の高さとブーストを組み合わせることで、超近接魔導師へと己が姿を変えた。


「美しきわが身に、力を与えるパワフリャの光を」


 それにしても独特な詠唱だった。というかナルシストが入っている。

 というか、パワフリャとは何だ。

 振られる拳の力強いこと力強いこと。これで速さとかも加わるとシャレにならない。

 緊迫感があるのかないのか分からない掛け合いに、何故か始まってしまった戦闘。いい加減女性も疲れてきた。


「……『湖の騎士シャマル』。その相棒が『クラールヴィント』。行きます!」


 シャマルも覚悟を決めた。とりあえず、眠らせる。

 肉弾戦の体つきだし、魔力は高いといえど抵抗力は低いだろう。

 その程度の辺りをつけてゼロ距離睡眠魔法を当てようとして、バクが振り抜いた拳に驚いて身を縮めた。頭を掠った拳の速度に驚愕し、ついで絶句する。つまり……。

 ――攻撃が、当たりません!?

 強制睡眠魔法は手を当てなければ効果がなく、全体睡眠魔法は発動に時間がかかりすぎる上に強制催眠と比べて効果が薄い。

 ……眠らせるのは無理っぽいですね。シャマルは簡単な無力化を諦めた。

 どうしてボスなんかと戦っているのかと考えて、シャマルはちょっぴり遠い目をした。

 だって、人質の方々が見つからなかったんだもん。探したら、何故かこの部屋についちゃったんだもん。心の中で涙を流すシャマル。


「我が肉体にマッスルの祝福を。完璧ぼでぃに走り抜ける勇気を!」


 またしても唱えられたヘンテコ詠唱。

 ハッキリ言って不気味だった。

 にしても、目を輝かせながら呪文を唱えるバクの姿は、小さな子が見るとトラウマになると思う。

 それから、わざわざぼでぃを平仮名で言わんでも。

 色々とツッコミたかったが、話し掛けると負ける気がするシャマルでした。

 目に見えて動きが俊敏になったバク・ボニォ。躍動する筋肉をこれ見よがしに見せ付けるのは止めて欲しい。ゆっさゆっさとアフロが揺れた。


「……行って、クラールヴィント!」
『Pendel stoßen』(振り子突撃)


 魔力を纏わせたペンジュラムを発射する。

 つい先程ノザーノに使った技の実戦版だ。

 近距離でしか使えない技だが、当たれば人間の体でも軽く貫くハズ……。


「効くかァ!」


 対応してバクの正面に発生した半透明フィールドが、シャマルの攻撃を防いだ。

 半透明フィールドにぶつかって大きく火花を散らすクラールヴィント。

 シャマルはクラールヴィントを放ったポーズのままでバクの正面に立つ。


「これが、私の切り札です!!」


 シャマルの左手の爪付きガントレットが音の速さで突き出された。

 半透明フィールドに爪がぶち当たる。

 ポキーン。折れた。

 右手。ポキーン。

 シャマルが影を落として座り込んだ。

 先ほどまでシャマルの頭があった位置を、バクの蹴りが通り過ぎた。


「……何だこの戦いは」


 戦闘をじっと見ていたリバディは、なんだか虚しくなった。

 お互い素晴らしい戦闘力と判断力を持っているのは、魔力の練りや体捌きを見れば分かる。

 だが、ちょっと変な戦いだ。二人とも少しふざけていないだろうか? ボスも遊ぶように動き回ってるし、あの女も爪折れて落ち込んでるし……。

 しかしリバディの思考とは裏腹に、二人とも一応本気だった。

 バクがなかなか攻撃に移らないのは隙が見つからないからだし、シャマルが影を落として座り込んだのも攻撃を回避するためだった。

 戦いの中で二人とも一応真剣だった。

 ただ、それでも悲しいことに変わりはない結果があった。シャマルはガントレットの爪を見る。

 ボロボロだ。綺麗にぽきんと折れた。簡単に砕け散った。どうしてフィールドに当たった程度で折れるのでしょうか?

 かなり情けなかったが、それでも口を動かし始める。

 魔力を練り始める。魔力素を吸収し始める。

 クラールヴィントで拘束魔法をばら撒いた。


『Fangen kühlschrank』(捕縛冷蔵庫)


 凍結系の呪文を発生させ……。

 バクに回避された。


 シャマルはフープバインドやリングバインドを幾つか投げつけながら、空を飛んでかく乱を続ける。

 空を跳ねるように飛び続けながら、バインドを回避しつつ近づいてくるバクをにらみつける。

 何度も輝き続けるクラールヴィント。

 その度に放たれるバインド。凄まじい勢いでシャマルの魔力が減っていく。

 放たれている魔法の連射速度に一瞬ヤケになったかと思ったバクだが、シャマルの目は輝きを失っていなかった。

 シャマルの口はまだ動き続けていた。

 彼女の目にある強い輝きを見て薄っすらと笑ったバク。

 さらに強化の詠唱を上乗せ。圧倒的な速度で駆け出す。


「むぅん! まっするぱんちぃ!!」
『Panzers child』


 バクの打撃とシャマルの盾がぶつかり合う。

 シャマルはなんとか三角形のシールドで拳を受け流そうとするが……。

 衝撃に耐え切れず、キンと澄んだ音をたててラウンドシールドは砕け散った。

 魔力の残り香をだけを残して消え去るパンツァーシールド。

 拳は威力を残したまま、ガントレットを直撃。ピシリと模様の入ったガントレット全体にヒビが入った。

 勢いをそのままに弾き飛ばされるシャマル。五メートルほど吹き飛ばされて、壁にぶつかって停止した。

 ――にしても、まっするぱんちは無いでしょう。

 たかが拳の威力に負けて砕けた自分の盾とか、バクの拳技の命名方法とか。色んな意味で冷や汗を垂らすシャマル。


「良くぞ防いだ! 次だ、ムキムキック!!」


 バクが今度振り上げたのは、足。

 バクの脹脛の筋肉が脈動した。滴る汗が部屋の中の灯りを反射してキラキラ輝いた。

 揺れるアフロ、輝く汗、淫靡に響く呼吸音、そして筋肉の塊。

 最悪だった。だが、どうしてもシャマルはその最悪には勝てない。

 何故なら、彼女は援護要員だからだ。直接的な戦闘は最も苦手としている。

 むしろ、何故彼女が率先して武力を用いてまで人を助けようとするのか不思議なほどだ。

 シャマルの持つ技や魔力諸々のステータスでは、バクに勝つ事は出来ない。

 それでも、シャマルの瞳に揺らぎはない。ただ勝利を一点に見詰めて闘い続けている。

 口は、まだ動き続けていた。


「来たれ戒めの大縄よ、掴め大罪の反逆者を、目前の罪人を捕らえたまえ!」
『Strang verhaften!』(捕縛の縄)


 シャマルの詠唱が響き渡り、空間に緑色の縄が出現する。

 やはり、またバインドだった。

 バインドによくある鎖の形ではなく、編まれた縄に近い形状だった。

 バクを目指して一直線で進むロープバインド。

 しかし、バクの拳の一振りで粉砕された。

 魔力の構成が、甘かった。一撃で壊されるバインドなど、あってはならない筈だった。

 ――魔力切れか?

 バクの脳裏に面白くない単語が浮かぶ。敵はかなりの使い手だ。そんな楽しくない結果はありえない。全力で否定した。

 最後の理由としてあげられるものがある。彼女の目に、全く動揺がない。

 何をするか分からない敵は、心が踊る。が、厄介なことこの上ない。楽しい戦いは別の奴と行うことにして、今は確実に仕留める。

 バクは覚悟を決めると、最終詠唱に移った。バクの身体から大量の魔力が立ち昇る。


「パワフリャ! パワフリャ! パワフリャ! パワフリャ! パワフリャ! パワフリャ!」


 バクの詠唱が狭いボス部屋に響いた。幾度も反響し、パワフリャは小さな世界の中に広がっていった。

 彼の筋肉が震え始める。それどころか心も震え始める。

 バクは目の前の騎士の冥福を祈る。今こそ、スーパーパワフリャタイムの始まりだった。


「むぅん! パワフルラリアット!」


 確実に叫ぶべきではない趣味の悪い技名であるが、彼の精神の安定と技の安定を図るためには絶対に必要な行動だった。

 技の名を叫ぶ事で、次に放つ技の確固としたイメージを固める。

 精神には、スーパーなロボットのヒーローみたいな感じでプラスの何かがあるらしい。

 バクのラリアットがシャマルの首に直撃。

 またしても吹き飛ばされるシャマル。追撃のために飛び上がるバク。

 空中で一回転。フライングチョップに移った。

 シャマルの体に半透明防御幕が形成。チョップとの間で拮抗する。

 またしてもバリアは砕け散った。

 組まれたチョップがブレストプレートに直撃。ヒビどころの騒ぎではなく、砕け散った。

 容赦のない攻撃でグッタリとしているシャマル

 バクは詰まらなさ気に鼻を鳴らした。

 前半こそ正面切って戦えていたが、所詮はこんなものか。

 補助魔導師が一人だけでここに来るのもおかしな話だった。

 戦いが終わって、バクには一つ気になる事があった。

 そもそも、この女はどうして我が組織に潜りこんで来たのか、だ。

 尋問でもして聞き出すとしよう。

 バクはそう思うと、シャマルに近づいた。


『……Hindern wind』(妨げの風)


 女の持つデバイスから聞こえた管制人格の声。一瞬バクはドキッとして身構えた。

 だが、何も起こらなかった。特に周囲に変化はない。

 自らのブーストデバイスを見る。

 インテリジェントデバイスのようにAIを積んでいるだったのなら何か教えてくれたのかもしれないが、残念なことに速度を重視する彼のデバイスにはそんな小利口そうな機能はついていない。

 助言のためなどに喋らない代わりに、魔法発動の処理が早い。

 それに、何も起こらなかったのなら魔力が尽きているだけに違いない。

 さっきのバインドは、かなり練りが甘かった。つまらないが、それが事実。

 バクはそう結論付けて、グッタリしたままのシャマルに手を触れようと……。

 突然、体の動きが止まった。バクの顔色が変わった。

 周辺の空気が鉄のように固くなり、バクの動きを封じていた。

 先程シャマルが使った魔法は、何かが触れたときに発動し、周辺の空気を固定し束縛する設置型のバインドだったのだ。周囲にはバインドの気配がありすぎて、気付くことが出来なかった。

 動けないバクの気配を感じて、ボロボロな姿になっていたシャマルの目が開いた。

 戦闘中ずっと唱え続けていた魔法の、最後のワードを口に出す。


「……旅の、鏡」


 目の前に展開された不思議な空間の中に、シャマルは迷うことなく自らの手を突き入れた。

 同時に、バクの胸からシャマルの腕が突き出した。

 シャマルの掌の上に、バクの物と思われる黒色のリンカーコアが浮かんでいる。


「……な、何を……?」
「貴方の、リンカーコアです。攻撃を止めないと、握り潰します」


 バクが息を呑んだ。

 戦闘の成り行きを見守っていたリバディは、その技に形相を変えた。

 リンカーコアの、強制破壊! それはないだろ、常識的に考えて!!


「卑怯だ! お前に誇りは無いのか!!」
「子供の為なら誇りなんてドブに捨てます!!」


 シャマルがキッパリと胸を張って返してきた言葉に鼻白んでしまうリバディ。

 バクは自らの胸から突き出るリンカーコアを見詰めた。

 目の前でキッと自分を睨んでいる女性の姿を、バクは目に焼き付けた。


「子供と言ったな?」
「はい。子供と言いました」
「まさか、ブローカー達の人質のことか?」
「はい」


 バクの言葉に力強く頷いたシャマル。
 少し、バクの顔が歪んだ。


「……ブローカーも、正義のために使われて嬉しかろうに。何故、人質の解放を行う?」
「子供に罪はないですから。子供の為なら、私は命を捨てられます。だから、私も子供のためになら命をかけます」


 力強く言い放たれた言葉。

 その言葉に、バクとリバディは一種の凄みを感じた。


「子供の為にか? 俺は世界のために管理局に敵対しているんだ。あの正義面をしている組織に、苦渋を舐めさせたい。そのために俺は動いている」
「貴方の過去に何があったのかなんて知りませんし、知りたくありません。私も管理局が嫌いです。それでも、人質を使うのは後味が悪すぎます」


 今の状況だと人質を助けるよりもこの人を説得した方が早いと判断したシャマルは、標的をバクに切り替えた。

 険しい目をしたシャマルの前で、フッとバクが微笑んだ。


「子供の為に、か」
「……?」
「そんな綺麗な目で、よくそうも吠えられる」
「吠えるって……」


 何だか嫌な響きにシャマルは顔をしかめた。

 だが、シャマルの手の中で揺れているリンカーコアを眺めるバクの顔はただ静かだった。


「俺にも、そう言ってくれる人がいればな……」
「過去は聞きたくありません。同情しちゃいますから」
「冷たい嬢ちゃんだな。大人になれば即ポイする訳か」
「大人になったと言うなら、自分の面倒くらい自分で見てください」
「違いない」


 薄く笑いあうバクとシャマル。

 リンカーコアが潰れるか否か。

 そんな危険な状況なのに笑い合っている二人を見て、リバディは気が気ではなかった。

 自分のリーダーが、リーダーの器ではなくなる。そんなの見ていられなかった。


「よし、人質は帰そう」
「ありがとうございます」


 何だか分からない交渉の末、人質の返却が約束された。

 リバディは絶句してしまった。

 人質を帰す。そんなことをすれば……。


「ちなみにな。目立ちまくっているこの組織が潰れないのは、人質を取って言うことを聞かせている闇ブローカーたちのおかげだったりする」
「はうぅ!?」
「人質を返還すると、間違いなくこの組織は潰れてしまうわけだ」
「……」


 迷ってしまうシャマル。別にこの組織は嫌いではないからだ。

 顔色を変えまくるシャマルを見て、バクは大笑いした。

 戦いの中でかいていた汗は、殆んど消えていた。


「でもなぁ。確かに、人質はいかんよな、人質は。人質を取ってテロをする組織なんて、潰れた方がいい。それを、忘れていた」


 シャマルは、バクの過去に何があったのかは知らない。知りたくもない。

 だけど、人には何か過去がある。過去があるから人はいる。

 そんな言葉を思い出した。


「人質を取って誰かを働かせるなんて、嫌だった。大切な信念だったのになぁ。どうして、それを忘れていたんだろう……」


 バクの表情が変わった。昔を思い出すような、優しい表情。

 シャマルは旅の鏡から手を引き抜いた。

 話が纏まった今、〝人質〟は必要ありません。

 目の前の人が人質を否定したのに、私だけが人質を持つのはルール違反。

 手が引き抜かれたのを見て、リバディはシャマルに駆け出した。

 確かに彼女は強かった。だが、あれだけボロボロならば自分でも倒せる……。

 二人の間に入ろうとして、リバディの動きが止まった。

 バクがとても寂しそうな顔をしていたからだ。何もかもをなくしてしまった子供のような、寂しそうな顔を。

 道しるべがなくてうろたえている子供のようなバクを見て、シャマルは口を開いた。

 ――大人になれば即ポイする訳か。
 ――大人になったと言うなら、自分の面倒くらい自分で見てください。


「では、そんな貴方を拾ってあげます」


 シャマルが、バクに向かってそっと手を差し出していた。

 何かを受け入れるように、大きく、大きく手を開いていた。

 それを見て、バクの目が見開かれた。だが、何かに納得したように目を閉じた。

 ――ボサ。

バクの大きな体が、小さなシャマルの手の中に収まった。

 彼は、母親に甘える少年のような顔でシャマルに抱きしめられた。

 目の前で行われている何かに、リバディの思考は停止した。

 ふと、目の前の女性はブレストプレートが破壊されている事を思い出した。

 つまり、リーダーは、目の前の、美人な女性の、生胸の中に、顔を、埋めて……。

 リバディの中に、なんだか色々な感情が駆け巡った。

 それは嫉妬だったり、困惑だったり、恐怖だったりした。

 どんな思考の通じ合いがあったのかは知らないが、そんなことをされても見ている分には分からない。

 リバディは、二人の様子をじっと見詰めていた。

 思うことはただ一つ。


 ――自分は、もう動いて良いんだろうか……?

 ……もうしばらく待とう。




 何があったのかは知りませんし聞きません。

 そっと、胸の中にいるバクさんを抱きしめます。

 何か恨みがあったのでしょう。何か悲しみがあったのでしょう。

 辛い何か。逃げ出したい何か。

 負の感情に追われて、彼は強くなってテロ組織を興したんだと思います。

 伝えたい何かが、彼の中で燻っていたんだと思います。

 誰にも言えないテロの理由。

 ブラックボンバー、ラブボンバー。

 どちらもアフロですけど、アフロにはきっとその髪型のように拡がる未来への想いが篭められていたんでしょう。

 ブラックには、自らが今立っている場所、テロ組織のリーダー。

 ラブには、誰かに伝えたい自らの心の奥底、餓えている愛や絆。

 ある意味爆弾でも正しかったんだと思います。

 溢れ出す、爆発しそうな感情を示す単語『ボンバー』。

 13時~14時は、自らの愛が表に出る時間だったのでしょう。昔、家族との語らいの時間だったとか。

 この人なりに、組織の名前は色々考えたんでしょう。最後はインスピレーションで決まったんだと思います。

 爆発させたいと、未来を拡げたいと。そう願っていたんでしょう。

 この人は今、そんな昔の気持ちを思い出しているんだと思います。

 昔の気持ちを思い出している人は、みんな子供です。

 だから、胸を貸すくらいなら簡単です。

 泣いてくれても構いません。ただ、ゆっくりとお話を聞いてあげます。

 頷くだけでも、聞いてくれるだけでも、ただ泣かせてくれるだけでも、きっと救われるんだと思います。

 彼は、人質を取って働かせるのは嫌だった。と言いました。きっと、そんな人生を送っていたのでしょう。

 今、昔のことを思い出して休んでいるんだと思います。

 バクさんが顔をあげました。

 そっと、頭を解放してあげます。


「嬢ちゃん」
「何ですか?」
「負けたことは、何度ある?」


 目を瞑りました。思い出すのは昔の話。

 脳裏を過ぎるのは、頑張って駆け抜けてきた日々。


「何度も」
「そして、今日もまた一つか」
「そう、ですね。また負けてしまいました」


 結果は私の勝ちで終わりましたけど、戦いの過程では私の負けでした。

 バクさんが立ち上がりました。

 もう元気みたいです。

 ……流石に、旅の鏡を利用したリンカーコア破壊コンボは卑怯ですよね。

 絶対に負けるはずの勝負も引っくり返せます。


「人質は解放して、組織を解散する」
「「えぇ!!」」


 私と名前も知らぬ魔導師くんが同時に叫びます。

 つい、顔を見合わせてしまいました。あ、私から露骨に目を逸らしてます。

 ブラックボンバー……解散するんですか?

 管理局にケンカを売ってくれる良い組織だったのに……。


「ブローカーを脅さなくては存続できない組織なんて脆弱すぎる。今度こそ、最高のテロ組織……いや、管理局の敵対組織を作る。それまで、解散だ」


 バクさんが胸を張って宣言します。

 確かに、組織をそのままにしていると捕まるみたいなことを言っていましたけど……。

 構成員のみなさんへの説明は大丈夫なんでしょうか? なんだか怒り狂いそうな人もいそうですけど。


「なぁに、初心を思い出させてくれた嬢ちゃんへの礼だよ。……ところで、恋人はいるのか? いないなら俺が立候補するぜ」
「遠慮しときます。可愛いお嫁さんが欲しいので」
「「――っ!!」」


 体に付いたままになっているブレストプレートの欠片を払います。そのため、視線は下に向いています。

 顔を上げると、そこにいるのは私を指さして絶句しているお二人とも。

 私、何か致命的に変なことでも言ってしまったんでしょうか? どうしてそんな表情をされるのか、サッパリわかりません。

 暫らくして気を取り直したように、バクさんは私を何処かに案内してくれました。




「わぁ。なんだか変なのが一杯です」


 バクさんに案内されたのは、人質の保管庫でした。ごちゃごちゃとした雑多な荷物がそこの大半を覆っています。

 牢屋ではなくて保管庫なあたり、ブローカーさんたちの不気味さが滲み出ています。

 ここにあるのは、人質ではなくて担保です。檻の中に居る人間なんて数人しかいません。


 一度檻を叩くと、憔悴した顔をしている人たちが私に近寄ってきました。


「助けに来ました」


 檻の中にいる一人の女の子。あの子がノザーノさんの娘さん、アイシスちゃんでしょうか。

 やっぱり疲れきった顔をしています。……子供ですし、先に連れて帰りましょう。

 出来るだけ安心できるように笑顔を見せます。私と目を合わせると、口を開くアイシスちゃん。


「お姉さん、誰?」
「正義の味方です。助けに来ました」


 笑顔で助けに来たと言った私を信頼してくれたのか、アイシスちゃんが寄ってきます。この精神状態で助けに来たと言われれば、誰でも信用しますよね……。バクさんから貰った鍵で扉を開きます。

 ご飯はいい物を貰っているのか、具合はそこまで悪そうではありません。小さな体をそっと抱きかかえます。


「お名前は?」
「アイシスです」


 小さく喋って、すぐに俯いてしまいました。どうやら眠ってしまった様子。……やっぱり、狭い所に置かれて疲れていたみたいですね。

 他の方たちは、後で迎えが来るでしょう。とりあえず放っておきます。白い目で見られますが、子供が第一です。


「我々はどうすれば?」
「ブローカーの方に連絡しておきますので、後で迎えが来ると思います」
「……はぁ」


 なんともやる気のなさそうな人たち。ずっと幽閉されているのですから、当然と言えば当然です。一度、全員に回復魔法をかけると檻の前から離れます。

 眠ったアイシスちゃんを抱えたまま、人質という名前の担保を見学します。

 ……あ、金色の豚さん貯金箱発見です。

 一度割られた後に、セロハンテープで補強されたみたいです。

 あー。なんだか、こんなのが出てくるアニメでありましたねぇ……。

 そっと貯金箱の中を覗いてみました。バッテン模様のついた貨幣を見つけた時点で、見るのを止めました。

 もしかしてコレ、ロストロギアだったりしませんよね……?

 中から何でも願いを叶えることができる魔神は出てきませんよね。

 もし出てくるのならば、あの人が大事にしていた理由もちょっとだけわかりますけど。

 ドラゴンボールよりも条件が厳しそうなんですよね、アレ。

 ……久しぶりにジャガイモこねてみましょうか。

 そうやって担保を見ていると、バクさんが声をかけてきました。


「さて、こんな大量のゴミをどうやって運ぶつもりなんだ?」
「運ぶのは無理です。組織を潰したってブローカーのみなさんに連絡しますので、後で勝手に取りに来るでしょう。助けたこの子が証明です」
「そうかい。それじゃあ、俺は眠りこけている奴らを起こして解散の旨を伝えてやるか。解散、解散、解散ってな。次お前と会えるのは何時だか知らんが、楽しみにしてるぜぇ」
「どうもです。それでは縁が合ったら会いましょう」
「おう。俺に恋人にされるまで、誰かのモノになるなよ」
「先に誰かをモノにします。その時は紹介しますね」


 最後まで緊迫した空気を保ったまま、私とバクさんは別れました。

 次に出会うとき。……その時の私は、もしかすると管理局員かもしれませんが。

 そもそも今管理局から逃げているのだって、私が闇の書の守護プログラムだからですし。

 事件が終わればはやてちゃんに付いて行って、万が一の確立で管理局員になりますから。

 管理局の仕事よりも、保母の方が魅力的ですけど。




 アジトの外に出ると、何時の間にか夜は明けていました。結局徹夜です。

 では、後はブラックボンバーの解散をブローカーの皆さんに伝えるだけです。

 私は眠気を押し殺すと、アイシスちゃんを抱えたまま、朝焼けの太陽に向かって飛び出していきました。









――あとがき
Q なんだか展開が変じゃないか?
A 最初はもっとグダグダだった。戦闘シーンを中心に色々直すの疲れた……。
敵だとか嫌いだとか作品の中では言っていますが、作者は管理局が好きな人ですので、そこんとこよろしく。

ところで、アフロが未来を現すって辺りから佐藤黒が馬鹿だ馬鹿だと五月蝿いんだが、いったい何が気にいらんのだろう。



ここで参考程度に、ssフォルダの中にあった『起動戦士ガンダム~伝説のアフロ~』のワンシーンを挿入してみる。絶対に誰かがやっているネタだと思うが、ガンダムssに詳しくない作者は知らない。
テスト版の時より増えているが、別に続きは書いていない。アホらしい作品が、ssフォルダの中には大量に存在する。



アフロの目覚め

アムロはジャンク広場で自分の父、テム・レイを発見した。
しかし、彼はあまりにも変わっていた。その豹変は彼の頭の上に強く現れている。
テム・レイの頭には直径一メートルを超えるアフロが乗っかっていた。
テム・レイは頭のマリモに手をかけるとそれをアムロに手渡した。
「これをつければ、ガンダムの力は百億万倍になる。さあ、早く付けるのだ!」
「父さん、酸素欠乏症で頭が……」
「いや、はっきりしている。だからこそ、これが創れたのだ」
「でもさ、父さん。これ、『アフロ』じゃないか」
「素晴らしいだろう。素晴らしい魅力を放っているだろう?ふらふらと頭に装着したくなるだろう?」
「………バカだよ、アンタ」


アフロ、初めての戦闘

「アムロはどこにいっている!」
「分かりません」
「それじゃあ駄目だろ。探してきなさい!」
「ブライト艦長。ただいま戻りました!」
「おお、来たか。アム………ロ?」
ブライトはアムロを見て絶句した。正式には頭の物体を見て、だが。
そこには直径一メートルを超えるマリモ。いや、真っ赤なアフロが乗っていた。
「誰がコスモの真似をしろと言った!」
「いえ、違いますよ艦長。僕は生まれ変わったんです。テム・レイの一人息子であるアムロ・レイから、アフロの申し子のアフロ・ヘアに!!」
「アムロ。後で独房に来たまえ。事情はそこで聞こう」
白い目をするブライトの横でハヤトが震えた。その目は歓喜に輝いていた。
「な、なんて素晴らしい頭なんだアムロ……いや、アフロ」
「何を言っている!?ハヤト!」
「ブライトさん!貴方バカですか?あのアフロの良さが分からないなんて!」
「分かりたくもない!」
「残念だなあ。あんなにいいアフロなのに。うふふ(ウットリ)」
「おい、誰か医者呼んで来い!」



Zガンダム

ブライト~最初の登場時

「なあ、エマ中尉」
「なんですか?ブライト艦長」
「この雑誌の中でどのアフロがいいと思う?」
「全部嫌です」
「いや、そんなこと言わずに。一度見れば君もハマる。絶対に損はさせない」
「………なんでこんな人が上司なの。死ねばいいのに」


カミーユ~最初の出撃

「どうした。来ないのか?」
「いえ、行きます。ティターンズは嫌いですから」
「そうか。私はアフロが嫌いだ」
「聞いてませんよそんなこと」
「スキンヘッドは最高だぞ」
「………ハゲとアフロ。極端ですね」
「ハゲではない!!スキンヘッドだ!!」
「………変わりませんよ。ぼくにとっては」
「君には失望した。置いていくぞ」
「………なんだこの人?」


クワトロ~百式を眺めながら

「この機体は実にいいな」
「はい。そうでしょう。百年は使えるMSとして名付けました」
「しかし、アンテナが邪魔だ」
「は?」
「こんなにもピッカピカの機体にはアンテナなどいらん。頭もピッカピカ(スキンヘッド)にしてくれ」
「……じゃあ、アンテナはどこに?」
「知らん。どこにでも好きに付けてくれ」
「は?……じゃあ、股間に付けても文句は言いませんね?」
「股間だと……。それは素晴らしい!是非とも付けてくれ!」
「嫌ですよ!?」
「さあ、頭はピッカピカ!まるでスモーのように!そして股間にはさりげなく自己主張するアンテナを!今すぐに、さあ早く!」
「アンタ変態か!?つうか、スモーってなんですか!?……そういえば、大尉」
「む?なんだね。技術長。……君を見ていると昔出合った整備兵を思い出すな」
「早く二階級特進してくれませんか?」
「応援ありがたいが、それはよっぽどの勝利をしないと無理だな」
「皮肉と気付や。……なんでエウーゴの人はみんな変な人ばっかりなんだろ?アフロとか言ったり、ハゲとか言ったり」
「うむ。アフロはおかしいな。スキンヘッドこそが最高だ」
「ハゲ『も』おかしいんだよ。………じゃあ、アンテナは肩にでも付けるか」
「股間に付けたまえ!!」
「死ね」


フォウとカミーユ~ホンコンシティの出会い

「ねえ、カミーユ?あなた、アフロ好き?」
「……は?」
「アフロよ。知らない?」
「……何で最近はアフロって単語をよく聞くんだ?」
「ふふ。私は好き。……最高よ。アレ」
「ぼくは嫌いだ」
「そう」


VSサイコガンダム~ホンコンシティ

「君は戦っちゃいけない!君は病気なんだ(アフロへのこだわりが)!」
ちなみに、アーガマにいる人の過半数は病気です。
「あそこに行けば私のアフロを返してくれる!」
「行くなよ!アフロなんてまた集めればいい!」
「今までのアフロがないのに、今からのアフロなんて集めれるか!」


キリマンジャロ基地~VSサイコガンダム

「ねえ、カミーユ?アフロ、好き?」
「好きだよ。自分の頭だもの」


VSジ・O~アフロ発動

「貴様には分かるまい!おれの体から溢れ出るアフロが!」
「何でアフロが生えるのだ!?私の知らない育毛剤でも使われているのか!?」
「まだ、(アフロを受け入れるのを)抵抗するのなら。ここからいなくなれー!」
「アフロがこの機体に絡み付いていく!?ジ・O何故動かん!?つうか動けよ。アフロが引きちぎれんでどうする!?」
「髪の強度を甘くみるなよ!!」
「うおおお!!」
――ガシャーン
「かはっ!う、ぐ。ただでは死なん。カミーユ!貴様も連れて行く!」
「アフロが、広がっていく……」
数分後、同宙域にメタスがやってきた。
そこで、ファはすごい物を見たんだ。
ある日メタスで飛んでると、とても凄いものを見たんだ!
クルーはみんな笑いながら、アフロの見すぎというけど。
私は絶対に、絶対に嘘なんて言ってない。
それぐらい混乱する物だった。
それは、アフロまみれのZガンダムだった。実にもっさもさだ。
「艦長!?Zが!カミーユが!?」
――うむ。私にも見えるぞ。
「何で!?」
――アフロの視覚共有能力だ。
「(この人たち、どんどん人間離れしてくなぁ)
――しかし、素晴らしい。こんな逸材はアフロガンダム以来だ。……うむ。Zアフロガンダムと名付けよう。
「そのまんまじゃないですか!?」
――だが、それがいい。
『あはは~、アフロアフロ』
「カミーユがなんか言ってますよ!?」
――アフロの力を浴びすぎたのだろう。しばらくすれば治る。………いいなあ、あのアフロ。
「艦長!?何がいいんですか!?」
――オホン。すぐにZアフロを連れて帰ってきてくれ。カミーユがもしかすると危険かもしれん。それにコックピットに紫外線などが入っているかもしれない……そして触りたくてたまらない。
「最後になんか欲望が見え隠れしてましたよ!?」
――ははは。私はオープンだからな。素晴らしい美徳だろう。
「自慢じゃねええ!」
『アフロアフロー』
――さあ、早く連れ帰って来い。
「バカばっかりだー!」
『あれはアフロ星人?いや、高木ブーか。アフロ星人は、もっともっさりと輝くからな』
――おお、カミーユがアフロ星人のもっさり感を知っているとは!
「ツッコミ役は私だけなの!?助けてエマさん、ねえ助けてよ!」
――アフロは、素晴らしいわよ。
「エマさん!何で覚醒してるの!?」




何これ。そんなにアフロが好きだったんだろうか。ZとCCAのもあるし……。Zはシュール過ぎるし、CCAはハサウェイが可哀想だし……。最後は夢オチに見せかけた、ハサウェイ終了フラグだし……。

プロットを見てみると、アムロが酸素欠乏症の父親からアフロを受け取る。アフロにはまる。
ララァが殺されるところで、シャアは紫外線を浴び脱毛してしまってハゲになる。吹っ切れて、ハゲ最高と宣言し始める。
ア・バオア・クーの中でハゲのシャアとアフロのアムロが一騎打ち。
最後まで意識を保ち続けていたブライトが堕ちて、ホワイトベース隊はアフロ部隊と呼ばれることになる。
みたいなニュータイプをアフロに置き換えた物語になっている。ただ、全体を読み直してみた結果、髪の毛に何かがあるのではないだろうかと疑問に思ってしまう。
……オールドタイプが普通の髪の毛。本物ニュータイプがアフロ。古いニュータイプ(シャア)がハゲ。かな。
これで短編なら良かったのだが、Z、ZZ、CCAと長編の物語がマジで続いている。
アフロの力で隕石を動かすという展開が怖い。それにしても、高木ブーが活躍しすぎだった。
Zに出てくるシロッコはアフロ反対派で、第三の髪型『シロッコヘア』を創造しているみたい。これが女性主義を表しているのだろうか。
進行する物語の中で、シャアの髪がどんどん薄くなっているのがさらに怖い。
そして、来るCCAのラストで、シャアは全ての罪を許される……。


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