<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.39082の一覧
[0] 私は、生きていていいの?[一色十色](2013/12/16 22:46)
[1] 出会い[一色十色](2013/12/21 00:03)
[2] 一日目[一色十色](2013/12/26 21:28)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[39082] 私は、生きていていいの?
Name: 一色十色◆752509b2 ID:19f6e08a 次を表示する
Date: 2013/12/16 22:46
 親がいなかった。

 孤児院に住んでいた。

 人見知りだった。

 どれが、理由だったんだろう?

 もしかしたら、全部だったかもしれない。

 それとも、他の理由もあったのかな?

 今はもう、分からないけど……私は、いじめられていた。

 最初は、無視だった。誰かに挨拶をしても、返事が来ない。学校の授業で二人組を作る時、いつも私だけが残ってしまう。そんな無視。

 でも、もともとあまり話すほうじゃなかった私は、だからそれはあんまり辛いことではなかった。

 次に、陰口が始まった。

 一人でいる私の近くに何人かでクラスメイトが集まって、こそこそと、でも耳に届くくらいの声で、何かを言う。例えば、暗いとか、ブスだとか。

 どうしていいか分からない私は、だからじっと耐えて、聞こえないふりをするしかなかった。

 でも、それが悪かったんだと思う。

 抵抗しない私をクラスメイトはどう取ったのか、いじめは次第にエスカレートしていった。

 ある時、私の教科書がなくなった。忘れたのかな、と思い、自分の部屋を探してもなくて、きっとどこかに置き忘れてしまったんだろう、と孤児院の先生に謝って、新しいモノを用意してもらった。

 だけど、学校に行くごとに、私のモノはなくなっていく。ある時、あまりにもそれがおかしいと思い、クラスメイト達を見れば、皆が私を見て、笑っていた。

 人を見下した、顔だった。

 私は言った。どうしてこんなことするの、と。

 クラスの誰かが言った。何のことだよ、と。

 周りから、笑い声が響く。

 楽しそうに。本当に、面白そうに。

 ――証拠はあるのかよ?
 ――自分でなくしたんじゃないの?
 ――人のせいにすんなよ。
 ――サイテー。

 どうしていいか分からず、放課後私は、担任の先生に相談した。

 先生は、よく分からない顔をした。

 眉の間にしわを寄せて。

 ――面倒だな。

 ぼそりと一言、そう言った。

 ……え?

 目を丸くする私に先生は、自分が何とかするとそう言って、私を職員室から追い出した。

 次の日のホームルーム。先生は言った。

 私の教科書がなくなっていること。誰か知らないか。

 誰も、答えなかった。

 先生は、そうか、と言って――え?

 それで、終わりだった。

 まるで、何事もなかったみたいに、今日の連絡だけして、ホームルームを終わらせた。

 そう、授業の宿題を、集めるように。

 その日の放課後、私は先生がいない場所に連れて行かれ、クラスメイトからいじめられた。

 誰かが言った。

 ――このチクリ。

 誰かが叩いた。

 ――嘘つき女。

 誰かが髪を引っ張った。

 ――死んじまえ。

 服を汚し、帰りついた私を待っていたのは、昨日の先生と同じ顔をした、孤児院の先生だった。

 汚いモノを見るような目で、先生が言う。

 ――どうして服をそんなに汚すの!

 私は、皆にいじめられたと言った。

 先生は、嘘をつくなと怒鳴った。

 ――教科書を何回もなくして!
 ――気を引きたくてワザとしてるんでしょ!
 ――こっちも暇じゃないのよ!

 ……ねぇ、どうしてそんなこと言うの?

 私、嘘なんてついてないよ……?

 ホントのこと……なんだよ?

 喉まで出かかったそれは、でも、言葉にならなかった。

 言って、もしまた、嘘をつくなって言われたら、私……

 その日の夜、私は布団の中で、誰にも見られないように泣いた。

 声を、押し殺して。

 誰にも気づかれないように、布団を噛んで、泣いた。

 ……明日が、来なければいいのに。

 ずっとこのまま、夜が続けばいいのに。

 そう、思った。

 でも、どんなに私が願っても、朝は来てしまう。

 学校に行きたくない。そう先生に言った。先生は面倒くさそうに眉の間に皺を寄せる。そして視界から私を外すと、早く行きなさい、とそう言った。

 学校につくと、また皆が私をいじめる。

 本当に楽しそうに、私をいじめる。

 そんな日が何日も続いて、ある日私は、孤児院から学校に行くふりをして、公園に隠れた。

 何もすることがなくて、すごく時間が長く感じたけど、誰にも陰口を言われない、痛い想いをしないから、とても心が楽だった。

 だけど、そんな時間は本当に少ししか続かない。

 お弁当なんて持っていなかった私は、次第にお腹が空いてしまい、公園の水道の水を飲みに行った。そんな私に、声をかける人。

 青い服を着た、男の人だった。

 ――警察の人だった。

 すぐに私は、孤児院に送られた。警察の人は先生と何か話し、先生はずっと謝りっぱなしだった。そして、警察の人が帰ってすぐ――私を叩いた。

 あんたは! 迷惑ばっかり! 邪魔なのよ!

 叩かれながら、私は思う。

 ……私が、悪いの?

 私、何もしてないよ?

 ……ねぇ、どうして?

 誰も、答えを教えてくれない。

 私も、もう考えたくなかった。

 だって、考えたって辛いだけだから。

 何も、考えなきゃいい。

 辛いことも、苦しいことも、流してしまえばいい。

 それが当たり前だって考えて、眠ればすぐに忘れてしまう。そんな風になればいい。

 私は、そう思った。

 いじめられても、ひどい目にあっても、眠ってリセットしてしまえばいい。

 じゃないと、私は……

 そうやって、忘れて行く日々が続く中、いつものようにいじめられていた私を見て、囲んでいたクラスメイトの誰かが言った。

 ――何かつまんないな。
 ――そうだね。飽きたかも。
 ――じゃあ、これ使ってみる?

 抵抗もせず、丸くなっていた私はいつもとは違う流れに眉を寄せ――そして、目を見開いた。

 え、なんで?

 なんで、それが出てくるの……?

 縦に長い長方形。透明の液体が入ったモノ。カチカチと、試すように鳴る音。

 それは――ライターだった。

 火を、付けるモノだった。

 ……どこに?

 ――気付いた瞬間、私は暴れていた。そんな私にクラスメイトは驚くが、それ以上に笑う。今まで無抵抗だった私が、必死にもがいているのを面白がるように。

 数人に抑えつけられて、私は顔だけを動かしてライターを持つクラスメイトを見た。彼は、笑っていた。笑いながら、火のついたライターを私の服の袖に当てていた。

 火が、移る。

 冬。寒くて着ていたセーター。

 薄いピンクのセーターが、少しずつ燃える。火が、私に近づく。

 ……いで。

 熱が、ゆっくりと伝わってくる。

 ……な、いで……

 焦げた匂いが、襲ってくる。

 ……来ないで……!

 いや――いやぁ!

 いや! やめて! 熱い!

 来ないで! やめて! うそ! そんなの!

 だめ、だめお願い!

 あ、あぁぁ、ぁああっぁあぁあ!!

 次の瞬間、私の目の前に『赤』が広がっていた。


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.027906894683838