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No.3907の一覧
[0] 然もないと [さもない](2010/05/22 20:06)
[1] 2話[さもない](2009/08/13 15:28)
[2] 3話[さもない](2009/01/30 21:51)
[3] サブシナリオ[さもない](2009/01/31 08:22)
[4] 4話[さもない](2009/02/13 09:01)
[5] 5話(上)[さもない](2009/02/21 16:05)
[6] 5話(下)[さもない](2008/11/21 19:13)
[7] 6話(上)[さもない](2008/11/11 17:35)
[8] サブシナリオ2[さもない](2009/02/19 10:18)
[9] 6話(下)[さもない](2008/10/19 00:38)
[10] 7話(上)[さもない](2009/02/13 13:02)
[11] 7話(下)[さもない](2008/11/11 23:25)
[12] サブシナリオ3[さもない](2008/11/03 11:55)
[13] 8話(上)[さもない](2009/04/24 20:14)
[14] 8話(中)[さもない](2008/11/22 11:28)
[15] 8話(中 その2)[さもない](2009/01/30 13:11)
[16] 8話(下)[さもない](2009/03/08 20:56)
[17] サブシナリオ4[さもない](2009/02/21 18:44)
[18] 9話(上)[さもない](2009/02/28 10:48)
[19] 9話(下)[さもない](2009/02/28 07:51)
[20] サブシナリオ5[さもない](2009/03/08 21:17)
[21] サブシナリオ6[さもない](2009/04/25 07:38)
[22] 10話(上)[さもない](2009/04/25 07:13)
[23] 10話(中)[さもない](2009/07/26 20:57)
[24] 10話(下)[さもない](2009/10/08 09:45)
[25] サブシナリオ7[さもない](2009/08/13 17:54)
[26] 11話[さもない](2009/10/02 14:58)
[27] サブシナリオ8[さもない](2010/06/04 20:00)
[28] サブシナリオ9[さもない](2010/06/04 21:20)
[30] 12話[さもない](2010/07/15 07:39)
[31] サブシナリオ10[さもない](2010/07/17 10:10)
[32] 13話(上)[さもない](2010/10/06 22:05)
[33] 13話(中)[さもない](2011/01/25 18:35)
[34] 13話(下)[さもない](2011/02/12 07:12)
[35] 14話[さもない](2011/02/12 07:11)
[36] サブシナリオ11[さもない](2011/03/27 19:27)
[37] 未完[さもない](2012/04/04 21:58)
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[3907] サブシナリオ3
Name: さもない◆8608f9fe ID:94a36a62 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/11/03 11:55
とある一室。
家具はベッドや机といった最低限の物しか存在せず、全体が木で出来ている室内は簡素の一言に尽きた。
まだ住人が入って日が経ってない事を感じさせる様な内装。事実、現在の部屋の主はまだこの此処に入って浅い。
洒落ている物が全く置いてないのは、部屋の主が飾りに気にかけていないことをありありと表していた。

一応、洒落………というか、奇天烈な存在はある。
いや十分アンティークの類に入るのだろうが、それの醸し出す雰囲気がそれをアンティークと呼んでいいのか躊躇わせる。

それはかなり大きさの、宝箱だった。
薄い緑で彩られた木製の宝箱で高さはベッドとほぼ同じくらい。よく見ればフジツボが所々張り付いており、短くない時間海にその身を置いていたのが解る。
モノホンと相違ない宝箱である。

部屋の隅に置かれた、そんな夢とロマンがぎっしり詰まっている筈のアイテムは、しかしその異様な空気により空間を歪ませていた。耳を澄ませばゴゴゴゴゴなる前触れの音が聞こえてくるのは錯覚だと信じたい。
人がそれを目にすれば本能がヤバイと告げているにも関わらず触れたくなる、そして触れてしまえば条件がクリアすれ奇妙体験の始まりへと巻き込まれる、そんな展開を予想させる品である。
ちなみに蓋の部分に「パンドラのはこ」と書かれた紙が貼ってある。

部屋に入って最初に目につくのがこの宝箱。そして、すぐに目を逸らすのもこの宝箱だった。


「……………」


ギィイイと軋みを上げるドアが開かれ、1人と1匹――少年とその頭にとまったねこが入室した。
何の声も発さず少年は宝箱に直進。何の躊躇もなく蓋を開け、手に持っていた光り輝く物体――「魔石のピアス」を収めた。
箱を覗いてみれば、中にある物は鍋から始まり海賊旗、鈍い光沢の大剣やら年季の入った茶釜やらが存在し、挙句にはわら人形まで詰め込まれている異次元空間となっている。
薄気味悪いオーラの元手はこれらであることは明白だった。というか収容出来る量の物理的法則を無視している。

少年、いやこの部屋の主――ウィルはその中から植木鉢を取り出す。
そして、ベッドの方へ歩み、腰を下ろしたかと思うとそのまま横に倒れた。
植木鉢抱きながら。


「訳分かんねぇ…………」


お前がな


残念ながらそうつっこむ人間は此処には居なかった。







然もないと  サブシナリオ3 「ウィックス補完計画その3 ~~ガラクタ山の声を一刀両断~~」







「何あれ?ヤバイ。ホントヤバイ。落ちる。ホント落ちる。というかあれどういう意味?普通にそういう意味だったりするのか?しかし天然。紛れもなく天然。推測の域は出ない。ていうかただのスキンシップの可能性も無きにしも非ず。ていうか大。ダメだ、やはり訳が分からない……」

何かぶつぶつと呟き始める少年ウィル・マルティーニ。
横に倒れた際頭から転げ落ちたねこ――テコが心配そうに顔を覗き込むが、無反応。初見の時と同じ様にその丸い手でぺちぺち頬を叩くが、やはり反応は無い。変態な相棒を本気で心配する出来すぎた召喚獣は、昨日からの続くこんな状態に困惑するばかりだった。


ウィルが思考の渦に巻き込まれている原因は、昨夜のアティの行動にある。
言葉通り、昨夜のアティはヤバ過ぎた。別に泣き出すまで特に思うことはなかったが、一緒に居て欲しいと言われた際、ウィルに途轍もない衝撃が走った。
頬を赤く染め、上目遣い。瞳に涙を溜めたその顔は間違いなくオーバーキル。これが伝家の宝刀泣き落としかとウィルは戦慄した。

不謹慎にも麗人のわんわん泣く姿はクルものがあり、しかもすぐ隣で、更には手が繋がっているのだからウィルの頭は警報鳴りっぱなしのコンディションレッド。フェイズ3通り越してフェイズ8くらいまで一気に跳ね上がった。

手を強く握り締められた時は、揺れた。
頭が「回避ィィイイイーーーーーーーッッ!!!!!!」と高らかに叫び面舵をとるが、無理、直撃。
自分で自分のことを好きになるってどうよな理念からアティに好意を寄せるまいとしていたウィル。そんなウィルの熱線さえ弾く第一、第二、第三装甲までも突き破った超ド級の砲撃。理念を一瞬にして打ち砕かれたウィルは、不覚にもその小さな手をほんの僅かに握り返してしまう。

それだけに被害を留めただけでも特別昇進ものだが、実際シャレになっていなかった。
「剣」の支配をウザイの一言で退ける強靭な、変態なウィルの精神を粉砕する超火力。「無敵戦艦アティ」的なそれは脅威の以外の何にでもない。
常に主砲がブリッジに向けられている感覚。何時落とされても分からない状況に、ウィルは理性は風前の灯火と化していた。

そして、ウィルに向けられたアティの笑顔。
言葉では言い表せないその笑顔にウィルの時が止まった。余りの威力に返って冷静になってしまう程だった。ていうか半ば放心に近かった。

アティの振る舞いは、今まで目にした事のないあの笑顔を向けたのは、好意の現れではないか?自惚れてもいいのではないかとウィルはそう考えてしまう。



ウィルは確かに鈍感だ。「レックス」の際に誰の好意にも気付けなかったことからそれは間違いない。
だが、それは「レックス」の空気に中てられ壊れた女性達が歪んだ好意を向けていたことに起因している。いや普通に好意に気付けなかったのもザラだったが。
その筆頭は間違いなく「アズリア」その人だろう。そっちの方面にてんで弱い彼女は悩んだ挙句、自分の長所でアプローチしようと決める。即ち戦闘である。然もあらん。

他に例を挙げれば「アルディラ」の趣味――実験・改造だったり、「ミスミ」の戦稽古だったり。
自分の心身を削る行動が好意の現れだと言われても流石に気付けない。しかも俗世間で言われる迷惑や苦労の一線を越した死線レヴェル。気付けと言う方が無理だった。

あからさまな好意を寄せられれば一応は気付く。面と面向かって好きの一言言えばよっぽどの事がない限り勘違いしない。断言出来ないのが悲しい所ではあるが。
それに事実、「レックス」はアリーゼの好意には気付いていた。「イスラ」倒した後くらいに。結構遅い。

だが「レックス」はアリーゼのそれに嬉しいと感じつつも、その感情は一時の憧れという奴だろうと思い込み、それからも以前と変わらぬ態度でアリーゼに接し続けた。それ故に悲劇もとい喜劇が巻き起こってしまったのだが…………。



兎に角、人並みの感性をウィルは一応持ち合わせている。「ウィル」と同化した事もそれに拍車を掛けていた。
よって昨夜のアティの振る舞いは、少なくとも近しい人に寄せる好意なのではないかと考えているのである。

余談だが、ファリエルの好意には気付いてはいない。仲間達に暴力を振るわれていた「レックス」の際に、島の女性陣に嫌われてはないにしても好意を寄せられるという事はないと刷り込まれている。「ファリエル」に乱暴された事はないが、島の女性陣という範囲に当てはまってしまうので前提からアリエナーイの一言で切り捨てている。不幸と書いて滑稽と読める。


部屋に1つだけ備えられている窓からは青々とした海原が覗いており、地平線から顔を出して間もない朝日が眩い光を散らしている。
ウィルはベッドの上でぼけーっと窓に映る青空を見ながら、部屋に差し込む光を身に浴びていた。

早朝から釣りに出掛け、この状態を脱しようと思ったが効果は上げられず。帰ってきたのが先程で依然思考のループに囚われてたままだった。


「………………はぁ」


重い溜息を吐き出し脱力。何やってんだかなーとウィルは1人ごちる。
アティが好意を寄せようが何だろうが自分には関係ない話。自分は己に好意を寄せるイタイ人間ではない。
それによく考えてみればアティには自分を子供として捉えている素振りが節々にあった。あれらの行動は雰囲気的に流されたただの気紛れかもしれない。むしろそちらの方が真実味がある。何よりあれは天然なのだ。

よし、とウィルは体を起こす。植木鉢抱きながら。
膨大に時間を注ぎ込んだ思考に決着を付ける。今まで通り接すれば良し。天然の不可解な行動を気にするだけ無駄だ。適度にシカトする。
そもそもアティが好意云々というのも根拠のない話だ。そう決め付けてだたの此方の勘違いだったら相当ハズイ。ていうか死ねる。
もう既にイタイな俺とウィルは肩を落とした。メイメイの言っていた自己陶酔者もこれでは否定出来ない。

らしくないと呟き、起きた反動で転がっているテコを頭の定位置に乗せる。
ベッドから立ち上がり植木鉢を宝箱の中へ。やはり長年愛用してきたプリティな鉢は心が落ち着くとうむうむ頷いた。
正直今の状態でアティに会うのは気が引けるが、それは勝手に妄想して自爆していただけ。己の責任だ。受け入れるしかない。

いつも通りの態度を心掛けよう。
平常心、平常心と己に言い聞かせ、ウィルは部屋を出る


「平じょっ!!?」


「ウィル君、居ます――――あ゛」


正にその瞬間にドアが開き、彼の顔面を強襲した。













「ノックもせずにドア開けるなんて如何いう神経してるんですか?」

「うぅ……………す、すいません」


目の前には半眼で私を睨んでいるウィル君。
出された椅子に座って向かい合ってる私は身を縮ませることしか出来ません。
本当に失態です。弁明のしようもないです………。

ウィル君に話したい事があって、部屋の前にやって来たまではよかったんですけど、何故かドアを開けるのに躊躇してしまいました。
恥ずかしい姿を見られたという事もあるんですけど、それも昨日思ったように今更でしたし。別に躊躇する必要はない筈なのに。

そんな風に考えていたら、はっきりと昨夜の出来事を思い出してしまい、顔を赤くしてドアの前でにらめっこ。
手を出したり引っ込めたりを繰り返して、ようやく決心してドアを開けて…………こんなになっちゃった訳です。
自分を落ち着けるのに必死でノックするの忘れてしまいました………。


はぁ、と溜息を思わず吐いてしまう。
一体どうしてしまったのだろうかと思い耽っていると。


「で、何か御用なんですか?」


機嫌の悪さが滲み出している声を投げかけられた。
はっ、と目の前にいるウィル君を視界に治めて我に返る。
いけない。こっちから尋ねてきたのに相手を放っておくなんて。………うう、本当に今日変です、私。

「ご、ごめんなさい。少し考え事してしまって………」

「それはいいですから、さっさと用件を言ってください。用がないんなら僕行きますよ?」

な、なんだか、何時もより刺々しいです。
目つきもさっきから険しいままですし。そ、そんなに痛かったですか?

「え、えと……きょ、今日も学校はないそうです。スバル君達まだ本調子じゃないそうなので」

「そうですか」

「しゅ、集落の人達の様子も見ましたけど、ほとんど普通に生活出来るみたいでした。やっぱり全快という訳ではなさそうでしたけど」

「朝早くからご苦労なことですね。で、終わりですか?」

「……………えーっと、その……」

此処まできて言うか言うまいか悩んでしまう。
ウィル君に迷惑を掛けていいものかと躊躇ってしまう。
生徒であるウィル君に私の問題を押し付けて、巻き込んでしまっていいのかとそう考えてしまう。
言葉に詰まる。

「…………終わりならもう行きます」

「ぁ…………」

立ち上がり、ウィル君は此処を後にしようとする。
離れていってしまう。
私の前から、居なくなってしまう。


「待って!」


気付けば、咄嗟に彼の手を握っていた。


「――――――――」

「…………待って、ください」

ウィル君の足が止まる。
私は、その小さな手を取ってウィル君を引き止めた。

違う。
私が話をしようと躊躇った理由はそうじゃない。
迷惑を掛けるとか問題を押し付けるとかは、きっと建前なんだ。
本音は別にある。

私は、彼に嫌われるのが嫌なんだ。

愛想を付かされるのが嫌なんだ。
私の前から居なくなってしまうのが、怖いんだ。

今こうして彼を引き止めているのが何よりの証拠。
嫌われないかと不安になって、そして今は離れていこうとする彼を止めている。

……行動が矛盾してます。
不安に思うのなら、別に話さなければいいのに。


『1人で抱え込まないで下さい』


でも、話そうと思ったのは、彼がそう言ってくれたから。
昨日の夜で、もう1人で抱え込むのは辛くなってしまったから。
受け止めて欲しいと、そう思ったから。


「………話を、聞いてください」

「っ!!!」

ウィル君は大きく肩を震わす。
どうしたのかと不思議に思い、次にはやはり何も話を聞きたくないのかと不安に思ってしまう。
いや、でもそれはおかしい。私はまだ何も伝えてないし、ウィル君は相談に乗ってくれると言ってくれたのだから。
だから、これはきっと私が勝手に不安に思ってるだけ。ただの思い違い。


「話したいことがあるんです………」


それでも声に緊張が含まれる。
解っていても、緊張してしまう。自然と握る手に力を込めてしまった。


「な、な、な……っ!!ちょっ……!!?」

「実は、私…………」


………言いましょう。
悩んでるなんて私らしくない。
大きく息を吸い込んで、私は口を開いた。


「ウィル君に…………」


「いや、ちょっと待っ―――!!!?」




「『剣』のことで話があるんです」




どがしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん




「……………あれ?」

「フミュッ!!?」


ウィル君がすごい音を立てて倒れちゃいました。
テコもウィル君の頭から転がり落ちます。
えっと、どうしたんですか?

「ウィ、ウィル君?ど、どうしたんですか?というか、平気ですか?」

「フミュウ~~~~」

うつ伏せに倒れたウィル君は何も答えてくれません。
一体何が…………?

「ウィルくーん?」

「ミャアー………」




「………………もう、ヤダ」













盛大に勘違いしていた俺は見事にずっこけた。
勘違いした俺が悪い。ほんの僅かでもそういうことなのかと自惚れていた愚者の末路であることは理解している。

………だが、俺が愚かであった為だけかと言われれば否。断じて否である。
あんな、今から私勇気振り絞って伝えたいこと言います的な雰囲気なら変な妄想くらいするに決まっている!ていうか何だよ!?何で手握って切なそうな声出すんだよ!?その前フリ一体なんだったんだよ!?誤解するに決まってんだろ!?
この天然っ!!貴様今まで一体何人もの男共を泣かしてきやがった!?謝れ!俺達に謝れ!!

血の色を連想させる髪を持つ天然もとい赤い悪魔。全く異種の赤い悪魔である。計算も何もない、ただの行動で人をここまで磨耗させる害意無き悪魔の技。
何だ、それは。手に負える筈がない。
コレは俺の理解の範疇を超えている。というか誰からも理解されないに決まっている。


天然とは凡人には推し量れるものではなく、そして常軌を逸した存在なのだと思い知らされた。いや、再確認した。
俺はこれからずっとこの天然を理解することは決して出来ないだろう。

そしてもう変な妄想するのは止めよう。疲れるだけである。抜剣してもないのに髪が白くなってしまいそうだ。
変な期待、というより望みを持つのは止せ。その望みを持ったところで、所詮俺は今のように道化を演じるだけである。身の程を知れウィル・マルティーニ。
俺に好意を寄せる物好きな人物など居る筈がないのだから。…………いやゴメン。1人くらい居て欲しい。


散々振り回され現在進行形で精神が磨り減っている中、俺は机を挟んで向かい合ってるアンノーンを凝視する。
一体何を食ってどういう生活をすれば「俺」という存在がこんな生物になるのかと疑問を抱かずにはいられない。最大の謎である。

「あの………お、怒ってますか?」

「……怒ってませんよ」

凝視してくる俺をどう思ったのか、目の前の天然はそんなことを言ってくる。
どうやら目つきが自然と険しくなっていたようである。眉間に指をやって揉み解す。

「大体僕が怒ってるとして、原因が何なのか解るんですか?」

「えーと………解んないです、ね……」

でしょうね。心当たりも無いんだろうね。
はぁ、と本日二度目の溜息を吐いた。これからも犠牲者は増える一方なんだろうと達観する。


「………それで『剣』の話というのは?」

表情を改めてアティさんに尋ねる。
「剣」の事で相談ということは何かあったのだろう。考えられるのは遺跡の意思が語りかけてきたのか、それともハイネルが出てきたのか。
どちらにせよ、気分のいいものではないだろう。白いのだったら特に。

「実は、今日の朝に『剣』が私の意思とは勝手に出てきて………」

「…………なぬっ!?」

気配感じませんでしたヨ!?

話によると、今までの経緯や響いてくる「剣」の声に悩んでいたアティさんは、「剣」を召喚して今までの事を聞いてみたらしい。
「剣」が答えたのは強い精神と魂が持つ者が「剣」の担い手になれる云々。アティさんを同じカタチと輝きを持つ継承者なのだと言って締め括ったそうだ。
そして、お決まりのパターンで最後に勝手に抜剣してアティさんの中に強引に入り込んできたと。

…………俺の時はこの時期そんなことは無かったのだが。というか話聞く限りアティさんが「剣」と接触を計ったのが原因だろう。迂闊に「剣」に接触して欲しくないのだが。ぶっちゃけフォローしきれない。
ちなみに俺が何故アティさんの抜剣に気付けなかったかというと………ちょうど釣りに行ってて昨日の事でうんうん唸っていたからっぽい。間抜け過ぎる……。




「…………イスラが?」

「はい。偶然通りかかったイスラさんが声を掛けてくれて、何とか『剣』を抑え込めました」

「……………」

偶然、ではあるまい。
恐らくアティさんの姿を見つけて見張っていたのだろう。
「剣」の支配から逃れたのも、多分イスラが「剣」――キルスレスを用いて干渉したからだ。推測の域は出ないがタイミングが良すぎる。

………結局動いたか、イスラ。
ここ数日の夜はイスラの様子を見に行ってたが、あの森に行った日以外は怪しい行動を取る素振りはなかった。そこはクノンにも確認した。
やはりイスラは止まらないらしい。「イスラ」とは違う面を見せるから、もしかしたらという期待もあったが………こうなるのか。
解りきっていたことではあるが、イスラの色々な顔を見てきただけに少し辛い。

「ウィル君………?」

アティさんが黙り込んだ俺の顔を覗き込んでくる。
今日イスラが動いた時のことも考え、それとなく注意を促しておいた方がいいかもしれない。
この世界ではまだ不確定事項で「俺」の経験した事であるから上手く言えないのだが。………さて、何と言うか。
僅かばかり意識を向けてもらうえば十分か?いや、というかそれしか出来ないな、今の所は。

「先生、イスラは『剣』のことを聞いてきたんですか?」

「ええ。私が『剣』を持ってるのを見て、それがみんなの言うシャルトスですか、って」

「……イスラはどうして『剣』のことを知っていたんですか?」

「え……?」

「イスラが『剣』を見たのは今日が初めての筈です。なのに、何で『剣』の存在を知っているんですか?」

「……誰かから聞いたんじゃないでしょうか?」

「誰ですか?先生の『剣』のことを知っている人は限られている筈です。カイル達だって知らないんですから」

「あっ………」

「恐らく『剣』の存在を知っているのは護人達と、昨日の戦闘に参加しているクノンとフレイズくらいです。あとメイメイさんか。『剣』の存在を知らないイスラへ自主的に『剣』の話題を振るのは不自然ですし、存在を知らないイスラから『剣』のことを尋ねられるのは元より在り得ません………何より、今いったメンバーは『剣』の事を不用意に話す人達じゃないと思います」

「!!じゃ、じゃあ、イスラさんはどうして?」

「解りません。先生が『剣』を抜いている所に居合わせたのか………もしくは最初から知っていたのか。どちらにせよ、イスラは何か隠してるっぽいです」

「…………………」

俺の言葉にアティさんは顔を曇らせる。
この人からの性格からして他人を疑いたくないのだろう。アティさんの美徳なのだろうが………何時か足をすくわれかねないな。
まぁ、島のみんなと楽しそうに交流するイスラを疑うのも確かに無理があるような気もする。楽しそうにスバル達と戯れる姿は演技になんて見えないし。帝国軍、ましてや無色の派閥に属しているなど思いも寄る筈がない。



「まぁ、根拠のない話です。あまり気にしないでください」

「………はい」

「それよりも、『剣』を発動しないにしても不用意に接触するのは止めてください。また同じことになりますから。ていうか少し考えたらそうなるかもしれないって解ることじゃないですか………」

「うっ………。で、でも……」

「でももヘチマもないです。大体気になるんだったら護人達に聞けばいいじゃないですか。何か知ってるっぽいんですから」

「あっ、そういえば………」

「貴方って人は…………」

「あはははははは…………」

やっぱり何処か抜けてる、この人……。

「ありがとうございます、ウィル君。聞いて貰って、楽になりました」

「相談に乗るって言ったのは僕ですからね。気にしないでください。というかどんどん話してください」

「…………はい、そうします」

微笑むアティさんを見て、少しでも荷が下りたかと思った。
少しでも不安を取り除いてやれればいい。無理のないままで笑っていて欲しいから。

………しかしまぁ、本当に笑顔の似合うご婦人だな。















「召喚術の対抗力が弱い……ですか?」

「はい。それがウィル君の戦闘における差し当たっての課題です」


船近辺の森の一角。
カイル達と朝食を終えた今現在。周りが木々に囲まれているこの場で、俺は授業の一環で戦闘の長所と短所においての講義を受けている。
一通り模擬戦闘を行い、更に召喚術を執行。アティさんがそれを観察し俺の顕著な部分を挙げている。
正直、軍学校の入学試験でここまで戦闘スタイルを検討する必要はない。実技試験ではあくまで身体能力が規定値を達しているか視られる訳だから、ここまで実戦的な事は求められない。軍学校入ってから学ぶ事だしね。

まぁ、この島での状況を見れば必要である事は間違いないけど。自分の身は自分で守れって奴だ。
それに「俺」もアリーゼには杖の護身術教え込んだし。特訓らしきもの散々やったから人のことは言えない。

それにしても召喚術の対抗力が弱いか………。
気付かなかったな。自分の事なのに。いや、まだ此処で召喚術を1つももらってないからか気付く筈もないんだけど。ことごとく交わしてやったしね。
対抗力に限ったことではなく、今の俺は全般的に防御力は低いだろう。子供だし。一撃喰らったらそれだけでピンチになる。
交わし続ければいいだけの話だが、召喚術に限っては回避不可能の物もあるのでそこら辺は頭に入れておく必要がある。

「自分の欠点を知ることは強くなっていく為にとても重要なことだから覚えておいてくださいね」

「うす」

「今はまだそんなに気にしなくてもいいけど、これからはそこを意識して訓練していきましょう」

「了解です」

対抗力上げるのは魔力の総上げが手っ取り早い。といっても、そう簡単に増やせる物じゃないけどな。
物理防御は……まぁ、防具装備するなりしか方法はないわな。体鍛えていって武器が防げる訳ないし。
でも、この体に防具はちとキツイよな。欲張り過ぎかもしれないが、緊急時での防御手段の1つや2つ欲しい所ではある。

「………先生、質問」

「はい、何ですか?」

「僕、ストラ使えないですか?」

「ストラ、ですか……。んー、少し無理がありますかね。ウィル君に限らずに、召喚師は魔力が特化している訳ですから肉体強化出来るストラは不得意の部類に入ります。使えないこともないと思えますけど、ストラを専門にしている人には遠く及びません」

「ですよね………」

「無理に習得しようとしても結局どっちつかずになっちゃいますし。あまりそっちの方に興味を持つことはお勧め出来ません。でも、如何していきなり?」

「いやあ、カイルみたいに体1つで敵と戦うのってカッコいいじゃないですか。憧れます」

「ふふっ、ウィル君も男の子ですね」

「はい。身体能力上がればやりたい放題ですから、好きなだけ相手を嬲れます。肉弾戦でボッコボコに出来るって最高ですよね。こう、えぐり込む様にして打つべしみたいな。ノーリスクハイリターン。ええ、超憧れます」

(…………果てしなく危険な響きしかしないんですけど。というか、ウィル君がストラ覚えたら私への突っ込みが…………し、死んじゃいますっ……!!!)

「焼け石に水程度でも覚えたいですかね。カイルにでも教えてもらおうかな……」

「そ、それよりウィル君、ストラより召喚術の対抗手段を習得しましょう!そっちの方がずっと身になります!!ええ、間違いないです!!」

「何ですかいきなり。ていうか、さっき言ってたことと丸っきり逆じゃないですか。まだ気にしなくてもいいって……」

「い、いえ!敵の攻撃が強くなっている今だからこそ、ちゃんと備えはしておくべきです!!ええ、そうですそうですとも!!!では頑張りましょう!!」

(………毒キノコでも食ったのかこの人)


よく解らんが強制イベント。召喚術の対抗手段とやらを習得することになった。
アティさんと一定の距離をとり向かい合う。目算5メートルといった所か。

アティさんは正面にいる俺ではなく、横の木々の方向に手を向けた。
目を瞑り集中して、そして次の瞬間。


「ハァッ!」


目に見えない力の塊が、大きな音と共に木々を揺るがした。


「おおっ!」

「高めた魔力をそのまま衝撃として放ったんです」

「衝撃波って奴デスか!!」

「はい。ストラ技術の応用で、魔力の抵抗力の訓練にいいんです。私は医学を学んでたから、こういうのには詳しいんです」

「すごいです、先生!初めて尊敬しました!!」

「普通に傷付くんですけど…………。と、兎に角、これから私が魔力で攻撃するからウィル君はそれに耐えてください。勿論手加減はするけど、集中していないと怪我だってしちゃいます。覚悟してくださいね?」

「はい!!」

「では、いきます!」



…………三十分後



「………くそっ、こうやって僕のことを嬲るのが目的だったんですね!!」

「い、いえ、そんなことは………」

「こっちが何も出来ないからってボンボンボンボン調子に乗りやがって!!畜生、訴えてやる!!」

「ミャミャーッ!!」

(…………理不尽です)

アティさんの気合もとい衝撃波は喰らい続けて数十発。
耐える、っていうか俺もアティさんと同じ様に衝撃波かまして相殺することは解ってるんだけど、出ない。衝撃波が出ない。


今の俺(ウィル)にとっても「レックス」にとっても知らない召喚術対抗手段。知識とは知っている、恐らくは『魔抗』と言われるもの。
「レックス」の時は兎に角効率のいい戦闘方法だけを学んでいたので、こういう必要のない技術は帝国軍に身を置いている時はノータッチだった。「レックス」の時は魔力防御が高かった為だ。第一、強力な結界の様に完璧に防げる訳ではないだろうと見向きもしなかった。

だが全ての能力が低下し、「剣」も所持していない今の俺にはこの技術は習得しておきたい技術である。
考えるに、「剣」の知識で魔力の効率的応用を知った今の俺がこれが使いこなせる様になれば、高い確立でタイムラグ必要なしに一瞬で運用する事が出来る筈。伊達に高速召喚を執行出来る身の上ではない。
『魔抗』や結界のネックであるその場で動かずに使用するという条件も無視出来ると思う。一挙両得である。

しかし、至らない。魔力の放出まで至らない。出来ないのだ。

『魔抗』が未知の技術であるという事は勿論あるだろう。だが、恐らく最もの原因は「俺」がこの体を上手く使えていない為だ。
体術、剣の型は「レックス」の知識とこの体が覚えているので支障はない。召喚術は誓約の名に元において魔力を持っていけばいいだけの話。
更に言えば工程や構築過程、詠唱省略などの情報――土台は既に出来ている。メイメイさんの言い方ならば魂に刻まれているというのか。兎に角召喚術の発動には問題はない。

結論から言えば、「俺」はこの体を「レックス」の物と同じように扱おうとしている為に小手先が利いていない。既存の知識に魔力を流すただの供給――簡単な作業は出来るが、魔力の放出、指向性を持たせるといった今回の技術――綿密な作業は出来ていないのだ。

盲点だった。今まで問題なく体を動かせていたので気付きもしなかった。
恐らくは「俺」も知らない、「ウィル」も知らない技術がこれから出てきたら、習得は困難を極める。
「レックス」の体の使い方をこの体に当てはめているのだ。「ウィル」が1つの技術をマスターするよりも遥かに時間をかけなければいけないと思う。予想に過ぎないが、この体も本来の性能が引き出せてはないのではなかろうか?
体、というより魔力の扱い方を知らない…………本当に課題が浮き彫りになってしまった。


「ぶっ!?」

ドンッ、と空気が振動する。
襲い掛かった衝撃に、俺は体を仰け反らせた。
本当に魔力の欠片が出る気配もない。先程から今まで全く進歩していなかった。終わっている。

「ウィ、ウィル君?大丈夫ですか………?」

「モーマンタイ!」

「ミャミャ!!」

「……………」

「続けてください!!」

後に何発も衝撃波を放たれ、俺はその衝撃を全く削ることも出来ず、とうとうバランスを崩しすっころんだ。
地面に転がり仰向けになる。………くそ、みじめだ。カッコ悪い事この上ない。

広がる青空を視界に納め、大きく息を吐く。
解らん。全くもって魔力の放出の仕方が解らん。内にある魔力が漠然と集まるのは解るのだが、それっきりだ。体の外に打ち放つことは一切適わない。
「レックス」のやり方で魔力の操作が出来ていないという事になる。だが、他のやり方といっても一体どうしろと言うのだ……。

「ウィル君?」

「生きてます………」

「今日はもうこれで切り上げましょうか?ずっと続けてますし、それに簡単に身に付くものでもないですから………」

「…………最後に1回だけお願いします」

「……解りました」

一歩も進まずに終わる事は出来ない。せめて何か手応えが欲しい。
体を起こし、胡坐をかいて暫し思考に耽る。

魔力の扱い方の前提が間違っている事は否めない。やはり一から研磨しコツを掴んでいくしかないのか。
だが、メンドイ。果てしなくメンドイ。もっと楽なやり方で簡単に済ませたい。
アティさんに聞いてみる?でも、それも恐らくアティさんのやり方であって俺には当てはまらない可能性が高い。恐らく無意味。
持っている知識で何か応用出来る物を引き出せば…………。


立ち上がり、アティさんと向き合う。
アティさんがそうする様に、俺も手を突き出し同じ体勢になる。

「お願いします」

「はい。いきます………」

召喚術を執行する際には必ず魔力は発生する。
その際に紛れもなく魔力は体の外に溢れ出ているのだ。召喚獣に注ぎ込んだ魔力の余波も含まれているが、確かに魔力を放出している。
それと同じ原理。召喚術発動の前段階を再現して魔力を外に放出する。何千、万と繰り返してきた行為だ、出来ない筈はない。
今の体の扱い方では間違っている。ならばこの扱い方のまま、別の方法を模索する。ぎこちない体の運び方で別の通路を探し出す。

アティさんの瞳に力が篭る。
収束された魔力が手を通じ、放たれようとしている。

集中。頭を空っぽにして感覚を研ぎ澄ませる。体の内に満ちる魔力を手へと運んでいく。
突き出しているのは拳。そして、そこに握り締めらているのはサモナイト石。召喚術を執行せず、その至るまでの過程を応用。魔力を放出する為の媒介として利用する。


「ハァッ!!」


―――ブチかます。


「あああああっっ!!!」


放たれた魔力、アティさんの物より一瞬遅れて打ち出されたそれは。


「っ!!?」


相殺、するどころかその魔力を飲み込んでアティさんへ突き進んだ。


先程響いていた衝撃波を上回る程の爆音。
文字通り空間が爆ぜ、アティさんは吹き飛んだ。

「せ、先生っ!?」

豪快に後ろへ吹き飛んだアティさんの元へ慌てて駆け寄る。
不味い。アティさんとはいえ、女性に怪我をさせてしまったらいかん……!!

「ぃ、たたた………っ」

「へ、平気ですか!?」

「はい、大丈夫です………」

何の滞りもなく立ち上がるアティさんを見て一息吐く。
本当に怪我もなそうだ。安心した。

「…………出来たじゃないですか?」

「…………あっ」

アティさんが嬉しそうに笑みを作る。
言葉の意味を理解するのに少し時間がかかったが、やがてはっきりとその言葉が胸に落ちた。
おお、確かに!何か出た!確かに何か出てきた!!自力じゃないけど出来た!!

「ていっ!!」

手を突き出して気合一発。
先程と同じくして魔力の塊がドンっと音と一緒に放出された。

「出来たー!!」

「おめでとうございます」

「ミャーミャッ!!」

やたー!!



「状況に応じて上手く使ってくださいね。それから………」


どごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごん


「見ろ、テコ!ドカドカ出るっ!!すげー!!」

「ミャーッ!!!」


どごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごん


「……………………………」

「やばい、超使える……!!いい、マジいい!!!」

「ミャミャ!!」


どごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごん


(…………もしかして私、墓穴掘りました?)





「積年もとい朝の借りーーーーーーッ!!!!!」


どごんっ


「あうっ!!?」












「ちゃーす」

「あらまっ。珍しいわね、こんな時間帯に。朝ご飯なら食べちゃったわよ?」

「いや、飯を食いに来たわけじゃない」


メイメイさんの店に足を運ぶ。
入り口を開けると同時に小気味のいい鐘の音が鳴った。相も変わらず赤色の比率が高い店内。ケチをつける気はないが、この中にずっと居るとなると落ち着かなくなると思うのは俺だけか?
武器その他が並んでいる棚を見れば、装備品が新しい物に変わっている。特に目につく物はないが、あえて言うのならこの黒光りする鉄の塊だろうか。
ジルコーダが出てきた時から護人の許可もおり、銃の販売が許されたのだ。といっても買う奴なんて1人に限られているのだが。
カウンター席で何かの手紙を読んでいたメイメイさんは、俺の来店と同時に顔を上げた。

「誰からの手紙?」

「そんな野暮なこと聞いちゃダメよ、せーんせ」

「まぁ、いいけどさ」

「で、何の用?買い物って訳じゃないんでしょ?」

俺が守銭奴と知っているメイメイさんはそんなことを言ってくる。
これで俺が買い物しに来ていたらどうするのだ。失礼にも程があるぞ。いや、確かにその通りではあるのだが。

「メイメイさん、力貸して」

「んにゃ?なに、また戦闘?」

「いやそうじゃない。そうじゃないけど、力を貸して欲しい」

「??」


あいつが目を覚ますと思うんでね。






ラトリクス スクラップ場



敷き詰められている鉄板の上を歩いていく。
日はもうすっかり昇っており、燦々と輝いて周囲を照らしている。
打ち捨てられている機材、無造作に積まれている機器の山を見て、あいつ以外の奴も何処かで眠っているのだろうかとそんな事を思う。
物言わなくなったガラクタ山からは何も聞こえてはこない。代わりに中央管理施設の方からカァーンカァーンと何かを打ち合わせる音が耳に届いてきていた。

「で、つまりメイメイさんにヴァルゼルドの暴走を如何にかして貰おうっていうこと?」

「ぶっちゃけた話そうなる」

隣に居るメイメイさんと顔を合わせず応答する。
「レックス」の時は結局「ヴァルゼルド」が消えてしまう選択しか選べなかった。自分の満足いく選択を模索しないまま、他に方法がないという事実を受け入れるしかなかった。
しょうがないと言えばそれまでだが、後悔するのなら足掻き続ければ良かっただろうと思わずにはいられない。理不尽を跳ね除ければ良かっただろうにと、そう思わずには。

皮肉にも、そんな世界の理不尽によって、こうして俺はまたヴァルゼルドに会う機会を与えられた訳だが。


「はぁ……。本当ならこれ私の責務を大きく違えてるんだけど」

「手助けしてくれるって言ったじゃん」

「出来る限りって言ったでしょ?戦闘やサポートなら兎も角、傍観者……私の立ち位置を外れて干渉するような真似はダメなのよ」

「力を貸す時点で思いっきり干渉していると思うんだが。まぁ、『お礼』はちゃんとして貰うわないといかんよ、メイメイさん」

「はぁ~~~~~~~。………貴方、今更それをほじくり返す?」

「もち。生きてるって感じびんびんする美酒を飲ませて上げたんだから」

「何で一字一句間違わずに覚えてんのよ………」

呆れたような顔をされたがスルー。

「それにメイメイさんには俺のお手伝いをして貰うだけだからいいじゃん。ただメイメイさんの力をそのまま頼るって訳じゃないんだし」

「じゃなかったら断ってるわよ。私なんかの力を当てにするようじゃ、これから手助けしてあげないんだから」

「さいで」

「さいよ」

会話と平行して足を進めていく。
本当に今回だけだから勘弁して欲しい。俺にも、譲れない物があるのだ。


やがて、半ば崩れ落ちたガラクタ山が見えてくる。
辺りには山を形成していた機材の一部が散乱している。俺やテコ達が掘り起こした成果だった。
そして、そのガラクタ山の前には、膝を付いて動かない一体の機械兵士。
光を反射させる鉄の装甲は甲冑と遜色なく、その姿は騎士の忠誠を彷彿させた。

「ねぇ、確かこの後戦闘になるんじゃないの?」

「あれ、知ってるんじゃないのか?」

「私が知ってるのはあっちの『メイメイ』から送られてくる手紙の情報だけ。そこに書いてあるのは貴方のことだけだから、そこまで詳しい訳じゃないわ」

「そうなのか?」

「ええ。私は全知万能な存在なんかじゃない、この世界で起こることだって知ってる訳じゃないのもの。まぁ、兆しは解るんだけどね。一応観測も出来るけど」

ありゃ、意外。
何でも知ってるもんだと思ってた。しかし兆しやら観測ってなんやんねん。

「平行世界なんて言うけど、よっぽどの事がない限り接触なんてまずしないわ。『レックス』と『ウィル』の入れ替わりがあって特別に共界線を介して繋がりがあるの。この世界からしてみれば『貴方』の元居た『世界』は未来に当たるわけだしね。他の世界の情報、仮の未来をそう簡単には漏らせない」

それほど「俺」と「ウィル」の入れ替わりの件は緊急時だったってことか。
珍事に巻き込まれたのを喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか………。
間違いなく言えることは『ウィル』の方が確実に不幸だということだけだな。

「アリーゼちゃんのこともそれで知ったのよん」

「へぇー………って待て貴様。それじゃあ、さっきの手紙は………」

「にゃはははははっ!」

「てめっ!!?」

見せろ!ていうかよこせっ!!

「はいはい、そんなことよりヴァルゼルドでしょう。その為に此処に来たんだから」

「………覚えてろよ」

ジト目で睨んでいたメイメイさんから視線を外し、ヴァルゼルドに目を向ける。
頭部には光は灯っておらず、沈黙を貫いている。

「で、どうだったのよ、貴方の時は?」

「『レックス』の時は確かに戦った。……おーい。起きろ、ヴァルゼルド」

「やっぱり戦うんじゃない……」

「アホか。こんな無防備な姿を晒してるんだ、即効にケリをつけるに決まってるだろう」

「……えっ?」

ぎょっ、と俺を見詰めるメイメイさんを尻目に、ヴァルゼルドが起動するのを見詰める。
やがて起動音と共にカメラアイが発光。通常の緑の灯ではなく、そこは赤に染まっていた。
手に持ったサモナイト石を用いて召喚、「ナックルキティ」を呼び出す。

『……………』

「起きたか、ヴァルゼルド?もし寝惚けてるようなら俺の必殺フィストが光って唸って輝き叫ぶぞ?」

無言で立ち上がるヴァルゼルド。
腰に手を伸ばし、マウントしている銃を装着する。メイメイさんが「ちょっと!?」とかなんとか慌てふためいてるが流す。

俺は既に憑依召喚「ファイトだにゃー」を発動。ふざけた名前ではあるが、強化術式の中では最上の効果を発揮したりする。
ナックルキティが俺の体に憑依し、深緑の光――獣属性の魔力が身を包み込んだ。


『…………弾幕展k「チェストォッ!!!」グボオッッ!!?!?』


銃を構え、不穏な発言かました瞬間、俺は魔力パンチを炸裂させた。


容赦のない一撃はヴァルゼルドの装甲に突き刺さり、ボディをくの字に折れ曲げさせ後ろのガラクタ山へぶっ飛ばした。
ぶち当たった衝撃でガラガラと音を立てて崩れるガラクタ山。埋まるヴァルゼルド。顔を引き攣らせるメイメイさん。そして、追撃の為に腰を低く構える俺。

埋もれる体を強引に動かしガラクタを退けるヴァルゼルド。
半身が起き上がり、その無防備な姿を晒した。
深緑の輝きが俺の脚に集まり収束する―――必殺である。


「『アルディラ』直伝!!」


地を閃光の如く駆け抜け、跳び、そして―――



「脳漿を、ブチまけろっ!!!」



―――ヴァルゼルドにシャイニング・ウィザードかました。


『づあぁあああぁぁあああああああぁアアアアァアアアアアアアッッ!!!?!?!!??!』


「ちょい!!?」


「ミャミャーッ!!!」


派手に吹き飛ぶヴァルゼルド。
何回転も転がり、時にはもんどり返って突き進む。
頂部に必殺を叩き込まれたヴァルゼルドは遠心力を帯びそう簡単には止まらない。スクラップを舞い上げ尚吹き飛んでいく。

ザザーッならぬズギャーッと鉄板と擦れ合った音を立ちあげて、ヴァルゼルドは完全に停止した。




『す、みませんっ………教官、殿……っ』

謝罪するヴァルゼルド。ぶっちゃけ何も被害は被ってはいない。
ヴァルゼルドの今の体勢はさなぎが横を向いて倒れている感じになっている。投げ出されている腕が哀愁を誘う。ちなみに頭陥没してる。
どちらかというと此方の方が申し訳ない立場である。どうでもいいが。

『不覚で………あります…。適応に失敗して……暴走を………本当に…すみません……っ』

「もういいよ!解ったから!!ヴァルゼルドが悪いわけじゃないって解ったから!!」

(…………よくもまぁ、抜け抜けと)

メイメイさんの突き刺さるような視線を心の壁で拒絶する。
さて、茶番はいい加減にしてさっさと行動に移そう。また暴走してもらっても困る。

「ヴァルゼルド」

『………は、い』

「お前俺の護衛獣にするから」

『……………はっ?』









「新たななる誓約のもとにウィルがここに望む―――」


「天地万象……星命流転……百邪万静……破邪龍声……」


「―――今ここに、護衛獣の誓約を交わさん―――」


「王命に於いて疾く、為したまえ!」


2人の韻が終わりを告げると同時に、陣から光が立ち昇る。
メイメイさんが準備したサプレスの魔方陣とシルターンの呪言で編まれたそれは中心――ヴァルゼルドの周りで一際強い輝きを放ち、やがて消えていった。
光が静まるのと同時にサモナイト石が黒光を放ち、そして名が刻まれる。
誓約終了。これでヴァルゼルドは俺の護衛獣となった。

あの後色々騒ぐヴァルゼルドを鉄拳で黙らせた。ヴァルゼルドを中心に陣を作成していくメイメイさんを尻目に俺はヴァルゼルドに消えんでいいと端的に説明。慌てながら成功の是非を何度も尋ねてくるヴァルゼルドをしつこいとあしらっていたが、俺も嬉しさを押し殺せず笑みを浮かべていた。
そして、儀式を執行。メイメイさんの力を借りてヴァルゼルドと護衛獣の誓約を結んだ。

「誓約の縛りで強引に暴走を抑える。………無茶苦茶なこと考えてくれるわね」

無理な注文を受けて儀式の補助に回ったメイメイさんは苦笑しながら呟く。
俺がヴァルゼルドを消えずに済む方法を思案し続け、そして考え付いたのが誓約による縛りを利用することだ。

「レックス」の時「ヤッファ」に聞いた召喚獣に課せられる誓約内容。
召喚獣に結ばれる誓約は、召喚師に反逆するのを苦痛で押さえ込む働きがある。ハイネルを素体とする核識に逆らい続けた為に、「ヤッファ」も誓約による苦痛に体を蝕まれていた。
「レックス」だった当時はとんでもないなと思うだけだったが、今はその誓約の縛りを逆手に取り、ヴァルゼルドの暴走を抑え込む為に利用したのだ。

メイメイさんの言う通り無茶苦茶、というか穴だらけな方法だ。
誓約の縛りは絶対的なものではなく、力の強い召喚獣はこれを抵抗ないし跳ね退けることが出来る。「ヤッファ」が遺跡の意志に逆らい続けていたようことからそれは明らかだ。
また、ヴァルゼルドを苦痛で抑えようにもそもそも痛覚がないので効くのかどうか怪しい所ではある。
まず普通に誓約を結んでも思惑通りにいかないだろう。

そこで、これらの不安要素を取り除く為にメイメイさんに頑張ってもらう。
俺がメイメイさんの「お礼」として要求したのは誓約条件の改変と補強。俺が護衛獣誓約を実行する傍らでその補助を頼んだのである。
誓約の縛りを暴走を事前に押さえ込むリミッター代わりにし、その効果の度を上昇させる。ヴァルゼルドが暴走しようならリミッターと化した誓約が反応して、ヴァルゼルドを正常な状態に無理矢理戻す心算だ。

メイメイさんがそれを可能であるのかがネックだったが………まぁ、このへべれけは無限回廊なる扉を出現させたり平行世界と連絡を取り合えるバンコクビックリショーの塊である。そこまで不安はなかった。誓約した真名を改名する術も扱える所から、召喚術や誓約方面にも精通していることに見当がついていたし。

メイメイさんの協力のおかげで儀式は成功。ヴァルゼルドは消えずに済んだ。
今回ばかりはへべれけ様々である。



「貴方がテコや他の護衛獣と契りを交わさなかったのも、まさかこのため?」

「ああ。譲るわけにはいかなかった」

「なんとまぁ………」

この方法を思いついた時、もう俺の護衛獣は決まっていた。
沈黙してしまったたった1人の『部下』。力になりたいとそう願い、自らの意思で消えた『ポンコツ兵士』。
同じ末路だけは辿らないと、そう決めていた。

陣の中央に佇むヴァルゼルドの元へ向かう。
ヴァルゼルドは俺を見つめ、互いに向き合った。

「過去」からの関係は今日から新しい契りへと変わる。
主と従者。刻まれた契り。
実際はそんなカッコいいものではなく。馬鹿なことを行い、戯れ、笑う、喜びを分かち合っていく。
何の事はない有りふれたモノ。「俺」が望んで止まなかったモノ。

ヴァルゼルドは「ヴァルゼルド」ではないけれど報いようと思う。自己満足であるけれど、ヴァルゼルドに報いようとそう思う。
この絆を手放すまいと、もう二度と失わないと、そう誓う。


『よろしくお願いします、マスター!!』


「ああ」



―――よろしく、ポンコツ。







「どうでもいいけど、テコがぐれて蹲ってるわよ」

「あ」

『え゛っ』


「ミャ…」

「………あー、テコ?別に俺はお前を見捨てたとかそういうんじゃなくてだな?護衛獣の誓約も結びたくなかったとかでもなくて、なんというか、その…………な?」

「…ミュ」

「…………俺達は所謂相棒というやつで、切っても切れない熱い絆で繋がれていてだな?えーっと……」

「…」

『あ、あああ、あ、あの、せ、せせせせせ先輩?だ、だだ、大丈夫でありますか?』

「……………フシャーーーーーーーーッ!!!!!!!」

『ぶぁぁああああぁああぁああああァアアアアアァァアアアァアアアア#$%&¥%¥&#%!!!?!!?!??」




(テコが切れた……)

(前途多難ね…………)


















ウィル(レックス)

クラス (偽)生徒 〈武器〉 縦、横×剣 縦、横×杖 投(Bタイプ)×投具 〈防具〉 ローブ 軽装

Lv14  HP130 MP172 AT72 DF52 MAT88 MDF65 TEC114 LUC20 MOV3 ↑2 ↓3 召喚数3

機C 鬼C 霊C 獣B   特殊能力 ユニット召喚 ダブルアタック 隠密 待機型「魔抗」 アイテムスロー(破)

武器:ガチンコサーベル AT40 LUC5 CR20% (ブラインニードル AT38 TEC8 暗20%)

防具:empty

アクセサリ:手編みのマフラー 魅了無効 DF+5 MDF+4


8話前のウィルのパラメーター。
レベル14において遂にTEC100オーバー。ランクアップしていないにも関わらずこの数値。前世はニュータイプといった方がよっぽど真実味がある。
前回のパラメーターと比べてあまり変化はないが、本来の「ウィル」と比べてやはり全体的の能力値は高い傾向にある。LUC以外。

特殊能力に待機型「魔抗」とアイテムスロー(破)を新たに習得。
アイテムスローはジルコーダ戦でカイルにミーナシの滴を投擲した際に生まれた産物。ちなみにダメージ判定がある。ATに基づいた従来の判定が行なわれるので、回復量が半端なアイテムの場合、ダメージが上回る恐れ大。全くもって使えない。だが攻撃においてはアイテムの組み合わせによればとてつもない効果を発揮。マタタビ団子とのコンボは外道の一言に尽きる。あと清酒・龍殺し。酒ビンを投げる絵は極悪のそれである。

アクセサリには手編みのマフラーを装備。何だかんだで気に入っている様子。

暇を見つけては酒及びアイテム調達の為に島の悪行召喚獣を適度に張り倒していたりする。
単独行動なのでテコとユニット召喚は必須。ユニット召喚で呼び出される比率が高いのはぶっちぎりでライザー。召喚する度に必ず自爆をさせ相手の数を削るのに重宝している。
『コードロレイラル 反逆のライザー』近日公開。




ヴァルゼルド

クラス 機械兵士 〈武器〉 突×ドリル 射×銃 〈防具〉 装甲

Lv14  HP150 MP73 AT88 DF84 MAT51 MDF46 TEC61 LUC50 MOV3 ↑2 ↓3 召喚数1

機C   特殊能力 スペシャルボディ

武器:ネオクラシカル AT68

防具:メタルコート DF24

アクセサリ:empty


8話前のヴァルゼルドのパラメーター。
いくら攻撃を受けようが構わず高火力で相手を粉砕することを目的としたアセンブリ。「目標を容赦なく叩きつぶす」という信条を持っているとかいないとか。元来の高いDFに防具随一の鉄壁を誇る装甲を装備するので正面からの打ち合いでは敵無し。正にガチタン。でもガチタンのくせに普通に動きはスムーズ。出来そこない等とは言わせない。ていうかキャタピラ履いてない。

物理攻撃には滅茶苦茶強い一方で、召喚術にはべらぼうに弱い。どこぞのヨロイ騎士よりも弱い。お前それで生きていけるのかというくらいに貧弱。召喚術の囮など任されたら最後、塵と化す。明らかに誓約を結んだ相手を間違えている。然もあらん。
また張りつかれるとTECがあまり高くない為に横切りのいい的となり、力を思うように発揮出来ない。ガチタンの宿命か。だが浪漫(ドリル)装備すると近接は一撃必殺。パイルバンカーも真っ青である。

護衛獣になってからテコに目の仇にされている。彼に安息の二文字はない。ただ度重なるテコの襲撃に次第に、本当にちょい、免疫が付いていく。遠い未来、ねこを克服した暁には最強の機械兵士誕生の予感バリバリである。




本編とは直接関係ないが、補完の意味合いを兼ねて「レックス」の歩んだ軌跡を公開。
今回は3~4話。


朝起きて船長室に集合。カイル達が船を襲った理由を含め「剣」の説明を受ける。
無色の派閥が保管していたと聞いた辺りからオイ冗談じゃねーぞと思い始める。ヤードが全ての元凶と解り詰め寄ろうとするが、その前にアリーゼが切れてタイミングを失う。そのまま切り出せず集まりはお開きとなってしまう。
解散した後ヤードの所に向かい「剣」から怪しさ抜群の声聞こえたり何より所持していると死亡フラグ全開だからと言って返そうとする。資料にも載っていなかったレックスの発言の内容が気になったヤードは「何かまだあるかもしれないからまだ持っていて欲しい」と至極当然なことを頼む。それに対するレックスの返事は首に叩き込んだラリアット。曰く、「いい加減にしろ貴様」。マジありえねーと呟きながら、白目向いて倒れたヤードを放置した。

ソノラに釣りの許可を貰いアリーゼと共に海へ向かう。宝箱が釣れた際には自分の目を疑った。大漁の魚を持って船へ戻るとまた直ぐに会議が開かれる。
この島に人が住んでる可能性があるから探険すると言われ、これまで遭遇したはぐれの数からもこの島は異常だと悟っていたレックスは速攻で拒否。アリーゼの授業をしなければいけない、俺はこの娘の家庭教師だ、と実行する気などさらさら無かったことを抜け抜けと言ってのける。力説(行くまいと必死なだけ)するレックスの姿を見てアリーゼの好感度が増したりした。
結局カイルに強引に参加させられ、更にカイル達の言う灯りのいずれかを選ぶことになる。ヤードの言う青い灯りは置いといて、これ召喚獣の属性ではないかと堪付きカイルに一票。カイルにさすが見る目があると誉められるが、ただ鬼妖界の連中ならまだ話が通じ合うだろうと打算してのこと(鬼妖界には人間も存在する)。戦いたくないだけだった。そしてこの選択により、うんことの深い因縁を決定的なものにした。

赤い灯りの出所に向かうレックス一同。鳥居を目にした瞬間、自分の予想が間違っていなかったことを確信する。瞬時に逃走するがカイルに捕まる。
何ビビってんだよとニヤつくカイルをウザイと思いながら、はぐれに囲まれてると忠告。そしてすぐに戦闘に突入。雪女が放ってきた氷結攻撃を、まだ側にいたカイルを使って防御。粉砕するカイル。敵味方問わずその場の時が止まる。抜剣。蹴散らした。
帰ろうとしたがキュウマが現れ止められる。もう勘弁して欲しかったが、ソノラ達が相手の話を聞くべきだと言うので仕方なしに付き合う。目を覚ましたカイルにジャーマン・スープレックスをもらった。

集いの泉で島の事情を聞き普通に退散。どの護人の後も追い掛けなかった。選択肢の存在すら無かった。
夜アリーゼに説明、森が爆発、部屋に閉じこもる。カイルに見つかり連れて行かれる。ここら辺から強制参加が不動のものになる。

帝国軍の姿を見て腹が痛み出し、不調を訴えるが既にこの時点でシカトされる。目から心の汗を流しているとキュウマにどちらに味方するのかと問われる。何で俺に聞くんだよ日焼け忍者と内心愚痴りながら、助けてやるから船直すの協力しろと条件を突き付ける。人として終わっていた。
カイル達に袋叩きにされ後、戦場に放り出される。既に瀕死の状態で更に頻りに痛む胃のせいで満足に戦えない。しぶとく生き残っていたが召喚術の一斉射撃に倒れた。シャレになっていない威力(帝国召喚兵も何故か暴発したことに驚く。しかもそれにも関わらず標的に吸い込まれていった)で、素でカイル達も顔を青ざめた。1人の命が失われた………が、「剣」により復活。「■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーー!!!!!!!」とか叫びながら帝国軍を瞬殺した。
お前人間じゃねえだろとカイルに言われる。俺もそう思うと泣きながら答える。

夜会話でヤッファ出現。「花の首飾り」貰う。ヤッファの好感度上昇ではなく、逆にレックスのヤッファに対しての好感度が上がる。何でも袋叩きの光景から一部始終見守ってて気の毒に思ったらしい。「まぁ、気にすんな……」の慰めの一言が何よりも辛かった。


一夜明け、早朝。働けと強制労働させられていたらへべれけに遭遇。なんか本貰う。
船に戻り、俺は家庭教師だと口にしてしまったので仕方なしに授業を始める。給料分の働き位してみせようとはりきり、進度も早く内容も濃いスパルタ形式になる。だが自称女性のジェントルマンなので常にアリーゼに気を使う。無駄な所でハイスペックを発揮する。ついていくのに精一杯だったアリーゼだったが、レックスの手を抜こうとしない姿勢や真剣に自分と接する態度により非常に満ち足りた時間を過ごす。レックスの教えにしっかり応えようと以後勉学に超励む。スーパーアリーゼ成立フラグが立った。

マルルゥに遭遇。呼び出しに氏名されていることに何でやねんと嘆く。カイル達全員に同伴を断られ、なんかいいように利用されてると思いつつしぶしぶ集いの泉に向かった。見せ物にされると言われて思う所もあったが、マルルゥの姿に癒されまぁいいやで済ませる。集落の巡りは何の問題なく終了。アルディラとミスミの挨拶の時だけ気合いを入れた。
ちなみにラトリクスに来た際にマルルゥの目を盗んで辺りを散策。何か使える道具はないだろうかとハイエナの如く嗅ぎ回る。そしてとある区画の倉庫に侵入し、ゴムボートを発見する。監視カメラ、センサー全てをやり過ごしゴムボートを運びだした。人の為す技かと疑いたくなる程の動きだった。

集いの泉に戻り、野党討伐参加を要請される。メンドイ思ったが、どうせ直ぐにオサラバするからこれくらい引き受けてやるかと快く承諾。不自然過ぎる程の清々しい笑顔だったが、その誠実な態度に護人の好感度が上がる。これまであんまりレックスと接していなかったファリエルは普通にいい人だと思い込んだ。

翌日。昨夜からの討伐ノリノリのレックスの態度にカイル達は訝しみながらも野党の元へ向かう。ジャキーニ一家に率先して話し合いを持ちかけるレックスだったが、話が通じないと判断すると直ぐに敵の殱滅を選択。機嫌がすこぶるいいレックスは己の能力を遺憾なく発揮。その統率力、指揮能力を以てして3分で戦闘を終了させた。そんなレックスの姿を見て信用しきったキュウマ達に島の住人の一員として認められる。本人からしてみれば全くどうでもよかったが、ノリでヤッファと熱い握手を交わす。ジャキーニ一家の処分を任され、普通なら奴隷になれくらい言ってのけるが、これもどうでもいい事だったのど適当に畑仕事を命じた。
夜、島の脱出を決行。運んでおいたゴムボートにありったけの食料と水を積み島を後にした。機嫌良すぎて鼻唄かますレックスだったが、島を出て5分で嵐に見舞われる。ゴミ屑のように吹き飛ばされた。


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