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No.3907の一覧
[0] 然もないと [さもない](2010/05/22 20:06)
[1] 2話[さもない](2009/08/13 15:28)
[2] 3話[さもない](2009/01/30 21:51)
[3] サブシナリオ[さもない](2009/01/31 08:22)
[4] 4話[さもない](2009/02/13 09:01)
[5] 5話(上)[さもない](2009/02/21 16:05)
[6] 5話(下)[さもない](2008/11/21 19:13)
[7] 6話(上)[さもない](2008/11/11 17:35)
[8] サブシナリオ2[さもない](2009/02/19 10:18)
[9] 6話(下)[さもない](2008/10/19 00:38)
[10] 7話(上)[さもない](2009/02/13 13:02)
[11] 7話(下)[さもない](2008/11/11 23:25)
[12] サブシナリオ3[さもない](2008/11/03 11:55)
[13] 8話(上)[さもない](2009/04/24 20:14)
[14] 8話(中)[さもない](2008/11/22 11:28)
[15] 8話(中 その2)[さもない](2009/01/30 13:11)
[16] 8話(下)[さもない](2009/03/08 20:56)
[17] サブシナリオ4[さもない](2009/02/21 18:44)
[18] 9話(上)[さもない](2009/02/28 10:48)
[19] 9話(下)[さもない](2009/02/28 07:51)
[20] サブシナリオ5[さもない](2009/03/08 21:17)
[21] サブシナリオ6[さもない](2009/04/25 07:38)
[22] 10話(上)[さもない](2009/04/25 07:13)
[23] 10話(中)[さもない](2009/07/26 20:57)
[24] 10話(下)[さもない](2009/10/08 09:45)
[25] サブシナリオ7[さもない](2009/08/13 17:54)
[26] 11話[さもない](2009/10/02 14:58)
[27] サブシナリオ8[さもない](2010/06/04 20:00)
[28] サブシナリオ9[さもない](2010/06/04 21:20)
[30] 12話[さもない](2010/07/15 07:39)
[31] サブシナリオ10[さもない](2010/07/17 10:10)
[32] 13話(上)[さもない](2010/10/06 22:05)
[33] 13話(中)[さもない](2011/01/25 18:35)
[34] 13話(下)[さもない](2011/02/12 07:12)
[35] 14話[さもない](2011/02/12 07:11)
[36] サブシナリオ11[さもない](2011/03/27 19:27)
[37] 未完[さもない](2012/04/04 21:58)
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[3907] 7話(上)
Name: さもない◆8608f9fe ID:94a36a62 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/02/13 13:02
「…………」

「…………」

「……何ですか、これは」

「死者の群れもとい二日酔いの群れですね」

「……どうしてこんな事に」

「紅の暴君が現われました」

「……そうですか」


俺とアティさんの視界に広がる光景。ごく僅かの人数を除く島の者達の成れの果てだった。
あーとかうーとか呻き声が至る所から上がっている。デロデロの液体とか立ちこめる悪臭は意識外に置いておく。でないとやってられない。

昨日はファリエルと別れ、そのまま自室へ帰宅。この宴会場のその後は知らん。まぁ、天上天下飲ませた時点でこうなるだろうとは解ってたけど。実際俺も「へべれけ」に飲まされた時、その場で一夜明かしたし。飲んだ後の記憶が見事になかった。素で。ていうか、気分が不愉快過ぎてそれどころじゃなかった。暫くは生きるのつらいだろう。南無。

画策したのを棚に置いといて、他人事の様に辺りを見回す。カイル達は元より、イスラも地に伏している。動き見せるかなとちょい思ったが、やはり無理だったか。
ていうか、お前目覚めてからまだ一日目だぞ? もう酒飲んで………いや、飲まされたのか。へべれけに。
今更だけどごめん。クノンに怒られたら庇ってやろう。


「先生は昨日如何したんですか?」

「ええっと、一度席を外してたんですけど、戻って来て少ししてから帰りました。ちょっとついていけなかったんで。ウィル君も居なかったですし」

「賢明ですね。もし、あそこに先生も寝転がってたら僕はドン引きしてましたよ」

「はははは……。本当に良かったです…」

「ていうか、先生酒癖悪そうですよね。笑い上戸か泣き上戸か。どちらにしても最悪っぽいですが」

「勝手に決め付けないでください。あと最悪とか言わないでください。傷付きます」

「悪魔」

「尚悪いですよっ!!」

むーと怒った様な顔で睨んでくる。いや、怒ってるんだろうけど全然そう見えない。クルものがある。小動物か、あんたは。

「冗談ですよ、冗談。怒らないで下さい。……時に、先生」

「何ですか……」

「昨日、喚起の門で何があったんですか」

「っ!?」

話を変え、不意打ち。アティさんの体が強ばる。
誤魔化される訳にはいかない。悪いが包み隠さず話してもらう。

「べ、別に……」

「『剣』使っといて何もなかったなんて言わないでくださいよ?」

「!! ……な、何で」

「波動を感じました」

(は、波動……)

「知らないでいるなんて嫌です。それで何も出来ないなんてもっと嫌だ」

「ウィル君……」

「話して下さい、先生」

顔を伏せる様にして視線を下に向け、アティさんは眉尻を下げる。
沈黙が続き、やがてアティさんは真剣に俺を見据え口を開いた。




アルディラに呼び出され、喚起の門について説明され、コントロールする為に「剣」の発動を促され、断ったにも関わらず「剣」が勝手に発動。アティさんが言うにはそういう事らしい。
……思った通り。是非とも外れて欲しかった。クソッタレ、嫌な予想だけはいつも当たる。本当に腹が立つ。

煮え切らない感情を抑え込み思案する。
アルディラの目的は「キュウマ」の物と相違ないのか? 喚起の門の正常な作動、更に「剣」を用いてはぐれとなった島のみんなを元居た世界へと送還する。正常な作動は兎も角、送還の方は上手くいかないというのが俺の見解なんだが。そもそも送還云々は核織が「キュウマ」を利用する為に用いた情報だ。信憑性は欠ける。

ベイガーであるアルディラが言うのなら可能なのかもしれないが…………だが、アルディラの目的は本当にそれか?
「キュウマ」は先に仕えていた主人の言葉の為に狂気に走った。ミスミ様、スバルを鬼妖界へ返す為だ。しかし、アルディラには元居た世界に返したい人など居ない筈。護人の務めと言えばそれまでだが、危険まで冒してまで彼女がそれをやるか? あてはまらない、不自然だ。

それにアティさんの主観では、アルディラが普段と違った様に見えたと言った。正気ではない―――操られている? 核織がアルディラを人形も同然の様に操っているのか。
それとも言葉で誘導、暗示によってマインドコントロールしているのか。

前者だとしたらブチ殺す。後者だとしてもブッ潰す。どちらにせよ消す。絶対に消す。
取り合えず後者だとすれば、やはり核織本体であったハイネルが蘇るとか言って誘導しているのか。
此方の方が理由としては適当だ。恐らく、外れてはいない。……本当に胸糞が悪い。

アティさんを助けた所からファリエルは「ヤッファ」と同じ様に味方と考えていいと思う。それだけが唯一の救いだ。
はっきり言って「俺」の時よりタチが悪い。「キュウマ」の時は加減などする必要もなかったが、女性には強引な手段は取れない。取りたくない。本当にやってられない。


「どう思いますか……?」

「…………何とも言えませんが、『剣』の使用だけは今まで通り控えるべきです。誰に何と言われても。武器が担い手に害を及ぼすなんて異常通り越して終わってます。というか、武器に意識がある時点で如何かと思いますが」

「…………そうですね」

「まぁ、先生のことですからそれでも使いそうですけど」

「うっ……」

「否定してくださいよ、頼みますから……」

「……ご、ごめんなさい」

「はぁ……。兎に角、何かあったらファリエルに相談した方がいいです。きっと、何か知ってると思います。僕でも構いません。相談くらいには乗れます」

「…………」

「1人で抱え込まないで下さい。いや、切に」

「…………ありがとうございます」

「いえいえ」



向けられる笑みを苦笑で返し、この人を危険な目に合わせない様にしようと、そう誓った。
この人には笑っていて欲しいと、そう思う。





「で、如何しますか、コレ」

「ですよね……」


その誓いやら思いも呻き声と異臭によってブチ壊しだったが。

取り合えず、アルディラに連絡し、ラトリクスのみなさんに協力して各集落へ運んでもらった。作業機械が担架使って運ぶ光景はシュールの一言に尽きた。
アルディラは心底呆れ、ファリエルはなんか落ち着きがなかった。俺の行動を顧みてみんながここまで酔いつぶれたのは自分のせいではないのかと思っているのかもしれない。その通りなのだが気にしなくてよろし。



てか、まさかみんな暫く使い物にならない?







然もないと  7話(上) 「すれ違う想いは人それぞれで引っぱり合う」







「随分前にやった試験の結果ですが……」

「…………」

「ミュウ……」

「……ぎりぎり及第点、合格です!」

「ふっ、当然」

「ミャミャー!!」


みんなを運んだ後、前回怪我の為出来なかった回も含めて、今アティさんに授業をしてもらってる。
軍学校の模擬試験の様なものを結構前にやったのだが、結果は見ての通り。いや、満点普通に取れたがこの時期に満点とかおかしいからね。家庭教師雇う意味ないし。少なくとも筆記の面では必要ない。俺の場合実技なんてそれこそ必要ない。まぁ、疑われる様な墓穴は掘らんさ。今更な様な気もするが。

「それでなんですが……」

「えっ?」

「ミャミャ?」

何かまだあんの?


「頑張ったウィル君にご褒美です!」


アティさんが差し出したのは、何かを包んだ紙袋。
……………………。

「…………僕、にですか?」

「はい、ウィル君にです」

「ミャー♪」

………………マジ?

「日頃の恨みとか言って爆弾とか入ってるんじゃないですよね?」

「何でそうなるんですか!!」

「いえ、そろそろ鬱憤が溜まってるだろうから、僕を安心させておいて一気に突き落とす、趣向を凝らした方法を取ってきたのかと」

「捻くれ過ぎですウィル君!! というか自覚あるなら止めてくださいっ!!」

「やだ」

「即答!?」

にしても、いや、本当に? マジで? 嘘じゃないの?ドッキリとかじゃなくて?
し、信じられない。俺が女性から贈り物なんて。今まで貰ったことなんて……いや、あるか。「ソノラ」からお守り頂いたし、アリーゼも誕生日にペンダントくれたっけか。あん時素で泣できそうだった。嬉しすぎて。
そういえば「アレ」からもプレゼントか知らんが品貰ったな。実戦用の剣。使いやす過ぎて逆に怖かった。手渡しに来た時、終に得物持ってきやがったかと真剣に命の心配をした。黙って渡して帰ったしまったから混乱の極みだったが。呪いかかってんのかと速攻で疑ったし。

「ほ、本当に……?」

「だから、そう言ってるじゃないですかっ」

「あ、ありがとう、ございます……」

本当にマジの様だ。同じ意味の言葉を2回言ってる。落ち着け俺。
開けてもいいか尋ねて、笑顔で「どうぞ」と言われる。うわっ、素で照れる。こんなことで照れるなど、もう大人なのに何をやっているのか。小っ恥ずかしいったらありゃしない。いや、今は子供だが……。

「…………マフラー」

「ミャッ!」

「はい。スカーレルに教えて貰って何とか作ったんです。初めてなんで、あまり上手くいかなかったんですけど……」

あははは、と空笑いするアティさん。
……て、手作り!? マジでっ!?

う、嬉しい。嬉しいんだけど……こ、こうもやるせない。
何でだ、何で貴方が俺なんだっ!? 最悪だっ、理不尽だっ、理不尽過ぎる!! エルゴ許すまじっ!! 反逆するぞ、テメーッッ!!!!

荒れ狂う感情の波を必死に表に出すまいと耐え、取り合えず巻いてみる。
緑の毛糸で編まれたマフラーは俺の来ている服に合わせてか。首を包み込むそれはチクチクとくすぐったいながらも暖かい。……ヤバイ、顔熱い。

「どうですか?」

「…………あ、あったかい、です」



「―――うん、良かったです」



―――100万ドルの笑顔



「ほら、此処の夜冷えるじゃないですか。だから、ウィル君が風引かない様に…………ウィル君? ど、如何したんですか、急に倒れて? ウィ、ウィル君、ウィルくーん? ………あ、あれ?」

「にゃ?」


…………もうヤダ。この人なんとかして。



ノックアウトされる直前にへべれけの爆笑の声が聞こえた。…………コロシテヤルッ!!!













ウィル君がいきなり倒れて驚きましたが、すぐに目を覚ましてくれたので安心しました。それにしても如何して倒れちゃったんでしょう?
本人に聞いてみても「うっさい、天然」とか言われたました。うう、私が何したっていうんですか……。
顔が赤かったので、熱でもあるのかと尋ねましたが問題ないの一点張り。すぐ部屋を出て行っちゃいました。心配なので付いてきてますけど。

「平気なんですか、本当に? 無理しない方が……」

「問題ないです。ええ、問題ありませんとも。本機は正常に起動しているであります、教官殿」

……まずいかもしれません。何か変なこと口走っちゃってます。やっぱり、部屋で大人しくしてる様に止めた方が……。
しつこく言い寄ってみますが、言うこと聞いてくれません。逆に清々しい笑顔で「もう割り切ったから問題ありません。覚悟しやがれこの天然」とかまた訳の解らないこと言われますし。うぅ、ほ、本当にどうしちゃったんですか……?

クノンに診て貰いましょうと言いたくなりましたが、激しくその選択肢はやばいような気がします。取り合えず、様子を見るしかないです。

「何処へ行くんですか?」

「すぐそこの岩浜です」

「?? 釣り、ですか?」

「いえ、ちょっとやりたい事が」

何でしょう? 岩浜には何もない筈ですし。釣り以外にすることなんてあるのかな?


そういえば、ソノラ達は平気でしょうか。みんな部屋で寝てる、いえ倒れてますけど、すごく苦しそうでしたし。看病した方が良かったでしょうか? でも自業自得の様な気もしますし、普通の二日酔いとは次元が違う様な気もしましたし……。

苦しみ方が半端じゃありませんでした。どれだけお酒飲んだんでしょう。それとも夜を外で過ごしたから風邪も引いちゃったのかな? 離れちゃまずかったでしょうか。でも、そうなると島のみんなも似た様な感じになってるってことに…………不安です。本当に大丈夫かなぁ。

「先生、聞いてもいいですか?」

「あ、はい、どうぞ」

いきなり声を掛けられてびっくりです。変な顔してたんでしょうか?
でも、ウィル君どんどん先行って振り向きもしませんし、顔は見られてないと思うんですけど。

「疲れてるんですか?」

「えっ……」

「朝から何となく元気がないように見えたんで」

「…………」

……確かに、夢を見ましたけど。
あの時の夢を。アズリアに怒鳴り散らされた夢。完璧に私とアズリアの目指す物が違えた夢。
私の言ってることはただの理想で、腑抜けているとそう言われた。笑って誤魔化そうとするお前は甘すぎるって。

誰も傷付かないでいて欲しいと思う私の願いは間違っていないって言える。戦うのではなくて、言葉で相手にぶつかっていけば、ちゃんと分かり合えるって信じてる。この島でも召喚獣である彼等と解り合えたんです。私達は、解り合えるんです。
でも、此処でアズリアの夢を見るってことは、やっぱり私が自分の想いに不安を抱いてるって、そういう事なんでしょうか?

変に見えたんでしょうか、私。いつもの通り振舞ってたんですけど。動揺なんてしてなかったのに。
アズリア……今この島に居るんですよね。ウィル君に剣を振るって、あの時は話をするどころじゃなかったですけど。
ちゃんと話し合わなきゃ。戦うなんて、絶対にダメです。


「シカトですか?」

「えっ? あっ………」






ウィル君に謝って何でもないと伝えたけど、多分信じられてませんね。何か雰囲気で分かっちゃいます。ウィル君鋭いからなぁ。
如何にか信じて貰おうとそうこうしている内に、岩浜へ到着しちゃいました。しょがないので今は置いときます。

さて、ウィル君は何をするんでしょうか?


「……サモナイト石?」

「はい。誓約の儀式をします」

懐から取り出した各属性のサモナイト石を砂浜に置いて、本当に誓約の儀式を執行しようとするウィル君。
ちょ、ちょっと待って下さい。何を媒介に使う気なんですか。

「ウィ、ウィル君? 一体何を使って……」

「先生のマフラーに決まってるじゃないですか」

………………はいっ!?

「ええっ!? む、無理ですよっ!!」

「何でですか」

「だ、だってそれ、私が作ったただのマフラーじゃないですか……」

「誰が作ったとか関係ないです。お守りやネジ一本でも誓約出来るですから、このマフラーでも出来る筈です」

「そ、それはそうですけど、いえ、でも……」

「魔力の有無もありますけど、ようはその媒介に想いや思念が込められているかです。サモナイト石はその想いや思念に反応して召喚獣或いは道具を召喚しますから」

確かにそうなのかもしれませんが、準備がされていない術者単独の誓約の儀式は元々邪道というか何というか、いまいち信用性に欠けるというか……。家系や派閥で相伝、または帝国で伝えられる様な正式な召喚術じゃないですし。

何が出てくるか分からないだけに怖い所があって、素人は勿論一般の召喚師でも簡単に暴発しちゃいますから、そう安易にほいほいと媒介変えてやるものじゃないんですけど……。いえ、それ以前に私の編んだマフラーで誓約出来る筈ないですって。

「やっぱり、無理だと思いますけど……」

「大丈夫ですって。ほら、ここの不細工な所なんて先生が必死こいて直そうとした想いがありありじゃないですか。愛を感じますよ、愛を」

…………なんか腹立ちます。

「じゃ、『手編みのマフラー』――誓約――召喚」

「あっ」

やっちゃいました。
無のサモナイト石使ってウィル君は誓約の儀式を執行。すぐたたない内にウィル君の頭にタライが落下しました。

「ぐっ!?」

「だから言ったじゃないですか……」

「まだ一個目です。成功は失敗の積み重ねってやつですよ。……『手編みのマフラー』――誓約――召喚」

また失敗。今度はシルターンでよく見られる瓦が降ってきました。って、かわらっ!?
つつーと血を垂らしながらそれでも儀式を続けるウィル君。横から治療をして上げます。……何やってるんでしょう、私。

いい加減無駄だと分かって 欲しいんですけど……。今度はドラム缶降ってきました。しかも中身入ってます。だんだん凶悪になってる気が……。
普通はずれって比較的軽い物降ってきません?こんな致命傷になりうる物降ってくるんですか? ウィル君だから? いえ、まさかそんな……。

「この前も思ったんですけど、ウィル君、召喚術も誓約の儀式も発動時間がすごい短いですよね……」

「前の先生に召喚術教えてもらったあと、手当たり次第こうやって誓約の儀式してましたからね。ほぼ我流です」

「……よく暴発しませんでしたね」

「身近な道具ばかりでしたからね。怪しげなアイテムじゃない限りとんでもない物は出てこないですよ」

それはそうですけど、でもやっぱり民間人が召喚術を行使するだけでも危ないんですよ? 何だかそこら辺解ってなさそうです。
いえ、そもそも我流でここまで発動時間が短くなるんでしょうか? 回数をこなしただけで? というか詠唱省略してませんか、ウィル君? 何だかおかしいです……


「あっ、出来た」

「だから、もういい加減にって、ええええええええええええええええぇぇっ!!?」













誓約の儀式を終えて島を放浪する。
自分の作ったマフラーで儀式が成功したのがよほど信じられなかったのか、アティさんはまだ呆然としている。だから、そういうもんなんだって。国や派閥連中の言うこと、型に囚われすぎ。お堅い奴等の言うことなど適当に流してもっと自由に考えた方がいいですよ? 危険なのは確かだけど。
それにしても………

「集落で、ここまで人の生きてる気配がしないってのは不気味通りこして恐ろしいな……」

風雷の里で暫くほっつき歩くが本当に誰もいない。民家に近付いても漂う異臭がそれ以上の接近を許してくれない。やりすぎたか……。
ミスミ様の所行っても無駄だろうな、これは。

「なんかホラーですね、人っ子1人居ないなんて」

「……でも、本当に冗談になってないですよ、これは」


いや、全く。








狭間の領域 異鏡の水場



「あっ、フレイズさんは無事だったんですね」

湖の辺でファリエルとフレイズに遭遇。霊界のみんなはさすがに平気だろうとのことで来た。まぁ、元々昼間の内は此処の住人達は姿を現さないのだが。
アティさんの言葉にフレイズは苦笑している。そりゃあするだろうな。あの惨劇を目撃しているだけに。無事という言葉は的を得ている。
フレイズとアティさんが話している傍らで、俺とファリエルも言葉を交わす。

「よ、良かったんでしょうか? 何だか……」

「ファリエルが気にすることない。元凶はあのへべれけだ」

「で、でも……」

「でもも何もない。ファリエルはみんなと話しただけだろ?」

「…………はい」

「あういう場所は後先のこと考えずに楽しめればいいんだから。あれで良かったんだよ」

「……そう、ですね。すごく、楽しかった」

分かってくれたか。俺が勝手にやったことなので、ファリエルに気を使わせたくないのだ。頼むから尾を引かないでくれ。じゃないと俺の方が心苦しい。

「ウィル」

「ん?」

「本当に、ありがとう」

頭を下げるファリエル。ちなみに鎧解いてます。
やがて姿勢を戻す。ファリエルは微笑んでおり、頬がほんのりと赤くまっている。ぐあっ、何だかそう改められるとこっちも照れてしまう。
自分の頬を掻きながら照れ隠しついでにそれとなく話題を変える。ちょっと真剣な話を。

「ファリエル、みんなには自分のこと言うの?」

「…………」

「みんな迎えてくれる、ファリエルを。隠す必要はもうないと思う」

「…………はい。私も、そう思います」

「じゃあ……」

「でも、まずはヤッファさんとキュウマさんに打ち明けたいと思います。昨日はああ言ってくれたけど、やっぱりみんなを騙してた罰は受けなきゃいけないと思うから」

「……そっか」

ファリエルがそう言うんなら止めない。ファリエルの気持ちの問題だし、これ以上は俺がお節介することじゃない。
まぁ、ヤッファ達がファリエルに罰を与えるなんて事はしないだろうしな、注意か戒める位だと思う。ファリエルはずっとみんなを守ってきたんだし。

「って、アルディラには伝えないの?」

「…………はい。今は、まだ…」

そっか。アルディラの様子がおかしいのか。
確かに不用意に事を起こして刺激を与えるのは危険かもしれない。

「分かった。ファリエルがそうしたいんならそれでいいと思う。でも良かったね、ファリエル」

「うん。ウィルの、おかげだよ……」

「僕はみんなを酔い潰す様にしただけだよ」

「そんなことないですよ!! そんなこと…………ない」

そう言ってファリエルは顔を赤くしながら俯ける。霊体なのに耳まで赤い。
いやー、なんていうか……本当に初々しいなぁ、ファリエル。頭撫でたくなる。まぁ本当に良かった、ファリエルが笑ってくれる様になって。こんな姿見れただけでもやった甲斐があった。

「…………ウィ、ウィル!」

「は、はいっ」

「こ、今度は、私がウィルの力になりますからっ。困ったことがあったら何でも言ってください!!」

「え、ああ、うん、分かった」

そ、そんな力まなくても。
だけど本当にいい娘だ、ファリエル。健気すぎる。アリーゼもそうだったけど霊属性の人っていい娘多いかもしんない。……いや、アレは例外だよ? 娘じゃねぇし。


その後アティさんとフレイズも加わって談笑。フレイズがアルミネのことを強く語っていた。お前言うこと本当に女のことしかないな。
ずばずばとクサイこと言うフレイズを呆れつつも羨ましいと思いながら、暫くしてから此処を後にした。









ラトリクス 補給ドッグ



「クノン?」

「おはようございます、アティ様、ウィル」

ラトリクス。外出しようとしているクノンを見つけた。
珍しいとアティさんが話しかけクノンに色々と聞いている。何でもアルディラの免疫力低下を防ぐ云々、兎に角ワクチンを作り上げる為に原料を採取しに行くとのこと。
アティさんが眉間に皺寄せて?を頭に浮かべている。この人機械とかになると途端に頭弱くなるな。抜けてる発言もよくかますし。村から出てきた当初はさぞ帝国は衝撃的だったことだろう。容易に予想出来てしまう。

確かこの後は、ジルコーダの生き残り出てくるんだっけ? クノン1人で行ったのを助けたんだったよな。
今回も恐らくそういう展開になる筈。危険と分かっていて1人で行かせる訳には行くまい。付いていこう。

「必要ありません」

「まぁ、少しくらいは役に「立ちません」……」

……何か滅茶苦茶拒否られてる。聞く耳もってない。
アティさんが手伝うと言った時と扱いが全然違う。むしろ来んな的なオーラを出してる。あれー? なしてー?

「……もしかして、クノン、怒ってる?」

「私が、何故、如何して、何を理由にして、怒りを感じていると言うのですか? 私はフラーゼンです。そのような感情を持つことはありえません。無責任な事を言わないでください」

「ク、クノン……?」

(普通に怒ってんじゃねーか……)

アティさん汗垂らしてるし。
あー、クノンに嘘ついたことだよなぁ、やっぱ。アルディラは手を回してくれたんだろうけど、クノンは解ってるんだろうな。ていうか俺がアルディラを利用したと思っているかもしれない。うわー、最低じゃん、俺。解ってはいたけど救えない。ホント救えない。

勝手に凹んでいる間にクノンは先へ行ってしまったようだった。再起動を果たしら既にいなくなってるし。
むっ、不味い。追わねば。

「先生、僕はクノンを追います」

「じゃあ、私も一緒に」

「いえ、僕1人で行かしてください。クノン、僕に対して怒ってるみたいなんで。2人でちゃんと話し合ってきちんと解決したいんです」

「……分かりました。確かにそれだったら私はお邪魔ですね」

「すいません」

「いえ、気にしないでください。その代わり、ちゃんとクノンと仲直りするんですよ?」

「はい」

「じゃあ、いってらっしゃい」

「いってきます。ああ、先生」

「何ですか?」

「僕とクノンは炭鉱へ行きます。炭鉱です。あの薄気味悪い炭鉱です。訳解んない蟲が一杯出てきた炭鉱です」

「は、はい。わ、解ってますけど……」

「炭鉱ですよ、炭鉱。その名を心に刻み付けて下さい。具体的にはもし僕達に危険が迫ってきていたらすぐみんなと一緒に駆け付けられる位にその名を覚えていて下さい」

「ウィ、ウィル君?」

「では、今度こそいってきます」

これだけ言えば大丈夫だろう。アティさんまでついて来たらもしもの援軍も望めないからな。よし、さっさとクノンを追いかけよう。



「……何だったんでしょうか、一体」











んで



「クノーン」

「帰ってください」

「話聞いてくださーい」

「必要ありません。帰ってください」

「いや、本当にお願いしますからお話を―――」

「嫌です」

「ぐはっ!!?」

なんかもう絶対領域な壁並みに拒絶されてる。強力過ぎて中和さえも出来ない。もっと僕に優しくしてよ……!!

炭鉱内に既に入り、ずんずんと奥へ進むクノンの後を追う。ていうか歩くの速い! そこまで嫌われてしまったのか、俺は!?
クノンを必死に追いながら辺りの気配を探る。今の所は蟲の気配は感じられない。奥の開けた空間に居るのか? 正直さっさと遭遇して、そこで引き返し改めて討伐という感じにもっていきたいのだが。

「クノン待って! 素で待って!!」

「付いて来ないでください。ウィルが居ても邪魔になるだけです」

「邪魔とかそんな悲しいこと言わないで欲しいな!?」

「邪魔です」

「話聞いてーーーーっ!!?」

お話とかそういうレベルじゃねぇ! 超強力な絶対領域!! 正に結界かっ!?
待ってよクノン!? ていうかホントそっち行っちゃダメー!!?

そして遂に終点の教義もとい炭鉱空洞にたどり着いてしまった白衣の天使。阻止できんかったー。
空洞内に入った瞬間ぴたっと足を止めるクノン。気付いたようだ。もう気配なんてもう探る必要なんてない。しこたまいる。
クノンは空洞一帯に視線を巡らせている。赤外線ってやつか? 俺には薄暗くてそこまで奥は見えない。

「クノン不味い、ジルコーダが居る。戻ろう、数が多過ぎる」

「…………」

やっと言うこと聞いてくれた…………って、前進っ!!?

「ちょっ、クノン!?」

「私はアルディラ様の元へワクチンの原料を持っていかなければいけません」

「んなっ!?」

原料奥の方にあるんだろう!? 状況を考えろよ、状況を!!

「今すぐじゃなくてもいいだろっ!? 一度戻って先生達と一緒に……!」

「1分1秒でも早く、アルディラ様の元に届けます」

「それでもし届けられなくなったら如何するんだ! 意味ないだろ、って行くなーーーーっ!? 話聞けぇーーーーーーーーー!!?」


融通利かないにも程がある! あーもう、畜生っ!!




クノンは後を追うがジルコーダと遭遇しない。クノンがジルコーダの居ない道を選んだのか。
いや正確には居るのか。障害物と段差を利用して接近させない様にしている。俺達を見つけて興奮しているのか、動きが単調になっている。確かにこれなら奥へは行けるかもしれない。だけど、包囲されたら帰り道の保障なんて何処にもない。解ってんのか、そこっ。

クノンの辿った道と敵の気配、それと勘で俺もジルコーダに遭遇せずに最奥へと到着。
既にクノンは原料とやらの回収に入っている。

「何でこうなるかなぁ……」

背を向けるクノンの後ろで愚痴る。振り返れば此方を見詰めている何対もの眼。
数えるのが馬鹿らしくなってくる。振り切って突破しようとしてもいずれ捕まるな、これは。

「私は帰る様に再三に渡って忠告しましたが」

「はいそうですね。付いて来た僕が悪いです」

「…………」

押し黙るクノン。俺があっさりと認めたのを訝しんでいるのか。ぶっちゃけ、唯の皮肉だが。
サモナイト石を取り出し、「ライザー」を召喚。これでねこも入れれば味方は4。
ねこは俺と契約はしているがいつも共にいるのでユニット召喚には含まれない。故に俺は準備さえ出来ていれば常に2匹の召喚獣を引き連れる形に持っていける。結構セコイが、まぁ「剣」程反則ではないだろう。


「何故ですか?」

「何が?」

「何故付いて来たのですか? ウィルは引き返す事が出来ました。此処に踏み入った時点でもウィルは引き返そうと言っていました。なのに如何して?」

「それで僕だけが1人で逃げてクノンを1人危険に晒すって? 冗談でしょ、全然笑えない」

「私はフラーゼンです。心配する必要は皆無です。無意味です」

「クノン、次それ言ったら殴る」

「………………」

「来るよ」


左方から2。右方から3。向かってくる進度から左方に狙いを付けガチンコサーベルを抜く。
クノンの言葉に腹が立った。何より、あの入り口の地点で戻ってアティさん達を呼びに行こうと一瞬でも考えた自分に腹が立った。
救えない。本当に救えない。収まることのない憤りを抱えつつ、俺は剣を振るった。









「ライザー。右前方に招雷。ねこはそのまま突撃」

「Bi!!」

「ミャミャーッ!!」

「『ドリトル』」

ライザーから発せられた雷が一体の蟲を焼き、ねこが三匹からなる群れへと突進。それを喰らった一匹は他を巻き込んで叩き飛ばされる。
俺はねこに飛ばされた蟲達にドリトルをけしかけ粉砕させた。

「はっ!!」

クノンが鋭い刺突を繰り出す。長い槍は蟲の射程距離外からそいつの頭部を貫いた。

「っ!」

「ミャ!?」

だが、その背後から新しい蟲がクノンへ突き進んでいる。そして、孤立したねこに周囲から蟲達が群がっていた。
クノンは槍が伸びきり、更に絶えた蟲の頭部に刺さったまま、迎撃は不可能。ねこはもとより万策尽きている。援護も意味は為さない。

当然、このまま終わる筈などないが。


「召喚・星屑の欠片」


「ねこ」を召喚。囲まれていたねこは瞬時に俺の元へ姿を現し、そしてそのまま召喚術を発動。
ねこの抱える本が開き、光が立ち昇る。

「Gyeeeeeeeeeee!!?」

クノンへ襲い掛かろうと突き進んでいた蟲に強大な岩石が落下、押し潰した。


『召喚・星屑の欠片』。
ねこの持つ魔道書からねこ自身が行使する召喚術。魔道書に載っている術のバリエーションは多く、この星屑の欠片だけでも前回使役した星光と今回の岩石で二種類の攻撃パターンがある。射程も通常の召喚術と比べ長い。難点は威力が低いことだが、魔力防御値が低い対象ならばこれで十分。当たりどころさえ見極めれば仕留められる。


「クノン! 突っ立ってないで構えて!」

「っ! 申し訳ありません」

いや、謝らんでもいいけどさ。
律儀なクノンにコメントしつつライザーとねこに指示、戦局を窺う。

倒しても倒してもキリがない。既に何匹始末した? はっきり言ってこのままだとジリ貧だ。まだ奥の方に何匹も控えている。
突破するしかないのか。だが、ギリギリの戦線を守っているのが今の状況。動いたら間違いく崩れる。それでもいずれみんなの体力と魔力が尽きるのは明白。

あと何分持つ? 10分? 5分?
こればかりは予想出来ない。敵の動き一つで消耗の度合いは変わってくる。極端な話、奥に控えている蟲が全部押し寄せてきたらそれでもう終わりだ。
くそ、本当に此処は地形の利が存在しない。全くもって使えん。

アティさん達を信じて待つか、チームワークは元より運にも任せた突破か。……どっちだ?
分の悪い賭けは嫌いではないなどとカッコつけてみる。いや、ゴメン。やっぱ怖い。痛いのは嫌だ。

「クノン!」

「何でしょうか?」

「待ちと突破、どっちがいい!」

参考までに聞いてみる。


「突破で」


即答。

いや、当然か。クノンからしてみれば。俺馬鹿?
だがまぁ、確かにじりじりとやられるのも癪か。アティさん達が来るにしても此処から進行していれば合流も早い。
まぁ、狂ったらそのまま前と後ろを挟まれて終わりだが。取り合えず左の道に進路をとればまだ全方位囲まれる心配はないか。数も見た感じ少ないし。
よし、やるか……!

「ライザー、来い!!」

「Bi!」

「自爆シークエンス起動」

「Bi!! …………Byyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!?!?!??!」

ライザーが奇音を上げる。了承しておいて叫びだした。器用なことするな、お前。
あ、クノンが吹き出した。

「起動させたらそこで待機。俺がお前を投げた2秒後に自爆しろ」

「Bi、Bbii!? Byyyyyyyyyyyy!!?」

「ああ、華々しく散れ」

「Bveeeeeeeeeeeeeeee!!!?」

恐らく抗議しているのだろうが、こっちの都合で一方的な意思疎通を行う。
俺の手のサイズにライザーが縮小して掌に収まる。ライザーは俺の顔を見て目(?)をウルウルさせ涙目らしきものを作っていた。
コイツ本当に器用だ。当たりかもしれない。ついている。

クノンが目を見開いて俺を見て固まっていた。同胞が自爆に晒される、驚かない方がおかしい。
いや、でも殺るよ俺は。


「ライザーァァアアアアッ!!飛べぇぇえええええええええええええええ!!!!!!!!」


「Byeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!?!??!!!?!」


俺の投げた赤い球体は寸分狂わず前方のジルコーダの群れへ。
そして、予定通りに2秒後―――



――――爆砕



近くにあった火薬箱巻き込んで連鎖爆発。世界が輝いた。


轟音が鳴り響く。随分と派手にブチかましてしまった。此処崩れたら如何しようと少し不安。その分かなりのジルコーダは吹き飛んだ。これなら十分行けるな。ちなみにライザーは戦闘不能とみなされ送還された。
飛びながら本物の涙を流していたライザーを賞賛しながら左の道へと進路をとる。そしてクノンの俺を見る無表情の顔が怖い。いや、でもしょうがねーじゃん。

「クノン、足を動かすっ! ライザーの特攻を無駄にするなっ!!」

「……………………」

「あーでもしなきゃ突破なんて無理DEATH!!」

「それは、そうですが、しかし……」

「いいから走れ!! 僕だって悪いことしたと思ってるんだからっ!」

「…………はい」

やっとこさ走り出すクノン。それを見届け俺も駆け出す。
そして、吹き飛んだライザーの代わりに何の躊躇いもなく『ポワソ』を召喚。反省なんて微塵もしてなかった。クノンの視線が痛い。


前方には三匹の蟲。
時間をかけたらそこで終わりだ。瞬殺する。

「ねこ、ポワソ! 左潰せ!!」

「ミャ!!」

「ピピィ!!」

「右は僕がいく!」

「………!!」

接敵。
頭突きが、剣が、槍がそれぞれジルコーダに放たれる。

ねこの頭突きが腹に突き刺さり、続いてポワソの体当たりが強襲する。
俺の翻した細剣が腕を斬り飛ばし、そして切り上げた剣を次は振り下ろす。顔面を縦に切り裂いた。
渾身の突貫。甲殻を貫いたクノンの槍は一瞬の内にその蟲の息の根を止めた。

残り2匹。内1匹は既に致命傷。
いける。クノンがねこ達の援護に向かのを視界に納め俺は確信した。このまま逃げ仰せてやる。



「――――――」



違和感。金切り声を上げる目の前の蟲を往なす。
違和感。側面を取り、横切り。腹を裂いた。
違和感。飛び散る紫の液体。発せられる叫び声。
違和感。動きが止まった隙を見逃さず、首に剣を走らせる。
違和感。首が飛び、血潮が噴水の様に勢いよく飛び散った。


違和感? 何に対しての?



――――今モ足カラ伝ワッテクル微細ナ振動――――



「―――――――――――」


違和感は最大級の警報へと変わり頭に鳴り響く。

振動。僅かだが確かに存在している。知覚出来てしまう。そして今尚それは強まっている。

いや違う。振動が強まる云々ではなく、震源その物が近付いている。

今自分達が相手をしている奴等の外観は紛れもなく―――蟻。

地中を――――



クノンの足元に、隆起。



――――掘り進んでいる!!?



「――――――――――ッッ!!!!!?」



駆ける。クノンが槍で蟲の頭を叩き割る。隆起が盛り上がっていく。


突き飛ばす。彼女の顔が驚愕に変わる。隆起は土を退けその凶悪な貌を曝けだす。


行動不能。彼女の時が止まる。魔蟲の牙が俺の腹を捉えた。



食い破られた。




「―――――ぐっ」


激痛。腹が焼けている。
吐血。鉄の味が口内を占領する。
飛ぶ。脇腹からの衝撃。宙を浮かぶ。
痛、い。


「ぁああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」


召喚。


「ト゛リ゛ト゛ル゛ッッ!!!」


痛みと衝撃で切れかかる集中力を咆哮と気力で繋ぎ止める。
目標を定め、そして放つ。


「Gyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!!?」


けたたましい音と断末魔が収まるとほぼ同じくして、俺は地面に落ちた。




「ウィルッ!!?」

「ぐっ、ごほっ………!!」

痛い……!! シャレにならんっ!!
聞いてねぇぞ、こんなのっ……!!

「毒、かよっ……!!」

亡骸と化している蟲の色は緑。間違いない。
吐き気がする。焦点がぶれる。気持ち悪い。滅茶苦茶不愉快だ。

「ウィル! 口をっ!!」

「………………!!」

差し出される飲料を飲み干す。何の解毒薬か解らないが体を襲う激痛は治まっていった。
そして傷を受けた箇所の服を裂かれ消毒、声にならない叫びを上げる俺に構わずクノンは傷にFエイドを貼った。
とんでもない速さの応急処置。恐れ入る。

「っ…………ありがと、クノン」

「まだ動いてはいけません! 安静に――」

「言ってられない。そんなこと……」

「っ!?」

取り囲まれた。俺達が前に出た関係で残りの蟲も加わってすごい数になってる。ライザーの自爆で大分減ってはいるのだが、それでも……。
体も万全じゃない。痛ぇ。ホントに不味いか?

「何故、ですか……?」

「クノン?」

「何故、私を助けたのですかっ?」

「何故って……」

「私は、フラーゼンです。人ではありません。なのにどうしてっ?」

「……理由なんてない。理屈もない。助けたかった。それだけだよ」

「………………」

人間も機械も関係ない。主人とか僕とか、主従関係なんて望んでない。
仲間なんだから。そんなもの全部関係ない。

「それに、クノン女の子じゃん。女の子に怪我なんてさせられない」

「なっ……」

「僕はそういう人間だから」

「私は……フラーゼンです。看護人形です。人間では…」

「でも女の子でしょ」

「……、………、………っ」

何か口籠もってるみたいたけど、構ってる余裕がない。前を見据え剣を構える。
やれるか? いや―――


「俺が女性を助けるのは、当たり前っ!!」


―――やるんだよ!!




「ウィル君!!」

「ウィルッ!!」

「にゃははっ、若いわね~」



轟雷


轟撃


轟爆



自分を奮い立たせた矢先に三つの破壊エナジーが蟲共を食い荒らした。



「……え、えなじっ?」


「無事ですかウィル君っ!?」

「もう平気だから!」

「急いだ甲斐があったわ~~」


「せ、先生? ファリエル? へべれけ?」

え、援軍? き、来てくれたんだ。
助かった……けど、何か萎えたな。タイミング的に。

「ていうか3人だけ?」

「みんな寝てるわよー」

「……なるほど」

天上天下で潰れてんだった。アルディラはワクチンを打つまでは行動不能だから、これが全戦力なのか。……マジかよ。

「先生にメイメイさんもひっぱられちゃってね、責任とってくださいって」

「……その割りには何もしてないな、アンタ」

「だって必要ないじゃなーい」

「…………まぁよ」

ファリエルが大剣で次々と蟲を蹴散らし、アティさんが上級召喚術を大規模に渡って炸裂させている。
数の利とか意味ねぇ。普通に2人だけでケリつくな。強過ぎだろ。

「ここ以外に蟲居たらどうするんだ?」

「フレイズが空から見て回ってるわ」

忘れてた。素で忘れてた。


既にぬかりはなし。やることなし。いや出番なし。まぁ、これで一安心とな。
しかし実際結構やばかった。もうちょいアティさん達遅かったらやられたかも。

「ウィル……」

掛けられた声に振り向くと、困った様な、悩んでいる様な、そんな子供みたいな顔しているクノンが居た。
そんな顔しているクノンが可笑しくて、俺は小さく笑う。

「さっき言ったことは本当。僕はクノンを助けたかった」

「…………」

「人間とか機械だとか関係なし。僕はクノンが怪我をしたらつらい。傷付いたら悲しい。居なくなったら寂しい」

「…………ぁ」

「無茶だって助ける。仲間なんだから」

「…………なかま」

「ん」

俺もクノンも視線を逸らさない。お互いを見詰め合う。

「理解は、出来ません。………でも―――」

彼女が目を瞑る。何かを探る様に。何かを見つけようとする様に。



「―――ウィルのその行動は、私は嫌いではないと思います」



やがて、目を開けて彼女は無垢な笑顔を浮かべた。
その瞳に穏やかな色を携えて。


「クノン。今すっごい可愛い顔してる。やっぱり正真正銘女の子だよ、クノンは」

「…………ぇ」

「鏡がないのが残念だ。クノン、自分の顔見て絶対驚くよ」

おどけて笑ってみせる。簡単にそんなクノンの顔が想像出来て可笑しくなる。
何より、「彼女」と変わることのない笑顔を浮かべるクノンが、とても嬉しかった。

「お取り込み中悪いんだけど、終わったみたいよ~」

「ん、本当だ」

アティさんとファリエルがそれぞれの武器を下ろしていた。炭鉱内に俺達以外で動く物はない。ていうか、本当に早い……。
手持ち無沙汰に酒の瓢箪を振っているメイメイさんに、手を上げ返し此方も今行くと伝える。振り返り、目を見開いているクノンに顔を向けた。
今も呆けている彼女の姿に、思わず苦笑が漏れた。

「僕達も行こう、クノン」

「あっ…………」



手を引っ張る。今の俺と変わらない大きさの手を取って引っ張る。

最初は狼狽えていたが、すぐに俺の歩調に合わせて付いてきてくれる。

またそれが嬉しくて、俺はその手を強く握った。

重なる足音も、繋がっている手も、彼女のヒンヤリと冷たい手も、全部心地良い。



やがて、彼女も同じ様に、俺の手を握り返してくれた。













「クノン、本当にもう大丈夫なんだけど」

「いけません。きちんと治療を施さなければ」

あの後炭鉱を出て、そのままクノンに手を引っ張られてリペアセンターに連れてこられた。
クノン本人がやってくれた応急処置のおかげで別段問題ないのだが、クノンはこの通り聞いてくれない。まぁ、こうなった以上素直に言うことを聞いておこう。

「そういえばクノン、アルディラの方はいいの? 一分一秒でも早く届けるって言ってたじゃないか」

「――――――――」

腹部に押し当てられているクノンの手が止まる。クノン自身も俺の言葉に固まってしまった。え、何、忘れてたの?
動きを止めたクノンだったが暫くしてからまた治療を再開した。

「…………私は、フラーゼンです。本来の私の存在意義は生物の治療です。……ですので、ウィルを優先しました」

「そっか」

何かまだ少し堅いが、それでもが柔軟になっていきているので喜ばしい。この調子なら大丈夫かな。
要領良く手を動かすクノンの顔を見てそう思った。

会話が途切れクノンがする治療の音だけが残る。決して気まずい沈黙ではなかったが、取り敢えず何か話題を探す。
沢山コミニケーションとった方がいいしな。あっ、そうだ………

「クノン、ごめん」

「何の件について言っているのでしょうか?」

「昨日クノンの言いつけ聞かなかったこと。さっきまでそれで怒ってたでしょ」

「…………」

「分かってたと思うけど、あれ嘘でさ、みんなと一緒に戦ってた。アルディラにも口裏合わせるよう頼んでそれを誤魔化そうとしたし。だから、ごめん」

再び沈黙。クノンは何も言わない。先程と同じ様に治療だけが続けられる。
怒らせてしまっただろうか。でも、謝らないままでいるのは何か違っている様な気がする。何より、俺のことで真剣に怒ってくれたクノンに失礼だと思う。ここでちゃんと許して貰うべきだ。

やがて治療が全て終わる。傷口の上のガーゼを包帯で固定してクノンは立ち上がった。

「フラーゼンとして、ウィルのした行動は許せる物ではありません。アルディラ様の手を煩わせたことも含めて」

「………」

「厳重注意、したい所ですが……」

そこでクノンは言葉を切る。少しの間を開けてクノンは口を開いた。

「ウィルの嘘は、先程私に言った様に、アルディラ様達を守る為に吐いたのですか?」

「……うん、まぁ、そうなる」

「……でしたら、私はウィルを許します」

「クノン……」

「機械の身である私ですが、それはきっと間違いではないと、そう思います」

「………………ありがとう、クノン」


許してくれたことも、クノンの言葉も、その言葉に帯びている柔らかさも、全部嬉しかった。

クノンは気付いているだろうか。今この時も自分が変わりつつあることを。感情を抱いているということを。
顔を、綻ばしているということを。


―――ああ、堪らなく嬉しい。


「ウィル」

「何?」

「助けてくれて、ありがとう」




微笑んでいる彼女は、やっぱり綺麗だった。















あったま、痛い……。最悪。昨日何あったんだっけ。
全く覚えてないんだけど。

確か、スバル君達に解放された後、ソノラと一緒に会話弾ませてたら…………酒臭漂わせる紅いのが、気持ち悪い笑みで迫ってきて…………。
あ、頭が割れる。思い出すのやめよう。拒絶反応出てる。


頭痛と怠さを抱え、それに耐えながら天を仰ぐ。
今居る森の中で私の周囲だけがぽっかりと穴を開けて、月と星の光が差し込んでいた。
大きくて透き通って見える月はとても雄大で、ちりばめらている星々はそれぞれが煌めいている。



――――夜空って、こんな綺麗だったんだ。



空を見上げるのを止め、視線を元に戻す。

感傷? 馬鹿々しい、何を今更。

くだらない思考を打ち切ってこんな所に来た目的を実行する。
思ったより前回と間空いちゃったな。何か色々口煩いこと言われそう。気が進まないなぁ。
気怠く思いながらも首元に付いてるペンダントの一つを外す。
さて、お仕事しますか。


「―――――ッ」


ペンダントを口に近付け声を出そうとしたその時だった。背後から気配がしたのは。
直ぐ様ペンダントを戻し動揺を抑え込む。

気配? こんな近くに? 気付かなかったの? 私が?

鋭敏になっている私の感覚に引っ掛からなかった。
アサシンにも背後を取られることなんて今までなかったのに。それをっ……!!


背後の存在に緊張を悟られない様に体を落ち着ける。自然体で、それでも警戒を怠らない。
体調が起因しているのか、それとも油断していたのか。自分以上の刺客という可能性を必死に否定しつつ、私はゆっくりと振り向いた。

木の群れから姿を現したそれは夜の光を浴びて顔が顕わになる。

そこに居たのは―――


「…………ウィル?」


―――憎からず思っていた、あの少年だった。





「何やってんの、イスラ」

「………ぇ、ぁ、あれ? わ、私、どうして?」

最初は本当に素で反応し、後はそれを利用して演技をする。
頭はまだ混乱しているけれど、それはおくびにも出さない。今は此処を誤魔化さなくては。

「えっと……あれ? 何で、こんな所に、私……」

「……………寝惚けてんの?」

「…………多分」

結構馬鹿なこと言ってるよ、私。幾らなんでも苦し過ぎる。頭まだ上手く動いてないみたい。
ていうか、ウィル滅茶苦茶引いてるんだけど。すごく哀れんだ目を向けられてる。く、屈辱……っ!!

「………夢遊病患ってたの?」

「…………い、いや、そんな覚えないんだけど…」

「…………………………」

…………何か腹立つ。あの死んで腐った魚みたいな目向けられると腹立つっ……!!!
絶対アレ可哀相な人生送ってるとかそういうこと考えてるよっ……!!

「可哀相な人生送ってるな、お前」

「ちょっと待って!? 心読んだでしょ!? 絶対読んだでしょっ!!?」

「今の僕を見て誰もが感じる考えを口にしただけデスよ」

「何よ、それっ!!?」

人の心勝手に誘導しないでよっ!? 道化かっ、君は!?
お、落ち着いて私っ。これは不味い。このペースはマズイ。目の前の存在に主導権握られるのは限りなくまずいっ……!!

「じゃあ、夢遊病持ちで痴呆が現在進行形で促進している可哀相なイスラ君は病院に行きましょうか」

「変なレッテル貼り捲くるなーーーーーーーっ!!!?」

「事実じゃん」

「違うっ!! 私は夢遊病にも痴呆にもなってないっ!!!」

「絶対?」

「確実っ!!!」

「真人間?」

「当然っ!!!」


「じゃあ、如何して此処に居るの?」


「あ゛…………」

「更にツッコませてもらうと真人間のイスラ君は此処で何をしているの?」

「………………」

「何も覚えてないの撤回するのね?」


…………道化なんかじゃない。
今私の目の前にいるムカつく程に澄ました顔をしているコレはっ……!!!


狸だっ……!!!!


確かにこの時、私は目の前の存在に丸い耳とムジナも顔負けの尻尾が生えているのを知覚した。

尻尾左右に振ってるし……っ!!!






「つまり、如何にもならない体の調子を夜風に当たって紛らわせようとしたと?」

「はい……」

「そんで調子乗って森に入ったら迷って出れなくなって無様に彷徨っていたと?」

「はいっ……!!」

「へー、ふーん、そう」

誤魔化す為には恥を晒すしかなかったとはいえ、これはっ……!!
物言い1つ1つが本当に神経を逆なでするっ!! ていうか、信じてないしっ!! 前とそっくりそのままっ!!
本当に屈辱だよっ……!!!

「まぁ、我輩は貴方がラトリクスを出て真っ直ぐ此処に来たのを目撃している訳ですが」

バタッと四つんばいになる。
嵌められたっ……!!

「知ってて何でこんな回りくどいことするの……!!」

「茶番」

二文字ッ……!!!






「…………で、そうやって私の茶番劇ご覧になった性悪の貴方は一体何がご用件ですかっ?」

負け惜しみで皮肉を効かせる。こうなったら絶対に口割らないからっ……!!

「いやぁ、こんな茶番が目的だったので用件なんてそんな大それた物は御座いませんよ」

殺していいかなっ……?

「まぁ、冗談はこれ位にして、はい」

「えっ? わっ、っと……これって」

召魔の、水晶?

「借り物返しに来た」

「…………別に、こんなの、返してくれなくたって」



「イスラが自分の手で手に入れた物だろ」



「―――――――――――――」



「それはイスラだけの物だ。間違っても僕がぶん取っていい物じゃない」

「………………私の?」

「そう、イスラの」

「………………」

「用はそんだけ」

「………き、聞かないの?」

「何を」

「……私が、何をしようとしてたのか」

「聞かない」

「ど、如何して?」

「どうせしょうもない事だろ」

「………………」



――――あたり







「ねぇ、ウィル。一緒に帰ろ」

「いいけど」

「じゃ、いこっ」

「…………」



手を引っ張る。私と大して変わらない小さな手を取って引っ張る。

最初は為すがされるままだったけど、すぐに私の歩調に合わせてくれる。

なんだかそれがただ嬉しくて、私はその手を強く握る。

重なる足音。繋がっている手。暖かい掌。全部が全部、心地良い。



すぐに、同じ様にして、私の手を握り返してくれた。





似てるんだよ、ウィル。

私達似てるんだよ。

嘘吐きで、捻くれてて、素直じゃなくて。

やることも、考えることも、全部。

似てるんだよ。


ただ、ウィルの方が私より素直だね。

いや、違うか。

我侭なのか、ウィルは。

それだけで、こんなにも違う。

それだけで、私とこんなにも違っちゃう。


羨ましいよ。

とても、羨ましい。

妬んじゃうくらいに、羨ましい。

羨ましいよ。





「ウィルー。私さぁ、今もまだ体調悪い訳さー」

「で?」

「おんぶしてー」

「僕を押し潰す気か貴様」

「女の子に重いだとか言うのタブーとか教わらなかったのかな君は?」

「重いなんて僕は一言も言ってない。ていうか短剣出すのやめろ。あと何処に隠し持っていたお前」

「企業秘密かな~」

「僕じゃなかったら取り押さえれてるぞ」

「ウィルは私は取り押さえないんだ?」

「いや、普通に勝てないし」

「そういう時はさぁ、俺はお前を傷付けないとか、そういうカッコイイこと言わなきゃダメじゃん」

「善処するよ」

「期待してます」

「いいのか?」

「何が?」

「用事」

「んー、如何でもよくなっちゃった」

「さいで」

「さいです」







大事にするよ。

私の手で、手に入れた物。

誰かに与えられた物なんかじゃない、私の力で手に得れた、私だけの物。

私の最初の宝物。

大事にするよ。



ありがとう、ウィル。


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