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No.38949の一覧
[0] 天使のギタリスト~羽を受け継ぐ者~[はなも](2013/11/27 07:23)
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[38949] 天使のギタリスト~羽を受け継ぐ者~
Name: はなも◆7391c9c8 ID:98c2c70e
Date: 2013/11/27 07:23




……後10分……いや5分……
毎度訪れる至福の時間…… 
しかし、一歩間違うと最悪の時間に変ってしまうのだ。

プロローグ1.



「ああぁぁ、もう!サイアクダァァ」
唐突ですまないが、今私は猛烈な勢いで自転車を漕いでいる。 
遅刻しそうなのだ……いや……既に遅刻……か。
住宅の路地を猛スピードで必死に漕ぐ……漕ぐ……漕ぐ。
商店街にようやく出た私は、なびくスカートをおさえる事もせず 
立ち漕ぎで必死にペダルを漕ぐ。
普段ならスカートを手で押さえ優雅に挨拶など交わしつつマッタリのんびり通学するのだが……
これでは、スカート履いてないのと一緒かもしれない。
風でスカートがなびく度に……通行人の視線が熱い……けど……今日はそれどころではない。
もう……出血大サービス物である。
こんなことなら、もう少し可愛いパンツとか履くべきだった……
……期末テストの初日。
まさかまさかの寝坊&大遅刻。
ワールドカップなんか見なきゃよかった。おまけに、ボロ負け……もう最悪だ。
そんなことを考えながら、商店街を抜けた私は近道をするため裏道を通ることにした。
この裏道が急な下り坂になっていてかなりのスピードが出る。
ここで時間短縮を試みる。
上手くいけば二時限目には間に合うはずだ。
「ああ、一時限目の数学完璧だったのにぃ。くっそーー」
猛スピードで下る私は大声を張り上げながら必死に立ち漕ぎ。
「うわわわわわわぁ」
おそらく、4.50キロは出ている自転車の前で、一匹の猫が優雅に日向ぼっこしているではないか。
慌てて急ブレーキをかけるのだが……
自転車って、かなりスピードを出してる時に前輪ブレーキかけるのは危険だったりする。
ものの見事に前輪ブレーキ全開でかけた私は当然……
「ひょえぇぇぇぇ」
ジャックナイフ。
後輪を持ち上げるテクニック……
だが私は素人、そのまま自転車から放り出されて民家のブロック塀を棒高跳びの選手が如く飛び越えていく。ふと、空に視線が行く……雲ひとつない晴天。
こんないい天気に、私は一体何をやっているのか……そして、何か深い水溜りのようなところに背中から飛び込む。
激しい水飛沫、そして虹が浮かび上がった。
「うう、ちべたいぃ」
塀を飛び越え私は民家の池に飛び込んでしまっていた。
体中ビッショビショ、パンツの中までずぶ濡れ、おまけに……頭の上で鯉が跳ねている……
「土曜の朝っぱらから凄いもん飛んできちゃったなぁ。」
ふと、民家の縁側を見ると座布団にすわりお抹茶を飲んでいた一人の青年がギターを抱えてこちらをまじまじと見ていた。
「え?土曜……」
私は頭が真っ白になった。
「はい、土曜日ですねぇ。」
抱えていたギターを縁側にそっと置き、お抹茶をすすりつつ、青年はゆっくりとした口調でそう答えた。
「……期末試験……学校……」
ずぶ濡れのまま、そう呟くと青年は間髪いれずにこう答えた。
「今日って休みなんじゃない?」
私は余りの恥ずかしさと悔しさで涙が溢れ出してきた。
「ふえええええええええん。」
こみ上げてきた物が大爆発、大声で泣きまくってしまった。
私の頭には、まだ鯉が乗っかってピチピチ跳ねている。
「わわ、どうしたの!」
この状況を把握し切れていない青年は未だ池で泣き喚いている私の前で
おろおろあたふたするのだった。
しかし、今思えばこれは運命の出会いだったのかもしれない。
神様の悪戯、とはまさにこの事だったのである。

プロローグ.2

期末試験……誰もが嫌がる毎度の行事。
この日の為に、皆一生懸命無駄な徹夜等をする。
かく言う私もその一人だった。
「おわったぁぁ」
私は机にとっぷして、使いまくった頭の熱を机の表面で冷ます。
一応これで全教科終わった。
……ふふふ……
これで後は夏休みを指折り数えるだけである。
「ねぇ、優子は何処かに旅行行くの?」
同じクラスの相棒、康子が私の頭をなでなでしながら夏休みの計画を聞いてくる。
だが、これといって何にも計画立ててなかった。
「ウーン、まだ何にも決めてないけど」
私は机から、むくりと起き上がり鉛筆をくわえつつ今後のプランをどうするか
考える。
「だったらさ、バイトしない?近くのライブハウスでバイト募集してんのよ」
バイトねぇ……お小遣い欲しいなぁ……でも……
「めんどくさぁい」
そう一言言うと、康子は呆れたかをしつつ私の頭を撫でながらこう答えた。
「バイト料高いし、カッコイイ男の子もいっぱいいるよぉ」
なんですとぉ、カッコイイ男……バイト料一杯……
「やる、やります。やらせてぇぇ」
私は右手を選手宣誓が如く高々と上げる。
じゃあ決まりねと康子は軽くウインクし紹介状を書いてくれた。
それと、地図を渡される。
この地図に書かれてるところに、紹介状を持っていけばいいらしい。
早速放課後目的地に向かう……のだが。
先日の大アクシデントで今、自転車が無い。
ああ、思い出したくも無いあの忌々しいアクシデント。
恥ずかしすぎて誰にも言えるはずも無く、心の奥底に封印することを決意したのだが。
取り合えず地図どおりに商店街を抜けて裏道に入っていく……
「ウソ……」
地図に書いてある、目的地……先日私が派手なダイビングを決めたあの民家であった。
私は玄関先で悩んだのだが……恐らくあの青年が関係者なのだろう。
実はあの後青年になだめられお風呂までお借りしたのだが……
私がバスタイムを堪能している時によりによって私の着ていた服を洗濯しだしたのだ。
流石に下着まで洗われるのはまずいと思って……とっさにドアを開けたんだけど……
その時に、バスタオルが外れて……
この青年に全て晒してしまったのである。
その後、青年は鼻血を出してぶっ倒れるは、洗濯機はぶっ壊れるはで散々だったのだ。
「うん、止めにしよう」
私は手のひらをポンと打ちくるりとひるがえし帰宅する事に。
一歩踏み出したところで玄関のドアが開いた。
「お客さんですか?」
私は声のするほうを振り返り顔面完熟トマト化してしまった。
「あ……」
青年も同じく真っ赤になり顔をうつむかせ無言になる。
あれ……ちょっとちょっと……
私の手が勝手に動く……そして私の意思とは関係なく紹介状を彼に差し出していた。

プロローグ3.

「うぶぶぅっうぶっうぶぶぶぶぶぶぅ」
またまた唐突ですまないが、放課後のだーれもいない教室で今、私は下唇を思いっきりつままれている。
「ちょっと、麻美止めなさい。つぶれちゃうじゃない!」
麻美はしぶしぶ私の大事な下唇から手を離す。
「ふえええええええええん。痛いよ、酷いよう」
さて、何故私がこういう仕打ちを受けているのか説明せねばいけないだろう。
実は昨日と先日の、あの封印すべきアクシデントを康子と、もう一人の相棒
麻美に赤裸々話したのだ。
二人は私の話に血相を変えてしまったのだ。
実は例の私の全てを見てしまった青年はライブハウスの社長兼超売れっ子のインディーズギタリストだったのだ。
女性ファンもかなりいるらしいのだが、そんなこと私が知るはずもない。
「ううぅ、私の雄二様に肌を見せるなんてありえないぃぃ。」
麻美は、両手を握り締めぶんぶん振り回し悔しがっている。
うう……そんな事言われても見せたくて見せたんじゃないもん……
私は康子に宥められながら、たらこ唇にまで腫れ上がった唇を携帯鏡で、眺めている。
「で?何処まで見られたの?」
康子の問いに私は沸騰したやかんの如く顔を熱くそして赤くする。
「まっまさか……そこも?」
康子の指先がスカートのある部分でとまった。
こくりと無言でうつむく私……多分全部見られたんだろうなぁ……
しばし沈黙……
二人とも顔を青くし、ムンクの叫び状態になっている。
「あっあんた、何考えてるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
康子は私の肩を両手でガックンガックン何度も揺らす。
くっ首がぁぁ~~~~~
「ふわぁぁぁぁぁぁぁ、やめてぇぇぇぇ~目がぁ目が回るぅ~」
だーれもいない教室に私の悲鳴がこだまするのであった。

七月二十五日 晴れ

今日は早速例のバイトに向かう事になった。
嫌だなぁ……あまり会いたくないんだけど……
まぁ、仕方が無い……完全に不採用だと思ってたのに、まさか採用されるとは……
そんな事を考えつつ歩道を歩いていると、私の麦わら帽子に数滴水飛沫があたる。
気がつくと市民プールのフェンス沿いを歩いていた。
皆楽しそうに、真夏のひとときを堪能している。
「いいなぁ」
水着買ってたのに今年はバイトか……バイト料にいい男、釣られてしまった私が情けないよまったく。
いいもん。その代わりたっぷりとおこづかい貯めてやる。
何買おうかなぁ……前から欲しかった新型のパソコン欲しい……買えるかなぁ?
妄想にふけながら歩き続けようやく一軒のライブハウスにたどりつく。
まだ、朝十時。当然ながら開店してはいない。
バイトの内容はどうやら開店前までに掃除やステージのセッティングなど、雑用をしなくてはいけないらしい。
そんなに難しいことでは無さそうなのでバイトを引き受けたのだが……やっぱり一番問題なのが……社長に顔合わせられない事。
『あれ』さえなければなんて事はなかったのだが……はぁ。
悩みつつもドアノブに手をかける。
「あれ?」
開かない……って当然だよね。お店閉まってるわけだし。
なので数回ノックしてみる。
「はーい、ちょっと待っててね」
中から甲高い男性の声がする。どうやら『彼』ではないことに少し安心した。
そしてガチャリと鍵が開く音―――そして扉が勢いよく開き……
「お待たせー。あっ例のバイトの娘だよね? 確か」
「お世話になります」
私は深々とお辞儀をする。
扉を開けてくれた男の人は私をまじまじと見ながら
「ふぅぅぅん。君かぁ~例の娘って」
「例の? 」
何だろう? 例の娘って?
「ほら? あれだよ。 空から降ってきた」
あ、もしかしてあの事言いふらされてる……
「やっやっぱり、私帰る」
そのままクルリと反転。そのまま帰ろうとする私……だって……恥ずかしくてやってられないよ。
今年は新品の水着で泳ぎまくってやる事に決定!そうだ!そうしよう。無駄にならなかったね私の水着ちゃん。
「まぁまぁ、そう言わずにさ。 社長が首長くして待ってたんだから」
彼は私の洋服を背中からムンズと掴み中に引き込もうとする。
「嫌ぁー絶対に嫌ぁーーーー」
私は手足をバタバタ振り回し抵抗するが……はたから見たらただの駄々っ子に過ぎなかった。
「社長ー! 例の女の子来たよー。 おーい! 」
ひぃぃー呼んじゃってるよ。嫌だよ。帰るぅ。
「ふんがぁ」
私は全身全霊を込めて負けじと出口に向かうのだが……
ズルズル……
駄目だぁ。男の人にはかなわない。まるで狩で狩られた獲物のようにズルズル……シクシク。
「うわーん。お家帰るぅ」
私の悲痛な叫びがライブハウスの入り口でこだまするのであった。


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