※恨み辛みに身を任せて突貫で書きました。誤字脱字の可能性大です。※いつも通りのオリ設定てんこ盛りです。※彼氏彼女が大好きな●×がちょっとアレな事になっているかもしれません。ご容赦ください。※ダ号目標破壊作戦の後編を期待していた方、申し訳ありません。そちらはもう少々お待ちください。そんなモノ好きいるとは思えないけど。※ルイージ・ガルヴァーニ大先生、草葉のこっち側からごめんなさい。※あけましておめでとうございます。(1/3)※(1/28追記)恨み辛みに身を任せず誤字脱字修正&本文一部追加。 こちら『あさうみ2000』。見えますか、沈没船です。艦の名前は……『コンバイラ』!? あの伝説の、20世紀最後の冒険船です! 信じられない!! ――――――――回収されたブラックボックスより「ん……ぁ、駄目、提督……すぅ……ヲ級ちゃん……触手なんて入ら……すぅ……ら、らめなの電気はらめぇぇぇ、触手が如月でガルバーニしちゃうのほおおおお……ふぅ……すぅ……ぴぃ……zzz」 以上が平静26年度、一月一日深夜から一月二日早朝未明にかけて観測された、ブイン仮設要塞港基地第203艦隊所属、艦娘式睦月型駆逐艦2番艦『如月』の寝言の全てである。いったいどんな夢を見ているやら。 以上の事を踏まえて、本日はブイン島に駐在する他の面々の寝顔を見ていこうと思う。 クリスマス? 年末? 正月三箇日はお休み? ンな贅沢品、社畜にゃあ無ェよ。忌念の突貫艦これSS(のような物体)『嗚呼、栄光のブイン基地 ~ 新春初夢ショー』 戦争が終われば。 そうすれば、艦娘達は――――天龍はお役目御免で軍を退役できる。またあの頃の、元の生活に戻れる。帰ってこれる。アイツが天龍になる前の世界に帰ってこれる! 戦争は終わらせる。 俺が、俺こそが――――「なんだ井戸水中尉。そんな事をして贖罪のつもりか? お前に自罰志向があったとは、今世紀最大のジョークだな」 不意に、背後から声がした。 振り返ると同時に背後の闇にスポットライトが照明される。ライトの下には、よれよれの白衣を着た見知った顔の女が立っていた。「草餅少佐……」 その顔を見た時点で、これは夢だと自覚した。なぜならば、その話をした当時の顔ではなかったからだ。 彼女は冗談半分で受けた適性検査で、自分に軽巡洋艦『川内』との高い親和値があると判明した時点で自分の記憶と人格データを当時最新鋭だったモトコ=モデルの日の丸人ボディにコピーして、その足でクローン製造用のスープミキサーに飛び込んだのだから。『他の者にやらせる位なら自分が『ガルバーニしちゃうのほおおおおお!! ……ふぅ』とか言ってミキサーのスイッチを入れたのはお前だろう』「な……」 夢から、覚める。「何故に動物電気ィィィ!?」 何かどこかからひどい叫び声が聞こえたような気がして、井戸は布団の中から跳ね起きた。「ゆ、夢……?」 つい今しがたまで鮮明に覚えていたはずの夢は、意識の覚醒と共に急速にその輪郭をぼかして消えていった。やがて、その内容を完全に思い出せなくなった井戸はぐちゃぐちゃになっていた掛布団を綺麗に直すと再び体を突っ込んで眠りについた。「正夢にしたくねぇ……でも、どう話せばいい、ん だ か ……」 心は醒めていても肉が眠りを欲する。井戸の呟きは、すぐに寝息に取って代わられた。 古鷹が歌っていた。「あーさーだ。よあけーだー。きょうもおふとんはいれないー♪」 それも、ただ普通に歌っていたのではない。何が楽しいのか悲しいのかよく分からないような、右で笑って左で泣いているような左右非対称の表情で、壁に貼ってあった剥がれかけのミルフィーユ王国の王妃の影武者急募のポスターに視線を固定したまま、ブラインドタッチでキーボードを叩きながらである。 古鷹ただ一人だけがいる203号室に、抑揚の全く存在していない平坦な歌声だけが響いていた。「わかさーみなぎるー、艦の娘ーがー、三徹事務勤務ー。月月火水木金金ー♪」『動物電気ィィィ!?』 1サビまで歌い切ったあたりで、古鷹の目は覚めた。「…………………………………………………………………………………ふぇ?」 最初は、状況を理解できなかった。 ついさっきまで誤搬入されたアイテム類の一覧表を作成していたはずの203号室は全ての照明が落され、端末の液晶モニタから吐き出される光と、窓枠型に切り取られた月明かり以外の光は存在していなかった。 朦朧とした意識のまま周囲の闇に耳を傾けてみると、203艦隊に所属する艦娘達の寝息がすぅすぅと聞こえてきた。 モニタの中の作りかけのリストを見てみると、『送付先02:ショートランド泊地、青葉 射命丸文&犬塚研一合同写真集『弾幕なぅ』 奥村英二写真集『光の庭』 アラン・ビロッツ著『故郷は地きゅうううううううううううううううううううううううううううううううううう(以下略) で終わっていた。指先を掛けたまま寝落ちしてしまったらしかった。「……」 古鷹が寝ぼけ眼のままちゃぶ台の片隅に慎ましく鎮座していたデジタル表記の目覚まし時計の常夜針に目を向けてみる。 1月2日。午前3時30分。「……正夢?」 冗談じゃあねぇ。 正気に戻った古鷹が真っ先に思った事がそれだ。今日はもう寝よう。全力で寝よう。そしてさっき見た夢をみんなに話して悪夢の実現を全力で阻止しよう。 皆を起こさぬよう、心の中だけでそう固く決意した古鷹は、音を立てずに普段着代わりのセーラー服と下着を部屋の片隅に隠しおいてある脱衣籠の中に放り投げて寝巻に着替え、今しがたまで書類を作成していた端末の電源ボタンを押して電源を落とすと、タオルケットの中に潜り込んだ。 冷えたタオルケットの感触と、月明かりと共に窓から流れ込んでくる優しい波打ちの音に、古鷹の意識は急速に闇の中に包まれていく。 意識の最後が闇に包まれる瞬間、この世の何よりも恐るるべき事態に遭遇した。 ファイル、保存、してねぇ。 その恐怖で古鷹の意識は、覚醒してイチから書き直すよりも屈伏して惰眠を貪る事を選んだ。 書類の提出期限はあと3日。古鷹の悪夢が正夢になるまで、あとおよそ5時間弱。 ちょうどその時、203の電は手に持っていた打突式酸素魚雷(弾頭活性化済)で、執刀医のチョコレイト先生を滅多打ちにする夢を見ていた。「なのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのです(中略)なのですなのですなのですなのですなのですなのですなのですなのです!!!!!」 見開き7ページ半に渡るなのですラッシュの末、先生が『燃えるゴミは月・水・金。厳守重点で』と注意書きのされたゴミ収集車の中に叩き込まれるまで、あとしばし。 那珂ちゃんは歌って踊っていた。 それも、いつぞやの時のようにブイン島唯一の商店街の仮設ステージの上などではない。アイドルならば誰もが夢見る、帝都の国技館をまるまる借り切ってのワンマンライブだ。「みんなー! ありがとー!!」『『『урааааааааа! 那珂ちゃんурааааааааа!!』』』 会場どころか最寄駅まで入場待ちの列が出来ていたほどである。世界はとうとうこの私の魅力を理解してくれたのだ。日頃の努力が実を結んだのだ。ニワトリが鳴き出すよりも早くから毎日行っていた感謝のサイン練習一万回は無駄ではなかった。「みんな知ってるー!? 那珂ちゃんの2-4-11はねー!」「燃2弾4鋼11なのです」「え?」 スキダイスキセカイデイチバンダーリンガスキダッチャと続けようとしたその瞬間、背後からの声に遮られた。「燃2弾4鋼11なのです」 背後の暗闇にスポットライトが照明される。その小さな光の輪の中には、203の名札を胸に付けた電がいた。 しかし、その顔は普段のあどけなさを色濃く残した少女と同じとは言い難いものであった。目なんてボールペンか何かでぐりぐりと乱雑に描いた丸印みたいな感じだったし。「燃2弾4鋼11なのです」「え?」「燃2弾4鋼11なのです」「え? え?」『『『燃2! 弾4!! 鋼11!!!』』』 観客達までもが一斉に絶叫する。いつの間にか、観客達も全てがステージ上の電と同じになっていた。『『『燃2! 弾4!! 鋼11!!!』』』「や、やだ……」『『『燃2! 弾4!! 鋼11!!!』』』『『『月月! 火! 水、木金金!!!』』』「やめてよ……」 那珂ちゃんの顔から血の気が引く。口からカチカチと固い音がし始める。そしてついにはマイクを投げ捨て両の手で耳を塞いで、その場で固く目を閉じて蹲ってしまった。『『『燃2! 弾4!! 鋼11!!!』』』「やめて! その名前で私を呼ばないでよ! お願いだから!!」 心が折れて惰眠を貪る事にした古鷹と入れ替わりで夢の世界から絶叫と共に現世に帰って来た那珂ちゃんが最初にやった事は、トイレに行ってからの二度寝だった。 明日、皆にこの夢の事を話そう。そうすれば夢は夢のままで終わらせる事ができるんだ。嗚呼、アイドルとしてのイロハを教えてくれたウェスカーさんごめんなさい、夢で終わらせないって約束してたのに夢で終わらせようとしています。 那珂ちゃんの固い決意と共に、夜は更ける。 ちょうどその時、天龍はうなされていた。「んぁ……どうだ……怖いか、俺の荷電粒子砲は……や、やめろー、陸奥ー……すぅ……お前はかたつむりかー……バリアをはるなー……中、で……ぴぃ……夕張改/ZERO をかん そう、するなー……くぅ……4スロット、だから 、って 装甲も4種類て……なんだそれ……すぅ……す、ストライク・酸素魚雷・クロー…、はやめろー…ぴぃ……」 まるで意味が解らない寝言と共に、夜は更ける。「今日も紅茶が美味しいデース」 その日、かつてブイン島仮設要塞港基地の、第202艦隊の総旗艦を務めていた金剛は、日傘を突き立てたテーブルの下で午後3時のティータイムを楽しんでいた。 金剛が視線をやったその先には、高く上った太陽の日差しを反射して白銀色に輝く穏やかな海面が広がっており、波打ち際では、暁、響、龍驤、雷、電などのかつて己が指揮下にあった駆逐艦娘達が戯れていた。何、一人だけ違う? そう大差無い大きさだろうが。「嗚呼、全くだな。生きてこのような時代を迎えられるとは、正直言って思っていなかったぞ」 金剛の隣には、彼女自身が愛する旦那様こと水野中佐――――今では海軍大将だ――――が金剛とおそろいのティーカップを片手に座っていた。 カップの中身は、まだ半分くらいは残っていた。 今二人が使っているテーブルの中央に置かれた小さな古ぼけたラヂヲから、若干のノイズ交じりにアナウンサーがニュース原稿を読み上げていた。本日は深海凄艦戦争終結30周年記念であり、記念パレードの際にて赤褌締めた合衆国大統領が大気圏外から軍用コンテナでスカイダイブを決めたとかなんとか。「さすがは我が妻(翻訳鎮守府注釈:金剛の事かと推測されまする)だ。まさか全ての深海凄艦を倒してしまうとは! 俺が惚れた女だけの事はある!」「モー! ほめ過ぎデース!」 顔どころか耳まで真っ赤になった金剛が恥ずかしさを誤魔化すために紅茶のお代わりを注ぐ。一気に飲み干す。「今日も紅茶が美味しいデース。提督もいかがですカー?」「嗚呼。もちろん頂こう」 金剛の隣には、彼女自身が愛している比翼連理のダーリンこと水野中佐――――今では大元帥だ――――が金剛とおそろいのティーカップを片手に座っていた。 カップの中身は、まだいくらかは残っていた。 今二人が使っているテーブルの中央に置かれた小さな古ぼけたラヂヲから、若干のノイズ交じりにアナウンサーがニュース原稿を読み上げていた。本日は深海凄艦戦争終結70周年記念であり、記念パレードの際にて白褌締めた合衆国大統領が大気圏外からロードローラーでスカイダイブを決めたとかなんとか。 金剛が視線をやったその先には、高く上った太陽の日差しを反射して白銀色に輝く穏やかな海面が広がっており、波打ち際では、暁、響、龍驤、雷、電などのかつて己が指揮下にあった第六駆逐隊の皆が戯れていた。何、一人だけ違う? そこまで大きさには大差無かろうが。「さすがは我が妻(翻訳鎮守府注釈:金剛の事かと推測されまする)だ。まさか全ての深海凄艦を倒してしまうとはのう。ワシが惚れた女だけの事はあるってぇもんよの!」「モー! ほめ過ぎデース!」 顔どころか耳まで真っ赤になった金剛が恥ずかしさを誤魔化すために紅茶のお代わりを注ぐ。一気に飲み干す。「今日も紅茶が美味しいデース。提督もいかがで……」 金剛の隣の椅子には、誰もいなかった。 ただ、テーブルの上には金剛とおそろいの、中身が空っぽになったティーカップだけが置かれていた。 かつて彼女が唯一愛した、一人の男が使っていたものだった。 今彼女が使っているテーブルの中央に置かれた小さな古ぼけたラジヲから、若干のノイズ交じりにアナウンサーがニュース原稿を読み上げていた。本日は深海凄艦戦争終結100周年記念であり、記念パレードの際にて虹色に輝く不定形の泡状の褌を締めた合衆国大統領が大気圏外からホワイトハウスでスカイダイブを決めたとかなんとか。 ――――さすがは我が妻だ。 不意に、そんな幻聴が聞こえてきたような気がした。 もちろん、幻聴は幻聴であり、誰かがいた形跡なぞ無かった。 何の思惑もなしに金剛が視線を遠くにやる。その先には、高く上った太陽の日差しを反射して白銀色に輝く穏やかな海面が広がっており、波打ち際では、暁、響、龍驤、雷、電などのかつて己が指揮下にあった駆逐艦娘達が戯れていた。 誰も、あの頃と――――深海凄艦との生存競争を繰り広げたあの大激動の時代と、何一つ変わらない姿形をしていた。 暁も、響も、龍驤も、雷も、電も。 そして、金剛自身も。「今日も紅茶が美味しいデース」 その日、かつてブイン島仮設要塞港基地、第202艦隊の総旗艦を務めていた金剛は、日傘を突き立てた簡易のテーブルの下で午後3時のティータイムを楽しんでいた。 金剛が視線をやったその先には、高く上った太陽の日差しを反射して乾いた砂色に輝く穏やかなヒビ割れの荒野がどこまでも広がっており、その所々には、暁、響、龍驤、雷、電などのかつて己が指揮下にあった戦闘艦の、朽ちて尽きて成れ果てた姿があった。 カップを口に運ぶ。飲む。カップを下ろす。カップの中身が空になったら、テーブルの上に置かれたポッドから熱々の湯気が立つ赤い液体をなみなみと注ぐ。 ただひたすらに、機械的にそれだけを繰り返す。 ただひたすらに。もう何も考えなくてもいいように。 今彼女が使っているテーブルの中央に置かれた小さな古ぼけたラジヲから、若干のノイズ交じりにアナウンサーがニュース原稿を読み上げていた。本日は深海凄艦戦争終結10000年と2000周年記念であり、記念パレードの際にてバカには見えない褌を締めた合衆国大統領が銀河のはちぇから不正コイルでプレインズウォークを決めたとかなんとか。「紅茶は美味しいデース」 ポッドを傾ける。中身が出てこなくなった。すぐに顔から血の気が引き、指先の震えが大きくなった。「紅茶? 紅茶が……紅茶が無いとワ、私は……どうすれば……」 金剛が己を抱きしめるようにして腕を組む。「これから先、貴方が居ないこの世界で、私はどう……」『だから言ったのです。それはきっと、とても辛い、終わりの無い旅の始まりになるのです。と』 砂を被り、日光劣化しつくしたテーブルの上の赤錆びたラヂヲから、ノイズにまみれた電の声が響いてきた。第六駆逐隊はもういない。 ならばこの声は――――誰だ?『本当はあの時、金剛さんは天龍さんと一緒に、解体作業を受けるべきだったなのです』 この電が言う解体とは、圧縮保存(艦娘)状態で飛び出ている艦の艤装部分を物理的に除去して、生身の艦娘部分のみを残す。という意味だ。そうやって艤装を外した場合、艦娘はシステムから破損したファイル扱いされるため、超展開はおろか通常の展開も出来なくなるために自動的にお役御免になってシャバの世界へと解き放たれるという仕組みだ。 だが、そんなものは大本営発表でしかないという事は、試験管を出たばかりの新米金剛でも知っていた事だ。 彼女は覚えている。艤装が無い以外は自分と同じ顔、同じ姿形をした艦娘達が、次々と研究所の最奥区画へと運ばれ、あるいは自らの足で進んでいったのを。 金剛は知っている。自分たち艦娘は基本的にオリジナルのスープの一滴から培養されたクローンであるのだと。そして、そのスープの原液が足りなくなった時はどこから調達されるのかという事も。『だけど、あの天龍さんだけは特別なのです。そして、あの時の金剛さんも、多少の無茶を通せるくらいの発言力はあったのです』 淡々と、電は事実を告げる。『でも、まだ手遅れではないのです。今からでも、水野中佐の後を追うくらいは出来るなのです』「!!!」『そうなのです。“護国鬼の妻”とまで呼ばれた貴女ならば』『やめて! その名前で私を呼ばないでよ! お願いだから!!』 悪魔のような笑顔を浮かべた電の笑顔が幻視出来た。金剛の耳元に纏わりつくように囁く電に何事かを叫び、ラヂヲに掴みかかろうとした拍子に、金剛は夢から覚めた。 虚空に伸ばされた右腕は掛け布団の端っこを握りしめており、全身はじっとりと寝汗で湿っていた。己の隣で静かに寝息を立てている水野と電の他には、誰かが使い終わったトイレの水が流れる音だけが廊下から小さく響いていた。「ゆ、夢でよ良かったデース……」 心の底から安堵の溜息をついた金剛は、そのまま布団の中を這い寄って、電を挟んで水野の背中に密着するとそのまま掛け布団を掛け直した。「Goodnightデース。明日の朝、私の夢のお話をしましょうデース」 まるで親子にしか見えない三人の寝息が、202号室の中から響いてきた。 ちょうどその時、水野は井戸と対峙していた。【何故ですか、水野中佐!? 何故“彼”を逃がす! これでは戦争は終わりません、いや、終わらなくなってしまう!】 超展開した金剛と対峙する形になった天龍――――当然こちらも超展開中だ――――と一体化した井戸から、困惑と怒りに満ちた概念通信が流れ込んできた。 答えろ、さもなくば。と途中で質問を止めた井戸と天龍が大太刀状のCIWSを正眼に構えた。 対するこちらも、金剛に銘じて両拳のCIWSを起動させた。「……井戸少佐、知っているか。深海凄艦の数が激減した今、各国で燻っていた火種がまた燃え始めたのを」【突然何を……】「戦争だよ。人類対人類の。それがもう間もなく始まろうとしている」【だから何を――――】「その戦争になった時! 俺の金剛や貴様の天龍に召集令状が来ない道理など無いだろうが!!」 井戸から、衝撃に打ちのめされたかのような、強烈な概念が伝わって来た。「俺の金剛も、貴様の天龍も、有名になりすぎたんだ。本土で俺達が何て呼ばれているのか知ってるか? 平静のビッグ7だぞ? ビッグセブン」【……】「除隊していれば、とか、民間人が、だとか言うなよ? そんな道理が通用するほど戦争ってのが甘くないのは俺も貴様も身をもって知っているだろうが」【……】「だが、な。それもこの戦争が終わったらの話だ。この戦争さえ、この深海凄艦との戦いさえ永遠に続いていけば、そんな未来は絶対に来ない。金剛に人殺しをさせるような平和なんていらない。金剛が笑っていられるなら、地上を地獄にだってしてやる」【……水野中佐。俺は、俺の天龍はもう限界なんです。人間性を喪失し過ぎたんです】 古来より、人が争う理由はたった一つだけである。【次にもう一度超展開をするような大戦闘をやったら、二度と帰って来れなくなるんです。だからここで、全部の戦いにケリつけなきゃいけないんです。ここで元凶の“彼”を殺して、戦争を終わらせて、天龍を解体処分させて、それからやっと始まるんです。俺と、天龍の――――】「もう良い。もう喋るな」 ――――話が合わねぇ。 水だの宗教だの食い物だのと言った余計な不純物を取り除いていくと、人々が争う理由というのは最終的に、ただこれ一つに集約されるのである。 そして話の合わない彼、あるいは彼らを、古来より人は“敵”と呼んでいる。 それを傍観する電(名札には203とあった)は、クスクスと嘲嗤う。「電の掌の上で戦うのです。勝った方は電が全身全霊で良かったシールをくれてやるなのです」 二人が同時に駆け出した。 叫ぶ。「戦争だ! 我らにはそれが必要だ!! 金剛が人類同士の戦争の道具にされずに済むためにも!!」【戦争は終わらせる! 俺と、俺と天龍が歩む未来のために!!】 ――――二人の決意が未来を救うと信じて……! ――――ご愛読、ありがとうございました。「ご愛読ってなんじゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」 その日、ブイン島基地に所属する各艦隊の面々は、目覚まし時計や鶏よりも先に発生した、謎の大音量によって強制的に叩き起こされたという。 そしてその日の朝食時、皆が電(203)を見る目がいつもとは若干違っていたという。 本日のOKシーン。「雷ちゃんは―、何で泳ぐのんー?」『電ですけどー』『Hey,龍驤サーン。提督がベッドの上でお待ちデース! 甘く、優しく、激しく!!』『暁もいるわよ。響ちゃんも、雷ちゃんも、みんなみんなここにいるわよ』 光も届かぬ深い海の底、かつて英雄の一人だった龍驤はひとり繭の中で夢を見る。「ウチ……頑張ったんよ。もうす ぐ 帰ルカら、いっぱい褒めて~な~……」 優しい悪夢という名の鎖が、彼女をここに縛り付けているのか? 今度こそ終れ。