※ちょっと前に『君の名は』見てきました※少し前に劇場版艦これ見てきました※その二つが筆者の脳内で化学反応を起こした結果がこれです。※突貫で書いた故のやっつけクオリティ要注意。※この世界線では、艦娘はクローン量産されています。ですので、あなたや筆者の所属先の●×が必ずこうであるとは限りません。(※2017/04/11初出。同4/12、本文中の内容が、現在執筆中の話と致命的に矛盾していたため、一部修正しました) やっと目を覚ましたのね それなのに何故目を合わせようとしないのかしら ――――――――新生ショートランド泊地の『サディスト』神通改二から、仮病を使って訓練サボった黒潮へ「しかし、お前が訓練量を測り間違えるとは珍しい事もあったもんだな」「もう、言わないでください。提督。私だって反省していますから……」 新たなる最前線、新生ショートランド泊地と聞いて、当事者達以外が真っ先に思い浮かべるのは最高級の素材と最新の防犯システムで守護られ、無数の兵器でハリネズミのように武装した難攻不落の大要塞と、深謀遠慮の提督に率いられた百戦錬磨の艦娘達、そして純白の砂浜の波打ち際にずらりと並べられた無数の下駄履き――――水上機の群れ。おおかたそんなところだろう。 まぁ、大体あってる。 実際の新生ショートランド泊地の中核を成す作戦司令室と通信設備のある六角形型の本棟(という名前の南国リゾート式コテージ)を中央に置き、その周囲に艦娘の寝泊まりする艦娘寮(という名前の南国リゾート式コテージ)や入渠施設、食堂(という名前の南国リゾート式水上コテージ)と医務棟、少し距離を置いて各種兵器や艤装の開発・修理を行うごく普通の波板トタン製の工廠、更に距離を取って対爆コンクリートと重合金製の結界隔壁で鎧われた業務用エアコン完備の半地下式の弾薬保管庫、そして最後に工廠真横の海底を掘り起こして深度を確保したコンクリート製の出撃港を配置して、それぞれを本棟と連絡通路で繋げば新生ショートランド泊地の完成だ。誠に遺憾長良一般に想像されているような重厚長大な要塞なんてものは無い。 そういうのは南方海域の総司令部として機能している新生ラバウルや、有事の際の防衛拠点として期待されている、お隣の新生ブイン基地の話である。 あるのだが、その新生ブインは現在建設中である。まだ基礎工事も終わっていないようだし、完成して人がやって来るのはいつになるのだろう。 閑話休題。 ここ、新生ショートランド泊地は南方海域の攻撃拠点としての機能を期待されて――――つまりは攻勢任務を一身に引き受けて――――いるため、予算や各種リソースの大多数が艦娘や艦娘関連の各種機材資材につぎ込まれているのである。新生ブインよりも早く開通したのもこれが理由の1つである。だってアイスクリーム製造機が十台もあるのに泊地の防空機銃が12.7ミリの十丁と、個人携帯用のスティンガーミサイルしかないんだぜ。基地の防壁にいたっては島で伐採した丸太と土嚢だし。 そして現在、その工廠と出撃港の間に細く伸びている未舗装の土道を、1人の提督と1人の艦娘が並んで歩いていた。「黒潮ちゃんには悪い事をしてしまいました……口から泡を吹いて倒れた程度で入渠させるなんて、訓練教艦失格ですね」「……………………ま、まぁ、お前が逸る気持ちは俺も分かるがな。次に予定されている大規模作戦……噂話の段階だが、いよいよアイアンボトムサウンドへの再突入だそうだ」「アイアンボトムサウンド……」 神通の、見舞い用の果物籠を握る手に力が入る。 この南方海域に勤務している者らの中で、否、帝国軍人と艦娘の中でその名前を知らない者はいない。 未だに復旧作業の終わらぬ沖縄に深い破壊の爪痕を残した、黒い台風とでもいうべき深海凄艦の大群団は、まさにここからやって来たというのだから。 そして、世界で最初にひ号目標――――深海凄艦の上位存在たる姫を撃破したのが、まさにそこであるのだから。「そうだ。あのコロンバンガラ・ディフェンスラインの向こう側への強行偵察だ。我々の任務は2つ」 提督が指を立てる。「1つ。露払いのために、コロンバンガラ・ディフェンスライン周辺から敵を完全に駆逐し、次の作戦の中継地点となる旧コロンバンガラ島に物資を運び込み、仮設の飛行場を設営する事。2つ。そこを仮の攻勢拠点としてアイアンボトムサウンドへと突入し、同海域およびガダルカナル島の現状を確認する事だ」「……出撃ならば喜んで。ですが、人工衛星からの情報は欲しかったですね」「うむ。まったくだ。まさかケスラー・シンドロームで南方海域の偵察衛星だけが破壊されていたとは、何とも、まぁ」 一級戦線に格上げしたなら、ついでに新しい人工衛星も打ち上げておくれよ。と提督はぼやく。「おまけにトラックからの救援要請だ」「救援……ですか?」「ああ。何でも艦娘のMIAが頻発しているらしい。単独でいるところで、戦闘があった訳でもないのに、だそうだ」「他国の工作員の可能性は?」「痕跡ひとつ残さず、次の定時報告までの間に普通の軍艦一隻を拉致できる奴らなんぞ俺は知らん」 提督の表情が険しく鋭くなる。神通は普段通りの儚げな俯き顔のままだ。「故に、トラックにはショートランド最高戦力のお前に行ってもらう。俺も行く。その間の指揮艦代理を――――」「黒潮ちゃんです」 普段通りの儚げな俯き顔のまま即答した。「まだ訓練生扱いしてなかったけか? お前」「はい。ですが練度は十分かと。候補は他にも陽炎ちゃんと不知火ちゃんの2人がいたのですが、陽炎ちゃんは普段から駆逐の娘達のまとめ役となっていますが、アラは多いし突発的な事態には咄嗟の判断が遅れる傾向があります。不知火ちゃんは逆にアドリブでの戦闘に強いですが、全体を見て状況を把握するのが不得手です。そして黒潮ちゃんですが、戦闘能力は今の2人ほど高くないのですが、状況判断能力とアドリブでの対処能力、戦場での視野の広さがあります。事実、彼女を旗艦に据えた際の演習では、私相手に一番長く隊の皆を生き残らせていますし。他の駆逐の娘達は論外です」「……やっぱお前、訓練教艦だわ」「もう、からかわないでください」 訓練切り上げて見舞いもちゃんと来てるし。と微笑む提督から逃げる様にして神通が、辿り着いた医務室の扉に手を掛け、一瞬止まった。 部屋の那珂から何人かの笑い声がする。痙攣と同じメカニズムで起動させた神通の索敵系は、扉越しに拾ったIFFパターンと声の波長と話し方のクセから、自分の麾下艦隊所属の陽炎と不知火だと判断した。どうやらもう談笑できる程度に回復したようだ。 良かった。もう回復したのね。後遺症もなさそう。神通が心の中だけでそう安堵した。『――――しっかし、神通教官、見事に騙されてくれましたなぁ』 扉に手を掛けた神通の動きが完全に硬直まる。『黒潮~、アンタ演技上手すぎでしょ。共有ステータス表示までレッドライン表示だったじゃない。どうやったのよ? お姉ちゃんに教えなさいよ』『それは不知火も興味があります』『ああ、それは簡単な話や。そういうの装うプログラムの1つを使うたんや。最前線の部隊が、無茶苦茶な命令から『艦娘システムに重大な障害あり』って言うて逃げる時に使うんやて』「……」 神通は、果物籠を片手に、ドアの取っ手に手を掛けたまま身動きしない。すぐ背後にいた提督も、神通の出方に細心の注意を払っており、微動だにしない。『アンタ、そんなヤバイのどっから仕入れ……って、企業秘密よね。いつもの』『堪忍したってやー。この仕入れルートばっかは陽炎姉ちゃんでも教えられへんのや。代わりに、神通教官が長距離航海訓練から帰ってくる明後日までに飴ちゃん、仰山仕入れとくさかい』『不知火にも是非』『任せてーなー』 黒潮の言う『飴ちゃん』とは、この新生ショートランド泊地に所属する駆逐娘達および一部の重・軽巡娘達らの間で密かに流通している、男優ポルノ雑誌やら本物の紙巻き煙草やら洋酒やらブレインハレルヤやら有澤重工製の工具やら着替え中の提督の生写真やらの、各種御禁制の代物の暗喩である。 ――――成程。風紀委員のコイツが仕入業者(バイヤー)だったのか。 道理で尻尾もルートも掴めんはずだ。と提督は驚愕半分に納得していた。 そして神通は、うつむいたままフルフルと微かに震え出したかと思うと、手にしていた果物籠を提督に押し付けると、そのまま何処かへと走り去ってしまった。 取り残された提督が独り呟く。「……あーあ。可哀そうに」「んじゃ神通教官はまだ当分訓練中やろうけど、早い内に仕入れ、を……?」「歌?」 仮病を使ってフリーの時間を作り出した黒潮が、今月の『飴ちゃん』の仕入れに出ようとしたその矢先、医務棟の外から音楽が聞こえてきた。「これは……たしか『余の名は』というアニメ映画のイメージソングでしたね」「あー。アレ。心が入れ替わった魔王と勇者が1999年7の月に落ちて来た巨大隕石を銀河のバックスクリーンまでホームランして世界を救うとかって――――」 陽炎が最後まで言い切るよりも早く、扉が乱暴に蹴破られ、教育者がエントリーした。 両肩に大型アンプを設置し、分厚い書類の束を小脇に抱えて訓練中にしか見せない無表情のままアップテンポに歌う神通改二だ。「やっと目を、覚ましたのね♪ それなのに何故目を合わせようとしないのかしら?」 何故お前は歌うのだと聞かれれば、それは那珂ちゃんの姉だからだとしか答えようがない。きっと川内型の血筋なのだろう。「バ、バ……」「『バカな……早すぎる……!?』? これでもできるだけゆっくりとしてきたのよ♪ 心が体を追い越すのを我慢していたのよ♪」 驚愕を顔いっぱいに浮かべた黒潮の言葉の先を取って、神通が身体全体でリズムを取りながら、ベッドの上で脂汗を流しながら硬直したままの黒潮の元へとにじり寄る。 この時点で、陽炎と不知火は病室の片隅に避難しており『訓練訓練自主訓練!!』『不知火は偶然ここに来て訓練をしています。黒潮とは実際無関係です』と叫びつつもの凄い勢いで腕立て伏せをしていた。「どれから、こなそうかしら♪ 貴女がヘバってた分の追加メニュー♪ 何億、何兆回分の特訓を説明に来たんだけど、けどいざそのニヤケ面この眼に映すと♪」 神通は訓練中にしか見せない無表情のまま、小脇に抱えていたタウンページ数冊分の分厚さを持つ書類の束をベッドの横のサイドテーブルにと積み上げる。物理的にも内容的にも致死量だ。 テーブルに置かれた際にしたズドムという音から、黒潮はその事を察した。「決めた全全全部これ、片っ端からやりましょう。その腑抜けた根性鍛え直すために、やりつくしてあげる♪」 絶望のあまり黒潮が同体積の塩の柱と化す。陽炎と不知火は病室の片隅に避難しており『私って訓練大好きなフレンズなんだ!!』『訓練たーのしー!!』と叫びつつもの凄い勢いでヒンズースクワットをしていた。「君が全全全部無くなって、塵塵になったって♪ もう迷わない、また1からシゴキ直すわ。むしろ0から、また建造してみようかしら♪」 訓練中にしか見せない無表情のまま、事実上の死刑宣告を歌いながら告げると、制服の襟首を掴んで黒潮をベッドの上から引きずり出し、ついでとばかりに部屋の片隅に避難していた陽炎と不知火の2人も首根っこを掴み、やだやだまだ死にたくない悪いのは全部黒潮ひとりですやかまし陽炎姉ぇが唆したんやろがぬいは完全無欠に実際無関係ですうっさいだまれあんたが一番買い込んでたじゃないのよと泣き叫ぶ3人を難なく引きずりながら海の方へと歩み始めた。 果物籠を片手に、部屋の外で事の成り行きを見守っていた提督が呟く。「……あーあ。可哀そうに。神通の奴怒らせるなんて」『10:00:34 神通改二は超展開を実行しました。現在のシステムは、トレーニング・モードです』『10:01:04 黒潮改は超展開を実行しました。現在のシステムは、トレーニング・モードです』『10:01:06 陽炎改は超展開を実行しました。現在のシステムは、トレーニング・モードです』『10:01:06 不知火改は超展開を実行しました。現在のシステムは、トレーニング・モードです』 ここ、新生ショートランド泊地では、演習と言えば基本的に実戦形式で行われる。 もちろん、本土の鎮守府やそれなりに規模の大きい基地や警備府に設置されているような、空母娘数隻分の処理中枢にも匹敵する高速かつ大容量のシュミレーションエンジンを搭載したウォー・シュミレーターが無いわけではないのだが、当の艦娘達から言わせると『こっちに慣れると生身動かす時にすごい違和感がある』との事なので、設置されたはいいが放置され気味である。それはここに限った話でなくどこの基地や泊地、鎮守府においても同じ様な答えが返ってくる。真面目に使うのは精々がFCSの調整やプログラムのアップデート後のバグ取りの時くらいだ。 初めてこれが設置された、本土のとある鎮守府に所属していた某艦娘は設営に同行した開発スタッフに対し『で、これいつになったらゲーセンに設置されんの?』と言ったとかなんとか。このエピソードは艦娘達の間では結構有名な話であり、この事から艦娘達はこのウォー・シュミレーターの事を『ゲーセン台』という、開発元の帝国海軍兵器開発局からすれば実に屈辱的な名前で呼んでいる。 なので、演習といえば基本的に実戦形式一択にしかならず、自己ステータス設定を『訓練用・公開』に設定し、ペイント弾や模擬弾頭に換装した訓練用魚雷を腹いっぱいに飲み込み、『訓練用A』か『訓練用B』のどちらかの周波数帯に通信バンドを設定し、各艦所定の位置に着いてからシナリオ・ペーパーが各艦に送信され、状況開始となる。 ついでに言えば新生ショートランド泊地は最前線の1つである。なので、基地施設については南国リゾート感が凄まじい事になっているが、武器弾薬間宮チケットなどの物資の配給はお隣新ブインよりもかなり優遇されている。具体的には、生産数の少ないダミーハート――――提督不在でも艦娘の超展開を可能にするという、実に謎いアイテムだ――――が本番用と訓練用として、各艦にそれぞれ2つ内蔵されているくらいには。「3人とも超展開を終えたようですね……黒潮さんも既に、色々と出来るくらいに元気になったようですし。今回の訓練、私も少し(※)だけ頑張ります」(※平均的な駆逐娘にとっては致死量です)「「「……」」」「では、私は向こうで配置に着きますので、そこから状況を開始します。それではデブリーフィングで」 普段のちゃん呼びではなく、実戦の時と同じさん付けだ。殺す気だ。 そのダメ押しの絶望と、訓練開始前だからという油断から黒潮達に向けた無防備な背中が、黒潮の黒い意思に火を付けた。 黒潮が自我コマンドを入力。その内容が訓練用に公開されているステータス表示の真下にポップアップする。『10:02:01 黒潮改は12.7センチ連装砲のリロードを実行しました。設定外の弾頭です』『10:02:01 黒潮改は酸素魚雷のリロードを実行しました。設定外の弾頭です』「な……っ!? く、黒潮さん貴女――――」「死ねやクソ神通ゥゥゥ!!!!」 想定外の事態に背後を振り向いた神通の背中に、黒潮が手にしていた12.7センチ連装砲から吐き出された2発の面制圧用の有澤弾――――実弾が直撃する。 ゴースト・ウォーヘッド。 実弾演習の際に『消費した』という事にして秘匿された、あるいは風紀委員黒潮の『飴ちゃん』の1つとしてこの泊地にやって来た、員数外の弾薬である。「く、黒潮……? あなた何やって……何やってんの!?」「上官に発砲とは……黒潮、陽炎型の姉として、一人の艦娘として、見損ないましたよ!!」 黒潮がそれを持ち込んでいた事は知っていたが、今この場で狼藉を働く理由が陽炎と不知火には全く理解できなかった。大爆発こそあったものの装甲は抜けなかったらしく、神通は何事も無かったかのように立ち上がると太腿に装着した探照灯で黒潮の目を潰しながら回避行動を実行。黒潮を中心とした右へ右への円運動で背後に回り込もうとする。 驚愕の表情を浮かべたまま、黒潮をなじる陽炎と不知火に黒潮が必死の形相で叫ぶ。「今や二人とも! 今が絶好のチャンスなんや!! 今ここで教官始末すればバラ色や!! 超過訓練も居残り訓練も無い、ぱらいそ泊地の完成や!!」「「よっしゃ死ね、死ね神通!!」」 即座に手のひらを返した陽炎と不知火もまた、艦内に秘匿してあったゴースト・ウォーヘッドに換装。逃げ回る神通に対して砲と魚雷のありったけを叩き込む。「何が最前線泊地や! いつもいつも泊地の見えるとこで偵察艦隊同士の小競り合いか演習しかないやんけ! なんにあない過酷な訓練なんぞやってられるかボケェ!!」「「私も同意!!」」 身を隠す場所を求めて付近の岩礁地帯に移動していた神通の姿が水柱と爆炎に覆い隠される。この異常な状況下で忘れていたのか、点灯させたままの探照灯の光を目標にして、砲身が焼き付くまで3人が撃ち続ける。『あ、貴女達……! 貴女達って人は――――!!』 そしてとうとう、爆炎の向こう側にあった探照灯の光が破壊され、スピーカー越しの声も途絶えた。 過度の緊張から息も絶え絶えになった黒潮が叫ぶ。「……やった! やったで! ウチ大活躍や!! これで泊地の平和は守られ――――」「驚きました。まさか黒潮さん。貴女がそんな事をする子だったなんて……」「んなっ!?」 驚愕する陽炎型三姉妹。背後を振り返ると、そこには、確かに全身ススまみれで服もボロボロに立っていたが、それ以外はまるで無傷の神通がいた。 ただ、その体のどこにも探照灯も外部スピーカーもついていなかった。その二つは、先ほどまで黒潮たちが集中砲火を加え続けていた岩礁地帯、その中でも一際大きな岩柱に括りつけられていた。「カ、カワリミ・ニンポ……!?」「驚きました……まさか模擬弾演習で実弾を使うなんて……しかも合図も無視して、攻撃の寸前まで殺意をほぼ完全に隠したまま……」 何が起こったのか分からなかった三姉妹だが、己らの置かれた状況を理解し始めるのと同時に、全身を震えが襲った。歯の根が噛みあわずにカチカチ鳴り響く。視界が涙で歪み、股の間から生暖かい放熱液(意味深)が流れ出す。「貴女達の戦闘意欲と向上心と熱心さ、確かに受け取りました。この神通、未だ極め尽さぬ身なれど、全身全霊でお相手します……!!」 神通が自我コマンドを入力。その内容が訓練用に公開されているステータス表示の真下にポップアップする。『10:23:55 神通改二のメインシステムは、トレーニング・モードを終了しました』『10:23:55 神通改二のメインシステムは、戦闘モードを起動しました』「神通、行きます! 征きます!!」 本日の戦果: 抜き打ちの実弾演習を実施しました。 各種特別手当: 大形艦種撃沈手当 緊急出撃手当 國民健康保険料免除 本日の被害: 軽巡洋艦『神通改二』:健在(演習中の損傷は、計上されません) 駆逐艦『黒潮改』:健在(演習中の損傷は、計上されません) 駆逐艦『陽炎改』:健在(演習中の損傷は、計上されません) 駆逐艦『不知火改』:健在(演習中の損傷は、計上されません) 各種特別手当: 入渠ドック使用料全額免除 各種物資の最優先配給 特記事項: 黒潮改、陽炎改、不知火改は実戦出撃に足る練度と判定されました。 以上 数日後。「なぁ、最近陽炎達見てないけど、どうしたんだろ?」「本人達の強い希望でして……最前線のウェーク島泊地、そこの地獄の壁部隊に転属になりましたよ」 神通は窓の外を見て――――遠く離れたウェーク島の地を思う。 その少し離れた背後で、提督は両手を合わせて同じ方向に向かって拝む。「成仏しろよ」