目を背け、耳を塞ぎさえすれば、その心を抉られることもないだろう。
だが、それで起きた事実が無くなることは無いし、現実が変わることもない。
そして、内戦の炎で焼かれる帝国と同盟の中にあっては、
人々が幾ら目を背けようともクソったれな光景はエンドレスで再生され続ける。
耳を両手で固く抑えても、鳴りやまぬ悲鳴は鼓膜を遠慮なく揺らし続ける。
消せない罪は、癒えることのない傷を人々の心と体に刻みつける…
■上官と副官■
惑星ネプティスを始めとする四つの惑星での軍事蜂起から日を置くことなく発生した首都での軍事クーデターは
イゼルローンに住む辺境の軍閥予備軍を一時的に慌てさせ、動揺させる事には成功したが、
戦乱の日々を過ごすことになれた彼等は直ぐに再起動を果たし、
非常時を平時に戻さんと慌ただしく出兵の準備に取り掛かり始めていた。
結局のところ、作戦目標が四惑星の反乱鎮圧から、
首都を始めとする同盟領を不法に占拠するクーデター勢力の攻略に変っただけで、
イゼルローンから艦隊を率いて出兵する行動に変りは無いのだ。
この一連の動きの中で際立った手腕を発揮したのは、
天才ラインハルトの思考を完璧に読み切り、同盟での軍事クーデターの発生を予見した魔術師ヤン・ウェンリーや
原作知識によって事態をほぼ完璧に把握していた道化師ヘイン・フォン・ブジンでもなく、
第1駐留艦隊通称ヤン艦隊副司令官のフィッシャー少将と第2駐留艦隊通称ブジン艦隊副司令官のキーゼッツ少将だった。
艦隊運用に定評のある二人はネプティスの変事を耳にして以後、狼狽するヘインや相変わらずマイペースなヤンを余所に
粛々と艦隊を長征に耐えうる形に編成し直す作業を進め、短期間でそれを成し遂げた。
イゼルローンの二人の名人は完璧な仕事振り発揮してみせていた。
また、コクランの後を継いで要塞の事務方として辣腕を振るうキャゼルヌも、
帝国領侵攻作戦のような杜撰な補給計画の失敗を再現させる気はなく、
動員される人員と運用される艦艇に必要な物資を短納期で揃えて見せる。
同盟軍同士が相撃つ戦いの準備は滞ることを知らなかった。
■■
『アッテンボロー司令官代行とキーゼッツ副司令官の話では明後日には
艦隊を動かせる準備が整うそうです。第一駐留艦隊の進捗も同様です』
副官のラオ中佐から出兵の準備の状況について短く説明を受けた難攻不落の要塞の支配者は
短く頷いて見せるだけで、机に広げられた書類から目を逸らすことは無かった。
キャゼルヌの部下から提出された要塞に備蓄した物資の使用許可を求める稟議書に添付された
今回の出兵に消費されるだろう物資の桁とそれが再生産されるまでの時を記した書類を確認する作業に彼は追われていたのだ。
はっきり言えばイゼルローンの真の支配者と揶揄されるほど軍官僚としての能力に富んだ男の提出した書類からは
極微の瑕疵すら見つからない筈なのだが、
かつての師とも言える人物から『分からない書類に軽々しくサインをするな』と再三再四諫言をされたこともあって、
ヘインは自分が決済する書類に極力目を通し、理解する努力を怠らないように心掛けていた。
ただ、凡庸な軍官僚能力しか持ち合わせない男が、
巨大な要塞や何百万を超える軍の運営に関する事案を容易に理解することが出来る筈もなく、
書類の作成者に質問を重ねることで何とか大枠を理解する程度であった。
また、レベルの低い質問に何度も付き合わされる要塞事務総長付きの事務官の労力は相当な物で、
最初のころは『無能な働き者』を生んだコクランを呪詛する声を上げる者が少なからずいたのだが、
ヘインとの不毛な問答を繰り返しながら、彼でも理解できるように書類の文面や内容に変更を加えていくと
不思議なくらい分かり易い運用案に様変わりしており、使った労力に見合った成果を生むため、
ヘインでも分かる報告書の評判は次第に高まり、ヘインに対する軍官僚から評価はゆっくりと上昇していくことになる。
もっとも、そうなるまで辛抱したキャゼルヌとそうなるように仕向けたコクランの先見性に対する称賛の声のほうがずっと大きく高かったが、
「…成程、概ね内容は了解したよ。悪いな大尉、遅くまで長電話に付き合わせて
ああ、そっちの方は事務総長の了解を得ているなら先に進めてくれ、俺への説明は
途中経過の報告という形で構わない。グレストン中佐と連携を取って進めてくれよ」
結局、書類を幾ら眺めても一向に全体像を把握できなかったヘインは、
直接電話で書類を読み返しながら作成者に何度も執拗に質問を繰り返し、長時間かけて内容を把握したのだが、
その作業に没頭し過ぎたせいか、先刻、報告に訪れたラオに対する退室の許可を出すことをうっかり失念してしまう。
彼が目の前で立ちんぼ状態の副官に気がついたのは優に二時間は過ぎた後であった。
ヘインは自分の失態を慌てて詫びたが、ラオは嫌な顔一つせず謝罪の必要は無いと述べ、
一仕事を終えた上官のためにティーバッグで煎れた紅茶を用意してくれた。
「悪いな。立たせたままにした上に、お茶まで煎れて貰って」
『もういいですよ。閣下が一心不乱に職務に精励する姿を
間近で見せて頂いた見学料と考えれば安いものですから』
自分の前任者が危地に居ることを当然知っている彼は上官が何かに没頭せざるを得ない心情に置かれている事をよく理解しており、
ヘインの些細なミスに腹を立てることは無かったし、逆にそんなミスを犯してしまうほど
張りつめている彼の緊張を少しでも和らげることが副官の務めと考えていた。
ラオはアッテンボローやキーゼッツのような戦術的センスも持っておらず、E・コクドーやヴァイトのように一芸に秀でた者でもなかったが、
ヘイン・フォン・ブジンにとって欠くことの出来ない人物であり、副官として彼を長く支えていくことになる。
「中佐、久しぶりに旨い紅茶だったよ。ほんと・・、久しぶりにゆっくりした気がする」
『閣下…、御心中はお察しますが、無理は程々にして下さい
肝心肝要の時に力を発揮できなければ、無理が無駄になります』
コクランの口癖でもあった『無駄』という言葉を用いたラオの忠言に素直に謝辞を述べたヘインだったが、
その言葉とは裏腹に小心な自分が己の犯した罪から目を背けるため何かに没頭…、
いや、逃避せずにはいられないと心境に陥っていた。
肝心肝要な時に原作知識という力を発揮できず、愛する人を危地に置かせた自分の迂闊さを呪わずには居られなかった。
そして、理不尽な人事に屈して彼女を手放した自分の不甲斐無さを心底悔やんでいた。
『それでは、明日の会議前には現時点での国内情勢を纏めた資料を提出致します』
「あぁ、よろしく頼むよ。長い時間付き合わせて悪かったな」
『いえ、失礼いたします』
敢えて事務的な態度を取ってくれた副官の気遣いに感謝しながら、
顔の半分が隠れてしまうかという位に軍帽を深く被り、大きな溜息を要塞司令官の顔を窺う者は誰もいなかった。
イゼルローンの長い夜は静かに更けていく…
■素晴らしき世界■
惑星ネプティスで起きた救国軍事会議の蜂起に始まる紛争は、
救国軍事会議及び正規軍の間で激しい衝突を招き、双方に大きな犠牲を生み
最終的に惑星を制圧した救国軍事会議側も主要施設の確保が精一杯で、
他星系に対する軍事行動を実行する余力も、クーデターへの協力を呼び掛ける余裕も失っていた。
グリーンヒル大将とブロンズ中将は反乱星系を中心に、
クモの巣上に救国軍事会議の勢力を同盟領内で広げていく構想を持っていたのだが、
アンネリー・フォーク中佐率いる部隊の予想以上にしぶとい抗戦によって頓挫することとなる。
もっとも、それを為した側も相応の犠牲を払わねばならなかった。
最後まで頑迷に抵抗した正規軍は畜生以下に堕す者もあれば、死より過酷な汚辱に塗れる者もいた。
■■
『フォーク中佐、我々は唾棄すべき正規軍ウジ虫達と違い理想と信念を持って
腐敗した自由惑星同盟を再生し、帝国の専制主義を打破するため戦っている
今の貴官の心情を思えば、このような事を言うべき時ではないかましれないが
我々は一人でも多くの優秀な同志を欲しているのだ。一度よく考えて貰いたい』
「・・・・、帰って下さい。一人に、させて下さい」
ハーベイ准将率いる救国軍事会議の兵士達と激しい市街戦を繰り広げた結果、
敗れた正規軍の残兵は治療と洗浄処置を受け、ネプティス西地区の『ハイム511』に収監されていた。
その中でも少しだけ大きな個室に収監されたアンネリーの元には、彼女が覚醒して間もないにも関わらず、
ネプティスの新たな支配者層の何名かが訪れ、熱心に自分たちの勢力に鞍替えするよう説得に訪れていた。
彼等にとって彼女は多くの同胞を斃した憎き敵の首魁ではあったが、
その失われた人的資源の穴を埋めるためにも、彼女の持つ優れた能力は喉から手が出るほど欲しいものであったし、
粛清した正規兵が行った非道な仕打ちを上手く説得の際につつけば、転向させる事も不可能ではないと判断したらしい。
もっとも、深く傷つき自失に近い状態の彼女がそれに答える訳もなく、その配慮に欠ける誘いは悉く空振りに終わる。
また、救国軍事会議内でも革新的な女性主義者で知られるティージマ中尉から、軽率な行動は慎むべきと強く抗議受けることになったため、
アンネリーだけでなく、彼女に従った女性兵達に対する説得工作の継続を断念せざるを得なくなっていた。
『中佐、少しだけお話したいことがあるのですが』
「…、帰って、話したくない」
『どうしても、お伝えしなければならない事です。そのままで構いませんので
話だけ聞いてください。今朝、シンディ・フォード少尉が亡くなられました…』
格子の奥で毛布に包まり、外界との接触を少しでも断とうと涙ぐましい努力をする女性に対し、
イスン・セブノーシ少尉は酷な言葉を無慈悲に放った。彼自身、傷心の女性に辛すぎる結末を伝えるのは忍びなかった。
だが、二人が仲の良い関係だったことを聞き知っていたため、敢えて伝えることを選択したのだ。
『お二人が非常に良き上官と部下の関係であり、また、良き友人であったと
聞き及んでおります。この時期にこのような事を頼むのは心苦しくはありますが
故人のためと想いお伝えしました。明日のフォード少尉の葬儀へ出席頂けますね?』
イスンへの返答は嗚咽であった。自棄自失になって涙すら枯れたと思っていたアンネリーだったが、
僻地に左遷されたフォークの妹である自分を屈託のない笑顔で迎え、
上官の自分を姉のように慕ってくれた後輩に対し、不当な人生の結末を強いた事への悔恨と自責の念が、
壊れかけた心を更に深く抉り、枯れたはずの涙を再び頬を伝わせた。
シンディー・フォードの死因を聞き返す必要もなかった。
まだ少女のようなあどけなさを残す彼女が自分の身に突然降りかかった理不尽な仕打ちに耐えられず、己の命を断ったことは想像に難くない。
彼女の葬儀が終わった以後も、収監された被害者からは自殺者が何名か生まれ、
その結末を迎えなかった者達も自傷行為を繰り返す者や、精神的ショックから立ち直れない者も少なくなかった。
救国軍事会議側も収監した捕虜の保護に回せる人員が居なかった事も、悲劇の二次災害を生みだした原因となっていたが、
彼女達を率いて戦った指揮官の自責の念を和らげるのに何ら寄与しなかった。
アンネリーは兄によるフォーク家の汚名を晴らし、誰よりも大切な人の下に胸を張って戻るために武勲を求めて無謀な戦いを選び、
部下達を巻き込み消すことの出来ない傷を与えてしまったのだと理解していた。
シンディから数えて6人の部下が冥府へと続く門を潜ったのを見送ったアンネリー・フォーク中佐は、言葉を発することもやがて無くなり
小さな個室の片隅で蹲りながら、己の罪にゆっくりと押しつぶされていく…
■お気楽な二人■
帝国と同盟が同胞同市で殺し合いながら、毎日のように悲劇を量産していく中、
その流れと唯一無縁の場となっているフェザーン自治領は大いに活気付いていた。
反乱軍も正規軍も戦争をするなら等しく物資を大量に消費する。
それを用立てて対価をえることを生業とするフェザーン商人達は大いに利を得ていく。
そんな人の不幸や他国の有事をビジネスチャンスに変えながら大いに栄えてきたこの地には、
富だけでなく、多くの人々が集まってくる。無論、集まってくる人々全てが身ぎれいな訳もなく、
脛に傷を持つ者や後ろ暗い事情を持った者も数多くいたが、フェザーンはそのすべてを貪欲に呑み込んでいく。
彼等がこの地にとって利がある存在である限り、吐き出されることはない。
商国家フェザーンは何処よりも利に聡くドライな場所なのだから…
■■
「うわぁー、何か大通りの賑わいだけ見たら帝都よりも凄いんじゃない?」
『そうですね。ここが帝国と同盟の汗と血が最後に溜まる泉と称されるのも
納得出来ます。この分なら仕事の方も案外簡単に見つかるかもしれませんね』
無邪気に町の賑わいに驚く主を微笑ましく思いながら、
侍女は現実的な問題について想いを馳せる。帝都からフェザーンまでの逃避行でそれほど多くない路銀は底を尽き、
生活の糧を得るために何かしらの職を得る必要があったのだ。
ガイエスブルクや貴族連合の勢力圏内にまで逃げ込む事が出来ればこの種の心配に頭を悩ますことは無かったのだが、
リヒテンラーデ・ローエングラム枢軸によるオーディン宙域の封鎖の網の目はそこまで緩くなく、
実父のリッテンハイム侯に半ば見捨てられた形で逃げ遅れた彼女達は、
野心的で強欲なフェザーン商人の船に大枚叩いて乗り込み、この地に逃げ込むしかなかったのだ。
「それじゃ、まずはお仕事探しだね!私お仕事って初めてだから
ちょっと心配だけどカーセに迷惑掛けないように一生懸命頑張るね」
『お嬢様・・、大丈夫!大丈夫ですわ!このカーセに全てお任せ下さい!
天地がひっくり返ろうと何が起ころうとも、私はお嬢様のためにお仕えします!』
「あ・・、うん。ありがとうカーセ。頼りにしてるし、これからもよろしくね」
鼻血を垂らしながら興奮して自分を抱きしめる侍女に若干引きながらも、
サビーネ・リッテンハイムは温かい気持ちで心が満たされて行くのを感じていた。
自分のことをギュッと抱きしめてくれる少女が、自分の両親以上に無償の愛を注いでくれている事が痛いほど分かったのだ。
もっとも、嬉しさの余り『お姉ちゃん、ありがと』と言ってしまったのは迂闊であった。
この日、フェザーン市街では天気予報には無い血の雨が降ることになる。
■希望の船出■
宇宙暦797年4月16日、全ての準備を整えたヤン艦隊及びブジン艦隊は
イゼルローン要塞から首都ハイネセンを目指してそれぞれ出撃する。
同様に内乱状態にある帝国軍から侵攻を受ける可能性は低く、
イゼルローン要塞にはキャゼルヌと要塞防衛に必要な最小限の戦力を残すだけであった。
ちなみに、ヤン艦隊の最初の攻略目標は惑星シャンプール、ブジン艦隊は惑星ネプティスを目標としており、
他の叛乱2惑星の攻略作戦は実施しないことが、出撃前の会議で決定されていた。
これは恒星間航宙能力を持つ艦船の保有数が残りの2惑星が殆ど保有しておらず、
後方で撹乱作戦や補給の妨害を行う能力が無いと判断されたためである。
もっとも、ネプティスの場合は激しい市街戦による犠牲で他星系に繰り出すような余裕は無かったのだが、
この事実は救国軍事会議の情報管制が功を奏し、イゼルローン要塞首脳部に届いていなかった。
ただ、この情報が届いていたとしても惑星ネプティスがブジン艦隊の攻略目標から外れることは無かっただろう。
辺境の軍閥化が危惧されるイゼルローンの駐留艦隊は司令官の個人的感情によって
侵攻目標が左右されるほど既に私兵色が濃い集団と化しているのだ。
無論、その目的がアンネリー・フォークというブジン艦隊に欠かすことが出来ない存在の救出にあった事も大きく作用していたが…
■■
えっと、確かこのあとバクダッシュか何かが、ルグランジュの手先としてヤン先輩の所に潜入してきて暗殺を狙うんだったよな。
まぁ、俺のところに来たとしても即効捕まえれば余裕だし、問題無いな。
ドーリア星域で接敵する第2艦隊の戦力は多く見積もっても二万隻弱だ。
ヤン先輩の艦隊と合わせて三万二千隻を超える俺達が負ける確率は少ない。
大丈夫だ。魔術師の力を使って速攻でルグランジュ提督を凹ボッコにしてやってネプティスを解放する。
不良中年の力があれば全然余裕で何にも心配する事なんか無い。全然大丈夫だ。
『ヘイン、少しは落ち着いたらどうだ。指揮官の動揺は兵に移る』
「わっ、分かってるって、ちょっとだけ体を動かそうと思って動いてるだけだ」
『なら良いんだがね』
っち、アッテンボローの奴、ニヤニヤしやがってアンネリー助けたら目の前で思いっきりイチャイチャしてやる。
アンネリーを副官にして今度こそ絶対に自分の手元から離さねぇ。
兄貴のフォークの野郎が何だってんだ。ゴチャゴチャ言う奴はウランフの旦那に言って黙らせてやるさ。
『しかし、副官殿もそろそろ転属先か、転職先を探す必要がありそうですね』
『あぁ、転職なら小官が良いバイト先を紹介できるんで任せて下さい
ラオ中佐なら直ぐに向こうから正社員登用の申し出があると思いますよ』
「おいおい、勝手にラオ中佐を首にするなよ。中佐には参謀でもして貰うさ」
まぁ、アンネリーが戻ってきたらE・コクドーの言うように
ラオ中佐には悪いけど副官を譲って貰う心算だが、
優秀な士官を手放す訳にはいかないからな、ヴァイトに変な就職先を紹介させないようにしないとな。
『な~に心配する必要は無いぞラオ、ヘインにお前は勿体ないからな
何なら俺の副官にでもなったらどうだ?出来る奴はいつでも大歓迎だ』
『アッテンボロー中将のですか?そうですね、閣下の副官を解任されたら考えてみます』
そういや原作だとアスターテでヤンの補佐した後はアッテンボローの副官に収まってたんだっけ?
少々過激すぎるコイツの抑え役には打ってつけだし、一考の余地ありか。
まぁ、今は目前のネプティス解放とアンネリーの救出が最優先だ。
「シェーンコップ准将、とりあえず陸戦指揮の方はお任せするんでよろしく」
『任されましょう。反乱に怯える美女は閣下の花だけではありませんからな
無粋な救国軍事会議の手から、小官が必ずお救いして見せましょう』
「あぁ、期待しているよ。勿論、准将だけじゃなく他のみんなにもね」
■
司令官の期待を込めた言葉と視線に頷いた面々はそれぞれの任務を果たすために自分の仕事に取り掛かる。
嘗て副官としてチームヘインの中心的存在だったアンネリーを救出するために、彼等は持てる力を出し惜しむ気は無い。
例え、同じ自由惑星同盟軍同士で殺しあう事になったとしても、それが己の選択した道なのだから…
首都を目指して進軍を続けるヤン艦隊とブジン艦隊、
彼等を姦策によってでも打破せんとドーリア星系で必勝の信念を持って待ち構える
ルグランジュ提督率いる第2艦隊、同盟同士が相撃つ日が目前まで迫っていた。
・・・ヘイン・フォン・ブジン大将・・・銀河の小物がさらに一粒・・・・・