誰一人と死なずにワルプルギスの夜を倒した、そんなハッピーエンドを迎えた世界の、魔法少女達の物語。
「なあ、さやか。」
「何よ、杏子。」
「明日は土曜日だしさ、もし・・・良かったらで構わないんだけどさ、どっか遊びにいかねえか?」
「急に言うわね。まあ暇だから別にいいけどさ。でもあんたから誘うのは珍しいわね。言っとくけど食べ物は奢れないからね。」
杏子が遊びに誘ったのは、食べ物が目的では無かった。
数日前にさかのぼる。
「久しぶりね、あなたから相談を受けるなんて。いつぶりかしら?」
「マミならこういうこと分かるんじゃねえかなって思ってな。この際だから単刀直入に言わせてもらう。アタシ、好きな人が出来たんだ。」
マミは盛大に紅茶を吹きこぼした。
「これは大事件ね。恋の相談なんて、予想の斜め上を言ってたわ。で、どんな人を好きになったの?」
杏子は臆面なく「さやかだ。」と答えた。
マミは紅茶でむせた。
「ゴホッゴホッ。・・・思ったより重い話になりそうね。本当なの?」
「ああ、さやかのことを思うと、こう、ドキドキするんだ。頭が煮えたぎっちまいそうになる。」
杏子は顔を赤らめてうつむいていた。
「アタシにも分かるさ。これが異常だってことくらい。でも、どうしようも出来ねえ、さやかが好きで堪らねえ・・・」
マミは静かに聞いていた。
「・・・そう、ならいっそ言えばいいじゃない。私はさやかちゃんの事が好きです、って。」
杏子は顔を真っ赤にしながら答えた。
「ばっ、そ、そんなこと、出来るわけねえじゃん/////だから相談にきてんだろ!そんなに軽々しく言えたら相談してねえよ!」
そんな必死な杏子をみて、マミはある2枚の紙を差し出した。
「これはここら辺に出来たばかりのテーマパークのフリーチケットの2枚組よ。懸賞で当てたけどこれでさやかとデートして告白しちゃえばいいじゃない。私が持ってても使わないしね。」
そんなマミに対し杏子はぐうの音も出なかった。
確かに、告白してしまえば楽かも知れない。でも気持ち悪がられるかも知れない。
それでも杏子は自分の気持ちを抑えきれず、今に至る。
そして土曜日。待ち合わせの公園に杏子は10分前に着き、悶々とした時間をすごいていた。
「お待たせー。結構待った?」
「いや、全然待ってねえよ?んじゃこれから遊園地にいくぞ。・・・ほら」
杏子は2枚組のチケットのうちの1枚を差し出した。
「これってここら辺でできた新しい遊園地のチケットじゃん!・・・本当に良かったの?私とで。2枚しかないんだよね?」
「べ、別にアタシが決めたことだから、その、心配するな。」
「そ、じゃ、楽しんでいこー!」
さやかが元気はつらつと歩み出した。
杏子にはさやかの私服姿は新鮮で、その目には美しく見えた。
そのせいで杏子は自分の顔が赤く、熱くなっていくのを抑えきれなかった。
幸いさやかは後ろを向いていて、赤面した姿をさらすことにはならなかった。
数分後、2人は遊園地にたどり着いた。
「これは、相当でかいな・・・」
「遠くで見ていたけど、これほどとはね・・・」
杏子がマミから聞いた事前情報によると、県でも最高レベルの大きさを誇るらしい。
「じゃあ、早速はいるか。」と杏子。
「そだね、はいろっか。」とさやかが続く。
園内に入って杏子はさやかに「さやかは何に乗りたいんだ?」と、尋ねた。
「うーん、じゃあこれに乗ろう♪」と指差したのは特大のジェットコースターだった。
「あ、あれか・・・?」「そう!あれ!」と怖気づく杏子に対し、さやかは意気揚々としていた。
そのままの流れでジェットコースターに乗ることになった2人。
「お、おい、滅茶苦茶高くなってねえか?」
「あれぇ~、もしかして杏子、高いとこ駄目なの?」
「わ、悪かったな。そうだよ・・・」
「へぇ、杏子にも可愛いところあるじゃん♪」
「//////別に、あ、アタシは可愛い訳じゃなあああああああああああ!!!!!」
突如、コースターは落下し、急加速していく。
「いやっほおおおおおおおおおおおおい!」
「きゃああああああああああああああああ!」
前者はさやか、後者は杏子である。
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「最後の三連続回転はすごかった~!さすが県内最大級の遊園地なだけあるわ~♪」
「・・・・・・・・・・・」
「にしても杏子ってば、あんな可愛い声出るんだな?きゃあああってw」
「や、やめろ!つ、次いくぞ!」
「次はこれか・・・」「うん、これ!」またもやさやかが指差した場所は、幽霊屋敷だった。
なんでも、優秀なエキストラと脚本家が売りらしい。
おどろおどろしいスタート地点をくぐると、そこは地獄絵図だった。
「わ、私は、ゼンゼンコワクナンカナインダカラネ。」
「説得力ねーぞ、おい。」
前者がさやか、後者が杏子である。形勢逆転となる。
「ひぃい~、杏子ぉ~!」
さやかは飛び出してきたゾンビをみて、咄嗟に杏子の腕にしがみついた。
さやかの胸の柔らかさと、体温が腕から伝わってくる。
途端に杏子は顔が赤くなる。
「ちょ/////さやか////何やってんだよ////」
「いいじゃん、だって怖いし・・・・」
「う、うぅ・・・」杏子は言い返すことも出来ずに、しがみ付かせるだけしがみ付かせた。
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「ああ~怖かった・・・。」
「ったく、可愛いのはどっちだよ・・・」
「え?今なんて?」
「別になんでもねーよ!、つ、次!」
「ふぅ、もう昼時だな。」
「あ、なら私弁当作ってきたよ。さやか様の特別弁当~♪一緒に食べようよ♪」
「え、い、いいのか?これ////」
「奢りはしないけど、これくらいならいいよ。」
弁当の中身はハンバーグ、ポテトサラダ、野菜炒め、おにぎりが入っていた。
「そ、それじゃ、その////アタシに・・・・・あ、ん・・・・し・・・・て・・・・」
「え、何だって?」
「べ、別になにも!・・・ったく鈍感。」
「それじゃ、気を取り直して、」と杏子。「「頂きます。」」杏子はまずハンバーグを食べた。
(さやかの手料理・・・~~~~~///////)
「どう?おいしい?」とさやか。
(緊張して味がわからねえ/////)と内心思ったが、
「お、おう。すげえうめえよ。」
「それなら良かった♪ちょっと失敗したかなって思ったんだよねそのハンバーグw」
「さやかてめっ!」
「あははははw」
そして2人はメリーゴーランドやゴーカートに乗り、最後に観覧車に乗ることになった。
「すっかり夕方だねえ。楽しかった~。」
「おう」(告白するなら、これが最後で最大のチャンス。2人きりの個室なんて緊張しちまうが・・・!)
「なあ、さやか。さやかはアタシのこと、好き・・・?」
「うん、まあ、好きだけど?」
「違う、違うんだ。アタシ、その・・・さやかのこと、恋愛対象的な意味で、好き、なんだ・・・//////////」
「え?・・・・冗談にしてはきついよ・・・」
「冗談なんかじゃねえ、この世で一番好きなんだ、さやかが。・・・・・・・・・・気持ち悪いよな、こんな、女同士でさ。」
その時、杏子の目から大粒の雫がぽたぽたと、こぼれた。
「正直、自分でも驚いてるよ、杏子が私のこと好きって、そういう対象で見られてることが全然嫌じゃないんだ。・・・・むしろ、嬉しい、って、
思っちゃう。・・・・私たち、気持ち悪い者どうしだね・・・/////」
「ありがとう、杏子。//////私も、好き、だよ/////」
杏子はその場で泣き崩れた。さやかはそれを受け止め、2人は抱きしめあう形となった。
「なあ、さやか、キス、してもいいか////?」
「え!?・・・・・・うん//////」
2人の唇はゆっくり、少しずつ近づき、そして2つの唇は重なりあった。
初々しく、僅かな時間だったが、彼女らにとっては濃厚で、長い、甘美な時間となった。
観覧車から降りる時、2人の手はいわゆる「恋人繋ぎ」をしていた。
「お幸せにね、2人共。」とマミは物陰から呟いた。 END