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[0] 【短編/夏の怪談】「網戸の隙間」[A43枚](2013/09/03 04:33)
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[38411] 【短編/夏の怪談】「網戸の隙間」
Name: A43枚◆4222c48e ID:751ff757
Date: 2013/09/03 04:33
 これは私が去年、母方の実家に帰省した時に起きた出来事です。


 「網戸の隙間」



 高校二年生の夏休みの事です。
 私は受験などで忙しくなる前に、母の祖父母の家へと顔を出すことになりました。
祖父母の家は高知県の山奥の方にあるのですが、そこは四万十川で有名な市にも近く、自然の多い環境で羽を伸ばせるなぁと、私はとても楽しみに思いながら、飛行機に乗って東京から高知へと両親と共に向かっていたのを覚えています。

 祖父母の実家に到着すると、お婆ちゃんとお爺さんが笑顔で迎えてくれました。
 私が最後に二人と会ったのは物心がつく前のことだったので、最初はぎこちない挨拶をしてしまいましたが、一週間も経つと学校の話などを気軽に話せるようになっていたと思います。

 実家に居る間には観光名所として有名な川や山を巡り、思いきり自然を満喫出来ました。
 そうして楽しく過ごす内に二週間が過ぎ、あと三日で帰る頃に、そのおかしな事が起きたのです。


 深夜に目を覚ました時の事でした。


 祖父母の家に泊めてもらっている間、私と両親は二階の空いている部屋を使わせてもらっていたのですが、そこにはエアコンが無くて、仕方なく網戸にして扇風機を回して寝ていました。
 
 しかし、それでも熱帯夜ともなると大分寝苦しかったので、その日も暑さに耐えかねた私は、一階の台所へと飲み物を取りに行こうと立ち上がったのです。

 そうして飲み物を飲んで、少し暑さが和らいだのでもう一度寝ようと二階へと上がった時、ふと外の方を見ようとして、私は網戸が開いてしまっている事に気が付きました。

 開いていると言っても、全開というわけではなく、こぶし一つ分くらいの隙間が開いているくらいです。私は外から虫が入ってきたら嫌だなと思い、すぐにその網戸を閉め直してから横になって寝ました。

 けれども、その翌日になって私が網戸の方を見てみると、またこぶし一つ分くらいの隙間が開いていたのです。おかしいなと思い両親や祖父母に聞いてみたのですが、誰も網戸をいじってはいないと言いました。まあ、そんな事もあるか、と私は忘れることにしたのですが、その日の夜に、また、網戸が開いていたのです。それも昨夜と同じようにこぶし一つ分ほどでした。

 初めは家の人の悪戯かなと思いましたが、そういうことをする人達ではありませんし、理由にも心当たりがありません。地元の子供がやったのかとも考えましたが、実家の近辺には民家はほとんどなく、隣に古い廃屋が一軒あるだけです。そもそも部屋は二階にあるのですから、物理的に不可能なはずです。


 原因が分からず首を捻っていた所に、親戚のおじさんが訪ねてきました。


 そのおじさんとお喋りをしていた時に、私はその網戸のことについて尋ねてみました。
 すると、おじさんは「もしかして」と意味ありげに言うと、その網戸を見せてくれないかと私に言いました。私はどうぞと答えて、おじさんを二階に上げてその網戸を見てもらうことにしました。

 おじさんは初め、面白半分に見に来た様子だったのですが、実際に網戸を見ると顔を急に青くして網戸を調べ始めました。開けたり閉めたりをし、網戸をじっくり観察し、さらには窓から顔を出したりしていたと思います。

 そして、一通り調べ終わったのか、おじさんは小さく溜息を吐くと、一度居間に戻ろうと言いました。おじさんの言うままに居間に戻って落ち着くと、おじさんは静かに切り出しました。

 お祓いをした方が良い、と言うのです。
 その時の私は理由が分からず、どうして? と答えました。

 よく聞いてみると、どうやらおじさんが言うに、網戸に女のものらしき髪の毛が大量に挟まっていたとのことでした。言われてから私は網戸を確認してみたのですが、そんなものは見当たりません。しかし、私の両親や祖父母にはその髪の毛が見えるらしく、また触れるとのことでした。私にだけ見えない髪の毛が、大量に網戸に絡まっていたのです。

 こうなると、私もさすがに少し怖くなり、おじさんの言う通りにお祓いを受けることにしました。お祓いは祖父母と縁のあるお寺の人にお願いして、実家への滞在も二日延ばしました。その間は怖くて二階で寝ることはできなかったので、一階で寝させてもらいました。

 そして、おじさんが来た二日後にお坊さんがやって来て、お祓いをしてもらうことになったのですが、その時にお坊さんが危なかったね、と口にしたのを今でも鮮烈に覚えています。

 お坊さんが私に直接話したのはそれだけで、お祓いは終始無言で進みました。
 私からすれば何事もなく終わったお祓いでしたが、両親や祖父母は酷く心配した様子で見守っていました。


 私が自分で体験したのはここまでです。


 一年後の現在、つい先週になって両親が教えてくれたことなのですが、どうやらあの網戸に絡まっていたという女の髪の毛というのは、実家の隣にあった廃屋に昔住んでいた女の人のものだったということらしいです。

 その女の人は若くして病気で亡くなってしまった人らしく、お坊さんはその人が私に憑りつこうとして髪の毛を網戸に絡ませていたと言っていたそうです。その髪の毛が私に見えなかったのは私が既に憑りつかれてしまったせいで、憑りついている霊のことを考えて私には詳しくを話してくれなかったということでした。

 今となっては憑りついていた霊も離れて、大丈夫になったよ、と両親は言ってくれましたが、私はまだその確信を持てません。今年の受験が終わったら、春休みにまた両親が高知の実家へと行くことになっているのですが、私は一緒には行こうとは思えないでいます。

 また、あの網戸がこぶし一つ分開いてしまったら……と思うと、自分の長い髪の毛を触ることすら怖くなってしまうのです。




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