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No.38283の一覧
[0] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) 【完結】[一兵卒](2013/11/09 00:39)
[1] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #2 [一兵卒](2013/10/05 21:32)
[2] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #3[一兵卒](2013/10/05 21:36)
[3] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #4[一兵卒](2013/10/05 21:41)
[4] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #5[一兵卒](2013/10/05 21:44)
[5] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #6[一兵卒](2013/10/05 21:46)
[6] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #7[一兵卒](2013/10/05 21:50)
[7] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #8[一兵卒](2013/10/12 22:56)
[8] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #9[一兵卒](2013/10/19 23:56)
[9] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #10[一兵卒](2013/10/26 21:16)
[10] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #11[一兵卒](2013/11/02 00:10)
[11] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) #12[一兵卒](2013/11/08 21:58)
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[38283] 魔法少女リリカル☆マギカ (魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ) 【完結】
Name: 一兵卒◆86bee364 ID:e2f64ede 次を表示する
Date: 2013/11/09 00:39

かつて、私は……一人の少女を救うために時間の迷路を彷徨い歩いた。

そして、導き出したひとつの答え。

私のたった一人の友達は……自分のすべてを引き換えに、私達、魔法少女全ての希望となった。




「……ほむら、今日も瘴気が濃い。おそらく、たくさんの魔獣が現れるだろう」

 私の隣にと座っている白い猫の様な姿をした赤い目が特徴的な小動物……インキュベーター、通称キュゥべえ。素質を持った少女を魔法少女にと契約を元に、変身させる宇宙生命体。その愛くるしい姿とは裏腹に、感情を持たないこの生き物は、合理的に物事を考え、時には役に立ち、時には人を苛立たせる。
 私は、街を一望できる高層ビルの上で、一人夜風に当たりながらキュゥべえの言葉を黙って聞いていた。私の眼下に見えるのは、霧にまみれた夜の街並み。その霧は人の呪いという負の力が霧として具現化したもの。そして、それは人の生み出す呪いから生み出される魔獣となる。それが私達……魔法少女の敵だ。
 私は、自分の黒くて長い髪に巻かれてある、私の大切な友達からもらったリボンにと触れる。

 鹿目まどかの存在を知るものは、私を除いて誰もいない。

 自分のすべてをかけて、この呪われた世界を守り抜いたまどか……。私は、彼女が守り抜いた、この世界を救うために戦い続ける。再び、まどかと会える……その時まで。私は立ち上がり、高層ビルの上から飛び降りる。

 眼下に広がる夜の街にと……夜風に身を任せながら……。

 私には聞こえる。
 私には感じられる。

 彼女のすべてを……。

 だから、私は戦える。
 どんなことがあっても……。





魔法少女リリカルなのは×魔法少女まどか☆マギカ
Magical girl Lyrical Nanoha × Puella Magi Madoka Magica




魔法少女リリカル☆マギカ



#1 暁美ほむら……貴女を逮捕します。




「凄いね、ほむら……あれだけいた魔獣が、あっという間に無と化したよ」

 キュゥべえの言葉に耳を傾けながら、ほむらは先ほどと何も変わらない表情で、魔獣から採取したグリーフシードを己のソウルジェムにとあてて、穢れを吸い取る。吸い取った禍々しいグリーフシードを、キュゥべえにと投げる。キュゥべえはその場で飛んでほむらが投げたグリーフシードを己の身体の中にと吸い込んでいく。
ソウルジェムとは、魔法少女となった際に生み出される魂を具現化したものであり、人の姿の肉体にダメージを負っても、ソウルジェムがあれば、再生することが可能。その反面、ソウルジェムになにかあれば、肉体は死亡する。また、魔法少女として戦い、魔法を使うことで、ソウルジェムには呪いや苦しみといった負のエネルギーから、黒く濁ってゆく。黒く濁りきってしまうと、魔法少女は、その命を散らすこととなる。そうならないように、魔法少女は魔獣を倒してそこから現れるグリーフシードで濁りを吸い取らなくてはいけないのである。


 これが……この世界の魔法少女の姿


 私……暁美ほむらが知っている世界では、ソウルジェムが濁りきれば、魔法少女は『……』になる。




「帰るわ……」


 霧のかかった道路の上でほむらは、その手に握りしめられていた弓の形をした武器を消して、その姿も学校の制服の様な魔法少女の変身した姿から、元の学校の制服姿にと戻る。突然、ほむらが戦いをやめたことにキュゥべえが首をかしげる。

「どうしたんだい?まだ魔獣たちは……」

 問いかけるキュゥべえに、ほむらは視線を霧の中にと向ける。
 霧の中では、三つの人影が揺れ動いている。

「彼女たちの分もとっておいてあげないと……」

 ほむらは、そう告げるとゆっくりと道路を歩き始める。

 例え……彼女たちが、まどかのことを知らなくても、まどかは彼女たちのことを大切にしていた。彼女が守った世界で生きていく彼女たちを邪魔するつもりはない。

「ほむらさん?」

 呼びかけられる声に、ほむらは足を止めて首だけをその声の先にと向ける。そこには、魔獣たちを狩っていた赤いノースリーブの服に身を纏う魔法少女、佐倉杏子。青い衣服で姿は剣士のような姿の魔法少女、美樹さやか。金髪に縦ロール、ブラウスとスカートを身に着けた魔法少女、巴マミである。最初に声をかけたマミは、ほむらを優しい目で見つめている。

「あの……もし、良ければ一緒に戦ってくれはしないかしら?そのほうが、協力して素早く、魔獣たちも倒せるわ。情報共有だって……だから」
「結構よ……」
「え?」

 マミの問いかけに対して、ほむらはマミの言葉を最後まで聞く前に一言告げる。

「私は……一人で十分よ」

 ほむらは、淡々と答え、その顔を再び前にと戻す。

「あ、あんたねえ!?マミさんが折角誘ってくれたっていうのに、そんな断り方しなくたっていいじゃない!」

 そんな、ほむらの対応に頭が来たのだろう美樹さやかが、大声でほむらにと言う。だが、ほむらはさやかの言葉に対しても意に介さず、そのまま道を歩いていく。ほむらの後姿を寂しそうな目で見つめるマミ。

「マミさん!あんな奴!放っておきましょう!私達だけで十分やれますって!」

 さやかがマミを見て、自分たちだけで十分であるというアピールを必死に行っている。その隣では、杏子がポッキーを口に咥えながら、ため息をついて

「きっと、マミの必殺技の名称が気に入らないんじゃないか?やっぱりティロなんちゃらは、ちょっとねぇ~~……」
「杏子!あんたはちょっと黙ってなさいって!」

 素っ気なく告げる杏子に、さやかは突っ込みを入れる。
 マミは、ほむらが消えて行った霧を見つめる。

「彼女……すごく冷たい目をしているわ。きっと、何かあったんだってそう思うわ」

 マミは、ほむらが見せた冷たい目を思い出しながら、彼女が何かを抱えていることを感じ取る。それが何かまではわからない。でも、自分たちを避けているというよりかは、あえて、一人でいようとしているようにも感じ取れた。昔の自分とは逆だ。マミは、ずっと一人だったからこそ……誰かと一緒にいたかった。

「マミさんは優しすぎるんですよ」
「マミー、私、お腹すいた」
「あ~~!!もう、あんたはご飯食べることしか頭にないわけ!?」
「なんいってんだ!さやか!いいか?ご飯を食べないと、人は生きていけないんだぞ!」

 さやかと杏子の口喧嘩を見ながら、マミは笑みを浮かべた。
 今では……こんなにも楽しい友人たちがいる。自分には勿体ないくらいの……大切な友人が……。

「3人とも行きましょう、部屋でケーキでもご馳走するわ」
「わーい……って!3人って、私達二人しかいないですよ!?」
「マミには、私が幻術魔法を使っているように見えたのか?」
「あ、ご、ごめんなさい……私、何言っているのかしら」

 マミは、自分が口走った言葉に、慌てて訂正を加える。

 どうして、あんな間違いを……。
 でも、不思議だ、たまに思うことがある……本当は、この中にもう一人、自分の大切な友人がいたんじゃないのかってそう思う時があるのだ。それが誰なのか、わからないし、どうしてそんなことを思ってしまうのかもわからない。でも、それは何か大切なことで……。

「マミさーん!はやくはやく!」
「そうだぞ!マミ。ご飯は待ってくれないからな」
「だから~!なんで、あんたは、そんなにえらそうなのよ!」
「あーもう、さやかは五月蠅いなぁ~」

 マミは、そんな二人に急かされて、思い浮かべた不思議な気持ちを、胸にしまい足早に、二人を追いかける。美樹さやか、佐倉杏子は笑顔で巴マミを待っていた。それは、彼女たちが魔法少女となり、魔獣と戦い始めてから仲間として過ごすようになってから当たり前のようにある光景。



 学校



 チャイムが鳴り、教室では生徒たちが自分たちの席にと座る。
 暁美ほむらもまた、他の生徒と同様に……イスに座る。彼女と同じ教室には、昨夜出逢った魔法少女である美樹さやかと、同じく魔法少女であり、先月転入してきたばかりの佐倉杏子が、ほむらと同じクラスとして存在する。ほむらとしては二人には全く興味がなく、対する美樹さやかもまた、あからさまにイヤな態度示している。杏子に至っては特にイヤでもないのか、普通に接してきている。杏子に関しては、あまりそういったことに興味がないのだろう。
 
「はい、皆さん!おはようございます」

 姿を見せたのは担任である早乙女和子。
 眼鏡をかけた教師であり、まどかの母親と同じ年齢である。

「もう少しで文化祭も近づいてきていますけど、くれぐれも、仕事が忙しいからって、人に当たるような人にはならないように!男子はなってくださいね!」

 相変わらず公私混同が激しすぎる人だなと、ほむらは思いながら、さやかと杏子は早乙女先生を見ながら苦笑いを浮かべている。


その光景に本当はいるべきはずの彼女の姿がそこにはいない。


美樹さやかと一緒に笑い合いがなら、転校生としてやってきた私を、興味に満ちた目で見つめてくれていた。時には緊張をほぐすように、私を誘ってくれて……。時には逆に緊張と不安を抱えた表情で、私を見つめていた。彼女は何も変わっていない。変わったのは……私。そして、今、この教室には……彼女はいない。それが当たり前のこととなってしまっている。


 授業は退屈だ。

 ほむらは、前で黒板をかいている教師を眺めながら小さくため息をついた。


「……先生、体調が悪いので保健室に行きます」

 ほむらは、手を上げて立ち上がる。
 その彼女の突然の行動に、周りの生徒たちはざわめく。さやかと杏子もまた突然のほむらの行動に驚きの表情を向けている。この二人……授業中に、魔法で心を繋げて会話でもしていたのだろう。立ち上がった私の視界に映る二人のノートは真っ白である。

「わ、わかった。誰か保健委員は……」
「……大丈夫です。私ひとりで行けますから」

 ほむらは、そう告げて一人席を立ちながら、教室を出て行く。
 出て行ったほむらの姿を見て、クラスメイトはざわめいている。

「なんだあいつ~?お腹でも痛いのか。食べ過ぎかな」
「あんたじゃないんだから!」

 さやかは、杏子の言葉に思わず突っ込みを入れる。

『暁美ほむらはどんな人物か?』

 その疑問に対して暁美ほむらのクラスメイトの見解は、容姿端麗、冷静沈着、頭脳明晰という意見が多い。誰にも近づきにくい雰囲気をだしている。それを気に入らない、かっこつけでしょ?!というのは美樹さやかの意見だ。



『君も、仲間に加わりたいんじゃないのかい?』



 学校の廊下を歩くほむらの心の中で、キュゥべえが問いかける。
 ほむらは、キュゥべえの言葉を無視しながら足を進めていく。

『実際、グリーフシードの浄化量は少なくなるけど、大量に現れる魔獣に対しては、多人数で一気に殲滅したほうがソウルジェムの劣化する量も減るし効率がいいと思うけどな』

 キュゥべえは言葉を続ける。

『それとも、君は……以前、僕に話をしてくれた、過去の世界の話のことを引きずっているのかい?』


 ほむらの頭に過ぎる幾多の世界で戦った記憶。


 今では、私の記憶のみが過去の世界のすべてだ。新生されたこの世界に、誰も覚えている人がいないのだから……。それを夢物語と嘲笑されれば、いや……実際にあの世界と、この世界を繋ぐものが私の記憶だけということならば、夢物語と区別をつけることは難しいだろう。でも、私は、何度でも言える。何度でも言い放つことができる。鹿目まどかの行いにより、この世界は、過去の世界も、未来の世界も、現在の世界も……すべての魔法少女が救われたということを。

「……黙っていて頂戴」

 ほむらは、力強く言い放つ。

『僕には理解できないよ。過去の世界と現実の世界は、異なっている。君が過去の世界の記憶を継承していても、君の今の居場所は、過去の世界ではないのだから、現在の世界を重要視するべきじゃないのかい?』

 キュゥべえの言葉は、いつだって合理的だ。
 だから、私の気持ちなど理解できないだろう。感情を理解できない生き物には……。私の心が、私のソウルジェムが、いまだに光を灯しているのがなぜなのか。もう、私の居場所など、とっくに存在などしていない。過去の世界も、現在の世界も、未来の世界だって。私の居場所は……。


ドクン……。


「!?」


 突然、胸の内に音が響き渡る。
 それは……かつて感じたことのある悪寒、体が震え、冷や汗がどっと吹き出る。
ほむらは、廊下で立ち止まりながら目を見開いていた。

『なんだい?これは……。物凄い数値の魔力を感じるよ。並みの魔獣の数値じゃない』

 キュゥべえの声が私の頭の隅で響いているのを感じながら、私は肩を両手で抑えていた。
 そんなはずがない……、これほどの魔力を持つ魔獣なんて今まで存在したことがない。違う……魔獣じゃない。でも、存在するはずがない。いるはずがない。あるわけがない。だって……。アレは……もう生み出されるはずがない。

 ほむらは、体を震わせながら大きく息を吐き、足を進めていく。
 廊下を左右に揺れながら力無く歩いていたほむらは、その足取りを徐々に早くしていく。


 それは、学校の研究所棟……、現在改装工事のため、立ち入り禁止となっている箇所。


「ほむら!」


 彼女を待っていたかのようにキュゥべえが、そこにはいた。ほむらは、キュゥべえと共に、立ち入り禁止のロープを跨いで足を踏み入れた。
同時に、ほむらの立っている地面が大きく変化をする。コンクリートだった壁は、その姿を、巨大な人形が幾つも、吊り下げられている狭い廊下にと変わり、立っていた床は、黒い泥のようなものにと変化する。吊り下げられている幾つもの人形は、カタカタと音を鳴らしながら、操り人形を引っ張る糸に動かされている。

「これは一体どうなっているんだい?今までの魔獣は、こんな別世界を作り出せるほどの力はなかったよ。まるでこれは魔獣たちの巣じゃないか」

 キュゥべえの声を聞いていたほむらは、何度も何度も見た……見慣れた、見慣れすぎてしまった空間を見渡す。

「違うわ……これは、魔獣の空間じゃない。結界よ」
「結界?」

 ほむらは、足を踏み出し、力強く進んでいく。
 壁にかかっている操り人形は、徐々にその生々しさを増やしていく。最初はただの木彫りの人形であったものが、目玉がつけられ、その木彫りの身体には、内臓などが埋め込まれている。白い歯に、蠢く心臓。それは筋肉にと覆われ……皮膚が張り付き、そして、髪の毛が付け足されて……。


「……魔女と呼ばれるものの結界」


 ほむらの前にと広がる巨大な空間。
 それは先ほどまで歩いていた細く狭い、廊下とは一転した巨大な空間であった。そして、その中には多くの人形……いや、既に人間と言っても過言じゃないものがゴロゴロと転がっており、その中心にいる小さな顔のない一番出来の悪い人形……それが魔女の本体。

「……なによ、あれ」

 その声に振り返ったほむら。
 そこにいたのは、美樹さやかと佐倉杏子の二人である。

「どうして、あなた達が!?」

 ほむらは、杏子とさやかを見て声を上げる。
 二人も魔法少女である以上、魔力を辿って此処までやってこれたようだ。ほむらとしては、魔女が相手であるならば、自分一人で始末をつけるつもりであったというのに。これは誤算だ。

「そんなの決まってるでしょ!私たちの学校だもん、魔獣なんかにやられてたまるかって!」
「バカ言わないで。あれはあなた達が戦ってきた魔獣とは強さも力も比ではないわ」
「ふん。戦う前から臆病風吹かすなんて……行くわよ!杏子」

 さやかは、強気に魔法で現した剣を握りしめる。杏子もさやかに呼応されるように、その手に長い槍を現す。杏子とさやかは真ん中にいる魔力の根源を一気に叩こうと左右に分かれる。

「やめなさい!!相手は魔獣じゃないわ!」

 ほむらは大声を上げるが、杏子とさやかは、ほむらの言葉を聞かない。さやかは、宙にと浮かびその握りしめた剣を一気に振り下ろそうとする。すると、彼女の前にと突然、人形が姿を現す。そしてその姿は瞬間に姿を変えて、美樹さやかとなる。

「!?」

 さやかの振り下ろした剣が、人形が変身したさやかの剣によって阻まれる。二人のさやかの剣がぶつかり合った衝撃に、さやかは吹き飛ばされて、壁にと叩きつけられる。その様子を見ていた杏子は、ため息をついて

「ったく……威勢だけはいいんだから」

 そういって杏子は、槍を伸ばして遠距離からの攻撃を行おうとする。だが、それも現れた人形が瞬間的に、杏子の姿にと変わり、杏子の攻撃を防ぐ。

「なんだなんだ!?魔獣は、いつからこんなふざけた真似をするようになったんだ!?」
「くう~~!!一体どうなってるのよ!?」

 さやかと杏子が声を上げる。
 やはり、能力も魔獣とは大きく異なる魔女の力。
 しかも、今回の魔女の能力は……使い魔である人形を攻撃する相手に模写をして攻撃をしてくる。さやかと杏子は、己の姿にと変えて攻撃を仕掛けてきた人形を前にしながらも、なんとか本体であるものを、攻撃をしようとするが……。

「くうううっ!!!」

 杏子は、槍を鞭のように動かしながら攻撃をしようとするが、それも止められてしまう。さやかに至っては、速度で自分のコピーを突破しようとするが、人形もそれに追いついてきて、抜くことができない。

「ああ~~!!もう!!なんなのよ!」

 剣でつばぜり合いを行いながら声をあげるさやか。
 そんな様子を眺めているキュゥべえ。

「凄い力だね、あの人形たちの模写は、杏子とさやかの動きを完全に見破っている。しかも、ただ見破っているだけじゃない。二人が攻撃をすることで、より人形の動きも早くなっていっている」

 さやかと杏子が、地面にと降り立ち大きく息を吐いている。

「アハハ……自分相手っていうのはやり辛いなぁ」
「自分の顔なんてまじまじと見たくなんかないっていうのに!!」

 すると、今度は、さやかの前に現れた人形が杏子の姿に。杏子の前に現れた人形がさやかの姿にと変化する。二人は咄嗟に躱しながら、さやかは剣を抜けて杏子の偽物にと攻撃を仕掛ける。だが、杏子の偽物は、さやかの攻撃を簡単にと躱しながら、さやかを蹴り飛ばす。

「きゃああああ!!!」
「さやか!」

 声を上げる杏子の前にも偽物のさやかが迫る。

「ちっ……私としては、こっちのほうがやり辛いっつーの」

 杏子は、迫るさやかを相手に、槍を握りしめ……自分の前にと現れたさやか相手に突き出す。さやかの偽物は、杏子の突きに対してその体で受け止める。杏子の槍がしっかりとさやかの偽物にと突き刺さり、人形が破壊される。

「よ、よし……これ……」

 だが、杏子の前にはすぐに別の人形が変身したさやかが杏子にと攻撃を仕掛ける。

「ぐわあっ!!」
「杏子っ!!」

 宙から落ちる杏子を慌ててキャッチするさやか。杏子は、自分を助け出したさやかを見て、大きくため息をついて

「あいつ、本物より強いぞ?」
「悪かったわね!本物のさやかちゃんは弱くて!!」

 さやかは、杏子を見てそう大声で怒鳴りながら、本体を囲む人形たちを睨み付ける。さやかと杏子が戦闘を続ける中、二人の横を通り過ぎていくほむら。彼女も戦うつもりなのか。杏子は、ほむらを見て……。

「やめときな!あんたもあいつの人形に姿をコピーされちまうぞ」

 杏子の制止を聞かず、ほむらは人形たちを見る。

「……本体に向かえないなら、まずは使い魔から消し去る」

 ほむらは、そう告げると、彼女の背中から巨大な白き翼が生み出される。翼と言えば聞こえはいいが、それは羽などではない。まるで悪魔の翼のように巨大で、そして稲妻の雷光のような形をした左右非対称の異形な光景が、さやかと杏子の目の前に現れる。そして、その大きさは、ほむらの身体をゆうに超えている。ほむらとしては、できる限り、使いたくはなかったが、杏子とさやかがこれ以上戦闘を行って、ソウルジェムを消費するよりかはましだ。

「……」

 ほむらは、その翼を一気に周りの人形にと向ける。
 周りで魔女を守るようにぶら下がっている人形にと翼を向けると、その翼は、一気に魔女の使い魔を飲み込み、人形を粉々にと消し去っていく。それはどれも一瞬で……まるで掃除機の吸い込まれるかのように。

「……今のうちに、魔女を倒しなさい!」

 ほむらの言葉に、杏子とさやかは視線を合わせる。
 躊躇するさやかに、杏子は槍を握りしめて

「行くぞ!さやか!」
「う、うん!!」

 杏子の声に強く頷いたさやかは、一気に中心にいる魔女にと向かっていく。魔女は小さく、壊れた人形の形をしており、目玉が飛び出し、腕はもげている。二人は、そんな気味の悪い人形相手に一気に距離を詰めて、さやかは剣を振り下ろし、杏子は、槍を突き刺した。その瞬間、爆音が響き渡る。

「……なんとか、なったみたいね」

 ほむらは、崩れ出す結界を眺めながら、自分の翼を消す。



 そこは、何事もなかったかのように……いつもの景色にと戻っていた。
 学校の立ち入り禁止のロープが張られた廊下の前にと美樹さやか、佐倉杏子、暁美ほむらの三人が立っている。そして廊下の前に刺さるのは、グリーフシードである。ほむらは、黒きグリーフシードを手に取り、さやかと杏子を見る。

「魔獣よりもソウルジェムの濁りがとれるはずよ」
「ありゃー一体なんだったんだ?魔獣なんかとは比べ物にならないくらい強かったぞ」

 杏子は差し出したグリーフシードを前にしながらも、ほむらに疑問をぶつける。あんな魔獣は今まで見たことがない。あれだけの巨大な力を持っている奴……いや、もはや魔獣などではない。

「わ、私……死ぬかと思った」

 さやかに至っては怯えた表情でいる。

「……」

 何も答えないほむらに対して、杏子は、さやかの襟を掴む。

「なんとか言え!お前は、あれの正体を知っているんじゃないのか!?動揺もせず淡々と戦っていやがったし!」
「……」

 ほむらは何も答えない。
 答えたところで……信用などされないし、信用をしたところで、その先にあるのは、幾度ともなく経験した地獄なのだから。

「……暁美ほむら」

 それは……キュゥべえ。

「外の世界からの侵入を防ぐために、結界を張り、使い魔を有し、さらにはグリーフシードを有する強力な力を持つ存在。これは、君が言っていた魔女と呼ばれるものの力じゃないのかい?」

 ほむらは、キュゥべえには説明をしたことがある。
魔女と呼ばれるものの力の話を。

「魔女だと?」

 杏子の言葉に対してもほむらは何も答えない。

「……貴女達には知る必要がないものよ」
「待て!こっちは、死にかけたんだぞ!」

 ほむらは、杏子とさやかを背中に向けながら廊下を歩いていく。
 学校の廊下から外に見える窓は、既にオレンジ色にと照らされていた。


 脳裏に過ぎる……あの魔女の姿。

 あれは間違いなく……。
 でも、どうして……。

 呪われし魔法少女の想いは、まどかが浄化してくれるようになったはず。事実、今までの戦いでは、魔法少女が魔女にとなった報告は入ってはいない。なのに、今回現れたのは結界を張ったといい、間違いなく魔女の特質をもったものであり、さらにいえば、あの魔女はグリーフシードを生み出した。一体、なにがどうなっているのか、正直、私自身もわからない。そんな中で、美樹さやかや、佐倉杏子たちを戦いに巻き込んでしまったのは誤算だった。



「……原因を調べる必要があるわね」

 ほむらはそう告げながら、一人……学校の外にと足を踏み出す。

 外の景色は、既にオレンジ色の輝きから、周りを暗い夜の空にと変え始めていた。


 私は、この世界で生きているという実感を得ることができないでいた。それは今に始まったことじゃない。私が幾つもの世界軸を旅し、経験してきた。そんな私は幾多の世界を生き、その記憶を持っている。例え夢物語と言われたところで、私の脳裏には、その世界の、美樹さやか、佐倉杏子、巴マミがいる。絶望し、魔女となったもの。現実を受け入れられずに戦い抜いたもの。魔女に無残に殺されたもの。皆、私の前で死んだ。誰ひとり、幸せになれたものなどいなかった。そんな世界を見てきた私が、今の幸せそうな……幸せという時間を得ている彼女たちを見ても、受け入れられるはずがない。受け入れるには、私の記憶の中で死んだ彼女たちの人数が膨大すぎる。

それに……。


 美樹さやか
 佐倉杏子
 巴マミ


 あなた達と一緒にいれば、私はイヤでもまどかのことを思い出すだろう。
 あなた達のために命を、いえ……自分のすべてを犠牲にした彼女のことを。

 だから、一緒にはいられない。

 きっと、私は耐えられなくなってしまうだろうから。


「ごめんなさいね。まどか……別にあなたの友達を嫌いというつもりじゃないの」


 私は、暗い夜道の中、顔を上げて光り輝く星空を眺めながら告げた。



 まるで……牢獄だ。



 一人、時間の牢獄に囚われた私。
 もしかしたら、行き場を失っていたかもしれない私は、魔女の出現に喜んでいるのかもしれない。そんなことさえ思ってしまう。


「……」


 月が、黒い雲にと覆われ、あたりは暗闇にと閉ざされる。
 風が強く吹く中、ほむらの長いストレートの髪の毛が靡いた。

 そこで、ほむらは気が付く。
 人の気配に……。


 建物の影から、こちらを見ている人の気配。通り過ぎることなく、しっかりと私を前にして……。こんな時間帯に絡んでくる不良?変質者?どちらかはわからないが、私の味方ではないだろう。二人とも、建物の影から姿を見せず、自分からは二人の顔を見ることができない。


「私に……なにかようかしら?」

 ほむらは、現れたその二人組にと問いかける。

「暁美ほむら……だね?」

 その声を聞いて、ほむらは相手が女性であることを知る。変質者・不良という線が消える。だからこそ逆に相手がどういう意図をもって自分に声をかけたのかが気になる。しかも相手は、自分の名前を知っている。ほむらは、背後にいる者にも注意を向けながら、視線を自分の前にいる者にと向ける。

「……だとしたら?」

 ほむらの問いかけるのと同時に、雲に隠れていた月が、顔を見せる。
 それと同時に、ほむらの前に立っている女の姿が露わになる。金髪の長い髪の毛を靡かせる美しい女性。彼女が着ているものは、黒い軍服のようだ。彼女は、ほむらを見ながら口をあける。

「……時空管理法23条、25条、105条他の容疑で、暁美ほむら……貴女を逮捕します」

 彼女……フェイト・T・ハラオウンが、暁美ほむらにと告げる。








初回投稿 2013/08/17


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