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No.38117の一覧
[0] 【ショートストーリー】りんごの君[kotori](2013/07/22 14:13)
[1] 作者より(*´ ω `*)♪[kotori](2013/07/25 15:58)
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[38117] 【ショートストーリー】りんごの君
Name: kotori◆22d2bd6d ID:27491d61 次を表示する
Date: 2013/07/22 14:13
 僕は、まっかなりんごを袋いっぱい手にかかえ歩いていた。
 今日も、君に逢いにー・・・。

*・・・・・・・・・・
 近所の公園はさびれていて、小さな敷地のまん中にブランコがひとつあるだけ。
 そこに、いつも君は座っている。
「あ、おにーちゃーんっっっ」
 今日も君はそこにいる。手を振ってこちらにかけてくる。
「おにーちゃんっ、今日も来るの待ってたよっ」
 君は僕の手をひいてブランコの方へと走る。君はブランコの片方に座って、もう片方に僕が座れと言う。
 仕方なく座って君の方を見る。
「ーー!?」
 なぜか君は泣いていた。
「どうしたの」
「・・・ひくっ。あのねっ、今日ねっ、ここにたくさんの大人のひとがきてねっ」
 君は大粒の涙をまっかなほっぺに流す。僕はそれを手でぬぐってあげる。
「この公園、こわしちゃうんだってっ、来月っ、ここ、住宅地にしちゃうんだってっ」
 うわぁぁぁぁん、もうおにーちゃんに逢えないよぉ。
 君はそう言ってブランコから降り、僕にとびつく。
 その瞬間まっかなりんごが袋からこぼれ、転がっていった。ゆるやかな坂道をころころと、ころがる。
 そしてそのまま道路にへとでる。
 ぶしゃあっ
 トラックにひかれ無惨につぶれる。
「うぷっ」
 その光景を見た君は吐いた。吐いてさっきよりもたくさんの大粒の涙を流す。
 ーあぁ、想い出したんだね。
「・・・おにーちゃぁぁぁん」
 僕は君をそっと抱きしめる。
 君は数年前、転がったボールを追いかけ車にひかれたんだよ。
 それを忘れ、君はずっと成仏できずここでにこにこしてた。
 君はこの公園からでられない。それは、死んでるからー・・・。
「ねぇ、りな」
「・・・・・・」
 君ーりなーを僕はそっと離す。
「本当のこと想い出したでしょ」
「・・・・・・」
 君は不機嫌そうだ。目をはれさせ、むすっとしている。かわいい顔が台無しだ。
「君はもうここにはいない。いてはいけないんだ」
「・・・・・・」
「はやく、安らかになれよ」
「・・・・・・」
「な?ここにいても、辛くなるだけ」
「・・・だ」
「え?」
「やだ!やだやだやだ!!おにーちゃんと離れたくない!!」
 君は僕の胸のあたりを小さな手で叩く。
 また、涙がこぼれている。
「いやなの!やなの!!」
 泣いてる君を見るのが嫌だ。何とかして泣き止んでほしい。
 ごそごそ。
 ポケットをあさると、2本のリボンがでてきた。
 赤と青の。確か、昨日食べたクッキーのやつ。
 僕は、青い方を僕のスクバにくくりつけ、赤い方をー・・・
「ー・・・?」
 君の細い腕にくくりつけた。
「これで、ずっと一緒。離れても、このリボンで繋がってるよ。絶対、君のこと忘れないよ。それとも、君の方が僕を忘れないっていう自信がないの?」
「ちがうっ!!ぜったい忘れないもんっっ」
「だよね」
 ぽふ。
 君の頭に手をぽん、と置く。
「なら、大丈夫」
 すっと僕は立ち上がり公園を出る。ふりかえって、君に手をふった。
「また、あした」
 返事を待たずに進みだした。

*・・・・・・・・・・
 次の日、りんごを手にひとつ持って、いつもの公園に向かった。
 当然君はいなくって。
「・・・・・・」
 いつもの君の特等席。
 風で少しゆれている。
 そこにまっかなりんごをひとつおいた。
 そうして僕は、ひきかえす。


ーおにーちゃんっ


「っー・・・」
 君の声が聞こえた気がした。

 ふりかえると
 ブランコの上に、ぽつんと
 まっかなりんごが残っていた。


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