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No.38079の一覧
[0] アクセルワールド~水晶の輝き~【AW二次・オリ主・オリジネーター・リメイク版】[水晶](2013/07/17 18:38)
[1] EP01[水晶](2013/07/17 20:42)
[2] EP02[水晶](2013/07/20 14:47)
[3] EP03[水晶](2013/07/20 00:44)
[4] EP04[水晶](2013/07/21 00:37)
[5] EP05[水晶](2013/08/23 21:46)
[7] EP06[水晶](2013/09/29 22:11)
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[38079] EP05
Name: 水晶◆18240469 ID:4bc66f8a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/08/23 21:46

EP05



渓谷ステージの奥地で、僕らは巨大な蛇型の神獣《レジェンド》級エネミーと対峙していた。


「はぁ……はぁ……はぁ……《クリスタル・ショット》!」

大蛇が大きく体を振るった隙を狙い、この数時間にどれだけ放ったか解らない程の必殺技を放つ。
神獣級エネミー、『大蛇神アナンタ』。未だかつて、誰も攻略したことのない神獣級エネミーの一柱だ。
事の始まりは現実時間でおよそ三日前。ダンジョンの最奥にまで良く出かけるナイトが神獣級を狩った、という噂が回ってきたのは早朝の事だった。
それを聞いた僕とタンクは灼熱の如き対抗心を燃え上がらせた。 ナイトと僕らの実力はほぼ拮抗している。ならば、僕らも神獣を狩ってやろうじゃないか! と意気込んでいたのは二日前。
しかし、ソロで狩るには手頃な神獣級が殆ど居なかった。
そこで、僕らはナイトがソロで倒した神獣級よりも高位に当たる神獣を二人で倒す事に目標を切り替えたのだ。
その結果僕らが挑んだのが、かつて親友のブラック・ロータスが率いるメンバーが全滅しかけたという神獣級エネミーである大蛇神アナンタだ。

「くっそ!これだけやって漸く半分……どんだけタフなん、だ!炸裂!」
「やっぱり、途中で一回脱皮させたのがまずかったかな。《クリスタル・ブレイク》!」

アナンタの両目に刺さった、僕の右手とタンクの砲弾が同時に爆発した。
同時に、アナンタの断末魔が辺りに響く。
四段に折りたたまれたHPゲージの三本目が一割程減少していた。

アナンタが叫びをあげる。
甲高い音が周囲に響き渡り、アナンタの体が小刻みに震え始めた。

「タンク!脱皮がくる!」
「わあってらぁ!《爆散榴弾《ハイエクスプローシブカノン》》!」

タンクの技名発声と共に、右腕に装着された大砲が赤い光を纏って火を吹く。
そして放たれたソレは、アナンタの横っ面に直撃すると同時に激しく爆発した。

アナンタの巨体が初めて倒れ、周囲に強烈な振動を送る。
どうやら行動のキャンセルに成功したようだ。

実際のところ、ここまで辿り着いたのは二回目。一回目はこの大蛇型エネミー持つ厄介な能力である脱皮を行われ、HPゲージの二本目まで回復されてしまった。

しかし今回はうまくキャンセルできたらしい。 また、僥倖な事に気絶《スタン》の状態異常まで発生してくれたようだ。
これ幸いとばかりに二人で最大火力をぶつける。

流石に神獣級だけあって一分もかからずに回復してしまったが、既に三本目のゲージは二割を下回っている。

だが、この程度では安心できない。 ステージの切り替わり、すなわち変遷までの時間は四時間を切った。
アナンタは渓谷ステージだけにしか出現しないので、これを逃せばまた現実換算で八時間程待たなければならない上に、ここまで削ったHPも全快してしまう。
しかし、とてもじゃないがノーマルな攻撃だけでこれを倒し切れるとは思えない。
必殺技を使えば安定してダメージを与えられるが、必殺技ゲージとて無限ではない。
僕はアナンタの勢い良く暴れ回る攻撃の回避に徹しながらもタンクに声をかける。

「タンク!主砲のチャージはまだか!」
「もう少し、あと一分だ!そんだけ溜めれば多分削り切れる!耐えてくれ!」

タンクを見ると、両肩に装備している二門の砲から射撃を行っているのが見え、その右手に装着している大型の砲門には現在進行形で光が集まっている。

タンクはレベル4、5のレベルアップボーナスで新たにアビリティを強化したのか、更にサイズが一回り大きくなった。今や全長は7mを越えている。
アバターのサイズに関係するアビリティがあるというのは聞いていたのだが、それがここまで影響するとは思わなかった。
正直にいうと、たんくに目の前に立たれるとその巨体が放つプレッシャーはかなりの物となる。
外見の割には遠距離型なので格闘戦に持ち込まれれば殆ど負けてるけど。
正直、タンクとの近距離戦なら戦車形態の轢き逃げアタック位しか怖くない、というのはファルの言だ。

また、最近では弾頭炸裂アビリティなんていう、恐ろしいアビリティを習得してしまった。
こちらは打ち出した弾を任意のタイミングで炸裂させるというアビリティで、これのお陰で現在タンクの攻略に難航している。
躱しても着弾するとか、どうしろというんだ。

閑話休題

タンクが今チャージしているのは僕らの切り札。
タンクのレベル6必殺技で、チャージに時間と必殺技ゲージが大量に掛かるが、その分強力な一撃を放てる技だ。
タンクは先程から溜まった必殺技ゲージを少しづつチャージに費やしている。開幕で一発ぶつけてから、これでもうかれこれ六時間はチャージを続けて居るだろう。
その間僕はアナンタのタゲが完全にタンクに移らないようヘイトを稼いでいる。

「《修復《リロード》》」

僕のその宣言と共に、残り三割程しかない必殺技ゲージの約三分の一………全体の一割が消費され、先程爆発した右手が元の場所に再構築される。
クリスタル・ブレイクで爆破した部位を、一割程の必殺技ゲージを消費し修復するこの必殺技は、クリスタル・ブレイクと同時に習得した。
僕がこれを使った理由の一つは、ヘイトを溜める為だ。
このゲームではダメージよりも回復にヘイトが溜まる傾向があるため、ヘイトを稼ぐだけならばHPゲージが回復せずとも部位欠損を回復するこの必殺技が有効なのだ。

「ぐっ!《フラッシュ・ブリンク》!」

アナンタがこちらを向き、全身で体当たりをするようなモーションを取った。このモーションは当たり判定が大きい打撃系の攻撃だ。
残り八割を切っているこのHPで乗り切るのは不可能だろう。

そう考え、タイミングを計りファルの技、フラッシュ・ブリンクを借りる。
この技は光の粒子となり目視できる移動する技だが、粒子化状態では一切のダメージを食らわない、という側面もある。
ファルのと違って紛い物のこの技は、二割の必殺技ゲージだと28m程しか移動出来ないが、一度回避するだけならば十分だ。

攻撃を外したアナンタはごろんと虚しく転がった。
その隙をついてナイフを無残に抉れた、元々目があったはずの場所に投擲する。
傷を抉られた事で怒り狂ったアナンタの尻尾が僕に迫ってくるのを、足元に出した適当な外装を踏み台にして上空に躱すと、タンクの声が聞こえた。

「よっしゃぁ!こんだけ溜めりゃあ残りの五割位消し飛ぶだろうよ!《波動砲《ウェイブ・モーション・カノン》》!!」

僕はもう一度外装を踏み台にし、効果範囲から逃れようとする。同時に、タンクの構えた主砲から青白い、高威力であると側から見るだけで直感出来そうなビームが発射された。
着弾の瞬間、眩い光が辺りを包み込む。思わず目を瞑ってしまうほど強烈な閃光を放つそれは、着弾点から10mは離れているはずの僕にまでダメージを与えた。
いくら神獣級とはいえども着弾点にいるのだから、仮に生き残ったとしても瀕死になるはずだ。
そして二秒程して、光が徐々に収まって行き、やがて完全に収まる。
果たして、着弾点には満身創痍な蛇型エネミーがおり、その鈍重な身体を引き摺って逃走を図ろうとしていた。
身体の所々は焼け焦げ、鱗の殆どが焼け落ちている。その見かけを裏切らず、視認できるHPゲージは最後の一段、それも数ドット程しか残っていない。

「うっげぇ!悪りぃ、フェイカー!ちょっと残った!」
「大丈夫だ、問題無い!《水晶射出《クリスタル・ショット!》》」

落下しつつ、八割まで溜まった必殺技ゲージを二割消費し、両腕の肘から先を射出する。先程までと違い、目では無く胴体に向けて放った。最初にやった時は刺さらず弾かれてしまったが、今度のは刺さる、という明確かつ明瞭なイメージがあった。
グサッと、瀕死のアナンタの背に腕が刺さる。そして、そのタイミングでもう一つの必殺技を発動する。

「《水晶爆砕《クリスタル・ブレイク》》ー!」

一際大きな爆発音と共にアナンタのHPゲージが0になり、同時に無数のポリゴン片へと爆発した。
白く明滅する視界の右上にバーストポイント加算の旨が書かれたシステム・メッセージが表示される。

確認する気力すらも湧かなかったが、何とも言えない達成感が僕を満たした。
そこまできて、漸くある事を思い出す。

今、僕は上空数三十mを落下している。しかも、僕のHPゲージは残り一割も無い。
このまま落ちれば高所落下ダメージで確実に死ぬだろう。
そう思い当たったときには、地面が残り十mにまで近付いていた。思わず目を瞑る。

しかし、いつまで待っても落下ダメージどころか、落下した衝撃すら感じなかった。
恐る恐る目を開けてみると、僕の視界に飛び込んできたのは見慣れた銀灰色《ぎんかいしょく》のボディに輝くメタリックパープルの長方形のバイザーだった。


「よっす。お疲れさん」

咄嗟にタンクが受け止めてくれたらしい。
俗に言うお姫様抱っこだった。

「ありがとう、タンク。《修復《リロード》》」

僕は若干の気恥ずかしさを押し殺して礼を言うと、消し飛んだ両腕を修復する。

両腕が元に戻ったのを確認し、問題なく動く事が解ると、さっさとタンクに降ろしてもらう。
タンクがアーマーパージ、と呟くと7m程もあったタンクの体が2m程の大きさに変わった。
僕も最近になって初めて聞いたのだが、アビリティ『装甲解除《アーマーパージ》』というのを使う事でこのサイズまで小型化できるそうだ。
因みに、一度パージすれば一定のクールタイムの後ならば再展開が可能らしく、戦況に応じて切り替えるのも有りなのだとか。
ともかく、僕達は一度それぞれの右手でハイタッチを交わす。


ふう、と大きく深呼吸をすると、タンクはある一点を指差した。
その方向を見ると、透き通ったクリスタルの刀身を持つ一振りの長剣が薄く発光しながら地面に突き刺さっていた。
その輝きは神々しく、細身でありながらも絶対の信頼がおけそうな程の力強さを感じさせる。
聖剣か、はたまたどこぞの王国の戴冠剣か。 そういった感想が真っ先に浮かんだ。
確認するまでもなく、大蛇神アナンタのドロップアイテムだろう。

あんな禍々しい蛇からこれほど清美な剣が手に入るとは、運営も中々いい趣味をしている。
きっと日本神話あたりのファンが居たに違いない。 よくみれば、剣が刺さっているのはアナンタの尻尾があった辺りだった気がする。

探せば三種の神器を模した強化外装なんかもあるのかも、とどうでもいいことを推察しつつ、僕らはその剣に寄って、眺める。
不意に、タンクが口を開いた。

「今回の一番の功労者はお前だからよ。その剣、お前にやるよ」
「いやいやいや。君の波動砲がなければ倒せたかすら解らないよ?だからそれは君が抜くべきだ」
「良いって良いって。俺は遠距離型だぞ?こんなの持ってたって宝の持ち腐れだ。
それに俺の色は銀灰色だからよ。ほら、色っつーか、材質もクリスタルっぽいし、俺よりお前が抜けって」

更に反論を続けようとした所で、とん、と剣の方向へ突き飛ばされる。

「……君がそこまで言うなら」

気を引き締め、目の前の聖剣の柄に、少し躊躇いながらも触れる。
すると、聖剣は銀色のカードへ変わった。

【YOU GOT AN ENHANCED ARMAMENT 《STARLIGHT LIBERATER》】

「スターライト……リベレイター……」

そう呟くと、タンクが言う。

「へぇ。それが剣の名前か。え~っと、スターライトは星の光だろ?リベレイターは……なんだっけか」

「解放する、リベレイトが元だろうから……。スターライト・リベレイターで"星明かりの解放者"みたいな意味になるんじゃないかな?」
「成る程ね………っと。英語で思い出した。 俺はそろそろログアウトするわ。宿題が途中でよ」
「ははは。君らしいといえば君らしいけど……。 もう少し計画性って言葉を良く考えてみたらどうかな」
「なかなか辛辣だな、おい……。 まあ反論の余地も無いが……。っと、さっさと終わらせてくるから、後で一緒に試し斬り行こうぜ!」
「了解。 じゃあ、宿題終わったらメール頂戴。 この前フェイカーとしてのアドレス教えといたよね?」
「おう。そんじゃま、サクッと終わらせっかあ!」

そんな会話をしながら、僕たち二人は近くのポータルへと入り、同時に離脱する。

目をゆっくり開けると、ダイブした場所と同じく自室のベッドの上だ。
凝り固まった(ような気がする)肩を揉みほぐし、大きく伸びをする。

「ふぁぁ~………疲れたぁ……。
ナイトも一人で神獣狩るなんて凄いなぁ。
僕らはたった一体を倒すのにあんなに時間が掛かっちゃったよ。やっぱり、ナイトは凄いや」

そう考えながら転がっていると、フェイカー用のアドレスにメールが届いた。
一瞬タンクかと思い、びっくりしながらもファイルを開く。
差出人はタンクではなく、フランだった。

「フランからか。えっと、『互助レギオンを設立の為のプレゼンテーション』?
ああ、成る程ね。 そう言えば、二人が有名になり出して結構経つもんね。 もうそんなに貯まったのか」

ファルが持ち帰った七星外装、ザ・ディスティニー。その規格外の性能を利用した宣伝と対戦。
僕も二人の計画を聞いた時は心底驚いたが、結果としては上々。 ピュアカラーズの誰だったかも下したと聞いたからそろそろだとは思っていた。
近々、加速世界の常識が……いや、ルールが変わる。そう思うと胸の高まりが抑えられない。

「日時は……うん、いける。 学校からの帰りで少しくらいは遅れるけど、多分説明中には着けるかな。 よし、送信!」

メールを返信すると、もう一度寝転がる。

「はぁ……。ファルもフランも凄い。 僕なんかでは足元にも及ばない。
何で僕はこんなにも弱いんだろうな……」

小さく呟くと、自分の身長と殆ど変わらないサイズの枕に顔を埋める。
からっぽな僕にとっては加速世界の友人達は皆眩しくて、直視できない。
どうしても、僕と彼らの差を考えてしまう。

「晶。 夕食の準備が出来たからリビングに……って、何してるの? 寝てるの?」

暗い思考に陥りそうな所で部屋のドアが開き、兄、結一《ゆういち》が入ってきた。

「起きてるよ……。兄さん、親しき仲にも礼儀あり、って言葉知ってる? ノック位はしてくれないとびっくりするんだけど」
「ん、ごめん。 次からは気を付ける」

はあ、とため息を吐きながら立ち上がる。
兄弟相手だと仮面を被る必要が少ないので気が楽だ。

「すぐ行くよ。 今日は……兄さんとケイのハンバーグだよね。 たのしみだなぁ」
「あまり期待されても、晶よりは下手だけどな」

二人で少しだけ、笑う。




——空っぽなら、今からでも作っていけばいいのかもしれないな。

そんな事を少しだけ考えた。











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