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No.38079の一覧
[0] アクセルワールド~水晶の輝き~【AW二次・オリ主・オリジネーター・リメイク版】[水晶](2013/07/17 18:38)
[1] EP01[水晶](2013/07/17 20:42)
[2] EP02[水晶](2013/07/20 14:47)
[3] EP03[水晶](2013/07/20 00:44)
[4] EP04[水晶](2013/07/21 00:37)
[5] EP05[水晶](2013/08/23 21:46)
[7] EP06[水晶](2013/09/29 22:11)
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[38079] EP04
Name: 水晶◆18240469 ID:4bc66f8a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/07/21 00:37
EP04 Where Is Myself










BBプログラムを僕達一世代目、所謂オリジネーターが受け取ってから、早くも十一ヶ月が過ぎた。僕のレベルも漸く5だ。
最近は射撃型アバターとの勝率も、1v1ならば六割程度には上がってきている。要は、撃たれる前に狩ればいいのだ。
同レベルの奴らには未だに負ける事も在るが、僕よりレベルが低い奴らなんかは見つけ次第クリスタル・ショットからのクリスタル・ブレイクで大抵ワンサイドゲームに繋げられる。
流石に相性の問題もあるので勝率100%とまではいかないが、それでも格下相手なら八割勝てる。……あれ、二割も負けてるのか。案外振るわないな。

他にも、大枚はたいて防弾チョッキの強化外装(ビジュアルの変化は無しで銃弾のダメージを約50%軽減する。効果は一戦闘あたり八回まで)を購入した事も有利に働いているようだ。とはいえ、ここまでやってプラマイゼロというのは泣ける。
しかし、タンクの徹甲弾には相変わらず即死するので結局射撃はすべて回避の方針に変化は無い。

そうそう、最近では、BBプログラムを持った第二世代………所謂『子』も順調に増えてきている。前は、っていうか今もだけど、適当な所で子を作ってこのプログラムの事を教えないで殺すような人が居るんだけど、それはちょっとずつ減ってきている。 レベル4まで育てて一緒にエネミーを狩る方が効率が良いからかろう。

因みに、僕はそれを見掛けたら速攻で助けている。
助ける、と言っても、親の変わりにプログラムのレクチャーをするだけだ。しかし、それだけでも数人は全損を免れ、今では立派なBBプレイヤーとなっているので僕的には良いかな、と思う。

別に皆を救いたい、なんて殊勝な事を考えている訳では無いし、見捨てるのは気が引けるからやっただけだからだ。

結果が出たならそれも良し、元よりそれで救えるとも思っていない。知らないのはフェアじゃないと思ったから教えただけ。ただの自己満足に過ぎない。

毎回その事を伝えてからバーストアウトするんだけど、助けた子は何故か皆『師匠!』って呼んで慕ってくれる。
その中にはレギオンに入っても定期的に連絡をくれる子や、レギオンに入らないでついてきてくれる子達も居る。
レギオンというのは、軍団……まあ、所謂ギルドのようなものだ。

そういえば、レギオンに入ってない子達で今レベル3の子が何人かいたから、レベル4になったらアンリミテッドバーストのコマンドを教えてあげないと。

因みに、僕はまだ子は作っていない。
子を作れば、この世界を共有できるリアルでの仲間が増える、とは理解しているのだが、どうも一歩が踏み出せない。
兄弟を誘うのは気が引けるし、かと言って同級生達に渡すのもどうかと思ってしまう。


そんな思考を巡らせている間に、目的地に到着した。
小さな山吹色の屋根の家だ。
予めインスタントキーは貰っているので、僕はその家のドアを勢い良く開け、精一杯の明るい声で挨拶をする。



「やあ、フラン、ファル。遊びに来たよ……って、何やってるの?」

僕がファル達の家のドアを開け放つと、どういう訳かファルが正座し、フランに怒られていた。

家、というのは勿論リアルの家の事ではない。


レベル4以上のBBプレイヤーのみが入る事の出来る『無制限中立フィールド』という所の、リアルでは『暁埠頭公園』と呼ばれる場所の少し北にある家だ。

ファルとフランとの二人でポイントを稼ぎ手に入れたらしい。
らしい、と言ったのは、この無制限中立フィールドに入れるようになった当時の僕は、このフィールド内にのみ存在する『エネミー』と呼ばれるモンスターのハントに夢中になりすぎていたからだ。

それで、僕の一人目の戦友であるタンクと四人目の戦友であるナイト達と競い合う内に、ソロで巨獣《ビースト》クラスを何とか狩れるレベルまでになった訳だが。
それはきっと、僕が中距離型だったのも要因の一つだと思う。
相手の攻撃を回避すれば、後はタイミングを見計らって攻撃を当て続けるだけだからだ。これでもFPSゲームは割と得意なのだ。

もう少しレベルが上がればもっと楽になるんだろうし、現状でもう一つレベルを上げてもマージンが確保できるだけのポイントはあるのだが、タンク達と歩幅を合わせたい、というのともう一つの理由で今はまだレベルを上げていない。

因みに、今の僕はこの無制限中立フィールドで一ヶ月あればそれはもう大量に稼げる。近接特化のエネミーしか湧かないダンジョンに篭り切りになってしまうけど。
お陰で趣味には苦労しない。

余談ではあるが、僕とタンクとナイトとでチームを組めば、大抵のエネミー……それこそ神獣《レジェンド》級をも狩れる自信がある。
ヘイトの管理さえしっかりやればそれ程攻撃が一人に集中する事も無いし、この三人でのチームワークは中々素晴らしい物だからだ。
それに僕ら三人は結構硬く、長時間戦闘を続けられるのもその要因の一つだろう。

その事もあってか、ナイトに何度もレギオンに誘われたが、今の所僕もタンクも拒否している。

つまり、現在僕とタンクは無所属となっている。
まあ、ナイトは彼のレギオン……レオニーズのトップなので僕らと一緒に居る事を是としない輩もいるそうだが。
まあ、今の所害が無いのでどうでもいいし、害が出て来たら正々堂々対戦でケリを付ければいい。

ともかく、僕は怒られているファルの方を見て一言。

「ファル、今度は何をしたの?」

僕の問い掛けに答えてくれたのはファルではなく説教しているフランだった。

「もー!フェイも怒って?!ファルったらあの『帝城』に侵入したんだよ?!」

フランの言葉に、一瞬呆然とした。
絶対不可侵のあの帝城に入って、更に帰って来た等、にわかに信じられるようなことでは無かったからだ。
帝城は、四体の『超級』……神獣級や邪神級を超えたレベルのエネミーに守られているため、実質的に侵入は不可能、というのが僕達の通説だ。実際、僕も様々な方法でアプローチしたのだが、侵入するどころか橋を渡り切る事すらできなかった。
しかし、ファルがそんな事で冗談を言うようにも思えない。

「へ………へえ。もしかして、君が前言ってた『フラッシュ・ブリンク』を使ったのかい?凄いじゃないか」

何とか平静を装い、事前の情報と組み合わせ、推測する。僕がそういうと、フランもうんうんと頷き言った。

「まあ、確かに。あの《帝城》に入ろうとした挑戦心と、奥まで行って戻って来た精神力は褒めてあげるけど……頑張ったね、ファル」
「あ……ありがと、フラン。フェイも」

ファルは照れたのか頭を掻いている。 黒銀の隼くんは、今日も平常運転らしい。
調子に乗られても対応に困るだけではあるが、不可侵の帝城に侵入した事を鼻に掛けないというのはファルの美徳だろう。
彼のそういう所が個人的には好ましく思う。
因みに、黒銀の隼、というのは最近付いたファルの二つ名だ。

「じゃあ、帰還祝いにお茶しましょ。こないだ、銀座エリアのフードショップで追いしそうなケーキ買って来たんだ。ファルもフェイも、座ってて」

エプロンを着て、ぱたぱたと台所へと歩いて行くフランを見つつ、ファルが僕に話しかける。

「そういえば、フェイもレベル5に上がったんだよね? 新しい必殺技、見せてよ」
「ん。いいよ。丁度今あらかたの検証を終えてきた所だし、元々話すつもりだったから。フランが来てから……。
って思ったけど、ファルが我慢できそうになさそうだから先に説明するね」

僕はまず、今しがた検証を終えた機能を見せる事にする。

「まずは……そうだね、何か強化外装って持ってる?」

僕がそう聞くと、ファルは少し考えてから、恐らくHPゲージのある所をタップした。
すると、ファルの手に銀色のカードが現れた。封印状態の強化外装だ。

「そのまま持ってるだけで良いよ。《スキャン》」

僕は、そのカードに右手を向け、レベル5必殺技の一つ、『読込《スキャン》』を発動する。
必殺技ゲージが一割消費され、僕の掌から薄い光の線が現れると、封印状態の強化外装を通過する。五秒程してからその光の線は消えた。

「ふぅ。もうしまって貰ってもいいよ。さて、それでは御開帳………………《贋作精製《フェイク・メイカー》》」

再度、必殺技ゲージが消費される。今度は二割だ。
僕の右手から、発光する微小なコードで構成されたリボンのような物が現れ、カードのような形に変わっていく。

それと同時に、バーストポイントの減少を告げる紫の窓が開いた。
僕はそれをスルーして、できたカードをテーブルに置く。

「うわぁ、凄い……強化外装をコピーしたの?」

ファルが声を弾ませて聞いてくる。恐らく今は見えない目はキラキラと輝いている事だろう。

「ふふふ……それだけじゃないよ。これにはもう一つ効果があるのさ。《スキャン》」

今度は、ファルの胴体に向けて右手から光を放つ。そして、今度は十二秒程で光は無くなる。

「《贋作精製《フェイク・メイカー》》」

また、僕の右手から光のリボンが現れカードを作っていく。

出来上がったカードには、ENHANCED ARMAMENT FAKE FALCON と書かれていた。

「と、こんな所だよ。 セット、フェイク・ファルコン」

カードを放り投げながらそう唱えると、僕の体を一瞬光が覆い、装甲色は元のクリスタルではあるが、目の前の戦友と同じ姿になった。

「成る程、つまりフェイの新しい技は、アバターの外見をコピーして、更にその内容を強化外装として保存できるんだ!しかも強化外装のコピーもできるんだね!」

「ふふ……外見だけじゃなく、アビリティや必殺技もコピーできるよ。ただ、外見写しの外装の展開中は水晶骨格《スケルトン・フレーム》のアビリティ効果が使えないのが欠点かな。
それに、所詮贋作だから強化外装をコピーと言っても今の時点ではオリジナルの……そうだね、だいたい六割程の性能しかないかな。
もっとレベルが上がればそれだけいい贋作になると思う。
確認してみたけど、この必殺技はレベル上がって能力の性能が上がったらコピーした奴の性能も上がるタイプの技みたいだし。
あと、スキャンの照射時間なんだけど、これは封印状態の強化外装で五秒、普通に装備されてる状態なら体積×光線系への耐性×五秒、アバターなら光線系への耐性×2×五秒、必殺技の場合はアバターのコピー時間×3秒みたいだね」
「え、アビリティや必殺技までコピーできるの!? ちょっとズルいよ!」
「うん、まあ、確かにそれだけ聞いてたらズルいと思う。 でも、そこまで便利ってものでもないんだ。
制約がガチガチ過ぎで戦闘中のコピーはほぼ無理なんだ。
仲が良い人に頼んでコピーする分には問題無いけど、コピーしてる間ずっとスキャンの光を当て続けなきゃならないから、本人の同意無しではほぼコピー不可能。 それに、コストの問題がちょっとばかり看過できない。他にも幾つかあるけど、主要なのはこんな所かな。
これだけの制約があるならこの性能も納得かな、って感じだよ」
「コストって?」
「ああ。コピーした内容に応じてバーストポイントを消費するんだよ。まあ、ポイントが必要なのはコピーのマスターを作る時だけなんだけどね。
一度コピーしてしまえば、削除してもポイントが還元されない代わりに、必殺技ゲージが続く限りコピーが可能に……って、どうしたの、ファル?」

僕が説明を続けて行くうちに、ファルの顔が少しづつ青褪めてきた……ような気がした。
僕は心配になり、俯いているファルの顔を覗き込んだ。
すると、ファルが震えた声で言った。

「ごめん、フェイ。ちょっと残りのバーストポイント量を調べてくれない?」
「?別に構わないけど……」

僕は自分のHPゲージをタップして、ポイントの残高を表示する。
その瞬間、僕はこれまでに経験した事がないほどに驚愕した。

「嘘……だろ? 何でポイントの八割以上が消し飛んでるんだ……?」

ここに来る前まではレベルを上げても問題無いだけのマージンが確保できていた筈だった。
しかし現在の残ポイントは、辛うじて安全域にはあるが、無駄遣いできる余裕が殆ど無いところにまで減少していた。
僕は背筋がひやっとした。 もし、今日ここに来る前にレベルを上げていれば、僕はこの世界を永久退場になっていただろう。
いや、もしかしたら不発で済んだかもしれないが。

やっぱり、とファルが空を見上げていた。

「ファル、これはどういうことなの?」
「いや、その……」

少し語気を強くして聞くが、ファルは口ごもり、答えてくれない。
仕方が無いので、僕は、机の上に置かれている、先程コピーした外装を拾い上げて確認した。

「『ザ・デスティニー』?」

僕が知っている中で、ザ、という冠詞が付いた強化外装は四つ……全部で七つしかないと推測されるものだけだ。
つまり、この強化外装は——

「七星……外装?」
「フェイ、本当に、ごめん」

ファルが深々と頭を下げた。
僕はあまりの出来事にしばし放心した。
いや、確かに、帝城へ行って帰ってきたんだからそれくらい可笑しなことでも何でもないのだろうが、それを割り切るにはポイントの消費が大き過ぎた。
僕のリアルでの二ヶ月間が、と言いそうになるのをぐっと堪え、手をひらひらと振りながら答える。

「いや、まあ……ほら、七星外装もコピーできるんだっていうのがわかったからいいよ。
うん、このアバターの隠されたポテンシャルが解って僕は凄く嬉しい。だから、ファルが気に病むことは少しも無いって」

「よかったね、フェイ。始めた頃からずっとソレ気にしてたもんね。さ、準備できたわよ。食べましょ?」

漸く食事の準備を終えた、状況を殆ど知らないフランが、僕らに声をかけてくれた事で気まずい空気が霧散した。
今日ほどキッチンとリビングが完全に分かれていた事を喜んだ事は無かった。
すぐさま、とりあえずこの事はフランには内緒にしておこう、とアイコンタクトを交わす。
おそらくはないだろうが、こんな事でファルとフランの仲に亀裂が入るということだけは避けたい。

ともかく、僕らはフランの用意してくれた美味しい紅茶とケーキで小さなお茶会を始めた。







「ね、フェイはさ、このゲームについてどう思う?」

美味しいガトーショコラを頬張りながら、フランが聞いてくる。

「ふむ……なかなか難しい質問だね。……まず、このブレイン・バーストプログラムは謎が多い。
僕はね、フラン、ファル。このゲームは、ニューロリンカーを作った目的なんじゃないか、と思うんだ」

「へぇ。で、博士、その心は?」

「ファル、その呼び方はやめてくれ。……続けるが、このブレイン・バースト2039は、最初期のニューロリンカーでもダウンロード出来るんだ。
他のアプリケーションは、下手すれば最初期のニューロリンカーではデータのシステムが違いすぎてダウンロードする事も叶わない。
それは、最初期のニューロリンカーのスペック的に無理なんだ。だが、このブレイン・バーストだけはダウンロードできる。
それはつまり、最初期のニューロリンカーがもう既にこのゲームをする為に開発された、という風には取れないか?」

「「確かに、言われてみれば………」」

ファルとフランが同時に頷く。
その逆の可能性もあるが、あえて言わない事にする。

「そもそも、このブレイン・バースト自体の目指す先が、僕は人間の可能性なんじゃないか、と思うんだ。2000年初頭頃のライトノベル染みているとは思うけどね。
———『人間だけが神を持つ 可能性という内なる神を』……って言う言葉も在るくらいだしね」

「へぇ~……ってフェイ。それ、アニメの台詞でしょ。カッコ良く言っても、私知ってるんだからね?」
「ホントだよ、もう。でも、あの頃のアニメって面白いの多いよね。特にあのシリーズのロボットアニメなんかはデザインにも力が入ってるし」

どうやら二人は知っていたようだが、僕は案外この言葉を気に入っている。
タンクに勧められて見たアニメだったが、この台詞だけは不思議と良く覚えている。というか、僕的にはフランが知っていたことがびっくりだ。

「あのシリーズだったら、私は、ほら。あの、おヒゲの奴が結構好きだよ。ファルは?」
「僕はやっぱりあの角割れかなぁ。変身ってかっこいいし。フェイは?」
「黒くてダークネスな格闘型かな。アレの最終話の四話程前の話が泣けるんだ」

しばらくロボットアニメについての雑談をする。
話題の中心は主に親の子供時代か、もしかしたらそれよりも前の物が中心だったが。

まあ、何にしても、 やはり自分だけでなく皆で話し合うのは楽しい事だと思う。
自分でも気付かなかった事が解ったり、へぇ、って思うような意見が出ることもあるし。







「最近、この世界に来ると帰って来たって思ってしまう事があるんだ」

ふと、そんな事を呟く。この二人になら、話してしまっても良いのだろうか。

「?急にどうしたの?フェイ」

フランに言われ、ハッとする。
自分が、それこそ生まれた瞬間から抱えている事など、彼らには聞いて欲しくない。
そう思い直し、誤魔化す。

「い、いや、何でもない。ケーキ、美味しかったよ。ありがとう、フラン、ファル。
それじゃあ、僕はこれで。後は二人でゆっくりすると良い」

ケーキを食べ終えたので、僕はファルとフランに礼を言って別れる。
ファルにはすれ違い様に「プロポーズ、頑張れよ」と言っておく。

それを聞いた瞬間にファルがわたわたと慌てふためき始めたのを見て、少し笑ってしまう。

そうだ。あの二人は、この加速世界の中だけとはいえども恋人同士なのだ。
二人の大切な時間を奪いたくは無い。
ちょっとした胸の痛みを感じながらも、僕は家を後にする。


そして、二人が末永く幸せである事を願いつつ、僕は黄昏ステージの東京を、エネミーを狩るために走り抜けた。


この場所が、この場所だけが自分が自分でいられる唯一の場所なのだ。

もう、数えるのも億劫になるような長い時間をこの中で過ごしている。





クリスタル・フェイカーは……雨宮 晶は、学校から帰りながら宿題を終わらせ、夕飯を食べると兄弟との会話もそこそこにこの無制限中立フィールドに降り立つ。
そして、午後九時から午前六時半までの九時間半、つまり約四百日間をこの中で過ごす。

現実には無い、個人としての自分を実感するために。


詰まるところ、晶はまだ、此処………加速世界でしか個人としての自分を実感できていなかった。



加速世界での長い、長い夜は、まだ始まったばかりだ。



設定集

晶の日記………晶の日記。クラスメイトの事、近所の人の事、話した内容などを簡潔に纏めてある。これにより加速世界で長期間過ごした時に生じる違和感を緩和している。
しかし、やはりというかなんというか、カバーし切れない所は当然存在し、その度に即興で切り抜けている為実は結構ギリギリである。

稼いだBP………タンク達と楽しむ為にレベルアップには使わず貯蓄しており、結構貯まっていた。が、今回がさっと減った。
貯めていた理由の二つ目は新しく習得したアビリティのためのマージン。他にも、遠距離を移動する時の交通費としても使われる。

無制限中立フィールドでの約400日間と晶の生活………エネミーを狩ったり遠くまで行ってみたり泳いだりご飯食べたり寝たり、偶にいるBBプレイヤーと狩りをしたり……と色々している。最近驚いたのは東京以外の所でBBプレイヤーと遭遇した事。 一週間のうちで潜らない日は一日たりともありえない。 たまに九時より早目にダイブする事もあるが、解除時間は六時半固定である。
水晶骨格《スケルトン・フレーム》……フェイカーの全身切り離し可能かつ切り離した後の制御が可能となるアビリティの名称。


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