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No.38079の一覧
[0] アクセルワールド~水晶の輝き~【AW二次・オリ主・オリジネーター・リメイク版】[水晶](2013/07/17 18:38)
[1] EP01[水晶](2013/07/17 20:42)
[2] EP02[水晶](2013/07/20 14:47)
[3] EP03[水晶](2013/07/20 00:44)
[4] EP04[水晶](2013/07/21 00:37)
[5] EP05[水晶](2013/08/23 21:46)
[7] EP06[水晶](2013/09/29 22:11)
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[38079] EP02
Name: 水晶◆18240469 ID:4bc66f8a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/07/20 14:47
EP02:Day-To-Day Of The Burstlinker


水曜日。僕はいつもと同じように近所の人と差し障りの無い会話をしてからバスに乗る。時間は早朝。
兄とは時間帯が少しずれているので一人だ。
もちろん一緒になる時もあるが、その場合も兄は友人の方へ行ってしまうのでやはり一人だ。
僕達が通う小学校は家から徒歩で通うには少々辛い場所にあるため、バス通学をしている。

バスの中を見回し、まだ誰も座っていないバスの最奥に腰掛ける。
そのとき、バシィィ!という加速音と共に周囲の世界が変わり始めた。

【HERE COMES A NEW CHALLENGER!】

そして、燃え上がるようなフォントの炎文字が浮かび上がると同時にバスがボロボロと崩れ去り、鋼鉄の街が姿を表した。
変化はそれだけでは終わらない。
次いで、上から【1800】という数字が現れ、左右にぐいーっと二本のバーが伸びた。
上にある青いバーがHPゲージ。 アバターの総合耐久力を示すゲージで、これが全てなくなると負けだ。
その下にある少し細い緑のバーは必殺技ゲージだ。ダメージを受けたり与えたりする事で増え、溜まると必殺技が放てるようになる。また、一部アビリティの使用でも消費される。

ゲージの下側には、右側にCRYSTAL FAKER、左側にTITANIUM TANKと書かれている。
クリスタル・フェイカーは最早見慣れた僕の移し身であり、チタニウム・タンクは僕がこのゲーム、ブレイン・バーストを始めた頃から居る戦友……ライバルの一人だ。

僕がこの正体不明のゲームソフト、BB2039をダウンロードしてから一ヶ月と少しが経過した。

現在のレベルは2。無事、無制限コピー権を手に入れ、もう少しでレベル3に上がっても十分なだけのマージンが溜まる頃合である。
レベルアップ直後に負けて永久退場になった人も数人いるそうなので、その辺りは他のBBプレイヤーも慎重だ。

無制限コピー権とは、文字通りBB2039のアプリを無制限にコピー・配布できるという物だ。

このゲーム、BB2039は昨今のゲームでは珍しい、完全紹介型のゲームだった。

僕も一度、ニューロリンカー専用のアプリケーションショップで探してみたのだが、どれだけ探しても見つからなかった。

また、このソフトダウンロードするにも幾つか条件があるらしい。
まず、新生児の頃からニューロリンカーを着用している事。
もう一つは、相応の反射神経を持っていること。
いずれもニューロリンカーとの親和性を確かめる物だ。

その適性に関しては通信をする裏で問題無く確認できるので、子を作るのはそれ程難しい事ではない。
現に僕の周りにも兄弟を含めて数人、BBプログラムの適性を持った人が居る。
尤も、僕には子を作る気が毛頭無いのだが。

自身の体が構築され、鋼鉄の街……誰が言い出したか、魔都ステージに降り立った。

カツ、という硬質な音を立てて着地した身体を見下ろす。人形のような球体関節に、細い肢体。
その全ては、透き通った水晶のようなパーツで構成されていた。
太陽の光を浴びて、薄く発光しているようにも見えるその体を見て、僕は一度気を引き締めた。

僕のアバター、クリスタル・フェイカーには幾つかの特徴がある。
まず、防御アビリティ。
特定のクリティカルポイントを除く全部位の切断系攻撃無効、貫通系攻撃無効、電撃系攻撃吸収、光線系攻撃1/3軽減、腐食無効、炎熱半減、毒攻撃半減etc……と、ここまで聞けば完全無欠なステータスに聞こえるかもしれないが、重大な欠点も当然存在する。
まず、銃弾系のダメージが二倍になる。 そして、それとは別に射撃系のダメージに1.2倍というマイナスの補正が付くのだ。

つまり、"遠隔の赤"に属するアバター……それも、銃を持つアバターに極端に弱い。しかも、射撃系ダメージ1.2倍の所為で光線ダメージ軽減が死んでいる。

更に、氷結系攻撃と打撃系攻撃に対する防御も弱く、こちらはダメージに1.5倍の補正が掛かった。

確かに水晶のような結晶は叩かれると弱いのだが、これはどうにかならなかったものか、と落ち込んだのは記憶に新しい。

他にも色々あるが、そちらは今は省く。

しかし、打撃系以外にこれといった弱点の無い近接では無双出来る……かと思いきや、実は射撃ダメージには投擲系のダメージも含まれているらしく、その辺りの石を投げられてしまえば余裕でダメージは入れられてしまうし、硬度の差によってもダメージが入るため、一部のメタルカラーや投げ技でも普通にダメージを受けてしまうので案外無双できない。
打撃に関しては努力の結果、高確率で受け流せるようになったのである程度は緩和できるのだが、それ以外が致命的だ。

現に、近接型アバターとの勝率は大体八割をキープしているものの、射撃型アバターとの勝率は二割を切ってしまった。
もはや発見される前に奇襲を掛けるか、水中のステージにでもならなければまず勝ち目がない。
いや、相手が近寄ってきてくれればその限りではないのだが。

次に、独特の攻撃方法だ。鞭や剣、槍や銃、勿論素手の格闘型など様々な種類のアバターがいる中で、このアバター……クリスタル・フェイカーは、自身の球体関節もしくは球体関節に繋がって部位を撃ち出して攻撃する中距離型だ。最近は近距離で決着をつける事が多いが、それは本来の距離ではない。
また、射出した部位は元々繋がっていた場所……つまり、右手を飛ばしたとしたら右手首……から半径二mの範囲で自由に動かせる。
ただ、こちらは弾速も結構あり威力にも期待できるのだが、いかんせん射程が短いので直ぐに避けられてしまう。
更に、ノーマルな攻撃で射出した場合は痛覚等の感覚も繋がってるので射出した部位を砕かれたり壊されたりすると非常に痛い。 タンスに小指の比では無い程に、だ。

指を根元から順に射出していけば射程はかなり伸びるものの、射撃型程使い勝手が良い訳では無く、弾数が直ぐにバレるわ、飛ばした指を壊されて痛いわで碌な事が無い。
何故、中途半端にミドルレンジ型になったのか。 どうせなら完全に遠距離型にして欲しかった。
決まってしまったからには作り直しがきかないのだと思っても、そう考える事を辞められない。

全く、 同レベル同ポテンシャルとはよく言った物で、相性がよっぽど良くない限り無双なんて絶対にできない。

僕のフェイカーが一体どこに、どれ程のポテンシャルを割り振られているのかは知らないけれど、と僕は再び小さくため息を吐く。

フェイカーの攻撃力はあまり高くない。 寧ろ、若干低い部類に入る。
スピード等も普通だ。素の防御値はメタルカラー並に高いが、それも特出していると言える程の硬度ではない。メタルカラーでなくとも緑系にもっと硬い人もいる。
防御アビリティに関しては、他の人のデータを鑑みるにそれ程おかしくもないだろう。
確かに、幾つかある無効系の効果は凄まじい。しかし、一部のダメージ増加を考えるとそこまででも無い気がする。
遠隔系には余裕で瞬殺されるしね。

皆が平均に振られている所を、僕だけが二極、三極に振られているだけなのだと考えれば、まあ、辛うじて納得できる。

攻撃面に関しては、射出すれば威力も結構上がる為、それ程困った事でもない。本気を出せばその辺りの格闘アバターのジャブ位の威力は簡単に出せる。

チュートリアルで聞いた話によれば、ステータスが低ければその分他の箇所にポテンシャルが費やされている、ということなのだが……
それがアビリティの新規取得が早いという所であれば、僕は泣ける自信がある。
しかし、既にアビリティを開眼してしまっただけに否定できない。

話題は少し変わるが、このフェイカー、レベル1必殺技が『クリスタル・ショット』であり、通常の射出より射程・速度・威力が上がり、射出した部位の触覚や痛覚が無くなるのはいいのだが、射出した部位の回収が出来なくなるという鬼畜仕様なのだ。腕など飛ばして避けられたらまず勝てなくなる。
先日覚えたレベル2必殺技と組み合わせれば結構使い勝手良いのが救いといえば救いだ。

「考えていても仕方がないか」

僕がそう言うのと同時に、先程と同じく炎文字で【FIGHT!】と表示された。

今は対戦中。BBプレイヤーとして、全力で戦わなければ観戦者や対戦相手に失礼だ。考え事はいつでも出来る。
ちらり、と対戦相手の位置、方向を示すカーソルを見ると、結構な速度で近付いてきているらしい事が解った。僕は咄嗟に近くの建築物の中へと隠れる。

魔都ステージの属性は、硬い、電気がよく通る、音が良く響くだったはずだ。

彼を相手に正面から突っ込むのは危険だろう。
最後に戦ったのはレベルアップする前だったが、あちらも一つレベルが上がっている。 気を抜かない方がいい。

尤も、フェイカーの攻撃力では確実に押し負けるのだからどちらにせよ一旦逃げる他ないのだが。

キュラキュラキュラ、とキャタピラの音が響く。

「ち!逃げられたか!魔都ステージはオブジェクトが破壊しずらくて行けねぇや!」

そこに居たのは、戦車、としか形容のしようのない銀灰色のアバターだ。
ここからの距離は大体の3m……………それだけ解ると、僕は腕を構える。シャァァァ!という音と共に、手首の球体関節より先が飛ぶ。
タンクはまだ気付いていないようで、戦車への変形《シェイプチェンジ》を解いて全長4、5mもある人型になった状態で辺りをキョロキョロと見回している。
戦車、という呼称に負けないような重装甲の肩には小型のミサイルランチャーの様なものが付き、右手に大きな砲門を装着していた。
相変わらず怖い装備をしている。ともかく、気付かれないよう慎重に、装甲の薄い箇所を狙う。

腕がタンクに近付き、丁度いいポジションに落ち着いた所で、力を込めて一気に貫く。
ザクッ!という何かを貫いたような音と共に、タンクのHPゲージが数パーセント削れた。
それと同時に、僕の右手にも突き指をしたような激痛が走り、こちらのゲージもタンクほどではないが削れる。

「いって!何か刺さった!横腹に何か刺さった!!」
「ッツ~~~~~~!!痛いって言うのはこっちの台詞だよ、タンク!何で装甲の合間を縫っているのに、貫いた筈の僕の方が痛いのさ!」

僕がそう叫ぶと時を同じくして、ギャラリーの中からいくらかの笑い声と拍手が聞こえてきた。
皆笑ってるけど、これ、地味に痛いんだよ! と言いたくなるのを我慢して、僕はタンクを見据える。

僕が痛みに耐えていると、そこそこ高い、声変わり前の少年の声が聞こえてきた。

「ははははは!チタニウムはアルミニウムの二倍の強度があるんだぜ!
モース硬度だって6.0あるからな!お前の水晶と違って柔じゃ無いんだよ!」

それを聞いた瞬間、僕は反射的に叫んだ。

「何を寝呆けた事を言ってるのさ!クリスタルのモース硬度は7.0!こっちの方が硬いよ!それに君のチタンなんかは電気抵抗がたったの420nΩしか無いじゃないか!」
「ハッ!電気なんざ今はこれっぽっちも関係ねぇだろうが!」
「ふふん。誰が態々何の為に発電アビリティ持ちに戦いを挑んでいたと思っているんだい!
これが僕の新アビリティ!圧電効果《ピエゾエレクトリック・エフェクト》だ!」

グッとタンクの装甲に埋まっている手に力を込めると、バチバチという音を立てて多量の電気が発生する。

「うぎゃああああ!痛い痛い!地味に痛い!」
「はっはっは!今日は僕の勝ちだ!」

タンクがビクビクと痙攣し、HPゲージが再び数パーセント減る。
そしてついに、タンクの巨体が地面に膝をついた。その瞬間、足に奇妙な感覚が起こる。地面から、何かを吸い上げるような感じだ。
おそらく、タンクが膝を着いたことで地面に流れた電気をフェイカーの電撃系攻撃吸収アビリティが吸い上げているのだろう。
なるほど、魔都ステージでは地面に電気を流すことで広域攻撃にする事が出来るのか。また戦術の幅が広まった。

そんな感じでちょっとした喜びに浸りながら、ふと自身の必殺技ゲージを見る。ゲージはやっと二割というところか。
と、漸くタンクのHPゲージが八割程まで減った時だ。
タンクの紫色のバイザーが怪しく光った。

「ああああ!痛い!が!ありがとよフェイカー!必殺技ゲージは十分に溜まったぜ!食らえ!俺のレベル2必殺技!《榴散弾《シャープネルシェル!》》」

「シャープネル……………って散弾!?うおあぁ!!痛い痛い痛い~~ッ!ちょっと!僕、弾と射撃には弱いんだからやめてよ!!」
「おい!?それ辞めたら俺の存在意義はどうなる!?」
「その巨体だけでキャラは十分立ってるでしょうに!」

ガリガリガリガリ!と身体が削れる音と共に、僕のHPゲージが六割程削れ、イエローに染まる。
必死の思いで先程まで隠れていた鋼鉄製の建築物の中へ入るが跳弾し微妙に此方に当たってくる。
跳弾した事で若干威力は軽減されたのだが、それでも喰らい続けるのは拙い。
しかし、タンクがこちらが体勢を整える間何もせず待っていてくれる筈もなく、今一番聞きたくないセリフが聞こえた。

「いっくぜい!《徹甲弾《アーマーピアーシングショット》》!!」
「まずっ!?」

咄嗟に前転をすると、ドゴン!という凄まじい音が僕の鼓膜を叩いた。びっくりして振り返ると、さっきまで僕が居た所には大きな穴が空いていた。

「ふはははははぁ!見たか!レベルアップで強化された我が徹甲弾の凄まじさぁ!」

———いや、マジでシャレにならんのでやめてください。僕が食らったら一撃で死ねます。

心の底でそう呟く。離れた右手は未だにタンクのわき腹に刺さっており、そこから発せられる電流は今の所順調にタンクのHPを削っている。
しかし、それだけで全て削り切ろうとすれば時間切れは必至。逃げの戦法は使えない。
次いで、自身のゲージを確認する。HPゲージは真っ赤に染まる直前だが、必殺技ゲージは先程の散弾を食らった事でMAXになっていた。
これだけあれば、十分レベル2必殺技が使える!

「はあ……はあ……なら、こっちもレベル2の必殺技を見せてあげるよ」
「おお!来い!」

グッとタンクが身構えるが、残念ながら、最初の一手でこの必殺技の命中は確定している。
僕は、手首から先が無い右手をすっと目線位まで上げる。
タンクはそれを見て首を傾げた。 僕は、フェイカーの何もない顔の裏側でにやりと笑う。

「水晶爆砕《クリスタル・ブレイク》!」

右腕を横に振りながら叫ぶと、必殺技ゲージが二割程消費され、タンクの横腹辺りに刺さった右手からカチッという音がした。

「は?」

キョトンとするタンクの横腹に刺さったクリスタルの右手が、盛大な音と共に爆発した。
ギャラリーの視点からは、急にタンクの横腹が爆発したように見えたことだろう。
タンクが、硬い鋼鉄の街を錐揉みしながら転がり、仰向けになった所で回転を止めた。

この必殺技が出た時は、絶対これ水晶の技じゃ無いよな、と思わず呟いてしまったものだが、使い勝手はなかなか良さそうだ。

タンクのHPゲージは、八割近くあったのが残り四割まで減少している。
腰部の装甲の一部も剥がれ落ちたようで内側が見えているが、そこに攻撃したところで、致命傷にはなり得ても止めを刺すには至らないだろう。
僕はすかさず仰向けに倒れているタンクの胸部に飛び乗り、迷わず左手を構え、必殺技を使用する。

「《水晶射出《クリスタル・ショット》》」

再度必殺技ゲージが今度は二割程削れ、淡い虹色の光を纏った左手首から先がすごい速度で、今度は首もとの装甲が薄くなった箇所……クリティカルポイントに刺さる。
それだけで、タンクの身体がビクンッと一瞬震える。無駄に硬いタンクのHPは、残り一割というところでギリギリ残っていた。
これから何が起こるのかを想像したのか、タンクの身体が小刻みに震え出す。 僕は、自身のアバターに蓄積された電気によってタンクの胸部にしっかり固定されていたので気にならなかったが、これがなければきっと転けていた事だろう。

僕は、出来るだけ優しい口調で、見えないであろう顔をこれでもかという位に微笑ませ、

「逝って良し。《水晶爆砕《クリスタル・ブレイク》》」

そのまま死刑宣告をした。
いや、むしろ死刑執行だったかな、と何の益体も無い事を考えながらバーストアウト。
今日は朝から幸先の良い滑り出しだ。何か良いことがありそうな気がする。










【YOU WIN!】という文字と共に、僕の意識は元のバスの中に戻っていた。ふぅ、と、しばし戦闘の余韻に浸る。
するとまた、バシィィ!という加速音が響いた。
しかし、次に現れた文字は挑戦者を表す【HERE COME………】という文字ではなく、【A REGISTERED DUEL IS BEGINING!!】という文字だ。

どうやら、今度は僕が観客として呼ばれたようだ。

「ん。今回はアサシンと…………ナイトか」

僕が対戦者の名前を確認すると、その僕の呟きに合わせるように、後ろから声を掛けられた。

「うん。ああ、聞いた?あの二人、もうレベル3だって。凄いよね」

その声に振り返ると、一組のカップルがいた。 片方は、全身を濃い銀色の金属装甲で覆い、猛禽類を思わせる下端がクチバシ状に尖ったマスクを着けた男性型アバター。その隣に寄り添っているのは、太陽を思わせる山吹色の装甲を持ち、腰や肩や髪はまるで綻んだばかりの蕾を思わせるような装甲を持ったショートヘアーの女性型アバターだ。

「ん。ファルじゃないか。フランも。どうしたんだい?」
「フランが君が此処に居るのを見つけたから一緒に見にきたんだ」
「フェイも一緒に見よう?」

男性型アバターの方はクロム・ファルコン、女性型アバターの方はサフラン・ブロッサムという。
プレイ二日目に出会い、それから何度も一緒に喋り、時には争い、共闘した戦友であり、タンクと同じく僕の好敵手《ライバル》だ。

「それは構わないけど………………」
「ああ、見てたよさっきの!凄い対戦だったよね。タンクが散弾をぶっ放した時なんか、僕もう興奮しちゃったよ!それにしてもあの必殺技凄かったよね!」
「まあ、皆の為に自分を犠牲にしようとした事のあるフェイが持っててもおかしくなさそうな技だったけどね」
「おいおい………僕はそんな事をした覚えは無いよ?ちょっとタッグで相性の悪い射撃型に特攻かましただけじゃないか……………っと、そろそろ始まるよ」
「あ、本当だ」

ナイトとアサシンが戦闘を始める。
アサシン……ルージュ・アサシンは、僕と同じ中距離型だ。強化外装の暗器を射出し戦う。同じ系統のアバターだから、僕も彼の動きは幾つか参考にしている。
ナイト……ブルー・ナイトは、その手に持った剣の強化外装を使う近接型だ。彼の動きも、僕が近接型と戦う時には参考にしている。
アサシンとナイトはよく戦っている、所謂ライバルという奴だ。
勿論、彼らと僕も知り合いである。

「ん。ブルーが懐に入り込んでくるのを見越してワイヤーを張っていたか。流石だな」
「あのワイヤー、結構な強度が有るから絡みついたら取りにくいんだよね……」
「私も一回やられたけど、抜け出せる気がしないのよね……」

アサシンの強化外装……つまり、ブレインバーストにおける武器は、ワイヤー、ダガー、ピックという暗器群だ。
ピックで牽制し、ワイヤーで足を止め、ダガーで止めを刺す。
その理に適ったトリプルアクションで何人ものBBプレイヤーを葬り去ってきた猛者だ。
何を隠そう、僕も二、三度そのコンボでやられている。
尤も、ワイヤーで足止めされる前にピックで足の関節を砕かれて、であるが。
そんな事を話している間にもナイトとアサシンの戦闘は佳境を迎えていた。

「行くぞナイト!これが俺の新必殺技だぁ!《ヒドゥンブレード・ストーム》!!」

「うお!避けらんねぇ!」

どうやら勝負あった様だ。
アサシンの懐から大量の暗器がばら撒かれ、次々とナイトの突き刺さる。
しかしまだナイトHPゲージはギリギリ………………1%程残っていたようで、ナイトは消えずに地面に倒れ伏している。

仮にあの技をフェイカーが食らえば、貫通や切断のダメージは無効に出来ても、射撃系のダメージは無効に出来ない為、一溜まりも無いだろう。
おそらくHPゲージがMAX……………ならギリギリ耐えれるかもだけど、割と危なそうだ。
射撃ダメージが、高々二割増しになった程度でそれだけ削られるのだから凄いと思う。
——うわぁ、アレは僕も食らいたくないなぁ。
自分が食らった時を想像して、僕は肩を竦めた。

「おお、怖い怖い………………でも、面白かった。そろそろ終わりだね。
ファル、フラン。また今度。明日は三人でチームを組まない?」
「解った。じゃあ、また明日」
「うん。また明日ね、フェイ」

そんな会話を最後に加速が終わり、僕の意識は再びバスの中に戻った。

「ん。明日が楽しみだな。今日の授業は………」

学校の時間割アプリを開き、今日の授業を確認する。



雨宮 晶の日常の一コマである。





※設定

射撃系………武器、オブジェクト等が射出される攻撃。武器の投擲もこれに分類される。砕けた地形オブジェクトの破片は射撃とみなされない。
弾丸系………実弾系の武器(主に銃)による射撃攻撃。


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