「うう……お、おのれえ」
チャキ
「メッ!」
「くっ、手が出せない……」
小悪魔が悔しそうに呟く。
彼女の視線の先には二人の少女、ミサカ00002号と00003号が震えながら互いを支えるように寄り添っていた。
手術着から小悪魔とお揃いの司書服(ミサカに着せるべく用意した物)に着替えた二人は印象を大きく変えていた。
二人の持つ儚さに服による上品さが加わり小悪魔は主に似た物を感じてこれはこれで、とうっとりする。
もっとも早速愛でようとしたら槍を突きつける人形によってインターセプトされたが。
「何故邪魔するのです!?」
「……ダッテ、コワガッテルモン」
小悪魔の邪念に満ちた視線に怯え竦んだ二人はひっと後ずさる。
姉の意地か00002号自身震えながら0003号を庇い、でもこわいのか半泣きだった(00003号の方は完全に泣いている)
「可愛い……ごめん、我慢できない!」
「イロボケメ……」
一瞬済まなそうな表情になるも欲望に耐えられず飛び掛った小悪魔を人形は槍の石突で迎撃する。
だが、読んでいた小悪魔は障壁を展開し防ぎ、続けて人形が振るった内蔵式の剣の横薙ぎを翼を羽ばたかせかわす。
「これで……」
「アマイ、サンダンメッ!」
ゲシ
「きゃうん!?」
槍と剣を何とかできたと油断した所に人形が放つ創造主直伝の蹴りが小悪魔に直撃する。
悲鳴を上げ地に沈む小悪魔にミサカ00002と00003号は明らかにほっとした表情をした。
「……これであいつ等が外恐怖症になったらやべェな」
周囲の安全確認をしていた一方通行の呟きを手伝い中のミサカが聞きとがめる。
「何でよりによって小悪魔連れてきたんです、一方通行?」
「二位との戦いの消耗で一人で来るのが辛かったのとあいつならお前等の味方すると思って……」
「……味方する理由が「色」ってどうなんでしょう」
「すまねェ……だ、だが幾らか感情らしき物が出てる気が……やっぱりすまねェ」
演算の負荷とは違う理由で痛む頭を抱えた一方通行は自信無さ気に安堵する00002号等を示す。
確かに怯えたり安堵したりしているが、その原因が一方通行が連れてきた小悪魔の時点で閉まらないとミサカは思った。
というか自分で言っておいて一方通行も無いなと思ったようだ。
「……はァ、行ってくる」
「ええ、止めてきて下さい」
疲れた表情の彼は小悪魔の首根っこを掴んで起き上がらせた後拳を振り抜いた。
ゴチン
能力による視認できぬ速さの拳骨を受け小悪魔は涙目で頭を押える。
「きゃうん!?」
「……俺がこいつ見とくから、00002号と00003号の方を慰めてくれ」
「リョ-カイ……ゲンキダシテ、フタリトモ!」
『は、はい(可愛い)』
小悪魔を捕まえながらの一方通行の言葉に頷くと人形は00002号たちの元へ向う。
外の洗礼(色ボケ司書の暴走)で受けたショックを少しでも軽くするべく愛嬌のある態度で接する。
起動数年目という経験を活かして二人を慰める人形にミサカはふうと一際大きな溜息をついた。
「やれやれ……(でもまあ彼が言うとおり感情といえば感情か?)」
ややこしいのは元々シスターズ同士仲間意識があるので仕様か仕様外か、上の予定と違うか判断し難いことだ。
元々同じ境遇の存在で少なからず気にしているし計画遂行の為それ以外の損耗を避ける義務感的なものの可能性も有る。
下手すればミサカが抱く他のシスターズへの思いもそういった仲間意識の一種の可能性もあるが彼女は違うと信じた。
(ミサカとしては、この感情はそれ等とは違うと思いたい……私が外で知った喜びを共有したいというこの思いは)
しっかりとした感情、例えばチルノやインデックス、上条に向ける物と同じであったらと判断が尽かないなりに。
三人と触れ合う内に抱く幸せと感じ満ち足りた感覚を他のシスターズに知って欲しいとも思う。
「そういう意味では一応小悪魔の存在はそれの切欠と為り得る……厄介な気持ちが強いけど」
「……それに関しては謝らせてもらうわ、主の私から(認めたくないけど)本当にごめんなさい」
「彼方は確か彼女の……パチュリー=ノーレッジ様でしたか?」
「ええ、迷惑かけてるみたいであの子を躾け直そうか考え中よ……」
小悪魔から連絡を受け丁度来たらしいパチュリーが身内の蛮行を謝る、普段は白い肌を羞恥で赤くしていた。
元々じと目だが何時もの倍位にそれをきつくし邪念塗れの従者に送っていた。
それを受け小悪魔はぎくりと身を竦ませ一応のミサカたちの安全が確保されることとなった。
「……刺激という意味では私や一方通行で与えられる物よりは強いと思われるのでご容赦を」
「まああの子の暴走が役立つなら……でも貞操の危機を感じたら言ってね、お仕置きしとくから」
怒ろうにも怒れず微妙な表情になった後パチュリーはミサカを見て興味深そうに呟く。
「……深く悩み何かを決意した顔をしてる、未完から完成に至る聖者とでもいうべきか、小悪魔が気に入る筈ね」
「そういえば悪魔にとって美味しそうに見えるのでしたか?果たして褒められたのか……」
「気に入られたわね、詫びに助言でも……貴女の様に諦めず足掻く子は時々凄いことをする、経験上、だから頑張りなさい」
それは見かけ以上に長い時を生きてきた賢者としての言葉、小悪魔のお気に入りの彼女に助言を送る。
ミサカ程にややこしい立場の者は流石にいなかったがそれでも似た立場での成功例をその長い生で見てきて知っている。
そういう成功例があると、ミサカにとって希望となる一言をパチュリーは掛けた。
「……ありがとうございます」
「これはお詫びよ、礼はいいわ……それより妹さんの方へ行ったら?ああ、姉だったか、見えないけど」
「その辺は外の経験の差でしょう、でも彼女も他の妹達も自分と同じ様に変わっていくでしょう」
希望が見えミサカは笑みを浮かべ姉たちの元へ向い人形と共に小悪魔ショックから慰め始める。
「……さっきのが物語とかの話だってのは、言わなくていいか、今更だし」
「それが良いな……だが、まァ賢者様の言葉の方だ、それなりに説得力はあっただろうよ」
小悪魔を引きずってきた一方通行がパチュリーに手渡して言い、パチュリーは少し困った表情で受け取った。
コツンと手に持った本で小悪魔に軽く折檻した後パチュリーは一方通行に問いかける。
「随分ぼろぼろね、駄目なら言ってね?」
「そうしたら助けンのか?余計な世話だ、スペア如きの処理部外者に任せるかよ」
「まあお好きに……因みに弱音はいたら止め刺してたわ、小悪魔の想い人の守護者に相応しくないから」
「……期待しては無かったが厳しいな、どこかにそういう優しい女いないもンか(ああいねェや、一人も)」
思い至らず周りにやたらきつい女性しか居ないと一方通行は肩を落し、パチュリーは心外だと言いたげな反応をした。
「失礼ね、うちじゃ門番の次に、館で二番目に優しそうで人当たりが良いって評判よ」
「お前のとこが可笑しいんじゃねェの?後一番付き合いやすい門番とやらとどの程度の差だよ?」
「……ノーコメントで、ああなら優しさの証明に常備薬上げる、これの薬効は脳を休めるわ」
「苦ェ、が確かに効きそうな雰囲気だ、貰うわ(普通に助かるな、小悪魔にさっきのこいつといい……奇縁というべきか)」
他に言い様なく首を傾げながら、一方通行は護衛と同時に次への備えを始めた。
第三話 学園都市の光と闇・十二
「ちっ……(大分体晶使わせられてるな、何とか保てばいいんだが」
「……副作用は大丈夫なの?」
「脳は動く、まだ問題は無い……今は現場に、妹達の目撃情報のあった所へ行くのが先決だ」
既に当初の予定をとっくに超えた量の体晶を服用する垣根に心理定規が気遣うよう声を掛ける。
その心配げな言葉を半ば無視し(敢て考えない様にして)彼は指示を出す。
「……無事な構成員たちは同じく被害を受けなかったトレーラーに分乗して学園都市の各方面へ、広範囲に包囲網を張れ。
実験開始の為に妹達の確保を優先するが何かあれば報告しろ、俺は今は目立ちたくないからアイテムと共に行動する」
「(直々の監視、麦野を警戒してるのね)……まあ指示聞くよう言われてるし了解って訳よ」
フレンダは厄介なことになったと内心で思いつつそれを表に全く出さずに頷き浜面に車を出させた。
厄介と同時にある意味ではフレンダにとって好都合だ、こちらを見ている限り他への警戒は薄くなる。
そう最も警戒すべき麦野が、唯でさえ彼を狙う襲撃者に気を張り加えて監視もしないとならず視界に入り難い。
(……時限式の仕掛けの方は終わった、後はこいつの適当に気を引いとけばいいってわけよ)
自分より遥かに格上に見張られる状況は精神的にきついが弱音を吐いてはもっと大変な状況である絹旗に申し訳ない。
覚悟を決めたフレンダの隣で運転手の浜面はどこか余裕のある表情をしていた。
「やれやれ、やっと出発できるか……この辺り妙に『鴉』が多いな」
気味悪そうに言う通り周囲には頻繁に鴉が飛んでおり、ここを離れられ安心しているらしい。
「縁起悪いとでも?気が小さいのね、アイテムの新入りさん?」
「……心理定規だったか、元はそこ等のチンピラなんで暗部構成員のあんた等と一緒にしないでくれや」
垣根の補佐としてアイテム所有の車に乗り込んだ心理定規の言葉に浜面は肩を竦めながら言い返す。
最も最大の理由は事前に麦野に言われていたある警告だが。
(取材の時の女が郷の者なら鴉は不味い、奴だけと限らず二羽めがいる可能性もあるか……意味はわからんが注意しとくか)
そう彼女から言われていたので垣根に同行しここから移動するというのは浜面からすれば願ったり叶ったりだ。
さっさと離れたいと車の準備をする彼の視線の先で垣根が傭兵の砂皿に幾つか指示をしている。
「ここに一台トレーラーを残す、それも最もデータ管理に適したな……お前に任せる」
「各方面へ向った者への指示と、ここのいざという時の守りだな」
「ああ、これだけ大掛かりな作戦だ、最前線の俺じゃ指示し切れないだろうから」
「……わかった、他の者では心許無いし受けよう」
スクール構成員で意思を残す者は少なく柔軟な対応は取れず、他の組織の人間に任せる等論外で垣根以外では彼しかいない。
この場の指揮を任された砂皿はアイテムのボックスカーで妹達確保に向う垣根等を見送る。
垣根が言うだけあって任されたトレーラーは情報収集能力が破格で直ぐに各地から情報が集まってきた。
「……とはいえすべきことは多い、上手く一方通行と襲撃者の排除、それにシスターズの確保ができれば言いのだが」
ふうと思わず愚痴交じりに呟く、秒単位で更新されていく情報に目を通す砂皿は自分で言って気を重くした。
特に彼自身もまた心理定規と行動した際黒髪の学生らしき少女と茶のツインテールの少女と交戦している。
実際痛い目を見ているから傭兵として嫌でも慎重にならざるを得なかった。
(まあこの場にいればやっと一息つけるか……)
そう気を張り続けていたが故に安全な場所にいることで却って彼は傭兵らしくない油断をしてしまった。
自分たちにどれ程敵が多くまた自分たちにとって拠点であるこの場所が狙われ易いかを見落とす。
彼が自覚したのは突如バランスを崩した瞬間だった、車体がガクンと後方が沈む。
「……おい、何が起きた!?」
「後方の車輪に異常、反応ありません!」
「迂闊、各方面のデータに気を取られたか……」
砂皿は愛用の銃を手に外に飛び出す、この襲撃と思しき異常に対処せねばスクールの活動に支障が出てしまう。
素早く異常があった後輪を見れば鋭い刃物で切られた様に裂かれていた。
その切り口が向いているのは上、黒髪の少女たちとの戦いを思い出し咄嗟に銃器をその方向へ向け照準機を覗き込む。
すると砂皿の目は黒髪の少女、肩に鴉を乗せた黒髪の少女を捉える。
「敵襲だ、連絡を……」
「り、了か、うわあっ!?」
「何をして、急げ……馬鹿な、何時の間に!?」
「……ひゅい、私より天狗を気にしなよ、盟友?」
悲鳴に慌てて照準から目を離した砂皿にバール片手に水色の髪の作業着の少女が暢気に話し掛けた。
手に持ったバールで仲間に連絡を取っていたスクール構成員を殴り倒したと思しき彼女はにやりと笑う。
「文が仕掛けてあんたを外に誘い、車を開けたら入れ違いに私が入る……残るあんたは文が相手するから頑張って抵抗しな」
作業着の少女が上を指し、慌てて砂皿は照準機で空中の少女を改めて確認する。
すると少女は一枚の紙片を手にしたところだった、彼女は口を数度動かす。
(げ、んそう、ふう……不味い、最後までやらせるわけにはっ!)
その口の動きを読んだ砂皿は悪寒がし、咄嗟に引鉄を弾くが銃弾は行き成り横合いから吹いた強風で逸れる。
最後の一言を言い切った少女は漆黒の翼を生やし一打ちした。
「……落ちろ、霊夢の敵め」
少女が掻き消えた次の瞬間眼前に現れ同時に激しい衝撃を受けて砂皿を吹き飛ばす。
ごふっと砂皿は血を吐く、胸には一本足の下駄の形に凹みができていた。
文が蹴り付けた足を下ろす、カツンと鳴り同時に砂皿はがくりと崩れ倒れた。
「がっ、何が……」
「何って、相手の後方支援を潰しに来ました……ああ、さっきの動きですか?我が最速の『幻想風靡』です」
文が答える、彼女は風靡、風が草木を揺るがすように疾風の如き速度で砂皿に一撃を加えたのだ。
笑みから一点冷酷な表情で文は崩れ落ちた砂皿に葉団扇を突きつける。
「それと後輩を苛めたらしいのでその分も追加を、茶の髪を左右へ尻尾みたいに伸ばした子は私の同業者でして……」
「……苛めた覚えは無いんだが、こちらがやられた覚えはあるけど」
「撃とうとしたのでしょう……同属の敵は私にとっても倒すべき敵、それが天狗です」
砂皿にとって理不尽な、文にとって常識的な言葉と共に葉団扇を振るう。
それで発生した暴風が砂皿を空高く舞い上げた後地面に叩き付け、ぐしゃという音の後彼は沈黙した。
「良し、とりあえず拠点奪取成功です」
「お疲れ、文……風紀委員のとこにいた私尋ねて手伝えって言うから何かと思えば、巫女が首突っ込んでるとはね」
「……にとりさんがこちらの人間と友好を結んでいて助かりました、御陰で説得の手間が省けて」
「それでも驚いたよ、あんたがこっちに来てたのも……でも相変わらず巫女にべったりなんだね」
にとりは苦笑しながら光学迷彩を解除すると少女が現れた。
花の髪飾りをした少女で何か機器を抱えて持っていた。
一緒ににとりとトレーラーに侵入したらしい、にとりはその護衛だ。
「それじゃあ初春だったか、共通の友人がいる同士だ、その縁で手伝ってくれないか?」
「……ええ、ここの拠点から他のトレーラーのシステムに侵入し乗っ取ります!」
彼女は涙子と美琴の友人であり風紀委員の一員である初春飾利だ。
支部一のハッキング能力を持つ彼女は素早く暗部の情報網の掌握するとそれを支部へ流した。
「これで風紀委員は暗部の動きを把握しました、頃合を見計らい偽情報で誘導し無力化できます。
……今は戦力集まってないので難しいけど、それとさっきの男性の声を合成し他暗部からの接触を誤魔化してと」
「そうしてくれ、多弁な方じゃなかったしあまり無駄口しなきゃばれないだろう」
「リーダー格の男に任された以上そこそこ信頼され、それ故に疑われ難い筈です」
初春は風紀委員として暗部の暴走を危惧しここに派遣されていた。
にとりから非人道的な実験を聞き風紀委員は暗部を警戒、更に文が詳しい情報を届けられ本格的に対処することを決めた。
元々同じ学園都市の治安維持組織とはいえ強引なやり方に思うところがあったし寧ろ感謝するくらいだ。
文からすればどうやらにとりと協力できそうで、その誘いついでに伝えたのだが予想外に助かっていた。
何故なら暗部にばれない様に情報網を奪うことは初春くらいしかできないからだ(文たちでは倒すしかできない)
「……合成音声で暗部の相手をします、疑われない様少しずつ誤情報を流し混乱させると共に情報収集です」
「頼むね、ここの情報と文が集めた情報で暗部の動きは大体わかるし機を窺い一網打尽にすることも可能の筈だよ」
「はい、任せてください!(……少しでも佐天さんや御坂さんの助けにならないと)」
頷いた初春は忙しなく手を動かして更に作業を進める。
するとその過程で見逃せない情報を見つける、それも二箇所で。
「……これは!?」
「どうした、花飾りの盟友?」
「戦闘です、それもかなり大掛かりな、恐らく超能力者が参戦した……」
「場所を教えて、鴉たちを送ります!」
初春の情報を元に文は状況把握の為に二羽の鴉をそこに向かわせた。
どうやら今この瞬間自分たちが暗部の拠点を確保したのと同じかそれ以上に大きな局面の変化が起きているらしい。
「ひゅい、心配だ、節姫と超能力者の盟友が無事だといいが……」
「ここは信じるしかありません、無事であることを祈りましょう、にとりさん」
「うん、そうだね、頑張れよ、二人とも(魔利沙が見つけてるといいけど……)」
にとりは友人とその友人の身を案じ空を見上げる、同じ空の元で起きている戦いに思いを寄せた。
「……それじゃ私は行くけど段取りは頭に入ってる、お空?」
「うん!離れて少し待った後どっかーんってすればいいんでしょ?」
「そうそう、最適な瞬間に撃つの、貴女が頼りなんだから頼んだよ」
馴染みの山の住人に心配されていた涙子はお空と二度目となる攻撃に出ていた。
今後の動きを確認し涙子は鬼の酒が入った水筒を傾ける。
「ぷはっ……景気付けも済んだし行ってくる、あ酒虫ちゃんは任せたから」
「はーい、預かっとくね……それじゃあ後で合流しよう、気をつけてね!」
酒を手渡した後眼下を睨む、彼女は自分の体を浮かばせていた風を止め地上へと降下した。
(超能力者、貴様が人を超えられる器足るか我が試してやろう……なんちゃって)
「……一雨来そう、急に空が荒れてきたし、落ち着かないって訳よ」
「確かに気が滅入る……唯でさえ後ろが気になるのに神経使うな」
急激に辺りに暗雲が漂い始めフレンダと浜面は顔を顰めた。
特に運転する浜面は嫌そうな顔をした、何せ本来敵対している超能力者を運んでいるのだ。
鏡越しに後部座席に部下を伴い座る超能力者が見える、その超能力者が浜面へ聞いた。
「……おい、まだ着かないのか、後どの位だ?」
「もう少しだ、待ってくれ(機嫌悪いな、上手く行っていない方が良いんだが」
恐怖の対象である垣根に声を掛けられ一瞬ぎくりとするもそれは唯の催促でほっとする。
とりあえず刺激しないよう無難に答えながら相手の様子を伺い、余裕が無いことに気付く。
浜面から、正確には麦野からすれば隙を突き易く好都合である。
「良い感じにお膳立てできてる、ボーナス期待できるって訳よ……最後まで生き残れたらの話だけど」
「言うな、フレンダ……泣きたくなる(つか正直逃げたい、確実にぶっ殺されるからしねえが)」
弱音吐く同僚を宥めながら浜面は暗部の一員として第二位という危険物を運んでいた。
運の無いことにその危険物に目を付けた者がいた、唯ある意味では幸運で何故ならその人物は垣根だけを狙っていたからだ。
「……うん?本気で空がやばいな、こりゃ本格的に一雨来そうだな」
「ねえ、可笑しくない?ちょっと集まり方が尋常じゃないんだけど……」
異常な速度で頭上に暗雲が立ち込めていく、気味の悪さを感じて二人が顔を見合わせた時だった。
運転中の車体に衝撃が走り大きく揺らした。
「くっ、何だ……」
「きゃっ、し、襲撃!?」
「わからん……一時的に止め「いや止めるな」どういう意味だよ、第二位?」
「それが、時間稼ぎが狙いかもしれない……それより車の後方に何かいやがる」
運転席の浜面に車を止めないよう指示した垣根は未元物質の翼を展開すると身構える。
衝撃の出所は車の後方でそこから気配、そして強い殺気が感じられた。
「……そっちで対処できるか?」
「悪いな、無理だ、二位……運転で精一杯、あんたの方で何とかするんだな」
「同じく、ほら私の武器は爆発物メインだし車の中だと危険すぎるからね」
「ちっ、役立たずめ……」
「すまんね(精々消耗しろ)」「ごめんってわけよ(二位が干物になる機会潰す訳無いじゃん)」
さり気無くシートベルトを外し何時でも垣根等を残して逃げられる様にしながら二人が平謝りする。
その言葉に一瞬切れ掛かるが垣根はそれより大事だと翼を後方の気配の方へ向けた。
垣根の動きを相手も感じたか動く、ピシリと車体後方が凍りついた後木っ端微塵に砕けた。
「やあっ、また会ったね、超能力者……早速その首貰うよ!」
「また手前えか、しつこいぜ!?」
鎖のベアナックルで壁をぶち破った涙子と垣根が睨み合う。
いきなり涙子はすうっと息を吸い垣根に吹き付ける、壁同様に氷結させた後砕く気だ。
垣根は広げた翼で自分を覆う様にしてそれを遮る。
「ちっ、その程度で……おら、返すぜ!」
「おっと、やはり一筋縄ではいかないか」
垣根は再び翼を展開しそれで涙子を打ち据えようとし、涙子は水の壁を作り出し止める。
4枚の翼を水流が防ぐ、一撃目二撃目を防ぎ三撃目を止めた所で僅かに揺らぐが最後の翼の攻撃は寸前でぴたと止まった。
このままでは破られると重った涙子が水壁を水鏡に変えていたからだ。
垣根はそれに気付いて咄嗟に止め、涙子は残念そうな表情に変わる。
「ちぇ、不発、自滅ならずか……」
「……罠か、相変わらずタチが悪い女だ」
「あんた程じゃない、生まれたばかりの命を野心の為に殺そうとする方が余程最悪だよ」
言い返した涙子は拳に巻く鎖を解き何時でも放てるようにし、更に反対の手でクナイを構える。
垣根も涙子と同じ様に構える、迎撃の為に翼を広げた。
ちら
二人は睨み合い隙を窺い合う、垣根は一瞬だけ視線をこの場にいる自分と涙子以外に向けた。
「だが一人で来るとは無茶だな」
「……っ、そうね、私を忘れないで!」
垣根のアイコンタクトで心理定規が動く、突然の襲撃に虚を突かれそれまで動かなかった彼女は我に返ることができた。
以前のように相手の精神の距離を操作し自分を最も親しい人物と同等の存在にした。
これで自分たちと戦う為の戦意その物を崩すつもりだった。
「……にゃは」
だが、その試みは涙子が童女のような邪気の無い笑みを浮かべたことで崩壊する。
無邪気でありながらどこか底知れない笑みを浮かべた涙子は鎖を振るい心理定規を殴りつけた。
「そんな、何で……きゃっ!?」
「心理定規、能力が効いてない!?」
「にゃははは、甘い、私と伊吹童子の繋がりに割って入れると思ったか」
涙子が笑う、明らかに人ではできない物を感じさせる不吉な笑みを浮かべながら。
「能力を自分に使い惑わせ、今の私は自分とあの方を半ば同一視してる……他人が何しようが一番の座はやらない」
操作し手を出せない距離に侵入するならその隙間を消せばいい、涙子は一度受けた時点で相手の能力の質を読んでいた。
それに気付かず能力を使った代償が車体の壁に叩き付けられ気絶した心理定規の姿だ。
「まず一人借りを返した……にゃはは、次は貴様だ、覚悟は良い、超能力者?」
「……ガキみたいに笑って何でさっきより迫力あるんだよ」
「大江山の暴れ者、真似でもそれなりに……でも人を超えたい貴様を阻むなら丁度良い、汝傑物か?でなくばここで散れ!」
童女のように笑った涙子がふっと妖気の混じる息吹を吹き付け垣根は翼で防いだところへ更に涙子が切りかかる。
刃と翼で火花散り翼の間で殺意を乗せ視線が交差し、幻想御手以来の因縁のイレギュラーと超能力者の戦いが始まった。
「……とりあえず時間を稼ぎたいな、第四位のことを考えると頭が痛いけど」
「そろそろ来るのかあ、あたいはあの人と戦うの嫌なんだけど……一回で良いよ、疲れるんだもん」
「麦野は随分恐れられてますね、同僚として申し訳ない……超邪魔だァ、暗部共!」
麦野を恐れる上条とチルノに絹旗が申し訳無さそうに謝る。
上司の暴走が容易に想像でき同情する、それと同時に暗部を叩きのめすのは武闘派暗部の面目躍如という所だろうか。
先程パワードスーツを殴り飛ばした氷塊をまだ抱えたまま暗部をぶん殴っていく彼女戦い振りに上条たちは感心する。
「おお、凄い力だな、流石彼女の同僚というべきか」
「あたい知ってるよ、こういうの類友って奴でしょ」
「止めて、超嬉しくない……ごほん、それは兎も角この氷殴り易いんで借りてていいですか、チルノ?」
「あ、いいよ、私の能力で作ったんだしそこそこ固いだろうから思う存分使っちゃって!」
自分が直接打撃用に使うより遥かに大きい氷を振り回す彼女に関心しつつチルノは許可を出す。
それを受け絹旗は嬉しそうにしながら尚一層張り切り暗部を殴り倒していった。
「……元気だなあ、戦意十分かそれとも自棄になったのか」
「多分両方、超開き直り中です!」
何ともいえないことを自信満々に答えながら絹旗は氷塊を掲げた。
そして半ば自分を勇気付けるように雄雄しく宣言する。
「最早こうなったらシスターズを守るしかない……その邪魔をするなら誰だろうとぶん殴る、例え麦野でも!」
この氷があれば何発かは原子崩しに耐えられるかもしれないと思ったから言えることだった。
だから、宣言自体大きな意味はなく自分への勇気付けであり彼女は反応する相手がいるとは思えなかった。
それ故に上空から拍手するような音が聞こえ凍り付いた。
「へえ、随分言うじゃない、絹旗……カッコいいわねえ」
「……上にその四位がいるけど大丈夫かい、絹旗ちゃん」
「超全然ノー!」
放射する電子で浮遊し暢気に拍手する麦野に絹旗が哀れな程震える、それでも00001号を庇うのは流石の反応だが。
インデックスを巡る戦いでその恐ろしさを良く知る上条とチルノも心を奮い立たせ二人の左右を固めた。
麦野はその反応に更に感心する、やる気なことは良いことだ(彼女にとってはの話だが)
「うん、良し良し、それで良い……この場でビビッてたら消し炭にしてたところだ、興ざめだからな」
「……もうやだ、この人、部下辞めたい」
「残念、後で畑仕事任せるんだから辞表は受け付けないよ、あんたの怪力があれば大いに捗るだろう。
……それは兎も角裏切り者と宿敵共、私が来るまで良く逃げ切ってた!その場合垣根が得するので個人的に褒めてやる!」
敵でありながら賛辞を送った麦野はにやりと笑う、電子の腕を突き付け先程の絹旗のように雄雄しく宣言する。
「だが仕事は仕事……今日はそのガキを奪いに来た、ついでにさっきの言葉が真実か否か確かめてやるよ、絹旗!」
「(あ、さっきので少し怒ってる)え、ええ、来なさい、ぶん殴ってやりますよ、麦野!」
「わかってたけど説得は無理か……」
「下がって、ミサカのお姉さん!」
「……し、承知しました」
(あ、恐怖を知ったか、相変わらず劇物だな、四位)
心なし怯えた様子の00001号に後ろに下げ、絹旗を先頭に三人は麦野を迎え撃つ。
準備万全の三人に麦野は笑みを深くして急降下し突撃した。
「それじゃあ行くよ……直伝ブレイジングスター!」
「ここは私が……絶対あの馬鹿上司止めるから反撃任せました!」
電子の輝きを纏い突っ込んできた麦野を氷塊を盾に絹旗が止める。
氷塊が電子を削り突撃の衝撃が氷塊全体を軋ませる、絹旗の腕にも瞬間的に桁違いの重量が掛かった。
「くっ……」
「その程度か、裏切っておいて詰まらない幕引きだ」
「……舐めるな、その顔ぶん殴るまで倒れません!」
だが絹旗は耐えた、麦野の笑みを見て彼女を殴るためならと思えば全身に力が沸く、氷塊を渾身の力で振るった。
「……おっと、やるじゃないか、絹旗」
「ふん、感心してる間等無いですよ、撃って、チルノ!」
「うん、反撃……食らえ、アイシクルフォール!」
撃ち落される形になった麦野は感心した様に絹旗を見たがチルノの追撃に真剣な表情で演算する。
咄嗟に電子の壁を張る、だがそれを上条は読んでいた。
敢てチルノが空けた弾幕の隙間を進み幻想殺しで殴りかかった。
パリィン
「そこまでだ、第四位!」
「……相変わらず厄介な右腕だ」
壁が砕けたところに弾幕が来る、その上同時に上条が更に拳を構える。
麦野は舌打ちすると電子の腕を地面に叩き付けた。
「ちっ、奴の右腕のせいで能力が使い難い、全く面倒なことね」
煙幕で上条の動きを鈍らせながら反動で上に跳びチルノの弾幕をかわす。
だが電子の腕はそのままにする、何故なら麦野は油断していないからだ。
煙幕を突っ切ってきた小柄な影の攻撃を麦野は慌てずに電子の腕で受け止めた。
「防がれたか、超残念です」
「……そう簡単にはぶん殴らせないよ、直ぐ終わったら詰まらないだろう、絹旗?」
上司と部下、形ばかりの粛清者と裏切り者が電子の腕と巨大な氷塊で打ち合いながら睨み合う。
だが、絹旗の肩越しに彼女の援護に来る上条とチルノが目に入り、麦野はダンと後方に跳んだ。
「やれやれ逃げにこれを使うとは……少し、違う趣向にするか」
電子をブレイジングスターの要領で操り加速させ距離を取った麦野は攻め手を変えた。
「……ふふ、前回を覚えてるかしら、氷精、無能力者?」
「どういう意味?」
「あんたから必死に逃げてたな、だがそれが……」
「何、次はこっちの番だ、頑張って追いかけて来い」
ブンと麦野は電子の腕で振るって何も無い空間を裂く、すると突然そこに00001号の姿が現れた。
三人が慌てて後ろを見るとそこには誰も居らず唯電子の火花だけが見えた。
唖然とする三人に麦野が00001号の腕と首に手をやり押さえ込みながら自慢する様に言う。
「どうよ、新技は……戦闘でも間合い無視できるから使い勝手良さそうだし、その上暗部の任務でも使い所が多そうだな」
慌てて取り返そうとする上条やチルノ、絹旗を麦野は00001号を抱え人質にして動きを止めさせた。
「うっ……」
「……人質か」
「麦野、逃げるつもりですか!?」
「悪いな、仕事なんで楽しむばかりという訳にもいかない……だから仕事しつつ遊ぼうか、趣向を変えてだが」
00001号を抱えた麦野はぐるっと後ろを向くと全力で駆け出そうとする。
電子を足場に集中し加速しようとした。
「それじゃあ鬼さんこちらってね!」
そして一気に駆け出しこの場から離脱しようとする。
ガガガッ
但し空から放たれた、周囲に円を描いて閉じ込める様突き立つ刃が無ければの話だったが。
「……なっ、砂鉄の剣だと!?(これは超電磁砲の……)」
「あれは確かミサカの……」
檻のように自分を閉じこめるかの如く周りに突き立つ刃に麦野は慌てて足を止めた。
そして、彼女がそれに気を取られた瞬間更なる攻撃が空から放たれる。
同じ様に剣が数本落ちてきたが僅かに麦野から外れていて、しかし麦野は顔を引き攣らせる。
「狙いは私じゃない?いや、この軌道はまさか……」
落ちる先にあるのは降ってきた砂鉄の剣だ、砂鉄の剣同士がぶつかりカンと弾かれる。
衝突し弾かれ角度を変えた砂鉄の剣たちは00001号から逸れ麦野だけを狙った軌道で襲い掛かった。
「……この制御能力は厄介だね」
力任せに能力を使う自分ではできない芸当に目を見張った彼女は電子の腕を振り回す、剣が払い落とされ砂鉄となり散った。
しかし攻撃してきた者にとって囮にすぎない、ビュッとワイヤーが麦野が00001号を手放した瞬間放たれ奪う。
「……あっ!?」
「貴女が10032号の言っていた子ね、怪我はない」
「は、はい」
「私を無視すんな、超電磁砲!」
ふわりと空から降下した美琴が引寄せた00001号を抱き寄せながらゆっくりと着地する。
麦野が慌てて取り返そうとするが周囲の剣が浮かび上がり彼女を牽制した。
「そっちこそ後で相手するから大人しくしてなさい……全包囲攻撃、行け!」
「くっ、磁場操作か!?」
やむを得ず麦野は電子の壁で剣を焼くもその間に美琴は00001号を連れ離れていた。
「おのれ、超電磁砲……折角鬼ごっこでも、と思ったのに」
「……そんな殺伐とした鬼ごっこなんて無いわよ」
安全圏に逃れた二人に一瞬歯噛みし麦野が美琴へ愚痴るが彼女は呆れた様子で言い返した。
言い返した後彼女は後ろを、上条たちを見て僅かに肩を落とす。
「やっぱ騒ぎに首突っ込んだか、後やっぱり女の子連れだし……少し時間良いかしら、麦野さん?」
「別にいいよ、何か怖いけど……」
麦野に一時時間を貰った美琴は振り向くとツカツカチルノや上条たちの方へ歩きだし、上条が僅かに顔を青くする。
助け出した00001号をチルノと絹旗に預けると美琴はぎろりと上条をにらみ付けた。
「……その子のこと任せて良い?」
「何か怖いけどわかった」
「え、ええとわかりました(超電磁砲と知り合いでしょうか)」
「さて、相変わらずのようね、当麻先輩は……今度はどんな厄介事に首突っ込んだの?また女の子連れだし?」
「ぐっ、何時も言ってるが女の子限定で助けてる訳じゃない、後巻き込まれただけだ」
美琴に睨まれた上条はぐっと言葉に詰まるも何とか言い返す。
けれどそれは美琴を刺激しただけだった。
「へえ、毎回毎回何度も巻き込まれるものね、でもそろそろ学習したら?……何回私や教授がその都度助けたと……」
「ま、待て、寧ろ御坂と教授が原因で酷い目にあった方が多かったよなあ!?」
「……う、いや、教授よりは少なかったと思うし」
「それでも堪え性無くて他の連中に喧嘩売った二人の後始末した記憶しかないんですけどね、なあ?」
くどくど続けられては堪らないと上条が反撃し今度は美琴が言葉に詰まる。
気を逃さず上条が更に続けた。
「大体何でここにいるんだよ、どうせ計画のこと知って助けなきゃって考えて無鉄砲にも突撃したんだろ?」
「……よ、選りにもよって当麻先輩に無鉄砲とか言われた」
「うん、まあその辺はあんま変わらないけどさ……それは兎も角御坂は大人しく研究者してろ」
「そ、それなら先輩も大人しく唯の学生やってなさいよ!何で超能力者と殴り合ってるの!?」
「……俺こそ聞きたい、第四位に関しては俺は何の否も無い!」
その後も口喧嘩が続く、互いにそれなりに知ってるので交互にペースを握り又奪われながら二人は罵り合った。
ぎゃあぎゃあ言う二人に麦野は口を出せず彼女らしくない困った表情で見守るしかなかった。
「……これは予想外ね、まさか甘酸っぱいのか微笑ましいのかわからない茶番見せられるとは」
上条と美琴、オカルト趣味の研究者と行動してた二人は久々会って気が済むまで言い争い、麦野等はそれが終るまで待たされることになった。
そして、上空でぷかぷかと一人残された魔理沙は困っていた。
「何かいきなり飛び降りてったよ……思い切りいいな、あいつ」
互いに情報交換し、どうやら双方が知る涙子が首突っ込みそうな状況、つまり暗部の跳梁を知った。
彼女との接触は共通し又それ以外でも力になれそうな状況であることを聞いた。
とりあえずこのまま同行し人探し(今度は美琴から聞いた妹達も目標)を続けようとした時美琴が行き成り飛び降りたのだ。
「暇だぜ……能力で自分が知ってる電磁波かなんかを捉えたんだろうが、私を誘えばいいのになあ」
単純に巻き込みたくなかったのだろうが一人に地上に向った彼女に苦笑しながら魔理沙も追いかける。
この場は協力することにしていたし眼下で見覚えのある輝きもあった。
(ありゃ原子崩しだよな、そういやあいつも暗部だったか)
協力者への援護と馴染みの超能力者に会う為魔理沙は自分も地上に向う。
しかし、降りていく途中ある者が偶然目に入りむっと悩んだ。
(げっ、何かデカ物が……良く考えれば他の暗部も来てるか、そうすると先片付けた方が良いな)
そう考えた魔理沙は箒の軌道を僅かに変えた。
操る箒を加速させた魔理沙は見つけたある存在、美琴が向った地点へと走るパワードスーツに併走する。
「……よう、お急ぎかい、でかいの!?」
『この速度に追いつくだと、貴様は一体……』
「その馬鹿みたいな成り大方暗部だろう……そういうことなら、横からブレイジングスター!」
『ぬわあっ!?』
ズガンと、魔理沙はいきなり横合いからぶつけてパワードスーツを転倒させる。
予想外の衝撃にパワードスーツはすっ転び走っていた速度のまま明後日の方へ飛んでいった。
『な、何をする!?』
「その武器、砲はテレスティーナの使ってた奴だろう?つまり裏の人間ってことだ。
あっちは色々忙しいだろうから私が相手してやるぜ……前回にとりが戦っててテレスティーナとやれなかった分もな!」
『や、やる気か、ならば排除する(おいデータ取れ、多分例の女の同類だ!)……邪魔や指図しないならもう気にせんぞ』
テレスティーナと戦えず密かに残念がっていた魔理沙の一方的襲撃に止むを得ずシルバークロスは応戦する。
あちらこちらで飛び火し超能力者やイレギュラー、暗部に妖精や妖怪という様々な衝突に今又普通の魔法使いが乱入した。
今回のまとめ
色ボケ使い魔と主のち山育ち大暴れのち第二位受難(三度目位)のち超能力者激突(裏で魔法使いが不憫枠に特攻)
三話の隠しテーマは友情と馬鹿、それが良くわかる話でした。
次回は今回の戦いの決着や色々な再会等を予定しています。
以下コメント返信
いいい様
暗部は野心家多し(印象)裏切るので手伝えと本気ぽい芝居(痛い目云々本音)等重なり滝壺さん暗部転がしまくってます。
心惹かれるけど候補者二人という設定崩せないので無理です・・・新技や茸で普通にボスやれそうですが流石に今回は自粛。
九尾様
普段は普通に先輩呼びで怒ると頭に色々つきます、彼女は上条相手に大分遠慮なく接していく予定。
暗部は色んな制限のせいで中々上手くいきません、生け捕り目的で火力が活かせず主人公等は倒さないでも逃げればいいし。
・・・尚麦野の方は普通の悪役以上に手段を選ばないのでやりたい放題(超能力者かつ暗部の立場を最大活用してます)
宮毘羅様
寧ろ他もこうしたい位だったり、暗部のキャラは設定とか好きなので贔屓気味・・・話の都合でやられ役が多いけど。
蒼月様
・・・纏めて貰うと良くわかるヤヤコシイ盤面、慎重な組もいれば無茶な組も、特に後者の郷&麦野チーム浮いてますね。
最初に動くのは多分超電関連、勿論上げられた三者も動きますが・・・このSS二話登場でボスである垣根と因縁ある人から。