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No.37756の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)第一部・完[ベリーイージー](2015/01/18 16:44)
[1] 第一話 氷精と禁書目録・一[ベリーイージー](2014/05/27 04:16)
[2] 最強と巫女(外道)上[ベリーイージー](2014/05/27 04:27)
[3] 最強と巫女(外道)下[ベリーイージー](2014/05/27 04:41)
[4] 第一話 氷精と禁書目録・二[ベリーイージー](2014/05/27 04:51)
[5] 第一話 氷精と禁書目録・三[ベリーイージー](2014/05/27 05:05)
[6] 第一話 氷精と禁書目録・四[ベリーイージー](2014/05/27 05:25)
[7] 第一話 氷精と禁書目録・五[ベリーイージー](2014/05/27 05:36)
[8] 第一話 氷精と禁書目録・六[ベリーイージー](2014/05/27 05:43)
[9] 第一話 氷精と禁書目録・七[ベリーイージー](2014/05/27 05:55)
[10] 第一話 氷精と禁書目録・八[ベリーイージー](2014/05/27 06:01)
[11] 第一話 氷精と禁書目録・⑨[ベリーイージー](2014/05/27 06:07)
[12] 第一話 氷精と禁書目録・十[ベリーイージー](2014/05/27 06:15)
[13] 第一話 氷精と禁書目録・十一[ベリーイージー](2014/05/27 06:25)
[14] 第一話 氷精と禁書目録・十二[ベリーイージー](2014/05/27 06:32)
[17] 第一話 氷精と禁書目録・十三[ベリーイージー](2014/05/27 06:37)
[18] 第一話 氷精と禁書目録・十四[ベリーイージー](2014/05/27 06:49)
[19] 第一話 氷精と禁書目録・十五[ベリーイージー](2014/05/27 06:54)
[20] 第一話 氷精と禁書目録・十六[ベリーイージー](2014/05/27 07:06)
[21] 閑話 マヨヒガにて[ベリーイージー](2014/05/27 07:10)
[22] 第一話 氷精と禁書目録・十七[ベリーイージー](2014/05/27 07:20)
[25] 第一話 氷精と禁書目録・十八[ベリーイージー](2014/05/27 07:25)
[26] 十八・裏[ベリーイージー](2014/05/27 07:27)
[27] 第一話 氷精と禁書目録・十九[ベリーイージー](2014/05/27 07:31)
[28] 第一話 氷精と禁書目録・二十[ベリーイージー](2014/05/27 07:37)
[29] 第一話 氷精と禁書目録・二十一[ベリーイージー](2014/05/27 07:41)
[31] 第一話 氷精と禁書目録・二十二[ベリーイージー](2014/05/27 07:47)
[32] 第一話 氷精と禁書目録・二十三[ベリーイージー](2014/05/27 07:54)
[33] 第一話 氷精と禁書目録・二十四[ベリーイージー](2014/05/27 07:56)
[34] 第二話 節姫と電撃姫・一[ベリーイージー](2014/05/27 08:01)
[35] 第二話 節姫と電撃姫・二[ベリーイージー](2014/05/27 08:04)
[36] 第二話 節姫と電撃姫・三[ベリーイージー](2014/05/27 08:07)
[37] 第二話 節姫と電撃姫・四[ベリーイージー](2014/05/27 08:08)
[38] 第二話 節姫と電撃姫・五[ベリーイージー](2014/05/27 08:10)
[39] 第二話 節姫と電撃姫・六[ベリーイージー](2014/05/27 08:12)
[40] 第二話 節姫と電撃姫・七[ベリーイージー](2014/05/27 08:13)
[41] 第二話 節姫と電撃姫・八[ベリーイージー](2014/05/27 08:17)
[42] 第二話 節姫と電撃姫・九[ベリーイージー](2014/05/27 08:18)
[43] 第二話 節姫と電撃姫・十[ベリーイージー](2014/05/27 08:19)
[44] 第二話 節姫と電撃姫・十一[ベリーイージー](2014/05/27 08:22)
[45] 第二話 節姫と電撃姫・十二[ベリーイージー](2014/04/24 23:28)
[46] 取材 序章[ベリーイージー](2014/04/24 23:29)
[47] 取材編 一[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[48] 取材編 二[ベリーイージー](2014/04/24 23:30)
[49] 取材編 三[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[50] 閑話 少女の変遷[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[51] 取材編最終章[ベリーイージー](2014/02/13 01:59)
[52] 第三話 学園都市の光と闇・一[ベリーイージー](2014/07/06 04:24)
[53] 第三話 学園都市の光と闇・二[ベリーイージー](2014/07/06 04:26)
[54] 第三話 学園都市の光と闇・三[ベリーイージー](2014/07/06 04:32)
[55] 第三話 学園都市の光と闇・四[ベリーイージー](2014/07/06 04:38)
[56] 第三話 学園都市の光と闇・五[ベリーイージー](2014/07/06 04:45)
[57] 第三話 学園都市の光と闇・六[ベリーイージー](2014/07/06 04:49)
[58] 第三話 学園都市の光と闇・七[ベリーイージー](2014/07/06 04:52)
[59] 第三話 学園都市の光と闇・八[ベリーイージー](2014/07/06 04:55)
[60] 第三話 学園都市の光と闇・九[ベリーイージー](2014/07/06 04:59)
[61] 第三話 学園都市の光と闇・十[ベリーイージー](2014/04/08 22:00)
[62] 第三話 学園都市の光と闇・十一[ベリーイージー](2014/11/04 23:00)
[63] 第三話 学園都市の光と闇・十二[ベリーイージー](2014/04/17 19:16)
[64] 第三話 学園都市の光と闇・十三[ベリーイージー](2014/05/22 21:58)
[65] 第三話 学園都市の光と闇・十四[ベリーイージー](2014/04/29 17:53)
[66] 第三話 学園都市の光と闇・十五[ベリーイージー](2014/04/29 17:54)
[67] 第三話 学園都市の光と闇・十六[ベリーイージー](2014/04/29 17:56)
[68] 第三話 学園都市の光と闇・十七[ベリーイージー](2014/05/05 17:09)
[69] 第三話 学園都市の光と闇・十八[ベリーイージー](2014/05/08 22:08)
[70] 第三話エピローグ[ベリーイージー](2014/05/12 19:57)
[71] 御使堕し・零[ベリーイージー](2014/05/18 23:10)
[72] 第四話 御使堕し・一[ベリーイージー](2014/05/22 21:58)
[73] 第四話 御使堕し・二[ベリーイージー](2014/05/22 21:59)
[74] 第四話 御使堕し・三[ベリーイージー](2014/05/24 18:10)
[75] 第四話 御使堕し・四[ベリーイージー](2014/06/05 22:09)
[76] 第四話 御使堕し・五[ベリーイージー](2014/06/05 22:10)
[77] 第四話 御使堕し・六[ベリーイージー](2014/06/05 22:23)
[78] 第四話 御使堕し・七[ベリーイージー](2014/06/11 21:56)
[79] 第四話 御使堕し・八[ベリーイージー](2014/06/15 22:46)
[80] 第四話 御使堕し・九[ベリーイージー](2014/06/15 22:48)
[81] 第四話 御使堕し・十[ベリーイージー](2014/06/25 21:35)
[82] 第四話 御使堕し・十一(完)[ベリーイージー](2014/07/04 01:20)
[83] 短編 幻想から見た学園都市・一[ベリーイージー](2014/07/04 01:21)
[84] 短編 幻想から見た学園都市・二[ベリーイージー](2014/08/13 22:40)
[85] 短編 幻想から見た学園都市・三[ベリーイージー](2014/07/08 21:49)
[86] 幻想から見た学園都市・四(完)[ベリーイージー](2014/08/21 22:56)
[87] 短編 裏で起きていた出来事[ベリーイージー](2014/08/21 22:57)
[88] 第五話 呪術師の野望・一[ベリーイージー](2014/08/21 22:58)
[89] 第五話 呪術師の野望・二[ベリーイージー](2014/08/21 23:01)
[90] 第五話 呪術師の野望・三[ベリーイージー](2014/08/21 23:03)
[91] 第五話 呪術師の野望・四[ベリーイージー](2014/08/21 23:05)
[92] 第五話 呪術師の野望・五[ベリーイージー](2014/08/21 23:06)
[93] 第五話 呪術師の野望・六[ベリーイージー](2014/08/21 23:10)
[94] 第五話 呪術師の野望・七[ベリーイージー](2014/11/04 23:01)
[95] 呪術師の野望・八(終)[ベリーイージー](2014/09/03 22:02)
[96] 第六話 最後の夢・一[ベリーイージー](2014/09/05 20:42)
[97] 第六話 最後の夢・二[ベリーイージー](2014/09/07 21:10)
[98] 最後の夢・三[ベリーイージー](2014/09/12 00:45)
[99] 最後の夢・四[ベリーイージー](2014/09/17 22:05)
[100] 最後の夢・五[ベリーイージー](2014/09/22 20:49)
[101] 最後の夢・六[ベリーイージー](2014/09/25 01:25)
[102] 第六話 最後の夢・七[ベリーイージー](2014/09/30 19:37)
[103] 第六話 最後の夢・八(完)[ベリーイージー](2014/10/19 22:25)
[104] 第七話 呪術師の暗躍[ベリーイージー](2015/01/05 01:01)
[105] 第七話 呪術師の暗躍・二[ベリーイージー](2015/01/05 01:02)
[106] 第七話 呪術師の暗躍・三[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[107] 第七話 呪術師の暗躍・四[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[108] 第七話 呪術師の暗躍・五[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[109] 第七話 呪術師の暗躍・六[ベリーイージー](2015/01/05 01:04)
[110] 第七話 呪術師の暗躍・七[ベリーイージー](2015/01/05 01:04)
[111] 第七話 呪術師の暗躍・八[ベリーイージー](2015/01/05 01:05)
[112] 第七話 呪術師の暗躍・九[ベリーイージー](2015/01/05 01:05)
[113] 第七話 呪術師の暗躍・十[ベリーイージー](2015/01/05 01:06)
[114] 第七話 呪術師の暗躍・十一[ベリーイージー](2015/01/05 01:07)
[115] 第七話 呪術師の暗躍・十二[ベリーイージー](2015/01/05 01:08)
[116] 第七話 呪術師の暗躍・十三[ベリーイージー](2015/01/11 20:40)
[117] 第七話 呪術師の暗躍・十四 new[ベリーイージー](2015/01/11 20:42)
[118] 第七話 呪術師の暗躍・十五(修正)[ベリーイージー](2015/01/13 20:31)
[119] 第一部・完[ベリーイージー](2015/01/18 16:43)
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[37756] 第二話 節姫と電撃姫・十一
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:8c60013e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/05/27 08:22
鳥獣の様に鋭い瞳が空から男たち、飛び切り運が悪い彼等を見下ろす。

「急げ、早く行かなくては……」
「罠の突破に時間を取られすぎたな……」
「だが各方面を巡回していた者を呼べた、これなら……」

パワードスーツを来た一団、テレスティーナの部下たちが彼女を援護しようと戦場へ向っていた。
しかし、彼等の足元に弾幕は打ち込まれ衝撃と爆炎が吹き飛ばす。

ドガアッ

「こいし様の手を煩わせるまでも無い……あんた等の相手は私だ」

そう言って空中から彼等を見ていた少女、お空がゆっくりと舞い降りる。
慌ててテレスティーナの部下が銃撃するもそれは一瞬で溶解していく。
お空が全身から発する炎の前に弾丸は届きもしなかった。

「そんな鉛玉幾ら撃っても無駄だって(思い返せば普通に当ててくる巫女や魔法使いはどこまで規格外なんだか……)」

言いながらも彼女は構える、右腕と一体化した制御棒を彼等に向けると先端に眩いまでに輝く光球が浮かんだ。
そして、それはまるで灼熱地獄を彷彿とさせる程の激しい炎となって弾けた。

「ぐわああああっ!?」
「……こいし様の目的が果たされるまで焼かれてろ」

振り払いそこから逃げようとしても炎は彼等にしつこく纏わり付く。
数秒でスーツは限界に達し警告音が鳴り響く、だが間接は既に焼け付き碌に動くことも出来ない。

「……その鎧、パワードスーツだっけ?こいし様が忍び込み調べた耐火性ぎりぎりの火力にしてある。
だから死にはしないよ……まあ、蒸し焼きになる一歩手前くらいだろうから凄く苦しいと思うけど」

安心させるように、その実全然安心できないことを言いながらお空は漆黒の翼を羽ばたかせ舞い上がる。

「分を弁えない愚か者の排除は太陽の役目……さとり様から聞いたお話にそんなのがあったなあ」

空に舞い上がり次に向うのは他のテレスティーナへの援軍の元だ、彼女はそれ等の排除をこいしに任されていた。
オーバーキル確定の彼女ではテレスティーナの拘束は色々な意味で忙しいのでそれ以外が相手となる。

「あははは、雑魚の相手なのは少し退屈だけど……皆吹っ飛べえ!」

彼女は縦横無尽に空を飛び回りパワードスーツ軍団への爆撃を繰り返す。
それを数回繰り返した時だ、彼女はゾッとする気配を感じ素早く制御棒をその方向へ向けた。

「あれ、新手かな……でも変なのが混じってる(旧地獄の鬼みたいな殺気だ)」

テレスティーナの部下とは一線を画す気配に僅かに顔を引き攣らせ警戒する。



(一体何だよ、あの化け物みたいなガキは……)

テレスティーナと面識があるせいで援護に来た『刺青』の男はこの場にいることを絶賛後悔中だった。
『刺青の男』は心中で愚痴りながら手持ちの武器で一番ましと思われる狙撃銃を構える。
対人なら十分な威力を持つ凶器も相手の暴れっぷりで頼り無く感じ、奇しくもお空と同じく顔を引き攣らせていた。

「テレスティーナの援護み来てみればとんでもないのがいやがる……見捨てたら後で色々言われるしどうするか」

照準の先に映る炎を纏うお空の姿を見ながら刺青の男、木原数多は考える。
奇襲が望ましかったが勘がいいのか、それとも翼同様に鳥獣のように視野が広いのか相手は自分たちに気付いているようだ。
木原に警戒しているのか動きは無いが彼が下手に仕掛ければ当然相手も応戦してくるだろう。
周囲で彼の部下、猟犬部隊が攻撃命令を待っていたが相手の戦力の底が見えず決断できない。

「俺等の目的はテレスティーナの援護だ……だが、あのガキの相手はきついな」
「隊長、どうします?」

暫し考えた木原は首を横に振るう、リスクが高すぎた。

「……ちっ、割に合わん、退くぞ」
「……は?」
「あれとやり合うにはそれなりの装備が必要だ……せめて対物ライフルが要るな(当てられるかはわからんが)」

空を自由に舞い盛大に爆撃を繰り返す、機動力と火力共に厄介だ。
というか彼女の周囲を揺らめく炎を前に生半可な武器では届かないだろう。
もっともそれを当てるには一苦労だし、反撃の弾幕で更に困難ではあるが。

「元々一族の付き合いで来たが危険を冒す程の義理は無い……撤収だ」
「……了解しました、総員撤収!」

指示に従い猟犬部隊が離脱準備に入るのを見ながら彼は狙撃銃を降ろす。

「それにしてもキャパシティダウンを奪った青い髪のガキに、あそこで盛大に暴れるガキ……気になるな」

感覚的に何かが違うと思った、彼女等は学園都市にとってイレギュラーとなる気がした。
彼は学園都市の研究者として違和感を感じ、又そう感じた理由を知りたいとも思った。
同時に荒事専門の部隊として脅威に思える。

(イレギュラーが二人、いや二人とは限らないしそれ以上の可能性もある……他の木原に連絡を取るか)



「ふう、退いたか……私の目的は邪魔者を何とかすること、これでいい」

お空は相手の気配が遠ざかるのにほっとする。
要はこいしの障害とならなければ良いのだ。
安堵しながらお空は再び翼を羽ばたかせ加速する。
撤退した相手と違いテレスティーナの部下は忠誠か(あるいは恐怖かもしれない)まだ退かないようで片付けねばならない。
罠のダメージから立ち直った彼等にお空はテレスティーナの元へ行かせまいと容赦なく弾幕を撃ちまくる。

「全員片付けたら風紀委員(ジャッジメント)と警備員(アンチスキル)に引き渡せ……確かこいし様はそう言ってたね」

容赦無く空中から弾幕をばら蒔きながらお空は呟き周囲の様子に気を配る、遠くから小さくサイレンの音が聞こえた。
応援を呼びに行った固法が連れてきた風紀委員等に倒した相手を引き渡せばお空の役目は終わりだ。
そして、その頃には既にこいしが戦力と見定めた二人の少女とテレスティーナとの決着も付くだろう。

「さて、後は彼女たち……こいし様がこの件を解決に導くと見出した二人次第(頑張ってよ、こいし様の為にも」



第二話 節姫と電撃姫・十一



「来な、少しばかり遊んでやるぜ」

振り下ろされる巨大な赤子の拳を前に彼女はにやりと笑った。

ブウンッ

「おっと、緊急回避……からの、反撃のマジックミサイル!」
「……っ!??」

魔理沙は赤子の拳を高度を上げてかわすと同時に誘導弾を放った。
胴に風穴を開けぐらりと体を傾ぐ赤子、だが魔理沙はそれで油断はせず次の行動に移っていた。
素早くミニ八卦炉を頭上に向け高高度から突進してきた影、実体化した未元物質を迎撃する。

「お次はそっちだ、マスタースパーク!」

砲撃は二対の翼で体を覆うようにして防御体勢に入った人影に防がれるがそれにより相手の動きが止まった。
すかさず彼女は乗っていた箒の先端を影に向け加速させる。

「防いだのは見事だが……もう一発行くぜ、こいつで吹っ飛べ!」

全身に光を纏った魔理沙は一条の流星のように一直線に翼を生やした人影へと突進する。
それを見て影はその翼を力強く羽ばたかせた、すると最初は大気が震える程度だが次第に強まり突風を巻き起こす。
突撃してくる魔理沙を切り裂こうと不可視の刃が放たれた。

「(風か、山の連中を思い出すが……)そんなもんで止まるかよ、ブレイジングスター!」

似たような攻撃を知る魔理沙は全く意に解さない、更に魔力を強め突撃を仕掛ける。
風のはを魔力で弾き飛ばしながら彼女は人影目掛け突っ込んでいく。
影は舌打ちするような気配を見せた、翼を空に翳し陽の光を収束させ放った。

「本気になったか(それにしても手数の多い奴だ)」

桁違いの熱量、奇妙なことで唯光を集めただけでは説明できない威力が魔理沙の纏う魔力をがりがりと削っていく。

「だが……その程度で止められるか!」
「っ!?」
「そんでもって、次はそっちのでかぶつだ!」

それでも勢いに乗る魔理沙の突進は止まらない、そのまま人影を吹き飛ばすと今度は反転し地上の赤子に向う。
叩き落そうと振り下ろされた拳を接触の瞬間跡形も無く吹き飛ばしそのまま赤子を跳ね飛ばした。

「ぁっ……」
「体勢が崩れた……これなら!」

衝撃で倒れた赤子に魔理沙はすかさず弾幕を放とうと八卦炉を突きつけた。
だが、弾幕の直前でそれを空に向ける。

「これで……ちっ、羽根付きの方が再生したか」

突撃のダメージから立ち直り追いついてきた人影に魔理沙はチャージした弾幕を放った。
それで影の方は吹き飛ぶがそこに再生し終えた赤子の方が殴りかかる。
拳は先程と同じ様に高度を上げ回避するがその間に再び影は復活し参戦し、魔理沙は牽制の為に威力より範囲重視の弾幕をばら蒔いた。

「……しまった、一人じゃ手が足りないか」

空では人影が翼を振るい、高度を落とせば地上の赤子が攻撃してくる。
その上片方を倒そうにもフォローが入るのでやり難いことこの上ない、魔理沙は困ったように呟いた。

「ま、時間稼ぎだからこれでいいんだが……それにしても羽根付き、お前は一体何なんだ?」

魔理沙は急加速で叩き付けられた未現物質の翼を回避しながら人影に睨む。
弾幕で牽制し動きを止めると彼女は探るような眼で問いかけた。

「明らかにそっちの赤子と違う、明確に意思を持ってるよな?」

答えが返ってくるとは思えないが彼女は不審そうにしながら言葉を続けた。

「さっきの甲高い音で木山の制御下から離れたが……今の行動が復讐だけとは思えない、何かを試しているのか?」

利用した木山への悪意は間違いないがそれ以外に勝敗を度外視しているような気がした。
相手の戦いから魔理沙は相手が戦うことで何かを確かめようとしているにも思われた。
その言葉に人影が笑ったような気配を返す、だが同時に強烈な悪意を魔理沙は感じた。

「何だ、人間にしちゃ禍々しい気配だが……(こいつ、狂っている?いや、壊れているのか!?)
ちっ、長引くと不味い気がする、勝負を掛けさせて貰うか……スター・ダスト・レヴァリエ!」

ぞっとした魔理沙はこれ以上相手するのは不味いと思い弾幕をばら蒔き人影と赤子を牽制した。
無数の星型の誘導弾が影と赤子等の動きを止めている間に魔理沙は箒を加速させる。

(速い所終わらした方が良い、黒と茶髪の二人もそろそろだろうし……一つずつ問題を解決していくか)

加速した魔理沙が向うのはそれまで戦いを見ていたある女、元凶と言える人物がいる方向だ。

「ちっ……二体一だろ、でかぶつも羽根つきも何やってやがる」
「くっ、離せ、人質になど……」
「おいおい、大事な人質なんだから動くなよ……あいつ等を片付けるまで生きててもらわないと困るんだから」

テレスティーナは魔理沙を捕らえきれない影たちに文句を言いながら拘束した木山に銃を突き付け黙らせた。
影と赤子が邪魔者を全て排除するのを待っていた彼女はふと魔理沙が自分の方に来るのを見て顔を引き吊らせた。

「おい、こいつの命が命が惜しけりゃ……」
「そっちこそ命が惜しけりゃ何もするんじゃないぜ」

テレスティーナが引鉄に指を掛けるのと同時にその眼前に降り立った魔理沙はミニ八卦炉を向けた。
突きつけられたミニ八卦炉、チャージされた魔力の輝きにテレスティーナの動きと言葉が止まる。
彼女の脳内では目まぐるしく計算が為されたのだろう、人質が有効か、保身の為にどうすればいいのか。

(こいしからは木山を助けるように言われてるが……それを相手は知らない、なら確実性に欠ける人質にはしないだろう)

そう魔理沙が考えたとおりテレスティーナは銃を木山から離した。
彼女は銃を魔理沙に向けると同時に拘束していた木山を蹴り付け押し出した。

(やっぱりな、保身目的である以上そうするだろうな、一瞬でもこっちが怯めば上等だし射線を遮る壁にもなるし)

だが、魔理沙は予想していたのでその動きに少しの停滞も無い。
彼女はミニ八卦炉を持っている方ではなく逆の手を振るった。
壁となった木山の肩越しに箒の柄を突き出しテレスティーナの腕へと思い切り叩き付けた。

ガキィン

「しまっ(銃が……)」
「拾わせるか!」

手から零れ落ちた銃をテレスティーナが拾おうとしたが魔理沙は容赦なくその手を踏みつける。

バキ

「ぐあっ……」
「これで先生を人質にはできない……後はあっちの羽とでかいのを片付けるだけだ」

魔理沙は木山を背に庇いながらチャージし終えたミニ八卦炉をテレスティーナに突きつけた。
いつでも撃つころができるがこいしに頼まれた仕事はそれではない、魔理沙は後ろに庇った木山に話しかける。

「無事かい、木山先生」
「あ、ああ、何とかね」
「そうか、それなら良かった……ところで気付いているか?」

魔理沙の問いに木山は不思議そうな顔をしたが次の言葉でその表情を強張らせた。

「そこの女、人間とは思えないくらい醜いだろ……あんたが同じ様に存在になりかけていたってことに」
「私が奴と?」
「だって、そうだろ……あの女は実験の為にあんたの教え子を虐げ、あんたは教え子の為に沢山の人間を利用しようとしたんだから」
「それは……確かにそうだな」

反論しようとしたができず沈黙する木山に魔理沙は同情しながらも続ける。
慰めではなくあくまで事実だけを木山に告げた。

「実験に関った奴等、救う為に犠牲者を出したあんた、あんたに縋り手にいれた力で暴走した幻想御手使用者たち……
誰かが落ち着いて周りを見て被害を出さないよう行動していればここまでの混乱にはならなかった、それはわかるな?」
「……あ、ああ、そうだ」
「私は余所者だ、だから第三者視点で冷静に見れた……どいつもこいつも自分と周りの狭い範囲しか考えてない」

魔理沙は掃き捨てるように関係者たちに苦言を呈す。
彼女は行きずりの旅人に過ぎないがだからこそ誰よりも事態を把握できていた。

「言ってしまえば負の感情に乗せられた被害の押し付け合い、それが今起きてる騒ぎの正体だ」

誰かが自分の番で止めていたらもっと大人しい形で騒ぎは治まっただろう、しかしまだ遅くは無い。

「先生、仮に先生のやり方以外で教え子たちを救う方法が有るとしたらどうする?」
「何……そんな方法があるのか?」
「あるかもしれない、助けられるかもしれない……だが、それとは先生には別にするべきことがある」
「……君は私に罪を償えと?」
「当然だろ……どんな理由であれしたことの責任は取るべきだ、異変を起こした以上報いを受けるべきだ。
あんたが幻想御手を広めたせいで使用者が暴走し怪我人が出たしそいつ等も昏睡し始めてるんだからな」

木山は魔理沙の言葉に俯いたが暫く考え込んだ後頷いた。

「君の言うとおりだ、私は冒した罪の罰を受ける……だから、子供たちを救ってくれ」
「……と、木山先生は言ってるがお二人さんはどうする?」

木山の答えに満足しながら魔理沙は近づく二つの気配に聞いた。

「御坂さんと話し合った結果この状況で意地を張る気は無いです……自首すると約束したなら何も言いません」
「そうか、まあ妥当だと思うぜ」

複雑そうな感情が混じるその言葉を聞いた魔理沙はにやりと笑うとミニ八卦炉から光を放出する。
それはテレスティーナではなく再生し終えた影と赤子たちを吹き飛ばした。
光に飲まれ地に転がる影たちから既に興味を失った魔理沙は木山を箒に乗せ浮かび上がる。

「とりあえず段取りはこれでいい、人質は確保したし敵も適当に痛め付けたから好きにどうぞ」
「……あなたなら倒し切れたのでは?」
「倒すだけならな……知り合いに頼まれたのはここまで、それに流れ弾飛び交う戦場に木山先生を残すわけにも行かないし」

魔理沙の言葉に涙子と美琴は少し不思議そうにしながらも頷いた、二人にしても好都合だ。
騒ぎを終わらすと決めた以上学園都市を混乱させる存在を見逃す気は無く、また個人的感情でも叩いておきたい。

「お言葉に甘えて……少し複雑ですがこの状況で感情の赴くまま暴れるつもりはありません、いい加減誰かがこの騒ぎを終わらせるべきです」
「そうは言ってもやることは実は余り変わらないのよね……そこの木原だったか、叩き潰し大人しくさせるわけだから」
「……ま、まあ怒りのぶつけ先は必要ですし、それに最初に他人に被害を押し付けた以上その報いを受けるのが筋でしょう」

そう言って頷き合った二人は同時にテレスティーナを睨み付けるが、その前に立ち塞がる者たちがいた。
それまでの戦いで二人と戦い脅威に思う影と赤子たちだ。

「やる気みたいだけど……どうする、佐天さん?」
「ふむ、先に片付けねばいけないようですね……やりますか」

まず涙子が前に出た、二人目掛け突進する影たちの前に遮るように立つ。

「先に仕掛けますね、御坂さん……東風(こち)吹かば」

ビュオオッ

涙子が白梅の花を翳すと同時に風が吹き影たちの動きを止めた。

「におい起こせよ……梅の花」

涙子が歌を口ずさみ、それに準じ風は勢いを強めた。
相手が動けないほどの風の中それを気にせず立っていた涙子は白梅の花を強く握る。
再び開いた時掌中には一つの種子が有った、彼女はそれをゆっくりと地に落とした。
種子は弾け純白の輝きを放ち一瞬で天まで届く光の柱が形成される。

「……主なしとて春を忘るな」

涙子が手を当てると光の柱は跡形も無く消失する、次の瞬間そこには満開の花を咲かす梅の大樹が聳え立っていた。
ダッと涙子が地を蹴り大樹の頂点に立つ。

「天神の最初の奇跡を眼に焼き付けなさい……零なる奇跡『天神の飛び梅』」

戦場一帯に芳しい梅の花の匂いが蔓延していく。
中心に佇む涙子から圧倒的な存在感が感じられた。
彼女は唯一言呟く、辺りに響くその言葉には抗い難い何かが込められていた。

「この梅は天神の象徴、私の力を何倍にも増幅する……『動くな』!」

彼女の言葉を聞いた瞬間人影と赤子は凍りついたように動きを止めた。

「私の能力自体は種族的には良くあるもの……人心を惑わし陥れ……そして、天災という形で災いを齎す」

人心を惑わすという人外の存在としては何の変哲も無い能力が発動し、更に涙子はもう一つの力を解放した。
ペキリ、彼女が梅の樹の枝を一つ折りそれを握ってヒュンッと振るった瞬間影は両断された。
一陣の突風、見えざる刃に切り裂かれた上に刻まれた傷口はビキビキと凍りついていった。

「そこでじっとしてて、私が仕事を終えるまで……」
「っ!?」

ダメージと同時に凍結させ影の動きを止めた涙子は次に赤子の方を見やる。

(全力で仕留めにかかってもいいけど、それよりは……別の方法の方がいいよね)

低能力者、無能力者の反抗、学園都市はそれなりに長く苦労しているのはわかるのでそれを力で叩き潰すことに少し抵抗が有る。
だから涙子は人心を惑わす能力を応用し赤子を形成する者全てに声を届けた。

「貴方たちが能力のことで苦労しているのはわかる……自分を虐げた学園都市に復讐したいとも考えるのも一応わかるよ」

彼女の声は距離を超えAIM拡散力場で繋がった全ての者に届く。
天神の逸話、道真の屋敷に咲く梅の花が遥か彼方、僻地に追われた道真に届きその心を安らがせたように。

「でもね……あそこの外道、テレスティーナの思うように利用されるのはどうかと思うよ」

涙子の言葉に赤子がぎぎっとぎこちなくテレスティーナを見た。

「怒りのままに暴れても誰かのいいように利用されるだけ……落ち着きなさい」

涙子の言葉に小さく頷いて赤子は動きを止め先を待つ。
相手が一応落ち着いたのを確認し(まあ利用されていると知ったのもあるだろうが)涙子は本題に入った。

「さっき私は気持ちがわかると言ったけど……貴方たちの行動に関しては間違っていると私は思います。
手に入れた能力で学園都市で暴れるのも、自身を虐げた相手に復讐するのも間違いだと言わせて貰います」

無関係な人間に被害が出た時点で間違いだと涙子は考えている、もっともそうは言っても相手は納得しないだろう。
説得は難しいがテレスティーナは兎も角彼等まで叩きのめすのは気が重い。
又治安維持の為に日々頑張っている人物を知る以上(友人なら尚更)穏便に話を収めるようにするべきだろう。

「私はその人の価値は為したことだと思っています、例を挙げれば……私には触れた物の温度を保つという低能力者の友人がいます」

だから涙子は説得を続ける、少しだけその方向を変えて。

「温度を一定にする、そういう些細な能力ながら彼女は特技のPC操作技能を活用し一生懸命治安を守るため頑張ってます。
能力ではない技能とそれを磨き続ける日々の努力、そして正義感、それだけで日々頑張っている……彼女は能力至上主義と対極の存在です」

学園都市でまるで絶対のように語られる能力至上主義、そんな物くだらない思い込みだと思っている。
何故なら低位の能力者でありながら風紀委員として代わり等いない重要かつ貴重人物がいるからだ。
能力なんてその人の一面に過ぎないと、その他の方法で高位能力者に出来ないことを軽々とこなす人間がいると涙子は知っている。

「今の一例で高位能力者でなくとも学園都市で活躍する人間いるとわかったでしょう、それに対し貴方たちはどう?
無軌道に暴走し学園都市中に被害を出し、その上テレスティーナに利用された……あんた等馬鹿じゃないの!?」

涙子の言葉に赤子が、AIM拡散力場の源である者たちが動揺する気配が伝わってきた。

「低位でありながら風紀委員として活躍する人物がいる以上能力が無いことは捻くれ暴走の免罪符にはならない……反省しろ、馬鹿共が。
そして反省したら幻想御手の件の自首しに来い!その後能力とそれ以外を磨いて暴力以外で場所を作って見せろ!」

暴走の責任は他にはないという指摘、あくまで自分の責任であると涙子に指摘され彼等は我に返り己のしたことが唯の暴力だと自覚した。
涙子の一喝にびくりと震えた後こくこくと頷いて赤子は消えていく。

「少し言い足りないけどこれ以上言えるとしたら被害を受けた人だけ……初春や黒子さんを初めとした人たちに許しを請いなさい」

消えていく赤子にそう声を掛け最後まで見送った涙子はその後人影の方を見やる。

「後はあんただけね……こいつは説得できそういないなあ」
「そうね、恨み辛みがかなり濃くて捻くれてそう」

梅の木から降りた涙子の言葉に美琴が頷く。
相手からは悪意と殺気以外は感じない、人の負の面を見続けでもしなければこうはならないだろう。

「……こいつは完全に倒した方がいいでしょうね」
「それが良いわね、逃がすと多分不味いことになる」
「御坂さん、先手良いですか……止めは任せますから」
「思い切りどうぞ、佐天さん」

美琴の言葉に頷くと、コンコンと飛び梅の枝で肩を叩きながら涙子がゆっくり歩き始めた。
凍結した傷のせいで動きのぎこちない人影が光を収束させ放つがそれは枝の一払いで弾かれる。

カンッ

「っ!?」
「ここまでの戦いで沢山恐怖されたので……今までとは違いますよ」

人外故にそれは糧となる、もっとも涙子の普段の立ち振る舞いが他人に恐れられる類のものではないからそれ等は集めるのは得意ではないが。

(この辺普通過ぎるせいで妖怪の格的に微妙なんですよねえ……向いてないのは自分でもわかってるけど)

自分の欠点に苦笑しつつ涙子は飛び梅の枝を影へと突きつけた。

バアッ

「散れ、梅の花……嵐の如き勢いで弾幕となれ」

梅の大樹がその身を揺らす、咲き誇る無数の梅の花が花弁が散り嵐の如き勢いで舞い上がる。
そして、それは渦を巻き高速で影へと襲い掛かった。
影は翼を振るい必死に払い落とそうとするが無駄だった。
翼で捉え切れず影は冷気と電撃を受け、更にそれで動きの止まった瞬間涙子が仕掛けた。

「やっぱり巫女には遠く及ばないね……ま、あの人はマイペース過ぎて驚いてくれないから相性最悪で比べ物にはならないけど」

全力でその懐に飛び込んだ涙子が梅の枝を人影の胴体に渾身の力で叩き付ける。
バキン、そんな異音が響き、影を形成する未元物質の体全体に亀裂が走った。

「……っ!??」
「そして、バトンタッチです」
「後は任せて、佐天さん!」

そこにバアアッと真っ赤な外套をはためかせ磁場を操り加速した美琴が追撃する。
加速しその勢いのまま紫電を纏った拳打を亀裂の中心である影の胴へと叩き込んだ。

「これで決める……教授に教わった演算、それをアレンジした取って置きを喰らえっ!」

胴の亀裂部分を貫いた美琴の拳に紫電が収束する。
そして、それが最高潮になった瞬間紫電の十字架が輝く。

バチバチバチイィ

「……一欠けらも残さず燃え尽きろ!」

美琴が自分の身長よりも巨大な十字架、雷光で作られたそれを一閃した瞬間電流は拡散し全てを焼いていく。
それは一瞬で影に全身に伝播し内部から焼き尽くされた影は苦悶の声を上げた。
その時美琴は初めて影の明瞭な声を聞いた。

『くそがっ、俺を利用した奴等に一泡吹かせるはずが……』
「え、しゃべっ……あんたは一体?」
『ふん、いいさ、新しい戦い方を手に入れた……これで借りを返せる』
「ま、待ちなさい……消えたか」

人から悪意だけを抽出したようなどす黒いものしか感じ取れないような声だった。
慌てて聞き返すも答えは無く美琴は最後に聞いた物が何かわからず困惑する。

「(第二位か、少し気になる、念の為調べるとして)後残るは……」
「……ええ、奴だけですね、御坂さん」

涙子と美琴はゆっくりと最後に残った女を見やる。

「あ、ああ……」

最後の一人、テレスティーナはここから逃れ得る術を完全に失い呆然としていた。
それでも身の危険を感じたか二人の視線にはっとし慌てて逃げようとした。

「くっ、こんなところで……」
「やれやれ、諦めの悪い……少し痛めつけておくべきか」
『……その必要は無いよ、お姉さん』

逃げようとするテレスティーナの背にクナイでも投擲しようとした涙子だったがそれよりも黄緑色の少女が動いた。
空中から放たれた放たれた『ハートの形状をした寒色の弾幕』がテレスティーナに降り注いだ。

『逃げられると思ってるの?……抑制スーパーエゴ!』

寒色の弾幕が防御を失ったテレスティーナを打ち据え、悲鳴を上げ地に倒れた彼女に『進んだ後反転し返った』弾幕が更に打った。
そのまま何らかの見えざる力で弾幕を放った『彼女』の方へと引寄せられる。
そして、か細い腕がテレスティーナの首に掛けられゆっくりと絞めていく。

ギリギリ

空中でテレスティーナを吊り下げているのは黄緑色の髪の少女が氷のように冷たい眼を向けた。

「ぐっ、があああ!?」
「全く面倒をかける……自分の番と思ってこの機に苦しんでときなよ。
そっちのお姉さんとは少し話したけど一応挨拶しよう、私はこいし……ま、よろしく」
「ああ、あなた、あの時の!?」
「佐天さん、知ってる子?」
「……助けられ、いや、どうなんだろ?」
「あー、あの時はごめんね、お姉さん」

少女、古明地こいしはテレスティーナの首を絞めるのとは逆の腕を掲げ涙子に謝った。

「ぐああ、ガキ、手前は一体!?」
「私?あなたのせいで嫌なことを……人がどこまで醜いかを思い出してしまったの。
だから、あなたの敵に回ることにしたんだよ……少し八つ当たりみたいだけど」

こいしはテレスティーナを責め上げながら彼女の問いに答えた。
嫌悪の感情を隠さず答えた彼女はその後一点笑みを浮かべてその続きを口にする。

「それとね……『あの子たち』は人の綺麗な部分を見せてくれた、虐げられながら大切な人を思いやった。
……やっぱりそういう見てて気分の良い方を助けたくなるじゃない?だから、ついつい肩入れしちゃったの!」

そう言いながらゆっくりと高度を降ろしたこいしは地に降りテレスティーナから手を離す。

「げほっ、がはっ……」
「そちらの二人はこの人をもう少しやり合いたいだろうけど……少し待って欲しいな」

咳き込み酸欠寸前だった彼女は必死に息を吸う、だがその悲惨な姿にこの場の誰も同情はしなかった。
それは涙子と美琴に待つよう言ったこいしも同様だ。
いや、あるいは彼女たち以上に憎らしそうに見る。

「その女はあの子たちを救う鍵……実験に使用された体晶の源なの、だから活かしておいて欲しいな」
「ああ成程……解剖でもするのね」
「そこまでしないけど本人のデータが有れば大違いだと思う……中和する為の薬を作るのに」

まるで物を見るような冷たい視線がテレスティーナに集中する。
傲岸不遜な態度を崩さなかった彼女が青褪め全身を振るわせた。
それを愉快そうに見下ろしながらこいしは木山に優しく話しかけた。

「木山先生、私はあなたのことを知っているよ……普通じゃない物を見、聞くことが出来るから」
「……まさか、あの子たちか?」
「ええ、だから助ける手伝いに来たけど……それとは別にすべきこと、償うべきことがあるのはわかってるよね?」
「ああ、私は罪を犯した……その罰を受けねばならない、そうしなければ私は唯の外道となる」

木山は涙子と美琴の方を見てそう言った。
助けた際の彼女たちの言動は正しく尊い物だと感じていたからだ。
同時にそれを無視すれば嫌っていた人種と同じになってしまう。

「わかってるなら良い……風紀委員が来るまで然程時間が無いから急いだ方がいいよ、木山先生」
「ああ、まずはデータを取らねば、道具はその女の物を使うか……その後はどうするか」
「うろついている間『無意識』に聞いたんだけどこの街には『冥土返し』とかいう人がいるらしいよ」

自首を決めた木山だがその前にやらなければならないことがある。
データを取る場所に関してはテレスティーナがここに来る時使ったトレーラーの設備を使えば良い。
また、手に入れたデータを託せる相手に関してはこいしが心当たりが有った。
人を救うことならば協力を惜しまず、その上学園都市にコネ(というか代表者への貸し)を持つ人物である。
テレスティーナから得られたデータ、それに今まで木山が調べた情報を併せれば助けることができる筈だ。

「さてこっちはこれでいいけど、謝罪と振り上げた拳の振り下ろし先について……」

木山に関しては問題無い、それとは別にこいしはすることがあった。
それはこの件を解決するのに手伝ってもらった少女等への謝罪とお礼だ。

「……まずはごめんなさい、誘導とかしたり落としたりとか」
「人助けというなら怒る気は無いよ、こいしちゃん」

ぺこりと頭を下げるこいしに涙子は首を振り止める、気にしていないという風に笑って頭を上げさせた。
その態度にほっとしながらこいしはせめてものお詫びに蹲まるテレスティーナの背を蹴り押し出した。

がっ

「ぐあっ……」
「えいっ……折角だし一発やっとく?」
「……いいの?」
「ま、抵抗できないよう心身ともに痛めつけておきたかったし」

何でもないことのように言ってこいしはテレスティーナを涙子の前に差し出した。
涙子と美琴はその言葉にコクりと頷いた、何故なら彼女はこの一件の全ての元凶なのだから。

「こいしちゃん、どこまでやっていい?」
「生きてりゃいいんじゃない?データ取りに風紀委員も聞きたいことがあるだろうし」
「了解……御坂さんはどうしますか」
「そうねえ、元々この女の実験で大変なことになったんだし……やるか」

二人は楽しそうに笑みを浮かべ蹲るテレスティーナの前に立った。
悲鳴をあげテレスティーナは顔を恐怖で引き攣らせた。

「ひっ、く、来るな」
「……大丈夫、直ぐに済むから」
「ええ、あなたのせいで昏睡状態の子と違い一瞬よ」

二人が浮かべるのは優雅な笑み、だがぞっとするような酷い悪寒しか感じなかった。

「馬鹿なことを考えられないように……頭を冷やしてあげよう」
「いえ、気付けに電撃の方がいいわ、夢からさめれるようにね」
「それじゃあ同時に行きましょう」
「そうねえ、なら一二の三……」

涙子はスウッと息を吸い呼気に妖力を込め、美琴は腕を翳しバチバチと火花を散らせる。

「……凍りつけ!」
「黒焦げになりなさい!」

放たれた冷気と電撃がテレスティーナを襲う。
激痛で意識が遠のく、全身に凍傷と火傷を同時に負うという奇妙な経験をした彼女が思い浮かべたのは水色の髪の技術者の言葉だった。

「があああっ!?(……これが壁か、こんな非常識な連中超えられるかよ!?)」

それこそが限界なのだと気付かないままに彼女は倒れ、いや唯蹴散らされた。



「派手に暴れたもんだ、郷でも中々いないぞ」
(……魔理沙だけには言われたくないよねえ)
「何だよ、こいし、何か言うたげだが……」
「何でもなーい」

こいしと木山は魔理沙に手伝ってもらいテレスティーナを運び出し、残ったのは涙子と美琴だ。

「ふう、満足です」
「……私もよ、佐天さん」

最後の敵であり全ての元凶であるテレスティーナに止めを刺した涙子と美琴は顔を見合わせ笑う。
そうして、それまでの戦いを振り返り二人はほぼ同時に頭を下げた。

「御坂さんのおかげで色々助かりました、ありがとうございます」
「とんでもない……私こそ佐天さんがいなかったら黒子の借りを返せなかったわ」

互いに頭を下げた二人はぷっと笑い出す。

「それじゃあお互い様ってことで」
「……そうね、そうしましょう」
「あはは、何と言うか私たち傍から見ると……」
「ふふっ、多分間抜けというか可笑しいかもね」

頷き会い同時に頭を上げた二人はおかしくなってまた笑みを浮かべた。
そうして暫し笑っていた涙子だがあっと声を上げ、だらだらと冷や汗を流す。

「そういえば……良く考えたら私、風紀委員の人に怒られるかも」
「そうなの?」
「ええ、幻想御手を追う時売人から強引に聞き出したから……説得手伝ってくれません、御坂さん?」
「うーん、無理ね、情報を手に入れるのに風紀委員ハッキングしたから……一緒に怒られましょうか」

涙子は頼ろうとして断られがくりと肩を落とし、御坂は諦めた表情でぽんぽんと彼女の肩を叩く。
そう言ってる間にもその相手は近づく、遠くににとりと共に駆けてくる固法、それに続く風紀委員の姿が見える。
色々と非常識だが少し抜けたところのある二人は覚悟したように苦笑いしながら固法たちに手を振った。



魔導図書館を巡る戦い、あるいはとある超能力者の暴走、その裏で起きたもう一つの事件はこうして幕引きとなった。
二人の出会いは暫し後に魔人アレイスター・クローリーでも予想できない事態を巻き起こすことになるが、それはまだ少しばかり先のことだ。



量的に何話か分を纏めて投稿したので少し時間が掛かってしまいました、終盤だけに分け難いし。
短編数話、軽めの話やネタにしかならない話を書いてから第三話「絶対能力者計画」編を投稿予定です。
今回仲良くなった佐天さんと美琴の魔改造組で色々動いてもらおうかなあと画策中。

以下コメント返信

いいい様
本当使い勝手の良い方々です、超電磁砲関係のイベントでは特に・・・あまり連発は出来ないけど(今回みたいに話を強引に動かす位か?)

九尾様
まああんまり理性的ではありませんがね(ああ言いつつ二人とも切れてる)とはいえ負のリレーの一番最初、テレスを叩けば大体解決ですが。
因みにこいしが全員を集めたのは関係者の不満やら諸々を元凶(勿論テレス)に向わせたかったから。


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