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No.37756の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)第一部・完[ベリーイージー](2015/01/18 16:44)
[1] 第一話 氷精と禁書目録・一[ベリーイージー](2014/05/27 04:16)
[2] 最強と巫女(外道)上[ベリーイージー](2014/05/27 04:27)
[3] 最強と巫女(外道)下[ベリーイージー](2014/05/27 04:41)
[4] 第一話 氷精と禁書目録・二[ベリーイージー](2014/05/27 04:51)
[5] 第一話 氷精と禁書目録・三[ベリーイージー](2014/05/27 05:05)
[6] 第一話 氷精と禁書目録・四[ベリーイージー](2014/05/27 05:25)
[7] 第一話 氷精と禁書目録・五[ベリーイージー](2014/05/27 05:36)
[8] 第一話 氷精と禁書目録・六[ベリーイージー](2014/05/27 05:43)
[9] 第一話 氷精と禁書目録・七[ベリーイージー](2014/05/27 05:55)
[10] 第一話 氷精と禁書目録・八[ベリーイージー](2014/05/27 06:01)
[11] 第一話 氷精と禁書目録・⑨[ベリーイージー](2014/05/27 06:07)
[12] 第一話 氷精と禁書目録・十[ベリーイージー](2014/05/27 06:15)
[13] 第一話 氷精と禁書目録・十一[ベリーイージー](2014/05/27 06:25)
[14] 第一話 氷精と禁書目録・十二[ベリーイージー](2014/05/27 06:32)
[17] 第一話 氷精と禁書目録・十三[ベリーイージー](2014/05/27 06:37)
[18] 第一話 氷精と禁書目録・十四[ベリーイージー](2014/05/27 06:49)
[19] 第一話 氷精と禁書目録・十五[ベリーイージー](2014/05/27 06:54)
[20] 第一話 氷精と禁書目録・十六[ベリーイージー](2014/05/27 07:06)
[21] 閑話 マヨヒガにて[ベリーイージー](2014/05/27 07:10)
[22] 第一話 氷精と禁書目録・十七[ベリーイージー](2014/05/27 07:20)
[25] 第一話 氷精と禁書目録・十八[ベリーイージー](2014/05/27 07:25)
[26] 十八・裏[ベリーイージー](2014/05/27 07:27)
[27] 第一話 氷精と禁書目録・十九[ベリーイージー](2014/05/27 07:31)
[28] 第一話 氷精と禁書目録・二十[ベリーイージー](2014/05/27 07:37)
[29] 第一話 氷精と禁書目録・二十一[ベリーイージー](2014/05/27 07:41)
[31] 第一話 氷精と禁書目録・二十二[ベリーイージー](2014/05/27 07:47)
[32] 第一話 氷精と禁書目録・二十三[ベリーイージー](2014/05/27 07:54)
[33] 第一話 氷精と禁書目録・二十四[ベリーイージー](2014/05/27 07:56)
[34] 第二話 節姫と電撃姫・一[ベリーイージー](2014/05/27 08:01)
[35] 第二話 節姫と電撃姫・二[ベリーイージー](2014/05/27 08:04)
[36] 第二話 節姫と電撃姫・三[ベリーイージー](2014/05/27 08:07)
[37] 第二話 節姫と電撃姫・四[ベリーイージー](2014/05/27 08:08)
[38] 第二話 節姫と電撃姫・五[ベリーイージー](2014/05/27 08:10)
[39] 第二話 節姫と電撃姫・六[ベリーイージー](2014/05/27 08:12)
[40] 第二話 節姫と電撃姫・七[ベリーイージー](2014/05/27 08:13)
[41] 第二話 節姫と電撃姫・八[ベリーイージー](2014/05/27 08:17)
[42] 第二話 節姫と電撃姫・九[ベリーイージー](2014/05/27 08:18)
[43] 第二話 節姫と電撃姫・十[ベリーイージー](2014/05/27 08:19)
[44] 第二話 節姫と電撃姫・十一[ベリーイージー](2014/05/27 08:22)
[45] 第二話 節姫と電撃姫・十二[ベリーイージー](2014/04/24 23:28)
[46] 取材 序章[ベリーイージー](2014/04/24 23:29)
[47] 取材編 一[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[48] 取材編 二[ベリーイージー](2014/04/24 23:30)
[49] 取材編 三[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[50] 閑話 少女の変遷[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[51] 取材編最終章[ベリーイージー](2014/02/13 01:59)
[52] 第三話 学園都市の光と闇・一[ベリーイージー](2014/07/06 04:24)
[53] 第三話 学園都市の光と闇・二[ベリーイージー](2014/07/06 04:26)
[54] 第三話 学園都市の光と闇・三[ベリーイージー](2014/07/06 04:32)
[55] 第三話 学園都市の光と闇・四[ベリーイージー](2014/07/06 04:38)
[56] 第三話 学園都市の光と闇・五[ベリーイージー](2014/07/06 04:45)
[57] 第三話 学園都市の光と闇・六[ベリーイージー](2014/07/06 04:49)
[58] 第三話 学園都市の光と闇・七[ベリーイージー](2014/07/06 04:52)
[59] 第三話 学園都市の光と闇・八[ベリーイージー](2014/07/06 04:55)
[60] 第三話 学園都市の光と闇・九[ベリーイージー](2014/07/06 04:59)
[61] 第三話 学園都市の光と闇・十[ベリーイージー](2014/04/08 22:00)
[62] 第三話 学園都市の光と闇・十一[ベリーイージー](2014/11/04 23:00)
[63] 第三話 学園都市の光と闇・十二[ベリーイージー](2014/04/17 19:16)
[64] 第三話 学園都市の光と闇・十三[ベリーイージー](2014/05/22 21:58)
[65] 第三話 学園都市の光と闇・十四[ベリーイージー](2014/04/29 17:53)
[66] 第三話 学園都市の光と闇・十五[ベリーイージー](2014/04/29 17:54)
[67] 第三話 学園都市の光と闇・十六[ベリーイージー](2014/04/29 17:56)
[68] 第三話 学園都市の光と闇・十七[ベリーイージー](2014/05/05 17:09)
[69] 第三話 学園都市の光と闇・十八[ベリーイージー](2014/05/08 22:08)
[70] 第三話エピローグ[ベリーイージー](2014/05/12 19:57)
[71] 御使堕し・零[ベリーイージー](2014/05/18 23:10)
[72] 第四話 御使堕し・一[ベリーイージー](2014/05/22 21:58)
[73] 第四話 御使堕し・二[ベリーイージー](2014/05/22 21:59)
[74] 第四話 御使堕し・三[ベリーイージー](2014/05/24 18:10)
[75] 第四話 御使堕し・四[ベリーイージー](2014/06/05 22:09)
[76] 第四話 御使堕し・五[ベリーイージー](2014/06/05 22:10)
[77] 第四話 御使堕し・六[ベリーイージー](2014/06/05 22:23)
[78] 第四話 御使堕し・七[ベリーイージー](2014/06/11 21:56)
[79] 第四話 御使堕し・八[ベリーイージー](2014/06/15 22:46)
[80] 第四話 御使堕し・九[ベリーイージー](2014/06/15 22:48)
[81] 第四話 御使堕し・十[ベリーイージー](2014/06/25 21:35)
[82] 第四話 御使堕し・十一(完)[ベリーイージー](2014/07/04 01:20)
[83] 短編 幻想から見た学園都市・一[ベリーイージー](2014/07/04 01:21)
[84] 短編 幻想から見た学園都市・二[ベリーイージー](2014/08/13 22:40)
[85] 短編 幻想から見た学園都市・三[ベリーイージー](2014/07/08 21:49)
[86] 幻想から見た学園都市・四(完)[ベリーイージー](2014/08/21 22:56)
[87] 短編 裏で起きていた出来事[ベリーイージー](2014/08/21 22:57)
[88] 第五話 呪術師の野望・一[ベリーイージー](2014/08/21 22:58)
[89] 第五話 呪術師の野望・二[ベリーイージー](2014/08/21 23:01)
[90] 第五話 呪術師の野望・三[ベリーイージー](2014/08/21 23:03)
[91] 第五話 呪術師の野望・四[ベリーイージー](2014/08/21 23:05)
[92] 第五話 呪術師の野望・五[ベリーイージー](2014/08/21 23:06)
[93] 第五話 呪術師の野望・六[ベリーイージー](2014/08/21 23:10)
[94] 第五話 呪術師の野望・七[ベリーイージー](2014/11/04 23:01)
[95] 呪術師の野望・八(終)[ベリーイージー](2014/09/03 22:02)
[96] 第六話 最後の夢・一[ベリーイージー](2014/09/05 20:42)
[97] 第六話 最後の夢・二[ベリーイージー](2014/09/07 21:10)
[98] 最後の夢・三[ベリーイージー](2014/09/12 00:45)
[99] 最後の夢・四[ベリーイージー](2014/09/17 22:05)
[100] 最後の夢・五[ベリーイージー](2014/09/22 20:49)
[101] 最後の夢・六[ベリーイージー](2014/09/25 01:25)
[102] 第六話 最後の夢・七[ベリーイージー](2014/09/30 19:37)
[103] 第六話 最後の夢・八(完)[ベリーイージー](2014/10/19 22:25)
[104] 第七話 呪術師の暗躍[ベリーイージー](2015/01/05 01:01)
[105] 第七話 呪術師の暗躍・二[ベリーイージー](2015/01/05 01:02)
[106] 第七話 呪術師の暗躍・三[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[107] 第七話 呪術師の暗躍・四[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[108] 第七話 呪術師の暗躍・五[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[109] 第七話 呪術師の暗躍・六[ベリーイージー](2015/01/05 01:04)
[110] 第七話 呪術師の暗躍・七[ベリーイージー](2015/01/05 01:04)
[111] 第七話 呪術師の暗躍・八[ベリーイージー](2015/01/05 01:05)
[112] 第七話 呪術師の暗躍・九[ベリーイージー](2015/01/05 01:05)
[113] 第七話 呪術師の暗躍・十[ベリーイージー](2015/01/05 01:06)
[114] 第七話 呪術師の暗躍・十一[ベリーイージー](2015/01/05 01:07)
[115] 第七話 呪術師の暗躍・十二[ベリーイージー](2015/01/05 01:08)
[116] 第七話 呪術師の暗躍・十三[ベリーイージー](2015/01/11 20:40)
[117] 第七話 呪術師の暗躍・十四 new[ベリーイージー](2015/01/11 20:42)
[118] 第七話 呪術師の暗躍・十五(修正)[ベリーイージー](2015/01/13 20:31)
[119] 第一部・完[ベリーイージー](2015/01/18 16:43)
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[37756] 第一話 氷精と禁書目録・二
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:e12f1c26 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/05/27 04:51
「どうぞ、とりあえず尾行は有りません、とミサカは気配を伺って言います」

そこらの不良が溜まり場にするような寂れた場所にミサカ10032号は二人を招く。

「それじゃお邪魔しまーす」
「……お、お邪魔するんだよ」

逃げ切ったことに安堵し暢気に上がるチルノに恐る恐るといった風にインデックスが続く。
ミサカ10032号は対照的な二人に転がるボロッちいパイプ椅子を示して座る様促した。

「よくわかりませんが大変だったでしょう、休んでください。
少なくとも簡単には追いつかれない筈なので今の内に休むことを推奨します、とミサカ10032号はお疲れな二人に言います」

彼女は周囲を見回しここが安全であることをアピールする。

「ほら何せこの通り廃屋同然の穴場ですから、とミサカ10032号は取って置きの隠れ家を自慢する子供のように胸を張ります」
「……ねえ、変な人、本当に大丈夫なの?」

相変わらず無表情だが胸を張ってどことなくドヤ顔な彼女にインデックスが念のため聞いた。
変な人呼ばわりにミサカ10032号はほんの僅かだけ顔をしかめ心なしか不機嫌そうな声音で言う。

「心配は無用、この場所は人の訪れない正しく穴場です、スキルアウトが根城にしていたので彼等を恐れ一般人は訪れません。
そしてその彼等も『穏便』に『説得』し譲って貰ったので大丈夫、とミサカ10032号は心配性な白い人に要らぬ心配乙と答えます」
「穏便に、説得……壁に銃弾の跡があるんだけど?」
「急に研究所から放り出され寝る所どうするかと追い詰められて止む無く、とミサカ10032号は当たり障り無い言葉で自己を正当化します」

壁の弾痕を見ての突っ込みに彼女はぷいっと誤魔化すように眼を逸らしながら答えた。
穏便な説得が出任せだとわかったインデックスだがどうも訳有りのようだと追求を止める。
例え実銃による脅しで手に入れたとはいえ選り好みできるような状況ではないし。

「とりあえず碌な物は有りませんが寛いでください。
水道は生きてるので喉を潤す程度は出来ます、とミサカ10032号は体を労るよう二人に忠告します」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな、ね、インデックス?」
「うん、感謝するんだよ、変な……じゃなくてゴーグルのお姉さん」

言葉遣いは変だし爆発物を持ち歩くエキセントリックな娘ではあるが悪人ではないようだ、二人は心遣いを有り難く受け入れた。


第一話 氷精と禁書目録・二


「ねえねえ、ミサカ一万……何だっけ?」
「……ミサカで良いですよ、羽付きの人」
「じゃあミサカね、私はチルノ……で暑いんだけどアイスとかない?」
「有りませんね、まあスキルアウトが勝手に使ってた場所に冷蔵庫が置いてある筈有りませんが……
諦めて水とか飲んで凌いでください、温いですけど、とミサカ10032号はばててるチルノに残念な事実を知らせます」
「ぶーぶー、いいよ、自分で冷やすから……あ、凍っちゃった」
「ぷー、くすくす、それじゃあ水飲めませんね、とミサカ10032号は人生経験が足りず上手く笑えないので代わりに口で笑います」

冷気の調整を失敗し水を凍りつかせたチルノをミサカ10032号が笑うというコントのような一幕をインデックスはぼうと見ていた。
別に美味しくも無い温い水道水を飲みながら奇妙な安心感が有った、コント染みた二人の会話が何故か心地よい。
インデックスは久々に安らぎを覚えていたがこんな気持ちになったのは久しぶりだ。
そんな安らいだ気持ちでいられるのは間違いなくチルノとミサカ10032号のおかげだろう。
片や何を考えているかわからない妖精、片や流れで付いてきた鉄面皮の女性だが自分を助けてくれた。
一年近く追い回されてきたインデックスにとっては逃走劇始まって以来の幸運な出会いと言っていい。

(……ていうか、それだけわたしが地獄みたいな生活してたってことだよね)

今更ながらそれに気付いてインデックスは泣きたくなった。
常に追っ手を警戒し碌に食事も睡眠も取れない日々、頭の中の危険な知識が理由とはいえ余りに不条理で今と雲泥の差だ。

(ツキが来たのかな、この街は私に何かの切欠を与えてくれるのかもしれない)

インデックスがそう希望を懐くほどの奇跡と思える幸運だ。
それにそんなインデックスをチルノは元水現氷を地道に齧りながらちらちら気遣うように見ている。
そのチルノの視線がインデックスは素直に嬉しかった。
最初魔導書目当てと言っていたし本来なら疑うべきだろう。
だが彼女の裏表の無い性格に疑う気持ちはあっと言う間に消えていく。
ミサカ10032号は時折インデックスを観察するような視線を向けるがそれに悪意は感じられない。
魔術師に追い回されてきた彼女にはその程度気にならないし、助けた上休む場所を提供してくれたのに疑うほど恩知らずではない。

(君以外にいたとはね、殺気だってわたしを追ってこない人たちなんてさ……)

インデックスは鞄を抱き締め、その中の友人に小さく話しかける。
答えはないが『彼女』はインデックスの囁きに頷いたような気配がした。
思わず笑みが浮かぶ、それは彼女がこの一年で初めて浮かべたかもしれない笑顔だった。



そんな風に思われているとは露とも知らないチルノとミサカ10032号はある共通する思いを浮かべていた。

『こんな儚い人間がいるなんて……』

二人はインデックスの纏う雰囲気からそんな感情を擁いていた。
チルノは霊夢始め人でありながら一筋縄ではいかない連中と彼女を比べて、新鮮な驚きを覚えた。
弱弱しい姿、人としてある意味自然な姿に同情すら感じる。
だから何となくチルノは魔導書とは無関係に助けてやりたいという気持ちを持ち始めていた。
元々思い立ったら一直線の彼女は一度助けると決めた以上それを破るつもりは無い。
加えインデックスから感じる儚さに自分以外の弱い妖精へ向けるのと(チルノが規格外なだけだが)と似たような思いが芽生えている。
自分と違って弱くて消えてしまいそうだから『最強』の自分が何とか助けてやりたい、と意外に姉御肌なチルノは思った。

それに対しミサカ10032号が思ったのは少しネガティブな感情だ。
ミサカ10032号は計画が進めば全滅するような自分と同じ雰囲気を持つインデックスに興味を持った。
普通なら二人に付き合う理由は無いが彼女はもう少し共に行動しようと考え始めていた、加えて他にすることも無い。
それは下世話な好奇心であり、更に言えば同類を哀れむような負の感情の発露でもあった。
これ等は怠惰な姉弟が求める自立に繋がる要素ではなかったが、同時にシスターズの一人が始めて抱いた感情である。
もし、好奇心や同類意識から別のものに変わることが有ればミサカ10032号は人形ではない存在に変わるかも知れない。



それぞれ全く別のことを考えていたチルノとミサカ10032号だが、同時にはっと真剣な表情で立ち上がった。

「ど、どうしたの?」
「インデックス、下がって!」
「これは人の気配?ですが電磁波は殆ど……」

インデックスを下がらせた二人は驚きながらも臨戦態勢に入る。
特にミサカ10032号の驚きは大きい、何故なら人なら誰しも発する電磁波を彼女は探知できる筈だったからだ。
それなのに、本来なら気付ける筈の距離よりもずっと近くまで接近を許してしまったことに彼女は動揺する。
それでも素早く支給された銃器を構えることが出来たのは軍用クローンの面目躍如だが(とはいえ初の実戦に少し緊張していたが)

コツコツ

聞こえてきた足音にインデックスも遅まきながら状況を理解する。
侵入者、それに気づきインデックスは慌てて壁際まで下がった。
足音が三人のいる部屋の直前で止まる、そしてガチャリとドアノブに手を掛けた。

ギィバタン

ゆっくりとドアが開き、現れたのはとんがった黒髪の学生らしき少年だった。

「……え?」

殺気立つ二人と怯えるシスターに少年、上条当麻は間の抜けた声を上げる。
彼は友人と同じ姿を持つ少女の正体を知るために彼女を追って来たのだ。
といっても途中で見失いとりあえず人のたむろできそうな場所を探したのだが。
数回目に探した場所で見つけたのは彼らしくない幸運で、同時に些かタイミングが悪かったのは彼らしい不幸だった。

「ひ、いや……アイシクルフォール!!」
「は、うお!?」

更に運の悪いのが、彼の腕に対しチルノが本能的に恐怖を覚え攻撃したことだろう。
慌てて右腕を翳し自分に向かい来る冷気を消し去る。
まるで最初からそんな現象が無かったかのように氷の弾幕が掻き消えた。
だが、それは三人に脅威を覚えさせこの場の空気が緊張感を増すことになった、彼の不幸は止まらない。

「チルノの攻撃を止めた、それなら魔術師!?」
「……事情は良く知りませんが敵ですね、それでは無力化します!」

インデックスの悲鳴を切欠にチルノだけでなくミサカ10032号が銃を構える。
上条は向けられた銃口に顔を引き攣らせいつものように『不幸だっ』と叫ぼうとして、その銃の持ち主の顔を見て呆然と呟く。

「……お前、御坂!?」
「……お姉様を知っている?」
「あいつじゃない?でもお姉様ってあいつに妹はいない筈だが……」
「あ、やべ、とミサカ10032号は口を滑らせ自爆したことを悟ります」
「うん、少なくとも明らかに怪しいってのはわかる……何より容姿が似すぎてるのがなあ。
とはいえ、あいつは岡崎教授の影響で国外で研究者として頑張ってるから確かめられないし……」

当然だが絶対能力者進化実験は最高機密の計画であり、機密保持には相当気を使わなければならない。
遂口を滑らせ、尚且つその相手がシスターズのDNA提供者である御坂美琴の関係者だったことにミサカ10032号は慌てた。
今更ながら口を押さえ黙り込むが失言は無かったことにできない。
戸惑うミサカ10032号に対し、上条も友人の居ない筈の妹をどう扱うか決め兼ねていた。
数秒前まで漂っていた緊張感が一気に冷め、残ったのは間の抜けた空気だ。

「良くわからないけどゴーグルのお姉さんの関係者なら魔術師じゃないみたいだね。
……ほら落ちついて、チルノ、多分敵じゃないと思うから」
「ヤダヤダ、そいつの右腕嫌な予感がする、紅魔館の吸血鬼みたいな!」

どうも追っ手ぽくなかったのでインデックスは駄々をこねるチルノを押さえ込んだ。
とりあえずインデックスはどうしようかと考える。
チルノを落ち着かせ、目の前の奇妙な少年に事情を聞き正体を確かめる、それに場所を変えた方が良いかもしれない。
彼女は色々考えたがそれを実行に移すより早く更なる異変が起きた。

ドン

「わ、今度は何!?」
「……外です!」
「あれ、あの魔力、あたいどこかで……」
「畜生、やっぱり不幸だ!?」

外からの爆音、今いる場所から少し離れている。
感じ取れる魔力から追っ手の一人のルーン使いがいるとインデックスにはわかったが、ならば疑問が一つ浮かぶ。
ルーン使いは誰と戦っているのだろうか、とインデックスは首を傾げた。



「……アウレオルス・イザード、きみはどこかで野垂れ死んだと思っていたよ」
「今更あなたが何故ここに現れたのですか?」

ルーン使いステイルと極東の聖人神裂火織は目の前に現れた錬金術師を睨む。
二人は友人である(例え彼女が覚えていなくても)インデックスを記憶を消し助ける(と二人は思い込んでいる)ために追っていた。
けれど思わぬ邪魔により彼女を見失い、その上土地勘が無く距離を離され途方に暮れていた。
そこに現れたのが目の前の彼、錬金術師アウレオルス・イザードだ。

「態々僕等の前に姿を現したんだ。
何か用があるんだろう、アウレオルス・イザード?」
「……インデックスを救いに来た」

疲れ果てた陰気な、けれど決意に溢れた答えが返ってきた。
アウレオルスは訝しげなステイルと神裂を全く意に介さない様子で言葉を続ける。

「そうだ、私は彼女を救いに来たのだ。
何故今まで気付かなかったのか、彼女の魔導書が彼女を苦しめるなら彼女を人とは違う者に変えればいいとな」
「アウレオルス、何を……」
「簡単なことだ……人の限界等超えればいい」
「だから、君は何を言って!?」
「インデックスに何をするつもりです!?」

独白染みた彼の言葉は段々と高揚していく。
その異様な様子に何か嫌な予感を覚えた二人は強く問い詰めるが彼の表情に浮かんだあるものに身構える。
アウレオルスに有ったのは狂気と言えるほど激しい情愛だった。
どす黒く濁ったそれに思わず後ずさる、歴戦の魔術師である二人が圧倒されるほどの激情だ。

「一体何なんだ、君は……」
「あなたは何が言いたいのです?」
「先程も言った、インデックスを救う方法があると……記憶を消さずにな」
「馬鹿な、不可能だ!」
「いいや、有るのだよ……ある生き物を利用すればいい」

そこでステイルと神裂はアウレオルスの直ぐ後ろに佇む者がいることに気付いた。
今まで狂った錬金術師に気を取られ目に入らなかったらしい。
日傘を差した幼いといっていい少女、良く見れば彼女の背中から七色の翼が生えていた。
明らかに人ではないその存在と先程アウレオルスが言った言葉に二人は激しく嫌な予感を覚える。

「アウレオルス……その子供は何だ?」
「……ステイル、神裂、三沢塾というカルト染みた団体を知っているか?
いや学園都市の事情に疎い君たちがする筈も無いか、そこにはな……あの伝説の、吸血殺しが囚われていたのだ」
「吸血殺しだと、そんなもの唯の伝説の筈だ」

妄想だと吐き捨てるがアウレオルスは静かに首を振るう。

「いや確かにそこにはいた、吸血鬼を魅了し牙を向いた彼等を一瞬で灰に変える吸血鬼の天敵が……
私はこう考えた……吸血殺しと接触し吸血鬼を誘い出して手中に抑えることが出来れば、インデックスを救えるとな」
「まさか、君の言う人を超えるとは!?」
「そうだ、インデックスを吸血鬼の血肉で人を超えた存在に変える。
そして、運のいいことに三沢塾に吸血鬼が現れた……五百年の時を地下で過ごしそれに飽いた吸血鬼がな」

アウレオルスの語りは予期せぬ方向に向かっていた。
吸血鬼も吸血殺しも伝説に過ぎない、なのに彼はそれが確かに有ると言うのだから。
だが、アウレオルスの独白が止まる、彼の後ろで聞こえてきた退屈げな欠伸によって。

「……ねえ、アウレオルス、話が長いよ、私飽きてきちゃった」
「済まないな、フランドール……どうもインデックスのことだから熱くなってしまった。
……もうわかるだろう、彼女がそうだ、インデックスを救う最後の希望だ」

後ろの少女、フランドールと呼んだ少女の不満そうな言葉を聞きアウレオルスは恭しく頭を下げる。

「じゃ、貴方が言っていた必要悪の教会の魔術師二人、楽しませてもらおうか」
「ああ、君の五百年積み重ねた退屈をあの二人に存分にぶつけるといい」

邪魔しないように下がったアウレオルスと入れ違いに前に出たフランドールがにこりと笑う。
僅かにその口元から見えた鋭い牙が妖しく輝いた。

「さて先の続きだ、三沢塾で吸血鬼と戦った私だが予想外だったことが二つ有る……一つ、彼女は強すぎた。
おかげで今はこの有様、返り討ちに遭い殺されかけ彼女に忠誠を誓い何とか生き長らえている」
「インデックスを救うため吸血鬼に尻尾を振るか、墜ちたな」
「自分が殺されぬため宛がったのが私たちですか、墜ちましたね」
「……ふん、好きに言うがいい、彼女を救うためには死ねんのだ」

言いたいことは言い終えたのか、アウレオルスは最後にそう言った後沈黙する。

「ほんと人間って面白いよね、時々彼みたいな変わり者がいる、まあそれはそれとして……さ、始めようか」

フランドールがステイルたちを興味深そうに観察する。
その目に掛ったのか、真紅の瞳を爛々と輝かせ本当に楽しそうに笑うと傘を持つのと反対の手で曲がりくねった杖を構えた。

「アウレオルスの言葉に乗ってよかったよ、意外に楽しめそう」
「楽しむ、今はそれどころではないのに……度し難いですね、吸血鬼」
「長生きしているとね、退屈が敵なんだよ、ああ後それだけじゃないよ。
ほら、私だって女の子だし恋の話が大好きなの、だからあの陰気なロマンティストに力を貸すことにしたの」

二人の歴戦の魔術師を前にふふっとフランドールは無邪気といえるような可愛らしい笑みを浮かべる。
けれど、アウレオルス以上の狂気を感じさせる瞳の輝きにステイルと火織は背筋が凍る思いがした。
二人は彼女がアウレオルスを遥かに超える危険性を秘めていると嫌でも悟らざるを得ない。
彼女がその手を翳す、眩く輝く閃光が殺人的な密度の弾幕となって二人の魔術師に容赦無く襲い掛かった。

「ああ、先程私が言ったもう一つの予想外、それは彼女が狂っているということだ。
その心は振り切れて吸血殺しの血の誘惑にも耐え、その上破壊と殺戮に全く躊躇が無い……気をつけろ、気を抜けば死ぬぞ」



第二話&閑話投稿、それと前回既読の方ごめんなさい、内容が大幅に変わりました。
原作三巻以降を考えて色々調整したらこんなことに・・・少し盛り過ぎたかも。
とりあえず御坂妹ことミサカ10032号準主人公格で行きます、で上条さんは原作とは少し変わった形で関ることになります。
後岡崎教授とか美琴不在とか意味有り気なこと書いたけどこれは追々、まあ美琴は割と早く学園都市に帰還する予定ですが。

後感想で霊夢と一方通行について書かれている方が多いので書いちゃいました、原作一巻と同時進行予定でしたが調整の際前倒し。
実を言えば三巻開始に合わせ各所で小出しする予定でしたがそんな引張る物じゃないし(まあ一方通行はこれで暫くお休みですが)

フランとアウレオルスの会話シーンを大幅に書き換えました。
アウレオルスは利用するという考えを隠しておらず、フランもそれを面白がって協力しているいう感じで。

以下コメント返信

アルニレ様
何かしたのは一方通行ではありませんでした、寧ろ何もしないのが問題・・・でも原作崩壊は免れないでしょうね。
違和感については試しに地の文を増やして見ました、もう少し増やせそうなので調整しながら色々試して見ます。

いいい様
ヒントブームの流行り廃りは激しい、特に学生相手ならそれは尚更・・・つまり前振りですね、某仙人が要ればバカモノ確定。

チラエス様
ああいったほんわかなノリ好きなので、あのノリを再現できるよう頑張ります。

宮毘羅様
何て凡ミスを、ご指摘感謝です、修正しました。

な様
ちょっとミスリード狙ったけどもう書いたのでばらしてしまえば幻想郷基準は一方通行じゃありません、それは別のキャラです。
あ、でも霊夢に影響されているから大して変わらないのかな?

ぱんだ様
面白そうといってくれて有り難うございます、幻想殺しは勿論効果有りますがチルノは妖精では別格らしいし苦手くらい?

雪印様
原作禁書はラストで大体病院安定→このSSならそのまま宴会に突入とか?
まあ勿論宴会シーン書く予定ですけど、学園都市勢は基本学生だからアルコール厳禁だし幻想郷勢は文句言いそう・・・

楚歌様
その人はフラン&アウレオルス側で出る予定です(まだ出てないけど)多分苦労人枠。
チルノは上で書いたけど妖精から逸脱してる存在らしいので即消滅までは行きません、本能的に怖がるかもしれないけど。

シリー様
チルノが禁書キャラと出会いどう影響を受けるか、この物語はチルノ観察日記でもあるのかもしれません。
同時にチルノへの影響だけでなく、チルノ始め東方側からの影響による変化も書いていきたいです。


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