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No.37756の一覧
[0] とある幻想の弾幕遊戯(とある魔術の禁書目録×東方シリーズ)第一部・完[ベリーイージー](2015/01/18 16:44)
[1] 第一話 氷精と禁書目録・一[ベリーイージー](2014/05/27 04:16)
[2] 最強と巫女(外道)上[ベリーイージー](2014/05/27 04:27)
[3] 最強と巫女(外道)下[ベリーイージー](2014/05/27 04:41)
[4] 第一話 氷精と禁書目録・二[ベリーイージー](2014/05/27 04:51)
[5] 第一話 氷精と禁書目録・三[ベリーイージー](2014/05/27 05:05)
[6] 第一話 氷精と禁書目録・四[ベリーイージー](2014/05/27 05:25)
[7] 第一話 氷精と禁書目録・五[ベリーイージー](2014/05/27 05:36)
[8] 第一話 氷精と禁書目録・六[ベリーイージー](2014/05/27 05:43)
[9] 第一話 氷精と禁書目録・七[ベリーイージー](2014/05/27 05:55)
[10] 第一話 氷精と禁書目録・八[ベリーイージー](2014/05/27 06:01)
[11] 第一話 氷精と禁書目録・⑨[ベリーイージー](2014/05/27 06:07)
[12] 第一話 氷精と禁書目録・十[ベリーイージー](2014/05/27 06:15)
[13] 第一話 氷精と禁書目録・十一[ベリーイージー](2014/05/27 06:25)
[14] 第一話 氷精と禁書目録・十二[ベリーイージー](2014/05/27 06:32)
[17] 第一話 氷精と禁書目録・十三[ベリーイージー](2014/05/27 06:37)
[18] 第一話 氷精と禁書目録・十四[ベリーイージー](2014/05/27 06:49)
[19] 第一話 氷精と禁書目録・十五[ベリーイージー](2014/05/27 06:54)
[20] 第一話 氷精と禁書目録・十六[ベリーイージー](2014/05/27 07:06)
[21] 閑話 マヨヒガにて[ベリーイージー](2014/05/27 07:10)
[22] 第一話 氷精と禁書目録・十七[ベリーイージー](2014/05/27 07:20)
[25] 第一話 氷精と禁書目録・十八[ベリーイージー](2014/05/27 07:25)
[26] 十八・裏[ベリーイージー](2014/05/27 07:27)
[27] 第一話 氷精と禁書目録・十九[ベリーイージー](2014/05/27 07:31)
[28] 第一話 氷精と禁書目録・二十[ベリーイージー](2014/05/27 07:37)
[29] 第一話 氷精と禁書目録・二十一[ベリーイージー](2014/05/27 07:41)
[31] 第一話 氷精と禁書目録・二十二[ベリーイージー](2014/05/27 07:47)
[32] 第一話 氷精と禁書目録・二十三[ベリーイージー](2014/05/27 07:54)
[33] 第一話 氷精と禁書目録・二十四[ベリーイージー](2014/05/27 07:56)
[34] 第二話 節姫と電撃姫・一[ベリーイージー](2014/05/27 08:01)
[35] 第二話 節姫と電撃姫・二[ベリーイージー](2014/05/27 08:04)
[36] 第二話 節姫と電撃姫・三[ベリーイージー](2014/05/27 08:07)
[37] 第二話 節姫と電撃姫・四[ベリーイージー](2014/05/27 08:08)
[38] 第二話 節姫と電撃姫・五[ベリーイージー](2014/05/27 08:10)
[39] 第二話 節姫と電撃姫・六[ベリーイージー](2014/05/27 08:12)
[40] 第二話 節姫と電撃姫・七[ベリーイージー](2014/05/27 08:13)
[41] 第二話 節姫と電撃姫・八[ベリーイージー](2014/05/27 08:17)
[42] 第二話 節姫と電撃姫・九[ベリーイージー](2014/05/27 08:18)
[43] 第二話 節姫と電撃姫・十[ベリーイージー](2014/05/27 08:19)
[44] 第二話 節姫と電撃姫・十一[ベリーイージー](2014/05/27 08:22)
[45] 第二話 節姫と電撃姫・十二[ベリーイージー](2014/04/24 23:28)
[46] 取材 序章[ベリーイージー](2014/04/24 23:29)
[47] 取材編 一[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[48] 取材編 二[ベリーイージー](2014/04/24 23:30)
[49] 取材編 三[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[50] 閑話 少女の変遷[ベリーイージー](2014/04/24 23:31)
[51] 取材編最終章[ベリーイージー](2014/02/13 01:59)
[52] 第三話 学園都市の光と闇・一[ベリーイージー](2014/07/06 04:24)
[53] 第三話 学園都市の光と闇・二[ベリーイージー](2014/07/06 04:26)
[54] 第三話 学園都市の光と闇・三[ベリーイージー](2014/07/06 04:32)
[55] 第三話 学園都市の光と闇・四[ベリーイージー](2014/07/06 04:38)
[56] 第三話 学園都市の光と闇・五[ベリーイージー](2014/07/06 04:45)
[57] 第三話 学園都市の光と闇・六[ベリーイージー](2014/07/06 04:49)
[58] 第三話 学園都市の光と闇・七[ベリーイージー](2014/07/06 04:52)
[59] 第三話 学園都市の光と闇・八[ベリーイージー](2014/07/06 04:55)
[60] 第三話 学園都市の光と闇・九[ベリーイージー](2014/07/06 04:59)
[61] 第三話 学園都市の光と闇・十[ベリーイージー](2014/04/08 22:00)
[62] 第三話 学園都市の光と闇・十一[ベリーイージー](2014/11/04 23:00)
[63] 第三話 学園都市の光と闇・十二[ベリーイージー](2014/04/17 19:16)
[64] 第三話 学園都市の光と闇・十三[ベリーイージー](2014/05/22 21:58)
[65] 第三話 学園都市の光と闇・十四[ベリーイージー](2014/04/29 17:53)
[66] 第三話 学園都市の光と闇・十五[ベリーイージー](2014/04/29 17:54)
[67] 第三話 学園都市の光と闇・十六[ベリーイージー](2014/04/29 17:56)
[68] 第三話 学園都市の光と闇・十七[ベリーイージー](2014/05/05 17:09)
[69] 第三話 学園都市の光と闇・十八[ベリーイージー](2014/05/08 22:08)
[70] 第三話エピローグ[ベリーイージー](2014/05/12 19:57)
[71] 御使堕し・零[ベリーイージー](2014/05/18 23:10)
[72] 第四話 御使堕し・一[ベリーイージー](2014/05/22 21:58)
[73] 第四話 御使堕し・二[ベリーイージー](2014/05/22 21:59)
[74] 第四話 御使堕し・三[ベリーイージー](2014/05/24 18:10)
[75] 第四話 御使堕し・四[ベリーイージー](2014/06/05 22:09)
[76] 第四話 御使堕し・五[ベリーイージー](2014/06/05 22:10)
[77] 第四話 御使堕し・六[ベリーイージー](2014/06/05 22:23)
[78] 第四話 御使堕し・七[ベリーイージー](2014/06/11 21:56)
[79] 第四話 御使堕し・八[ベリーイージー](2014/06/15 22:46)
[80] 第四話 御使堕し・九[ベリーイージー](2014/06/15 22:48)
[81] 第四話 御使堕し・十[ベリーイージー](2014/06/25 21:35)
[82] 第四話 御使堕し・十一(完)[ベリーイージー](2014/07/04 01:20)
[83] 短編 幻想から見た学園都市・一[ベリーイージー](2014/07/04 01:21)
[84] 短編 幻想から見た学園都市・二[ベリーイージー](2014/08/13 22:40)
[85] 短編 幻想から見た学園都市・三[ベリーイージー](2014/07/08 21:49)
[86] 幻想から見た学園都市・四(完)[ベリーイージー](2014/08/21 22:56)
[87] 短編 裏で起きていた出来事[ベリーイージー](2014/08/21 22:57)
[88] 第五話 呪術師の野望・一[ベリーイージー](2014/08/21 22:58)
[89] 第五話 呪術師の野望・二[ベリーイージー](2014/08/21 23:01)
[90] 第五話 呪術師の野望・三[ベリーイージー](2014/08/21 23:03)
[91] 第五話 呪術師の野望・四[ベリーイージー](2014/08/21 23:05)
[92] 第五話 呪術師の野望・五[ベリーイージー](2014/08/21 23:06)
[93] 第五話 呪術師の野望・六[ベリーイージー](2014/08/21 23:10)
[94] 第五話 呪術師の野望・七[ベリーイージー](2014/11/04 23:01)
[95] 呪術師の野望・八(終)[ベリーイージー](2014/09/03 22:02)
[96] 第六話 最後の夢・一[ベリーイージー](2014/09/05 20:42)
[97] 第六話 最後の夢・二[ベリーイージー](2014/09/07 21:10)
[98] 最後の夢・三[ベリーイージー](2014/09/12 00:45)
[99] 最後の夢・四[ベリーイージー](2014/09/17 22:05)
[100] 最後の夢・五[ベリーイージー](2014/09/22 20:49)
[101] 最後の夢・六[ベリーイージー](2014/09/25 01:25)
[102] 第六話 最後の夢・七[ベリーイージー](2014/09/30 19:37)
[103] 第六話 最後の夢・八(完)[ベリーイージー](2014/10/19 22:25)
[104] 第七話 呪術師の暗躍[ベリーイージー](2015/01/05 01:01)
[105] 第七話 呪術師の暗躍・二[ベリーイージー](2015/01/05 01:02)
[106] 第七話 呪術師の暗躍・三[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[107] 第七話 呪術師の暗躍・四[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[108] 第七話 呪術師の暗躍・五[ベリーイージー](2015/01/05 01:03)
[109] 第七話 呪術師の暗躍・六[ベリーイージー](2015/01/05 01:04)
[110] 第七話 呪術師の暗躍・七[ベリーイージー](2015/01/05 01:04)
[111] 第七話 呪術師の暗躍・八[ベリーイージー](2015/01/05 01:05)
[112] 第七話 呪術師の暗躍・九[ベリーイージー](2015/01/05 01:05)
[113] 第七話 呪術師の暗躍・十[ベリーイージー](2015/01/05 01:06)
[114] 第七話 呪術師の暗躍・十一[ベリーイージー](2015/01/05 01:07)
[115] 第七話 呪術師の暗躍・十二[ベリーイージー](2015/01/05 01:08)
[116] 第七話 呪術師の暗躍・十三[ベリーイージー](2015/01/11 20:40)
[117] 第七話 呪術師の暗躍・十四 new[ベリーイージー](2015/01/11 20:42)
[118] 第七話 呪術師の暗躍・十五(修正)[ベリーイージー](2015/01/13 20:31)
[119] 第一部・完[ベリーイージー](2015/01/18 16:43)
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[37756] 第一話 氷精と禁書目録・二十四
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:8c60013e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/05/27 07:56
「……出て来い」
「あら、良くわかりましたわね、アレイスター」

土御門の報告を受けた後アレイスターは何者かの気配を感じ睨みつけた。
視線の先の空間が割れ、その『隙間』の中から無数の目がぎょろりと向いた。
そこから導師服を着た金の髪の妖艶な女性がゆっくりと彼の眼前に降り立つ。

「はあい、アレイスター、久しぶりね……元気かしら?」
「貴様の郷の者のせいでそうじゃなくなったところだ、この精神的負荷どうするか」
「あらあら、大変ねえ、腕の良い医者知ってるけど会う?……マッドっぽいけど」
「いらん、結構だ、八雲紫」

睨み付けるその眼差しを紫はあっさりスルーし問う。

「それにしてもプランとやらにまだ拘ってるの?」
「当然だ、私は力を得ねばならん」

呆れるような紫の言葉に対しアレイスターは動じない。
その意思は固く唯望みだけを見ていた。

「そんなにあなたはあの存在に……『天使』に会いたいの?」
「ああ、再び会って見せよう、そして……」

紫はアレイスターを同情するように見る。

「アレイスター、あなたはとても美しい存在に出会った……でも、心の底まで魅せられ狂ってしまったのね。
人の理の及ばぬ世界の存在を知りその頂きに立つことを望み、天使を初めとした異界の者ともっと触れ合いたいと思っってしまった」

紫の語る内容、それはアレイスターの計画の根幹に有るものだ。
彼女はアレイスターには嫌われているが彼を嫌ってはいない、何故ならある点で同じだからだ。

「そうして貴方は学園都市を作った……力を得る為、いつか天使とその眷属を迎える為に」

アレイスターにとって学園都市は紫にとっての幻想郷なのだ。
世界に発展に伴い居場所を失くした人外を初めとする『幻想』の避難場所である幻想郷に対し、学園都市は彼と友の為の儀式場である。

「……八雲紫、貴様程の力の持ち主でも限られた土地を維持するのが精一杯だ。
人である私がそれを為すには力が足りない、その為なら学園都市の全ての命を利用しそれを手に入れよう」
「この地の研究、それは最終的に貴方にフィードバックされる……そうして貴方は神となるのね?」
「そうだ、この国の八百万の神とは違う、信仰等に左右されぬ全知全能の存在になる……そうなってやっとエイワスに会える」

学園都市で行われる研究の成果は全てアレイスターへと収束され、彼を人を超える存在に押し上げる。
そうなった後アレイスターはかつて会った天使と同属を自身の力で(内も外も)磐石の体制を築いた学園都市に迎え入れるのだ。

「私はこの地全てを使い潰し力を手にする……エイワスを再び迎え、また我等を排除しようとする者あれば全てを返り討ちにしよう」

アレイスターは先に望んだ世界を創った紫に、同士であり先達である彼女に宣言する。
必ずや自分の目的を叶えて見せると。

「……そうなると良いわねえ」
「何だ、そのやる気の無い言葉は?」

何故か帰ってきたのは無性に気だるげな返事で理由を聞けばアレイスターの頭が再び痛くなる内容の言葉が掛けられる。

「だって霊夢を初め氷精とか吸血鬼の妹のせいでプランがガタガタでしょ?」
「……そこまで言うなら何とかしろ、特に博麗霊夢は自由すぎる、行動が全く読めん」

アレイスターは霊夢を幻想郷に連れて行った張本人であり保護者であり同じ管理者である紫に文句を言った。
だが、返ってきた答えは素っ気無く冷たいものだった。

「無理に決まってるでしょ、あの子のマイペースさは私だって手を焼いてるのよ」
「……マイペースというレベルではない、どういう教育をしていた!?」
「私に言わないでよ、あれ、どう考えても素だから……じゃ、これ以上は衝撃の杖出してきそうだし帰るわ」
「ええい、もう二度と来るな!」

ひらひら手を振ってアレイスターの怒声を受け流すと紫は幻想郷へと帰った。
残されたアレイスターは怒りで顔を引き攣らせながらプランの調整をし始める。
学園都市に入り込んだ異物たちの傍若無人さに負けるものか、そう自分に言い聞かせながら。



第一話 氷精と禁書目録・二十四



それは宴会の最中のことだ、上条は自分ともう一人以外いないのを確認し霊夢の友人だという白髪の少年に話しかけた。

「なあ、一方通行さんだったか」
「あン、何だ?……後さン付けはいらねェ」
「……一方通行、一つ聞きたいことが有る」
「……ミサカ10032号のことだろ?」

一方通行に問いかける前に言われ上条は一瞬言葉を失った。
その後彼の言葉の内容、自称友人の妹をナンバーで呼んだことで抱いていた疑いに確信を抱く。

「(御坂に妹や歳の近い親戚が要るとは聞いてない……そして、ここは『学園都市』だ)
やっぱり、妹は御坂のクローンなんだな、禁止されてる体細胞クローン……」

知り合いに良く似た、他人にしては似過ぎている人物、それが何を意味するかという可能性は限られる。

「名前だけだが手前のことは知ってる、確かあの岡崎が集めた一人だろ?
オリジナルと面識有ってもおかしくねェ……だが驚いてねェってことは気付いていたみてェだな?」
「ああ、御坂はレベル5の超能力者だ……誰かが目を付け可笑しなことを考えても可笑しくない」

もっとも重要なのは何の為に彼女が作られ、また何人居りどのように扱われているかだ。

「……幾つか聞きたいことがある」
「いいぜ、だがこっちからも頼みが有る……まァそれは後でいい、質問は?」

思いの外話が早いと言うか一方通行の方から質問を促してきた。
上条はそれに面食らいながら彼に問いかける。

「……まず、妹は10032号らしいが全部で何人いるんだ?」
「合計二万……培養途中や保存段階を含めてだがなァ」
「クローンたちはどういう風に扱われている?」
「それなりに重要な計画に関ってるし『今は』一応大事にされてる……人と言うより精密機材に近いが」

上条はまず二万と言う予想以上の数に驚き、次に大事にされていることに安堵する。
だが考えてみればかなり不味い、クローンの人数から大掛かりな計画だとわかり慎重さが必要となる。
かといって慎重であろうとおもっても一方通行の言葉から焦りを覚えてしまい難しい。
大事にされているのは今の時点であり、また人として扱われていないというのも問題だ。
だが、まだすべき質問が有りそれを聞く方が先決だ、それは聞き難い内容だったので上条は後回しにした物だ。

「御坂のクローン、妹や他のクローンたちが作られたのは何の為だ?」
「それを聞いて手前ェはどうする?」
「計画の内容次第だ、それが妹の為になるっていうなら強引なことはしないが……」
「……クローンたちに害が及ぶなら容赦はしねェって感じだな」
「ああ、そうだ……答えろ、一方通行、どんな計画なんだ!?」

僅かに殺気立つ上条を見て一方通行は彼の言いそうな内容を予想し言葉を継いだ。
それが合っていたので上条は頷き、一方通行にその先、答えを促す。
一方通行が黙り込む、何故か彼は殺気立ち睨む上条を望ましいとでも言うように満足そうに見ていた。

(へェ、お人好しそうだとは思ったがどこまでも好都合だ、出来過ぎな位になあァ)

彼にとって上条の言動は余りに喜ばしい物だった、こういう善良な人間の存在は大いに助かる。
計画において彼の望みは計画を今とは別の流れに持っておくこと、だがそれとは別に上条は保険に成り得た。

「姉貴、霊夢から聞いてる、妙な右手を持ってるらしいな」
「まあ妙と言えば妙だが……」
「能力が通じねェって話だが……その癖その格好からして高レベルの能力者じゃねェンだろ?」

上条の着る学生服、それは名門とかでは無いごくごく普通の学校のもので高レベルで珍しい能力者が通えば噂にはなる。
それなのに今までそういう噂を聞いたことが無いということは上条は高位の能力者では無いということだ。

「ああ、俺は無能力者だ……それが何だって言うんだ?」
「何、好都合てェことだ……例えばある人間、高レベルの能力者が中心にある計画が立ったとする、あァあくまで例え話だ」
「いきなり何を言って……」
「まァ聞けって、その計画は中心である人物が優秀だとされてるから計画は立てられたンだ……
だがなァ……もしも後で『何か』が有ってそいつの優秀さが疑問視されたらどうなると思う?」
「……そいつが優秀だから立てられたんだから、それが違うとなれば中断かな、延期か終了かはわからないが」

少なくとも中心人物の優秀さが疑われた以上実験を続けることは難しいだろうと上条は思った。
もう一度その人物の能力を評価しなおし、その結果次第では計画全体に大きな変化が出るかもしれない。

「そうだァ、普通はそう考える……上もそう考える筈だ、少なくともそうなったら計画は進められねェ。
(例えば最強の筈の超能力者が負ける、それも無能力者に……俺がしくじった場合そっちの流れが良いか?)」

余り時間を掛ければ計画は上からの圧力で強引にでも進められるだろう。
そうなった時何としても時間を稼ごうとするならこれ程インパクトの有ることは無い。

「計画の内容は部外者には言えねェ、だがクローンを無下には扱わねェと約束する」
「それを信じろと?無理だ、霊夢さんの知り合いでも人の命が懸かって……」
「……なら、クローンたちが危なくなったら教える、その時俺を叩き潰しな」
「……何だと?」
「それでクローンたちの命は助かる……俺にとっても周りに言い訳できるし幾らか時間も稼げる」

上条は何か有った時自分を倒せと言う一方通行の真意が掴めず訝しげに彼を見た。
だが、無表情を貫く一方通行の思惑はわからず、それでも彼の心の底から頼み込む言葉に押され頷いた。

「……わかった、妹や他のクローンたちが助かると言うなら」
「悪ィな、これ以上は言えねェ……唯その時が来れば必ず知らせる」

御坂妹が心配であり命が助かると言うならばと、上条は彼の言葉を受け入れた。
それに一方通行は笑みを浮かべる、少なくとも最悪の結果は避けられるのだから。

「誤魔化したみたいで悪ィ」
「訳ありみたいだし仕方が無いか、今はこれでいい」
「本当にすまン、これは貸しだ、何時か返す……ところで何で俺たち台所で話してるンだろうな」
「答えは誰も料理しないからだな、一方通行……女性の方が多いのにこれは納得は出来ないけど」

キッチンで二人並んで料理中だった上条と一方通行は同時にため息を吐いた。
この宴会の参加者の内男性陣は四人(土御門は遅刻中)で女性の方が多いのだが何故かこうなった。

「インデックスもルーミアと言う子も食べるのが専門で……チルノちゃんや妹、フランドールは出来そうに無い」

そもそも料理できそうにない人物も結構いたりした。
二人掛りの料理の元凶である大食い二人は論外で、次に上げた三名はどう見てもその手の経験は無い。

「……その上あのシスターに何人か付いてるしなァ、食べ物渡してシスターが食べるのを幸せそうに見てやがった」

一方通行が続ける、神裂とステイル、アウレオルスは中々話しかけられず餌付けに走っていた。

「他の連中は料理できそうなのにしやがらねェ……姉貴にもやしと司書、アリスって女に黒髪、ここのシスター、第四位だな」
「アリスさんには世話になったから文句は無いし姫神って子もフランドールが暴れないよう見ていてくれてる……でも他はなあ」

アリスは人形劇の真っ最中だが、上条としては記憶を失ったインデックスと改めて仲良くなろうとしていて見守りたかった。
また、黒髪の少女、姫神はフランドールという問題児の世話がある。
だが、他の面子にはそういった理由は無く一方通行の怒りもよくわかった。

「……姉貴は酒が無ェって文句言いながらシスターと金髪チビの次位に食うし、第四位がそれに付き纏って挑発しては受け流されてる。
もやしは本読ンで、司書は10032号を口説き中、ここのシスターは即効逃げやがった……どいつもこいつも碌でも無ェよ、幻想殺し」

一方通行は参加者それぞれの行動を順番に上げた後大きく溜息を付いた。
上条も全く同感で同じく溜息を付く、奇妙の宴会の裏方になった二人は不幸さを嘆くのだった。

「まあもう少し頑張れば大食い陣も満足するだろ、多分」

宴会が始まり上条が用意した調理済みの皿は即効で空となった(大半がインデックスとルーミアによる)
その後調理しないで食べられる菓子類が消費され、その間に二人がここで料理し追加分を用意中だ。
今宴会で減っていっている菓子と出来上がり持っていった追加の料理が完食されれば流石に大人しくなるだろう。
流石に驚くべき大食いであるインデックスとルーミアとて食べる物が無い以上我慢せざるを得ないし(というか既に十分食べた)

「うん、そうなれば大人しく宴会を楽しんでくれるさ、きっと……」
「……だと良いンだがねェ」
「よおっ、上やん、遅れてすまないにゃー、お詫びに食いもん買って来たぞー!」
『……空気読め!』
「えー、いきなり何にゃー!?」

無能力者と超能力者の思いが一致する、二人は両手一杯に食べ物の入ったビニール袋を持ってきた土御門を罵った。

「……なァ、幻想殺し、遅刻者にはペナルティがいると思わねェか?」
「確かにそうだな……土御門、遅刻のペナルティとしてお前にここに有る食材全ての調理を任せた」
「え、え?」
「因みにインデックスは知ってるな?」
「ま、まあにゃ」
「インデックスと同じくらい食べるのが要る、頑張れ」
「は、ちょっ、まじで……ま、待つにゃ!?」

再び二人の思いが一致し、上条と一方通行は今出来てる分を皿に盛り付け宴会会場へ向う。
真っ青な顔で引き止める土御門を残して。

「あ、あのレベルの大食いが二人?どんな罰ゲームにゃ!?
上やんめ、麦野を巻き込んだこと根に持ってやがるな……」



「すまん、土御門、俺だって宴会を楽しみたいんだ」
「まァ宴会が終わる前には料理し終わるだろ……俺は姉貴の所に行くがお前はどうする、幻想殺し?」
「……インデックスやチルノちゃんに妹のところかな、やっぱり」

この宴の主賓たちのところへ向うと告げ、上条は一方通行と別れ人形劇の場へ向った。

「……夢想封印&マスタースパーク、馬鹿な山最速の私が、しゃめい○がっ!?
どっかーん……こうして盗撮マニアの烏は深く反省しました、めでたし、めでたし」
「あれ?あたい、これどこかで聞いたような……」

人形劇は終盤の様で黒い羽を生やしカメラを持った少女の人形が高々と吹っ飛ばされた所だった。
因みに舞台には他に紅白衣装の少女の人形と白黒のエプロンドレスに黒い帽子の少女の人形が居た。
紅白の方は宴会の参加者と良く似ていて、また白黒の方も同じデザインの帽子の持ち主がいるがその関係は定かではない。

「さて、次は何をやりましょうか?」
「うーん、悩ましいんだよ……あれ、とーま?」
「派手な話は見たし、次は……あ、かみじょー」
「折角なのでロマンのある恋話でも……先輩、料理ご苦労様です」
「ミサカチャン、オトメ?……オツカレ、オニイチャン」

話が終わり次の劇を話し合うインデックスたちを微笑ましく見ながら上条は料理を配っていく。
意外にロマンチックな御坂妹を特に微笑ましく思いつつ順番に配り、彼女の頭の上の人形は食べる機能は無いので変わりに軽く撫でる。

「君には何も上げられないのでこれで……」
「キヅカイアリガト、オニイチャン……チョットクスグッタイ」
「ふふふ、九十九神とはいえ夢の自律人形か、その上可愛いし最高の娘ね」

上条と人形のやり取りにアリスはご満悦だ(なのに指は忙しなく動き次の劇の準備中だ)

「こっちで生活すれば新しい発見もありそう、インデックスも気になるし……」
「アリスさん、学園都市に?」
「ええ、『郷』の結界の管理者に頼むわ……霊夢と違って拠点が無いから言ったり来たりだろうけど」

定住は無理だろうし自分の研究もあるのでそれはしないが、幻想郷と学園都市の行き来は妖怪の賢者に頼めば可能だ。
彼女のミスでこちらへの移動に手間取ったこと、それと霊夢に口添えを頼めばいやとは言わないだろう。

「こっちでも人形劇をやることにするわ、インデックスと今楽しんでくれている子たちの為に」
「そうですか、それは良い……もうインデックスは記憶を消さないでいいんだし良い思い出になるな」
「わあっ、すっごく楽しみ!」

アリスの人形劇がこの先も見られることにインデックスは喜ぶ。

「楽しい記憶は人形劇だけじゃないでしょ?」
「そうだな、ここにいる皆と過ごす時間が有る」

アリスがインデックスにそれだけじゃないと言い、上条がチルノ等を見て言った。

「そうだよ、あたいたちと遊ぼうね、インデックス」
「ええ、ミサカも研究所に居ない時は会いに行きます」
「トウゼン、ワタシモイッショダヨ」
「……これは忘れられない思い出になるな、インデックス」
「うん、楽しい記憶で一杯になりそう!」

インデックスがぱあっと花咲くような笑みを浮かべる。
それだけで上条とチルノとミサカ10032号はこの数日間の激闘が報われるような気持ちになれた。
ミサカ10032号の頭の上で人形が小さく鼻を鳴らす、恐らく泣く機能があれば大泣きだっただろう。

「ふふ、それじゃあ私がその記憶の一つ目を貰うわ、次の劇行くわよ」

アリスは彼女たちの未来を祝うように次の人形劇の開始を宣言する。
それに反応しインデックスとチルノとミサカ10032号(慌てて人形がしがみ付いた)が素早く並ぶ。

『おお、早く早く(とミサカは催促します)』
「俺は行くけど……皆楽しんでおいで」

彼女たちの幸せそうな姿に満足そうに見ながら上条は少し離れた場所に向った。



「……で、こっちは何してるんだ?」
「黙れ、インデックスと普通に話せる貴様に我等の気持ちはわからん」

アウレオルスが嫉妬交じりに睨み、神裂とステイルが頷く。
彼等はインデックスの手が空いた瞬間を狙って食べ物を手渡そうと機を伺っていた。

「話せばいいだろ、何で餌付け?」
「何を話せばいいかわからん、その上……」
「彼女はとても幸せそうに食べるのです、上条当麻」
「僕等はその姿を見るだけで十分満たされるんだ」
「……ヘタレ共め」

今までのことでどう接すればわからない魔術師三人はそういう後ろ向きな方法に出たらしい。

「僕等はインデックスに何もしてやれなかった」
「それどころか傷つけた、私たちは加害者でしかなかったのです」
「……良く考えたら私は頑張ったと思うし普通に会っても良いか」
『アウレオルス、抜け駆けはさせない!』
「ええい、離せ、フランドールを止めたのは私だ」
「……そもそも彼女を連れてきたのもあんただろうに」

一人だけ抜け駆けしようとしたアウレオルスは左右からがっちりホールドされる。
今までの申し訳無さとかで直接インデックスに話せず臆病になっている彼等に上条は溜息を付いた。
折角宴会という通常より幾らか話し易い状況なのにこれでは意味が無い。
インデックスに話しかけるという目的を忘れ内輪でぎゃあぎゃあ言い合う彼等に上条は言った。

「あんた等いい加減にしろ、インデックスとの溝を埋めるチャンスだろ?」
「無茶を言わないでください、上条当麻……そう簡単に行きそうに無いから困ってるのです」

神裂が力なく答え他のの二人も頷く、その弱気な様子に上条は大きくため息を吐いた。

「……難しく考えすぎだ、インデックスは君たちを恨んではいない」
「……え?」
「彼女が?」
「君たちは今まで彼女の為に頑張ってくれていた、それを知って誰かを恨めるような子じゃない」
「……ああそうだな、彼女はそういう子だ」
「だから、普通にインデックスに話してみろ……きっと許してくれる、笑い掛けてくれるから。
君たちはまず今までのことをごめんて謝って、その後会いに来ていいかと聞けば良い」

上条の言葉で三人は決心する、小さく頭を下げた後緊張した様子で歩き出す。
彼等はゆっくりとインデックスの元へ向った。

「……ま、これであの三人は問題無いか」
「くすくす、ご苦労様、幻想殺しの坊や」
「はっ、相変わらずお人好しだねえ」
「フランドール……それに第四位まで、どんな組み合わせだ?」

思わぬ物騒な組み合わせに上条は顔を引き攣らせた。
気になり問うとフランドールが手紙と幾つかの小物を見せる。

「私はあっちにいる姉への手紙をパチュリーに渡したの……住処も食料も玩具もあるから心配ないって。
そうしたらシズリちゃんが一緒に持っていってくれないかって」
「恩人が居るんでね、渡したい物があるからお嬢ちゃんに頼んだのさ」
「何か馴染んでないか」
『何となく気が合った』
「おおう、嫌な予感しかしねえ」

上条としてはぞっとしかしない組み合わせだ。
フランドールの手には手紙と小さな包み(花のポプリだろうか)それに数枚の写真があった。

「それは?」
「私が育てた向日葵の花で作ったポプリ、素人が作ったにしては良いできだからあんたやシスターたちにもやるよ。
それと畑を写した写真だな、太陽の畑には及ばないがそこそこの光景だ……幽香に見せてやりたくてな」

太陽の畑の向日葵、麦野はその余り光景に帰り際その種を分けてもらっていた。
自分の特権を活用し人海戦術で開花、生育した物を幻想郷の友人に見せることにしたのだ。

「あ、お前、今似合わないって思っただろ」
「あー、うん、正直戦闘狂にしか思ってなかった」
「……今の私は単に派手なことが好きなんだよ、だからこういう派手な花もな」
「ほら写真見なよ、坊や……凄いよ、この向日葵畑」

フランドールが見せた写真は一面太陽の如く咲き誇る向日葵で埋まっていた。
写真でこれだ、実際見れば圧倒されるだろう。

「……確かにこれは凄いな」
「太陽の畑に比べれば全然よ……人数掛けてだけあってそれなりには成ったが本当はもっと瑞々しく生命力に溢れてる」

少しだけ不満そうに麦野は言う、完璧な物を知るだけに自分の向日葵の出来には満足していなかった。

「ま、来年はもう少し上手くやるさ……ああ、夏一杯は咲いてるから興味有るなら来な、歓迎してやるよ」
「まあ凄い光景だしインデックスたちと行ってみるか……但し弾幕は無しだぞ」
「折角の向日葵を台無しにすることを私がやる訳無いだろ、ちゃんと菓子や紅茶で歓迎するって」

上条が念の為弾幕抜きだと念を押した、麦野は当然だと頷く。
その凶暴さは良く知っているがそれでもあからさまな嘘は言うような人格ではないとはわかっているので一応信じることにする。
少し怖いがまた新しいインデックスの思い出が出来るなと、上条は楽しみに思った時それ以上の恐怖を覚える。

「まあ、それはあんた等が私の所に来た時だ……それとは別に私が会いに行くから楽しみにしてな」

麦野の発言で上条の笑みが消える、彼女の言葉で何を楽しみにしろというのか。
その隣のフランドールがくすくす笑う、ギラリと光る真紅の瞳に見詰められ上条は嫌な予感しかしなかった。

「ねえ、幻想殺しの坊や、何で私とシズリちゃんがこんなに仲良くなったと思う?」
「……それは共通の話題が合ったからさ、手前や青チビとかなあ」
「それで今度手合わせすることにしたの……でも、それだけじゃないんだよ」
「ああ、例えばバトルロイヤルとか、私とお嬢ちゃんのコンビとか、楽しみ方は幾らでも有ると思わないか?」

出会ってはいけない二人は戦場に思いを馳せたかにいっと笑った。

『ねっ、楽しくなりそうじゃない?』
「……勘弁してください、爆弾コンビ」

上条は肩を落とす、反してけらけらと笑う二人は悪魔にしか見えなかった。



「あっちには行きたくねェなァ、あの二人からは嫌な予感しかしねェ」
「フランだけじゃなくもう一人も面倒そうね、白もやし」
「五月蝿ェぞ、紫もやし……後司書を何とかしろ」
「……宴会という場に相応しくない非道徳的言動を繰り返したことについては謝るわ」

相手をもやしと罵り睨み合う一方通行とパチュリーだがキリが無いので止めた。
因みに小悪魔は頭にたんこぶ拵えてパチュリーの後ろに立っている。
ミサカ10032号に「私のものになれ」とか「楽しいことを教えてあげる」とか放っておくと不味そうなのでお仕置きしたのだ。

「ひどいですよー、パチュリー様……あんな美味しそうな娘を前に我慢しろなんて」
「私まで冷たい目で見られるからそういうの止めてくれない?」
「種族柄どうしてもああいい娘には弱くて……」

持っていた本でぶっ叩かれた頭を痛そうに擦りながら小悪魔はパチュリーに訴えるもそれは無視される。

「……教育に悪そうだからミサカ10032号には近寄らないでくれねェか?」
「何を言うのです、反面教師と言う言葉があるじゃないですか」
「自分で言うなよ……あいつの関係者として接触厳禁にするか」
「そ、そこを何とか……お願いです、ミサカさんを私にください、関係者の人!」
「道徳的に不適切なので断る、邪な感情捨てて出直して来い」
「ががーん!?」

ミサカ10032号の成長が計画の変更に必須であることから一方通行は近寄らせないようにしようかと考えた。
だが、小悪魔のような一見教育に悪そうな相手も必要になるかもしれないと暫し考え込む。

(いや、まァ一応利はあるか、こういう『毒』も成長には必要かもしれねェし)

言ってみればミサカ10032号を刺激する為の要素としてなら許していいかもしれない。
そう考えた一方通行は接触厳禁の言葉でショックを受け涙目の小悪魔に話掛ける。

「条件付きなら会ってもいいぞ」
「本当ですか!?」
「あァ、遊びに誘う位なら良い……但し自分のものとかそういうのは無しだ」
「よっしゃあ、テンション上がってきたあ!」
「……早まったかもな(だが優等生だけじゃ世界が狭すぎる)」
「白もやし、良いの?」
「構わねェ、あいつ等の成長の足しになるだろ、多分……まァ不安はあるが」

クローンたちに視点を広く持ち確かな自我を持って欲しい一方通行としては不安だが好きにさせることにした。

「ま、白もやしが良いなら別に良いわ」
「……ああ、そういえば手前ェの従者だったな、勝手に決めて悪ィな」
「別にいいわ、暫くこっちにいるけど特に仕事は無いし好きにさせるから」
「あン?もしかして学園都市に住む気か?」

一方通行は思わず聞き返す。
パチュリーがそうする理由が有ると思えなかったからだ。

「ええ、ここには禁書目録がいる……先日ああも無様に負けた以上強引に取りには行かないけど。
暇を見て会いに行って信用を勝ち取ることにするわ、仲良くしてればその内知識を分けてくれるでしょ」
「地道だな」
「とりあえずあの大食いからして食べ物でも持って行けばいいわね」
「……食い尽くされて破産すンじゃ無ェか?」
「……が、頑張る」

パチュリーは彼女が食い尽くした料理の空の皿のタワーを見て顔を引き攣らせる。
こちらでの活動用資金はあるが冗談抜きに一方通行の言うように食い尽くされそうな気がした。

「ねえ、貴金属とか希少薬品とかこっちで売れない?」
「あァ、まァそういうのが必要な研究をしてるとこなら買い取ってくれるンじゃないか」
「……つ、作るわ、錬金術で作って売ってお金用意するわ!」

インデックスの底なしの食欲に耐えられるか恐ろしくなったパチュリーはプルプル震えながらも言い切った。

「……シスターに魔法使いが貢ぐか、世も末だがまァ好きにやりな」

もっとも欲に目が眩んで痛い目に合ったのにまだやるかと一方通行は呆れる。
彼女に対して一方通行は精々頑張れとやる気無く応援した。

「ふん、そんな応援なんかいらない、私は信頼を勝ち取り知識を手に入れてみせる。
……そして、私がこの街に住む理由はそれだけじゃ無いわ」
「あァまだ有るのか?」

彼女はもう一つの理由を口にし、それを聞いた一方通行は一瞬虚を突かれその次に笑った。

「貴方へのリベンジよ、いつか跪かせてやるから楽しみにしてなさい」
「……好きにしろ、最強目当てに挑んでくる雑魚共よりは楽しめるしなァ」

パチュリーの言葉に暫く退屈せずに済みそうだと一方通行は笑みを浮かべる。
彼女は有象無象の雑魚とは違い誇り高かかった、そういう物を持っている敵は一方通行にとって貴重なのだ。
群れるだけの雑魚よりも一人の強敵の方が遥かに得る物は多く、それ故彼は楽しそうに口の端を吊り上げた。



「青春ねえ」
「もぐもぐ、因縁を押し付けておいて軽いねえ、霊夢は」
「いいじゃない、ルーミア、鈴科君だって楽しそうだし……」

最強ゆえに挑戦者は多いが大半は唯の雑魚なので些か飽いていたし手応えのある敵と戦えば退屈のガス抜きになるだろう。
一方通行にとってプラスなのだからいいだろうと、彼とパチュリーの因縁の元凶である霊夢は誤魔化す様に笑う。

「ま、見た感じ遺恨とか引きずってるのはいないみたいだし解決でいいでしょ」
「結果オーライだと思うけどねー」
「良いのよ、最後に綺麗にまとまれば……あ、ワイン、もう一杯下さい」

幻想郷の異変の後の宴会のように、この場も治まっているように思える。
そのことに宴会を企画した霊夢は満足げにワインを一気に飲み干し次を催促する。
彼女の酒豪っぷりに苦笑しつつ隣でワインを飲んでいたヴェントが注いだ。

「ほれ、どうぞ」
「ありがとう、ヴェントさん……ああ、お酒久しぶり、もう最高」
「ワインなら沢山ある、どんどん飲みな……上条が世話になったみたいだしな」

腐れ縁の上条の恩人ということでヴェントが用意した上等なワインを見せる。
それに霊夢は目を輝かせながらも、少しだけ言葉を訂正した。

「今回の件に関しては上条君が頑張ってくれたわ、私や鈴科君は裏方に過ぎない」
「それでもあの馬鹿は無茶するからああやって元気そうなのはあんたの御陰だろ、だから気にすんなって」
「……じゃあお言葉に甘えて」

霊夢はぺこりと頭を下げてワインを流し込む。

「ふう、おいしー……ま、本当に綺麗に終わってよかったわ」
「大分、派手にやったみたいだね……特にあの超能力者が」
「ええ、まさかここまで暴れ回るとは思わなかったわ、止めてくれた上条君とチルノに感謝ね」

ワインに舌鼓を打ちつつ霊夢は物騒な二人組から逃げ出し合流した上条とチルノを見やる。

「上条の奴は右手があるからともかく、あのチルノって子がそんなにやるとはね」

ヴェントも二人を見た。
解決後砲撃グレイズの際羽隠しの布を失ったことを謝るチルノの記憶は新しい。
謝る彼女を宥め代わりのヴェールを与えたヴェントとしては手間の掛る娘にしか思えなかった。

「……この騒ぎが解決したのはチルノと上条君の御陰よ、本当にあの二人には感謝しないと」
「それじゃああの二人の努力と勝利に乾杯するかい?」
「ええ、そうしましょう……チルノたちに乾杯」
「ああ、上条の馬鹿とチルノのお嬢ちゃんに乾杯」
「わたしもやるー、チルノと黒髪に乾杯!」

霊夢とヴェント、ルーミアは一緒に楽しそうに笑うチルノたちを見ながらカチンと杯と打ち合わせた。



こうして、禁書目録を巡る物語は幕を閉じる。
氷精と仲間たちは休息の日々を楽しむ、但し、次の喜劇までのほんの暫しの間だが。



第一話 氷精と禁書目録・完



おまけ(第二話序章、但し一話と同時期でつまり過去)



「ふあ……あ、もうこんな時間だ」
「本当だ、夜更かしはいけませんよ、――さん」

少女が大きく欠伸する。
恥ずかしそうに口を押さえた少女は黒の長髪と白い梅の花を象った髪飾りが特徴的だった。

「……夜更かしってあなたはどうなの?」
「私はもう少し仕事で使う資料を纏めないといけないので……」

少女は咎められ言い返すが相手の言葉にぐうの音も出ず言い負かされた。
相手、同じくらいの年頃に見える少女(何故か沢山の花飾りを頭に載せている)がまだ作業するというので見送られ床に就く。

「お休みなさい、――さん」
「うん、お休みなさい、初春」

少女はその日の最後に友人とそう言葉を交わした。



気付けば少女は古ぼけた神社を「空から」見下ろしていた。
眼下では10そこらの女の子が面倒そうに箒を手に神社内を掃いている。
少女はその光景が過去にあったこと、つまり夢だとわかった。

「……ふうふう、ああもう掃除面倒、掃除機無いかなあ」
「あんな、ちっちゃいのが巫女ねえ?大丈夫なのかしら?」

過去の少女、奇妙なことに今と全く見掛けの変わらない少女が掃除を面倒臭がる女の子の実力に疑問を抱く。

(嗚呼そういえばこんなこと在ったな)

少女は思い出す。
この夢の時期彼女は神社の裏手にある梅の樹、御神木とされていた樹の近くに家を拵え住処にしていた。

(前の人が引退して『新しい巫女』が来たから見に来たんだっけ?)

その時まで神社にいた巫女がそこそこいい年になり霊力の衰えから引退することになった。
妖怪の賢者である八雲紫が代わりを勤められる者を探し、その結果見出されたのが今神社を掃除中の幼いといっていい巫女だ。
御神木に住処にしていた彼女は新しい巫女を見に来たのだが、その相手を見てつい邪なことを考えてしまった。

「……あ、良いこと思いついちゃった!」
(そういえば私ちっちゃいからって巫女を『甘く』見て……)

何かを思いついた様子で過去の少女が新しい巫女の下へゆっくりと降りていく。
過去の少女の降下に気付いた巫女が不思議そうに見てくる。

「ねえ、そこの巫女、少し良い?」
「何よ、あんたは……」
「神社の裏に梅の樹があるでしょ、そこに住んでるの」
「……ああ、あの天神様縁の?」

天神様とは高名な詩人である官原道真のことである(他にもガリョウ梅と呼ばれる御神木を外の世界の神社に寄付した)

「あの御神木を住処にする私は天神様の眷属と言って良いわ!」
「はあ?」
「寧ろ天神様縁の樹に住まうことからその代理に等しい!」
「はああ?」
「そんな私にこの神社を寄越しなさい、これは光栄なことよ!」
「はあああ?」
(おおう、過去の私ってばなんて大それたことを……)

少女は自然現象が具現化し意思を持った存在であり、妖精と呼ばれる者の一種だった。
彼女は相性の良い梅の樹(それも御親睦と呼ばれるほど上等な物)を住処にしたことで並みの妖精より強力な力を持っていた。
体も他のものより大きく(人の少女と同じくらい)強さでも妖精所か妖怪の域に近づいていた。

(そこそこ強力だったからこんな大口言ったりして……やば、少し恥ずかしい)
「見たところ妖精でしょ、天神様の代理なんて……」
「五月蝿いわよ、チビ巫女……いいから渡すと言いなさい」

己の力を過信している人外の少女は呆れる巫女に構わず神社の譲渡を迫る。
下手すれば賢者を敵に回すがこの地の中枢である神社を手にすることは魅力的だったのだ。

(でも……私は気付けなかった、巫女がどういう存在かを)

但し少女はあることを予想できなかった、そのせいで失敗する。

「この神社はあなたには勿体無いわ、私のものに……」
「……えいっ!」

プスリ

「あう!?」

少女の演説が巫女が放った魔性を貫く封魔針の一刺しで中断される。
額に針を一寸ほど突き立てられ、悶絶しながら地面に落ちてその衝撃で更に悶絶する。

バタバタバタ

「痛いわね、何をするの……えっ!?」

暫く転がった後起き上がった少女が文句を言おうとして念を凝らし術を発動し様としている巫女に凍りつく。

「不法侵入者にはお仕置き……とりあえず退治するね」
「ちょっ、待っ!?」
「待たない、妖怪バスター!」
「ひっ、いや……きゃん!?」

少女の誤算は巫女が若くとも強力な霊力を持ち、それ以上に容赦が無いことだった。
若いながらも賢者に選ばれるほどの才能の持ち主であった巫女はその才を遺憾なく発揮し少女を霊力の光で吹っ飛ばす。

人外の少女の博麗神社占拠は未遂に終わる、またこれが巫女、博麗霊夢の始めての妖怪退治となった。



「み、巫女怖ええ!?」

過去の恐怖を思い出した少女は夢から覚醒し飛び起きた。

「――さん、大丈夫ですか!?」
「はあはあはあ、嫌なもの見た……」
「凄く魘されてましたよ、怖い夢でも見たんですか?」
「……うん、まあ、最悪の夢かな」

心配する友人に感謝しながら少女は再び床に就く。

「びっくりさせてごめんね……今度こそ眠るから」
「――さん、本当に大丈夫ですか?」
「心配させてごめんね、初春……お休み」

人外の少女は今度こそ就寝する。
だが、悪夢は続いた。



ザアザアザア

雨が降っている。
土砂降りと言って良い位に。
暦では六月、梅雨に入っているがそれでも異常な量の雨だ。
それもその筈でこの雨は自然に降っている訳ではない。

(うわっ、こ、これはまさか……)

この雨は少女、過去の少女が降らせている。
彼女はある何でも屋の屋根裏に潜んでいた。

(……これはあの半妖の男の店を訪れた時の?)

この光景は神社の時から数年後のものだ。
巫女に返り討ちに遭ったあの後少女は命辛々逃げ出すと御神木から身の回りの物を持ち出しそこを離れた。
あの恐ろしい巫女から少しでも離れたかったのだ。
幸い幻想郷という土地は自然に溢れ妖精が暮らし易かったので何とかその数年やってこれた。
少女は幻想郷の各地を転々としていたのだがその内ある場所に目を付ける。

「ふふふ、ここは面白い物が沢山あって中々いいですね」

過去の少女の目的は何でも屋にある品々だ。
特に半妖の男が磨いている剣は見事な業物で心惹かれる。
その上ここには人が滅多に来ないので住み易そうだった。

「これだけ雨を降らせれば誰も近寄れない……後は店主を脅かして追い出すだけです」

梅と梅雨という自然現象は深く関わり、それ故に少女はこの様に雨を降らすことが出来た。
そうやって行動を起こし易い様密室状態にし頃合を見計らい踏み込もうとしたのだが。

トントン

過去の少女の肩を叩く者がいた。
振り向けばどこかで見たような少女と目が合う。

「え?」
「どうも通りすがりの巫女よ……早速だけど退治するね、妖怪バスター!」
「うわあああああ!?」
(……あーあ、私ってつくづく巫女と相性が悪いのね)

今度は運が悪かった。
偶々近くまで見た巫女が雨を不信に思って周囲を見回った結果少女は発見されたのだ。
後は巫女が巫女らしく妖怪退治をしただけ。

出会い頭の撃墜と言う形で人外の少女と巫女との二度目の遭遇は終わる。



初春と呼われた少女は魘される友人を心配そうに見る。

「な、何の夢を見てるんだろう?」
「……うーん、うーん」

寝相が乱れ落ちた毛布を少女に掛け直すと起こさないようそっと離れる。
友人は心配だが態々起こすわけにも行かず、また彼女にはすべき作業があった。

「『幻想御手』の早くデータを纏めないと……もう少し頑張ろっと」

初春と呼ばれた少女はある事件を捜査する為のデータ整理を再開した。

「あ、あんな恐ろしい巫女のいる郷にいられるか……私は外に行く、こんな物騒なところに居られないわ!」
「……何?あの死亡フラグみたいな寝言?――さん、一体どんな夢見てるんだろ?」



幻想郷において博麗の巫女に二度叩きのめされた運の無い人少女がいた。
そんなツイテイナイ少女はその後幻想郷から旅立った。
サスペンスものだと後で殺されてそうな死亡フラグ染みた言葉を最後に残して。

「あ、あんな恐ろしい巫女のいる郷にいられるか……私は外に行く、こんな物騒なところに居られないわ!」

彼女は外の世界に飛び出すと適当に戸籍を偽造して(妖術で人を惑わして架空の過去や家族までっち上げた)学園都市に潜り込む。
そこを選んだのは一度懐に飛び込んでしまえば怪しまれないと思ったからでこの辺妖怪や妖精らしい考えの無さである。
妖術で定期検査等は誤魔化し人外の少女は学生となった、何の変哲も無い無能力者の学生、それが学園都市での少女だ。
ここに住み数年立つが不審に思う者は無くこの先も無いだろうと少女は思っていた(但し何も無ければだが)

天神様の梅の御神木と関わりを持ち一部の季節の自然現象と深く関わる少女はこの後一人の超能力者と出会うこととなる。
とある季節の化身と云える人外の少女と紫電を纏う苛烈だが心優しき少女の出会い、それは幻想と科学が交わる奇妙な物語の始まりだ。



節姫(セッキ)と電撃姫編・一(仮)へ続く



次回から超電磁砲編開始(一話と同時期)あ、おまけの霊夢が怖い妖精ぽい誰か、実はあんまり活躍しません。
東方側からは花映塚から一人、風神録から一人、地霊殿から三人位登場させる予定です(あくまで予定で増えるかも?)

以下コメント返信

いいい様
整理すると紫に貴重な人材連れてかれた上その霊夢の垣根襲撃、何より影響を受けた麦野の暴走と色々大変でしょうね(特に胃)
学園都市製の酒もどき・・・何か薄味か薬品臭そう、霊夢に文句言われて上条さんと一方(巻き添え)げんなりなオチが浮かびます。

九尾様
フランが後ろに控えている安心感は異常、最後も綺麗に欝にならない展開に持っていけたので作者的にも助かりました。
但し彼女が味方ならですが・・・アレイスターも多分そういう考えで、敵に回すと被害が出過ぎるから基本泳がしておくって感じ。
御坂妹は消化することが色々、チルノたちから影響受けたり戦った相手から変化の指摘及び因縁(主に小悪魔)一応終えられ一安心。


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