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No.37513の一覧
[0] 君という名の花[you](2013/05/06 15:07)
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[37513] 君という名の花
Name: you◆85093dde ID:e4a5a7cd
Date: 2013/05/06 15:07
気がつくと僕は泣いている。君との毎日。あの頃の僕は君に会うことがすべてだった。美咲。君はいまどこにいる?僕は君をなくしてどうすればいい?僕は泣いている。



僕と美咲はある病院で出会った。僕はその頃親戚のお見舞いでよくそこに通っていた。美咲はよく僕を見かけたらしい。
ある日エレベーターでちょうど一緒になった。
「……」
当たり前だけどお互い話さなかった。
でもその沈黙を美咲が壊した。
「…君ってさ、よくここにくるよね?」
突然の会話に僕は驚いた。
「え?えっと、うん。親戚がここで入院してるんだ」
「ふーん(笑)わたし、よく君をロビーで見かけるんだ。えっと、名前は?」
「えっと…雄っていうんだけど」
「雄くんかぁ。わたしは美咲。えっと、高二だよ」
「美咲さん?俺も高二なんだ。同級生なんだね」
美咲は初めて話すのにすごく親しみやすかった。最初は驚いたのに、いつの間にか馴染んでる僕がいた。
「ホントに!?よかったー。年上だったらどうしようっーて思った(笑)」
「美咲さんは……ここで入院してるの?」
「うん。昔から身体弱くてね。でももう慣れちゃった」
「そっか。強いんだね」
「エヘヘ。わたしね、ずっと病院にいるからこうやって年が近いひとと話してみたかったの」
「雄くんは、迷惑…だったかな?」
「そんなことないよ。俺でいいならいつでもはなそうよ」
「エヘヘ。ありがと。やっぱり思った通り」
「え?なんていった?」
「ううん、何でもない。あの、立ち話もなんだから部屋来ない?」
「え?いいの?」
「うん。だれもいないし…」

なぜだろう。その時の美咲は一瞬顔が曇ったように見えた。

僕は美咲に連れられ病室に行った。
…美咲の病室はベッド、小さなテレビ、花しか置いていない質素な部屋だった。
これなら退屈してもしょうがないかも
しれない。
「お邪魔しまーす」
「どうぞどうぞ。…よいしょ」
美咲はベッドに座った。よく見ると美咲は年頃にしては華奢だった。病気は重いのだろうか。
「俺ってそんなに目立ってたかな?病院なのに」
「目立ってたっていうか、わたしがただ見てたのかな?」
「なにそれ。ちょっと照れる」
「照れるな照れるな。なんだろう?いつも君を見てると笑顔でさ、話してみたかったんだよね」
「笑顔…かな(笑)でも、それで美咲さんと話せたならよかったかな?」
「さっきも言ったけど、わたしこんな身体でしょ?だから学校とかもわからないし、友達とのおしゃべりっていうのに憧れてたんだよね。…なんか恥ずかしいな」

なんだろう。今の美咲の言葉。僕はほっとけなかったんだ。
「美咲さんはやっぱり退屈?」
「…そうね。ひとりはちょっと暇かな?少しでもだれかと話すことがあると嬉しいかも」
「だれか…ねえ美咲さん。俺がしゃべりにきてもいいかな?」
「え?いいの?でも、迷惑じゃない?」
「俺が頼んでるんだからそんなことないよ。あと、俺と美咲さんはもう友達だよ。だから決めた。友達の俺が毎日美咲さんのとこに行くよ。それで美咲さんの毎日を少しでも楽しくする。約束な」
「毎日!?」
「うん、毎日。無理な日は手紙だけでも届ける。…嫌かな?(汗)」
「ううん、わたしは嬉しいけど…エヘヘ、ありがとう!なんだろう。雄くんに話しかけてすごくよかった」
「うん。俺もありがとう」

こうして僕の美咲と会う毎日が始まった。今思えばよくあんな約束したと思う。仮にも初めて話すのに。美咲はそれほどまでに僕に強い気持ちを与えたのかもしれない。

翌日
コンコン 「どうぞー」
「お邪魔しまーす。や、美咲さん」
「あっ雄くん!ホントに来てくれたんだ!ありがとう」
「ううん、約束だろ。それに俺も美咲さんと話したいし」
「なにそれ?(笑)でも、大変じゃない?ここくるの」
「ぜんぜん!」
「そう…よかった!」

美咲は一瞬すごく喜んだように見えた。彼女の笑顔はとても綺麗だった。

「わたしね。雄くんの学校の話が聞きたい!」

突然顔を輝かせて美咲は言った。

「学校?なんで?」
「えっとね、普段の高校ではどんなことやってるのかなー、って」

前々から思ったが、たぶん美咲は普通の高校生活というのに憧れているんだろう。……少し胸が痛かった。

「わかった。何でも話すよ。えっとな……」

それから僕は自分の高校生活についていろいろ話した。同級生、友達、ちょっと生意気な後輩、授業や先生のこと。話すたびに美咲は楽しそうに聞いていた。

「それでさ、…あっ、もうこんな時間。じゃあこの話はまた明日な。美咲さん。」
「あ、待って!」
「ん?どうした?」
「えっとね?その…美咲さんって呼ぶのやめない?わたしたち、その、友達なんだからふつうに美咲って呼んでよ」

その言葉にちょっと緊張した。
高校に行ってても名前で呼び会う女子など僕にはいなかった。

「わかった。じゃあ…美咲!また明日会いにくるよ!」
「!エヘヘ。うん!また明日ね、雄くん!」

美咲は笑顔で言った。僕も恥ずかしかったが明るい気持ちになれた。

それからも僕は毎日美咲のとこへ行った。なんの苦もなかった。それどころか、美咲に会うことが毎日の楽しみになっていた。

「や、美咲」
「あ、雄くん!」

このやりとりも何回目だろう。

「今日は美咲が前ガトーショコラが好きって言ってたから、駅前のケーキ屋で買ってきたんだ」
「え!覚えててくれたの?ありがとー!」

ケーキに目を輝かせながら言った。

「すっごくおいしい!エヘヘ。ありがとね」
「どういたしまして。そんだけ喜んでもらえたら俺も満足だよ」

美咲の笑顔に僕はいつしか引かれていた。彼女の笑顔のためなら僕は頑張れた。

「じゃあまた明日な。美咲。」
「うん!また明日ね。雄くん!」

帰るときはこの会話を必ずした。

ある日

「どうしたの?今日は遅かったね?」
「うん。その、前言っただろ?親戚が入院してるって」
「うん」
「その人が今日、亡くなったんだ」
「…えっと、ごめん」
「いやいや、いいんだよ。…その人には結構お世話になってな。やっぱり大切な人が死ぬって悲しいな」

僕は美咲の前では頑張って笑った。さっきまで泣いていたのに。

「…ねえ、雄くん。死ぬってなにかな?
そのあとってどこにいくのかもどうなるのかもわからないんだよね」

美咲は話し出した。

「雄くんはどうなると思う?やっぱり天国とか地獄ってあるのかな?」
「…どうなんだろうな?でも、俺は信じてるよ」
「そっか。わたしはね。その人を思ってる人がいるならそこでまだ生きてると思う。確かに、もう話せないし動けないけど、ちゃんと生きてると思うな」
「うん…」
「だからその人も雄くんの中で生きてるんだよ」

美咲が言ったことはすぐには理解できなかった。死んだら何もないじゃないか。

「ありがとな。それと、明日は葬式だから来れないんだ」
「あ、そっか。ちょっと残念」
「だから、これ。手紙書いた。あとこれも」
「あ、ありがと!なにこれ?開けていい?」
「おう」
「わぁ!くまだ!いいの!?」
「うん。少しでも美咲が元気でいられるように」
「エヘヘ……グスン」
「!?ど、どうした!?どこか痛いのか!?」
「ううん、…ごめんね。うれしくって。嬉し涙ってほんとにあるんだね」

僕は美咲に聞かなければいけないことがある。美咲の病室に来ても誰かと会ったことがない。部屋に贈り物とか見当たらなかった。…そう。親だ。

「よかった。…なあ美咲。聞いていいかな?」
「なに?」
「美咲の…親は?」
「!……そうだね。雄くんに話したことなかったよね」
「俺が聞いても大丈夫かな?」
「うん。むしろ話さなくてごめんね。雄くんには聞いてほしい」

最初に感じた美咲の暗い様子はこれだったのかもしれない。

「…わたしね。両親を幼い頃に亡くしてね。親戚をたらい回しにされてきたの。身体も弱いわたしをだれも引き取るのを嫌がってさ。今は一応引き取ってもらってるけど、実際ほったらかしで」

美咲は初めて自分の家庭のことを話した。その顔はとても苦しそうで、泣くのをこらえていた。実際こんな女の子が病院で一人でいるのはつらいだろう。美咲は、それを今まで一人で耐えてきたんだ。

「ごめんね。暗くなっちゃって。でも今は寂しくないよ」
「どうして?」
「だって雄くんがいるじゃん。だから大丈夫!」

美咲は笑っていた。でも、僕には無理をしているように見えた。こんな美咲をほっとけなかった。彼女を心から笑顔にしたかった。

「ありがとな。話してくれて。俺も美咲のおかげで笑顔でいられるよ」
「わたしのおかげ?わたしは
雄くんにしてもらってばかりでなにもしてないよ?」
「ううん。そんなことない。いつも元気もらってるよ」
「ホントに?」
「もちろん。…それと、俺も美咲に話すことがあるんだ」
「なになに?」
「それは、また今度話すよ。今日はもうこんな時間だし」
「えぇー、すごい気になるー。まぁいいよ。今日はわたしが聞いてもらったし」
「ごめんな。明日は来れないから、手紙読んでね」
「そういえばそうだったね。…わかった!明日は手紙とくまで乗り切る!」
「あはは。じゃあ明後日な。美咲」
「うん。明後日ね。雄くん!」

そして僕は部屋を出た。明日は美咲に会えない。約束してから初めてだ。少し憂鬱になった。でも明後日、僕は美咲に話す。自分のきもち。美咲が好きだ。このきもちで僕も明日を乗り切ろう。

翌日

「美咲?入るよ」
「…どうぞ」
「2日ぶりだね。なにしてた?」
「…別にいつもと変わらないよ」

その日の美咲はどこかおかしかった。元気もなく、おとなしい。なにかあったのだろうか。

「どうした美咲?今日はなんか元気ないな?」
「そう…かな?」
「…じゃあ今日は美咲が元気になるよう「元気?ねえ雄くん。元気ってなに?」「え?」
「…わたしはいつ元気になれるのかな?いつ普通の暮らしができるかな?」
「美咲?なにかあった?よかったら聞かせてよ」
「…なにも…ないよ。…雄くんはなんでわたしに優しくしてくれるの?」
「っ!…それは、美咲が
「可哀想とか?…そんな気持ち欲しくないよ…」
「ち、ちがう。俺はただ…!
「…雄くんも大変だね。わたしと話してから毎日ここに来ないといけなくなったんだから……もういいよ。もうっ…来なくても…!」
「み、美咲… ?」

美咲の言葉に僕はなにも言えなかった。ただ好きだから、その一言を言えばよかったのに。

「…そうだよな。やっぱり、毎日来るのは迷惑、だよな。ごめんな、もう…やめるよ」

美咲はただ俯いていた。

「えっと、これ。駅前のガトーショコラ。美咲、おいしいって言ってただろ?…だから食べてな…じ、じゃあ俺行くよ。じゃあな!」
「………雄くんっ」

その日、初めて「また明日」を言わなかった。最後、美咲が僕を呼んだように聞こえたが、振り向けなかった。
今日で美咲と会えた毎日も終わり。そう思うと体から力が抜けた。自分のきもちも言えず、ひどい別れ方をした。正直確かに迷惑だったかもしれない。
そんなことばかり考えた。それ以外考えれなかった。

次の日
病院には行かなかった。いや、行けなかった。今ごろ美咲はどうしているんだろう。昨日どうして様子がおかしかったんだろう。もう会えないのに美咲のことばかり考えた。自分が情けなく感じた。

次の日
夕方、突然携帯がなった。公衆電話。誰だろう。
「もしもし」
「っ………」
なんなんだろう。イタズラ電話か。
「もしもし?どちら様ですか?」
「……雄…くん?」

一瞬時間が止まった。美咲?どうして?

「み、美咲…?」
「ご、ごめんね、いきなり…前くれた手紙に電話番号書いてあったから…」

美咲と電話越しで話しているのにすごく緊張している自分がいた。

「その…どうした?」
「……えっと」

沈黙。ぎこちない空気がつらかった。

「雄くん?…その、えっと…」
「……美咲?」
「わたしね、……ぃたい」
「えっ?」
「ぁぃたい………雄くん、会いたいよ」
「!……美咲ちょっと待ってろ」

美咲のその言葉を聞いた瞬間、体が勝手に動いた。なぜだろう。その時はなにも考えれなかった。



「ハァハァ、美咲!」
「あ…雄、くん」

美咲は泣いていた。細い体を震わせていた。

「美咲」

僕が近づいた瞬間、彼女は抱きついてきた。

「雄くんっ!ごめんね。あんなひどいこと言って…グス わたし最低だよね …グス」

美咲は泣きながら謝ってきた。僕の体に顔をうずめて震えていた。

「ぜんぜん、迷惑じゃないよっ。雄くんが来てくれること。嫌じゃない。」

僕は美咲を撫でながら言った。

「…よかった。俺は嫌われたんじゃないんだね」
「っ!ごめん。ごめんなさい!嫌いじゃない!雄くんが来ないとすごく寂しかったっ。昨日雄くんがいないだけでおかしくなりそうだった、わたしっ…わたしっ」

それから数分の間美咲は泣いていた。

「美咲?大丈夫?落ち着いた?」
「うん…ありがと…」

僕は決めた

「なぁ美咲。俺さ、好きな人がいるんだ」
「……」
「その人が笑うとさ、すごく嬉しい。その人のためなら頑張れるし、その人といる時間が一番好きなんだ」
「……グス」
「美咲。俺は、君が好きなんだ。だから、毎日ここに来るのも大変じゃない。」
「…!…うん」
「美咲。俺の恋人になってほしい。友達じゃなくてもっと近い人になってほしい」
「…うん。嬉しい。嬉しいよっ、グス。わたしも雄くんが好き。すごく…好き!…でもいいの?わたしこんな身体だし、まともに動けないよ?」
「俺は、美咲じゃないと嫌だよ」
「っ。エヘヘ。わたしも雄くんじゃないと嫌だよ。……それならさ、わたし達、恋人になったんだから…キス、しよ?」

それから僕たちは初めてキスをした。触れるだけのキス。今はそれだけで幸せだった。

「雄くん、」
「ん?どうした?」
「好きだよ。……大好き」
「うん。俺も大好きだ」

それから僕はまた毎日病院に行った。雨の日も、忙しくても必ず行った。美咲に会えるだけでなんでもよかったし、俺が美咲にできるただひとつのことだった。

ある日

「あ、雄くん見て。雪!」
「ほんとだ。今日は寒かったからな」
「わたしね、雪が好きなんだ。真っ白できれいで。すぐに消えてしまうけど、そのときを白く照らしてくれる」

美咲は雪を見ながら言った。なぜだろう。嫌な予感がした。美咲と雪を重ねてしまう僕がいた。美咲がいなくなるわけないのに。そんなこと考えたら駄目なのに。

「美咲?俺と美咲は一緒だよな?」
「あはは、なにそれ。当たり前だよ!


それからというもの、美咲は痩せていった。もともと華奢な体だが、明らかに痩せていた。

「ねえ雄くん」
「どうした?」
「これ、あげる」

美咲は僕にお守りを渡した。

「雄くんがこの先安全にいられるように」
「なんだよそれ」
「エヘヘ。雄くんが怪我とかしたら心配だから」

美咲の意味深な発言はよくわからなかった。

「ねえ雄くん。今日は暖かいから外に出てもいいかな?」
「うん。もちろん。」

そういって美咲を抱き上げて車椅子に乗せた。美咲は軽かった。想像以上に軽くて細かった。

「やっぱり外の空気は気持ちいいね」

日に照らされた美咲は真っ白で綺麗だった。

「ねえ雄くん。水族館ってどんなところなの?」
「水族館か。水族館はいろんな魚がいてすごい綺麗な場所だよ」
「へえ。いいな。行ってみたい」
「そうだな。じゃあ美咲がどこか行けるようになったら水族館に行こうか」
「ホント?嬉しい」
「ううん、水族館だけじゃない。動物園も遊園地も映画館もいろんなとこに行こう」
「エヘヘ。そうだね。雄くんと買い物行って、一緒に服見たり、ペットショップ見たり」
「おう。俺が、俺が美咲が行きたいとこ全部連れてってやる。そしていつか結婚して家族になって。ずっと一緒にいよう。約束だ」
「うん!約束!」

美咲は僕の大好きな笑顔を見せた。綺麗だ。この笑顔が何よりも好きだった。



数日後
美咲は息を引き取った。永遠に行ってしまったんだ。
眠っているような美咲は冷たかった。

「美咲?起きてくれよ。またいつもみたいに笑ってくれよ。また一緒にケーキを食べるんだろ?水族館に行くって言ったじゃないか」

起きるはずのない美咲をなんども起こした。いつものような返事はなかった。

「美咲っ!み…さきっ!」

いつになく僕は泣いた。ただ泣くしかなかった。僕の声は届かない。もう、美咲は行ってしまったんだ。


美咲の部屋にはほとんどなにも残ってなかった。ただひとつ。僕があげたくまのぬいぐるみ。よくみると首もとに紙束がくくりつけてあった。

雄くんへ
これを読んでるってことはもうわたしは死んじゃったんだね。ごめんね。約束守れなくて。
わたしね。今までなんで生きてるんだろう?ってよく思ってた。親もいないし身体も弱いし。でもね、雄くんと会ってからは毎日がすごい嬉しかった。
初めて雄くんを見たとき優しそうで、わたしはその時から好きになってたのかもしれない。

頑張って話しかけてみたらやっぱり優しくて。でもまさか毎日会いに来てくれるなんて思いもしなかったよ。
一回さ、雄くんにひどいこと言ったでしょ。あの時はホントにごめんなさい。

あの日にお医者さんから結構身体が危ないって言われて自暴自棄になってたんだ。
でも、そんなことより雄くんがここに来ないのがすごく寂しかった。また一人になるんだって思うと壊れそうだった。

そのあとに雄くんがわたしに好きって言ってくれてすごい嬉しかった。ありがとね。

わたしね。こんな生活だったけど幸せだったよ。生きてるなかで一番幸せだった。雄くん。ホントにありがとうね。だから雄くんも幸せになってね。わたしのこと引きずったら怒るからね。約束!
大好きだったよ。

「美咲…なんだよ。やっぱり死んだら終わりじゃないか。美咲がいないと意味がないんだよ。また美咲と話したいよ。もっと一緒にいたいよ」

涙はいつなくなるのだろう。どれだけ泣いても止まらなかった。

外は雪が降っていた。あたりを真っ白に染め、僕の心までも溶かそうとする。
一人空を見上げる。美咲が好きだった雪。その雪は僕の手のひらにひとつ、またひとつと落ちては儚く消えていった。


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