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No.37503の一覧
[0] インフィニット・ストラトス ~弱きものの足掻き~【転生オリ主】[友](2013/05/05 20:35)
[1] 第一話 IS学園入学初日[友](2013/05/05 20:36)
[2] 第二話 IS特訓[友](2013/05/05 20:39)
[3] 第三話 クラス代表決定戦[友](2013/05/05 20:40)
[4] 第四話 まさかの共同生活の始まり[友](2013/05/05 20:42)
[5] 第五話 天才なんて嫌いだぁぁぁ![友](2013/06/23 22:14)
[6] 第六話 首突っ込むつもりは無かったのに………[友](2013/08/13 00:29)
[7] 第七話 2人の転校生…………ま、俺には関係ないが[友](2013/08/15 11:34)
[8] 第八話 俺が活躍すると? ブーイングの嵐です。[友](2013/08/15 11:35)
[9] 第九話  海の楽しみは海水浴だけではない![友](2013/08/25 11:52)
[10] 第十話  名は体を表すを地で行ってます。[友](2013/08/25 11:54)
[11] 第十一話 まさかのデート!?  そして…………[友](2013/09/15 22:47)
[12] 第十二話 楯無の心[友](2013/11/09 23:38)
[13] 第十三話 楯無の答え[友](2013/11/10 06:36)
[14] 第十四話 信頼の二次移行[友](2013/11/30 21:02)
[15] 第十五話 今日は自宅でゆっくり…………のはずが![友](2013/12/23 01:47)
[16] 第十六話 プールでデート。 あれ? プールで原作イベントってあったっけ?[友](2014/02/20 22:15)
[17] 第十七話 夏祭り………相変わらず一夏は唐変木だ[友](2014/03/30 18:01)
[18] 第十八話 彼女の家に行くのは初めてだ………不安です[友](2014/04/13 20:07)
[19] 第十九話 沖縄旅行 1~2日目[友](2014/05/26 00:03)
[20] 第二十話 沖縄旅行4日目~6日目[友](2014/07/26 22:24)
[21] 第二十一話 努力の成果[友](2014/08/16 17:32)
[22] 第二十二話 特訓風景と一夏ラヴァーズ急襲………まあ、予想通りだが[友](2014/11/02 13:22)
[23] 第二十三話 一夏の特訓風景と学園祭[友](2014/12/09 01:06)
[24] 第二十四話 妹達の邂逅とシンデレラ[友](2015/02/22 18:04)
[25] 第二十五話 白式を寄越せ? 人違いです![友](2015/03/29 19:26)
[26] 第二十六話 偶には自分から原作ブレイクしてみよう[友](2015/05/17 11:13)
[27] 第二十七話 男には やらねばならぬ 時がある    今がその時だ!![友](2015/08/12 07:36)
[28] 第二十八話 ワールド・パージ。 俺は別任務だけど[友](2015/12/06 21:11)
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[37503] 第十一話 まさかのデート!?  そして…………
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/15 22:47

第十一話 





臨海学校も終わり、夏休みまで後2週間とちょっと。

原作では、この間に特にイベントは無かったはずなので、安心している。

しかし、この期間に俺の人生を一変させる出来事があろうとは、今の俺には全く予想だにしていなかった。





週末の放課後。

俺はいつものように楯無先輩の地獄の特訓デラックスフルコースを受けていた。

地獄の特訓が終わっても、まだアリーナの使用時間は30分以上残っている。

まあ、最初に比べれば相当体力ついてるし、ペナルティも少なくなってるからな。

ここからは、いつものように本気の楯無先輩と模擬戦になるのだが、ふと楯無先輩がある提案をしてきた。

「最近は回避と防御は上手くなってるけど、少しは攻撃しなきゃダメだよ。 そこで、君のやる気を出すために、私に一撃入れたらご褒美をあげようと思うんだけど、何がいい? あ、前みたいに訓練を増やしてくれ、とかは無しね。 純粋に君のやる気を引き出すためだから、君が喜ぶご褒美じゃないと、意味無いからね」

「はあ、ご褒美ですか…………?」

いきなりそう言われても答えに困る。

精神年齢45歳の俺にとって、今更物なんかじゃやる気が出ないし…………

ああ、そういえばどっかの恋愛ゲームでこんなシュチュエーションがあったなぁ。

陸上の部活に入ってるお調子者の主人公が憧れの先輩に、いい記録を出したらご褒美をあげると言われて、デートしてもらう約束を取り付けるとか………

まあ、どうせ一撃入れることなんてできないからこれでいっか。

それに、もしかしたら慌てふためく楯無先輩が見れるかも知れないし。

「じゃあ、ここは学生らしく、先輩、デートしてください………とでも言いますか?」

「へっ?」

楯無先輩が素っ頓狂な声を漏らす。

「デ、デート………? わ、私と………!?」

おお、驚いてる驚いてる。

自分を指差しながら顔を赤くして可愛いな。

「う~~~~~……………」

唸り出して悩みまくっている。

いかん、おフザケが過ぎたか!?

俺は慌てて言葉を撤回しようと口を開いた。

「た、楯無先輩! 今のはほんのじょ「い、いいよ……!」って、はい!?」

冗談と言おうとしたところで楯無先輩の口から言葉が発せられる。

「いいよ……! 君が一撃入れたら、デ、デートしてあげる!」

顔を真っ赤にしながらそう言う楯無先輩。

いや、そこまで無理しなくても。

「あの……「シャラップ! 生徒会長に二言はないわ!」」

それから俺の顔をみて、

「君も男の子なら、二言は無いわよね?」

そう言ってきた。

「………まあ、どっちにしろ無理でしょうから問題ないんですけど………」

実際問題、どんなにやる気を出そうが、今の俺じゃ楯無先輩に一撃入れることは不可能だからな。

「なら、始めましょうか!」

楯無先輩が構える。

俺もブレードを構えた。

「…………………」

俺は集中する。

そして次の瞬間、

「くっ!」

一瞬で踏み込んできた楯無先輩のランスを防ぐ。

更に、

「はっ!」

いつの間にか左手に展開された蛇腹剣『ラスティー・ネイル』のソードモードが振るわれる。

「のわっ!?」

俺は仰け反ってギリギリ躱す。

「まだよ!」

続けてランスが横凪に振るわれ、俺は咄嗟にブレードで防ぐ。

「あぶねっ!」

俺は一旦下がるが、

「そこっ!」

ラスティー・ネイルが蛇腹剣となり、俺に襲いかかる。

「ぬがっ!?」

俺は、何とかブレードの腹で蛇腹剣を弾いた。

一撃一撃が速すぎる。

「ほーら、どんどん行くよー!」

楯無先輩が瞬時加速で接近してくる。

そして、次々に繰り出される攻撃。

それを必死に防御する俺。

何時も通りの一方的な展開。

そして、

「スキあり!」

遂に耐え切れずにブレードが大きく弾かれたところに、楯無先輩の攻撃がクリーンヒットする。

「がっ!?」

一瞬怯んでしまえば、そこまで。

次々に連撃を食らう。

このまま攻撃を受け続け、最後のランスの一突きを貰ってシールドエネルギー0にされるのがいつものパターンだ。

そこで、ふと俺は思い出した。

そういえば、いっつも最後はランスの突きだったよな。

…………イチかバチか、やってみるか。

俺は決心し、その時のために痛みを我慢してその時を待つ。

どんどんシールドエネルギーが削られていき、残りが僅かになったとき、

「これで終わり!」

楯無先輩が、ランスの一突きを放ってきた。

今だ!

イメージするのは、前世の漫画の不殺の人斬り。

厨二病式飛天〇剣流。

「〇巻閃!!」

楯無先輩のランスを回転しながら躱し、そのまま攻撃するイメージ。

そして、渾身の想いを込めて、剣を振るった。

――ドゴッ

「あうっ!?」

ブレードに伝わる衝撃と、小さな悲鳴。

「え?」

俺は思わず声を漏らす。

見れば、楯無先輩が少し離れたところで膝を付いている。

楯無先輩の顔は、驚きの表情が浮かんでいた。

俺は、一体何が起きたのか理解できなかった。

ぶっちゃけ俺がやったのは唯の回転斬りに等しい。

そんなもので、楯無先輩に当たるとは思っていなかったんだが…………

楯無先輩が立ち上がると、歩いて俺に近づいてくる。

「驚いた。 盾君、いつの間に瞬時回転イグニッション・スピンなんて覚えたの?」

「はい? 瞬時回転イグニッション・スピン?」

「うん。 瞬時加速イグニッション・ブーストの応用技で、簡単に言えば超高速回転。 しかも君がやったのは、移動を併用して行う更に上級の技なのよ」

楯無先輩の言葉に俺は言葉が出なかった。

まさか、厨二爆発させたネタ技でそんな高等技をかました自分に呆れる。

「…………ま、まあ、偶然ですよ偶然。 ただ、何とかしようと必死だっただけで………」

「そう…………」

楯無先輩は頷くと、突然頬を赤くして俺を見た。

「そ、それで…………い、何時にするの…………?」

「はい? 何をですか?」

楯無先輩の言葉の意味がわからなかった俺は聞き返す。

「だ、だからその……………デ、デートよ………!」

「へぁっ!?」

楯無先輩の言葉に驚き、俺は間抜けな声を出してしまう。

「いやいやいや! ちょっと待ってください! なんでそんな話になってるんですか!?」

俺は思わずそう言う。

「………もしかして、気づいてないの?」

「はい?」

そう言うと、楯無先輩はくるりと後ろを向く。

「君、私に一撃入れたんだよ」

そう言った楯無先輩の背中の装甲には、大きなヒビが入っていた。

「私の水のヴェールの上から………しかも、峰打ちでこの威力。 もし刃の方を向けてたら、確実に絶対防御は発動してたよ」

そう言う楯無先輩。

「い、いや、それは偶然ですよ! 偶々反撃できたのだって、楯無先輩のいつものパターンを読んだだけですし!」

「偶然でもなんでも、私に一撃入れた事は事実なのよ。 もっと自信を持ちなさい」

「は、はあ………」

「そういうわけで………や、約束だからね。 その……デートの予定を決めないと………」

顔を真っ赤にしながらそう言いつつ、語尾が小さくなっていく楯無先輩。

「あの………嫌ならそんなに無理することも無いですよ。 あの約束を持ちかけたのだって冗談半分みたいなものですし………前も同じようなこといったと思いますが、しょうがなくデートされても、こっちも嬉しくありませんから」

俺はそう言って遠慮しようとする。

まあ、確かに楯無先輩のような美人とデートできれば嬉しいが、楯無先輩自身が乗り気じゃなければその嬉しさも半減だ。

「べ、別に絶対に嫌って訳じゃ…………それとも、盾君は私とデートするのは嫌?」

上目遣いでそう言ってくる楯無先輩。

可愛いです。

「…………そりゃ楯無先輩のような美人とデートはしてみたいですが………」

思わず本音を漏らす俺。

「じゃあ決まり。 日にちは次の日曜日……って言っても明後日だね。 待ち合わせは、朝の10時に駅前で」

どんどん決めていく楯無先輩。

「いや、2人とも同じ部屋なんですし、一緒に行けばいいのでは?」

俺がそう聞くと、

「いいの! デートは待ち合わせから大事なんだから!」

そう力強く言う楯無先輩。

そういうもんなのか?

俺は前世も含め、今までデートしたことないから分からん。

「じゃあ、今日の訓練はここまで。 ああ、明日の訓練は休みだから、しっかり休んでおいてね」

そう言って立ち去る楯無先輩。

恥ずかしがってはいるけど、そこまで動揺してる風には見えなかったからな。

大方頑張ってる後輩の為のサービスって所か。

俺もISを収納し、部屋へと向かった。







そして、デート当日。

楯無先輩からは先に待ち合わせ場所に行くように言われており、駅前で待っている。

俺の服装は、いつもなら動きやすさ重視のセンスの無い服装なのだが、今日は多少カッコつけてみた。

流石に人生45年で初めての…………そして恐らく最後になるであろうデートで恥を晒すわけにはいかない。

そう思って、頑張ってみた。

ま、そうは言っても元々センスの無い俺が頑張ってみたところで、タカが知れてると思うが。

そんな事を思っていると、

「お待たせ~」

楯無先輩の声がした。

俺がそちらに振り向くと、

「ッ!?」

思わず息を呑んだ。

いつもの見慣れてる制服姿とは違い、綺麗に着飾った楯無先輩の姿。

「待った?」

俺に駆け寄ってきてそう言う楯無先輩。

「いえ、それほど………」

一応そう返しておく。

何というか、楯無先輩が綺麗すぎて直視できない。

すると、そんな俺の反応に気付いたのか、

「うふふ、似合う?」

笑みを浮かべてそう聞いてきた。

「え、ええ………よく似合ってて、綺麗です」

俺は本音で答える。

「うふっ、ありがと」

もう一度笑う楯無先輩。

その頬が少し赤いと感じるのは俺の気のせいだろうか?

「じゃあ、行こっか」

「分かりました。 楯無先輩」

俺がそう言うと、

「むぅ~。 盾君!」

何故かむくれる楯無先輩。

「はい?」

「折角のデートなんだから敬語禁止!」

「え?」

「それと先輩もダメ!」

「ええっ?」

「敬語は禁止。 先輩も禁止」

そう言ってくる楯無先輩。

ま、精神年齢45歳の俺にとって、16歳の楯無先輩に対して敬語をやめるのも呼び捨てで呼ぶのも特に問題はないが。

「………分かった、楯無。 これでいいか?」

俺は敬語をやめてそう聞くが、

「むー…………」

何やらまだ不満顔。

すると、

「ね、ねえ………」

何かを決心したのか、口を開く。

「何だ?」

「その……前も話したと思うけど、私の家は対暗部用暗部なの。 それで、私の“楯無”っていう名前は、代々当主が受け継ぐ名前で、本当の私の名前じゃないの」

まあ、知ってるが。

「ふーん。 折角のデートに楯無の名は無粋だから、違う名前で呼んで欲しいとか?」

「う………そうよ」

言葉に詰まったがそう言う楯無。

「まあ、流石に本名を教えるのは拙いんじゃないのか? そういう類の名前って、軽々しく教えちゃダメなんだろ?」

「………よくわかったね?」

「テンプレだからな」

「ウチの仕来りをテンプレの一言で済まさないで欲しいなぁ」

苦笑する楯無。

「………で? 結局何て呼べばいいんだ?」

できれば“刀奈”と呼んでみたい気もするが、

「……………君の好きに呼んで」

「えっ?」

「今日一日は、私は君の彼女だから、君の好きな名前で呼べばいいよ」

そう言ってくる楯無。

『彼女』と言う言葉でドキリとした。

そう言われて俺は考える。

流石に“刀奈”は拙いだろうな……っと、そうだ。

「じゃあ“カタナ”で………」

「えっ!?」

俺がそう言った瞬間、明らかに楯無が動揺するのがわかった。

まあ、教えてもいない本名を言い当てられたらそりゃ動揺もするわな

「そ、その名前にした理由を聞いてもいいかな?」

そう言われるのが分かっていたので、予め考えておいた言い訳を口にする。

「単純な話だ。 俺の名はじゅん、つまりたて。 盾と対になる物は剣。 だけどケンやツルギじゃ女の子っぽくないだろ? けどかたななら女の子の名前でもおかしくないからな。 まあ、正確には刀は盾と対になるわけじゃないかもしれないけど、そこは気にしないでくれ」

「そ、そうなんだ」

楯無は、動揺を何とか抑えつつそう返事をする。

「まあ、嫌なら他の名前を考えるけど?」

「あ、ううん。 それでいいよ!」

俺の言葉に楯無は首を横に振った。

どうやらこれでいいらしい。

「じゃあ改めて。 今日はよろしくな、カタナ」

「うん! よろしくね盾!」

楯無改めカタナは笑みを浮かべながら俺を呼び捨てにした。

何か良いな、こういうの。

「じゃあ、早速映画館へレッツゴー!」

そう言ってカタナは俺の手を取って歩き出す。

滅多に他人に………ましてや女の子に手を触れるということをしてこなかった俺にとって、それだけでもドキリとする。

ふと、俺が緊張していることに気付いたのか、

「ふふっ………えいっ!」

笑顔で俺の腕に抱きついてきた。

「おわっ!? カ、カタナ!?」

思わず動揺する俺。

腕に感じる2つの柔らかい膨らみが、俺の顔を更に熱くさせる。

「いいでしょ? 今は君の彼女なんだし。 それともこういうのは嫌?」

腕に抱きついたままそう聞いてくるカタナ。

「…………嫌じゃないです」

思わず敬語になる俺。

「じゃあいいわよね」

そのまま腕を組んで歩き出した。

まさか、一生経験する事が無いと思っていた女性と腕を組んでデートを実現することになるとは………

俺は、顔が赤くなっているだろう事を自覚しつつ、今この時を堪能した。





映画館に着くと、

「盾は、どんな映画が好き?」

カタナがそう聞いてきた。

「俺か? 俺はSFとかファンタジーとか………アクション映画も結構好きだな」

俺がそう答えると、

「うん。 じゃあ、私も好きなアクション映画にしよう!」

「了解。 チケット代は俺が払うよ」

俺は受付の人に、2人分の代金を払う。

「ふふ、ありがと」

俺の行動に好感を受けたのか、カタナは笑顔でお礼を言った。




映画を見終わったが、ぶっちゃけ映画の内容は頭に入っていない。

何故なら、カタナがずっと俺の手を握っていたため、ドキドキしっぱなしだった。

そっちの方ばかりに意識が向いていたため、スクリーンを見てはいたが、何も頭には入らなかった。

その後はレストランで昼食を摂り、アクセサリーショップへと向かう。

俺にはアクセサリーの良さはイマイチ分からんので、カタナの好きな様にさせている。

ふと、カタナは一つのペンダントを手に取った。

それは、銀の片翼がついたペンダントであり、見ればもう一つの対になる物も売られており、ペアで買ってもらうことを前提にした物のようだ。

まあ、単品でも変えるようだが。

それをじーっと見つめていたが、やがて諦めたようにそのペンダントを元の場所へ戻した。

俺はちょっと気になってそのペンダントの値段を見てみる。

結構高い。

仕事を持っている社会人やバイトをしている者なら簡単に手が出るだろうが、バイトをする暇がない学生にとっては手を出しにくい値段だった。

そういえばカタナは更識家の当主だけど、金は持ってないのか?

そう思ったが、『楯無』としてのカタナなら、金はあるんだろうが、『カタナ』個人としては大して持っていないんだろうと予想した。

俺はもう一度値段を確認し、自分の財布の中身と相談する。

とりあえず払える金はある。

何故俺が金を持っているのかといえば、IS学園に入ってからの約3ヶ月、殆ど金を使っていないのだ。

というか、訓練がキツすぎて使う暇が無かった。

おまけに家の親はやや甘めなので、学生の小遣いにしては多めの金額を送ってくる。

そのため自分の財布には諭吉さんが3枚ほど入っていた。

ともかく、払える金はある。

が、今日一日の為にそこまでする必要があるのかと一瞬思った。

しかし、

「………………はぁ」

小さく、残念そうにため息をついたカタナを見て、そんな考えは地平の彼方へ吹き飛んだ。

「それが欲しいのか?」

俺はカタナに確認する。

「えっ? ち、違うよ……!」

カタナは慌てて否定するが、その反応で肯定しているようなものだ。

俺はそのペンダントを持ち、レジへと向かった。

ちゃっちゃと精算を済ませ、カタナの元へと戻る。

「ほら、これが欲しかったんだろ?」

俺はペンダントをカタナに差し出す。

「そ、そんな! 悪いよ!」

カタナはそう言って遠慮しようとするが、

「いいからいいから。 いつもコーチをしてもらってるんだ。 このぐらいのお礼はさせてくれ」

俺はやや強引にペンダントを渡す。

「あ………うん………ありがとう」

カタナは遠慮気味にそのペンダントを受け取った。

すると、カタナはその場でペンダントを身に付ける。

「えへっ、どうかな?」

カタナは恥ずかしいのか、少し頬を赤くしてそう聞いてきた。

「ああ。 似合ってると思うぞ」

俺は思ったことをそのまま口にする。

気の利いた言葉なんて俺には分からん。

「ふふっ、ありがと」

それでもカタナは笑顔で礼を言った。




残りの時間は遊園地へ行き、色々なアトラクションを回った。

そんな時間はあっという間に過ぎ去り、日が沈みかけた頃、俺達は夕日の光に照らされながら帰路に付いていた。

「う~~~ん……! 今日は楽しかったぁ!」

カタナが伸びをしながらそう言う。

「俺も楽しかったよ。 今日はありがとうな、カタナ」

俺はそういった時、ふと思った。

カタナを『カタナ』と呼べるのももう終わる。

それに気付いたとき、何故か無性に寂しくなった。

そもそも、カタナとのデートを楽しく感じたことですら、今思えば不思議なことだ。

カタナが俺とデートしてくれた理由は、頑張っている後輩に対してのサービスといった所だろう。

そんな事は初めから承知していたことだし、そんな理由でデートされても俺は楽しくないだろうと思っていた。

しかし、実際は違った。

実際はとても楽しいと感じた。

カタナと一緒にいるのが。

カタナと話をするのが。

そして、カタナの笑顔を見るのが。

全てにおいて楽しく、嬉しいと感じていた。

俺は、ふと横目で隣を歩くカタナを見る。

夕日に照らされ、口元に笑みを浮かべたカタナの横顔。

――ドクン

それを見た瞬間、唐突に心臓が高鳴った。

そしてその瞬間、俺は全てを理解した。

俺は、“彼女が好き”なのだと。

前世も含めて、俺の初めての恋だった。

だが、それと同時に、叶わぬ恋だということも理解してしまった。

彼女は、いずれ一夏に想いを寄せるようになる。

気付いた時から………いや、初めから終わっていた初恋。

今ほど前世の記憶があることを恨めしく思ったことは無かった。

「……………………」

俺は少し考え、あることを決心した。

既に終わっている恋なら、自分の想いをズルズル引きずっているのは女々しいことだ。

そして、恐らく最初で最後の恋。

このまま彼女が一夏を好きになって、その想いを打ち明けぬまま彼女と一夏が一緒にいるところを見るのはきっと辛いことだろう。

それならば、ここでキッチリとケジメをつけてしまったほうが後腐れなくていいかもしれない。

そう思った俺は、一度立ち止まった。

幸運にも、周りに俺たち以外の人影はない。

立ち止まった俺を不思議に思ったのか、彼女が振り返る。

「どうしたの?」

彼女が不思議そうに聞いてくる。

そんな彼女に対し、俺は一度深呼吸する。

「…………今から言う言葉は、俺の本当の気持ちです」

「えっ?」

唐突に切り出した俺の言葉に、彼女は怪訝な声を漏らす。

俺は、彼女を真っ直ぐに見つめ、俺の恋の始まりであり、

「“刀奈”、あなたが好きです」

終わりを告げる言葉を口にした。




「え…………?」

俺の言葉を一瞬理解できなかったのか、彼女は呆けた声を漏らす。

しかし、

「………答えはいいです。 分かりきってることですから」

俺は強引に笑みを浮かべてそう言った。

だが、そうは言っても目が熱くなってくるのを感じる。

我慢できそうになかった俺は、

「すみません! 先戻ります!!」

一方的にそう言って駆け出した。

「あっ…………」

彼女は何か言おうとしていたようだが、今は何も聞きたくなかった。

俺は全力で道を走る。

俺の目からは、熱いものが溢れていた。









一直線にIS学園に戻ってきた俺は、自分の部屋へと駆け込んだ。

部屋のドアを閉めてひと呼吸置いたあと、俺はドアを背にしてその場で座り込んだ。

「はあ~~~~~………言っちまった」

思わずそう漏らす。

だが、不思議と後悔は無い。

「これで良かったんだよな?」

それは誰に言うでもなくそう問う。

俺は少し間じっとしており、ふといずれこの部屋に彼女が戻ってくることに気付く。

「顔洗わなきゃな………」

先ほどまで泣いていた俺は、多分ひどい顔をしているだろう。

俺は洗面所で顔を洗う。

明日………いや、たった今から、あの人とは何時も通りの関係に戻る。

ただそれだけの話。

俺はそう自分に言い聞かせる。

俺は顔を拭き、洗面所から出る。

その時、ほぼ同時にドアが開き、彼女の姿が見えた。

もうこれからはいつも通り。

もう一度自分に言い聞かせ、俺は彼女の方を向いた。

「お帰りなさい、“楯無先輩”」

何時も通りの言葉で。






あとがき

はい、ごめんなさい。

またもやインフィニット・テイマーズをほったらかしてこっちを更新してしまいました。

いや、テイマーズの方も書こうとはしてるんですが、何故か筆が進まないんですよね。

さて、今回は2人のデートと盾君の玉砕告白(?)をお送りしました。

おまけにネタ技入ってますが気にしないように。

あと、瞬時回転は自分が勝手に作った技です。

加速ができるなら回転ぐらいできるだろうということで作りました。

楯無のデート時の服装は、皆様がそれぞれ想像してください。

自分にはセンスがないので思いつきませんでした。

さて、次回は楯無視点になると思います。

内容は、まあ、秘密です。

では、今回はこの辺で失礼。


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