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No.37503の一覧
[0] インフィニット・ストラトス ~弱きものの足掻き~【転生オリ主】[友](2013/05/05 20:35)
[1] 第一話 IS学園入学初日[友](2013/05/05 20:36)
[2] 第二話 IS特訓[友](2013/05/05 20:39)
[3] 第三話 クラス代表決定戦[友](2013/05/05 20:40)
[4] 第四話 まさかの共同生活の始まり[友](2013/05/05 20:42)
[5] 第五話 天才なんて嫌いだぁぁぁ![友](2013/06/23 22:14)
[6] 第六話 首突っ込むつもりは無かったのに………[友](2013/08/13 00:29)
[7] 第七話 2人の転校生…………ま、俺には関係ないが[友](2013/08/15 11:34)
[8] 第八話 俺が活躍すると? ブーイングの嵐です。[友](2013/08/15 11:35)
[9] 第九話  海の楽しみは海水浴だけではない![友](2013/08/25 11:52)
[10] 第十話  名は体を表すを地で行ってます。[友](2013/08/25 11:54)
[11] 第十一話 まさかのデート!?  そして…………[友](2013/09/15 22:47)
[12] 第十二話 楯無の心[友](2013/11/09 23:38)
[13] 第十三話 楯無の答え[友](2013/11/10 06:36)
[14] 第十四話 信頼の二次移行[友](2013/11/30 21:02)
[15] 第十五話 今日は自宅でゆっくり…………のはずが![友](2013/12/23 01:47)
[16] 第十六話 プールでデート。 あれ? プールで原作イベントってあったっけ?[友](2014/02/20 22:15)
[17] 第十七話 夏祭り………相変わらず一夏は唐変木だ[友](2014/03/30 18:01)
[18] 第十八話 彼女の家に行くのは初めてだ………不安です[友](2014/04/13 20:07)
[19] 第十九話 沖縄旅行 1~2日目[友](2014/05/26 00:03)
[20] 第二十話 沖縄旅行4日目~6日目[友](2014/07/26 22:24)
[21] 第二十一話 努力の成果[友](2014/08/16 17:32)
[22] 第二十二話 特訓風景と一夏ラヴァーズ急襲………まあ、予想通りだが[友](2014/11/02 13:22)
[23] 第二十三話 一夏の特訓風景と学園祭[友](2014/12/09 01:06)
[24] 第二十四話 妹達の邂逅とシンデレラ[友](2015/02/22 18:04)
[25] 第二十五話 白式を寄越せ? 人違いです![友](2015/03/29 19:26)
[26] 第二十六話 偶には自分から原作ブレイクしてみよう[友](2015/05/17 11:13)
[27] 第二十七話 男には やらねばならぬ 時がある    今がその時だ!![友](2015/08/12 07:36)
[28] 第二十八話 ワールド・パージ。 俺は別任務だけど[友](2015/12/06 21:11)
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[37503] 第一話 IS学園入学初日
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/05 20:36
第一話




「はぁ~~~~~…………」

俺は思いっきりため息を吐く。

なぜ俺はこんな所にいるのかと、自分に問いかける。

俺の周りには、女女女。

前の方に1人だけ男子が見えるが、それ以外は全員女子だった。

なんでこうなった?

俺は、現実逃避のために、今までの人生を振り返った。






俺の名前は無剣(むつるぎ) 盾(じゅん)。

言っておくが俺は転生者だ。

とは言っても、創作小説でよくある神様転生でチート持ちというわけではない。

死んだと思った次の瞬間に気づいたら、この世界で赤子として生まれていた。

まあ、純粋(?)な転生だ。

因みに生前で覚えていることは、一般教養と趣味以外では29歳まで生きたことと、年齢=彼女いない暦であること。

若干の厨二病や色々と悪いところを自覚しつつ、それを直す努力をしようともしなかった正真正銘のダメ人間で、ついでに童貞ちゃんであったことだ。

因みに、そのダメ人間である性格は、今世の性格に、まんま受け継がれている。

故に、やる気の無い小中学校生活を送りつつも、前世の記憶により平均以上の成績を挙げている。

まあ、その気になれば、体育や音楽といった才能や、努力が必要な科目以外はトップを取れる自信はあった。

それをやれば、『天才』や『神童』などと持て囃されていただろう。

しかし、俺はそんなものではなく、ただ単に前世の記憶のお陰で予め知っていただけだ。

中学を超えれば、必ずボロが出てくるため、俺はそれをしなかった。

まあ、ただ単に期待されるのが嫌だった事も理由の一つなのだが。

俺の今回の人生設計は、前世と同じく普通に学校行って、普通レベルの高校に入学して、そこらにある中小企業に入社して、定年まで平社員として働いて、高確率で前世と同じく彼女無しの童貞を貫くことになって、そんで親より少しでも長生きして、ひとり寂しく孤独死する。

この辺りが妥当な所だろう。

そんな人生設計を赤子の頃に決めた俺は、普通より手のかからない子供として、親の元で育った。

俺の両親も、創作小説でよくある人外で無茶な修行を子供に課す、といった無茶苦茶な親ではなく、どこにでもいるフツーの優しい両親だ。

故に、俺の身体能力も並である。

俺は当初、この世界は前世よりも多少科学技術が発展していたため、ただの近未来の世界かと思っていた。

しかし、それが違うとわかったのが5歳の時。

インフィニット・ストラトスの登場である。

その時の俺は、「ここってISの世界かよ!」って思わず口に出してしまったが、よくよく考えれば、別にこの世界がISの世界でもあんまり関係ないことに気付いた。

俺の周りには織斑や篠ノ之と言った苗字は聞かないし、俺の記憶にある主要な原作キャラの苗字も聞かない。

これからISの影響で女尊男卑の世界になって行くのだろうが、前世と同じような生活を送っていれば、女と関わる事など殆ど無いため、男である俺がIS学園に関わる可能性は皆無なのだ。

そんなわけで、赤子の頃に決めた人生設計通りに俺は生活していて、特に可もなく不可もなく手のかからない生徒という普通を貫く評価を受けていた。

で、時が経つのは早く、15歳となり受験シーズンを迎えていた俺。

進学する高校は既に決めている。

それは「藍越学園」。

原作で一夏が入ろうとしていた高校だ。

ほんの僅かに原作と関わってしまうことに若干の不安を覚えたが、それを差し引いても藍越学園の位置、学費、卒業後の進路等、前世で不景気の中、安い給料で必死に働いていた俺にはとても魅力的だった。

まあ、原作キャラに会っても、特に問題は無いだろうが。

俺は、そんな楽観的な考えで受験日を迎えた。



俺は、原作の一夏と同じように迷わないために、早めに家を出て受験会場に向かう。

着いたところは多目的ホール。

入ってみて一夏が迷った理由が分かった。

道が途轍もなく解りづらい。

こりゃ迷うのも頷ける。

とはいえ、時間にもだいぶ余裕があるので特に慌てることなく受験会場を探し当て、席に荷物を置く。

流石に早く着すぎたようで、会場内には他の受験者は見当たらない。

時間を持て余した俺は、暇潰しにこの建物の中を散策することにした。

今思えば、これが運命の分岐点だったに違いない。

ここで大人しく時間まで待っていれば、こんなことには成らなかっただろう。



建物の中を散策する俺は、ブラブラと歩いていた。

時間が迫ってきているせいか、会場内に受験生の姿が増えてくる。

その時、廊下のとある所に、この世界の代名詞とも言える物が鎮座していた。

「IS…………」

俺は呟いて、そのISに近づいていく。

俺は、ロボット系とかも好きなので、多少の興味が沸く。

興味深くそのIS『打鉄』を眺めていると、

「ええい、次に見つけたドアを開けるぞ、俺は。それでだいたい正解なんだ!」

あー、確かあったな、こんなセリフ。

聞き覚え……といか、読み覚えのあるセリフを耳にして、俺は後ろを振り返る。

その時、イケメンと言える人種の男子受験生がISの横にあった扉を開けて部屋の中へ入っていった。

「もしかして、今のが織斑 一夏か?」

俺は呟いて扉の横に書かれていた表札を確認する。

『IS学園受験会場』

…………思いっきりIS学園の受験会場って書いてあるじゃねーか。

なるほど、だからこんなところにISが置かれていたわけね。

まあ、IS学園の受験会場の目印に、これ以上わかるものはないよなぁ。

って、一夏よ。

いくら慌ててたからって、こんなデカイもんを見逃すなよ。

しかし、俺はふと時計を見る。

藍越学園の試験開始までは、まだ余裕がある。

「……あいつ、時間間違えてんじゃねえの?」

俺はため息を吐き、再び会場横のISの前に立つ。

そこで、俺はそのISに何気なく触れた。

すると、突然ISが光りだし俺に装着された―――なんてことが起こる訳もなく、沈黙を保ったISが鎮座し続けている。

「…………よく考えれば、お前らも難儀な奴らだよな。 本当なら宇宙進出が目的で作られたのに、そのための必要な装備や副産物が軍事利用され、本来の目的も果たされることなく『兵器』としてのISばかりが発展して……そんなんじゃ、お前らに与えられた名が泣くよな…………『インフィニット・ストラトス』」

『インフィニット・ストラトス』―――無限の成層圏。

おそらくこの名も、この宇宙(そら)に飛び立つ願いを込めて付けられた名だろう。

ただ、どいつもこいつもISの『力』にしか目を向けていない。

まあ、それも人間の性なんだろうけど。

ISにも意思のようなものがあると知っているので、少しかわいそうに思う。

まあ、俺にはISを動かすことは出来ないし、こう思ってるのも今だけだろうからな。

と、その時、ISの受験会場内が騒がしくなってきた。

おっと、原作通り一夏がISを動かしたみたいだな。

それじゃあ、厄介事になる前に離れるとしますか。

そう思ったとき、何気なくもう一度ISを見る。

「ま、こういうのも変だけど、お前も頑張れよ。 って、俺は何を言ってるんだろうか?」

俺は、友人の肩を叩くようにISの表面を軽く叩いた。

いかん、厨二病が再発してきたか。

俺はそう思って手を離そうとして、

――キィィィィィィィィィ

共鳴するような音を立てて、ISが俺に装着された。

「………………なんでさ?」

思わず某運命の夜の主人公の口癖が、口から漏れた。





そうした経緯を経て、俺はこのIS学園一年一組の教室にいる。

周りから集中するのは視線の嵐。

俺は思わず項垂れる。

その時、

「全員そろってますねー? それじゃあSHRはじめますよー」

黒板の前でそう言うのは、このクラスの副担任である山田 真耶先生。

いつの間にか教壇に立っていた。

「それでは皆さん、一年間よろしくおねがいしますね」

そう挨拶する山田先生。

しかし、

「「「「「「「「「……………………………」」」」」」」」」

原作通り教室の誰一人として、反応を示さない。

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。 えっと、出席番号順で」

その事にうろたえながらも、話を進める山田先生。

ちょっと可愛そうだ。

俺は、ボケーっとしながら自己紹介を聞いていると、一夏の番になった。

「織斑君。 織斑 一夏君!」

「は、はい!」

遅れて返事をする一夏。

思わず周りから笑い声が漏れる。

「あっ、あの、お、大声出しちゃってゴメンなさい。 でも、『あ』から始まって、今『お』なんだよね。 自己紹介してくれるかな? ダメかな?」

先生なのに謝りながら一夏の様子を伺う山田先生。

「え、あ。 そ、そんなに謝らなくても………」

思わずそう漏らす一夏。

一夏は立ち上がると、くるりと後ろを向く。

その瞬間、若干引いたのが分かった。

「えー………えっと、織斑 一夏です。 よろしくお願いします」

一夏は、視線のプレッシャーに耐えつつそう挨拶する。

ぶっちゃけ、それだけ言えるだけでも大したものだと思うけど。

周りの視線はそれだけで許してあげることはできないらしい。

更なる期待を込めて一夏に視線が集中する。

そこで一夏は、

「……以上です!」

話を終わらせた。

うん、当然だな。

すると、俺と一夏以外の生徒が皆ずっこけている。

その瞬間、

――スパァァァァンッ

けたたましい音が鳴り響く。

一夏は頭を抑えて蹲る。

そして、恐る恐る後ろを振り向き、

「げえっ! 関羽!?」

――パァァァァァァン

2度目の打撃音。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

織斑 千冬先生の登場だ。

それにしても一夏よ、なぜ織斑先生を関羽に例えるんだ?

関羽って、確か美髯公とか呼ばれるヒゲの立派なオッサンじゃなかったっけ?

それとも何か?

一夏が言ってるのは武将が全員TSしたエロゲの方の関羽の事を言っているのか?

「あ、織斑先生。 もう会議は終わられたんですか?」

山田先生が織斑先生にそう聞いた。

「ああ、山田君。 クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

「い、いえっ。 副担任ですから、これぐらいはしないと……」

そうやり取りをする先生達。

すると、織斑先生が生徒たちの方へ向き直り、

「諸君、私が織斑 千冬だ。 君達新人を、一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。 私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。 出来ない者には出来るまで指導してやる。 私の仕事は、弱冠15歳を16歳までに鍛え抜くことだ。 逆らってもいいが、私の言うことは聞け。 いいな?」

なんつーか、生で聴くと凄まじく理不尽な言葉だよな。

って、やべ。

このセリフが出たってことは……

俺は慌てて耳を塞ぐ。

その瞬間、

「キャーーーーーーッ! 千冬様! 本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

女子の多くから、黄色い歓声が沸く。

その様子を織斑先生はうっとうしそうな顔で見ると、

「………毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。 感心させられる。 それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

これまた教師とは思えない発言が飛び出す。

にも拘らず、

「きゃあああああ! お姉様! もっと叱って! 罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして!」

色々とヤバイ思考をした女子が多いな。

生で聞いてその異常さがよくわかる。

「で? 挨拶も満足に出来んのか、お前は」

実の弟にも容赦ないですね先生。

いや、弟だからこそかな?

「いや、千冬姉。俺は……」

――パァン!

二度あることは三度ある。

三度叩かれる一夏。

「織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

そして、そんなやり取りをすれば、

「え………? 織斑君って、あの千冬様の弟?」

「それじゃあ、世界で2人だけしかいないIS操縦者っていうのも、それが関係して………」

「ああっ、いいなぁ。 代わってほしいなぁ」

2人が姉弟であることは、すぐに分かるわけである。

それにしても、あのやりとりを見て、代わってほしいと思えるその思考に脱帽です。

「HRを中断させてしまったな。 自己紹介を続けろ!」

織斑先生の言葉で自己紹介が続いていく。

そして、俺の番になった。

俺が立ち上がると、一夏の時と同じように視線が集中する。

俺は一度ため息を吐くと、

「俺の名前は無剣 盾。 特技は特になし。 趣味はゲーム。 それと言っておきますが、俺は最底辺の男なので、俺に期待するぐらいならもう一人に期待したほうがいいですよ。 以上」

俺はそれだけ一方的に言って席に着く。

周りからは、唖然とした視線が向けられている。

これでいい。

身に余る期待は堅苦しくてたまらん。

俺は馬鹿にされるぐらいが丁度いい。

教室が何とも言えない雰囲気になりながらも、自己紹介が続いていき、SHRが終わる。

俺は机に突っ伏しつつ、時間が過ぎるのを待っていると、一夏が俺の方に近づいてきているのに気付いた。

まあ、同じ男子が俺しか居ないから、仲良くしときたい気持ちもわかるが、俺はあんまり関わりたくないな。

ぶっちゃけ俺は一夏関係のイベントに巻き込まれて生き残る自信が無い。

なので、俺はどうやって一夏と距離を取るかを考えていた時、

「ちょっといいか?」

一夏が別方向から声を掛けられた。

メインヒロインの箒さんだ。

一夏はちょっとビックリしている様子だったが、大人しく箒について行った。

GJ箒。

俺は心の中で箒に向かって親指を立てた。

そのまま一時間目の授業に入る。

早速ISに関する授業なのだが……

うん、サッパリわからん。

一応、入学前の参考書は読んだのだが、1割も理解できなかった。

ついでに、俺はあまり記憶力も良くない方なので、1回読んだだけでは何も頭に入っていない。

さらに言えば、IS学園はエリートが通う学校だ。

凡人以下一直線の俺が通うような高校ではない。

当然ながら、勉強のレベルも平均以上だ。

簡単に言えば、俺の頭ではついていけない。

そう思っていたとき、

「織斑君、何か分からないところがありますか?」

山田先生が一夏にそう尋ねる。

「分からないところがあったら効いてくださいね。 何せ私は先生ですから」

これは確か原作でもあったやり取りで、この後は確か……

「先生!」

一夏が覚悟を決めたのか声を上げる。

「はい! 織斑君!」

山田先生が、どんと来いといった雰囲気で応える。

しかし、

「ほとんど全部わかりません!」

この一言で、先生の顔が引きつった。

「え………ぜ、全部ですか…………?」

先生は唖然としている。

「え、えっと………織斑君以外で、今の段階で分からないっていう人はどれぐらいいますか?」

山田先生がそう聞いてきたので、俺は渡りに船と思い、即座に手を挙げた。

「俺も全くわかりません」

「ええっ!?」

山田先生は、再び顔を引きつらせる。

「……織斑、剣無。 入学前の参考書は読んだか?」

織斑先生がそう聞いていたので、

「一応読んだんですけど、俺の頭では1割も理解できませんでした」

俺は正直に答える。

ここで見栄張っても仕方ないし。

「……織斑はどうした?」

織斑先生は、顔を一瞬しかめるが、気を取り直して一夏に問いかける。

「古い電話帳と間違えて捨てました」

でた、迷言。

しかし、どうやったらアレを電話帳と間違えられるのだろうか?

厚み以外に共通点は見つからなかったぞ。

――スパァァァァァァン

再び打撃音が鳴り響く。

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。 後で再発行してやるから一週間以内におぼえろ。 いいな」

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと………」

織斑先生の無理難題に一夏が抗議するが、

「やれと言っている」

「………はい。 やります」

織斑先生の一睨みであえなく撃沈。

一夏は参考書を一週間で覚えることとなった。

「剣無、お前もだ」

うへぇ、とばっちりが俺の方にも来たよ。

「自信ないです」

とりあえず正直に答えると、

――パァァァァァァァン

出席簿で叩かれた。

痛い…………

「やれと言った」

織斑先生はそう言うが、そう言われても、

「先程も言いましたが、俺の頭ではアレを1週間で覚えるのは不可能です。 1週間どころか、1ヶ月でも無理ですが…………」

――スパァァァァァァァン

先ほどよりも強く叩かれる。

かなり痛い。

「口答えするな。 無理でもなんでも叩き込め」

「善処はします」

何度も叩かれたくはないので、こう答えておく。

因みに俺の善処は、殆どやらないに等しい。

とりあえず、この場はこれで収まった。




2時間目が終わり、休憩時間に入ると、再び一夏が俺に話しかけようと席を立ち、こちらに歩いてくる。

どうしたもんか、と思っていると、

「ちょっと宜しくて?」

一夏が再び横から話しかけられた。

一夏ヒロインズの一人、セシリア・オルコットだ。

そのまま原作の流れに入り、俺の所までたどり着けない一夏。

GJセシリア。

俺は再び心の中でサムズアップをした。





次の時間。

今度は、織斑先生が教壇に立つ。

「それではこの時間は、実践で使用する各種装備の特性について説明する」

織斑先生はそう言ったが、ふと何かを思い出したように、

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

そう言った。

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席………まあ、クラス長だな。 因みにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。 今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。 一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

最後に自薦他薦は問わないと付け加えつつ、候補者を募る。

すると、

「はいっ。 織斑君を推薦します!」

「私もそれが良いと思います」

原作通り一夏が推薦される。

「お、俺っ!?」

思わず一夏が叫ぶ。

「では、候補者は織斑 一夏………他にいないか?」

「ちょ、ちょっと、待った! 俺そんなのやらな………」

「自薦他薦は問わないと言った。 他薦されたものに拒否権など無い。 選ばれた以上は覚悟を決めろ」

「い、いやでも……」

一夏が抗議を続けようとしたところで、

「はい私は無つ「はーい! 俺は、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんがいいと思います!」」

誰かが俺の事を推薦しようとしていたので、俺はその言葉をかき消すように大きめの声でセシリアを推薦した。

誰だ!?

俺なんかを推薦しようとした奴は!?

「ふむ、追加でセシリア・オルコットと無剣 盾か……他には?」

織斑先生の言葉に俺は思わず声を上げた。

「織斑先生! なんで俺が入っているのでしょうか!?」

「お前も推薦されたからだ馬鹿者。 やりたくないからといってごまかそうとするな」

くっ、聞こえてたか。

それでも俺は諦めずに、

「先生! 辞退します!」

俺はそう言った。

「ダメだ。 先程も言ったが他薦されたものに拒否権など無い。 選ばれた以上は覚悟を決めろ」

「いや、でもですね、俺は入学試験で前に進むどころか、操縦ミスって真後ろの壁に激突して自爆したようなド素人以上のアホですよ!? クラスの恥さらしにしかなりませんって!」

そうなのだ。

俺は入学試験で、一夏の相手だった山田先生を超える醜態を晒した。

俺は前に進もうと前傾姿勢でPICを起動させたのだが、何故か足だけが浮き上がりその場で前方宙返り。

慌ててバランスを取ろうとしたら、ちょうど足が相手を向いていた時に急上昇がかかったらしく、後方の壁に一直線。

そのまま壁に激突して気絶した。

という、前代未聞の醜態を晒した。

その事を知らなかったのか、クラスの殆ど……っていうか、全員が唖然としている。

「それでも、貴様は推薦されたのだ。 ならば、覚悟を決めろ」

まあ、織斑先生ならそう言うと思ったけどさ。

俺は大きくため息を吐いた。

「ふん、もう一人の男性操縦者もどんなものかと思いましたが、やはり大したことはなさそうですわね」

そう言って立ち上がったのは、セシリアだった。

「しかし、このセシリア・オルコットを代表に推薦したことだけは褒めてあげてもよろしくてよ」

高飛車な態度で言ってくるセシリア。

「あなたも言ったように男がクラス代表だなんていい恥さらしですもの。 わたくしにはそのような屈辱、一年間も味わえませんもの」

おいおい、俺は自分を恥さらしとは言ったが、男が恥さらしとは一言も言ってないぞ。

「実力から行けば、わたくしがクラス代表になるのは必然。 それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります。 わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスする気は毛頭ございませんわ」

生で聞くと結構精神を逆撫でするな。

まあ、この程度で切れる程、俺は気が短くない。

っていうか、俺から見たら、殆どは短気に見えるんだがな。

「いいですか!? クラス代表は実力のトップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

すげー自信。

まあ、それだけの努力をしてきているんだろうけど。

努力をしない俺には、彼女に言い返す資格はない。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」なっ!?」

あ~あ、やっぱりこうなるのね、

その言葉に、セシリアは顔を真っ赤にして怒りを示す。

「あっ、あっ、あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

最初に日本を侮辱したのはお前だろうに。

そう思うが口には出さない。

そして、次にセシリアが言い出した言葉は、

「決闘ですわ!」

決闘であった。

「おう。 良いぜ。 四の五の言うより分かりやすい」

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわよ」

「侮るなよ。 真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

「そう? 何にせよ丁度良いですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

互いににらみ合う一夏とセシリア。

「さて、話はまとまったな。 織斑、オルコット、無剣で勝負を行う。 日時と場所は一週間後の月曜の放課後、第三アリーナ。 3人はそれぞれ用意をしておくように」

蚊帳の外だったが、結局俺が入っていることに、俺は項垂れる。

はぁ~、少なくとも、自爆だけはしないように頑張りますか。





放課後、俺は自分の机でぐったりしている。

なんじゃこの訳の分からん文字の羅列は!?

見れば、一夏も同じようにぐったりしている。

まあ、当然だよな。

こんなもん、普通以下の俺の頭では理解不能。

ISの操縦は、体で覚えるしかないか。

俺がそう思っていると、

「ああ、織斑君、剣無君。 まだ教室にいたんですね。 よかったです」

「「はい?」」

呼ばれて2人がそちらを向くと、山田先生が書類を片手に立っていた。

「えっとですね。 2人の部屋が決まりました」

そう言って、それぞれに部屋の番号が書かれた紙とキーを渡す。

「俺達の部屋って、まだ決まってなかったんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

一夏がそう聞く。

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです」

まあ、原作通りだな。

「そうですか、分かりました」

俺は頷いて鍵を受け取る。

すると一夏が、

「ともかく部屋は分かりましたけど、荷物は一回家に帰らないと準備出来ないので、今日はもう帰っていいですか?」

そう聞く。

すると、

「あ、いえ、荷物なら……」

「私が手配しておいてやった。 ありがたく思え」

山田先生の言葉を遮って、織斑先生がそう言った。

っていうか、いつの間に?

「ど、どうもありがとうございます」

「まあ、生活必需品だけだがな。 着替えと、携帯電話の充電器があれば十分だろう」

わお。

凄まじく最低限な荷物。

「無剣の方は……」

そう言ってきたので、

「あ、お構いなく。 こんなこともあろうかと、週末までの着替えと、金銭、その他もろもろは持ってきてますので」

「ほう、準備がいいな」

まあ、こうなることはわかってたので。

「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。 夕食は6時から7時、寮の一年生食堂で取ってください。 因みに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。 学年ごとに使える時間が違いますけど………えっと、その、織斑君と無剣君は今の所使えません」

「まあ、当然ですね」

頷く俺と、

「えっ?何でですか?」

聞き返す一夏。

「アホかお前は。 まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」

「あー」

織斑先生の言葉に、凄まじく納得する一夏。

「おっ、織斑君っ! 女子と一緒にお風呂に入りたいんですか!? ダメですよっ!」
「い、いや、入りたくないです」

慌てて言い直す一夏だが、

「ええっ!? 女の子に興味がないんですか!? それはそれで問題のような……」

うん、なんでこの人は極端から極端に走るのかね?

「えっと、それじゃあ私達は会議があるので、これで」

立ち去る先生達。

さてと、じゃあ寮へ向かいますか。

俺は、一夏をほっといて荷物を持ち、教室を出た。



寮への道を歩いていると、

「おーい!」

後ろから一夏が駆け寄ってくる。

まあ、呼びかけられて無視するほど、失礼なことはしたくないので立ち止まって振り返る。

「同じ寮だろ? 一緒に行こうぜ」

そう笑顔で話しかけてくる。

なんつーか、めっちゃ爽やかな笑顔だな。

女子達が速攻で落ちるのも頷ける。

「織斑だったな」

俺はそう呟く。

「一夏でいいよ。 お前は無剣 盾だったよな。 同じ男同士仲良くしようぜ」

すげーフレンドリーだな。

しかし、

「悪いけど、知り合って間もない奴を名前で呼ぶのは抵抗を感じるんだ。 しばらくは苗字で呼ばせてくれ。 その代わり、俺のことは好きに呼んで構わない」

俺は自分の性格から、相手を名前で呼ぶことは滅多にない。

前世でも他人を名前で呼んだのは、学校の友達だけ。

社会人になってからは、他人を名前で呼ぶことなど皆無だった。

「そっか。 ま、それは人それぞれだからな。 よろしくな盾」

それでも一夏は嫌な顔をせずに笑ってそう言ってくる。

爽やかすぎる。

これがハーレム因子を持つ者か。

「そうそう。 一週間後の勝負、絶対に勝とうな?」

何故かそう話を振ってくる。

「いや、俺には無理」

俺は即答する。

「なんでだよ!?」

いきなり出鼻を挫かれたのか、思わず一夏が聞き返してきた。

「俺の持論では、勝敗は才能、努力、時の運で決まると思っている。 才能については、入学試験で全くないことが実証済み。 努力に関してもオルコットさんは代表候補生。 あんな偉そうな態度をとっているけど、その裏では血の滲むような努力を続けてきたはずだ。 対して俺は明日から訓練を始めたとしても、たった1週間で出来ることなんてたかが知れてる。 努力の量でも天と地の差がある。 で、最後の時の運も、俺は運が悪い方だから、全く期待できない。 以上の結果から、俺がオルコットさんに勝てる要素は全く無い」

俺の説明に、

「最初から諦めてちゃ話にならねーだろ? もっと自信を持てよ」

一夏はそう言ってくる。

「そう言えるなら、織斑には勝てる可能性があるな」

「わかってるなら、お前もそうしろよ」

言われなくても分かってる。

はっきり言って、一夏の姿勢は羨ましい。

もちろん、俺も一夏の言うとおりだと思う。

でも、

「分かっていても俺にはできない。 だから俺は最低なんだ」

俺はそれだけ言って歩みを速めた。






指定された寮の部屋の前にたどり着くと、俺はドアをノックする。

「…………………………」

しかし、いくら待っても返事は帰ってこない。

「?」

俺は、不思議に思いながらドアを開ける。

「失礼しま~す…………」

風呂上がりや着替えの最中に遭遇しないように恐る恐る扉を開ける。

すると、そこには、六畳ぐらいの部屋に、ベッドが1つ。

そして、明らかに突貫工事で増築したと思われるトイレとシャワールーム。

これが意味することは1つ。

「一人部屋か……」

俺は張り詰めていた気を緩める。

女子と一緒かと思っていたので、緊張して損した。

まあ、一人部屋というのも有難いし、何よりトイレが備え付けられてるのが嬉しい。

IS学園は、殆どが女性のため、男子トイレというものが少ない。

そのため、夜中にトイレに行きたくなったら、その場所まで突っ走っていかなければならなくなる。

夜中の学校なんて怖くてたまらんわ!

なので、部屋にトイレがあるということは、非常に助かる。

俺は、荷物を適当に置き、ベッドに寝転がる。

その少しあとに、廊下が騒がしくなったのだが、一夏が箒の風呂上がりに出くわした事を思い出したので、別段気にはしなかった。



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