今年の春、野比のび太は晴れて中学1年生になった。
冬の寒さが和らぎ、桜が舞い散る。幾つもの別れと、新たなる出会い。
様々なドラマ溢れるこの季節の中、のび太はただ1人校庭にたたずんでいた。
のび太「とほほほ・・・。またボク学校でイジメられるのかな。」
の「またジャイアンやスネ夫と一緒のクラスだし、今日クラスに何人かの怖い
ヤツがボクに目付けてるみたいだし。しずかちゃんは学校別だしさぁ・・・。」
新学期早々のび太はひどく落ち込んでいた。最愛のしずかちゃんは別の中学に
行ってしまい、いじめっ子の某2人はまたも同じクラス。その上クラスで柄の
悪いヤツらが、2人と早速意気投合し、のび太に不敵な笑みを浮かべていた。
もうすでに酷いイジメが間もなく始まるだろうと言う予感が、イジメらっれ子
の、のび太の勘にピンと来たのだ。少学校に続き、中学校でもイジメられるのか。
その時、そのカンが間違いないことを証明するかのように、誰かがのび太の肩を
ポンポンと叩いた。
クラスメイトA「ねぇ、君、確か野比のび太君だよね?1-3組の。」
のび太「う、うん。そうだけど何か用・・・?」
のび太は肩を叩かれて一瞬振り返ったが、すぐに目を逸らした。
間違いない。自分に不敵な笑みを浮かべていたクラスメイトの奴らだ。
しかも、タチが悪いことにきっちり複数人で・・・。
クラスメイトA「おい。何で目逸らしてんだぁ?こっち向けよ!チビメガネ!」
クラスメイトB「剛田から聞いたぜぇ?お前、剛田や骨川にさんざんイジメられ
てたんだろ?」
のび太「そうだけど、それがどうしたんだよ・・・。まさか君達もボクを虐める
つもり・・・?」
クラスメイトA&B「ピポピポピンポンー♪のびちゃん大正解~♡」
のび太「うわあああああっ!!!」
のび太は懸命に逃げようとした。しかしその事を見据えていたかのように、のび太
が逃げようとした瞬間、後ろ髪を鷲づかみにされてしまう。
クラスメイトA「キッヒッヒッヒッ!逃げられると思ったのかな~?まだ話は
終わってねえんだよ、カスが!」
クラスメイトB「剛田が用があるから呼び出せって頼まれちゃってね~。
まだ残って貰わないと困んのよ。」
のび太「ジャイアンが・・・?」
クラスメイトC「その通り。だからお前にはこのまま連行してもらうぜ。」
クラスメイトD「安心しな。今日のお前のイジメ相手は俺達じゃねぇ。ジャイア
ンだからな。ただし、明日からは俺達も加わるがね♪」
のび太「ううっ・・・。何で、何で僕ばっかりこんな目に・・・。」
のび太は途方に暮れた。何故いつも自分ばかり虐められるのか。どうして僕にばっ
かり凶運が微笑むのか。断ち切ることの出来ぬ地獄のスパイラルは、更に活発化し
てのび太の人生を狂わせに来る。
確かに自分は、いつもテストで0点ばかりで、運動も出来ない、顔もダサい、モ
テない、寝ることと射撃以外、何の取り柄もない典型的なダメ人間だ。
でも、そんな自分でも学校だけは休まずに来た。どんなに学校で酷いイジメを受
けても、嫌な事があっても。他人任せでも、いつかは誰かが分かってくれる、誰か
が救ってくれる。その日が来ることを信じて・・。しかし・・・。
クラスメイトB「よお剛田!さっそく例のヤツを連れてきたぜ。」
ジャイアン「おお。悪いな。」
クラスメイトA「剛田あんまり派手にイジメんなよお?明日は俺らがコイツを
ボコんだからよぉ。せめてヒーヒー言う位の体力は残しといてくれよ~。」
ジャイアン「分かってるって。今日はここでお前らは下がってくれや。明日たっ
ぷり、のび太サンドバックを殴らせてやるからよ。」
クラスメイトC「わお~。ジャイアン太っ腹だね~♪んじゃ明日楽しみにしとく
わ。」
ジャイアン「おう。」
クラスメイト一同「じゃあな~。」
クラスメイトはのび太をジャイアンの所まで連れてくると、あっさりと消え去った。
ここはのび太がよく虐められてた例の空き地である。そしてもちろん目の前には
強面の顔をしたジャイアンが・・・。
のび太「・・・・。」
ジャイアン「こんにゃろ!!!」
次の瞬間、ジャイアンの大きな拳が、のび太の顔面に勢いよく打ち込まれた。