「……何事?」
ドヴァキンさんが学院に遊びに来た。
それはいい、それはいいのだが……学院はてんやわんやであった、塔の壁は崩落しているし、けが人も大量に出たそうだ。
「ふーむ……こりゃ俺が手を貸した方がいいっぽいな」
ドヴァキンさんは今までの旅である法則を発見していた、それは英雄級の活躍をするやつがいなくては何も解決しない事だ。これを歴史の動点と名づけた、ちょっとかっこいい。ストームクロークと帝国軍の争いもドヴァキンさんと言う戦略兵器を手に入れた方が勝利したのだ。
「この世界の英雄と言えば……アイツだろうな」
今頃鹿狩りの最中であろう相棒に思いを馳せる、恐らくこれはルイズがどうにかするイベントなのだろうとドヴァキンさんは結論づける。ルイズにはしっかりと英雄の資格があるのだ、それはおいおい語るとして。
ドヴァキンさんの頭の中に太鼓の音とモノローグが流れる、しっかりとクエストが開始されたのを確認してドヴァキンさんは感覚を研ぎ澄ませる。自分の直感が今どこに向かうべきか教えてくれる。幾度も道しるべとなり、ドヴァキンさんを英雄の道に引きずり込んだ感覚を信じてそちらの方に向かってみるとどうやら学院内にあるようだ。
「ふむ……不思議な建築洋式だな、スカイリムでは見たことない、あ。本ゲッチュー」
恐らくこの騒動で吹き飛んだ誰かの本であろう、この世界に慣れたのか、アップデートパッチが飛んできたのか文字を読めるようになったドヴァキンさんはその本のタイトルを見つめる。
【ルイズのポエム集】
こんな事が書いてあった。
「なになに? 私はレモンちゃん、とっても甘酸っぱくて……………………ぶっふぉ」
思わず吹き出してしまう、後でルイズに見せつけて遊ぼうと心に決める。
ダンタタタン!
サブクエスト:ルイズの羞恥が開始されました!
とまぁそれはあとのデザートにとっておこう、今はメインディッシュだ。とかなんとかやっている間に目的地に辿り着いてしまう、ドアノブに手を伸ばすが……鍵がかけられている、生意気な。
得意の鍵開けでさっさと解錠して中に踏む込む。
「土くれのフーケを捕まえようと言う気概の持ち主はおらんのか?」
お取り込み中だった。
「はい!」
そこで挙手をしたのはドヴァキンさん、元気よく返事をして手を挙げると部屋の中に居た人間全てがドヴァキンさんを見つめる。完全に部外者を見る目ではあるが間違っていない、ドヴァキンさんは部外者だ。だがクエストが開始されてしまうと絶対に巻き込まれるのがドヴァキンさんクオリティだ、大人しく受けて報酬をもらっておいた方がいい。
「君は……ミスヴァリエールが召喚した使い魔の」
禿げた男がメガネを上げながらドヴァキンさんの事を珍しそうに見つめている。
「ドヴァキンだ、よろしくな。禿げた御仁」
ドヴァキンさんは蛮族でいらっしゃる、だが有効的である、利害が一致する内は。
禿げた男に手を差し出して握手を求めると彼は逆の左手をとった、ドヴァキンさんの評価が下がった! 禿げた男の死刑カウントダウンが始まった!
「やや、これは珍しいルーンですな。メモメモ」
とまぁ失礼な男だとドヴァキンさんは評価して正面にいる偉そうなヒゲの御仁を見つめる、見た目からして魔術使いであろうと予想出来るが如何せんスカイリムの世界で魔術師は……その、弱い。
「君が、代わりに行ってくれると言う訳かね?」
老人の魔術師がそんな事をドヴァキンさんに訪ねてくる、どうせ断ってもおいおい行かなくちゃいけなくなるんだろうし、それにドヴァキンさんはニヤリと笑って交渉を始める事にするのだ。
「報酬次第だな、俺の善意に期待すると言うなら諦めろ」
「……ちなみに、これくらいでいかがかね?」
「もう一声だな」
「……ならば二百エキューでどうじゃ!」
「よし、契約成立だ」
と、まぁ短い会話で契約が成立したドヴァキンさんと老人は硬い握手を交わし、ドヴァキンさんはこのクソクエをさっさと終わらせる為に背を向けてドアへと歩き出した。
「待って!」
が、どうやらまだまだ話は終わらないらしくドヴァキンさんへと声をかける女性が一人、褐色の肌と燃えるような赤毛が魅力的な女性だ。
「貴方、ルイズの行き先を知らない? 親が昨日学院に探しに来ていたのよ! ルイズが行方知れずだって!」
ドヴァキンさんとしては聞き逃せない魅力的な睦言を彼女は叫んだ。
「……ルイズは廃嫡されたはずだが」
「そんなわけないでしょう! ルイズの逮捕だって不当逮捕なんだから!」
それを聞いたドヴァキンさんは顎に手を当てて、ヒゲを摩り始めた。
どうやらドヴァキンさん以外にルイズの価値を理解している奴がいるようだ、だとすれば牢獄に居る間にルイズを引き込みに来たり、ルイズが朦朧としている時に攫ったり出来たはずなのだが……とドヴァキンさんは深く考え込む。
まさかこちらの世界に闇の一党が存在するわけでもあるまいし、デイドラの気配だって薄いのだ、居ないと言う訳ではないがまさかこちらに信奉者が居て、そいつらに命令したと言うわけでもあるまい。
「……まさか、星霜の書がこちらにも? いや、その物はなくとも似たような効果を持った秘宝があってもおかしくない、未来を知った過去の人間、星霜の書とは違う未来を見る魔法具」
ドヴァキンさんはブツブツと呟きながら自分の考えを纏める。
その様子を褐色の女性は静かに見つめ、彼の結論を待っているようだ。
「君、名前は?」
「あ、あたし? き、キュルケよ」
「そうか、キュルケ。この件はルイズの親に君直々に伝えてほしい、ルイズは俺が保護している。後にそちらにルイズをしっかりと送り届けるとドヴァキンが言っていたと言伝を頼む」
そう言い切るとドヴァキンさんはさっさとその場を後に歩みさってしまう、キュルケと名乗った女性はドヴァキンさんの後を追い。
「貴方はどうするの?」
と訪ねてきた。
「泥棒退治」
とだけ答えたドヴァキンさんは走り出してどこかへと行ってしまうのだ、すれ違いでミスロングビルが校長室に駆け込むのが見える、暫くぼーぜんと立っていたキュルケだが、ドヴァキンさんから頼まれた事を思い出して急ぎ足で伝書鳩の小屋へと向かうのだ。