皆様はお約束と言うものをご存知であろうか、古代ローマの時代、演劇の科目にてチキンで頭を叩かれてオチにすると言ったお約束からしむらーうしろーまで、日本の歴史より遥かに長い歴史を持つのがお約束である。
そしてドヴァキンさんのお約束、エルダースクロールのお約束と言えばこれであろう。
囚人スタート(はぁとまぁく)
そう、ドヴァキンさんの新たなエルダースクロール……いや、ハルケギニアスクロールはここからスタートするのである。
「なんで私がこんな目に~……うう、助けてお母様、ちい姉様ぁ」
同室のルイズは牢獄に入ってから三日間、ずっと寝ても覚めても泣いている。ドヴァキンさんは勝手知ったるや他国の牢獄状態なのでそこそこ囚人生活をエンジョイしているのだ。黴びているとは言えパンも出るし、腐っているとは言えスープも出る。
腹痛なんてバッドステータスのないドヴァキンさんは腐っていようが黴びていようが関係ないのだ。ルイズの方はしっかりと当たったらしく垂れ流しではあるが。
「嘆いても始まらないぜ、三日も同室なんだしさ、そろそろ自己紹介とかして貰いたいなぁ、ちいさなレディ。あとズボン履いてください、ムラムラします」
糞尿塗れのズボンは片隅に捨てられており、ルイズのは丸見えである。繰り返す、丸見えである。
とまぁそんな下らない冗談は抜きにして、ルイズは寝藁を器用に編んで腰蓑を制作してそれを巻きつけた、新しいスキルかとドヴァキンさんはその様子をしげしげと眺めてルイズの頬を赤く染める、そっち見てたわけじゃない。
「る、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
と、恥ずかしがりながらルイズは自分の名前を教えてくれる。
「そうか、俺は……そうだな、ドヴァキンと名乗っている、謙虚だからさん付けでいい」
「そう、ドヴァキンね。本名は?」
得意げにドヴァキンと名乗った彼に対し、ルイズは軽く流して本名を訊ねる、ドヴァキンさんはそんなルイズを見て軽く舌打ちをしてゆっくりと口を開く
「…………ない、と言うか覚えてない」
ドヴァキンさんは腕を組み、少しだけ寂しそうにそう言った。
名前などとうの昔に忘れている、忌まわしきアルドゥインにあったあの日から前の記憶がないのだ、冒険者に名前など求められなかったし、世界中の皆を彼の事をドヴァキンか冒険者と呼ぶ。故に名前など必要ないし訪ねられたのは産まれて初めてだ。ゲームシステム的に尋ねられたら困っちゃうし。
「そう、じゃあ私が名前をつけてあげるわ。サイトなんてどう?」
「犬みたいな名前だな、お断りだ」
とまぁすっかり気を使われてしまった。
「ま、あんたはいい鎧を着てたし、そこそこの身分を持った騎士なんでしょう。少しは仲良くしてあげてもいいわ」
ドヴァキンさんが少し関心するとルイズはその評価をがっくりと下げる高慢な物言いをしてくれた、ドヴァキンさんは呆れながら彼女を見つめ。
「お前友達いないだろ」
と言った。
どうやらこれがクリティカルヒットだったようでルイズは目に見えて狼狽え始めた、腰蓑がワサワサと揺れている、突如頭にキタキタと言う単語が浮かんでしまったがこちらの世界に来られるといい迷惑なので脳内から削除しておく。
ともまぁ十代半ばの女の子、しかも艶かしい足をチラチラとさせるとドヴァキンさんとて冷静ではいられない、とにかくこの煩悩を沈めなくてはと唸っていると鉄格子から何かが差し入れられた。
「女の方に手紙だ」
どうやらルイズに対する手紙のようでルイズは狼狽えているので変わりに手紙を受け取り、封を開ける。中身は……どうやら知っている文字ではない為に読むことは出来ない。
「ルイズ、君宛の手紙だ」
そう言って渡してやる。
「ちょっと! 何勝手に読んでいるのよ!」
「ダメだったのか?」
「ダメに決まっているでしょ!」
怒られてしまったので反省したフリをしておこう、案の定ルイズの怒りは収まったようで寝藁に座って手紙を読み始めた。
両膝を立てて座っている為に丸見えである、彼女は一体何をしたいのであろうか、ドヴァキンさんの子種でも欲しいのだろうか。とは言っても最近シャウトを使う幼子が大量発生し、スカイリムの社会問題と化しているのでこれ以上はちょっと、と思うドヴァキンさんであった。
「嘘よ……こんなの嘘よ……」
家族からの手紙を読み終えたのにルイズはブルブルと震えて手に持った手紙を取り落としてしまう、一体何事であろうかとドヴァキンさんは首を傾げた。
「どうした? 家族の誰かがベゼスタ顔にでもなったか? ……それは絶望するよな」
「違うわよ! 何よベゼスタ顔って!」
目に涙を貯めながらでもツッコミを怠らないルイズ、ドヴァキンさんはちょっとルイズを従者にしたくなってしまう、だってスカイリムってツッコミどころ満載なんだもん。主にムアイクとか。
「わ、私、廃嫡だって……これ、絶縁状なの」
「…………………………それって困ることか?」
この世の終わりと言った表情を見せるルイズに対してドヴァキンさんはキョトンとしている、そもそもドヴァキンさんは身一つから始まって死体から武器や装備を拾い、冗談抜きのゼロから伸し上がった英雄である。そもそもドヴァキンさんのヴァイタリティとただの少女のヴァイタリティを一緒にしてはいけないと思う、ドヴァキンさんは財産を失ってもなんとでもなるし。
「だって、私は何も持ってないのよ?」
「……人間産まれた時誰でもそうじゃね?」
案外まともなドヴァキンさんの言葉に、ルイズは面食らう。
小汚いおっさんにもそれなりの……と言ってはなんであるが、歴史がしっかりと存在するのだ。ドヴァキンさんはニヤリと笑い、ルイズの頭に手を置いて口を開くのだ。
「全裸から始める生き方、教えてやるよ」
そう言って笑うドヴァキンさんは、そこそこ気のいいおっちゃんに見える。
「……まず何をするの?」
「素手で野盗をぶっ殺します」
「無理よ! 私殺されちゃう! それに可愛いから売られちゃうわ!」
「安心しろ、その前にレイプが先だ」
「どこに安心しろって言うのよ! このドヴァキン野郎!」
とまぁこんな感じで打ち解ける事が出来た、結局ルイズは貴族では無くなり、ドヴァキンの後ろに着いていくのであった、このコンビはハルケギニアに旋風を巻き起こす。
アンリエッタに迷惑かけたり、ウェールズに迷惑かけたり、レコンキスタに迷惑かけたり、ジョゼフに迷惑かけたり、と言うか大体の人に迷惑をかける大冒険の幕が切って落とされるのだ。
「ルイズの脱処女って奴だな」
「いきなり訳わかんない事言ってんじゃないわよ! はじめてはお花畑で王子様とって決めてるの!」