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No.37145の一覧
[0] 【完結】プリキュアオールスターズ B面[ミナミ ミツル](2013/04/08 17:49)
[1] プリキュアオールスターズ B面 起[ミナミ ミツル](2013/04/10 22:42)
[2] プリキュアオールスターズ B面 承[ミナミ ミツル](2013/04/06 18:31)
[3] プリキュアオールスターズ B面 転[ミナミ ミツル](2013/04/06 18:33)
[4] プリキュアオールスターズ B面 結[ミナミ ミツル](2013/04/24 21:29)
[5] エピローグ[ミナミ ミツル](2013/04/08 17:47)
[6] プリキュアドリームスターズB面 影の国、影のプリキュア 前編[ミナミ ミツル](2017/01/01 21:52)
[7] プリキュアドリームスターズB面 影の国、影のプリキュア 中編[ミナミ ミツル](2017/01/01 21:53)
[8] プリキュアドリームスターズB面 影の国、影のプリキュア 後編[ミナミ ミツル](2017/01/01 21:54)
[9] エピローグ[ミナミ ミツル](2017/01/01 22:06)
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[37145] プリキュアオールスターズ B面 承
Name: ミナミ ミツル◆418431ff ID:ebbdb2fa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/06 18:31
「なぬ、デスパライアとな」
 ブンビーの言った名前に最初に反応したのはメフィストである。
「婿殿は知っているのかね?」
「御伽噺の悪い魔女です。悪い事をすると、物陰から現れるぞって子供に言い聞かせるような。まさか実在したとは」
「本当にいるんだなぁこれが。デスパライア様は絶望を操る力を持っている。そのお力をもってすればあの程度の絶望の闇を退ける事など容易い事」
「その話が本当だとして、あまり評判がよくないようだが、大丈夫なのか?」
 お前の事はまだまだ半信半疑、といった調子でサウラー。
「……大丈夫のはずだ。デスパライア様は合意の上でプリキュアに封印されたが、プリキュアたちはその事を悔やんでいた。もう少し話ができていたら、助けられたかもしれないと。
 そして世界のバランスが崩れかけている今、その封印のタガが緩んでいる。私ならいつでも案内できる。」

 少しの沈黙の後、満が言った。
「決まりね、そのデスパライアって人を迎えに行って」
「その後プリキュアを助ける」
「一応言っておくが安全は保障できない。封印された世界の中で何が起こってるか分からんからな」
 とブンビー。それを聞いて音吉が言った。
「ふむ、空飛ぶ船(パイプオルガン)の調整にもうしばらくかかる、どうだろう、薫子さんはわしを手伝ってくれんかね」
「ふふふ。口説いても無駄ですよ、音吉さん」
「なんじゃバレたか。はっはっは」
 薫子と音吉は笑っていたが、他のメンバーは笑っていいものかどうなのか、顔を見合わせた。
 特にメフィストは冷や汗を流しながら、苦笑いを浮かべた。年寄りのこういうジョークは反応に困る。ジョークじゃなかったらもっと反応に困る。
 いや、いくつになっても恋愛は素晴らしい事だと思うし、個人的には応援もしたいが、しかし……。
「そういう事じゃ」
 音吉の一言がメフィストを現実に引き戻した。
「わしと薫子さんとコッペは残る」

「ま、準備運動にはなるかな」コキコキと指を鳴らしながらウエスター。
「ああ、近頃はデスクワークばかりだったからな」サウラーが涼しげに言った。
「急がば回れって奴だな」メフィストが威厳たっぷりに言う。
 満と薫は何も言わない。しかしその沈黙は断固たる決意の証だ。
「準備はできたかな? では行きましょうか、ナイトメアの世界へ」
 ブンビーが手をかざすと、そこに異世界へ通じる扉が現れた。
 悪夢の世界、という禍々しい名にも関わらず誰一人として躊躇せず、その扉を潜っていった。


「寂しい場所ね」
 ぼそっと薫が言った。
「ええ、まるで昔の空の泉」
 満も悲しげな顔でそう言った。
 扉を潜った先にあったのはどこまでも広がる荒野。いや荒野にだって住む生物はいる。これほど寂しい光景ではない。
 どんよりとした空に、砂に埋もれた高層ビルとコロシアムの残骸。時折砂を舞い上げる乱暴な風。後には何もない。虫一匹、植物一本さえない。
 打ち捨てられたビルの残骸にこう書かれていたのをサウラーは見た。
 ナイトメア。偉大なる絶望の魔女の座。
 それを見て、サウラーはある詩の一節を思い出していた。
「……“台座にはこう記されていた。『我が名はオジマンディアス、王中の王なり。神々よ。我が業を見よ。かくて絶望せよ』他には何も残っていない。ただ砂漠が広がっていた”」
「何言ってんだ、お前」
「地球で読んだ本の一節さ」
「何にせよだ、デスパライアを早く見つけよう」
 メフィストはそう言ったが、ブンビーがすぐにそれを否定した。
「いや、もう見つけた。ほら、あそこにいるのが、デスパライア様だ」
 一同がブンビーが指差す方向を見ると、ずっと向こうに小さな人影がしゃがみこんでいた。

「デースパライア様ー。お迎えに上がりましたよう!」
 ブンビーはそう叫びながら大きく手を振った。他の者達もそれに続く。
 デスパライアの方もそれに気が付いたらしい。近づいてくる者達の方を見ながら立ち上がった。
 美しいが、寂しげな女性だった。この寂しい世界に不釣合いな綺麗なドレスが、より一層彼女の孤独を引きたてていた。
「……久しいなブンビー。お前も生きていたのか」
「ええ、まぁおかげ様で」
「どうやって来たかは知らんが、何かが起こっているようだな」
「いやぁ、お察しの通りで、へへへ」

 ブンビーは掻い摘んでこれまでの経緯を説明した。
「という訳で、デスパライア様のお力を借りたく参上した次第であります」
「そうか。あの者たちがな……」
 デスパライアは深く息を吐きながら、かつて戦った戦士たちの事を思い出していた。
 パルミエ王国の守護者である5人のプリキュア。あの少女たちは自分になく、自分が思い焦がれていたものを持っていた。
 若さ、夢、希望、そして友。
 永遠の命を得ても得られぬ、えも言われぬ充足感。死の予感ではなく、生きている実感を。
「まさかお前が、プリキュアの使いで来るとはな、ブンビー」 
「いや、まぁあの後いろいろありましてね、ハハハハハ」
「すまぬ、私は行けぬ」
 その言葉にブンビーは愛想笑いを浮かべたまま固まった。
「は?」
「ここから離れられるぬ」
「いやいやいや、だって封印はもう殆どなくなって」
「私以外の出入りはできるようだが、私はここから離れられないのだ。見るがいい、この世界を。この空虚な光景が私の心そのものだ。ここには私しかいない。私以外の意味あるものはない。
 心に絶望しか持たぬ者が外に出られると思うか? プリキュアと同じく、私もまた絶望に捕らわれているのだ」
 ナイトメアの首領デスパライア。どんな願いでも叶えるドリームコレットの力によって不老不死となった女。もうデスパライアは何があっても老いない。死なない。死ねない。絶対に。
 その上で……彼女は牢獄に捕らわれていた。自らの心の牢獄に。

「嘘。あなたしかいないなんて嘘」
 そう指摘したのは薫である。
「来る途中で見えた。あなたは後ろに何か隠している。最初にしゃがんでいたのは、その何かを見ていたから」
「……目ざといな」
 デスパライアが観念したように横に動くと、その足元に、ほんの小さな双葉の芽が顔を出していた。
 果てしない荒野の世界にただ一つあるデスパライア以外の命だった。
「何ていう草なの」と満が尋ねた。
「これは希望。いつか私が許されるかもしれないという希望。私の心にも安らぎが訪れるのではないかという希望。あの時、キュアドリームとの会話で芽生えたものだ」
「これが希望だとしたら」
「きっと綺麗な花が咲くわ」
「いや、この花は咲かない」
 遠くの方を眺めながらデスパライアは言った。その瞳には悲哀が映っていた。
「絶望の嵐が来る。早くここから逃げよ」

 デスパライアの視線の先、風は砂塵を巻き上げて、荒れ狂う巨大な竜となっていた。
 近づくごとに砂嵐は勢力を増していく。遠くからでも高層ビルの残骸が、砂嵐の中に入った途端、切り裂かれていくのが見えた。
「行こう。ここにいて危険だ」
 そう言ってデスパライアは一行に逃げるように促す。
「待って」
 満がそれを制止した。
「この芽も持っていく」
「それはダメだ。あの嵐はこの芽を刈る為に存在する。これを持っている限り、どこまでも追って来るぞ。
 何度やってもダメだったのだ。どこまで逃げても……ここに封印されてから何度この芽を手放したか分からぬ。その度に新たな芽を見つけたが、結局は……」
「……逃げても追ってくるのなら」
「これしかないわ」
 満と薫は手を繋いで、希望の芽と嵐の間に立ち塞がった。
「ああ……途中で何となくこうなる流れだと思ったよ」
 ぶさくさと文句と言いつつ、薫と満の前にブンビーが立った。
「希望か、フン」
 さらにその前にサウラーが立った。
「あ? お前、何想像してるの? キュアベリー? なぁもしかしてキュアベリー?」
「ち、違う。小学生かお前は!」
 すかしたサウラーを茶化しつつ、その横にはウエスターが。
「な、何をやっている!?」
 驚くデスパライアを尻目に、先頭にメフィストが立った。
「デスパライアよ、お前はもっと恐ろしい女だと聞いていたが、本物は随分と弱気なのだな。この際言っておくが、この程度で逃げていては家庭を守ることなどできんぞ」
「家庭だと? わ、私にそんなものなどない」
「今は、だろ」
「そ、それは……」
 メフィストの言葉にデスパライアは稲妻に打たれたかのような衝撃を受けた。彼女の長い長い人生の中でそんな事一度も考えた事もなかった。
 いや、遠い昔、そんな事を考えた時もあったような気がする……。

 デスパライアが呆然としている間に、もう嵐は目と鼻の先まで来ていた。
 6人はそれぞれの方法でバリアーを張る。嵐から希望の芽を守る為に。
 ついに嵐が到達すると、6人の張ったバリアーは膨大な力の前にギチギチと締め付けられる。この嵐こそ世界を破壊すると謳われたデスパライアの力その物なのだ。
 バリアー越しであっても、この嵐がぞっとするほど冷たい風であることが分かった。直接この風に触れたら凍りついてしまいそうだった。
 デスパライア本人にすら制御できなくなった荒ぶる力は、希望の芽を刈るべく、7人の上に留まり続ける。
 6人が力の限り堅牢強固に構築した防壁であっても、やがて亀裂が入り始めた。

 デスパライアが叫ぶ。
「なぜだ? なぜこんな事をする!? お前たちは怖くはないのか? お前たちの考えが分からん、お前たちもプリキュアも!」
 応えたのは満と薫だ。締め付けられる苦痛に顔を歪めながらも、確かな口調でデスパライアに言った。
「なぜって、それはこの芽が育って花が咲くところが見たいからよ」
「こんな小さな芽を見捨てて逃げたら、後で後悔する」
「だが、それで死んだらどうする? 命を失ってしまえば何もなくなるのだぞ! この世界の様に!」
「花は枯れても実を付けて種を残す」
「確かにここは寂しい場所かも知れない、でも何もないなんてことはないわ」


 満と薫はあの時の空の泉のこと覚えている。
 二人に与えられたのは、寂しい世界だった。
 木々はどれも枯れ果てて、泉はひび割れて。
 風が吹く事もなく、光が差すこともない。
 しかしそれでも、孤独ではなかった。
 満には薫がいて、薫には満がいた。
 やがて二人はその世界から出てみようと思った。
 二人が辿り着いたその先の世界は美しかった。
 二人が巨木の前で出会った少女たちは輝いていた。
 二人の生き方を変えてしまう程に。あの寂しい世界を変えてしまう程に。


「この世界には希望の花が芽吹く大地がある」
「冷たく荒ぶるものだとしても、この世界には風がある」
「そしてあなたは知っているはずだわ。あの空の向こうには月の輝く世界がある」
「ここがあなたの心の世界だとしたら、あなたさえその気になれば、鳥みたいに飛んで、そこに行くことができる」
「そんな、私は、私には……」
「向こうへ行ったら何をしてみたい?」
 長い沈黙の末にデスパライアが答えた。
「わ、私は……もう一度キュアドリームに、夢原(ゆめはら)のぞみに会いたい。会って、話がしてみたい」
「それだけ?」
「パルミエの王子達にも。そして……もし、もし許されるのなら、許される日が来るのなら……」
 嵐にかき消されて、消え去りそうな声だった。
 実際、最後の所は満と薫には聞こえなかった。僅かな口の動きが二人にデスパライアの意志を伝えた。
「……友になりたい」

 その時、ついに嵐は防壁を砕いた。
 絶望の風は真空の刃となり、7人と希望の芽を切り刻んでいく。
 痛い。寒い。
 嵐はさらに、デスパライアの眼前で巨大な獣のように咆哮した。
 轟々という音が全身を叩くように鳴り響く。
 なんて、恐ろしい。
「だが、手放さぬぞ」
 デスパライアもまた、希望の芽を守る為に、嵐の前に立ち塞がった。
 そして片手を掲げると、嵐に向かって宣言する。
「もう暴れずともよい。私はここから出る……我が絶望よ、大儀であった」

 嵐はゆっくりと消え去り、世界には再び静寂が戻っていく。
 ぱんぱんと砂を払い、ブンビーが言った。
「はぁ、久々に死ぬかと思った。こんなのはあの怖いバラ以来だ」
 メフィストも強がりながら立ち上がる。
「なんのなんの、妻に比べたらあの程度の嵐など可愛いものだ」
「おい、聞いたか奥さんというのは、今のより怖いらしいぞ」
「なぜ僕に振る? ウエスター」
「地球の法律だと16歳から結婚できるらしいが、ラビリンスのだとどうなんだろうな?」
「なぜ、今そんな話をする?」
「ブルーのハートは」
「希望の印! ってお前本当にいい加減にしろよ!」

「大丈夫か」
「ええ」
「平気よ」
 デスパライアは満と薫の手を引いて、立ち上がらせると、会釈するように頭を下げた。
「礼を言う。お前たちのおかげで絶望の力を抑え込むことができた」
「やったのはあなたよ」
「……お前たち、まるでプリキュアの様な事を言うな」
「プリキュアと友達だからね」
 それを聞いて、デスパライアはほんの少しだが、不器用に微笑んだ。
「そう言えば、名前を聞いていなかった。教えてくれるか」
「私の名前は霧生 満よ」
「私は霧生 薫」
「そうか、私の名はデスパライアという。満、薫、よろしく頼む」
「ええ、こちらこそ」
「あなたの力、あてにしてるわよ、デスパライア」
 三人は握手を交わした後、デスパライアが言った。
「では行こうか、プリキュアを助けに」

 デスパライアを連れて、一行は帰還した。
 彼らを見送るように、優しい風にそよいで双葉の芽が揺れていた。


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